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【FANZA50%オフ】「誰か一人だけ女体化できる」というクソ能力を、特レア能力「周囲女性超発情」と交換して貰ったオレ サンプル①

2020Q4おかし製作所FANZA販売数42位
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「誰か一人だけ女体化できる」というクソ能力を、特レア能力「周囲女性超発情」と交換して貰ったオレ FANZA版
「誰か一人だけ女体化できる」というクソ能力を、特レア能力「周囲女性超発情」と交換して貰ったオレ DLsitecom版

序章 チートスキル

 ガラガラガラ……コロッ。
 抽選機から赤い玉が吐き出され、皺だらけの手がそれをつまんだ。わた飴のような真っ白な髭と白髪を伸ばし、着ている装束もまた純白の老人の手だった。

「233番じゃな。ちょっと待っておくれ」
「頼むぞ!かっこいいスキル来やがれ!」

 茶髪の男は両手をあわせ、今まで信じたこともない神に祈っていた。
 大きな竜のロゴが背中に入ったジャケットにジーンズ。どこにでもにいる不良といった風貌の後ろにはそんな彼より目立たないように大人しめの服を着たパシリが立っていた。
 商店街の福引でもしているような光景だ。
 しかし、実際には二人の人生がかかっていた。
 正確には二度目の人生が。

(うーん、どうしてこんなことになったのやら……)

 彼、犬飼北斗は10分ほど前を振り返る。
 兄貴分である男、九頭竜大悟のバイクに二人乗りし、地元の不良たちとチキンレースをしていた。崖の手前まで走行し、ブレーキを先にかけたほうの負け。そのルールに従って大悟は一度もブレーキをかけず、そして二人で豪快に崖からジャンプしてしまった。
 パシリは知らなかった。下は海だったので岸まで泳げばいい。どこかの漫画を読んでそう信じ込んだ大悟は自分たちも泳げばいいと思ったらしい。しかしその漫画の登場人物は車を使い、自分たちはバイクに乗っているという違いを考慮してなかった。
 そして不良二人はあっけなく死んだ。
 気がつけば真っ白な空間に二人は立ち、目の前に老人が立っていた。

「ふぉっふぉっ、ここまで阿呆らしい死に方をした人間は久しぶりじゃ。漫画みたいな死に方をしたお前らに特別サービスで漫画のような世界に飛ばしてやろう。しかも福引でスキルまでつけてじゃ!」

 こんなことを言い出した神を大悟はすんなり受け入れた。これも漫画の影響だろう。
 福引で能力をもらい、異世界で無双するという野望を抱いた彼をパシリは見守ることしかできない。

(まあ、人生はなるようにしかならないですからね。しかしスキルですか……)

 彼もまた固唾を呑んで大悟の福引の結果を待つ。それによっては第二の人生は序盤から詰むからだ。自分たちが行く「漫画のような世界」は人間と共にモンスターや魔法が存在し、言語通訳だけサービスでつけてやるとだけ言われている。至れり尽くせりだと大悟は喜んだが、神は一言も「スキルは良いものばかり」と言っていないと北斗は気づいた。
 髭だらけの神は大きな帳簿とにらめっこし、やがてかっと目を見開いた。

「おお……この能力は……」
「強えースキルなのか、爺さん?」

 兄貴は興奮して次の言葉を待つ。
 神は言った。

「これは『どんな男でも一人だけ女体化できる』スキルじゃ!」
「……は?」

 兄貴はスキルの意味を考え、やがて福引に手をかけた。

「さあ!予行練習は終わった!回すぜ!」
「やり直しは認めぬ」
「やるぜ!」
「ならぬ」

 髪は無慈悲に宣言し、強引に抽選機を回そうとした大悟に電撃が走った。
 彼は悲鳴を上げてのた打ち回る。

「ふぎゃあああああっ!ちょ、ちょっと待てよ!そんなゴミみたいなスキルいらねえよ!」
「はい、次の方~」
「このくそ爺!聞けよっ!」

 老人に飛び掛ったが、彼の拳は老人を幻のようにすり抜けた。
 今度は顔を床に打ち付けて悶絶する様子を見ながら子分は福引に手をかける。

(大悟さん、神様に殴りかかるなんて度胸だけはありますね……)

 北斗は福引を回し、コロンッと出てきた銀色の玉を神に見せた。

「777番って書いてますけど?」
「ほうほう。待っておれ……おおっ!」

 神は子分の顔をちらりと見てにやりと笑った。
 意味深な笑みを送られた彼は訝しがる。

「何のスキルなんですか?」
「喜べ。おぬしのスキルは『世界一の美形魔法剣士で、常時周囲3m内の女性を発情させてちんこの事しか考えられなくする』じゃ!」
「え?」
「今、なんつったああああああっ!」

 兄貴は床から這い上がって神につかみかかる。
 これもまたすり抜けてしまう。

「お、女をハメまくってヤリまくる能力だとおおお!?」
「いや、そうは言っておらぬ」
「そうは言ってませんよ」

 神と北斗が同時につっこみを入れた。

「こいつが!俺の専属パシリがそんな能力を引き当てたのに!なんで俺はゴミスキルなんだよ!?」
「ゴミと言うな。さて、質問はあるか?」
「あのー、女を発情させるって種族や年齢も関係なく効果があるんですか?」
「そうじゃ」
「話を聞けっ!」
「3メートルから離れたらスキル効果は解除されるんですか?」
「そうじゃ」
「俺の話を聞けよおおおおおっ!」

 一人は絶叫し、もう一人と神は質疑応答を続ける。
 実体のない神様を殴り続けた兄貴は息切れを起こし、フラフラになる。しかし疲労困憊の彼は突如として叫んだ。

「そうだ!おい、ジジイ!俺からも質問だ!俺の福引をこいつのととっ替えるのはありか?」
「ん……?まあ、合意があれば可能じゃぞ」
「よおおおしっ!」

 すでに合意を得たかのように兄貴はガッツポーズした。
 その間に子分は一切喋らず、スキルについて考え続けていた。

「おい!北斗!お前のスキルと交換だ!文句はねえな!」
「はい、いいですよ」
「え?」
「え?」

 二人は顔を見合わせ、兄貴は面食らった。

「おい、いいのか?」
「もちろんですよ。大悟さんの頼みを私が断ったことがありますか?」
「そ、そうか……」

 抵抗があると思っていた兄貴は拍子抜けしたが、顔に笑みが戻って北斗の肩に手を回す。

「さすが北斗!俺の第一のパシリなだけはある!むこうに行ったらきっちり面倒見てやるからな!うははははっ!」
「さすが大悟さんです!頼りにしてます!」

 北斗も笑顔になり、二人は笑いあう。
 一方は嘲笑に近く、もう一方は完全な作り笑顔だった。
 二人の頭の中までお見通しの神はその傍でくすくすと笑っていた。

「合意はできたようじゃな。では、スキルを渡そう。そして新しい世界に行くがよい!」

 そう言った瞬間、二人の足元が青白く輝いた。

「うおおっ!なんじゃこりゃ!」
「転移ゲートでしょう。じゃあ、神様、いろいろありがとうございました」
「うむ。新しい世界でも面白い活躍を期待しておるぞ」

 神はにんまりと笑い、皺だらけの手を振る。
 大悟は知らなかった。隣にいるパシリの顔に暗い笑みがあることを。


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【投稿小説】月夜の天女(前編) by 馬耳エルフ

午後8時。僕、十五夜葉月は軽トラの助手席から外の薄暗い景色をぼんやりと眺めていた。車は村の東の外れにある露天風呂へと向かって進んでいく。そこに繋がる道はろくに整備もされていない細い一本道になっており、対向車が来たら避けるのも難しいだろう。ただ、その心配は無いと言って構わない。今から向かう露天風呂は僕の知る限りほとんど人も寄り付かない上、村の人間でも一部にしか知られてない秘湯のような場所だ。もっとも、地面は素足で歩けるように最低限の備えはされており、柵も設けられてはいるのだが村の人間も観光客もほぼ見かけることはない。その証拠に、温泉へ向かうこの道の先から対向車の1台もやって来る気配はない。
僕だって温泉は好きだが、義父である隆作の誘いがなければわざわざ足を運ぼうとは思わなかった。運転をしている隣の隆作は何やら落ち着かずそわそわした様子でハンドルを握っている。

「何でまた急に村から外れた露天風呂に行こうなんて誘ってきたのさ」
「何だ、葉月。フロ嫌いだったか?」
「いや好きか嫌いかで言えば好きだけど。あそこの場所は知ってるけどあんまり行った事無いから」
「たまには良い息抜きになるぞ。最近、お前随分疲れてたみたいだからな。店がこの時期忙しいのはいつもの事とは言えこの辺で少し気分転換でもと思ってな」
「気分転換ね…」
確かに最近は疲れが溜まっているし気分転換は悪くないかもしれない。隆作が店主を務めるバーは村では数少ない娯楽施設なだけあって常連客も多く、手伝う僕も多忙な日々を過ごしていた。ただ、隆作の態度がどういうわけか普段と何か違う感じもするのだが気のせいだろうか?
何やらどこか落ち着きに欠けていると言うか、上の空と言うか。まるで好きな番組がもうすぐ始まるのに怖い親が別のチャンネルの番組を見ている子供ようなそんな雰囲気を感じる。疑問を抱きつつも車はガタガタ音を立てて山の中を進んでいく。温泉へと続く道は舗装されていない。砂利道を走る衝撃が僕の尻に伝わってくる。ヘッドライトに照らされた細長い山道は少し不気味だ。暫くして目的地である露天風呂に到着した。

「うん。予想以上に良いな。こりゃ家の風呂とは偉い違いだ」
「だろ? たまにはこういうのも悪くないだろ」
「まぁ、確かにこういうのもたまになら」
露天風呂に身体を沈めると身体の芯から温まる。家の狭い風呂は長身の僕にははっきり言って窮屈な代物なので露天風呂の広さと爽快さは心地良く思えていた。村の人間もほとんど寄り付かない人目を憚るような場所の温泉、確かにこれは良いものだ。露天風呂で吸う空気も澄んでいて美味しいし何より開放感が最高だ。思わず疲れが湯の中へと溶け出していくような錯覚さえ覚える。
「そう言えば、俺がお前を引き取ってもう12年になるのか」
「10歳の時から数えて、丁度それくらいかな。時間が経つのは早いって感じだ」
僕は10歳の頃、両親を亡くして孤児になった。その時に引き取ってくれたのが隆作だ。何親等離れているか分からないほど遠い親戚で、当時は僕も両親を失ったショックから不安で仕方がなかったので、最初はあまり良い印象を持っていなかったのだがいざ一緒に生活してみると僕に対して何かと優しく接してくれたし、勉強も教えてくれたし何より僕のことをこうして育ててくれた。今では心の奥底から感謝している。もしも、隆作に引き取られなければどうなっていたか…。そんなことを考えると本当に幸運だったのだと思わざるを得ない。
自分の身の上について思い返してしんみりしていると、何だか感性が研ぎ澄まされたようで周囲の景色が美しく感じられた。静謐な林から漂う空気は澄み渡りそれが温泉の湯煙と合わさることで幻想的な空間を作り出している。正にここでしか味わえない絶景、これを独り占めしているのはちょっとした優越感を抱くほどだ。そして、夜空には星が瞬いていおり存在感抜群の満月が僕たちを優しく照らしている。ふと、肌がひりつく感覚を覚える。月光を浴びながら僕はハッとした。
「満月…。そうか、忙しかったからすっかり忘れてたけど、今日は9月の、中秋の名月じゃないか。・・・・・しまった…。迂闊だった。今日はあの日だったこと忘れてた…」
それは僕にとって1年で最も特別な日。
「おっ、やっと気付いたか。毎年のパターンからして、そろそろ“アレ”が来る頃だ」
僕に無遠慮に浴びせられるニヤニヤした隆作の粘度の高い視線から温泉に誘われた理由の全てを察した。運転中のそわそわした様子についても合点がいった。
要するに今から起こる肉体的変化を遂げた僕の裸体を見るためだ。
そう思った次の瞬間、僕の体に熱を伴った痺れが駆け巡った。
「くうっ…。くそっ、収まらない…。始まる。よりにもよってこんな場所で…」
「年に1度の楽しみだ。じーっくりと拝見してこの目に焼き付けさせてもらうか」
体を覆う痺れはまるで肉体そのものが溶けてしまうかの錯覚すら覚えてしまうほどに強まっていた。心臓の鼓動に同期するように体の奥底から灼熱を思わせる波が行き渡っていく。思考を隅々まで焼かれていくようなこの感覚、毎年のように経験しているが未だに慣れることはない。ただ収まるまで悶絶し続けるだけだ。
そして数分後…。先程まで僕の骨髄を炙るような感覚をもたらしていた熱と痺れは少しずつではあるものの薄れつつある。僕は身構えた。今年もだ。年に1度だけ、15日間だけ肉体が女体化する瞬間がやってきたのだ。

最も早く変化が訪れるのが肌だ。荒い男の肌からきめ細かく滑らかな若い女の肌へと塗り替わっていく。その肌はみるみる内に瑞々しさと張りを増していき、一点の汚れも無い白磁のようになっていく。全身の骨格は男性としてのゴツゴツとした逞しさを失い女性らしい丸みを帯びていき、喉仏が引っ込み女性ならではの平らな喉を形作っていく。腕や脚の筋肉も徐々に細くなっていくにも関わらず、太腿に関しては柔らかい肉付きが備わっていく。平らな胸板は信じられない勢いで膨らんでいき、瞬く間に成人女性の平均を遥かに上回るであろう豊満なバストへと変貌する。細くくびれた腰回りとは対照的に尻は肉感豊かで丸みを帯びた大きな球体のような輪郭を形成していく。男性の象徴はいつの間にやら無くなっており、仕上げとばかりに艶やかさを大幅に増した黒髪が腰にかかるほどの長さまで伸びていく。こうして完全に変化が終わった時、すっかり女の身体に変わっていた。
じんわりと焼かれたようにおぼろげな意識の中、僕は自身の肉体の変化を感覚でゆっくりと確認する。長く伸びた髪の毛。大きな鉛を2つ付けられたような乳房の重さ。重心を後ろに引っ張るような臀部の出っ張り具合。そして何より股間にある慣れ親しんだモノの消失。全ての感覚が肉体が女になった事実を裏付けるものだ。

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「うおおっ、今年の葉月ちゃんはまた一段と凄い。ただでさえナイスバディだった去年より一層女らしい体になってるじゃないか。毎年のようにその乳と尻はどこまで発育すれば気が済むんだ。全くもってけしからん。大体からして、そのおっぱいは何カップあるんだ?見たところ間違いなくF以上、ということはGか?大きさも圧巻だが形も素晴らしい。更にてっぺんのピンク色の乳首の綺麗なこと。そしてお尻のどっしりとした肉付きがまた凄い。安産型という言葉がピッタリの見事なフォルムだ。腰も細くくびれて色っぽいし、女としては上背があることが返って出る所が出っ張っている体型を際立たせているな。さらに言えば、見事なのは股間が赤ちゃんみたいにつんつるてんの…」
女に体が変わる際の痺れるような感覚で夢遊病患者にも似た意識を現実へと連れ戻したのは、全身をベロベロと舐めるような隆作の目とともに送られた僕の裸に対する長い感想だった。次の瞬間、羞恥心が脳を駆け巡った。
「うわっ!どこ見てんだこのエロオヤジ!!」
好色な視線から守るように腕を交差させ慌てて胸を隠すが女の細腕ではこの巨乳は庇いきれない。大部分が露出してしまっている。
「良いリアクションだ。やっぱ若い女には恥じらいがないとな」
「いい加減にしろおっ!!」
2人だけの露天風呂に怒声がこだました。

「すまんかった、葉月。ちょっと悪ふざけが過ぎた」
「あのさ、これが悪ふざけで済むとは思えないけど。要するに女になった僕の全裸を見たくて隆作おじさんは温泉に誘ったんだ」
「まあ、そうなるな」
「変態。色魔。こんなの酷いじゃないか。じゃあもう帰ろうよ。目論見通り裸は見れたんだからさ」
距離を置くように風呂の端に身を丸めて湯に浸かったまま恨み節を口にする僕に対し、隆作は宥めるように言った。
「待て待て。まだここに来て15分くらいだぞ。もうちょっとゆっくりしていこうじゃないか」
「嫌だ。義理の息子の裸にご執心のオッサンと一緒にいたくない」
「そこを何とか。頼む。こんな美人と一緒の温泉を楽しむなんて、俺の人生この先何十年続くかわからないが二度と来ないチャンスなんだ。お願いだこの通り」
両手を合わせ、深々と頭を下げる隆作。そこまでして僕と温泉を楽しみたいのか。呆れを通り越して感心するレベルだ。懇願する哀れな義父を前にして思うことがある。この白いものがたくさん混じった頭も、顔や手に刻まれた皺も、僕を引き取り育てたことで経験した心労が一因なのかもしれない。そう考えるとと、何だか気の毒に思えてきた。でも、さすがにそんなスケベな願いを了承するのは気が引けるし…

『かまわないだろう。相手は君の大事な恩人なのだから。共に湯を楽しむ程度の願いなら叶えてやりなさい』

…今何か聞こえたような。隆作の声じゃない。
男とも女ともつかない無機質な声が頭に響いた気がした。気のせいだろうか。
ふと、隆作に視線を移す。まだ頭を下げ続けているじゃないか。孤児の僕を育ててくれた恩人の頼みを無下に扱うのも気が引けてくる。それに非常に不思議なことに僕にはこの哀れな中年が何だか可愛く見えてきた。ひとつ、大きなため息を吐いた。
そして、隆作に告げた。
僕の言葉を聞くや否や、彼は顔を上げ満面の笑みを浮かべた。
それから暫くの間、僕と隆作は露天風呂でのんびりと過ごした。満天の星空と満月の下で風を感じながらの入浴は最高の一言に尽きる。風呂の中で最近の出来事を話し合ったりくだらない冗談を言い合ったりして、とてもリラックスできた。さすが隆作はバーの店主として数十年客商売をしているだけあって会話を弾ませる腕が達者だ。たまに鼻の下を伸ばして胸元や下半身に視線を向けてくるのは気になったが、とても不思議なことに先程まで感じた嫌悪感はほとんどは湧いてこなかった。

「天女、だって?」
それからしばらくして、会話の内容が僕が引き取られたときの思い出へと移った。その際に僕の父方の祖父が妙なことを言ってたらしい。
「そう。死んだ爺さんがな、お前を引き取る時に確かに言ってたんだよ。この子は天女様の子孫だから大事に育てろ。9月の満月の日には女になるけど、しばらくすれば元に戻るし騒ぎになるから病院には連れて行くな、ってな」
「ひょっとして、それ本気で信じてるの?」
「昔は信じちゃいなかったさ。でも最近は信憑性がある話じゃないのかと思えてきた。1年の限られた期間だけ男が女になるなんてどう考えても科学的に説明できない現象だし、この土地には天女様の伝説も残ってるんだよ」
「それはどんな?」
「細かい所は忘れたが大筋はこうだ。何でも千年前に月から舞い降りた天女がこの村にいたそうなんだが、それがすごい美人でな。偶然この村に降り立ったところで遭遇した村の若者は一目で恋に落ちたそうだ。色々あって2人は添い遂げて子供も沢山生まれたって話だ」
「へー」
特に個性も特徴もないどこにでも転がっているような昔話だ。ただ、その話を聞くと妙に懐かしい感覚がするのは気のせいだろうか。
それから家に帰るまで、先程聞こえた謎の声の疑問が僕の心に泥のように沈殿し続けていた。

女になってから5日が過ぎた。テレビからが今年の中秋の名月が地球と月が最も距離を縮めるスーパームーンと重なったことをキャスターが伝えている。ふと、机の上に広げられた家系図に目を落とす。これは死んだ祖父が残してくれた僕の家の代々の系統を記した図表だ。とは言え、普通の家系図と別段変わった所はない。あるとしたら一つだけ。
男に早死が多く、男が死んだ直後のタイミングでその家は養女と縁組をしているパターンが散見することくらいだろうか。そして、その養女はいずれも沢山の子をもうけている。
「これってやっぱり変わってるよな」
早くに両親を亡くしたからなのだろうか。子供の頃から僕は自分のルーツに強い興味を持つようになり暇な時は思い出したかのように家系図を眺める習慣があった。
コップに入っていた水を飲み一息つく。家事やバーの買い出しは普段通りこなしているし、女になったことによる生活上の大きな変化も特に無い。強いて言えば去年まで使っていたスポーツブラが少々窮屈になったくらいか。どうやらあの日、露天風呂で隆作が指摘したように僕の胸は去年よりも発育しているらしい。

「そもそも、毎年この体は何で女になるんだろう…」
生まれついての体質だけに極力気にしなかったが、今更ながらこの体は異常だ。年に1度、中秋の名月の日から数えて15日間女になり何事もなかったかのように男へと戻る。そんな超常現象と言っても過言ではない事象がなぜ僕だけに起こっているのか。22年間この体質と付き合ってきたがその原因は未だに分かっていない。考えれば考えるほど謎が深まっていく。ふと、5日前の温泉での龍作との会話が脳裏に蘇る。死んだ祖父が自分のことを天女の末裔と称していた件だ。それが本当ならこの身に天女に由来する特殊な力が宿っており、それが引き金となり毎年決まった時期にだけ肉体を女に作り替えているのだろうか。
そんな事を考えていると、玄関から物音がした。隆作が帰ってきたのだ。

「そう言えば、今日店に来た客が面白いことを言ってたな」
机に並べた夕飯を肴に酒を飲みながら隆作がにやりと笑みをこぼしながら言った。
「面白いこと?」
「ああ、客の一人が偶然、村の北側にあるスーパーに今日の昼行ったんだと。そしたら偶然、すごい美人の客を見かけたらしい。で、その美人なんだがな。まるでモデルみたいに背が高くておっぱいとお尻が大きかったそうなんだよ」
「それ僕だよ…」
今日の昼と言えば、隆作に言われた買い出しのためにスーパーを訪れていた時間だ。そう言えばすれ違った男が妙に熱のこもった視線を向けてきたきがしたが、どうやら気のせいではなかったらしい。
「それで、その客がどうかしたの?」
「ああ、そいつがな、あまりにも美人だったから声かけようか迷ったけど、踏ん切りがつかず結局諦めたらしいんだよ。そんで『もし声かけてたらあの美人なおっぱい姉ちゃんとヤれたかもしれないのになー』なんて言ってたわけよ。そりゃもう悔しそうな顔しててさ、相手が男だって知ったらあのお客さんどんな顔しただろうなって思うと笑えたよ」
「あんまり愉快な話じゃないな」
僕の頭の中は男のままだから、若い女を性欲の対象として見る男の気持ちは理解できる。しかし、いざ自分自身が欲望の目を向けられるとなると一転複雑な気分になってくる。ついでに言えば向かいに座って食事をしながらも胸や太腿にさりげなく視線を向けてくる隆作のことも少し苦々しく思っていた。
「それだけ今の葉月が男の目を吸い付けるいい女になったってことだな。まあ美人な上、そんなグラビアアイドル顔負けのプロポーションしてたら嫌でも目立つよな」
「変態セクハラ中年!」
悪びれもせず体をジロジロ見てくる隆作に辟易しつつも、忸怩たる思いを抱えていた。この男は身寄りのない自分を引取って育ててくれた人だ。浮いた話の一つもなく働き続けてきた恩人その程度のことは許容すべきかもしれないとも思えていた。
「ははは、固いこと言うな。長年連れ添った家族なんだから大目に見てくれよ」
「全く…」
思い返せば、2年前辺りから隆作は女になった僕への興味を隠さないようになった。初めて胸の大きさを冷やかされたのも2年前だったっけ。挨拶代わりにお尻を触ったり偶然を装って肘で胸を突いたりもされったっけ。去年は着替えを覗かれたことも…。全くもって度し難い女好きだ。
それでも邪険に出来ないのはやはり、僕自身が育ててくれたことに心から感謝して恩を返したいと思っているからだろうか。

やがて、時間が経ち僕まで酒に付き合うことになった。僕自身は下戸なので遠慮したのだが、さすがここはバーの店主を長年勤めた男の手腕と言うべきか。巧みかつ自然な会話で押し切られ一杯、二杯、三杯と付き合う羽目になった。男の体でも酒に弱かったからか、今の女の体では尚の事酒に弱くなったのか。次第に意識が朦朧としてきた。
隆作が何やら話しているが、内容が頭に入ってこない。ただただ心地良い酩酊感に身を任せるだけだ。いつの間にやら隆作が隣に座り腰を抱き寄せてきたが、それを拒もうという気持ちすら起きない。勿論、現在進行形で腰をさすっている隆作に不満を抱きはするものの、これが普段の生活のストレス解消に繋がれば何よりのことで…

『嘆かわしい考えと言わざるをえない。たったその程度のことで育ててもらった恩に報いたつもりかね』

僕の耳、いや違う。頭だ。酔っ払った神経を引き裂くような明確な言葉が頭に直接響く。5日前の温泉で聞いた言葉と同じ主だ。声の正体を考える暇もなく、言葉を流し込む。

『君にとっての生涯の恩人たる望月隆作が隣にいる。そして、君には隆作が心の奥底から欲するものを“その気になれば”提供すること能う立場。ならば、“その気”になる以外に選択肢はあるまい。そのことに君はとっくに気付いているはずだ。君を邪魔している蒙昧な社会的理性は私がひとまず取り払っておこう。君自身も女の自分が隆作にどう映っているか確認するまたとない機会に違いないのだから』

『とは言え、たった今進言したことは既にこの世にない影法師の戯言。聞き流してくれて構わない。しかし、目の前の隆作という男は女好きだが悪い人間ではない。それは君もよく理解できているだろう。彼の望みに応えるか否か。後は我が子孫たる君、葉月の気持ち一つということになる』

そこで声は途切れた。その言葉は静かな湖面の中心からゆっくりと伝わる何重もの波紋のように僕の心へと広がっていき、頭にぼんやりとした霧が満ちるようなおぼろげな心持ちへと陥っていく。すると不思議なもので今の声が全面的に正しいことを言っているように思えてきたのだ。
そうだ。この体で隆作を楽しませて仕事の疲れを忘れさせることこそが自分の使命であるかのようにすら思えてきた。やがて、僕は謎の声に背を押されるかのようにゆっくりと隣に座る隆作にしなだれかかった。
「おい。葉月、なにを…」
「そんなに僕の体が気に入ってるなら、ちょっとくらい触ってみるくらいならいいよ?」
「い、いや。いきなりそんな大胆なこと言われてもな」
つい昨日は尻を撫でようとしてきた隆作に対してゴミ溜めを見るような冷たい目で応対しただけに、いつもと様子が違う僕に対して身構えてしまっているのだろう。それでも、視線はしっかりと僕の豊満な胸や大きな尻、短パンから伸びる白い太腿に向けられている。

「ほらほら、遠慮せず。昨日は僕のお尻触ろうとしてたじゃないか。今日はその続きしてもいいし、この大きなオッパイを揉んだっていいよ。これを逃したらもう二度とこんなチャンス無いかもしれないよ?」
隆作は戸惑いと逡巡を顔一杯に浮かべていた。中身が男のままの僕にはその精神状態が手に取るようによく分かる。隆作の頭の中では本能と理性がせめぎ合っているのだ。そして、その葛藤の決着がすぐつくことも僕は簡単に予想できた。大方の想像通り、龍作は己の本能に突き動かされるように胸に手を伸ばしてきた。想像とびた一文違わない隆作の行動に僕は内心ため息をついた。

「今日は随分サービスが良いじゃないか。どういう風の吹き回しだ?ほれほれ」
タンクトップとスポブラの上からとは言え、胸を揉まれる刺激が神経を甘く刺激してくる。
「それは、その…。んっ!たまには普段の疲れを僕の体で癒やして欲しくなったと言うか、ひゃん!」
不意に僕の体に甘い痺れが走る。隆作がコリコリと服の上から乳首をつまみ上げ刺激してきたのだ。
「まっ、それはいいか。今は楽しませてもらおう。葉月みたいな美女が気前よくサービスしてくれる事なんてもう二度と無いかもしれないしな」
そんな中、僕は隆作の疑問を考え続けた。いつもの自分ならこんな真似は絶対に出来ないし、考えもしないだろう。だけど、今は不思議と恥ずかしさや躊躇というものを感じない。それどころか、胸をこうして揉まれて目の前にいる男に触れられたいという思いがどんどん強くなってくるのだ。その考えの原因が酒に酔ったせいで気が大きくなっているのか、はたまた謎の声に焚き付けられたのかは分からない。ただ、分かるのは今の自分が普段と違いこの男のスケベ行為を拒むという発想は一切ないという事だ。

「あんっ。また胸を変な触り方して、ひゃわっ。こーら、あんまりお尻もみもみしないの」
「良いな~。本当に良い。死んだ女房もいい女だったけど残念なことに胸と尻はイマイチ肉付きが無かったもんな。その点葉月ちゃんはどっちも素晴らしい」
「死んだ奥さんに祟られても知らないぞ」
「思えば、12年前に女房が死んだ辛さを誤魔化すためにお前を引き取って育てたようなもんだったが、今にして思えば最高の選択をしたのかもな」
「それについては本当に感謝して…、こらっ。人が感謝の意を伝えてる時くらい胸揉むのやめろって」
「悪い悪い。つい女房のことを思い出して寂しくなったもんで手がな」
隆作は僕の体を好き放題触りまくっていた。
不思議なことに、今の僕には胸や尻をまさぐる悪辣な手もまるで小さな子供のイタズラを見守るような穏やかな心持ちで受け止めることが出来た。
僕の体を肴に酒を酒が進み、すっかり出来上がっていた
「いいよなー。やっぱり葉月の体は最高だ。美人でしかもこれだけのおっぱいとお尻を両立した女なんて世の中探してもほとんど居ないぞ。なあ、せっかくだからもっとサービスしてくれよ」
「具体的には何をご所望なんだ?」
「吸わせてくれ」
「何を?」
「おっぱいを」
「は?」
「だ・か・ら、葉月のおっぱいを吸わせてくれ!」
隆作がいきなり懇願してきた。流石にドン引きしてしまう。いくら僕が今の性別が女だからと言っても限度があるだろう。しかし、当の隆作はこちらの困惑をよそになおも頼み込んでくる始末だ。
「頼む!この通りだ!」
いくら隆作でもこんなお願いを本気でするとは思えない。そこで僕は隆作の考えがぼんやりではあるが理解できてきた。おそらく、この男は無理難題を僕にぶつけてリアクションを楽しんでいるのだろう。そう思った途端、この男の思い描く行動とは逆を行きたいという変な対抗心が芽生えていた。

