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チェンジ・ライフ・ラプソディー2 エピローグ

作.エイジ

「小手!」
「胴!」
 互いの竹刀が疾る(はしる)。その竹刀は目標に当たる事なく、何もない空を切る。
 それを見届けるや否や、すぐに竹刀を翻し、
「胴!」
 打つ。
 だけどその一撃も防がれ、流されてしまう。
 そしてそのせいで無防備な場所が生まれてしまった。
 相手はそれをみすみす逃すような事はしない。
 瞬間、衝撃が走り、
「胴!」
 後に声が届いた。
「胴あり! 一本!!」
 審判の判定が響き、俺の負けが確定した。


「また負けた~!」
 面を取って、開口一番に出た言葉がこれだった。
 もう負けるのは何度目になるんだろうか。………というか、こいつから勝った事が過去一度でもあったか?
「なにを深刻な表情を浮かべてますの?」
 先程までの試合の相手―――言うまでもなく鷹野だ―――が声をかけてくる。
 俺は鷹野に、
「………一つ聞きたい事があるんだけど、いい………?」
「なんですか。改まって」
「あのさ………」
 おそるおそる。俺はその質問を口にする。
「あたしがあんたに勝った事って、今までにあったっけ?」
「何を馬鹿な事を。いくらなんでも一度くらい―――」
 そこで声が途切れ、次に出てきた言葉は、
「―――あら?」
「やっぱり………っ!」
 俺は頭を抱えた。
「おかしいですわね………。いくらなんでも一度くらい………」
 沈黙。
 そして、
「ま、まあ。前に比べたら大分強くますし、大丈夫ですわよ!」
「強者の余裕ってやつね………。羨ましい事で」
 なんていじけていると、
「その言葉、そっくりそのままお返ししますね」
 視線を向けると、半眼で睨んでいる雪緒の姿が。
 俺は言葉の意味がわからず、
「どういう事?」
 それに対し、
「飛鳥先輩だって十分強いじゃないですか」
「え………そう………?」
「そうだよ! 私達は言うにおよばず、ここ最近個人、団体戦共に負けなしじゃん!」
「………謙遜も過ぎれば嫌味です………」
 横から言ってきたのは月夜と花穂の二人だ。そして二人共雪緒と似たり寄ったりの表情を浮かべている。
「そんな事は―――」
 ないんだけどなぁ。
 そう続けようとして、でも俺は言葉を切った。三人に睨まれたからだ。
「………でもなんで勝てないんだろうなぁ………」
 そこで俺は話題を逸らす。
 三姉妹が「逃げた」なんて言っているけど、無視だ無視。
 そして横目で鷹野を見つめるけど、当の本人はただ肩をすくめるだけ。「私に聞かれても困ります」といわんばかり。
 すると、
「いっそ男に戻っちゃえばどうですか? そうすれば勝てるかもしれませんよ?」
 なんて言葉が。
「………春菜ちゃん」
「まあ、高島先輩とラブラブ中な部長には無理な相談だと思いますけど」
「春菜ちゃん!!」
 俺は声を張り上げる。
 だけど春菜ちゃんは悪びれる事なく、
「事実じゃないですか」
 くっ………。
「事実ですわね」
「事実ですね」
「………事実です」
「事実だよね~」
「事実だな」
 すると周りの皆も次々に頷いて………っておい!!
「いつからいたぁっ!? そこの二人!!」
 ビシッ!
 指差すその先には頷く勇助と、顔をそらしている直樹の二人が。
 というか直樹! 聞いてたなら助けろよ!!
 俺の心が通じたのか、直樹はしどろもどろに、
「あ~………その、だな。部活もそろそろ終わるだろうと思って迎えにきたんだが………」
「………それでなんで勇助がいる?」
「ただ邪魔しにきただけだが?」
 しれっと答える。
 こ・い・つ・は~!
「もちろん、ある程度からかったら退散しようと思っていたんだが―――その必要はなさそうだな」
 勇助がニヤリと笑い、周り(直樹を除いて)がうんうんと頷く。
 俺は脱力して、
「………わかった。今回はもうそれでいいよ………」
「よし。それじゃあ校門のところで待ってるな」
 言うが早いが、勇助は体育館から姿を消す。一方直樹はその場に残ったままだ。
「―――私達は先に部室に行って着替えてますわね」
 察した鷹野が他の皆を率いて部室へと向かっていく。
 それを見送り、
「で? なんか言いたい事があるんだろ?」
 促す。
 少しの躊躇の後、直樹は、
「………やっぱ勝ちたいか? 鷹野さんに」
「当然だろ」
 と俺は即答。
 一勝もしてないんだぞ。勝ちたくないわけあるか。
「………そのために男に戻るのか?」
 ………ああ。そういう事か。
「確かに男に戻った方が勝率は上がるだろうな」
 まだ小瓶はある。だから戻ろうと思えばいつでも戻れるんだ。
「でもな。それじゃああんまり意味がないんだよ。『この身体』で勝ちたいって、俺は思ってるからな。それに―――」
 それに、だ。
「お前がいるんだ。しばらくは戻れないさ」
「しばらく?」
「そうだな―――」
 すっと近づいて、軽く背伸びし、


 ちゅ。


「俺が、直樹の事を好きな間は、戻れないな」

飛島仁次郎挿絵08


挿絵:倉塚りこ
<Fin>

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