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マコちゃん誕生 (4a) by.isako

 帰宅すると母がリビングで暇そうにしていたので向かいの椅子に座った。
「あら、めずらしい」
「なにが?」
「いつもなら、すぅ~っと自分の部屋にいくでしょう。お小遣い?」
「テニスの分は別にもらうから困ってないよ。それより聞きたいことがあるんだけど」
「なにかしら、好きな娘でもできてデートのしかたとか?」
「どうしてそうなるのさ。高村って友達覚えている?」
「覚えているわよ。中学の時は何度か泊まったでしょう」
「それで……」
「何を今更。あなたのことも高村くんのことも信用してたから」
「今なんて。高村くん?」
「あなたの紹介では高村マコトくんだったわよね」
 どういう事だ。
「まあ中学生男子にしては可愛らしすぎたし、名簿を見てもマコトくんは見当たらなかったけど」
「え~!」
「騙せたと思っていたのかしら。あの時は向こうのご両親とも相談して結構迷ったのよ」
「あちらの親はなんて」
「こっちが恐縮するくらいあなたのことを信用してくださってたし、小学生レベルの付き合いだからって」
「そんなことあり得るのかな」
「マコトくん、いえマコちゃんの中ではあなたはとても大きな存在なんだって言ってらしたわ」
「それほどとは思えなかったけど」
「ご両親の言う方が確かじゃないかしら」
「そりゃそうだけど」
「ところでクラスが変わってからどうなの? 高校に入ってから男女を意識してるようだけど」
「時間がなかったから最近まで話もろくにしなかった。今度週末に自宅を訪ねるつもりなんだ」
「そうしてあげなさい」


  翌日は早朝から調理部でデザートをつくる。俺とユカリは、もちろんプリンアラモード担当だ。プラスティックケースに盛りつけるので豪華とは言えないが、調理部の活動は利益を押さえてあるのでいつも飛ぶように売れる。それでも売り切れれば部費が二割程度は増えるので部活的にはある意味美味しい。今季は大型の専用冷凍庫が目標だ。

 効率や見栄えを言うなら僕の参加はない。しかし部活なので見学するわけにもいかず姫の指導でなんとか歪なのを五個作った。ユカリたちはその間に売り物になるレベルのものを三〇個以上つくっているのを見れば、僕の実力の程が知れる。
「結構上手にできたじゃない」
とユカリ。
「情けや同情はいらない。安くすれば売れるさ」
「ちょっと声が大きいって」
 昼休みの混雑を避けるため朝から引換券を売っている。現場で安売りすると噂が広がって買い控えられてはこまるし、安いのは僕の五個だけなので、さぎと言われかねなかった。
「わるい」
「あら木下君のは指名で全部売れたわよ」
 窓口で引換券の販売を手伝っていた姫が言う。三年生と一年生が後お願いしますと言って出て行った。姫は、
「私にまかせて」
とお気軽に言うが、僕は嫌な予感に襲われていた。
 案の定ユカリはご機嫌斜めである。でも、なぜ?
「木下君をご指名って誰なんですか?」
「生徒会長の高村さん」
「どういう事なのよ、木下君」
 怒ったユカリの顔が目の前にあった。
「どういう事って、僕も今知ったわけで」
「もう知らない」
 ユカリは飛び出していき後には姫と僕だけが残った。
「僕が悪いんでしょうか」
「一般には罪な人っていうかな。ところで木下君、あなたトーナメントにもっと出場できるかもしれないわよ」
「どういうことです?」
「もちろん成績が下がったりしたら困るけど、あなたのテニスが校外活動と申請して認められばね」
「残念ですが、先生。僕は部活をするつもりはありません」
「ちがうの。個人で申請するのよ」
「通りますか?」
「校長の許可があれば大丈夫」
「やっぱり無理では」
「校長の弱――え~こう見えても私、校長先生のお気に入りなのよ」
 ここで僕は根本的なことにやっと気づいた。
「僕のテニスをどうしてご存知なんですか?」 
「ずっと以前から高村さんに。それになんとか出場する方法がないかもね」
 ずっと以前ということは女性化する前、疎遠な頃の話だろう。
「あいつが……」
「それより、予鈴の前に制服のクリームを取らないと。ちょっと脱いで」
 ユカリが詰め寄ってきた時ついたらしい。
「はい。お願いします」
 姫は手際よくクリームを取ったあと裏地を見た。
「これってお守り?」
「ええ、まあ。本当はブードゥーの神様らしいです」
と言って近くによった。
「あれ、おかしいなあ」
「どうしたの」
「指輪、三つついてたはずなんですけど」
 いまは二個しかない。
「一つはとれたんでしょう、擦れて。ちょっと持って」
「いいですけど……何してるんですか先生」
 姫は拍手をうつと祈り始めた。姫には似あうが人形には似合わない。
「あなた達三人がうまくいきますようにって」


Epilogue 《The 1st ending》


 トーナメントの最終日、有明のテニスコートは快晴だった。相手は一〇年ぶりに復帰したとは言えベテランで国内に敵なしである。
 入場後、ラケットケースのお守りを握ってからコートに入った。擦り切れて指輪が一つもないが今の自分には大事なお守りなのだ。
 練習を始めても体が軽い。ただやはりライジングには注意しなければ。練習でさえこちらのリズムが狂わされそうだ。
 サーブは? 大丈夫。リターンも完璧だ。
 時間になりネットごしに握手をする。
「お互いがんばりましょうね」
 真っ黒な顔と笑ったときの白い歯が印象的だ。
「はい」
 トスでサーブを取り、ベースラインに戻る。
 余裕があることを示すべく、最前列のマコと林くんに軽く手を上げた。
 ボールを青い空に上げたとき心地よい風が私のスコートをひらめかせる。

「フィフティーン・ラブ」






(一分岐のおしまい)

コメント

1st Endは主人公が女体化してしまうオチみたいですね。これもこれで最高です!

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