完成1223

「えー。もう、しょうがないなあ」
タンクトップとスポブラをたくし上げて、たわわに実った両胸をさらけ出した。あまりにも想定外の出来事だったためか、龍作は一瞬戸惑いを顔いっぱいに浮かべたが、次の瞬間には待ってましたとばかりに僕の胸にむしゃぶりついてきた。
「んっ……」
「ちゅっちゅぷっ……ちゅぽっ……」
「んぁ……あんっ」
龍作はまるで赤ん坊のように僕の乳首に吸い付き、舌で舐め回してきた。その刺激に思わず声が漏れ出てしまう。しかし、それでもなお僕は自分でも驚くほどの平静さを保っていた。
「ふふっ。もうすっかり夢中になっちゃって。よっぽど僕のおっぱいが気に入ったみたいだね」
「ちゅるっ、ちゅっちゅ……ぷはっ。ああ、葉月のおっぱいは最高だ!」
「あんっ、こらっ。強く吸いすぎだってば」
「葉月のおっぱいは甘い味がするな。まるでミルクが詰まっているみたいだ」
まるで赤子のように一心不乱に僕の胸にむしゃぶりつく隆作を見ていると妙な感情が湧いてくる。
これは可愛い?それとも愛しさ?あるいは母性本能?正直よく分からなかった。
しばらく経つと、心の底から満足した様子で隆作は自分の部屋へと戻っていった。



布団の中で混乱に駆られてた。なぜあんな真似をしてしまったのか。あれじゃまるで風俗嬢じゃないか。恥ずかしさのあまり布団で顔を覆いジタバタと足を動かしながら悶絶してしまう自分がいた。やがて眠りに落ち、そして夢を見た。
夢の中で、目の前に青白い火の玉のようなぼんやりとした光を放つ球体の前に立っていた。それ以外は上下左右暗くて何も見えない。
聞き覚えのある声が響く。女になったときの温泉で、最期ほど隆作と一緒にいた際に聞こえた声だ。



『さて葉月。初めまして、だな。ここまで強く君の脳に干渉できるのは珍しい機会だからね。手短に行かせてもらおう』
球体から聞こえてくる声は男女とも判断がつかない無機質なものだった。
「あの、あなたは…」
『まずその疑問から答えよう。私は君の祖先に当たる存在だ。そして、毎年君の肉体を雌へと作り替えている者でもある』
「なっ、なんでそんなことを」
『それを説明するには私の正体をここで示しておく必要があるな』
そこから、僕の祖先を自称する球体は己の正体について語りはじめた。
遡ること数千年前。月には自分たち珪素生物が住んでいた。だが、ある時爆発的な宇宙線異常が起こり月は自分たちにとって安泰な環境ではなくなった。そこで、別の星に避難し命を繋ぎ止めることにしたのだ。その避難場所が地球。地球に降り立った彼らは血を残すためこの星の生物へと体を作り替え子孫を残す生存戦略を取ることにした。
地球に降り立ち数千年が過ぎた現在、地上にはいくつか子孫こそ残されているものの血はすっかり薄くなった。だが、子孫の中には先祖返りしたように血の濃い子孫が誕生することもある。それが葉月だと言うのだ。
「ま、待って。僕の体に祖先の宇宙人の濃い血が流れてることと女に毎年体を作り替えてることは何の関係があるんだよ」
『あるさ。色濃く我らの血を受け継いだ子孫でも、男の子孫が撒いた種で産まれた子よりも、女の子孫が産んだ子の方が圧倒的に我らの血が濃い血が流れる傾向が圧倒的に高いからだ。この星に入植して数千年の子孫たちの統計から得た結論だ』
「この時期にいつも女になるのは…」
『母星からの光の加護が強まり私の干渉力が最も高まるのが君たちが中秋の名月と呼んでいるこの時期だからだ。特に今年は幸運にもスーパームーンと重なり、こうして君と意思疎通が出来るほどに干渉力を高めることに成功した』
「じゃあ、僕に子供を産ませるために毎年女にしてたのか…。でもなぜ僕なの?何千年も前に入植して子孫を残してきたなら、僕以外にも血を濃く受け継いだ子孫は他にいるんじゃないの?」
『確かに私を根に持つ子孫は君以外にもこの星にいくらか存在している。だが、一昔前とは違い今やそのほとんどは血が薄れすぎているのが現状だ。次の代で完全に血が途絶えるだろう。それに加え、血の途切れかけた子孫ではどう足掻いても私を知覚できない。だが君は別だ。君には祖先のである私の血が現存する子孫の中で最も色濃く流れている』
「ぼ、僕が……?」
『葉月。私も生命である以上、己の血を絶やしたくはない。君には女性の状態で子孫を多く残して欲しい。そして、私の血を引き継いだ生命をこの星に1つでも多く誕生させてくれ。これがの望みだ』
その言葉を最後に、声は完全に途絶えた。そして、それと同時に僕は目を覚ましたのだった。
勢いよく身を起こと大きな乳房が存在感いっぱいに揺れていた。例年なら男に戻るまであと10日はかかることを思い出す。それと同時に僕の背中に嫌な汗がにじみ出た。

【投稿小説】カリスマモデル

挿絵:ツミキ(つみき)
テキスト:kyosuke

「お~いいよ!視線こっち!」
カメラマンの声に俺はポーズを取る、名は城崎 唯。高校二年生、激渋名脇役俳優で最近じゃ声優もしている父とモデル上がりのマルチタレントの母の間に生を受け気が付けばモデルをしていた。まあ不安定な職業故に断り切れない部分もあって学業の間にモデルをしている……こんな育ちなので友人は居ないが仕方ない。最もクラスメートや保護者も虐め加害者になればその後が厄介な事態になるので慎重になっている訳で……。
「う~ん、本当に女性だったら遥ちゃん二世になったのにね~」
「関さん、昔からいいますねぇ……」
真っ白のジョガーパンツに深蒼のシャツを着た唯とは乳×の時からの付き合いで母親を見出したのもこの方。母親は幾度か流産しており前の夫とは巧く行かず離婚……復帰した仕事も失敗続きで大荒れ、酒の勢いで一夜を共にしたのは当時から激渋名俳優と評判が良い父で見事に着床した。その事も知っているのも関さんだ。唯を×児の時からモデルになっていたのもこの様な事情もある……その後はマルチタレントになって成功。

カメラマンの声に俺はポーズを取る、名は城崎 唯。高校二年生、激渋名脇役俳優で最近じゃ声優もしている父とモデル上がりのマルチタレントの母の間に生を受け気が付けばモデルをしていた。まあ不安定な職業故に断り切れない部分もあって学業の間にモデルをしている……こんな育ちなので友人は居ないが仕方ない。
「う~ん、本当に女性だったら遥ちゃん二世になったのにね~」
「関さん、昔からいいますねぇ……」
真っ白のジョガーパンツに深蒼のシャツを着た唯とは×児の時からの付き合いで母親を見出したのもこの方。母親は幾度か流産しており前の夫とは巧く行かず離婚……仕事も失敗続きで大荒れ、酒の勢いで一夜を共にしたのは激渋名俳優の父で見事に着床した。その事も知っているのも関さん、父も責任をもって結婚……唯が産まれて暫くして乳×モデルになった。
「あれ?」
唯は意識が飛んだ。

つみき0531


数ヶ月後……唯は女性になっていた、第二次性徴異常成長性転換症。運が悪く健康診断時に前兆現象は出ていたが通知が届く前に発症、撮影の合間に倒れたのである……救急搬送された医療機関にて変体が始まったのだ。意識を取り戻したのは初潮の痛みだ、父も母も苦笑するしかないが中×生の弟である信は頭を抱えた。無理もない母親はかつてのカリスマモデル、兄が姉になれば……。
「ぁ~遥ちゃんが蘇ったなぁ」
関は感慨深げに言う、ロングヘアになり胸と尻も出て腰は引き締まる……ノースリーブのへそ出し深蒼シャツに真っ白なジョガーパンツ姿はまさに……世話になっている事務所も引き続き世話すると鼻息荒いし唯はため息をつく。最近は母親も体の引き締めを始めておりモデルにカムバックするとか……お願いだから弟の健全な発育の為にも止してほしい。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第四十四話 配慮する時代

作 kyosuke

会議室に徐々に出演者に撮影、衣装に道具の面々も集まり始めた、若手に混じり東京の各TV番組には中々見かけない方も居る、一昔こそ俳優か芸人で引っ張り蛸だったが今は自身や関係各位の諸事情で地方局での番組のみやLラインを初めとするSNSを使用する自身のチャンネル配信をメインにしているのが殆どだ。朝陽にして見れば大先輩ばかりだ。
「久々井の倅かぁ……聞いた時には驚いたぞ」
「一ノ瀬さんもお変わりなく……」
作品のもう一つの主役である“デコトラ”とそのドライバーらを束ねるのが一ノ瀬 戒、この作品の一作目には彼の父親が出ており今回は裏方の一人としての参加である。
「一ノ瀬さんの所もたしか」
樋野 翔が尋ねると戒は言うなりスマホを操作する。
「玲さ……問題無く通学はしている」
「……名前知らずにちょっかい出して来た輩って出てますかね?」
スマホの画面を見た翔は薄ら笑いをするのも無理はない、未成年者と分かっていてもモノにしたいのだ。その末路を察する事も出来る。
「迅社長も出るんですね?」
「うむ……越知の所もでるしな、後は老舗の所も……」
デコトラを仕事車として使う会社も出演する事になり、社長らは上遠野監督と話している。朝陽もトラックイベントに訪れた際に何度か声をかけて貰った面々……。
「そろそろはじまるのぉ」


上遠野監督の挨拶に始まり主演俳優二人の挨拶が済み、次は朝陽だ。
「蒼島 叶恵役のモダンガールス事務所所属久々井 朝陽です、よろしくおねがいします」
視線がスゴく感じる、やはり監督の我儘は全員把握している訳だ。因みに朝陽の役は主人公である蒼島 一輝の歳離れた妹役であり蒼島家も少々訳アリな設定だ。マドンナ役は作品ごとに演じている女優も設定が変わる、今回は“お龍”と呼ばれている須藤 龍子……これを新瀬 翠さんが演じる訳だ。
「スーちゃんは中型までだったな」
樋野 翔が尋ねると彼女は言う。
「……ATもMTも大丈夫よ」
彼女はある番組企画で中型トラック免許を取得したが協力してくれたアートカンパニーの若社長と馬が合い結婚、人気に陰りを感じ東京から離れた……とは言え女優としての腕前と信頼度は健在で時折難しい役を引き受けたり、代役も引き受けているがそれ以外は事務所にてトラックの運行管理と義弟が主催しているプロレス団体の仕事をしているので時には彼女はリングと観客用パイプ椅子を満載して興行場所へとハンドルを握る。
「須藤 疾風を演じます、浜屋 正之です」
確か関西シャイニングに所属している若手の一人だ、朝陽も前の事務所に所属していた頃に何度か収録場所で見かけた事がある……最も関西シャイニングは東京に拠点を構えるシャイニングの関西支店と言うよりは別事務所に近い。彼が演じる疾風はお龍の弟でありドリフトに夢中であるがストリートの方で一輝との出会いも交通トラブル……。
「ドリフトを実際にするのか……どうなんだ?」
「サーキットなら問題は無いですがね、公道はやはりプロに任せたいのです」
翔も分かる、ドリフト競技を見た事があるがしくじると廃車にもなりかねないのだ……。しかも時には負傷する事もある、F1やSUPERGT並のレギュレーションや保安基準に制定された事で減少しているが未だにストリートしか走らせない不届き者も居るのも事実だ。シナリオでも疾風を更生させる筋書きにしている。
「正之、ラブシーンは初だよな」
「はい?」
「朝陽もそうよね……」
二人が顔を合わせた……大変な事になりそうだ。総合プロデューサーは言う。
「久々井さんと浜野さんには映画PR企画として劇中使用の車両を紹介する動画撮影ロケもお願いします」
「「はい?」」
朝陽と正之は途惑う、確かに今やスマホが在れば撮影もできるのだが……ほぼ初対面である二人に別の仕事をさせるには丁度良い。
「最初は一ノ瀬運輸の社長車で大丈夫ですね?会長?」
「問題はない」
この分だと既にスケジュールは決まっている、二人とも其々のマネージャーに視線を送る。




翌日、ロケバスにて三沢市郊外にある一ノ瀬運輸社屋に到着。撮影に関しては本職の方々に任せつつも二人にもスマホでの撮影して貰う事に……朝陽は迅とは何度も逢っている。
「朝陽ぁ……はぁ、これはまた」
迅も朝陽の事は把握していたが……うん、玲の様に巨乳だったら危なさ倍率ドン。父親も引退させただろう……。
「どうしてこんなガードを?」
「ああ、ブルバーは北欧で発祥したんだ……北の方は北極圏にかかる。北欧では広大な森林地帯に都市が点在する形が多く道路に野生動物が横切る事も珍しくない……都市と都市の間で野生動物との衝突は自動車に深刻なダメージを与えこれが冬季ならドライバーが遭難死だ、豪州のロードトレインにもアニマルガードが必須なのも同じ理由さ」
日本の場合は野生動物との衝突よりは路上に落下した障害物対策だ。急ハンドルを切れば横転する事もあるし、高速道路なら排除するには専門の職員の到着を待たないといけない。除去する時にも命懸けだ、それ故に運送業者には積荷のしっかりとした固定を求められる。
「日本でも山間部を連なる谷間区間で鳥と衝突してラジエーターが破損した事例もあるが頻発はしてない」
「……」
絶句する正之に朝陽は笑いつつ言うが表情は笑っては無い。
「おとーさんなんて独身時代に10t単車に乗っていたけどGSで休憩して戻った時にトラックの下部に子供二人が潜り込んでいてね……サッカーボールが入ってね、一人とっ捕まえて怒った訳よ……で、その保護者が警察と一緒に来て一悶着……GSの監視カメラの映像見て納得して貰えたけどね……だって動かしていたらお父さんは前科者確定だったからね、それで納品時間に遅れてね……」
この一件もあり乗り込む前には周囲を見る様にしていると言う。黒馬運輸を初めとする大手流通業トラックには児童向けの注意喚起ステッカーを車体に貼り、新一年生を対象にした交通教室にも社員を派遣したりとしているが……時折ヒヤりとした事例は聞く。
「撮影する箇所は……」
朝陽はメモを視つつもスマホを確認していた。芸能人の場合複数スマホを持つ事になる……私物の他にも所属事務所名義、更に番組が用意したモノも持つ事もあり朝陽が持っているのは所属事務所名義だ。
「(デコトラ撮影している方の動画を見たけど巧くいくかなぁ)」
朝陽は無暗に撮影はしないがその分スマホでの撮影は慣れてない……撮影によっては一発勝負にもなりえるから幾分顔を知っている一ノ瀬社長の所が最初なのが幸運と言うべきか……。
「(う~それにしても視線がぁ)」
朝陽は作品内で使用するセーラー服姿である……トラックドライバーでもベテランの域に達している年齢層ならストライクだろう。ブレザーの案もあるが監督としては譲る事はなかった。



「“トラック一路星”に出るんだ、一ノ瀬社長も」
宗介はスマホに表示された社内報を見て言う、商売上製品が多数出る映画やドラマになると広報部も動くがそれは宗介が所属している部署も何時お呼びがかかるのか分からない。競技車両部門だが移動整備事業もしているので社員が中型や準中型、大型貨物免許を所得している確率が高いのだ。
「うん、祖父も監修者の一人で参加しているから……宗介兄さん♪」
玲は夏季セーラー服姿だがノースリーブで脇所か横から胸が見えてしまう。そして腹が完全に露出、下着は紐パン……これをロリ巨乳中学生が着ればどうなるか?
「……玲、溜まっている?」
「はい♪」
ここ最近は仕事で相手出来なかったので宗介も応じると玲は歯でスラックスのジッパーを開け前のボタンを外すと肉棒が出て来る。D1には三沢自動車はワークス参加してないが競技に必要なベース車両を提供しているドライバーが何人か居た様な気がした。
「(まさかなぁ)」
この分野は現行車よりも中古車の方が都合が良い場合もあるし、トヨタや日産の方がドリフト競技向けの中古車が多い……とは言え数には限りがあるのも事実だ。
「うぁ、雄の匂いだぁ」
嫌がる事は無くその匂いは雌の本能を刺激している。玲は舌で宗介の肉棒の先を舐め始めるとアッと言う間に咥える。
「!!!!」
必死に自分の従順さアピールしている、最早脳が男性器の味を知っているのか……大人の事を知っているからこそリミッターが外れているのだ・
「ったく……」
ベットに座っていた宗介は起用に動きフェ〇最中の玲をベットの上に誘導、そのままシックスナインに。
「濡れているなぁ」
無毛な痴丘から愛液が滴り舌で濡らす必要が無いが……玲を一人の女として扱うと言う事で指で軽く解し舐めると声を上げる、フェラを中断したのも噛んでしまう事を恐れて……。
「騎乗位でね」
宗介に見てもらいたいのだろう仰向けに寝ていたのでそのまま玲は肉棒の上に秘所を付け腰を落とし始め、柔らかくも吸い付く女壺が肉棒を飲み込んでいく。
「ゆっくりな」
「うっ、うんぃ」
玲の顔は雌になる……幼さを残しているが何処か色気もある。性転換症による精神不安定さから異性を求めやすくなるのは発症後から数年で徐々に落ち着いて来ると言うが個人差がある。それ故に発症者は成人年齢の前に懐妊する確率が高く、不遇世代の中には出産した乳児を売ったと言う人も少なくはない。
「宗介さぁん♪」
キスをするなり舌を絡めてくる玲、やはり大人が相手なので気を使っている。
玲をイカせるにも苦労するがまだ中学一年生だ、どんな女性になるのか末恐ろしくなる。




「……」
楊博士は新設された研究所の所長室にて無言になる。来訪者はある大学病院の外科医で全身大火傷の患者を担当しており電子カルテを見た楊博士は口を開く。
「楠瀬 菜緒のケースもな奇跡だ、ナノマシン治験は重篤な副作用を齎す確率が高く最悪死亡する、再生ナノマシン治験は危険過ぎてアメリカじゃ州によっては裁判沙汰だ」
「存じてます、ただそれは治験者とは無縁の市民団体が起こしている案件です」
「確かにな……彼女の場合はナノマシンの影響が何処で出るのか……患者本人は?」
「本人は既に生存気力を損失、ただ身内は生存を望んでいます」
「良くて性転換発症だ……最悪死亡だ」
「それでも……」
患者が事故に逢った遭遇が余りにも不運過ぎる、それは楊博士も主治医の立場であれば分かる程だ。患者はバイク運転中に前方で起きた衝突事故で漏洩したガソリンにバイクを転倒させ火花が引火、直ぐに消火されたが全身大火傷に近い……偶然にも病院に戻る途中のドクターカーが来て応急処置をするも家族に最後の別れを与え死亡時刻を遅延させる程度、普通なら……。
「事故を起こした加害者らの身内がその日のうちに彼をナノマシン治験対象にねじ込んだって言う事か……君も妙な患者を引き受けざる得なかった」
「楊博士も人が悪いですね」
「アメリカで医療の仕事をするには大変だかな、同情はするさ……別ルートからの圧力が来る前にな」
楊博士は直ぐにデータのやり取りに必要な手続きをする事にした。手間が掛かるが国連とWHOまで絡んでくるのが性転換症発症者のデータだ。
「うん?」
訪問者の外科医のスマートウィッチが点灯し彼はスマホを見る。
「……急変した」
「発症か?」
患者は17歳……成人年齢は各国によって異なるが20歳を過ぎれば発症しない、ただし確認されてないだけで20歳以上での発症もあるとも言われている、これは少数民族や僻地を持つ国家は調査が追いついてない所も……。
「データは許可が下り次第届ける」
「ありがとうございます」
外科医の男は頭を下げた、ナノマシン治験を実施している研究機関はこうなる事を前提に治験を持ちかけているとしたら問題になるが、どの研究機関もそれを監督管理する国家も隠蔽するだろう。駐車場に止めてあった愛車に乗り込む……そしてノートPCを開くと直ぐに通話状態になり同僚が出た。
「どんな感じだ?」
「ー典型的な発症です、既に専門医が対処してますー」
「……そうか、外科医としては手は出せないな」
「ー主治医としてはどうでしょう?ー」
「……それはないな、系列にトバされるからさ。間もなくな」
「ー!!ー」
同僚は驚くも原因は分かっていた。
「なに、あいつらがミス起こした時に後悔しても遅いさ……医療の世界はリスクが有り過ぎる事は学生の時に理解できてない奴が多過ぎる、きるぞ」
外科医の男性は通話モードを終了させた……左遷先がここなら良さそうだな。




「楊博士からデータ提供!勝手な事を!」
「……こうなってしまう事を彼は分かっていたのですよ、神崎君は昔から段取りが良かったから地方系列に左遷するには惜しいですね……」
大阪郊外にある医大付属病院のICUにて二人の医大教授が会話をしていた。全身大火傷の男子高校生がナノマシン治験を開始して一年が経過……性転換症も人為的で副作用になれば医療ミスで主治医の責任にもなる。
「楊博士が知っている方は“医療ミスにしないでください”と理解がある患者さんだったからな……入院期間が一年も過ぎれば身動き一つ取れない状況でも分かって来る、少なくとも男性器の欠損は理解していた様だ」
確かに尿道への管の交換の際に分かってしまうのだろう……。
「これからが大変か」
「ええ、君には癪に障るが彼女に任せるしかないさ……定年退職までカウントダウンしたいのならね」
如何にも人当たりが良い風貌の教授は医大生時代から付き合いがある同僚教授に告げ、彼は舌打ちをするがそうしないと経歴に傷が残る。
「本当に政治家に転身した同期の頼みって言うのは断れないか……」



「蒼乃教授……本当に難しい患者さんを押し付けましたね」
「外科医よりも君の方がまだ心情を理解できるだろう……性転換症発症した君ならね」
「不遇世代でインターナショナルスクールに放り込まれて医大に入った異端ですよ?辻教授の横槍が入るのなら……」
「辻教授とは話が付いている、瑞樹君の治療は終われば良い結果になってますからね……」
「なら、対応しますよ……何時もの様に荒療治になりますが」
瑞樹 遥はニコっとすると恩師でもある蒼乃教授は笑う、彼女の様な人材は貴重だ……年齢的に言えば“性転換症発症不遇世代”に該当する。彼女の場合も地元の中学校から通学拒否され自治体も不登校児支援施設で対応に動いたが両親が激昂、双方の職種が“国防軍士官”と言う関係上在日米軍基地内にあるインターナショナルスクールに通学させたのである。国防軍士官学校は回答が難色を示されたからだ……彼女が医大進学の時に事の重要性を理解した地元中学や自治体、文部科学省が蒼褪めた時には時すでに遅し、泥沼裁判を回避したい為に通学費用負担で手打ちに……士官学校の一件に関しては上層部の検討課題と言う落とし前になった。
「患者の御両親は?」
「来て貰えないな……まあ、弁護士と伯父夫婦が来る」
「……本当に訳アリ患者なんですね」
遥は呆れ顔になる、こー言う人種の大人が自分を中学から遠ざけたと思えば安楽死を提案するが……倫理と人情がそれを止める。


「……本当にお恥ずかしい話で申し分ないです」
「いえ、患者のこれまでの事を把握すれば幾分楽になります。弁護士先生の同席されてまでの対応……」
伯父夫婦は遥の言葉に棘があるが仕方ない、本来なら実の両親である弟夫婦が来るのが良いのだが……親の都合で戦略結婚したから夫婦生活が順調ではない、全身大火傷した甥っ子は“血が半分しか受け継いでない”のだ。簡単に言えば弟の嫁さんが不倫していた。遥も患者本人の血液型では両親の血液型とは不自然と察してはいたが再婚では無かった。
「彼の兄も姉もデキる子だったので期待をされたのですがお受験で失敗して……それで私の所で過ごす事が多く、私も妻もバイクが趣味でしたから興味を覚えて……高校生になった途端に」
「……原付では物足りなくなっていくのも分かります、私も免許持ちですからね。大型の」
遥のバイク歴は高校時代からで今の愛車は大型バイクに該当する車種でメーカー純正ジムカーナバンパーと専用キャリア&車載バックを装着……医大学生時代に緊急医療支援隊の一員として先行で大規模被災地にて活動した事もありバイクで被災地に点在する避難所での巡回医療の助手をした。
「……その」
「大丈夫……今はどの学校も通学拒否したら制裁が凄い事になりますから、モンスターペアレンツには弁護士同席ですからね、私の学生時代では考えられない程に。それなのに実の両親が来ないのは……」
「何か不都合でも」
「名前です、女性の名前では不都合なんですよ……高瀬 博樹では」
「「あっ」」
「実の両親の意見も大事ですからね……夫婦間で何があったにせよ、娘としての人生を歩ませる為にも来てもらいます」
弁護士先生はため息が出そうな表情になりスマホを操作する、噂には聞いていたが患者の家庭事情もお構いなし、ただ情報出ずに手遅れになれば患者もその家族にも不利益になる……医者の領分では解決できないのだ。弁護士先生は職業柄、治療に関わるトラブルは法学部時代から実例を飼料で見て来たから分かる。名前を改名する事もハードルが下がっており特に性転換症発症者の男児/少年は女性の名前では無理な場合は改名する様にしている。裁判所や司法に見捨てられた不遇世代の中には未だに所在が掴めてない方も正確な人数は把握しきれてない。死後になって他人の戸籍を使っていた事も発覚した事もある。
「とりあえず、彼が眼が覚めるまで数日あります……何でしたら彼の自宅に自分が出向いても……いいのですよ?精神ケアが不完全のまま退院されたら困る事になりますからね」
言葉と表情からしてこの女医ならやりかねない……。


「高瀬 晴樹の父親をしてます、智樹です。こちらは博子です」
弁護士先生の連絡で駆けつけてくれた博樹の両親に双方の親……これには伯父夫婦の助言もあったのだろう。数時間後に訪れて改めて説明となった。
「まず、博樹君の場合はナノマシン治験により性転換症発症が起きてしまった言う事です……運良く」
「??」
「ナノマシン治験の問題に残留ナノマシンによるエラー作用があり、呼吸器系に致命的な損傷を与える行動も……」
「死亡していたと」
「はい……ナノマシン治験も各国でやってますけど副作用も少なからず出てます」
これは新興国での治験もあるので一概には言えないが……全身大火傷の患者が出る事自体は先進国では希なのだ。
「治験と言っても人体実験ですからね……性転換症発症になったとしても不思議ではないのです」
遥はある本を出した、人名辞典である……。
「本人の意向を尊重してくださいね」



「高瀬 晴樹さんですね……落ち着いて聞いてください。貴方の身体は女性になってます……治験用ナノマシンによりウィルスが活性化した事が原因です」
晴樹は頷く、気が付けば見知らないトイレにて便器に座り違和感を感じた……ある筈の雄のシンボルは無くウラ物で見た雌の秘所が見えたのだ。更に便器を見ると流血していた。悲鳴と同時に来たのが目の前に居る女医である瑞樹 遥、作務衣みたいな服装にネームプレートをぶら下げたショートヘアの方だ。
「これって、まさか」
「初潮ね……」
項垂れるが自分は身動き一つ取れない状況である事は把握はしていた……そして男性器が無くなっている事も。
「そして君は女性になっている」
それは博樹にも分かる、小振りであるが自己主張はしている胸と尻は検査着からも分かる……セミロングになっている髪の毛、何よりもアレが無い。
「元に戻れないですよね?」
「今現在の研究でも再性転換は死亡する確率が高い……例え死亡しなかったとしても生殖機能が無い大人が出来るか重大な後遺症を齎すか……お隣の半島国家はこの大規模治験をした結果、性転換症研究が事実上できない」
遥は話しつつも博樹を見て言う。
「日本国が再性転換の研究に二の足を踏んでいるのはこれが理由だ、余計に医療事故を増やすよりは発症者を女性として認め戸籍上の性別変更を認めた方がプラスになる。私が学生だった時にして貰えたらよかったのだがね」
遥は自身の言葉に皮肉を感じた……自分の両親は随分と良い落とし前を貰えた訳だ、最悪国外でPMCをしていた可能性すらある。


「名前?」
「ええ、博樹じゃ男性名になるからね……性転換症発症者は改名も認めているって……」
健診が終り久しぶりに両親の顔を見れた、ただ何時もは険悪な表情しか見た事はないが何処か気まずい雰囲気の表情は見た事はない……。
「……一二三ってどうかな?」
博樹は頷く……すると母親は言う。
「……この際本当の父親を事を教えて置くわ、お父さんの一族は国会議員を支援しているのは知っているよね?実家隣に住んでいる方が国会議員の地元で支援者の取り纏めをしている……」
そうだ、お盆や年末年始に帰省した際に孫の様に可愛がってもらっていた感じが良い老夫婦が居た。
「その国会議員が……」
「違うさ、あの方は“人妻が他人の男に孕まされる光景”が好きでね……博子もそうなった、一二三の“遺伝子上の父親”はこいつさ」
写真を出す父親の表情は呆れる、その国会議員は解散総選挙でも堅実な選挙戦で議席を防衛するも数時間後祝勝会のハシゴの最中に会場になった料亭のトイレで倒れ永眠、今は一二三の祖父母も政治活動とは距離を取っている様だ。
「地元で活動している支援者の一人……悪い噂が少々あるが、腕と会話上手で先生のお気に入りだった、だが一二三が産まれる前にバイク事故で死んだ」
「!!!」
父親は写真を取り出し指を指した先には少々柄が悪い男性だ。
「丁度その国会議員の周辺を探っていた連中を合法的に警察に押し付けたからな……故郷は人気が無い所は幾らでもある、専ら報復されたってね」
父親は苦笑するしかない、女に関しては何時警察沙汰になっても不思議ではない程酷かったのだ。ただバイク事故と言っても単独では無く追突事故であるが加害者とその車両は発見する事は出来なかった。発見された時も事故発生から可也経過した上に推定される発生時刻時前後には降雨により加害車両を特定出来る手掛かりになる破片は流されていたし、事故現場は山の間を通した道……防犯カメラも期待は出来ない。被害者に恨みを持つ人が多過ぎるのと国会議員が絡んでくる事もあり、迷宮入りである。
「……」
「大丈夫だ、親父らも支援していた議員が嫁があんな事になれば距離を置くしな……寧ろ警察や週刊誌にも黙っていて正解だったさ。今の先生は野党だが地元の声も聞くし変な事をしてないしな」
祖父母が支援していた国会議員の陣営は空中分解を起こした。主を死に追いやった事に関して責任の押し付け合いで葬儀の後も荒れたらしい……。


「学校は休学状態にしているわ……」
「?」
「加害者らと同じ母校なのよ、助かる可能性があるのなら学籍は残しておくって
……」
どんな形でもと言う事だろう……一二三はハッとする、学生服は……。
「暫くはスラックス着用も認めるって、性転換発症者の受け入れは初めてになるからね。トイレや月モノの付き合い方やら教える事がたくさんあるわ」
一二三は笑うしかないが漸く親子らしく接してくれるのは事実だ。
「バイクの免許は?」
「体力テスト次第ね……もしかすると取り直しかも」
遥はニッとして言う。無論先程の会話を弁護士先生と共に聞いていた。
「バイクは伯父夫婦が引き取ってレストアしている……」
「!」
「……こうなる可能性を信じてね」

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第四十三話 女としての覚悟

作 kyosuke

翌日、玲は明日の始業式に備えて制服と通学鞄を取り出し準備をしていた。直ぐに文化祭の準備が始まるのだが気が早いクラスでは既に夏休み期間で段取りを進めており、玲のクラスも例外ではなく……漏れ聞いた話ではサテンに落ち着きそうだ。変に拗れると後々の学校生活にも影響がある事は事実。
「よし、これでOK」
生理用品を入れたポーチを開けてナプキンの補充もしておく、コンドームを入れているのは何となくである。何しろ自分も含めて性行為経験者が多いので高校卒業までは懐妊は避ける。
「後は……浩太の所に行って」
玲は愛用のリュックサックを持ち出かけた。浩太の忘れ物を届ける為だ。



佐枝家は集合住宅が集まっている地域にあるマンションだ、元々炭鉱住宅が並んでいたが閉山当時は老朽化が見られたので解体、三沢自動車本社工場に自動車関連企業の進出により多数のマンションとアパートが建設されている。無論炭鉱住宅でも炭鉱末期に建築された故に状態が良いモノも引き続き“文化住宅”として使用されており閉山後に元従業員が買い取ったケースも多い。
「届けに来たの……浩太に行かせようと思っていたのに」
真奈美は呆れ顔になるが昨夜弟の死屍累々な表情を見れば仕方ないと思う……今でも爆睡しているのだ。
「あがって……」
「はい、あの衣装ありがとうございます」
「いいのよ……リサイクルに持って行っても処分されるだけだからね」
真奈美は少々申し訳ない表情になる。すると玄関チャイムが鳴り直ぐにドアが開いた。このマンションはエントラスはオートロックが無いタイプだ。
「浩太ぁ!あそぼぉぜぇ!」
玲が振り向くとその少年はキョトンした。背丈は頭一つ大きいが何よりも胸が大きい事は衣類からでも分かる……彼は迷っていると真由美は言う。
「彼方……一ノ瀬だよ」
「えっ」
「性転換症発症してね……無理もないか、時々登下校が一緒になった程度だしね」
玲の言葉に樋垣 彼方は思い出した。
「浩太、昨日の追い込みで未だに寝ているし……そろそろ起こさないと」
真由美は告げると部屋を区切っている二段ベット上を梯子を使ってのぞき込むと浩太は寝間着を脱ぎかけている状態で寝ていたのだ。恐らく二度寝状態だ。
「玲……浩太のモノって大きい方?」
「……さあ」
当然男児パンツは朝の勃起状態であり肌色の朝顔蕾は飛び出ていた、真奈美は思わず玲に聞いたが困惑しつつも視線は釘付けである。


暫くして浩太が起きたので真奈美は準備して置いたフレンチトーストを焼く、浩太も起きたら姉や彼方が居るのは昔から多々有るので納得したが玲が来る事は初めてずっと真っ赤である。無理もない……恥ずかしい姿を見られたからだ。
「……浩太、俺だって朝に固くなっているって」
「そうなのか?」
「私も発症する前は朝起していたからね……それに異常に疲労感があると生存本能で起つ事もあるし」
玲の言葉に真奈美も薄ら笑いをしつつもフライパンで焼いているフレンチトーストをフライ返しで皿に移した。TVリモコンを操作して録画していた番組を見る。
「彼女も性転換症なんだよね……」
画面には女子制服を着た久々井 朝陽が事務所先輩アイドルらと共にトークをしていた。本当に元少年とは思えない程の可愛さだ。


「…映画に」
「ええ、久々井さんの事情は先方さんも十分承知している」
モダンガールス事務所の一室にて陣堂 英玲奈はニコっとして朝陽に企画書を渡す、トラックドライバーを主体にした作品で朝陽の役は主役の妹役だ。
「一ノ瀬さんや越知さんの所も協力しているんだ」
「そっか、知り合いなんだ」
朝陽としては端役でも断る事は無い、普通ならオーディションだ……。
「元々は別の子を出そうと思っていたけど……ね」
「例の騒動の一人」
「そう、かといって他の子は演技力や経験が余りにもない。久々井さんなら前の事務所で幾つか出ているよね」
「端役のみだったけど」
セミロングの髪は揺れる……やはり後ろめたさもあるが母親の入院費や今後の為にも断る訳にもいかない。
「やります」
「そうこなっくちゃね!」
迷っていた眼から覚悟を決めた眼になる朝陽を見てニッとした。少年の時から変わっては無い……。


「久々井 朝陽です、初めまして」
「監督の上遠野です……本当に出演を受けてくれてありがとう」
「……どうして私にこの役を?」
初対面の朝陽も額の皴の多さで可也の高齢と分かる。撮影所の食堂にて顔合わせになったのはスケジュールに空きが生じていたのだ。
「なに、君の御両親には色々と世話になってな……私もこの作品で映画監督業を廃業するから一人ぐらいはねじ込めた訳だ」
朝陽は薄ら笑いをするしかない、母親がアイドルをしていた事は幾つか聞いた事があるのだが……大方墓まで持って行くレベルであろう。
「……」
それでも朝陽の顔を見ると申し訳なく戸惑っている表情だ。


数日後、朝陽は映画スタジオに来ていた……顔合わせを兼ねて台本の通しの為だ。早めに来ていたのはスケジュールに余裕があるのと同時に配慮して貰った、会議室に入ると新瀬 翠は台本を見ていたが物音で朝陽に気が付いた。
「朝陽君、じゃなかった!うぁ……女子高生だぁ」
「大丈夫です、御無沙汰してます」
マドンナ役の女優さんとは小学生の時にシャイニング事務所時代に共演した、息子の様に可愛がってもらいそれ以来に年賀状や暑中見舞いのやり取りは欠いた事は無い。
「本格的に映画出演になるんだよね……」
朝陽の演技力には驚かされるがステージママの存在が足枷になっており苦労していた事は彼女の耳にも入っていた。皮肉にも事務所移籍でステージママを辞めざる得ない本当の理由も知っている。
「“なんちゃって学生夏服”?これ?」
「はい、着慣れて置かないと」
性転換症発症者にあるのは衣類の戸惑いであり朝陽は着用しているのも女子高校生らしい服装だ。
「通学先はスラックスでも大丈夫よね?」
「はい」
彼女は苦笑しつつも朝陽と話していた、これも女優としては仕事の一環だ……。
「よっ、スーちゃんに……朝陽か?」
主演の樋野 翔が来た、俳優と言うよりはマルチタレントで下積み時代が長かったのか4t車~10t車の免許を持ち自身も趣味車を持つ。
「翔さん、よろしくお願いします」
「シャイニングとモダンの社長から聞いた時にはびっくりしたが……妹と言うよりは娘って感じだな、朝陽は」
「「……」」
かりゆしスタイルの翔は苦笑しつつも机に鞄を置く……。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第四十二話 秋の足跡は遠くに響く

作 kyosuke

日下部道場の夏の終わりは小学生らの苦悶の声が響く……夏休みの課題と言う名の強敵である。玲もリーナ、隆士は其々の両親の躾の良さと当初からこの様な光景を目の当たりにしたので夏休みの宿題である計算や漢字の副教材は期日まで終わらせていた。
「玲は高校はどうするんだ?」
「兄が通っていた北高に」
三沢市立北高の事だ、共学で商業科と工業科があり、達也は通称南高と呼ばれている三沢市立南高に通学、これは三沢自動車本社工場に関連企業の支社や工場の増加に伴い創立された高校の一つでこちらも工業科がある。
「女子高とか考えてないのか?碧丘女とか」
「無理、学力高い」
戦前まだ炭鉱で栄えていたこの市に創設された碧丘女学校が前身で戦後の教育制度改正により高等学校として改名したのが碧丘女子高であり、日菜子の母校でもある。玲の言う通り三沢市にある高校では学力の高さはトップ3を維持している。最も玲の場合は女性だらけの所では精神面では不安定になるので今の段階では考えては無い……とは言えリーナなら進学する可能性はある。
「浩太、生きている?」
佐枝 真奈美は縁日から声をかける……午前中は就職時に有利になる資格取得の勉強で高校に登校して帰宅、途中で母親からのファミリーLトークで玲に自身のお下がりを渡す事を知ったので何となくだがここに来た訳だ。転校生の橘姉妹が兄と同じ道場に所属している事は知っている。
「真奈姉……浩太ならあの通りです」
綾美の言葉通りに視線の先には座卓に凭れ掛かる浩太、この時期は死屍累々の小学生が多く浩太もその一人だ。
「橘さんらの来ていたんですか?」
「はい」
「こー言うのもボランティア活動になるからって……」
礼も汀は前の高校で経験しているので理解を得ている。
「浩太、中学でも大丈夫かな」
「集中力が無いって言うか……ずっと綾美ちゃんの方見ているんだよね」
汀の表情で真奈美は悟る、自分もよくする表情だ。
「もしかして……意識しているかな?男女の事で」
玲は言うと真奈美は頷く、綾美ちゃんも小学五年生にしては胸が大きい方で一学期の時にこれが発端で浩太がクラスメイトと喧嘩になり相手の保護者と少々揉めた、真奈美も把握しているのは浩太の担任が小学校時代の恩師でもある。この時は偶然別件で来校していた隆士の父親である日下部先生が対処してくれた。以前からからかいが度を過ぎている事を知った途端にその男児の保護者に釘を刺したのである。中学や高校で警察沙汰になる子は大抵小学校から問題がある事が多い、これ以上問題がある児童が増えない事を祈るばかりだ。
「と、なると玲にも意識していると……」
「はい?」
玲はキョトンした声と表情になるが直ぐに達也の言葉を理解した。
「浩太の奴は玲の事は慕っていたしな……」
身近な兄貴の一人って言う感じで浩太にとってみれば憧れの人に近い。彼も性転換症の事は特別授業で把握はしたが玲の事を聞くとやはり大変らしい……特に人との付き合いに変化が生じる。浩太も異性を意識する様になり綾美を初めとする幼馴染らと接していると玲に再会しても大丈夫なのか迷っていた。
「真奈美もバスタオル一枚でうろつくと意識はするさ」
「そうなの?」
真奈美は素っ気なく言うとリーナはジト眼になる。本当にこのスタイルの良さを自覚してないのか……。
「それよりもお腹すいたなぁ」
「カレーライスならあるよ……」
「なんで?」
「自由研究で焚き火で調理してみるって言う子が数人でね……それなら日菜子さんが居るし、ここで出来るからね……」
カレーライスの材料も機材も持ち込みである、流石に直火では危ないと言う判断もあったのか焚き火台があり、万が一に備えて消火器も置いてある。
「味は保証するよ」


阿賀野商店倉庫内部にて保管されていた曰く付きのコーンスターチが入った袋を積み終えた。出発は明日の夕方、八郎がワンオペ運行出来る距離であるが事故遭遇状況次第では粉塵爆発する量だ……しかも遺伝子組み換えトウモロコシを原材料にしたコーンスターチは阿賀野商店の倉庫に保管されていた量は少ない方でトレーラー一台で済んだ、他所は10t車数台……可也の量が持ち込まれていたのは知ってはいたが。
「映像データ複製完了」
「無料じゃ悪いからな」
阿賀野社長は手には箱入り地元銘酒を手に持っており真央に手渡す。運送会社とあって丁寧に保護梱包されている。
「何時もありがとうございます」
「納品を早めてしまった侘びで……」
阿賀野商店のカーテンサイダートレーラーの切り上げ納品になったが電飾で真央の祖父と父親は色々と資料を揃えて検討している最中で煮詰まっていたので丁度良いタイミングだ。
「旦那さんはもう直ぐ来るのか……」
「はい、引き取りの新製品もあるので……」
真央は数年前に結婚している……夫の 瀬河 進一は真央の過去を知った上で妻として迎え入れた。進一の両親は当初は困惑したが過去の交際相手は何れも結婚に踏み切れずに別れた経緯がある。職業がネックになっているが真一は高卒枠で就職した会社にて派閥争いに巻き込まれ婚約寸前の交際相手にも危険が及び別れた……進一も逃げる様に退職し今の会社に就職、それが雅屋である。普通免許のみだったが職場環境を見て自身も準中型/中型解除、同時期に真央も大型貨物の解除を目指していたので同じ自動車教習所に通学していた事で接近……自然と交際して結婚に至るのは当たり前で彼の両親も承諾した。
「まぁ、進一さんもすっかり慣れたなぁ」
「あの人はオフィスワークよりも運転が好きなんですよ……」
一昨年には大型と牽引免許を解除しておりカーテンサイダートレーラーの納車も彼の仕事によるモノだ。
「で……要望とかあります?」
マーカーのカタログを数冊出す辺りは流石と言うべきだろう。敢えて冊子形態にしているのは顧客の多くが電子端末を苦手な方が多いのだ。それ故に真央が持つ鞄は常に大きいサイズだ。
「おっ、来たぞ旦那が」
真央は一礼して倉庫の外へと出ると一台の大型トレーラートラックが停車していた。新品のセミローローダーだ。確かドイツ製の建機搭載用である。
「買ったのか……」
「はい、大型ダンプなら積載出来るって言いました」
自走不可と言う状態になっても珍しくない。阿賀野社長も年に数回は同業者から聞く話だ。真央を見送る三人は思う……彼女には幸せになって欲しいのだ。




翌日、今日も夏休みの課題追い込みをかけたい小学生とその保護者らの姿を日下部道場で見られた。今日も浩太は追い込みの最中、これでも一年生の時には全くされてなかったと言う事を思えば今日中に終わるのは進歩とも言える。
「……すごく、ギャルっぽいって言うか」
「うん、友人と付き合いで買っていくうちにね」
露出度が凄いと言うのが玲にも分かる。これはコーディネイトが難しい……父も兄も少々堅苦しいからなぁ。段ボール満載された衣類を抱えて来た真奈美も中学生だった時の自分の派手さは今では恥ずかしい。確か中学二年生の春辺りから胸が目立ち始めており友人の一人と共に強姦未遂になった時にはここの道場の門下生らが駆け付けて大乱闘……警察官が来た時には不届き者は全員戦意損失、この後は加害者側の雇用先や学校やら保護者や真奈美が通う中学校側やらの後処理がウンザリする程長引いた。それ以来シックな服装に心がける様になった。
「玲ちゃんなら空手もしているから着ても平気かな~って思ったけど」
「コーディネイト次第ならイケるわね」
リーナは一着を手にして言う……あんまり子供ぽい服装じゃ宗介も苦労する場面もありそうだ。かと言って堅苦しいのも、また困る事もある。
「日菜子さんがお嬢様だったからこの手の服装には無縁だったし」
リーナの言う通りで大学時代の写真を見ると大人びた感じでよもや学生結婚するとは思いもしなかった。
「そうね……」
この場に居た日菜子も納得する、玲はこの前までは息子だったのだ。



数時間後、越智運送の先代社長であり越智 雷蔵が一ノ瀬家に来た。玲の事は会社経営を譲った次男坊の忠弘から聞いた通りであり苦笑するしかない。玲も彼の事はイベントで毎回逢うので顔見知りである。今回もイベントの打ち合わせで一ノ瀬運輸を訪れた序にあの一件の報告の為に来たのである。引退こそしたが趣味車のデコトラを乗り回すダンディな御方である。
「雷蔵さん、御無沙汰してます」
「忠弘から聞いた時には驚いたのぉ……玲に絡んで来た連中は全員警察が補導若しくは逮捕……ただ一人が逃走中に大事故起こした」
「伯父さんから聞いてます、腕を切断したって」
「電柱を支えるワイヤーにな……病院に担ぎ込まれて接合手術はしてリハビリ。その間に逮捕されたがね……」
「……」
「警察の追跡も問題はなく、玲ちゃんと同行者の方も正当防衛が認めれらた……」
それでも玲の顔は不安げになる。雷蔵の長女は夫が警察病院勤務の医者であるので情報がある程度得られている。更にこの事故は雷蔵が住む地元のワルらにとっても相当デカい話題であるので話題に事欠かせないようだ……。
「それにアイツラの背後には半グレも見え隠れしていて、違法AV撮影もしていた……被害者が加害者になっていた事もあり、その一人が別の半グレに所属する友人を巻き込ん事で抗争になりかけていた」
リビングにて雷蔵は出された麦茶を飲み玲に説明した、宗介と玲に絡んで来た暴走族連中の中には半グレも含まれていたので警察にとってみれば渡りに船、しかも抗争寸前と言う緊迫感が漂っていた所でガサ入れする口実が出来たのだ。雷蔵は隣に座る女性に視線を送り言う。同行してきた方でずっと無口、髪は染め目付きは鋭い。
「彼女は杉家 八代(すぎいえ やちよ)で越智運輸の社員、同時に弟が加害者の一人で腕の切断事故を起こした奴の友人でもある」
「あっ……」
玲はハッとするが彼女は言う。表情も口調もキツいが誠意はある。
「謝る事は無いわ……あのバカは昔から他人様に迷惑かけて来たし。今回の一件で矯正施設送りになるわね、弟も一緒に」
彼女も口調から弟が性犯罪を幾度も重ねた一人と分かる。未成年者性犯罪の場合は初犯でも罪状が酷ければ送致、しかし施設内にて中学と高校に該当するカリキュラムがあり運が良ければ18歳の春にはシャバに帰還出来るが引き続き刑務所に収監される場合も珍しくない。これには他の刑罰の懲役や更生の進捗が進んでないと言う判断からだ。
「……刑期が終れば身元を引き取れるかは本人次第って言う事ですか?」
「そう簡単に縁が切れる訳でもないからのぉ……例え本人は嫌がっても寄って来る、受け入れ先が見つからないか、自身で立ち直れないか……」
雷蔵も更生しきれずに再犯した知人を幾人か知っているのだ。その多くが更生支援が不十分で経済的困窮の末の犯行に及んだと言う。この辺りは性転換症発症者でも不遇世代は学歴から就職出来るのが限られ終いには犯罪に手に染めた者と同じ事だ。支援するにも社会に理解して貰えない現状もあるのだ。
「報復とかは出ない様にしている訳ね」
「一ノ瀬社長と会長の武勇伝は知れ渡っているからな……玲さんは大人しい方よね……確か番長らを叩きのめしたって聞いたけど」
「発症前に……」
玲は細かく説明すると二人とも納得した表情になる。祖父も伯父も父親も兄と同じ血筋だ。



程なくして雷蔵と八代は一ノ瀬家を後にした、玲のスマホには雷蔵の連絡先が登録されている。宗介と玲に絡んで来た面々が出所後に報復する可能性もあるのだ……玲のスマホに表示された写真を日菜子が見た。
「現役の子が井川 保って言う子?」
「そう、越知社長が通っていた高校が同じ言う事もあってね……橘さんが言うには……」
説明する、玲。これは宗介が名刺交換したので彼経由の情報、越知社長も自動車好きでミサワハイライダーRLが愛車であるのも知った。
「ふぅん、なるほど……今は大人しくなりつつあるわけね」
日菜子は納得した表情になる。玲と宗介に絡んで来た暴走族と半グレらは全員警察のお縄になり芋蔓式の様に他の容疑での逮捕や補導でその日居なかった面々も検挙されたと言う。可也の大捕り物で騒然となった様だ。


「……そうか、玲も気にしていたから直に話した方がな」
「将さんにそういって貰えると気が楽になるよ、本当にあの時色々と考えが頭巡ったぞ、よくあんな連中をK.Oで済ませたな」
「空手がメインだが少々柔道もな、門下生に警察や軍で飯食っている面々も居てな……」
将の言葉に越知 忠人は苦笑するしかない……そして顔付が変わる。
「連中の背後には別の半グレが居る、どうも玲の姿を写真で送ったらしくな」
「ほお」
将の顔が険しくなる、この辺りは兄と変わらない。
「最もこいつも指名手配をうけている……」
「警察のか?」
「裏の業界からもな……よくある話さ、コルク帽狩して獲物の一人に対立していた奴がいてな……他にも女と金でトラブル起こしていたから手配されている」
将も呆れるが余程恨みを買っているのだろう。裏の業界での手配書なら将も閲覧した事がある。あれは裏切者を探す際にも活用されているからなぁ……。
「それにしても……中々進みませんね」
「……手順が悪過ぎるのだろ」
二人とも敷地内にある新築された隣県某市公共施設にある駐車場にて待機している、将はラフテレーンクレーンの陸送依頼であるがそのラフテレーンクレーンが来ない、忠弘も荷物を運んできたがその荷物受け取りの方が多忙であり職場同僚の方が来る事になり目途は立った。別にこの二人だけじゃない……他に四台程中型トラックが駐車しており荷下ろしの順番待ちなのだ。
「おっ、連絡が来たぞ。下せるな」
忠弘はスマホを通話モードにしつつ愛車に乗り込む……如何にか運んできた荷物は下せそうだ。将はスマホを手に取ると通話モードに……因みにハンズフリーにしている。
「-今からそちらに向かいます!ー」
「そうか、どうなんだ?」
「ー相手が納得してないです、先程公務執行妨害で手錠されましたー」
将が話しているのはラフテレーンクレーンのオペレーターであり性転換症発症者だ……年齢を知れば分かるが不遇世代であり彼女も夜間中学高校卒と苦労人、最も性別変更を裁判長が認めなかったら夜の蝶かアンダーグランドの世界の住民に……。将は今のご時世の時に玲が発症してくれただけでもマシと思っている。
「損傷は?」
「-本社には送信してますが、後部アウトリガーユニット総取り換えと……課長ー」
将は事故状況を聞いてやはりと確信した。作業現場では積み込みが出来ないのでラフテレーンクレーンをこの駐車場で積めるように手配したのだが公道に出た途端に自動車に追突、無論工事現場なので誘導員も居たのだが相手方はスマホを見ており気が付いた時には衝突した後である。誘導員も笛を吹きつつも誘導灯を振ったが気が付かずだ、これはラフテレーンクレーン搭載の後方確認カメラや誘導員が装着していたカメラでも確認出来た。追突した弾みで発火するも最寄りに消火器が多数ある状況で迅速な消火に成功……しかしながらもドライバーと同乗者がラフテレーンクレーンオペレーターに詰め寄り押し問答、そこに将とは同期の男性社員の怒りに触れ警察が割って入り、同期男性社員は直ぐに引き下がったが相手側のドライバーは暴れ遂には公務執行妨害現行犯逮捕劇に。とりあえずはドライバーの御両親が対応する事になるからよいが……。
「おっ、きたきた……」
応急処置して自走してきたラフテレーンクレーンが見えた……作業時に転倒防止の為の後部アウトリガーは凹み誘導車の四t車に載せられておりこれは丸ごと取り換えだろう。建機を陸送する仕事をしていると自然と分かる。将は歩み板を操作してスロープを形成、クローラータイプでもブルドーザーやバックホウ系はタイヤでも噛ませば載せられるがホイール型建機も多く扱うので歩み板は必須だ。積み込みをする為に一端降りて来たオペレーターの表情は冴えない。
「一ノ瀬さん、本当に申し訳ないです」
「気にするな……ながら運転する方は悪い、アウトリガー丸ごと取り換えで済んだだけでも有難く思うさ」
確かに全焼になれば保険があるとは言え痛い、しかもこちらは誘導員に従って公道に出た所で諸突されたのだ。変にハンドルを切ればどんな事になっていたか。
「はい……」
「ラフテレーンクレーンは視界が限られるからな……」
これも陸送が生じる要因の一つだ。構造上クレーンのメインブーム横に運転席があるので市内を移動するだけでも大変な事になるのも多々ある。更に長距離移動になると高速道路が通行できないので県外になると陸送を使う。
「相手側の両親が交渉するって言うから、手回しがよいな」
「現場に居合わせた方が連絡して駆け付けた時には息子さんは連行されてましたけどね」
何よりも事故現場になった箇所には多数の工事関係者車両が停車状態でドラレコ搭載された車両も多く事故の全容が直ぐに明らかになり、駆け付けた保険会社も過失割合は息子の方が八割ある事は両親も納得した様だ。しかも“スマホ操作ながら運転”の映像もあれば弁護士も介錯せざる得ない、刑事事件になるからだ。
「アウトリガー新品にするんですか?」
「恐らくな……塗装代は除外するさ。社長ならそうするしな」
将は固定する為のチェーンブロックを用意しつつ言う、このラフテレーンクレーンは今回の現場が済めばお色直しをする予定で勤め先の創業時から付き合いがある建機メーカーの営業所に付随されている工場に運ぶ手筈に……当然事故の事は既に連絡済みでアウトリガーユニットも手配済みだ。
「のせちゃいますよ」
彼女はヘルメットを被り直して乗り込む……将も他の社員らと共に誘導する。腕前は本当によい、真っ直ぐ低床トレーラに載せた。直ぐに下りて固定作業を手伝う。



数時間後、将はラフテレーンクレーンの届け先に到着していた。外された後部アウトリガーは誘導車をしていた4t車に載せていたのだ。それを見た建機メーカー社員らは思う。
「おーこれは、これは……災難だったな」
「これも全焼でもしていたら、今頃ここにはいないさ……渕上、少々手が掛かるが車検が切れる前に更新したい。塗装だけでもカツカツになるのは分かっている」
渕上 工はニコっとする、将とは父親の付き合いを介しての腐れ縁の一人であり学生時代に建機の免許を取得した事がきっかけでこの職についた。
「そう言って貰えると嬉しいなぁ、で……玲の様子は?」
「色々とトラブルがあるから少々へこんでいる……」
無論、工もその事は耳に入っており勢い任せて出来てしまった双子の娘と息子を持つ身としては同情したくなる……。
「手を出してきたのは相手側と分かってはいるけどな……彼氏が居なかったら引き籠っていたかもしれん」
「……将も父親なんだな」
「正弘並に空手の腕があると認めざる得ないさ……」
この分だと玲ちゃんの結婚披露宴の際の出し物一つは予想がついた、将の表情は武闘家なのだ。
「塗装の際にある程度は部品を分解するから見て置こうか?」
「助かります」
女性社員オペレーターも心配しているのは稼働年数がある車両なのだ。作業服の上着を脱ぎ劣化した塗装が目立つラフテレーンクレーンを見て言う。
「もうだいぶ経過しているか」
「ええ……私が仕事に復帰した時に新車で来たから。無事故は通したかったけど」
「……事故の状況は把握したが脇見運転で追突って誘導員が巻き込まれていたらゾッとするな」
女性社員オペレーターの背後から抱きしめる男性に彼女はムスッとなる。夫であるがここでは視線が気になるが、事故に逢ったと聞けば……当然だ。
「恥ずかしい」
「事故を聞いて慌てたからな、本当に大丈夫なのか?」
「うん……まだ仕事の最中でしょ?」
「終わらせてきた、病院に行こう……」
「でも、現場に来た救急車の人は大丈夫って言っていたし」
将の方を見ると彼も状況把握したのか言う。
「報告書は転送しているのだろ?もう退勤扱いしているぞ……」
「「仕事速いですね」」
将は家庭を持ったのが急で色々と先輩方に支えられた、出来る事はしたい。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第四十一話 終夏へのカウントダウン

作 kyosuke

翌日、玲は何時のも通りに朝稽古を終える。宗介も礼と汀(なぎさ)と共に参加している、双子の妹は夏休みに入ると同時に全日本GPとJMGP(ジャパンモトクロスジーピー)に向けての準備や調整、そして競技本番と忙しかったのだ。成績は入賞圏内であるが彼女らの実力から見れば当然である。
「じゃあリーナの所でシャワーするわ」
「ああ、今日は遅くなるから」
四輪部門も忙しく、鈴鹿耐久を終えた競技車両の整備と分析が始まっており次のサーキットでの競技に向けての準備もある。最もSUPERGTは同業他社の馬力競争に振り回されている感も……。
「宗介さん、いってらっしゃい」
「行ってくるよ」
玲の微笑みに宗介は思う、彼女も何時かはハンドルを握るのだろう。



日下部道場の夏休み後半になると日中は近所の小学生らで賑わう、夏休みの宿題を片付ける為に……図書館もあるのだが自習室は中学生や高校生で満室になるし日頃図書館に縁が無い児童も多いのでトラブルに、これを解決したのが三沢市に戻って来たばかりの日下部先生で父親でもある虎介の了承を得て始めた。玲は空手の稽古をする為なら宿題もちゃんとするタイプであり自宅に戻りシャワーをして予習用の教材を用意する、高校受験に備えてである。
「やるかぁ」
今年も変わらない顔触れになりそうだ。


「あら、玲……さんね、本当に実際に見ると育ったわねぇ」
「はい」
道場の玄関にて顔馴染みでもある佐枝 陽(みなみ)は高校生の長男と長女に小学生の次男を育てる三児の母親であり、近所と言う事で玲が性転換症を発症した事は知っていた。
「真奈美の服も合いそうね、今度もってくるわ」
真奈美は高校一年生であるが小柄な方だ……玲も何度か逢った事はある。
「ほら浩太、挨拶は」
浩太は今年で小学五年生であるが顔馴染みのお兄さんである筈の玲を見て驚く……同級生や姉よりも綺麗だ。
「浩太、久しぶり」
「う、うん……玲お姉ちゃん」
「で……どれ位残っている?浩太」
リーナが礼と汀と共に来たが浩太を見て殺気を放つ……思えば登校中の悪ふざけを注意するのもリーナの役目だったのだ。
「漢字と計算式は半分は終わらせたわ」
背後にてむすっとした少女が立っていた。
「お久しぶりです、楊お姉さん、っ玲お姉さん」
彼女も近所に住む小学生の江野崎 綾美であり高校生の兄である達也はこの道場の門下生だ。
「あらたっくん、今日は大丈夫なの?」
「ええ、綾美を見る序に……玲やリーナに隆士だけじゃ手に余るだろ」
陽はクスッと笑うと頭を下げた、これから仕事だ……。
「綾美も浩太も礼と汀とは初めて逢うよな……最近転入してきたから」
「よろしくね♪」
「浩太君の事は達也さんから伺ってます……」
汀の目も座っていた、綾美は察した。リーナと同じタイプ、今年は昨年以上に悲惨な事になる事が確定したのだ。


他の児童らと保護者も来て賑わう……無論門下生で教育学部の学生や教員を職にする方も数人来ており苦戦する児童を見てアドバイスをする。
「浩太、生きているか?」
「死んでいるよ、汀は厳しいからねぇ」
礼は内輪で仰ぎつつ魂が抜け座卓に凭れ掛かる浩太を見た達也は苦笑、汀は別の児童の様子を見ている。
「玲は?」
「保護者に捕まっている」
綾美は呆れるが何れも男児のみの母親ばかりであるがこれは小学生から玲は信頼されていた証拠でもある。高学年になると低学年との登校時でも気を配りは秀逸で時には当事者には内緒に保護者や先生にも相談している。
「日菜子さんから話は聞いた時には驚いたわ、大丈夫なの?」
「大方は慣れました、下着とか月モノとかは途惑いました」
母親らは納得する、自分らも難儀をした覚えがある。性転換症発症は精神が不安定に一層拍車がかかるとも言われているが不遇世代はこの様な悩みを誰にも打ち上げらずに孤立してしまい自ら死を選んだ女性もいる。
「今はちゃんとしている、これが直ぐにできなかったのは……」
ウィルスによる症例だけでインフルエンザ同様に感染すると言う誤認が広がり国も対処するにも時間を要した……結局は国連の非難決議が出て事態が動いたが被害者の救済には手遅れである。


阿賀野商店の社屋を背景にカーテンサイダートレーラーを撮影する八郎と雷、本日は乗務ではなく事務所作業であり昨晩納車されたカーテンサイダートレーラーは会社のHPやカンパニーチャンネルの画像や動画にも使われる。編集は社長の娘さんが担当、親元を離れて東京郊外にあるシステムエンジニア育成学科がある専門学校に通学、それ故に細かい指示が記載されたファックス用紙をバインダーに挟み二人は撮影していく。
「それにしてもあれは予備車になるのかな?」
「フレームは無事だといいけどな……」
分解してみないと分からない、可也酷使している感もある。
「八さんにらーさん、御疲れ様です」
二人は振り向くとセミロングヘアに作業服に派手な法被を着た女性が立っていた。こんな風に呼ぶのは雅 真央……トラックショップ“雅屋”の社長令嬢、彼女は性転換症発症だ。当時は高校生入学して間もない時で例によって通学拒否されると祖父が10t車で高校に乗り付けて他の保護者を巻き込んでの喧嘩騒ぎになり袋叩きされたのは真央を通学拒否する様に強要したモンスターペアレンツ気味の保護者、その為か真央の祖父は容赦なくぶん殴り警察沙汰に……真央の両親も退学届けを出した。被害者側は対決姿勢を強めるも真央の祖父も孫を貶めた彼女らを許す訳にもいかなかった、双方の人脈により遂には地元選出の国会議員や地方自治体元議員らが仲裁する事態に至り真央は名門女学園への入学している。名門女学園のOBに医大教授婦人が数人居て複数の人脈から真央の事情を知るなり提案すると理事長が了承した訳だ。ただこれは真央だけではなく中学校や高校に通えない発症者らを纏めて受け入れ、真央を初めとする発症者らは高校卒業する事は出来た。真央はビジネス専門校に通いつつも実家の手伝いを熟しており、動画作成はその頃からしている。
「ききましたよ~カーテンサイダートレーラーを投入って」
「耳が早いな……撮影するだろ」
頷く真央はさっそく業務用カメラを使用して撮影する、雅屋にコレがあるのは中途採用された社員の私物で元を辿れば彼の前の職場が廃業になり退職金の足しにとして譲渡された一つで野外撮影が主な雅屋にはうってつけである。
「バイクに突っ込まれた言うのも聞いているのかい?」
「はい、阿賀野社長から伺ってます」
雅屋はトラックの外装カスタムパーツの製造や店舗販売に店舗敷地内にある工場にてパーツの取りつけもする、パーツ装着例と広告塔を兼ねてかカスタム化された四軸低床10t車を所有しているので彼女も大型貨物車免許を取得している。
「三沢市で暴走族絡みの事故って聞いた時にはやっぱりって思いました、最近暴走族が活発だったからぁ」
彼女もヒヤリとしたらしい、無理もない大型車は死角が増えるのだ。バイクがすり抜けられるのはコワイ。
「三沢市で事故に逢ったって聞いたから……」
「まあな……進入している最中にイキナリさ」
無論真央は事の顛末を知っているが記事にする気にはない、悪いのは衝突してきた暴走族のバイクだ。
「一ノ瀬社長の甥っ子さんが性転換症発症……」
「そうなんだ……甥って言う事は将さんの所か」
「可愛いって言うかセクシーと言うか……雅社長も笑う程に」
真央が言う雅社長は実の父親を指している、真央の学生時代を思うと今の状況は随分と改善が進んでいる、これが改善されなかったら一ノ瀬運輸会長も関係各位に吶喊していた所だ。真央も祖父の激昂姿に戸惑うも騒動から一年が経過するとほぼ沈静化したのは統一地方選絡みである。真央としては高校に通学出来る環境は有難いモノであるが女子高故に精神的にギャップやら途惑いで困惑し学習面では苦戦しビジネス専門校に進学したのがやっとだ。真央の場合は不遇世代では随分恵まれていた……戸籍の性別変更を裁判官が認めたのも恵まれている、ただ医療支援の方はメンタルケアまで手が回らないが仕方ない。この仕事の方が昔から見て来たから馴染みがある……真央はそう自分に言い聞かせた。
「アオリ板装備してサポートフレームが無い訳ね……」
「まあ日本仕様だからな、イチイチパレットに合わせての仕様設計しているって言う事さ」
イチイチパレットは日本での流通現場ではよく使われる荷物を載せる荷役台であり、三割を占めるのがT11バレッドである……業種によってはこのパレッドを使わない所もあるが昨今の流通事情により奨励か推奨と言う名の使用要請がなされたが阿賀野商店は倉庫業を起業した当時からT11パレットに合せているので問題はない。パレットの材質は欧州では木材が主流、これは木材資源が豊富で尚且つ使用環境が適している事や環境保護の観点が理由であるのに日本では合成樹脂製が主流だ。これは木製には厳しい高温多湿になる季節が存在するのが理由だが木製であると害虫の越境や防腐剤添付された木材使用されたモノの廃棄問題が生じる。
「後で積み込みの作業も撮影するんですか?」
「はい」
確かに定点撮影出来る機材も揃え彼女の方が成れているそ後で映像も提供してくれるのだ。


撮影が終わると雷はヘルメットを被り倉庫内のフォークリフトを起動、八郎はカーテンサイトレーラトラックを倉庫内に後進進入させた。ウィングボディの様に開けたまま動かすと損傷事故に繋がるのでカーテンサイトレーラの場合は車体サイズさえ気を付ければ大丈夫だ。
「今回は輸入されたコーンスターチね」
「……しかも遺伝子組み換えナノマシン使用表示」
パレットに置かれた巨大袋には物々しい国際基準記号が印字されており真央もギョっとする、確かこれの粉塵爆発事故が要因による性転換症発症事例が日本で初めて確認された事は記憶に新しく、関係各位の協議の末に阿賀野商店が管理する倉庫の一角に留め置かれていたが漸く届け先が先方から連絡を受けた。
「でどうなるの?」
「製紙工場さ……」
コーンスターチは糊粉としての需要もある、真央は仕事上様々なモノを運ぶトラックドライバーや運送会社に各種工場の関係者と親しいので納得した。この手の粉を運ぶのは難しく小分けにするとなると専用吸引ポンプを備えた車両を用いるのだがコンテナ内での作業員は食品衛生に適した服装での作業になるのだがトイレも出来ないのだ。足場を用意して移動用ローラーを敷設、パレットに載せられた袋は大人でもすっぽり入れるサイズだ。粉を満杯にすれば重量も可也ある。
「届ける日数も緩くされている……しかも製品輸送も請け負っている」
つまりこのコーンスターチを無理言って保管したので先方側が気を利かせた結果とも言える。雷はコーンスターチが満載の袋が載せたパレットにフォークリフトの爪を挿し込み持ち上げる。
「問題って解決しているの?残留ナノマシンに関しての?」
「食品や装飾品やらに使わない様にして何だったら紫外線やらX線照射してナノマシンを無力化するって」
何とも乱暴なやり方だ、真央も唖然としたが可燃物で尚且つ状況次第では火薬以上に危ないのがコーンスターチだ。阿賀野商店としてもこの様な荷物は避けたいのだろう。倉庫と言っても品物次第では管理責任者には危険物管理資格を要する場合もあるのだ。粉塵爆発を起こしやすい品物に関しては都道府県によっては危険物管理資格を要する場合もある。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第四十話 狂乱の夜

作 kyosuke

一ノ瀬運輸株式会社の夜は地回り担当社員ドライバーらが帰社をして終了業務に勤しむ、正弘も4tボディ車担当であり今日は何事も無く帰社……と言うのもここ最近は問屋街を中心に暴走族の出現確立が上がり昨夜は暴走族のバイクと県外同業他社の車両に衝突事故が遂に発生……しかも暴走族の面々が逃げた事により当て逃げ事案になり今朝は夜須さんらが来て手掛かりを探していた、ここに来るのは何だかんだと暴走族の事は知っている面々が多いからだ。
「今朝、夜須さんらが探しているのって男爵イモの残党か?」
「違うさ、亡霊小僧の方……先代辺りから雑になってなぁ」
正弘と同世代の同僚らが会話しており仕事の合間で探りを入れており既に夜須さんには情報提供している。そこに正弘が頭を下げつつも缶コーヒーを投げ渡し二人はキャッチする。
「おっ、正……今上がりか?」
「お疲れさん、亡霊小僧の連中は?」
「まださ、この分だと早朝に逃げたかもなぁ……テールリフト損傷だ」
事故の状況としては運送会社らで結成している協会のメールでの速報で概要は把握している。大型トレーラー後方にあるテールリフトやテールライト損傷であり三沢自動車本社工場一角にあるサービス工場から派遣されたサービストランポが現場にて応急修理して自走可能になった訳だが……積荷を納品した後がせめての救いだ。賠償も可也な金額になる事はドライバーをしている者なら分かる。
「バイクは廃車になっていたモノを修理、ナンバーは天婦羅偽装……」
「よくわかりましたね」
「被害車両ドライバーが降りて来た所に亡霊小僧の数人が絡んできたが彼は元プロボクサーでね……全員意識と歯が飛んで警察が来た時にはロープで巻かれていたってさ、実際鑑識も確認している」
この分だと肝臓打ちでも喰らったんだろう。因みに天婦羅偽装とは公道走行に必要なナンバープレートを偽装加工する事で警察に見つかれば検挙で済む話ではない。
「おっ、社長が戻って来たぞ」
迅の愛車でもあるスカニアがバックで進入、車載ライトを全部点灯する。自然とその場に居た社員らは交通整理をする……この辺りは少々郊外になるが主要国道を繋ぐ道として活用されているので時折法定速度を超過している自動車やバイクも出て来る、しかも街灯の数も然程なく何度か夜間に衝突事故に……魁が社長時代には低床トレーラー一台を廃車に追い込んだ追突事故発生時も夜間であり、これがきっかけでステアリングトレーラの導入になった。
「例のハコ出来ていたかぁ」
「今度のイベントの時に使うっていうけど……よく載せられたなぁ」
荷台に載せられたモノを見た社員らは驚く、本来は建築機材を納めるコンテナであるが重量物になると重心が高くなり横転するリスクがある。そこで低床トレーラに載せるのだが建築現場での積み下ろしを容易にするためにアウトリガーを備えているのだ。これは一部大型建機で見られる機構である。
「ん?篝からLトーク……」
正弘はスマホを見た瞬間に作業を急ぐ事にした。下着姿の篝の画像を見たのだ。しかも明らかに男をその気にさせる煽情的なモノである。



「篝、あんな画像を送るなぁ!」
帰宅して出迎えた篝に詰め寄る正弘に篝は言う。もう通い妻状態であるので正弘の自室は篝の部屋でもあり、煽情的な下着にエプロンと言う恰好の出迎えに正弘も項垂れる。賃貸なら兎も角実家でこれは……最も母なら親指を立てるだろうなぁ。
「誰の知恵だ……」
「橘姉妹から……玲も橘さんと自室で一足先にお楽しみよ」
「……」
因みに将と日菜子は駅前にある伯父が板長を務める神田川 和に招かれている、これは時折新作が出ると日菜子の舌と美意識に頼りたいと言う事だ。将が同行しているのは一般の客としての視点である。
「とりあえず、これがほしいの」
作業ズボンのジッパーを下にスライドさせホックを外され正弘の肉棒に細い指が絡まる。こうなると正弘も相手をするしかない。


「これが玲の男根を再現したディルトか……」
「……道具があるとマンネリ化が防げるって言うから」
宗介は手にしたディルトは玲が少年だった頃に存在していた男性器を忠実に再現したモノだ。そして玲が身に着けているのは宗介の双子の妹らが中学生の時に使用していた名門女子学園夏季学生服、流石に巨乳とあって腹が露出してしまう……何よりもタータンチェック柄のスカートの内側には瑞々しい李の様なスリット。スカートをまくりあげて初めて分かったのだ。
「宗さん、これでシコってくれませんか?」
「ああ、妹の中学時代の制服を着ている……」
呼び方も変化しているのはやはり気を使っているのだろうか……宗介は玲が顔を赤らめつつも秘所を見せている。礼がこれで迫って来なかったのは幸いだ……宗介は肉棒を晒し手で扱く……玲もガン視する。
「(やっぱり大きい)」
自分にあったモノとは比べ物にならない程に立派なのだ。リーナが下着姿の宗介を見た際に下着に移る男性器の輪郭を見て目の色を変えた位だ。これが自分にある女性器が受け止めていたと思うと……。
「射精するぞ!」
玲は目を瞑り近づくと顔に宗介の精液が付着した事が分かる。よく精液を飲みたがる女子がいるがあれは女性が男性の気を引き留める心理とか……射精しても萎えない宗介の一物を丁寧にウェットテッシュで拭き取りコンドームを被せる。今回は敢えてこの様にしているのは性転換症発症直後の発情が続くからだ……妊娠は今は回避するのは玲自身の責任でもある。セックスに関して相談できる相手が数人居るのは恵まれているのだ。
「きて……」
玲は誘い宗介は例のディルトを持つと言う。
「一度はリーナが太鼓判を押したモノでも味わってみようか?」
玲は頷きベットの上で尻を高く上げていたが直ぐに秘所を見せる様にして股を開いて座ろうとしたが先に宗介がベットに座り、アナル用ローションを手に取り蓋を開けた。
「逃げない様にね……」
玲は何時もは紳士な宗介も時にはハメを外す事は礼や汀から聞いている、こんな時には彼自身に不機嫌になる事が起きたと言う……だから玲は受け止める、ローションの滑りが尻穴に塗され指が丹念に尻穴を解す。
「排便する所みたかった?」
「そこまでは」
玲ってMっ気もあるのかなって思う……出来れば“艶の教室”でのデートも考えていたがここ最近半グレや暴走族同士の対立が目立っているので迂闊に利用できないのだ。あの辺りも少しばかり治安が悪い所であり宗介自身も半グレや暴走族に顔を知れ始めているのもその理由だ。繁華街に行けば明らかに視線を感じるがそれっぽい連中は顔を背ける……他の部署で仲が良い地元出身の奴が言うにはそうらしい。
「じゃあ、挿入するよ」
丹念に解された玲の菊蕾は開く……それにしてもかつての自分にあった男性器を模したモノを挿入している姿を恋人に見せるって言うには少々後ろめたいが玲なりに考えたのだろう。宗介は慎重に玲の菊窄みに肉棒を挿入した、座位であり姿見で確認する。
「っ!」
玲は自分の手でディルトを秘所に挿入する、初の二本刺しにしては中々の変態ぶりだ。二本刺しされた自分を見た玲の顔は何処か蕩けている。
「今度は楊にしてもらうかい?」
「……宗さんが望むなら」
玲の手を添えてじっくりと攻め立てる。



「うぁ~~前にディルトを咥えてアナルフ〇ック、玲も隅におけないなぁ」
正弘はあの後篝を激しく攻め立てベットに沈めた……宗介とあの時出会ってなければ近親相姦に陥っていた可能性もあった訳で気になってドアの隙間から覗いてみて小声で言う程に呆れ、とりあえずソッと離れる事にした。篝をベットの上で沈めて置いたので勃起する事は無かったのだが……。
「さて、篝を洗うか」
風呂桶を適温にして寝かせておく……篝は時折腰を抜かす程イク事があるのだ。正弘自身のモノが大きいのはどうも一族の血筋らしい。自室のベットにて果てた全裸の篝を姫様抱っこして風呂桶に……今回は玲も使う可能性もある。
「もぉ……気持ちいい」
「……腰に力入れるか?」
「まだ、むり~はげしいもん」
思えば玲の事で以前よりは回数は控えていたし、篝は就職活動もしていた事だ。当然と言えば当然……将来的には結婚して家も持ちたいので正弘は大学進学はせずに一ノ瀬運輸に就職したのはこの為だ、高校の恩師は残念がっていたが大学に通学しても将来やりたい事に関しては何も役に立たないと判断した。最も何時篝が懐妊してしまうか分からないのだ。
「騒がしいな」
明らかに違法改造されたバイクの排気音が聴こえ正弘は怪訝な顔になるも篝は言う。
「祭、今日だって」
やはりか、この辺りの暴走族や半グレらが一堂に会して集まる祭と呼ばれる騒ぎがある。親父らの代からあり時には大規模抗争になった事もあるが正弘の学生時代になると平穏な集会スタイルになるが……これは暴走族らの背後に“半グレ”やら“暴力団”らの意向もあるので従っているだけだ。


三沢市にある問屋街一角に大きな倉庫街がある、ここは所有者が死亡し老朽化も相まって事業継続は困難になり廃業……所有者の遺族らの間で解体費用を誰が捻出するかで長年揉めているうちに何時しか“大手半グレ”に所有権を得ていた。工事用フェンスとゲートで一応管理されているが錠前が何時の間にか変わっている事も度々である。最も裏で繋がっている事は警察も把握はしているが……。
「無理だったかぁ……誰もモノに出来なかったな」
舘とは同学年である“爆走坊主”の総長を務める御川 弾はスキンヘットがトレードマークの高校一年である。この学年で総長を務めるのは先輩方らが都合の悪さだ。
「一ノ瀬が少年のままだったら誘えた可能性もあったけどなぁ……性転換症発症がタイミングが良かったのさ」
舘としては玲がこの世界に足を踏み入れると彼女も周囲も自身もややこしくなるのでホッとしている……。とは言え峰沢らを単身で倒した事は事実であり玲は暴走族や半グレ達から目を付けられた事は事実だ、敵意も好意も入り乱れ状態であり、玲も認識していた。
「所で半グレグループが玲にかかっていた賞金首、本日をもって全部取次キャンセル」
「弾、ほんとうか?」
「ああ……何でもクライアントの都合ぽい」
舘も弾も詳細は知らないが大方失脚したが代替わりになったんだろう……日本人と言うよりは海外の好色家だろう。アングラ系HPでも受け付け終了している事は知ってはいたが、一ノ瀬家の事を知れば納得は出来る。だが新興の暴走族グループにとっては活動費を手っ取り早く得るチャンスはもうない。
「路怒男爵と亡霊小僧は見えないっすね」
「あんな事件を起こせばな……」
亡霊小僧の方も全員警察に補導か逮捕になり祭の所の話ではなかった。噂であるが違法AV撮影して売り込んでいたメンバーがおり、AV俳優にされた被害者らが警察に被害届を提出……内偵を進めている最中に交通事故を起こしレイプに関しても取り調べを受けている、逃亡もしているので有罪は免れないだろう。学生なら矯正学園への転入処置になるが監獄の方が優しいらしい……噂であるが。
「で……あと何人だ?決闘相手は?」
「数人……」
祭の目的は決闘の言う名の喧嘩であり、今はアタマのみエモノ無しの喧嘩だ……公開されるだけに負けられない訳であるが舘はこう見えても可也の猛者で既に五人は瞬殺している。まあ病院送りにしないのが暗黙の了解だ。
「スゲーなぁ、俺なんて喧嘩を申し込まれた事もないんだぜ」
「……」
弾の場合は人相が高校生離れしているしスキンヘットだ、彼がこうなった事情を知っているのも知っているし……何よりも彼は社交性が高いので新興の連中からも一目置かれている。それ故に喧嘩を仕掛けられる事は滅多にない。
「面倒だなぁ、連絡位よこせよなぁ……決闘するのなら」
舘としては喧嘩は無暗にするモノではないが祭での喧嘩は公開決闘だ……力を示す良い機会なのだ。最も赤っ恥にもなりかねないのだが……舘の言葉にメンバーらは動き弾もスマホを操作する。
「舘さん、あいつら全員パクられました」
「網張られていたな……」
舘は思う……安易に大金を得られるバイトに手を出していたのだろう、そしてトカゲのしっぽの様に切り捨てられた。暴走族といっても大抵十名にも満たない少数な所が増えつつある、活動方針の相違が生じて分裂した事も珍しくなく遺恨から喧嘩に発展し凶器を持ち出したのだろう、これで警察沙汰マッタナシだ。普通なら……だがあるグループは保護されたと言う方が正しいだろう。彼らは知る由もなかった……。


三沢市は炭鉱で栄えた事もあり石炭を積みだしていた港湾もあり今は三沢自動車本社工場や周辺にある部品メーカーに必要な原材料を集め、自動車を輸出するには丁度良い……しかしここも犯罪の現場になるのは昔からである。犯罪もまた時代を写す鏡とされるが、今回ばかりは夜須も外部からの協力を仰いだ。
「楊博士、協力感謝します」
「こちらとしても彼らに話を聞きたいと思っていた所だ、その過程で警察に相談した方が良い事もあってな……」
現場となった貸し倉庫を見る刑事の夜須と楊博士が言う彼らとは同一であり、ある犯罪にて主犯格の噂が絶えない……そこで楊博士の護衛任務に就かせていた警察官と軍の士官を利用した訳である。無論彼らの上役らは了承しているのは言うまでもない。
「被害者らの身元は?」
「夜明け位には大方判明する……治療施設の手配は任せて貰っても?」
「どの道治療するにしろ普通の医療施設では手に負えない。事情を聴きたいのは山々であるがね」
規制用テープが幾重にされた貸し倉庫の入り口、出入りする鑑識を横目に楊博士の護衛担当の警察官と士官らはスマホで会話している、アサルトライフルやSMGを納めたケースを足元に置いており傍目から見れば普通の刑事らに見える。
「しかし、暴走族の少年らが目的だったとは……」
「じゃじゃ馬を好む奴だからな」
先程アサルトライフルやSMGを手にした護衛役と共に楊博士も現場に踏み込んだ時には驚いた、薄暗い室内でも分かる程の胸と尻が張り出している少女と思われたが護衛役が持つアサルトライフルやSMGに装備されたライトには男性器を照らしたのだ。聞けば玲を誘拐する事を目的にある半グレグループに近寄り支配下にされたと言う。その半グレグループらは資金源になっていた違法風俗店にガサ入れにより現行犯逮捕、商品は少女のみならず“女装少年”も含まれていた。
「……親御さんに何と言えばいいのかな?」
夜須は電子タバコを手に取る、周囲から控えろと言われているがこの様な凄惨な現場になると手が伸びる。
「ありのまま話すしかないだろ」
楊博士は主犯格の事はよく知っていた。所属している医学研究所の元同僚であるが私生活でトラブルが原因による研究内容機密漏洩事件を起こしFBIまで巻き込んだ騒ぎになる。その後は逮捕されるも司法取引やらで減刑はされたが研究所側は彼を解雇処分に……ある犯罪組織に身を寄せたと言う噂は聞いており、日本に居ると言う推測が出ていた。楠瀬 菜緒のケースは性転換症だけではなく再生医療研究の分野でもナノマシン開発にも影響を及ぼしている……無論菜緒に近いケースでの性転換症の事例は海外にも見受けられるが発症者は何れも国家から護衛が派遣されており中には国家主席専属SP経験者で固められている所もある位だ。彼の事だ、平和ボケした日本ならワンチャンスあると思ったのだろう……だが彼の予想に反して日本政府は菜緒の護衛に軍を投入していた……裏社会でもその名が通っていたのだろう。
「彼らの移動は明日にも?」
「はい、どの程度のナノマシンを投与されているかは分析を急がせてます」
あの胸と尻の膨らみなら過剰投与されている恐れがある、しかも何時生命維持活動に重大なエラーを引き起こす可能性もあるのだ。保護された少年らは既に三沢医大病院に搬送されており採血して分析に回され本人らは経過観察中、最も精神面に明らかな異常がある事は確定だ……。楊博士としては元同僚をこんな形で再会するとは……さて雇用先に出す報告書にどういう文面で出すか?彼はどの道アメリカの司法当局に引き渡されるだろう……日本としては代理処罰にして退去させてもらった方が良いのだ。



両親が帰宅したので宗介も帰宅する事にした、玲はベットの上に寝ているが宗介は玲が入浴している間にシーツを取り換えていたのだ。
「ふふ、玲が寝ているって言う事は存分に遊び疲れたって言う事ね」
「はい」
日菜子は分かっていて言うのだから宗介の返事も上ずっている。無理もない酒が入ると何時も抑えている何かが解放される、思えば正弘を授かる事になり彼女を人生の伴侶にする事になるあの夜も彼女は酒が入っていた。
「明日も仕事なのに……大丈夫なのか?」
「デスクワークのみです」
将は安心した、玲との情事が原因で事故を起こされたら同じドライバーを職にする者としては申し訳ない。



「修理は不可能か……」
「制御システム基盤も損傷してます」
壊れたテールリフトを見た車両整備担当社員は言う、年代物なので既にメーカー側にも部品が無いと言う返答を受けた。つまり廃版であり既にカタログが事務所に届けられていた。買わせる気満々である……。
「台車のフレームも気になる所だな……」
タイミング一つズレていれば暴走族の少年らは台車のタイヤに巻き込まれて凄惨な事故になっていただろう。バイクだけで済んだのは幸いな事であっただが、凶器を手にして襲った相手が元プロボクサーである自分と総合格闘技を嗜んでいる相方である事は不幸だ。
「全員の歯を飛ばしてって?錆びついてないな腕前は」
「相手は金属バットに単管パイプにナイフ持ち、社長もそうするでしょ?拳を構える状況……」
確かにそうだ、加害者の保護者らとは警察を介して連絡がついており歯が飛んでしまった事に対する被害届は出さない事を確約している。とは言えトレーラは応急処置で漸く帰社出来たが仕事では使えない。可也のロートルなので何時トラブルが起きても納得出来る状況であるのでフレームの状況次第では廃車……。
「で、カーテンサイダーを導入って……社長」
「協会の方から頼まれてね、国産ウィングトレーラーの3/4の価格だ。それに防水性は欧州市場でも確証済みだ」
丁度納車されたばかりの三軸カーテンサイダートレーラ―には所属する運送会社“阿賀野商会”の屋号でもある円内に“阿賀野”と幌一面に印刷、黒地と白文字は商店で商いをしていた時の名残であり社長である阿賀野 護で五代目、ただ運送/貸倉庫業としては三代目だ。
「九野、今回は落ち度はない。赤信号で交差点に進入していたからな……ゾクって言うのはそんな事をするのさ」
社長は苦笑交じりに言うが彼自身も学生時代はゾクで事故も経験している……幸い死者は出なかったが後始末には先代社長も苦心していたと言う話は古株社員から聞いた事はある。九野 八郎は元プロボクサーであるが副業としてトラックドライバーをしている。プロと言っても生活するには厳しくどのボクサーも副業を持っている……引退も自身の体力衰退も理由であるが所属ジムの会長が急逝、遺族もボクシングジムを運用する自信が無いとして廃業を申し出たのも理由、この阿賀野商店に転職出来たのも支援者の一人が先代社長に相談した所で実現した訳だ。既に4t車と10t車の免許を持っていたのも決め手で牽引免許取得出来たのもこの阿賀野商店の面々のお陰だ。だから被害事故でも気に病むのだ。
「八さん、今日はあがりなさい」
事務所から出て来たのが阿賀野社長の従妹に該当する阿賀野 祥子さん。性転換症発症者で年齢的に学生時代は“不遇世代”になるが彼女の場合は幸運にも地元名門女学園が受け入れを打診、父親の実家に身を寄せており高校卒業後は実家運送業の事務方に……なんせ通う筈の中学校が通学拒否をされており中学校に通える時には16歳の春からであり高校を卒業したのが22歳って言うので大学進学を選択してない。彼女は中学に通えるまでの間は資格取得もしており簿記を初めとする就職に有利な資格を取っていたし、トラックドライバーになるきっかけになった原付免許も取得していたのだ。名門女学園中等部を卒業した時には普通自動車免許も取得しており当初は高等部進学をする気はなかったが社員らの説得で進学した。ボーイッシュなのは発症して髪の手入れに嫌気が差してバッサリ自分で切ったという。
「ここ最近働き詰めだしな……シフトは既に変更している」
社長がこう言うと八郎は頷くしかない。先程から八郎は背後に視線が突き刺さっていると感じて振り向くと女性が仁王立ちしていた。幼馴染で伴侶して暮らしている妻の逸希……彼女も中学生の時に性転換症発症者である。
「八君……本当に大丈夫なの?」
「正統防衛さ。相手は金属バットにチェーンにナックル、スパナを持っていたしな……歯一つ飛んだ程度で済んで御の字、こっちも頭に来ていたからな」
八郎の言葉に社員らは薄ら笑いをする、今回の荷主はどうも運送業の実情を知らないらしく可也無茶な注文になり少々遅配に……これには三沢市へと向かう際に使用した高速道路での事故渋滞が原因だ。スマホに直接かかって来た荷主からのクレーム対応が終了した直後にあの事故に遭遇。こうなると八郎がよく全員病院送りにしなかったなだけでも御の字である。
「後な、例の荷主だが……今後の依頼は拒否した。先方さんも納得してな」
穏便で済むわけではない。持ち前の強面営業スマイル納得させたのだろう……八郎を初めとする社員は薄ら笑いをするしかない。


「まっていたのか?」
ハンドルを握る逸希はポニーテールを揺らしつつも快調に自動車を運転する。
「丁度仕事が終わったからね~~いや、今回も修羅っていたわ♪」
妻でもある九野 逸希は旧姓である柳ケ瀬 逸希としてシステムエンジニアをしている。中学入学直後に発症して一年間登校出来なかったが彼女の祖父がシステムエンジニアのパイオニア世代であるので自然と詳しくなり大学進学せずに専門校に……その時には八郎もプロボクサーとして活動しており何時しか同棲状態になり結婚に。八郎の親も逸希の事は把握し、何よりもプロボクサー兼ドライバーと言う息子の職が結婚のネックになっている事に気を病んでいたので性転換症発症者でも歓迎したのだ。
「土門さんも暴れたの?」
「……何人か締め落している、警察も関心していたよ」
逸希は笑うしかない、八郎とよく組む交代ドライバーの土門 雷はデカい図体であり格闘技も嗜む……元兵士って言うのは聞いた事があるが八郎もその時の話は聞いた事は無い、ただ大型車や牽引免許を持っている事実を見ると軍隊に居たと言うのは本当だ。
「……ぇ、八君」
この色っぽい声色を聴くと八郎の男性自身が起き上がる、疲れマ〇って言うのもあるが……逸希が可愛いのだ。



自宅に戻り、子供二人が熟睡している。逸希の兄でもある柳ケ瀬 護郎に留守番を頼んでいた……彼は個人で貿易商をしており買い付けた品物を阿賀野商店の貸倉庫を利用したり運搬を頼む事もある。海外のバイヤーとやり取りしていたのだろう……ノートPCが作動しておりため息をついていた。
「義兄さん、ありがとうごさいます」
「気にするな……それよりも事故は大丈夫なのか?」
「完全に被害者って言う訳でもないが……」
着替えやら入ったスポーツバックを置く八郎に護郎は分かる……。完全に不機嫌である……まだプロボクサーをしていた時に勤めていた運送会社でも何度か貰い事故に遭遇した事がある。何れも納品先に向かう途中で自走不可になり遅配……その時の運行管理者にボロクソ言われたので引退と同時に今の阿賀野商店のドライバーに……まあ荷主にも問題があったらしいのは確かだ。
「じゃあ、実家の方に戻るぞ」
ノートPCをビジネスバックに押し込む、同じ町内であり歩いていける距離だ……逸希の目を見ると分かる。これは三人目も出来るなぁ、自分も欲しいが妻が限度だ。




【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十九話 群像商売

作 kyosuke

翌日、朝陽は制服に着替える……昨日はスカートであったが少年のままの仕草が出ない様にするので精一杯であり本日はスラックスである。シャイニング事務所を訪ねる予定だ……女性の事務員は勿論出入りする各種インストラクターの中には女性の方も居るので事務所に所属しているアイドルの面々は極端に苦手って言う事も無いのだが……何となくスカート姿で訪れるのは気が引ける。愛用の3WAYバック内部にあるシステム手帳を手に取り思う、サマーライブツアーの評価次第ならアイドルグループに選出される可能性もある……性転換症発症するまでは。
「……いくか」
ちゃんと退職の挨拶はしておいた方が今後の為だ、連絡したら輝夜社長が応じたのだ。バック内には予備の下着やら衣類も入れたのは万が一の事態を想定しての判断だ。父と兄は仕事で姉もバイト……一人で判断しなければならない、姿見に映る自分を見て思うのは本当に少女になっているって言う事だ。
「?」
スマホが振動しLラインのメッセージに朝陽は慌ててバックを背負い玄関へと向かう。スニーカーを履きオートロックの玄関ドアを開けるとグラサンを掛けたラフな格好をしたアラフォーの男性がおり笑顔を振り向ける。
「陣堂さん……えっ~と」
「輝さんの指示で迎えに来た、ほぉ~~これはまたかわいくなって」
彼はシャイニング事務所所属のアイドルである陣堂 政介であり、アイドルバンド“TOXBOX”の一員で今も尚人気を誇り冠番組もロングラン状態、うれっこである。
「さあ、乗った」
二代目スバルインプレッサWRXSTi……朝陽も知っているのは兄が自動車好きで雑誌を見ているうちに自然と分かるようになり、エンジン音も弄っている事が分かる。彼は自動車好きが高じて中型や準中型の運転免許取得しており冠番組の企画モノではよくハンドルを握る姿を見せている。
「住所は?」
「年賀状、久々井の事だから電車で来るって確信したからな……こんなかわいい子を痴漢の餌食にしたくはないしな、それに家内の後輩にもなる訳だしな」
「?」
政介は助手席にてキョトンした朝陽を見て思い出した、妻の事は話してなかったな……まあ逢えば分かるか。都内にある事務所を目指して愛車を運転する。



「社長、本当に時間をいただいて貰って……」
「お袋から聞いたさ、大丈夫なのかい?母親の方も?」
「はい……」
「性転換症発症の事は気に病む事は無い、モダンガールス事務所への移籍するって聞いた時は安心した」
輝社長はにこやかに言うが移籍話を持ち掛けたのは彼である、先方は難色を示されたがモダンガールスの“商品品質”はバラツキがあり厳しい事は彼も知っていたし何よりもあのモンスターペアレンツ状態の母親が手を引く事が明確なら利用価値はあり、一代でここまで成長させたマダム八重子直々に本人を見定めにより移籍が承認された裏事情がある事は教えてない、そんな事を知れば辞退していただろう……借金を返す為に違法な泡風呂嬢にもなりかねない、朝陽はそんな人物なのだ。
「しかし、男装か……配慮する事も無いのに」
「昨日スカート履いたのですけどもう大変で……女性ってスゴいですよね」
遠目になる朝陽を見て輝社長は状況を察した。この場所をよく知っているから動きやすいスラックスにしたのだろう。
「ライブツアーイベントの方も来週でファイナルだ……バックダンサーの編成変更で少々大変だったが、また起こる可能性もあるさ」
「社長」
「……さて、移籍先で成功した時には頼むよ」
「……お世話になりました」
立ち合った陣堂も思う、なるほど今後もあり得る訳だ。


「陣堂 英玲奈です、初めまして」
「……あの、碧柳 英玲奈さん?パステルガールスの」
「ええ……今は政介さんの妻、なるほどマダムも千手観音並のやり手ね」
やや上品な女性はにっこりとして朝陽を見る。モダンガールス事務所があるオフィスビル地下駐車場にて三沢自動車が出しているピックアップトラック“ハイライターRLX”から降りて来た彼女を見て朝陽も驚く。モダンガールス事務所初期に活動していたアイドルグループに所属していた方であり、結婚を気に引退しており一切TVもネットにも出て来ないのだ。
「……スカートは無理なの?」
「シャイニング事務所内って男性の巣窟だからなぁ……英玲奈頼む」
英玲奈は頷く、確かにモダンガールス事務所は女性の巣窟なので夫も足を踏み込むのも躊躇する。
「久々井さんの事はよく聞いていたからね……無論貴方の母親の事も知っている、現役時代のね。ただ事務所は評判悪かったからね」
モダンガールス事務所内にある控室に入ると見覚えがあるセーラーブレザー学生服がトレソーにセットされ足元にはローファがある。
「えっと……」
「改めてようこそ、モダンガールス事務所へ……二代目マダム八重子です」
「!」
「元パステルガールスの八重洲 永子……引退後はマネージャーやらしていたけど初代の引退に伴い就任する事になるわ……とは言っても暫くは兼任で久々井さんを担当する事になります」
「その、自分は」
「私も性転換症発症の方を担当するのは初めてよ……とりあえず“もだじょ”には出て貰うわね」
「!!!!」
もだじょとはモダンガールス事務所のアイドルらが出演している疑似学園バラエティー番組であり、最近は各資格取得企画で好評を得ているがその一方で一昨年事務所創設以来の最悪のスキャンダルが発覚し警察沙汰と言う事態になり今は民事訴訟の最中である。
「知っての通り一昨年のスキャンダルは今も尚余波を起こしているわ……新アイドルユニットも上手くいってない、久々井さんは色々と出来るからソロを中心になりつつも先輩らを刺激してほしいの」
「……わかりました、出来る限りやってみます。先代マダムの恩義もあります」
すると控室のドアが勢いよく開き女子らが雪崩れて来た。何れもダンスレッスンで使用するトレーニングウェア姿、そう事務所の先輩達である。
「……あら、気になるの?女の子になり立てが?」
英玲奈は知っていてドアを開けたのだ。
「……まあいいわ、久々井 朝陽さん。高校一年だけど女の子は初心者だからね」
朝陽は頭を下げようとした時に両手を掴まれた。確か中学高校に人気があるアイドルの方だ。
「久々井さん、もだじょ制服にきがえましょう!!!!」
「メイク道具持って来て!!!」
二人はパーテションを用意しておく、確かにこの可愛さなら飛びつく筈だ。




「シャインニングでも次来るって言われたいた子がねぇ、神様ありがとう」
「夏目……涎が出ている」
「八重子さんも抜け目ないって言うか……所で次の収録から参加ですよね?社長?」
セーラーブレザーに着替え終えた朝陽は先輩の面々にメイクをして貰いつつ困惑する。
「……事務所移籍も発表しているからね」
朝陽は真っ青になる、てっきりまだ先の話と思っていたからだ。
「それに久々井さんには色々とやって貰うから、丁度いいわ……今から紹介動画撮影したいから撮影班に」
「彼女達バテてますよ……ダンスレッスンで」
英玲奈は苦笑しつつも業務用ハンディカムが入ったケースを手に取る。これでも子育ての最中に夫と共に撮影に嵌っていたのである。
「スタジオ空いているかしらね?」
こうして急に仕事が生じるのである。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十八話 チェンジする環境

作 kyosuke

朝陽の退院が明日に控えるも同時に母親の入院が決定、神流先生が言うには過去に排卵誘発剤を使用していた事により卵巣に異常な症例が診られると言う事で姉の亜沙子は母親の実家である鑑家にも伝えていたので足が悪い祖父母に代わり長男である鑑 高太郎とその妻である美弥音が上京、因みに鏡の実家は北海道の函館であり二人とも地元で就職し出会って結婚して二人の息子に恵まれ独立している。そんな時に妹夫婦一家に起きた大事件の一報を受けた。
「壕さん、本当に……もうしわけない」
「いえ、こちらも……」
気まずい空気に亜沙子も困るも仕方ない、伯父にしてみれば自由奔放な妹の監督責任が無いまま嫁入りさせたもんだし、父親にしてみれば夫しての責任放棄にも見える。
「明日は丸ごと休みなのか?」
「社長が気を使ってね……妻も入院するのなら主治医の話は聞いておけって……」
壕としてはトラックのハンドルを握る構えであったが社員の福祉も考慮しておりシフトも変更されている。
「退院したら直ぐに学校に行くのか?」
「生徒手帳とか受け取る必要もあるから……」
「シャイニング事務所の方はどうなんだ?」
「アポ取ってからだね……社長も輝さんも例の一件を発表してから大忙しだし、コンサートツアーも終わるのも先だしね……」
朝陽の言葉に覇気が無いのはやはりツアーの最中に性転換症発症した事に対する喰いだろう。防ぐ手段が無いのは分かっていた……。


翌日、退院して直ぐに緑丘学園に登校し職員室に入る。
「久々井さん、退院おめでとう……これが新しい生徒手帳」
生徒手帳にはICチップ内蔵のカードがあり学食や購買でのキャシュレス化に貢献している、月纏めで生徒の口座から引き落としである。
「宇都宮先生、そのクラスのみんなは?」
「忙しい様ね、ほらイベントの需要が一気に増えるから……研修生でも使いたい訳ね」
先生も苦笑するが現実的には厳しく高校卒と同時に芸能界を諦める生徒も珍しくない、兄や姉も様な選択も正しいのだ。足元に置かれた紙袋を手渡す。
「後はレオタードとダンスシューズに水着のセットね……芸能科用で大丈夫?一般科用もあるわよ……」
「馴れて置かないと……せっかく母が得たいた繋がりを無駄に……」
渚はピンと来た、朝陽は母親の為にアイドルとして成功したい。この思いが時には酷な選択をする事になる……。
「芸能界には貴方の様な女の子を平然と食い散らかす野郎が多いわよ、でも逆に喰うのも手かもしれないわね」
職員室に居た男性教諭らも動揺したのは当然であるが居合わせた壕と伯父夫婦は糸眼になるが頼もしい教員である事は確かだ。


「壕さん、あの先生ってあんな感じなのか?」
「そうなんだよ、親がスタンドマンをやっていたからね……昔は特撮では欠かせない方さ」
職業上ヒヤリハットな事例も多く事故に至るケースもあり父親も母親も大怪我した事もあると言う。今はCGを使う事も多いが時折実写思考を求める映像作品が求められるケースもあるのはPCを使えば解析出来る事もあるのだ。
「それにしても学園とは思えんな、ホテルかオフィスに居る様な」
伯父の高太郎はまるで東京都内にあるオフィスビル内部の様なインテリアに苦笑するしかない。まるで取引先の企業に来た感覚だが壕も初めてこの学園に来た時には同じ感覚になった。
「この学園は前身になるのが緑丘商業高校だけど校舎老朽化と学科再編していたけど生徒数は減少、そこである学園法人に運営を託した……芸能科を設ける事が条件を飲んでね」
壕が言うには当時の理事長は性転換症発症者支援をしていたので受け入れを表明し当初は学生寮も用意した事もある。だがこの様な支援を受けられた不遇世代はほんの一握りに過ぎない、これは学園のパンフにも記載されている。
「陽一も亜沙子もここで世話になったからなぁ……」
四人は学食となるカフェテリアにて休憩、オートコンビニも複数あるので夏季長期休暇でも解放されている。
「転科もあり得るのか?」
「うん、モダンガールスでの仕事量によってはね……」
正直あの社長が良くても部下がどう接してくれるか……朝陽の懸念しているのだ。
「おまたせ……」
そこに現れたのは藤河 ましろだ、一般科であるが顔見知りである。
「藤河さん」
ましろは壕を見て会釈する、真澄の実家は社屋と隣接しているので壕とは顔見知りだ。
「壕さん、お久しぶりです……あのそちらは」
「真美の兄である鑑 高太郎です」
確か朝陽の母親の旧姓とその名前は知っていた。
「妻の美弥音です……」
「母親の方は?」
「入院さ、無理を通してしまってね」
ましろも席に座り真美の症状を聞いてゾッとした……最終的には卵巣摘出する方向で調整と言う事だがその原因が過去に使用した排卵剤と言う。自分の母親も使っていたと言うのは以前聞いており、ここ数年母親の健康状態が目に見えて悪いと言う印象は持っていた。彼女の真っ青な表情に高太郎は言う。
「……掛かり付け医に相談してみるのも手かもな、その不妊治療した産院と出産した所は同じ?」
「?」
「別々ならややこしくなるな……」
断定は出来ないがましろは直ぐに父親にLトークで相談する、排卵剤を使って産まれたのは自分なのだ。
「所で、朝陽ちゃんは化粧品は?」
「……まだです」
「まあ、高校生が放課後にする分なら持っておいた方がいいかもしれないわね……藤河さんも持っているでしょ?」
「見せましょうか?」
ましろはリュックサックからポーチを出す、マルチポーチって言うタイプであり彼女自身は余り可愛さを出したくない感じで中身も女子高生のお小遣いで買える品物ばかりだ。
「亜沙子にも言っておくか……」
朝陽の場合は仕事上自分でする事が多くなる事は目に見えていた。壕の発言の後に美弥音が言う。
「じゃあ、今から買いそろえましょう……」
「?」
朝陽はキョトンとした。

数時間後、最寄りのショッピングモールにて真澄と待ち合わせしましろも同行して化粧品を買い揃えた。化粧品ポーチはましろと同じタイプである。
「ナチュラルメイク覚えるの大変だぁ」
ファッション雑誌を見てげんなりする朝陽にましろも苦笑する、発症して間もない時に従姉らに教え込まれたからだ。
「馴れよ、馴れ……」
美弥音は満足である、思えば娘が欲しかったが卵巣がダメになり摘出。手術を終えたその夜は高太郎が何も言わずに抱きしめて泣いた……申し訳ない気持ちだ、だから妹夫婦の事は誰よりも気にかけていた、亜沙子の進路も相談に応じてアドバイスして真美に凄い喧噪をされた事もある……だが、亜沙子の選択は正しかった事が証明された。所属していた芸能事務所は社長が逮捕された、罪状は未成年者性的搾取及び暴行であり、亜沙子も被害者の仲間入り寸前で引退したので難を逃れた。まあ壕さんの怒りを宥めるのには苦労したらしい。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十七話 驚天動地な日々

作 kyosuke

朝陽は産婦人科での検診を終えた、検診と言うよりは保健体育の授業に近くまさか自分の処女膜を見る事になるとは……主治医が男性医にしたのは今の内に慣れて置いた方が後々楽になると言うのが姉の亜沙子のアドバイスである。確かに女医の現状を考えると男性医でも仕方ないと言うのが現状らしい……。廊下にて神流と出会う、外科医であるが複数の症例を抱える患者も多く他の専門医との打ち合わせも生じて来る。
「久隆河先生?」
「うん、女〇器も問題無い……けど避妊はしてね、今は」
電子カルテを視た神流の言葉に迫力が増したのは気のせいであろうか……朝陽は頷くしかない。未成年の体を求めて来る不定な連中が居るのも芸能界だ、神流はその事も踏まえて釘を刺したのである。検査着姿の朝陽を見ても何処か護りたくなる程に可愛いく見える……。
「それと支援互助会からの案内もあったわね……」
「?」
「この症例が出始めた当時にある厚生労働省官僚と国会議員数名が患者本人やその家族の居場所として幾つかの大学病院内に事務所拠点を置くように要請、まあ最終的には各県に一つは出来たけど、研究施設やらフリースクールを兼ねていた訳、この辺りは朝陽と真澄が通学している緑丘学園が学習内容を提供していたけど伝染しないって判明すると本人が通学可能なら受け入れたってなったのよ……」
「通学可能なら?」
「ここに保護されるまで虐待やらされていたケースも珍しくなかったからね……そんな状態だから通学する事も出来ずに施設内で通信教育とリハビリ、その後にこの自治体に住民票移した方も居るわ」
中には家族揃っての移住も……今でこそどの学校でも受け入れているが不遇時代の性転換症発症者の最終学歴に関して言えば高卒があれば良い方で中には中学卒業を得ないまま成人に迎えた方も居る、彼女は自治体主催の成人式招待状を受け取るも当日姿は見せなかった。無理もない公立中学校が通学拒否をしておりその問題が解決しないままである……後に彼女は自治体がある町から住民票を移した、補償問題に取り組む弁護士先生の紹介で緑丘学園があるこのベットタウンに移住する事にした。自立に向けての行動だ……数年後には高卒資格を得たがちゃんとしていれば大学にも行けた。彼女は未だにその自治体からの補償金は拒否している、通学拒否を要求した保護者を明かすまでは受け取らない様だ。
「確か緑丘学園の一般進学コースの子も居たから……あった事があるかもね」
神流はニッコリするが朝陽は笑うしかない。


「……へぇ、久々井さんだったんだ、芸能科コースで性転換症発症者が出たって聞いたからさ。多分この病院じゃないのかなって思った」
支援互助会の事務局になっている別館にてポロシャツ+プリーフスカートと言う夏季学生服に縁無眼鏡をかけ長い髪をバレッタで束ねた何にも文学少女な藤河 ましろは検査着姿の朝陽を見て言う、まだ面影がある。朝陽も驚く、一般商業コースでありながらも顔立ちやらボディラインの美しさから芸能科コースの面々にも一目置かれる、真澄とは同じクラスなので朝陽の事は知っていたし委員会活動の時に顔を合わせる。
「藤河って性転換症発症者だったのか」
「うん。私は中学一年生の初夏に発症してね……幸運だったのが健康診断時に前兆が出たから落ち着いて対処出来たって言う事、それにしてもこのサイズなら下着に困らないわね」
ましろは俗に言う巨乳の範疇に入るサイズだ。ポロシャツ姿もエロく谷間を形成する……。
「ここは遠方から来た子の待機場にもなっているのよ……健康診断時のね」
発症から一年は月一で入るらしい、これには重大な障害や症例が出てくることが希にあるのだ。これも不遇時代に手遅れで若くして天に召されてしまい海外では国家賠償訴訟係争中と言う所もある。更に性転換症を初めとする第二次性徴異常発育症候群の診察と治療は国が各都道府県にある指定の大学病院か大規模病院で対応、医者の都合上である。
「わからない事ってある?」
「今の所は服装かな……」
「それだったら心配ないわ、久隆河さんが貴方の母親と姉と一緒に調達していると思うから……因みにアパレル業界も初回は性転換症発症者の生活支援って言う事で割引してくれるわね……靴のサイズも変わるしね」
「はぁ~至れり尽くせりだな」
「元々は外国でのボランティア活動は企業も参加するのは当たり前だったからね……それに就職してくれるのなら投資とも言える」
朝陽は笑うしかない……ましろはニッコリして告げる。
「生理は暫くは不安定になるからナプキンとかは持ち歩いた方がいいわね……重たくなるのなら保健室で休む事ね」
「はい」
「もしかして初潮のアレみちゃった?」
頷く朝陽にましろも遠目になる、どうも彼女も同じように確認したらしい……微睡の意識ですら一気に目が覚める下血なら驚くだろう。
「わかるよ、私も初めて見た時に失神したから……」
「蒼依ちゃんも来ていたんだ」
朝陽は振り向くと検査着姿の少女が居た、まひろは知っている感じである。
「もしかして……久々井朝陽?」
「ええ、アイドルの……そうよね」
「一応研修生だから……先輩の様にユニットもレギュラー番組無いのはアイドルじゃない」
この分だと報道はされている訳か……まああんまり記事になってないのは事務所側の配慮を察したマスコミの判断である。最もスキャンダル目当ての連中も居るのだがシャンデリア輝の人脈の中には法曹関係者も居る。


「続けるのですか?」
「引退も考えたけどモダンガールスの社長が声をかけてくれてね」
蒼衣ちゃんの目が見開く辺り食いついて来たと分かる。室内にあるソファーに座るとまひろはオートコンビニから飲み物を買っている。
「確かあの事務所もアイドルグループ内での内紛が表に出ているよね……大丈夫なの?」
朝陽は苦笑するのも分かるがアレは半分売名行為かやらせ行為に過ぎないが残りは深刻な問題である事も事実で原因も察した。自身もシャイニング事務所で似たような状況になった事もある、母親を宥めるのが何時もの事だ……今回もモダンガールスの事務所社長が声を掛けなければどうなっていたか……。
「見通しは立たないけどやる価値はあるって言う事ね……」
まひろはそう思いつつも朝陽を見て思う……彼女は思った以上に無理をしている。会話をしている内に他の少女達が戻って来て朝陽は持っていたスマホは彼女達のアドレスを記憶する事になる。




「退院?」
「問題は無いって言う事、ただ……体力や体調は変化している事は念頭にね」
数日後、主治医から言われた朝陽は途惑う。昨日泳いだが確かに遠泳能力が男性よりも落ちいたのだ。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十六話 青天の霹靂

作 kyosuke

性転換症発症すると職業上困る事がある……芸能の世界である。一口に芸能と言っても多種多様であり役者や落語家の様に女性でも何とかやっていける場合もある。だがアイドルになると難しくなる、つまり少年アイドル本人若しくは所属事務所側にとってリスクなのだ。例え発症するのが各都道府県で数名であれば……そりゃあ陰謀論も湧くわな。自分は同僚とそんな話をしていた時に意識が途切れたらしく救急搬送された。それが現役高校生男子アイドル久々井 朝陽(くぐい あさひ)としての最後の記憶。


……ズシっとした重たい痛みと違和感に眼が覚めて足取り重くベットから起き上がってトイレに……自然と便器に座り下着を脱いだ瞬間に真っ黒に近い大量の血に悲鳴を上げた。
「あっ君!!おちついてって!」
聞こえた瞬間に座ると小水が出た……股間を見ると十六年間連れ添った牡の肖像は無く代わりに李の様なモノから小水が出ていた。
その声と同時にハッと鏡を見た、セミロングでクリっとした可愛い顔……検査着の隙間からは盛り上がった胸……呆けていると正面に少女が屈み言う。
「あっ君、性転換症発症したの……」
「はい?」
目の前に居るのが3つ年上の姉である久々井 亜沙子であり朝陽を良く可愛がっていた。


「発症診断検査そのものはあんまりアテにはできませんよ……その検査方法は隣国の大規模治験医療事故の前に出たから信頼できないんですよね、我々は……」
朝陽の主治医である上田先生はカルテを観つつもキッパリと言う、ナプキンをセットしたサニタリーショーツを履き検査着も着替えた後に主治医が来た。発症診断検査は所属事務所が毎年健康診断でしており今年はセーフである。こうなると色々と面倒な事が起きかねない。
「前兆が健康診断後に出る事も珍しくないです、初潮も正常に出ており健康には問題ありません。後は各種手続きを……」
「手続き?」
するとスーツを着た男性が会釈して病室に入って来る。渡された名刺には行政書士 廣嶋 功と記載されている、どうも錯乱状態になった母親と仕事上直ぐに病院に来れない父親の代わりに社会人になって商社に就職した兄である陽一が仕事上知り合った彼に助けを求めた。各種手続きが普通の子よりも煩雑なのだ。
「戸籍の性別変更したのでマイナンバーカードと保険証、通学先の生徒手帳も変更する必要もあります……お名前変えますか?」
朝陽はふと考えるも言う。
「朝陽のままでいいかな」
「はい……では承諾のサインと捺印を」
朝陽が数枚の書類にサインと捺印をする。聞けば代行に関する承諾書である。
「親父は?」
「直ぐには無理、ただ会社の方も配慮して帰社したら直ぐに向かわせるって」
朝陽はベットに仰向けになって寝た。漸く軌道に乗れたのに……アイドルとして……。
「朝陽さんはアイドルをされている事はお姉さんやお兄さんから聞いてます……症例公表の有無は自己責任でお願いします」
「はい」
朝陽の場合は名門アイドル事務所“シャイニング”の候補生で年齢上諦める事も視野に入れ始めた。後輩に追い抜かれる事も多々あり兄も姉もこの年齢辺りに学業を優先と言う建前で断念している。それ故にシャイニングに候補生として所属していた朝陽にはこれまで以上に期待をしていた矢先にコレなら……。
「それとお母さんですが鎮静剤を投与してます」
「あっ、お手数おかけしました」
亜沙子も朝陽もまたかと思う、無理もない二人の母親である久々井 真美、旧姓鑑 真美は“元アイドル”と言うがより正確に言えば“地下アイドル”と言う表現の方が適切だろう。父親である久々井 壕が真美に子種を授けた事で兄の陽一が出来てしまうが広告モデルを足場にしており、朝陽も自身の意志とは反してシャイニング事務所所属の候補生だ。ただこの事務所は少年/男性専門である……つまり所属事務所から去る事になる。
「あっ君の口から言った方がいいね」
亜沙子も数年前までは芸能界に居たので直ぐにスマホを操作する。


数時間後、トラックドライバーをしている父親の壕と共にシャイニング事務所前社長であるシャンデリア輝(芸名)が来た。現社長は別件が手放せない状況であるのでこの様な緊急対応する事も多い。外見からしてファンキーなので初対面では変な老人と思うが見た目に反してしっかりしている。
「朝陽、どの道シャインニング事務所からの退所はしないといけない……これは契約書にも記載されている事項だ」
「……その」
「しかたない、朝陽は研究生だから然程TVやイベントには影響はない。ファンクラブの面々には通達OK?」
かりゆしウェアスタイルでサングラスにお洒落な革靴パナマ帽と言うスタイルであるが仕事をしている。
「はい」
「その後は?」
「迷ってます……」
シャンデリア輝も朝陽の立場も心情は分かる、彼自身の評価は良いがステージママである真美の評判は芳しくない、今の社長も対応に手を焼いている一人である。そして彼自身には事務所が立て替えているお金が存在しこれが気掛かりでもある。かと言って続けるにしろ芸能事務所に所属してなければ別の借金が生じる可能性もある。
「それならワイフが社長をしているモダンガールスは?」
「!」
そこはシャイニング事務所と双璧をなす老舗大手の事務所だ。亜沙子も朝陽も気が付く……まさか。
「そっか、二人には話してなかったが輝さんの奧さんはアイドル事務所の社長をしている。最も事業統合するからな」
「「はい?」」
聞けば税金関連で手続きが煩雑になるので事業を継いだ息子や甥と姪らの提案を受け入れたそうだ。父が知っているのは仕事上取引があるのだ。運ぶものがコンサートに必要な機材と成れば業界の事も詳しくなる。
「芹沢 八重子社長って聞いた事あるな」
「モダンガールス事務所社長?」
モダンガールスは老舗大手のアイドル事務所だ、二人ともその名は知っている。
「シャイニング輝の奧さんでもある……互いに家族の事は非公開していたしな」
「「!!!」」
「今頃、息子と甥っ子らが会見しておる……朝陽は体調に配慮しつつも少女アイドルを目指す事も出来る」
倒れる直前のオーディションでも不合格になって性転換症発症……朝日の心情と精神状態は最悪に近い。とりあえずはモダンガールスに移籍する事は出来ると言う。


「……うん、素材も思った以上によいわね」
柔和な笑みを浮かべた品が良い老婆でもある芹沢 八重子は検査着姿にてベットの上に座る朝陽の顔を撫で見定めた。主治医はその場を去っており暫くしてスーツで身を固めた老婆が秘書である女性を従えて来たのである。
「ダーリンの会社以外の所からの借金も無いって言うのは確認しているわ……問題は無いね」
「……僕でだいじょうぶでしょうか?」
「偏見の眼ね、確かにあるわね……最もそんな事を云う素人に対して“おねぇ系”の方の口撃がスゴ位事になるから……昔ほど無いわよ」
「よろしくお願いいたします」
力無く言う朝陽に八重子は言う。
「鏡には私から言っておくわ……」
「えっ?」
「あっ、昔ねプロデュースした事もあるのよ……昔から無茶する子だったから、壕さんも苦労したって」
朝陽は自分の両親がよもや芸能界でも重鎮である二人と親交がある事を初めて知ったのだ。


「……」
「朝陽ちゃんはとりあえずは移籍に同意したわ、貴方の夢を子供に押し付けている感もあるけど……良い娘さんね、朝陽も」
待合室にてスタンドにセットされた点滴を受けてベンチに座る真美は恩師でもある八重子と話していた。
「借金の事はこっちで引き継いだと言うよりはもう同じになるからね」
秘書の女性社員が端末を操作し会見の模様が流れる。業界内では幾度か噂があったが八重子も勇退し古参社員の一人が社長を継ぐ事は公表されていたが、まさか合併するとは……。
「この際、私らに任せて見ない?」
「えっ?」
「歌唱力もダンスも経験である事は私も把握している、重々分かっているでしょ……業界人らして貴方の評判、確かに評判は悪い……だが先方さんも各種ハラスメントをしている方も少なくはないからデマも混じる、これは業界に身を置く一人としては看過できない」
「……わかりました、おねがいします」
真美は力無く言う、アイドルの道を閉ざしたあの日から目指していたが……最後まで適う事は無かった。


「これって?」
「貴方の男〇器サイズを忠実に再現したディルト……仮死状態なのに常時勃起しているから計測出来た訳」
朝陽はかつて存在した男〇器の模型を手にして何とも言えない気持ちになる。朝陽は個室に移動しており暫くは入院になる……ユニセックスのパジャマを着ている。
「本人の承諾無しでするのは気が引けたけど童貞のまま性転換するって言うのは……その、私も朝陽だったらヤッてもいいかなって~~~」
顔を真っ赤にしつつも説明をするのは朝陽の幼馴染の久隆河 真澄、父親が医者であるが父方実家は久隆河運輸と言う会社を経営しており朝陽の父親も社員の一人である。家も近所なので家族同然の付き合いであるが恋人ではない。
「……」
寝ている間に童貞喪失……何となくだが男としては悔いが残る、朝陽は何とも言えない気持ちが別の意味で沸いた。
「とりあえず、スリーサイズは平均だから下着に関しては困る事はない」
ベットの上に置かれた紙袋を見ると下着で有名なブランドである。
「一ノ瀬運輸の社長さんの甥っ子も最近発症したって聞いたけど爆乳で大変になっているからねぇ……」
スマホを見せると朝陽は理解した、これは研究生同期の連中がナンパする程の爆乳少女だ。状況次第では一発退所も仕方ない、最も一ノ瀬社長を怒らせるとコワイ事は知っている。
「突発的になったからカウンセリングが中心になるわね……男性に戻る事は出来るけどそれは生殖機能を持たない性〇を形成する事になる、国によっては年齢的に許可するケースも出てきている」
「聞いた事がある」
個人の幸せを追求した結果であるが何れも数年の法廷闘争の末に自治体か国家が世論やらに根負けしたと言うのが実情である。
「皆には既に知られているのか?」
「……うん、仮死状態になっての搬送だからもしかしてって察した方も居るって……多分シャンデリア輝さんが説明している」
朝陽はとりあえずはアイドルを目指す事になったが先行きは掴めない。兄も姉も学業優先して芸能の世界に見切りをつけた、その時の母親の発狂ぶりを知っているだけに朝陽も迷う。すると朝陽の担任である宇都宮 渚沙先生が顔を出した、小柄であるがスタンドマン一家で育ち空手と柔道は師範資格を持つ猛者で通勤中に痴漢を飛び蹴りして仕留めた事は今でも所割署にて語り継がれていると言う。
「学校の方も既に伝えているから……制服はスラックスも用意してます」
朝陽も真澄も同じ高校に通っているが芸能科コースがあり朝陽が所属している、真澄は一般科商業コースである。学校側も引き続き通学してほしいので今頃生徒手帳と制服一式を用意している。
「女子生徒用スラックスもあるんだ」
「うん、私も持っているよ……」
真澄が言う、これには電車通学している生徒もおり制服のデザインの良さからか痴漢や盗撮される事もあり可也前から女子生徒用スラックスが用意されているが学校の運営母体は不遇時代から性転換症発症者を受け入れている事情もある。
「それとレオタードに水着もね」
「あっ……」
芸能科コースの学生水着はハイレグである……これは写真撮影にも慣れて貰う為に敢えてしているが強要ではなく、一般科と同じくスパッツタイプでも授業を受ける事は出来る事にしており、宇都宮先生は不敵な笑みを浮かべる。パッと見ると素朴な可愛さがある。これは男の股間にあるモノが隆起するだろう、ふとベットの上に置かれているディルトを見て言う。
「案外大きかったんだね、う~んなんか惜しいモノを」
「「先生……」」
彼女自身も可愛さから生徒からも人気があるのだが……その言葉と顔に二人は糸眼になる。
「クラスのみんなには伝えているから、無理をせずにね」
そう言ってプリントを束ねたファイルを渡す。各教科の教材である……とりあえず暇つぶしには困らないな。


「そうか……母親の方も世話になってしまったか」
「娘さんの方は受け入れた感もあるが徐々にギャップを感じてしまう事も……と久隆河先輩、戻らないのですか?」
「大学病院はワルでないと務まらないさ……それこそ神流(かんな)の様にね」
大学病院の屋上にて朝陽の主治医と話すのが真澄の父親である久隆河 信人であり妻の実家でもある個人医を継承、朝陽が性転換症発症したと言う事でこれまでの病歴を提供したのでそれに伴う書類を提出しに来た。妻の神流も医者でありこの大学病院に勤めている。
「アタイがなんだって?」
スクラブ姿の久隆河 神流が仏頂面で背後に居た。どうも救急外来の助っ人に駆り出された感じだ。
「御疲れ、朝陽が発症したよ」
「!」
「性転換症、もう意識も戻っている。今は真澄が傍に居るよ」
職業上様々な病気を診ているだけに感染と聞いた途端に戦闘モードになる神流は性転換症発症には驚き、直ぐに担当医が持っている端末からカルテを見る。
「異常発育症は無い訳ね」
「後は精神面でどうなるかな……問題は母親の方だ」
切り替えたカルテを見た瞬間神流の表情が険しくなり、駆けだした。


「入院?」
「そうよ、医者としては直ぐにも治療したいわ。朝陽さんを身籠る際に無茶したって言っていたわね……本当に」
真美を担当する主治医は真美に病名を告げ説明している最中に乱入した神流に驚くがその迫力に苦笑するしかなく、初対面である自分よりも患者の事を把握しているので説得を任せることにした。
「精密検査してみないと分からない所もあるわ」
「……」
「朝陽さんにはタイミングを見て話しておくわよ……壕さんにもね」
先に亜沙子に話したほうがいいだろう……神流はため息をつく。


数日後、朝陽は運動が許可されたので病棟内にあるリハビリ室にてランニングマシーンで走っていた。やはり体力が落ちている感は実感できるがそれ以上に分かるのは平均サイズと言う胸の存在感……トレーニングウェアは姉が用意してくれた。
「走っているね……」
「社長!」
シャイニング事務所社長の輝夜 高に朝陽も慌てて挨拶をする。
「皆には伝えたよ、落ち着いたら遊びに来てくれ……」
シャイニング事務所の夏はライブであり研修生でもバックダンサーとしてのオファーもあり朝陽もアイドルグループのバックダンサーを務めている。
「この病気は仕方ない、代わりにジョニーが入っている。私物のノートを参考にしているが大丈夫か?」
「もう、用が無いですから」
「……」
社長も朝陽の表情を見て分かる……悔いが残るのだろう。ライブツアーにてバックダンサーグループを束ねている担当者も驚くほどに書き込まれているのだ。この前の新グループの最終選考の際にも朝陽の採用を巡って関係者らがモメた。これが功を奏した格好だ。今回は……だが今後の事も考えると売れっ子が性転換症発症した時の対応策も考える必要もあり母親が社長をしている事務所との合併を決意した父親の真意は……。
「(朝陽の様なケースもあるって言う事か)」
高は苦笑しつつ思う。あんな父親でも人情味溢れる古臭い方だ。
「朝陽、事務所に私物とかは」
「あっ、いつも持ち帰ってますから……」
研修生や研究生の立場を理解している、明日には解雇を言い渡される可能性もあるのだ……思えば彼女の兄もそうだった、別の事務所であるが聞けば朝陽と同じく高校生になってしばらくした後に学業優先にしたいと言って事実上の引退したのである。今の朝陽は“ちょっと小柄な女子高生”と言う感じで女性や男性にも親和性があるし、アイドルに求められる技能はある程度なら出来る。全く……抜け目ない、我が母親ながらも辟易するが新プロジェクトが難航しているのだろう……そこに白衣を着た人物が姿を見せる、朝陽の主治医である。社長は少し席を外した。
「問題は無いですね……運動機能は」
「強いて言えば胸と股間……が気になる」
様子を見に来た主治医は男性なので言葉を選ぶが朝陽にとってみれば違和感がある、特に男性〇の喪失は突然だったので幻肢痛に似た感じの症例が出ているのだ。
「輝夜社長……お久しぶりです」
「お~随分と大人びたな……兄さんは元気か?」
「はい」
亜沙子は朝陽の為に水着を用意していた……競泳用で太腿まで覆うスパッツ型である。本当に胸のサイズがほぼ同じで助かった感はある……。
「水着?」
「時折、泳ぎ方を忘れる場合があるので確認する為ですね」
確かに男女の差を感じさせるのは水着だ……。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十五話 ボーダーレス

作 kyosuke

隼人はハンドルを操作しつつも時折菜緒を見る、小柄である以外は何処か男性を惹き付けるナニかがある……彼女に関する機密文書のシールとハンコが幾多も捺された表紙が印象的な報告書を見た時には医学に全く知識が無い自分でも驚く、これならリスクがあっても菜緒の身体にあるDNAを欲しがるのも頷け行動を移す輩が出て来る訳だ。最も日本政府も無能ではない、寧ろ騒ぎにならずに“処理”するのである。ここ数週間この手の任務が多かったが仮想敵国側の黒幕らもこれ以上手を出すと日本に送り出す人選や拠点作りをする事になるので諜報機関が政府要人を説得したと言う方が正しいだろう。
「別荘までは数時間かかります」
「そうなんだ」
「元々はバブル経済崩壊で頓挫した別荘地でしてね……交通アクセスも悪かったので我々には都合は良かったのですが、付近を通る国道が新ルートに切り替わるのと別荘地自体が土砂災害リスクがある……」
菜緒もこれで理解した、つまり万が一の時には使えない事もあるのだ。
「それで実弾演習する前に」
菜緒の苦笑交じりの笑顔に隼人は言う。
「あの、本当に古さだけの別荘です」
ナビゲーションシステムの音声が時折聞こえる中二人は会話をする。


一ノ瀬家リビングにて将は玲と宗介が巻き込まれた事件を把握して神妙な顔になる、怒ってはいるが既に警察が介入している。
「そうか……あの辺りは族の溜まり場には恰好の場所だからなぁ」
「舘が来なかったら危なかったさ……」
正弘も警察からの聴取を終えて帰宅したが伯父の迅は色々と動いている様だ。
「バイク二台を弾き飛ばしたって……兄さんも可也怒っていたな」
将は糸眼になりつつも思う。一度アイツラの所で話をつける必要があるな……。正弘までプッツンしたと言うのも分かる、ここ最近地元は学生らが被害者になる暴走族絡みのトラブルが相次いでおり将も気にかけていた。学生時代に拳を交わした相手にも耳に届く程だ……。
「橘さん、夕食まだでしょう……」
日菜子は手際よくドライカレーかつ丼とみそ汁を調理しており宗介の元に……。玲を守ってくれたお礼であろう。
「いただきます」
その様子を見る玲の表情は冴えない、将としてはどうする事もできないのだ。


「すごい、山奥なんですね……」
菜緒も驚く程だが隼人も初めて来た時には同様の言葉を発した……交通アクセスの悪さは想像以上で主要国道から通じる道も酷道の一歩手前、つまり舗装路面が酷い状況である。別荘自体も木々に覆われているので通常航空機でも見つけ難いだろう。
「ー遠山隼人曹長及び護衛対象楠瀬菜緒さんの本人確認を終えましたー」
ナビゲーションシステムの音声に菜緒は驚くも隼人は言う。
「HARU、訓練モードだ」
「ー了承ー」
別荘自体はなんも変哲もないがセーフティハウスとしての機能は十分だ。ガレージのシャッターが上がり隼人はハルシオンRLをバックで居れる。
「よっ……とっ、軽いな」
隼人は菜緒をお姫様抱っこして別荘へと入る。これも護衛対象が動けない場合を想定したのだろう。菜緒はドキっとする感情に迷うが女性器が湿り始めていた、どうも自分の女性器はこの手の男性が好みらしい。


ツインサイズのベットはシーツと大きな枕しかない……菜緒は寝かされると男を誘う言葉を発し、隼人もこうなると覚悟をしてキスをする。菜緒にとって異性から初めてキスされたのだ。
「(性転換症の子は発情するって言っていたけど……なるほどなぁ、確保されやすい訳だ)」
隼人も任務上幾多の女性をベットの上で堕とした事もあり未成年者だった事もある……性転換症発症者とは初めてするが出会って数時間でコレなら護衛が必要になる訳だ。
「あぅ!」
スカートの内側に手を入れてしまったが菜緒の手は拒否をせずに下着中央の部分に誘導する。
「!」
媚薬でも盛ったのかと言う位に濡れていた事が感触で分かる。隼人も状況次第では使う事もあるが菜緒が治験ナノマシンの副作用で性転換症発症したと言う事で市販のモノも危ない可能性もある。
「……」
菜緒も言葉が出ない程に恥ずかしいが体は肉棒を求めている、菜緒は直也だった時に筆下しする事になったが藍の気分も分かる……今自分は隼人さんに魅力を感じていると。
「少し激しくします」
任務で強い媚薬を盛られた女性隊員を鎮めた際に使った言葉だ、隼人は菜緒の下着股布をズラして花弁を撫でると菜緒はスカートのホックを外し隼人は起用にスカートを脱がし、ブラウスのボタンを外していく。今回は菜緒に予備の衣類は用意はしてあるが殆どが対象に着替えが無い状況なので自然と身に着けたテクだ。
「っ……隼人さんのモノ」
菜緒自身にもあった雄の器官に触れると何故か嫌悪感は無い、あの事故で失った時に身動きが取れなかった事で視認せずに精神的ショックが来なかったのも功を奏した。
「あっ……」
菜緒は軽く愛撫をするとそのまま肉棒を咥えた。藍が何時もしていたように……それは牡を惹き付ける為の行為と分かる。隼人も理解した……不安定になり何か背徳的なモノで解消しないとコワれてしまう。自然とシックスナインの形になり丹念舐めあう。
「隼人さん、寝てください」
「ああ……」
騎乗位を選んだのは体格差を考慮したのか……菜緒の唾液によりイキり起つ肉棒に菜緒は跨り腰を慎重に下す。
「っ……」
自身の処女華穴に隼人の亀頭が触れると徐々に腰を下ろした、途中で何かに引っ掛かり痛みが来た。処女膜だ……その膜を破られる側になる事になった菜緒は思う……藍の強さに。
「んぁ!!!!」
「無理はしないで……動きますよ」
隼人も処女を喰ったのは初めてではなく扱い方は心得ている。じっくりと男の味を教え込む。


「ありがとうございます」
「あ、その後半はもう……」
騎乗位で初めて膣内射精&雌絶頂した菜緒に隼人がそのまま押し倒してしまいバックのまま二回目の膣内射精してしまったのだ。隼人もハッとしたが菜緒は満足げである。
「あの……風呂入りましょう」
菜緒は頷くと隼人は抱えてそのまま浴室に……何分腰が抜ける程の快楽に驚くが隼人の激しさは軍内では有名であるのは後に知った。隼人は途中でマットの上にあるシーツを取り外して用意してあった専用袋に……菜緒の破瓜の血さえもサンプルになるので回収する様に厳命を受けていたのだ。


翌朝、初めての朝帰りをしたが藍も真奈美もニッとして言う。
「この分だと遠山さんの所に嫁入り濃厚かな」
「うん、従妹しては賛成だね」
「……はい?」
「私の母親、旧姓が遠山」
真奈美の言葉に隼人も苦笑する……従弟の時から変わらない性格なのだ。発症後に高校入学拒否されたが直ぐに陸軍士官高等学校が受け入れを表明、軍隊内で女性比率が多くなっている。


迅は社屋にてスカニアを見る、ブルバーと呼ばれる本来は野生動物から車体を守る装置であるがドレスアップのパーツでもある。
「社長、久しぶりにやっちゃってますね」
「ああ……正弘があんなにキレたのは久しぶりに見たよ。本当に」
専務をしている元銀行員の桐野 一郎も呆れるが大型牽引貨物車は制動距離が長くなる……仕方ない事だ。高校生であっても運転免許持ちなら分かる事だ、道路の真ん中でバイクを停車すれば……。
「バイクの所有者とは話ついているんですか?」
「そいつらのバックな……俺とは高校の同期でバイク屋とカフェを営んでいる、トラブった相手が俺と知った途端にLトークが入って来た。どうも路怒男爵の現総長とその側近らは色々と問題を起こしている様でね……今頃は捜査員らのモーニングコールでガサ入れされているかな?この分だとメンバーらは自身の保身に走るからね」
迅も遠目になるが仕方ない事だ、恐らく逮捕者の中に幹部が居たのだろう……現総長はあの現場に来なかったが遅かった様だ。やがて会社所有の駐車場に小太りした男性がドレスアップした軽トラから降りて来た。やはり険しい表情だ。
「迅!」
小暮 雷は迅とは高校時代からの友人であり暴走族をしていたが更生して今ではバイク屋とカフェを営んでいる。
「雷か……」
「バイクの事はこっちが責任を持つよ。元々事故車からの再生したモノだ」
雷の言葉に迅は察しがついた。なるほど解体屋があるか……。迅も時折世話になる業種である。
「それにあの二人はチームを抜け出したいって相談を受けている……現総長の津崎は許さなかったようだけどな……」
雷が言うには暴走族活動の資金面でのトラブルが表面化しており総長及び幹部らに対する反発も……粛清も頻発していたが昨晩の騒動により弱体化所か消滅の危機すらある。
「万が一の時にはこうするって決めていたしな……玲だったけ?」
「ああ、将の娘さ」
「……そりゃあ正弘が大立ち回りするな、よく病院送りが出なかったな」
雷は遠目になるのも無理はなく、程なくして路怒男爵総長津崎は刑事らにより逮捕された事を知った。


「逮捕か……アイツら色々と染めていたからな」
舘はバイト先の国道ガソリンスタンドにて来客したOGの一人から路怒男爵総長らの逮捕された事を知る。
「路怒男爵は解散するのか?」
「恐らくは……」
舘は給油装置のノズルを操作しつつ言う。彼自身も暴走族をしているので路怒男爵の面々の心情は理解している、新興の割には活動が続いていた方であるが現総長らは非合法で金を得ていた事は知っていた。一般人や学生が被害者になる犯罪行為によって……ロードウルフはそのような事を禁じており犯したメンバーを警察にも突き出した事もある。
「一ノ瀬社長の姪っ子ってそんなに価値があるんですか?変態が買い求めるって?」
バイト仲間でもあり別の暴走族/半グレに属している少年が尋ねると舘は言う。
「その変態が“有力者”ならあり得る話だ。まあ翠の姐御の所は断るさ……一ノ瀬家に恩があるから早々と引いた」
「ぁ……」
「玲ちゃんに絡んでマッポにしょっぴかれる、隣県の連中なんてPCの追跡を逃れたって思ったら事故って腕を電柱を支えるワイヤーに切断された」
「まじっすか」
「これが胴体や頭なら洒落にならないだろうよ」
舘はそう言いつつもOBの一人木藤の愛車から出たゴミを片付けた。彼は飲食店経営者であるが色気が漂う形態である、なお愛車はビンテージモノの外車バンである。
「木藤さん、空気圧も見ておきますか?」
「頼むよ、ちょい遠出するから。それと携行缶にも入れて置いてくれ」
ガソリン専用携行缶である、ガソリンは気化が激しいので専用出ないと爆発事故を起こす。それだけ燃費が悪いのだろう……。
「舘、関には報告しておけよ……他の族の動き次第じゃOBらに連絡とらないとな……」
「はい」
木藤は舘の傍で作業している子を思い出した。確かロードウルフとは友好的なチームである“馬沙羅”、ロードウルフと並ぶ古参である。
「馬沙羅の霧宮だったな……」
「はい」
「総長の様子は?」
「落ち着いてます、ただ何時キレるか」
GWの最中に総長の恋人が対立する半グレに性的暴行された,半グレの拠点になっている店に馬沙羅の総長が単身乗り込み性的暴行した半グレらを全員病院送りにした上に店内を半壊させた。木藤が経営している店舗の近くであり居合わせた彼が必死になって止めた。当然警察沙汰になり事件のきっかけになった恋人の性的暴行も発覚……半グレ連中も報復をするべく問屋街にて襲撃したが特攻隊長のジンを中心にして返り討ちにしており霧宮もその時に参加。
「確か最後は日下部の爺さんに絡んでしまって、交番に放り込まれたとか」
舘は日下部師範代の事は先輩らから教えられたので手は出しては無い。その半グレ連中は全員移住組だったんだろうな。
「警察もピリピリしているしな……祭の時に手打ちするべきかな?」
「それ新興の連中が納得しませんよ」
霧宮の言う通りだ、ここで言う祭とは集会の事であるが地元の祭りに合わせて開催される交流会でもある。参加者は男女問わず着飾る訳だがこれが暴走族が他の犯罪に手出す要因になっている訳だ。ロードウルフや馬沙羅の様に古参なら気にしてないが新興の所は名を売りたい、玲に賞金を懸けたのは半グレと言うか犯罪組織だ。
「この分だと動いているかもな」
舘は思う。のめり込むと危ないのだ。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十四話 夏の情夜

作 kyosuke

隼人と菜緒は夕食後、ドライブインシアターイベントが開催される会場に自動車で入る。チケットを見せるとノベルティグッズが入った手提げ袋を貰い係員の誘導で駐車する。
「ピックアップトラックとかなら荷台から見てもいいかも……」
「スクリーンがおおきなぁ……」
トイレは大型トレーラータイプが三台用意、キッチンカーまで用意されており映画鑑賞に向けの食品が並ぶがアルコール飲料は提供されてない、これはドライバーが不意に呑んでしまい飲酒運転になる事を恐れを危惧した主催者側の決断である。ノベルティグッツが入った手提げかばんから出て来たチケットに菜緒は言う。
「あっ、ポップコーンの無料引換券だ」
「じゃあ取りに行こう」
あくまでカップルを装っての護衛任務、アサルトライフルが入ったケースも楽器ケースに偽装しているのである。襲撃の恐れは無いとは言い切れない……。
「(問題はないとおもうが……)」
本当に欲に眼が眩むと事の善悪がつかなくなるのだ。隼人はそう思いつつも愛車から出る。


「これで全部と……」
「助かりました、宗介さん」
玲と宗介は日菜子がご愛用しているスーパーマーケット“丸頓屋”に来ていた、元々は食品問屋でどちらかと言うと飲食店向けの食材販売を主にしていたが近年は一般小売も手掛けている。実家が料亭をしている日菜子にとっては馴染みがあり、彼女の愛車は三沢自動車が長年販売している軽トラ“キャロル”……実家で使っていたモノである。
「久しぶりに顔を出した方々ですからね」
就職や転任で三沢市から転出した門下生らが顔を出してそのまま宴会になったのである。調理に追われ買い出しに行くタイミングを失い困っていた所に宗介が来たので頼まれた訳だ。最もデートも兼ねているかもしれないが。
「ん?」
国道の方から響くエンジンサウンドは不快に聞こえるのも消音器を外している違法改造されたバイクから発しているのだ。
「この辺りって道路が広いから走りやすい上に集会に適した場所も多いから、あんまり夜間は近寄りたくないって言う人も多いんですよ」
正弘と玲の父親である将や伯父の迅が学生時代の時には暴走族同士の抗争が絶えずPCのサイレンが毎晩鳴り響いた、そして遂には数名命を落としてしまい暴力団やらも絡んでいた事もあり沈静化したのである。
「一ノ瀬運輸の社員って」
「その時の抗争を知っている方も少なくはないですからね……」
補導や保護観察で済めば御の字、これは宗介も分かる。
「じゃあ戻るか」
宗介は運転席のドアを開けようとした時に気が付いた。暴走族の少年らは玲に狙いを定めていたのだ。宗介はヤレヤレと思う……穏便に済ませよう。
「……悪いが、彼女と遊ぶのなら諦めな、君らの様な不良とはお付き合いはしないよ……」
「あぁ~なにいってるんだぁ」
迫って来る暴走族の少年は凶器を取り出すも宗介は殺気を出さない。特攻服に刺繍された路怒男爵と捻りも無いチーム名を見た玲は直ぐに新興と分かる。玲も身構えた瞬間に別のエンジンサウンドが鳴り響いた。
「芋野郎、これ以上彼女に付きまとうと酷い目に逢うぞ……」
ロードウルフの舘が言う。眼光鋭く路怒男爵の数人も少したじろく。
「玲、いくぞ」
一礼した玲は助手席に座ると同時に宗介はキャロルを急発進させた。足回りは少々イジっている事は宗介もハンドル握り挙動で分かる。
「玲、通報したのか?」
「うん……恐らく追って来る」
宗介もバイク二台が迫って来た事はバックミラーで分かる。時間帯的に交通量が少ないから立ち塞がれる。バイクから二人が降りて来る、手には凶器……幾ら何でも宗介も無事では済まされない。
「玲、何があってもあけるな」
宗介はそう言うと車外へと下りる。バイクを運転していた二人は直ぐにキャロルの方に近寄ろうとした瞬間バイク二台を弾き飛ばされバイク二台は路面を転がり大破する。
「!」
濃紺色に下部を耐摩耗塗装されたスカニア重トレーラーはループ上にあるフォグランプを点灯しており車外へと下りて来た男性は虚を突かれた路怒男爵のメンバー一人の視界に拳が写った瞬間暗転した。その時には彼は道路に倒れていた。
「一ノ瀬社長!」
「……この様なクソガキには言葉よりもな拳が効くんだよ」
因みにブルバーと呼ばれる本来は野生動物との衝突時に車体大破を防ぐプロテクターによりスカニアは無事である。吹き飛ばされたバイク二台はハンドル周りが損壊しており操作不能……残りの三人は迅の顔を見た瞬間に悟った、これはもう勝てない。
「テメーら、かくごはいいんだな?」
「社長、過剰は……」
「わかっているさ、俺はな」
何時の間にか一ノ瀬運輸のロゴがパネルバンに刻まれた三沢ロードポーターと呼ばれる四t車が止まっておりドライバーが降り、同時に各所に散らばっていたが仲間の危機に集まってしまった路怒男爵の面々を次々と叩きのめしていく。
「橘さん」
「わかりました」
手加減はするが正気に戻るのか心配だ。正弘さんがキレると収まるまで時間を要する。既に夜の九時を過ぎているがこの騒ぎだ……直ぐにPCが来た。こうなると路怒男爵の面々は逃げるしかないのだ。


「正弘も久しぶりに暴れたな」
「最近のガキは引き際を知らんのかな……たく、一撃で倒れるもんかね?」
顔面が腫れた路怒男爵は駆け付けた警察官に確保されて連行……夜須も久しぶりの光景だ。
「丸頓屋の方も逃げられた……喧嘩相手が舘だったら分かるけどな」
夜須は玲を見ると不安な表情になり宗介は寄り添っていた。
「バイク二台を弾き飛ばすとはなぁ」
「車線の真ん中に止める方が悪いさ……所有者は?」
迅の言葉に夜須は苦笑する。PC後部座席で項垂れているのだ。両サイドに警察官が乗り込んでいる。


ドライブインシアターイベントが終わり、隼人と菜緒は予定通り別荘へと向かう……今回は軍人もガッツリ出て来たので隼人は職業上気にする所であり、菜緒も分かる。ドライブインシアターの良さは会話が出来つつ鑑賞出来る……菜緒は隼人を見て思う、本当に恋人だったら……。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十三話 夏の一刻

作 kyosuke

楠瀬 菜緒は大学に復学するも直ぐに夏季休暇に突入、しかし長期入院による休学によって生じた遅れをカバーする為に補習やら課題を片付ける日々である。普通なら退学もあり得たが治験が予想外に効いている事を把握した大学側の温情に菜緒としても答えるしかない。新たなバイト先も問題無く学業と両立している。
「教授、ありがとうございます」
「……お盆に家に居ても息子に孫を押し付けられるし、楠瀬さんが復学したと聞いてね、デキが良いレポートを見ると嬉しいわよ」
個室にて女性教授はプリントアウトされたレポートを読み終えてにこやかに言う。やはり物足りないらしい事は確かだ。
「女の身体には慣れた?」
「はい」
菜緒は成人してからの発症であるが特殊な事例だ、遺伝子障害の治験が元での発症は何例かあるが全身大火傷の治験では彼女が初……これは遺伝子治療が安易に実用化出来ない事を意味している、しかしながらも菜緒が生存した事は事実だ。
「就職で男女の差がここまであるって思いもしませんでした」
「そうよね……どうしても女性は結婚と出産もあるからね、でも最近は雇用側も改善する動きも広がっているわよ」
女性教授の個室にて護衛の柊 真奈美も分かる気はする。軍隊でも同じ事なのだ……。


数分後、退室する菜緒と真奈美……夏季休暇でも校内にはチラホラと人はいる。
「……楠瀬さんは恋はどうするんですか?」
「同性愛になるかもしれないけど、双方の親からしてみれば理解が出来ないかな……」
「きっかけがあればいいのですね……」
真奈美はニッとしてスマホを操作し数秒画面を見つめて言う。
「身内で体力もテクも一押しの方をリストアップしてます」
この表情はもはや合コンのノリに近い……菜緒はそう思う当たる節がある。悪友らが合コンをセッティングする時の表情だ。
「はい?」
「藍さんも了承しました、菜緒さんがちゃんと男性と性行為出来る様に」
「ぃっ!」
「健康面では問題ありませんよ、菜緒さんは可愛いですから元男性であろうとでも……勃起します、自身を持って!」
真奈美は喜々しつつも言う。


真奈美はミサワハルシオンに乗り込む、この車種はハッチバックと呼ばれる車体形状を持ちミサワサザンをルーツに持つ……ギリシア神話に置いては“アルキュオネー”でありカワセミの由来にもなっている。今回の任務のために用意された車両の一台で菜緒の移動にも使われている。エンジンサウンドは自動車には疎い菜緒でも分かる程に力強くフルタイム4WD駆動も力強い。リアスポイラーが如何にもっていう感じを出しているが防弾仕様である。
「藍さんとは高校時代にセックスしたのですか?」
「否、小学生の時さ……“特別授業”で互いの性器に興味持ってね」
まだ直也だった頃の話だ、兄が持っていた18禁書物である程度は把握していたので藍の秘所を丁寧に開発出来たし藍に肉〇を扱いを教える事も出来た。その後は互いの両親を初めとする周囲の眼を気にしつつも秘め事が続き小学六年生の夏に童貞と処女を失った。
「まあ兄や姉にはバレたけどね」
菜緒は苦笑する……その後は父親の母校に藍と共に通う事になる、これには色々と事情があった事は真奈美は藍やその父親からも聞いている。ハルシオンの助手席に座った菜緒の言葉に真奈美は思う。本当に酷なのだ……菜緒はまだ異性との恋愛に迷いが生じている。




真奈美らが活動拠点にしているのは三沢市郊外にある流通倉庫の一角……昔から軍用車両を初めとする物資の運搬に請け負ってくれている運送倉庫会社の貸倉庫である。社長も従業員も元軍人であり予備役登録している社員も少なくはない……楊博士らの警備本部でもあるのだ。部屋の一室にて如何にも軍人って言う男性が待っていた。ポロシャツにスラックススタイルだが筋骨隆々って言うのは腕を見れば菜緒も分かる。
「真奈美か……」
「少佐、作戦行動中では?」
「ああ、米軍のガイドさ……アイツラも可哀そうにカリブの孤島送りさ」
菜緒はギョっとするのも無理はない、米国政府にはカリブ海にある某島にテロリストらを収監する施設がある事を公表している……主にイスラム系過激派組織だが民兵でも危険思想者なら送り込んでいる様だ。
「君が楠瀬 菜緒さんか……初めまして陸軍の陣原 士郎少尉だ、真奈美の上官の一式とは同期だ」
菜緒は一礼すると彼は笑う。
「何事かと思えば……確かにウチの様なロミオとジュリエットもやる所は性病はNGだからっていってもな」
「士郎、愚痴を零すな……彼女の場合は相当特殊だ」
一式は二人の背後から現れた……。苦笑交じりな表情であり何時のも事なんだろう、
「そうだったな」
少々口が悪いが軍人しているのだ……菜緒はそれが理解できる。
「申し訳ない……相手も聞き訳が良い面々ではないのが多い」
「幾度か警告しても平然としているからな……楠瀬さんを誘拐を企んだ所は全部潰したのか?」
頷く士郎に一式は呆れる、嘸かし永田町の面々に説明する六本木や市ヶ谷のキャリアは大変だろうなぁ。確か隣国でも問題視され始めたカルト教団でこの前本国幹部を事故を装って自動車丸ごと吹き飛ばした所だ……遺体が回収出来ただけでもマシとも言える。最も遺体の状態は最悪な状態であるが……。
「で……この子が瓜を割るのか?事情は分かるが」
「……」
士郎は菜緒の複雑な表情を見て言葉を選んで発言しているが……。
「幻肢痛でも性器の喪失は利く、男〇器を突然失ってしまうとな……よく精神が崩れなかったと思うよ」
同行している軍医の言葉に士郎は苦虫を嚙み潰したような表情になる。
「真奈美、彼女が楠瀬 菜緒さん?」
女性数人が姿を見せると麻奈美は頷くと菜緒を見た彼女達はニコっとする。
「うん、服装で少し大人っ気を出せば……」
「はい?」
「楠瀬さん、デートをしてからその夜に……セーフィティハウスの一つになっている別荘でしましょう」
「え!でもそれってダメじゃ」
「そこ……突入訓練した後で壊す予定さ……」
菜緒は彼女らに連行されて更衣室に消えた。




菜緒が処女を授ける相手として選んだ遠山 隼人と対面した菜緒は視線を向けた。見上げる程に背が高いと感じた。無表情であるが何処か安心感がある……。
「遠山 隼人曹長です、その……自分この様は事は不得意でして」
「その、変な事を頼んで申し訳ないです」
確かに規律を他職以上に求められる軍隊ではこの様な事が発覚すれば処罰も重たくなる。
「命令とあれば……楠瀬さんの経緯も把握してます」
自分は護衛対象だ、菜緒は苦笑するしかない。因みに何度か大学内やバイト先でも警戒警備しているが菜緒は気が付いてない。つまり護衛任務は問題は無い。
「おねがいします」
隼人としてはこの様な事は不得意であるが出会いが無い職業上、軍学校の同期からの合コンへの出撃要請は良く入る。顔立ちが少々オジサンになるのだが、合コン相手側の好みか安心感があるのか……。


隼人はミサワハルシオンRLのハンドルを握る、ハルシオンにメーカー純正ドレスアップパーツにエンジンにもチェーンを施したモデルだ。RL(ラリーレイド)は海外仕様になると内装を取ればサンデーラリーにも出れると言う程のスペックで特にラリー競技が身近な北欧では根強い人気を持つ。助手席に座る菜緒も普段乗る真奈美のハルシオンとは異なるエンジン音で気が付く。
「愛車なんですか?」
「はい、まあ……任務でも使いますので」
防弾加工済みであり後部シートにはアサルトライフルを入れたケースとハンドルロックと呼ばれる防犯器具がある。
「デートコースも決まっているんですね……」
「はい、今回は護衛任務の初等訓練も兼ねてますので……その不手際が生じると思います」
「……」
やはり裏があったか……まあ守って貰う身になってしまったので仕方ないと思う。デートと言う事で年齢相応の服装になっている……。





市民プールがある運動公園敷地内にある広場にはフードトラックや屋台が複数出店している。一昔は茶屋があったが経営者の引退と建物の老朽化で消滅、今は諸事情もあり起業者支援として市が提供しているのだ。運動公園と銘売っているだけに需要がある。それだけに審査も厳しいが魅力もある。
「それにしても……玲って美少女だよね」
枝島 麻里香は改め玲を見て言う。全員軽食を買い備え付けのベンチに座る。
「もう彼氏いるよね?」
玲は頷く、表情を赤らめている辺りを見ると麻里香は察した、既に開通している……最も玲は責任感の強い事は知っているから自分の意志で全裸に、正直リーナと既に肉体関係はあるとも思ってはいた。
「玲の彼氏ってどんな感じ?」
「例えるなら正弘さんに似ているかな……」
東中に進学した面々はこれで納得した、玲は少しブラコンな所もある……。
「もう、身体の全てを見せているわね……これは」
同席した男らはがっかりするが安堵感は得られる、玲の父親も兄もコワイのだ。
「そろそろ帰宅するわ」
敦らが言うとリーナは遠い目になる。
「おっ、俺だってそこまで不良じゃねぇよ……」
「ほんとう?」
「峰沢って消えただろ、探す過程でやたら職質されてな……補導と逮捕でうかうか繁華街も出歩けない状況になったのさ」
金髪にリーゼントで巨漢の少年が背後から声をかけた。
「江島さん!チィス!」
東中の男子生徒は挨拶するがリーナと玲は直ぐに眼が鋭くなるも彼は言う。
「っぁ……一ノ瀬 玲と楊 リーナか……敵対する気はないよ、三沢西高校の番長をしている江島 晴だ」
玲はふと思い出す、まさか……初対面で見知らない方がフルネームで言う……理由は複数推測できるが確実なのは。
「身内に一ノ瀬運輸の社員の方が」
「義兄さんが世話になっているから……姉貴の旦那」
やはりか……退院の時の写真は伯父により拡散しているからだ。
「峰沢らを倒したって言うから面拝もうとしたら姉貴に止められてね」
「同居しているんですか?」
「義兄さんの所にね……」
普通ならあり得ないが事情まで聴くまではしない。
「まっ、三沢中学には橋場がいるが、あいつは変に誘わない一匹オオカミだが悪い事は嫌いだし強いからな」
「?」
「一ノ瀬が来なかったら峰沢らはもっと酷い目に逢っていたさ……それこそ病院送りになっていた」
なるほど交流があるって言う事か……玲は苦笑するしかない。



「フェスイベント?機材搬送か?」
「違う、違う……トラックが主役のイベントさ。主に外車とカスタムトラックドライバーでLチューナーらが企画でやっているのさ」
迅が社長を務める一ノ瀬運輸でもLトークの企業チャンネルを開設しているがドラレコで捉えたヒヤリハットや走行や荷物の積み下ろし動画が主だ。迅はあるトラックステーションにて学生時代から顔馴染みになっているドライバーである瀬戸口 誠路と話していた。高校卒後直ぐに父方の祖父の地元に戻り運送会社に就職しており今や専務……Lトークのチャンネルを開設しており有名らしい。二人はある地方都市の倉庫街にあるトラックステーションに居た。
「迅のスカニアってファンに人気があるから是非って」
「開催日は……まあいけるかな?でも箱車と違って華やかじゃないぞ……重機回送屋は」
迅は苦笑交じりに言うも誠路もまた苦笑交じりで言う。
「載せて来るモノによってはセンスが出るからな」
誠路の会社も重機運搬を請け負っており、従兄が担当していると言う。
「趣味車は?」
「そこまで保有する程余裕ないさ、旧車趣味もないし……かといって社員の私物は借りるのも気が引ける」
トラックドライバーに多いのがデコトラの趣味車であるが道路交通法と車両に関する法律上公道走行を維持するのに難しいし、旧車もまた維持費がかかる。
「まっ、11月開催なら何とかなるだろう……」
迅は載せるモノに関しては少々アテがある、誠路も迅の表情から何かある事は分かる……。
「そう言えば誠路の所の碧(あおい)って性転換発症者だったな、昨年だったけ?」
「ああ、高校一年の初夏に発症してな……長女が喜んでいたなぁ、妹が出来たって……」
これが一年早かったら受験にも影響が出る所であるが……。本人にとっては想定外であるが交友関係で如何にか通学は出来ている。
「将の次男坊も発症したって聞いたが」
「みるか?退院した時に日菜子さんが使っていたセーラー服を着せている」
スマホの画像を見た誠路は悟った、これは長男には見せないでおこう。迅も将も怒らせたらコワイ事は学生時代によく知っている者としてだ。
「……血が流れるな」
「歯はまだ飛ばしてないが時間の問題だろうな……恋人もいるし」
「……」
「大丈夫だ、社や正弘と同じだ……」
成程、空手を嗜む好青年か……それなら盃の前に拳を交わしそうだ。
「碧ちゃんには恋人が居るのか?」
「ああ、幼馴染の一人でね。情緒不安定になっていた所で寄り添っていたら恋心が傾いてね……この分じゃ長女よりも先に嫁入りもあり得るかなぁ」
誠路としては碧にも兄や姉同様に大学も進学はして貰いたい、しかし本人は迷っているのだ。



菜緒は隼人にエスコートされて来たのは港湾施設跡を再開発したアーバンリゾート施設、家族向けでもあるがデートコースの定番でもあるので菜緒も直也だった時に何度か訪れた事がある。高層ホテルを中心に様々な施設がある。
「(結構高額だったよな……ホテル内レストランって)」
確かあの時はパンフを見た瞬間に藍も自分の財布と財政事情を察して周辺にあるショッピングモール内飲食店エリアにある和食チェーンである“神楽坂”に落ち着いた。今回も菜緒は考えた末に言う。
「神楽坂にしましょう」
「はい」
護衛演習に参加している同僚の面々から舌打ちやら冷たい眼にされるが隼人は菜緒が高級洋食系のテーブルマナーには疎い事はこれで確証した。自分もあれは食べた気がしないのだ。任務上多いのはそれだけ相手にしている“ターゲット”は日頃から好むのだろう……神楽坂なら定食とアルコールを提供しつつもリーズナブルである。

早めの夕食にしたのはアーバンリゾート施設内にある野外駐車場にてドライブインシアターをする、これは施設内にあるシネマコンプレックスが企画したイベントであり、藍は以前知り合ったイベント会社の方からチケットを貰っていたが二枚のみである。護衛役の真奈美の分を確保するのも難しく困っていた所、菜緒の疑似デートが急遽実施される事に……。
「しかし“ドライブインシアター”とはまた奇抜な」
真奈美の横に座る男性は苦笑するのも無理はない、1950年代~1960年代に自動車大国であった米国にて発展していたが技術や周辺環境に倫理的と色々と問題が生じ更にカラーテレビやビデオデッキの各世帯普及になり娯楽の多様性により廃れる事になる。
「今回はカーアクション作品のイベントの一環で何ならドライブインシアターでやろうと……」
藍も苦笑するが確かにインパクトはある。既に二人は夕食を終えてイベント会場にてスタンバイしている。
「それにしても元カレも悩んでいた訳か」
「菜緒は不完全のままに女性として生活する事になったから……」
藍としては菜緒になっても恋人に居たかったが……今後の事を考えると無理だろう。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十二話 育ちと格式

作 kyosuke

 久留実らも別荘に戻る為にプレジャーボートに乗り込む。学生らで催す“夜会”があるのでその準備だ。
「今回は欠席と言うのも納得しましたわ」
「ガキどもが残念がるが仕方ないさ……」
玲も慣れては来たが朱鳥や陸が通っている所は本当に名門なのだ。
「次回は是非、玲さんも一緒に……」
「……」
玲は苦笑するしかない、背後に居る陽菜さんの表情は嬉しそうなのだ。この分だとドレスやらフォーマル関係は困らないかもしれない。


「誠が事故った!」
邸宅の居間にて航が叫ぶと甚之助は淡々と説明する。
「はい、三沢市の幹線道路にてウィンカー無しでの左折車に衝突……放り出されましたが路上駐車してあったSUVの天井に背後から落下、意識がありましたが救急搬送されてます」
執事の甚之助が言うには緊急搬送された先の病院で免許証に記載された誠の名字にピンと来た医者が一ノ瀬運輸の隠居に問い合わせた事で事故に遭った事を知って帰省中の社も事故車引き取りに行くことになる。
「全身打撲で済んだか……事故現場は」
甚之助は電子端末で表示した場所を見た将は言う。衝突された軽自動車には母親と児童が乗っており左折した先にはコンビニ状況は推測出来た。恐らく児童がトイレと言いだして母親が後方確認をせずにハンドルを切った、誠のバイクもそれなりに速度が出ていたので止まり切れずに……。
「軽自動車の保険会社は何と言ってきている?」
「戒様によれば被害者は非を認めてますから保険会社もその方向で処理すると……ただSUVの方は揉めそうになる様子」
「ほぉ~名刺まで渡しって?」
将の眼が鋭くなるのも理解する、職業上路上駐車されると困る事が多いのだ。社から送られて来た画像を見て直ぐに職業が分かる。
「ホストクラブか……兄に任せた方がいいかな?」
航はキョトンすると将は言う。
「一ノ瀬運輸の社員は学生時代は不良で族だった奴が多いから夜の街で働いている同級生を一人は知っているからな……日下部先生にも聞いてみるか」
将がスマホを操作して会話を始めた。


「戒爺さん、申し訳ない……色々と」
「入院は数日か」
幸い帰省するので着替えは愛車のバイクに装着出来る専用鞄に入れていたので持って来てもらった。
「バイクに詳しい社員に見て貰った、バラさないと確かな事は言えないがメインフレームが歪んでいる可能性がある」
「……」
廃車、誠は天井を見て思う。一度ダメージを受けたフレームの耐久性は怪しいのだ。バイク屋の店主なら修理費を考えると買い替えるのもお勧めする。
「後は保険の事だが道を塞いだ軽自動車のドライバーは非を認めている、ただな……SUVの持ち主が喰ってかかってきたさ」
社は霧さんの事、霧山 秀介と言う社員と共に事故現場に来た時には既に誠は緊急搬送されていたが軽自動車のドライバーである母親に詰め寄っていたので社が間に入り押し問答に……誠もゾッとする。
「うぁ、やば、いっいたい」
先程の精密検査では骨折は無かったが精密検査の為に数日の入院は確定している。事故の状況を考えると重症にもなりえたからだ。
「親父来るかな?」
「来るってさ……将さんらも戻って来るし」
「忙しいんだ」
「俺も明日には東京に戻るしな……明後日からは仕事に戻る、後はSUVの持ち主は素性が分かったからな」
社は思う、あの幹線道路で路上駐車するとは……。


翌日、航が病室を訪れる……医者によればもう一日経過観察、そして保険の外交員に話を聞くと加害者の軽自動車側は解決済みであるがSUV側は交渉中……相手の素性も把握しており聞けば歌舞伎町界隈では絶縁状が回り、故郷の三沢市に戻って来たロクデナシである。
「親父……」
「相手側に怪我がないだけでも上出来だ……かあさんには巧く伏せている」
航は椅子に座るとバイクの写真を見せる、自身も免許を保有しある程度は整備も出来る。そして誠が使用していたバイクも元々は自分が使っていた。
「ごめんなさい」
「謝る必要はないさ……何度かコケたしな、ただフレームの新品は高いしな」
そこに玲が病室に……サマーワンピースを着ており靴もレディース用スニーカーだ。
「紹介するよ、将さんの娘になる玲だ。この前までは息子だったけどな」
玲は頭を下げるとベットの上で上半身を起こした状態で横になっていた誠も会釈する。
「性転換発症者って聞いたけど可愛いな、朱鳥に似ているな」
まだ痛みが残っているのか辛そうな表情を見せる。玲も事故の概要は知っているがよく重症にならなかったと思う。
「社はもう仕事か?」
「はい」
誠はため息をついた。バイクの事もあるのだが……。
「所で玲って何か部活でもしているのか?」
「あ~創作ダンスで、授業で柔道が出来なくなったから。それで補習も兼ねて……」
玲の足元に置かれたスポーツバックに航は何となく理解した、確かにこの胸に密着されるなら失神しても悔いは無いと言う中学男子が多いのは察しが付く。


玲は創作ダンスグループの面々と共に自主練に励んでいた。空調がある体育館と言えとも熱い。授業で使う体育服にして正解である。因みに夏季休暇中は私服登校も許可されているのでオシャレに敏感なお年頃にとってはありがたい。
「本当に熱心ね」
「授業だけじゃ不安になるから……ダンスなんてやった事もないし」
小学校の同級生で今は他のクラスになった女子生徒は苦笑するが玲は小学生の時から責任感は強い、リーナが恋を抱くのも分かる程に。
「親類の所を訪ねたんだよね?」
「うん、自分の所は分家。この先の冠婚葬祭もあるし……」
そこにリーナが来る、校内の自販機から紙パックドリンクを買って来たのだ。
「正弘さんの結婚が先か、それとも本家の御隠居の葬儀が先かよね」
リーナが知っているのは父親が教えたからだ。楊家にとっては恩義がある家の一つである。
「暑い」
玲が言うとリーナが天井を見て言う。
「空調効いてない?」
複数の生徒も同じ事を言う。これが少年だったら頭から水を被れば良いのだが……それが出来ないもどかしさ。
「空気が循環してないからね、下に大きな扇風機を置けばいいけど」
絵梨も汗だくである……大きな扇風機は今の校舎と共に出来た旧体育館で全部稼働しているのだ。数年後には取り壊すと言う噂がある、老朽化もあるが最大の問題は立地条件から不良の溜まり場でもある。
「ねえ、この後プールに行かない?市民プール」
「いいね~」
玲も断る理由はない、これを想定して水着も持ってきているのだ。


三沢市市民プールは市が所有する運動公園敷地内にある遊戯施設であり幼児から大人まで楽しめる。巨大な遊具もあるのはモノ作りの街である三沢市ならではであり、施設内も地元企業が試作した製品が寄付と言う形で置かれる事も多く、更衣室のロッカーも“耐久試験”名目で置かれている。
「学校指定……」
「まあ、校内で泳ぐかな~とおもって」
更衣室にて絵梨のジト目に玲は苦笑するしかない、仕方なく私物の水着を着る。視線が凄いのも分かる……。
「あっ、リーナじゃん」
「麻里香も来ていたんだ……」
小学校時代の同級生であった枝島 麻里香、今は隣の学区にある中学校の生徒で玲とも親しく接していた。
「……りーな、隣に居るっ子って」
「玲」
「……え!まさか」
「性転換発症したのよ、球磨先生から聞いてない」
球磨先生とは小学校時代の恩師の一人だ。一応知らせている。まあ添付した画像は退院当日のセーラー服姿にしたのはリーナの気配りだ。
「全然……じゃあ」
麻里香も玲に好意を寄せていた事はリーナも把握はしている。
「色々とバタバタして小学校の同級生全員に知らせてなくって……」
「麻里香~おまたっ……えっ」
「あっ、津田さん。お久しぶり」
津田 可南子は玲を見てキョトンする、こんな絵梨と並ぶ爆乳少女と何時知り合ったか……迷っていると絵梨は言う。
「玲、この分だと東中に行った子は知らない子が多いわ」
絵梨の言葉に可南子は驚く。東中とは三沢市立東中学校の事であり炭鉱全盛期に開校した中学校で今は三沢自動車株式会社本社工場や関連企業や工場のお陰で生徒数は維持している。


「驚いた……球磨先生も知らせるの躊躇するよね」
「絵梨並に大きいって……」
麻里香と可南子も胸のサイズや形状は中学女子の平均である……それが見せつけられるのは水着姿だ。
「アイツラは既に知っているかな」
「多分ね、ただ玲の事はよく知っているから接触してないだけよ……入院する前に番長グループ全員KOしちゃったからね」
二人は納得した、数える程だがリーナにちょっかい出した上級生に口答えして体を押された瞬間にはその上級生は玲の突きで白目を向き、頭に雛と星が回った光景を見た事があるからだ。流水プールに身を任せつつも会話する玲達……そこに近寄って来る少年らに玲は気が付く。何れもツーブロックに近い髪形をしており少々ヤンチャな感じだが肉体は引き締まっている。
「リーナ、隣に居る美少女は」
「一ノ瀬君よ、亘二」
「……マジかよ、球磨先生ブロックしたな」
「って……三年の峰沢らをシメたって言う」
「あの時はリーナが連れ込まれていたからね……全員分からせないと面倒な事になっていたから」
何人かは別の小学校だったのか玲とは初対面、ただ新堂 亘二と瀬藤 敦は父親が三沢自動車本社工場に勤めで双方社宅団地住まいなので仲が良い。
「絵梨と並ぶ巨乳が玲かよ……」
まあ残念がるのも分かる、二人も玲の父親の怖さはよく知っているのだ。


「東中の番長が手を出さない理由って?」
「玲の実家が運送業しているけど社員ドライバーの殆どが学生時代にヤンキーか暴走族だった面々さ。東中の番長もそれを知っていたとしたら?」
敦は遠目になった表情で言うと東中の同級生らは納得した。
「兄の正弘さんも人情味に溢れているけど……ただ」
「篝さんに既に尻に載られていると……分かるわ、あの人もスゴいから」
リーナも目の前で正弘さんとの熱々な関係を見せつけられ小学生でも分かる程に熱々である。
「あっ……理子も来ていた事忘れていた」
「ヤベ……妹ら押し付けていたから」
亘二も敦も小学三年の妹が居るのだが幼馴染の峠道 理子に頼む事が多い……最近はマセて来た。こうなると中学男子には手に負えない訳である。
「プールからあがるか」
夏とは言え身体が冷えるので上がる事にした、複数の入り口があるのだが何れも階段状で立てる様にしている。それ故にスイムパンツも丈があるとは言え股間部の盛り上がりは隠せない。
「(い、意外と大きかった)」
亘二も敦も小学校で使っていたモノを着用しており一物のサイズが大きくなっている事に気が付いてないのだ。
「あれ、楊に久遠じゃん……ん?」
理子は視線が合った巨乳美少女が目を背けた事に不振に想いそのまま腐れ縁幼馴染二人に視線を送る。亘二も敦も呆れる表情で言う。
「玲よ」
「……峠道さんお久しぶり。発症してから全く連絡とってなかった」
「球磨先生も驚いたでしょうね……」
最も自分はお喋りだから拡散を防ぐ意味が強かったのだろう。傍に居る少女は亘二の妹である香奈と敦の妹である朱美、小学校では何度か顔を合わせた事がある。
「玲さんって、っ!」
「うあっ、凄い胸……理子姉よりも」
理子も苦笑するしかなく、出来るだけ丁寧に性転換症について説明した。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十一話 自分らしさと女らしさ

 遥の問いに日菜子もふと思い出した、碧山って言う名字からして洋食の世界にて巨匠とされる方の一人で父が料理番組での共演した事もあり年賀状や暑中見舞いは毎年やり取りしている。
「御爺様は元気にされている?」
「はい、やはり玲さんにも教えているんですね」
「男でも料理出来ないとね……そこにある包丁セットは玲のモノでセカンドバースディのプレゼント……私も嫁入りの際に持たされたのよ」
日菜子は食材は“肉の塊”やら“魚丸ごと”であり、魚の切り身を買うとしたら調理に免許を要するフグか解体に専門職を要するウナギ、マグロか鯨位と言う位である。玲も小学校家庭科の調理実習前から包丁の使い方を覚えているのも日菜子の指導が如何に良いのか分かる。
「じゃあ、作業現場にいきましょう」


「かき氷か……ありがたい」
「相談役も会長も御年を考えてくださいね」
二人とも日菜子の実家が営む料亭のお得意さんであり幼少期の日菜子も知っているので娘同然である。
「「痴呆防止にはコレが一番だ」」
この分だと秘書も側近らも止められなかったんだろうなぁ、何時もは将がハンドルを握るスカニアを運転してきた女性ドライバーも苦笑する程現場が大好きなのだ。今回はお盆と重なるので家庭持ち社員はローテションから外している。
「倉敷、今年も帰らないのか?」
「故郷には嫌な事しかないですからね……近く両親も三沢市に移住しますから」
変性症発症者は本人だけではなく身内まで迫害に及ぶ事もあり倉敷 茉奈と両親はそれを経験している、一応被害届は警察に出されるも反応は薄かった……しかし国連からの非難決議で状況が一変する、永田町の住民と縁がある方がこの様な事をすると支援する先生にも迷惑が掛かる訳だ。最も茉奈は幸い戸籍の性別変更は裁判所が認められてはいたが中学校通学に高校入学まで拒否され三沢市にある医大が実施していた事業により高等教育課程を修了した事を示す“高等学校卒業検定”を取得している。これは大学入試資格を得ているのと同じであるが彼女がこの資格を得たのは20歳の時でこれ以上は勉学は両親にも負担が伸し掛かると感じ就職を選んでおり今ではトラックドライバー兼建機オペレーターだ。
「両親も完全に見切り付けますよ」
確か東京近郊のベットタウン出身で持ち家があるが、それを手放すと決意となれば如何に酷かったのか察する。三沢市の近くに父親の実家があり伯父夫婦と過ごしていたという、近所に叔父が所有する賃貸アパートがあるのだが老朽化したのと付近にマンションやアパートよりも見劣りするので取り壊しにしたという。
「主任の様な自宅もいいかなって」
「あれな目立つぞ、確かに立地条件なら建設できるが」
茉奈は何度か酒が入ってしまった将を自宅まで届けた事がある。


程なくして作業が終了し迅達が後にした。

【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第二十三話 女性向け風俗嬢の話

作 kyosuke

※23話は抜けてました。

 迅は手慣れた様に高所作業車を操作しトレーラに載せゴンドラから降りてチェーンで固定した。先程の喧嘩も収まってはいるように見えるが現場監督と職人の視線は完全に殺意を抱いている。双方口元にある血の滲みと衣類の乱れが激しさを物語っており、場所柄凶器になりえるモノが多く転がっている建設現場での喧嘩は周囲をヒヤリとする。それは出入りする迅でも同じである。
「大丈夫かあれ?」
「……連携不足だしな、それに今回は段取りが乱れてヒヤリハットが連発……職人の何人かはキレられた」
顔見知りの現場監督はベテランであるが何故か資材調達が上手く行かずに工期内に終わるかで気が気でなく……その部下の一人と出入りする職人らも幾度か衝突しており遂に拳が飛び交ったのである。
「二人とも性転換症発症者だろ?こー言うときは」
作業を終えた越智は現場監督に渡したのは風俗情報誌、しかも百合風俗専門誌である。レズは少々癪に障るので幾分柔らかい表現である。


性転換症発症者で不遇世代は未成年の時から風俗嬢をしているケースが多いが、中には男性を相手する事に嫌悪感を持ちレズ風俗嬢を生業にしている発症により女性になった方も少なくはない。キャリアに関しては下手すると中卒ではない方も居る……戸籍上は“御山 祐也”もその一人で家出して十年は経過している、警察に保護や逮捕されなかったと言うよりは今までの雇用主にその知人や客に恵まれており職場を変えて渡り歩くタイミングが良かったのに過ぎない。小柄な体形であるので学生服を着て置けば誰も気に留めないのだ。今の店では源氏名は“夕華”、形式はソープランド。昔は非店舗型が多かったけど男性向けの各種風俗店の飽和状態による競争激化や男性との交際に無理な風俗従事女性が増えた事によりレズ風俗に乗り出す社長さんが増えつつある。
「ご指名ありがとうごさいます、夕華です」
「夕華ちゃ~ん」
口元を見ると血が滲んでおり驚き尋ねつつも体を逢わせる。
「アキさん、急にどうしたんですか」
「監督と喧嘩した」
そうだろうなぁ、彼女は仕事が完全に終えるまでは酒も風俗遊び一切絶つのだがトラブルが起こると飛び込みで来る。確か照明機材の取り付けや修理をする職人で腕前は良い。
「あっ、汗臭くないかな?」
学生服姿の夕華はニコっとして言う。仕切りが無い風呂場から上がる湯気と女性が好む匂いが漂う室内にあるベットに倒してキス。手際よく衣類を脱がされる。
「私は好きな匂いだから……」
アキさんは自分よりも背が低い夕華はお気に入りで今回もオプションにセーラー服をチョイス……他の客は“小学女児制服+ランドセル”をする事が多いがアキさんは職種内容上常に仕事があるとは限らないのでノンオプションである“キャミソール+ヒモショーツ”になる事も……それが学生服オプションでは高級品の“本物セーラー服”って言うのは初めてだ。
「夕華ちゃ~~ん♪」
ベットの上で夕華のセーラー服の上着をたくし上げ貧相な胸に顔を埋める下着姿のアキさん、彼女も性転換症発症者で不遇世代であり中学生の時に発症し不登校を強いられ自宅学習になり高校受験の際にアキさんの窮状を知った地元名門女子高が無条件で受け入れを表明、先見の明があったのは事実でアキさんに“不登校を強要し故意的に中学卒業”させた中学校は後に文部科学省から厳格な行政処分を受けた、これは高校時代のアキさん自身落第阻止が精一杯で授業には苦労し補習があったとは言え大学進学を挫く結果なら文部科学省も処分する訳だ。夕華が知っているのはこれまでのトークで明かされたからだ、夕華の場合は家族からも高校も拒否され高校浪人の初めての夏に家出しており渡り歩いている、大きな怪我や病気は逢わずにするには苦労するが今の仕事は楽しい。
「はいはい、お体あらいましょうね~~」
アキさんは頷く。


一時間後、アキさんは満足した様に足早に退店……今の店に所属して初めて出来た常連(=リピータ)でもある。店の裏手にて煙草を吸おうとした時に夕華は電柱の影に隠れている人影に気が付き距離を詰められた。キャリアウーマン系の服装……夕華は店内に足早に入ろうとする。
「失礼、御山 裕也さんですね?」
「!」
本名で言われた、彼女は裁判所から性別変更を許可されてないのだ。
「逃げないでください!!!警察ではないです!!!!」
彼女は首にかけていたプレートを示した。息を少々切らして……。
「……弁護士?」
多分事務所があるテナントがオートロックになっているのかICカードには弁護士事務所の名称、裏にある名刺に記載された住所は夕華の故郷の近くに存在する大きな自治体だ。
「私を探していた!」
「はい……当時の裁判所は性別変更を認めない判例を出しましたが今となっては不利益になるとして……性別変更を受理してます」
「今更認める位ならその時の裁判官の信頼度ってどんなものなの?資格剥奪はして貰わないと……納得できないわよ!!!」
応接間にて夕華の言葉に女性オーナーもオロオロする。彼女の本名や性転換症発症者である事を知っている数少ない方で同業者から紹介で雇用した経緯がある。
「……その時の裁判官は過ちを認め先日辞任、同時に法務資格返納してます」
「だからって……津崎先生は地元なら私や家族に振り撒かれた悪評を知ってますよね?」
「はい……酷いモノです」
まるでエボラウィルス感染者の様な扱いにされたので矢面に立たされた母親は精神が壊れ、地元で職を得ていた父親は解雇、程なくして私は処女を散らされた……家出をしたのは逃げ出したい想いが強かったのだ。
「その後の国連の非難決議で真っ青になって探し始めたって言う事?」
「……双方の祖父母宅にも網を張っていたのですが空振りに終わり、警察も家出人として手配」
最も発症後の顔や全身の写真は病院で撮影されたモノしかなく情報が乏しい、所割警察署も犯罪者として摘発されるか遺体で見つかる最悪の事態を想定していた。
「百合風俗の情報誌に記載された写真で見つけた訳ね……」
女性オーナーの言葉通りだ、県警にある科捜研も協力してシュミレーションしたのだ。そして百合風俗情報誌に記載された夕華の顔写真にHITした。
「帰宅してもらえないでしょうか?裁判所の手続きもあります」
「……じゃあ男性化手術の許可を申請するにはどの書類を用意するの?」
夕華の言葉に津山先生は絶句するしかない。これ以上話しても押し問答だ……出直そう。


翌日、女性オーナーは事業家の夫と共に津山先生と会食していた。ルームメイトがベットの上で夕華を足止めする様に指示している……夫の友人からの紹介であるので家出した事は知ってはいた。
「……これは」
「昨年の健康診断、夕華は妊娠して出産経験があり、そして実の父親により処女を散らされた……知人に伝えている」
「!!!!」
診断書に記載されたのは“未成年懐妊及び出産形跡あり”と表示されていた。
「好々爺や好色マダムに飼われていたかもな、場所を辺鄙な別荘地して専門知識がある協力者がいれば……」
夫の表情は苦々しい、下手すると壊されていた可能性もある。変性症発症者の未成年女性を懐妊させて出産させると言う蛮行は珍しい話ではない、海外では割とよく聞く話だ。
「詳細は聞き出せないさ。あの娘は男性に戻りたいのよ、例え生殖機能が無く結婚できなくっても……無理に連れ戻してもあの子はまた出ていく“戸籍の性別変更を受理します”って今更言われてもな……誰の依頼で動いているかは聞かない方がいいだろ?」
夫の言う通りだ、津山先生は頷くしかない。
「戸籍変更はしておいた方がいいわね……説得してみるわ」
女性オーナーは思う……職業上性転換症発症者の方と接しているが夕華の青春時代は暗闇だったのだ。


「指名予約停止!」
「裁判所で性別変更に改名手続きをする事、私物のスマホや各種資格取得には戸籍が無いとダメよ」
夕方出勤した夕華は唖然とする。確かにこの仕事は年齢がネックになるから次の仕事の事は頭を抱えていた所である。
「両親もあなたの帰宅を待っているし、当時の加害者らも補償に応じるって……」
「今更学校に通えって言うのなら断ります」
「通信教育でも夜間中学や高校もあるし全額負担する意向を示しているわ」
「誰が?」
女性オーナーは津山先生から預かったファイルを出す。それは父の雇用主であり地元では名士である事は知っていた。
「……彼も貴方のお父さんを不当解雇した事を認めた上で再雇用している。実際仕事効率が悪くなって業績悪化で慌てて呼び戻した際に“一番の被害者が失踪している事”に気が付いて真っ青になった一人、津山先生は彼の依頼で動いたかも……数日休みなさい、探しているって言う事は両親に何かあるって言う事よ」
夕華は嫌な顔をするも応じるしかない。


「10年も経てば変わるもんね、寂れてきたかな?」
数日後、夕華は津山先生と共に故郷へ夕華が着用しているのはパンツルックの事務服である。
「私服ってないんですが?」
「こうでもしないと警察に捕まるからね……」
長年の癖なんだろう、津山先生は改めて彼女の闇を垣間見た。最寄り駅は典型的なベットタウンである駅である……寂れてはいるが仕方ない、基幹産業だった大出家電工場が撤退してしまったのだ。
「帰宅するんですか?」
「うん……」
津山先生も夕華の表情はさえない事に気が付く。


「……おかえり」
「ただいま」
自宅にて夕華は父を見て老けたと感じた、母親もだ……自宅の塀には素人作業の塗装がされているがよく落書き被害に逢った名残だ。津山先生は二人に家出した息子の現状を伝えている。
「部屋そのまんまなんだ」
「戻ってくると……」
夕華は裕也だった時の部屋を見て苦笑するしかない、気が付けば10年……ただあの時は彷徨っていたのだ。
「酒呑もうか?」
夕華は日本酒の一升瓶を紙袋から出した。親不孝してしまったから酒の力を借りないと場が持たない。


「名前ねぇ……」
裁判所の方も早急に対応したいのか裕也が戻った来たと知って直ぐにセッティングに……役所の戸籍関連部署もだ。
「娘だったら結子(ゆうこ)にって思っていたわ」
「それでいいや」
母親も治療により持ち直した、ただその途中で癌が見つかり一昨年摘出手術して成功、ただし再発のリスクがあるのでこれも家出してしまった子供を探す必要の一つに。
「……ねぇ、こっちで暮らさないの?」
「今の仕事は楽しいからね」
「……職なら紹介できるし」
「中卒でもないのに……相手に非があるけど厚かましい事は出来ないよ」
母親も後悔の想いがあるが事実だ。


翌朝、御山 結子として女性戸籍に変更し裁判所で戸籍謄本を得た。対応した裁判官が深く頭を下げたて困惑した結子である。この一件は当事者全員の合意で報道関係には丁寧に津山先生が取材を断っており報道各社も協定により報道される事はなかった。余りにも大騒ぎになる要素が多過ぎて収拾がつかないのだ。
「これで一段落かぁ」
「通信教育で中卒と高卒を……今の職で」
「うん、イメクラで働いたから職業病が出る」
結子の言葉に三人は薄ら笑いをするしかない。パンツスタイルなのは仕事とプライベートを分けている証拠だ。
「それに……顧客がね、私と同じ発症者もいるし」
そう簡単に辞められない訳だ。
「いいのですか直接謝罪は」
「……何が変わるって思うの、私も色々としているからね……」
見ず知らずの男児の精子と自分の卵子によりできてしまった乳児、だけど応じてなかったら結子としてここに居なかったのだ。

【投稿小説】よく知らないけど女になったら彼氏がいたらしい  ※レビュー追加

作 ととやす
イラスト 海渡ひょう

聖典館殺人事件さんからレビュー頂きました!

「まさに、この《あむぁいおかし製作所》に投稿された、ととやすさんの小説で、イラストは海渡ひょうさん。400字詰め原稿用紙で45枚と少しぐらいの読みごたえある短編です。ある朝目覚めると女性になっていた――という王道パターンで始まりつつも、主人公・満が変身していたのは、美少女とかではなくどこにでもいそうなぽっちゃり体型の美鶴という名のOLさん。世界もそれに合わせて改変されていて、しかも何と光哉というかっこいい彼氏もいるとわかります。彼とのデートのとき、すれちがった女たちから陰口をたたかれるほどの自分の冴えなさにがっかりする満=美鶴ですが、でもオタクっぽい光哉にとっては、自分を理解してくれる彼女はかけがえのないパートナーなのでした。
 男性としては経験しなかった性の歓びを与えられてゆき、彼のために可愛くなろうとがんばる美鶴。そしてみごとなまでのハッピーエンド。いやー、オタク青年(ただしイケメンに限る)とTSっ娘のカップリングは最高ですね。そして、この内容に花を添える海渡ひょうさんのイラストが素敵です。決してとびぬけて美人ってわけじゃないけど、愛らしくて親しめる美鶴の姿。どうせTSするなら、こっちですよ!」

ひょう1完成

1
カーテンの隙間から差し込む光とどこからか聴こえる鳥の声が、どうやらもう朝になったらしいと教えてくれる。昨晩は慣れない仕事の疲れからか、ベッドに入るやすぐに眠ってしまったようだった。まだ社会に出て会社というやつで働き始めて一年も経っていない俺にとって、週5日の労働はあまりにハードだ。今日は土曜日。ゆっくりとこのまま惰眠を貪るとするか。
そう決めた俺は寝ぼけ眼をそのままにうつ伏せになる。・・・胸元に圧迫感。何となくいつもより息がしにくいような。それに顔にかかる髪の毛も、俺の感覚よりも随分と長い。
「・・・?」
髪をかき上げる。ゴワゴワで指に刺さってしまいそうな普段の俺のそれと違う、サラッと流れるような柔らかさ。反射的に布団から飛び上がった。
「な、なんじゃこりゃ!?!? って声!?」
叫び声を上げると同時に、声にも強烈な違和感。めちゃくちゃ高い・・・まるで女性のような。否。ような、というのは正しくなかったかもしれない。視線を下ろすと、果たしてそこには寝巻き代わりのTシャツをこんもりと押し上げる膨らみがあった。間違いなく、それは俺の胸に鎮座していた。しかも・・・
「こ、これっ、ちっ、乳首!?」
寝汗のせいか白いTシャツは湿っていて、胸にある2つの膨らみの頂点がぷっくりと更に鋭い角度で隆起していたのだ。それは透けて下に包まれる桜色の突起物を晒していた。
「えっ、えっ、へぇっ!?」
未だ慣れない高い声を漏らしながら、前を見上げる。そこには見覚えのない大きな姿見があって。映っていたのは肩口くらいまでで茶髪を揃えた、俺と同じ歳くらいの若い女の子だった。鏡の中の彼女は、困惑した様子で大きな胸元に手をやっている。ちょうど今の俺のように。
「こ、これが、俺・・・?」
他に人が映っていない以上、そう判断するしかないのだろう。ゴクリ、と唾を飲み下し、一呼吸して姿見に映る像を眺める。よく見ると、元の・・・男の頃の面影がある顔立ちをしている。3つ下の妹が今の俺と同じ歳くらいになればこんな感じになるんじゃないだろうか。上は昨晩寝る時に来ていた安物の白Tシャツ、下はまるで違っていて、スウェットだったのが膝上丈のハーフパンツになっていた。そこから覗く、白くむっちりとした脚が目に毒だ。しかも起きた時からずっと乳首が透けている。若くて色々と持て余している俺には、それはあまりに刺激的すぎた。
「なんで・・・俺、女に・・・?」
この時の俺の頭にあったことは、確かめないと、の一点だけだった。身体に貼り付いたシャツを四苦八苦して剥ぎ取ると、ブルンッと勢いつけて乳房が揺れた。これはかなりの大きさだ。次いでハーフパンツを下ろしていく。艶のある太ももが露わになった。脚の付け根には色気のないベージュのショーツ。これも勿論身に付けた覚えなんてない。
自分が動かしているといえど、本来男である俺がそれをするのは少し躊躇われた。だけど。意を決してショーツを脱ぎ去り、俺は鏡の前で産まれたままの姿になった。

2
一糸纏わぬ女の自分を鏡越しに見た第一声は、
「び、微妙だ・・・」
だった。顔は自分で言うのも何だが、客観的にそれなりに整っている部類に入ると思う。ただ、それ以外の部分が微妙極まりない。自らの裸体を見た正直な感想だった。
「まぁ、元の男の時からしてそんなスタイル良かったわけでもないからな・・・」
顔の輪郭は丸く、いかにも女性らしい曲線を描いているが、少し膨れすぎな感もある。肩幅も広めでやや骨太な印象だ。そこから腕にかけて丸々と贅肉がついている。バストは流石のサイズで、圧巻だけど・・・重力に負けて垂れ気味だし、乳輪も大きめだ。お腹もタプタプで指でタップリと脂肪が摘めてしまう。脚も大根足だし・・・ある種で、すっごく女性らしいと言えるかもしれないが。そしてその付け根にはふさふさと生い茂った黒い陰毛。女性としては結構濃い方なんじゃないだろうか。そして、男の時分より幾分も小さく細くなってしまった指で掻き分ける。果たして股座に慣れ親しんだ逸物はなく、しっとりとした質感の溝がツッと一筋刻まれているだけだった。筋に沿って指をそっと動かす。花弁の入り口がほんの少しだけ広がり、指先に身体の熱量と粘膜の触感を伝えてくる。やがてそれは、敏感な突起に行き着いて。
「あんっ!」
思わず声が出てしまう。学生の頃付き合った女の子こそいたが、結局そういった行為に至るまでに破局してしまってばかりだった俺にとっては、初めて生で聴く「女の喘ぎ声」だった。姿見に目をやると、そこには股に手を添える妙齢の女性が頬を上気させていた。
「はぁっ・・・」
その姿に少し冷静になってしまう。何故だろう。若干凹んでしまう自分がいた。
「こういうのって、美女になるのがパターンじゃねぇのぉ?」
男の頃から緩み気味だった身体だ。女になったからといって一気にナイスバディになれる保証なんてない。当たり前なんだけど、なんかこう・・・。
立ったままなのにゆるゆるで、脂肪の段を形成してしまっている腹の肉を持ち上げる。客観的に見て、顔立ちは可愛いという部類に入ると思う。けど、こんなぷよぷよの身体では・・・男の頃の俺目線では、はっきり言ってストライクゾーン外だ。いきなり女になった上に、それが微妙なルックスのぽっちゃりさんだなんて。
やり場のない感情を抑えながら、ふと落ち着いて部屋をぐるっと一瞥する。昨日まではザ・一人暮らしの男の部屋といった面持ちだったが、今は違う。さっきから大活躍の姿見以外にも変化が。全体的にこざっぱりとして、整頓された印象だ。色味も寒色系から暖色系に変わってしまっている。覚えのない白いドレッサーがあり、その上には化粧品のポーチが置いてあった。絶対普段読まないだろう女性者のファッション誌も、綺麗に並べられてラックに収まっている。クローゼットを開くと、そこには鮮やかな女性物の服が架けられていた。クローゼットの隅には引き出しのついた小さな棚があり、そこを開けるとこれまた色とりどりの布切れが丁寧に丸めて収められていた。その一つの黒い布をつまみ上げると、巻き上げられたそれが広げられ・・・。
「こ、これ・・・パンツ!? ってことはこれはブラジャー、だよな・・・」
パンツと同じ色の少しごわついた手触りのそれは、女性の乳房を保護する下着だ。半球が二つに金属ホックの付いたこの下着は、多くの男性が普段身につけるものとは言えない。
「で、でっけぇ〜」
デパートなんかで女性向け下着コーナーの前を通ったことは何度もあるが、こんなに大きなブラジャーは見たことがなかった。反射的にタグを確認すると、H85と印字されていた。85という数字の意味はよく分からないが、その前のアルファベットから推測するに、今の俺はHカップらしい。
っていうか待ってくれ! 俺の身体は完全に女になっていて、部屋の様子まですっかり女の子に染められ上げている。と言うことは、だ。
「俺、これから毎日これ着けてなきゃいけないの・・・?」

3
途方に暮れていると、
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴り、心臓が飛び上がる。
「えっ、えっ、誰?」
慌てて駆け出して・・・ブルンとおっぱいが跳ねる。と、同時に自分が今何も着ていなかったことを思い出した。反射的に両の乳房を手で抱え、インターホンのモニターをONにする。突然の来訪者は同年代の男のようだった。
「は、はい・・・」
おずおずと声をかける。
「おっ、もう起きてた? 準備出来てる〜?」
だ、誰だこのイケメン!? やけに親しげに声をかけてくるが、俺はこんな男知らない。思わず固まっていると、
「その感じじゃまだなんでしょ? 待ってるから、ごゆっくり! 今日は時間にゆとりあるからさ」
「う、うん・・・」
そう言って一旦インターホンを切る。いや、マジで誰だよあいつ。モニター越しの言動が一々爽やかで若干癇に障るが、悔しいかな、かなりのイケメンだ。女になったことで、人間関係も変わってしまっているのだろうか?
そう直感した俺は、すっぽんぽんのままで枕元に置いてあったスマホを手に取った。スマホリングが付いていたり、カバーが可愛らしいパステルカラーにこそなってはいるものの、機種自体は同じようだが、果たして・・・。あいつもごゆっくりって言ってたことだし、ちょっと確認させてもらおうか。

そう考えてスマホの中身をチェックしてすぐに、どうやら俺は生まれた時から女だったと認識されているらしいと分かった。名前も男の時は満(ミツル)だったのに、読みはそのままで表記が美鶴に変わっていた。性別が反転しただけで仕事の方はそのままだったのは幸いだった。OLということにはなってしまうのだろうけど。
仲の良かった男時代の友人たちとはほとんど縁がなくなっていて、その代わりに疎遠・・・というか一度も話したこともないような女子たちがそのポジションに置き換わっているみたいだった。っていうか、残ってる写真見るとJKの頃からぽっちゃり体型っぽいな、俺。今より幾分かはマシだけど。
そして、肝心の彼。彼は光哉(コウヤ)という同い年の会社員で、そして。・・・ありていにいってしまうと、今の俺の彼氏らしかった。

4
「待って、待って、待ってくれ・・・」
彼氏!? 女の俺に!? 
衝撃が強すぎて理解が追いつかない。元の俺は悲しいかな、今現在彼女なんていない。てっきり女の俺もそうだと思っていたが違ったようだ。ビジュアルもまぁ、微妙だし・・・まさかあんなイケメンと付き合っているなんて!
どうやらマッチングアプリ経由で出会ったようで、付き合い始めてまだひと月ちょっと。毎日のように電話やメッセージで連絡を取っている痕跡があったのだが・・・。自分じゃない自分が他人に送ってるメッセージ読んでると何かムズムズしちゃうな。どことない気持ち悪さが。今日はデートの予定だったみたいだけど、自分の知らないうちに自分の名前(美鶴表記だけど!)でデートの約束を取り付けて、「楽しみだね♪」なんてやり取りしているのを観測した日には、もう!
ともあれ、ここまで分かった以上、待たせっぱなしは良くないだろう。
買った覚えのない洋服ダンスからなるべく地味めな下着と服を引っ張り出す。なるべくならズボンが良かったのだが、見当たらない。どうも"美鶴"はゆったりとしたスカートやワンピースを好んできているようだった。
色気もくそもない無地でベージュのショーツを脚に通す。平たい股間にピッタリと貼り付き、改めて息子の不在を思い知らされる。大きく膨れたお尻で生地が引っ張られている気もするが、もう構っていられない。そのままブラジャーへ。
ヤバい。上手く着けれない。
何度やってもフィットしないというか、ホックもズレてしまう。悩んだ末に先にホックを止めてから上から被る形で装着することにした。ことの他うまくいって一安心だが、あくせくしてるうちに汗をかいてしまっていた。そして、気づく。
(胸の谷間、こんな汗出るんだ)
ギュッと締め付けられ、垂れ気味だったバストが寄せてあげられる。それによって形作られた豊かな谷間に、大粒の汗が。圧迫感もすごいし汗も出るし、世の女性はこんな不便なもの毎日着けてるのかよ!?
そのまま顔を真っ赤にしつつスカートを履く。ゆとりあるサイズ感はこの体型を隠す美鶴なりの努力だったのだろうか。ブラウスの袖がひらひらしてるのに気づいてさらに顔を赤くしたのは直で袖を通した後だった。
そのまま玄関を出ようとして、すっぴんなことに思い至ってしまった。でも俺、化粧なんてできるのか? 
それに、本当に光哉に会うのか? 会って、どうするんだ?
グルグルと頭の中を駆け巡る様々な思考。だけど、とにかく前に進むしかないのだ!

5
「あ、おはよ、う・・・?」
留守番中に来客が来た子供のように恐る恐るマンションのロビーでスマホをいじっている光哉に声をかける。その声にすぐ、
「やぁ、おはよう美鶴さん」
と返答してくる。その声に、姿に、胸がドクンと高鳴った。さっきモニター越しに見た時とは比べ物にならないほどに格好いい男だった。
(や、やべぇ、眩しい・・・イケメンすぎる・・・!)
結局妥協して化粧水を塗って薄く口紅をつけただけの自分は芋臭さ満載で、ギャップに居た堪れなさすら感じてしまう。いや、自分を棚に上げるわけではないが、目の前の青年、光哉は持っている雰囲気からして別格だ。とてもそこらの一般人とは思えなかった。一応会社員らしいけど!
180cm以上はあるだろうスラリとした長身。ただそこにいるだけで存在感は圧倒的だ。さらに、スカイブルーのシャツに黒いジャケットを嫌味なく見事に着こなし、まるで洗練されたモデルのようだった。そして極めつけがその顔。圧倒的な美形だ。サラリとした黒髪に切れ長の瞳、少し薄い唇もパーフェクトといってよい美貌。本来は同性のはずの俺から見ても、どこぞの美術品から飛び出てきたんですか?って聞きたくなるくらいの見目麗しさだった。
(なーんで俺と付き合ってるんだろうな?)
スマホの履歴からはそれを示す明確な答えは見つからなかった。女の俺、美鶴と彼の間には、二人だけの物語があったのだろう。
ズキリ
高揚感とは別の痛みが胸を刺した。
そんな俺をよそに、光哉は慣れた動作で手を差し出す。
「さぁっ、行こうか!」
「う、あ・・・はい・・・」
おずおずとその手を握る。暖かくて節くれだっていて、そして今の俺より一回り大きなその手に包まれ、どこかホッとした気持ちになってしまう。
「握り方、いつもと違うよね?」
「えっ!きゃっ!」
光哉は繋いだ手を組み替え、お互いの指と指が絡み合う形を作った。いわゆる、恋人繋ぎというやつだ。
「これでいいね」
そう言って涼しげに笑う。俺はというと、ドギマギとして、あっとか、うっとしか返せない。心臓が波打ち、耳まで赤くなっているのが分かった。会ったら事情を話して、解散か俺が男に戻る手伝いをお願いしようと思っていたのに、そんな思いを押し退けていく。
そうして俺たちは二人並んで街へと歩いていった。そんな俺たちは10人が見て10人、初々しい恋人同士に映っていたことだろう。

6
光哉に連れられるままに街へ繰り出し、ショッピングにランチに・・・午後からは水族館にまで足を運んだ。最初はこいつと何をどう話していいか分からずにぎこちなく愛想笑いするしかなかった俺も、実は光哉が結構なアニオタだということが分かって、お洒落な雰囲気なんてそっちのけでオタトークに花を咲かせていた。
「そうそう!あのシーンの演出って多分前クールの3話のオマージュで〜」
「絶対そうだよな!俺初見の時ピンと来たもん!」
あっ・・・
ついうっかりして、完全に男の・・・『俺』なんて言葉遣いをしてしまった。
やばい、しくじったか・・・!?
冷や汗をかく俺を、光哉はしばらくジーッと見つめて
「美鶴さん、普段は一人称俺なんだね。結構意外で・・・ギャップあっていいね!」
なんてニコッと笑うんだから!
「その、変じゃ、ない・・・? お、女が俺、だなんて・・・」
「全然!寧ろお付き合いしてから美鶴さんの素の部分が少しずつ見えてきて嬉しいよ!」
耳まで赤くなっていくのが分かった。
「そ、そっか。じゃあこれからちょこちょこ男っぽいところ見えちゃうかもしれないけど、許してね」
なんて予防線を引いてしまう。
「好きなように振る舞ってくれれば! っていうか、僕の方こそガッツリオタクで幻滅とかしてないから不安なんだけど」
いやいやいや、それこそ
「全然! 俺もこの通りオタクだし、共通の話題多くて助かるよ!」
本当にね。光哉が見た目通りのキラキラ系だったら、マジで何話せばいいか分からなくなってしまっていただろう。
盛り上がりを保ったまま、俺たちはレストランで引き続きオタク話を楽しんだ。心から楽しい時間だった。目が覚めると自分が女になっていて・・・しかも付き合いたての彼氏がいるなんて異常な事態に神経をすり減らしていた俺にとっては、光哉との他愛ない話はひと時とはいえど全てを忘れることができるくらいだった。
割り勘で支払いを済ませ、いいと言うのに送ってくれるというので俺たちはまた元のマンションへと向かっていた。手は、今回はこちらから握った。・・・少しだけだがお酒を飲んだから、ということにしておこう。
その道すがらのことだった。向こうから来た派手な格好をした若い二人組の女が、俺たちの、というより俺の方を見てニヤニヤと笑って通り過ぎた。なんだろうと思っていると、大きな声で
「あのカップルさ〜カレシさんめっちゃイケメンだけど女の方残念すぎん?」
「分かる〜デブ過ぎ〜もっと努力して女磨けって感じw」
「カレシさんあの顔でB専なんじゃね??」
ギュッと胸が痛くなる。
(あぁ、そうか。どんなに楽しくても、今の俺はぽっちゃり体型の女なんだ。美人でもないし、こんな俺が光哉といてもつり合いなんて取れないよな・・・)
薄々分かっていたことだった。今日会った周りの人、俺のこと見てデブ女がはしゃいでるよwとか思ったりしてたんだろうな。病んだ気分が心を身体を支配していく。そんな時だった。
「ざけんなよ、テメェら!! 美鶴さんはオメェらみてぇな頭も身体もスッカスカのバカ女とは違うんだよ!」
隣で背後の二人組に怒声を上げたのは光哉だった。当然の事態に、処理が追いつかない。
「顔だけ見て近づいて、僕の内面知った途端にイメージと違うだの何だのうるせぇんだよ!! 僕は僕で、僕は僕の好きなもん、好きな人を愛してるだけなんだよ!! 周りのオメェらが決めつけて押し付けてくんな、この・・・アホーーーー!!!!」
二人組の女はポカンとしていた。俺も同じだ。光哉はそのまま俺の手を握ると踵を返し、
「行こっか」
と耳元で囁いた。
「う、うん」
動揺冷めやらぬまま、俺たちはその場を後にしたのだった。

7
アパートの扉の前に着くや、光哉は俺の手を離し、バッと頭を下げた。
「ごめん、大声出して。でも、あんなの、許せなくて。もう二度としないから、ごめん。今回だけは許してほしい。美鶴さんに嫌われたら、僕、僕・・・」
そう言って肩を震わせる彼の姿を見て、彼のことを色眼鏡を付けて見てしまっていた自分自身に気がついた。
「そ、そんな! 俺が太っちょなのは事実だし、でもあぁいう風に言ってくれて、嬉しかったし!」
彼はスマートなイケメンくんでも、完璧超人でもない。穏やかで優しく、そしてオタク趣味のごく普通の男の子なのだと。だから、
「嫌いになったりなんて、しないから・・・」
ドクンドクンと心臓が高鳴る。今日一番の早鐘を打つ。光哉は一瞬だけ端正なその顔をくしゃっと歪ませて嬉しそうに、泣きそうに笑った。そして、その大きな手を俺の方に置き、ゆっくりと顔を近づけてくる。
(あぁ、これは)
男として経験はなかったが、分かってしまった。俺はゆっくりと目を瞑った。
「いいの?」
心配そうな声がして、思わず笑みがこぼれてしまった。ここまできてそんなこと・・・優しいなぁこの人は。
「うん」
「ありがと」
「んんっ・・・!」
返事をしようとした唇が塞がれる。目の前にいる彼と唇を交わし、舌先を絡め合う。
「っん、ん、んんっ、んっ・・・っ!」
その度に全身が熱くなり、声が漏れ出してしまう。股の付け根。かつて男性器があった場所よりもお尻側の部分が特に熱を帯びていく。切ない気持ちになって、無意識に両の腿で擦り付ける。それだけで理解してしまった。
(俺、今グチュグチュに濡れてる・・・)
雌の花弁から溢れ出た液がショーツを湿らせていく。それはやがて、布で吸える限界を容易に越えて。
ツゥッ・・・
(!?!?)
必然、股を伝って脚を通り抜ける。

長いキスが終わり、唇を離し、互いに顔を見合わせる。唾液が糸を引いて二人を繋いでいた。
(や、やばい・・・♡)
マンションの灯りに照らされた彼の顔はまるでおとぎ話にでも出てきそうなほどに美しかった。そんな光哉の紅潮した姿を見つめているだけでまた濡れてきそうだった。さっきまでの彼はこんなにも精悍で魅力的だっただろうか。
(ひょっとして俺、頭の中まで女の子に?)
だが、それは不思議と嫌な気分にはならなかった。女の子のキスを経た俺には、ある疑問が芽生えていた。
(キスだけでこれなら、セックスするとどうなっちゃうんだろう)

ひょう2清書

8
「もう遅いからさ・・・俺の家、泊まってく?」
心に沸き立つ熱にほだされてか、そんな言葉が口をついて出てしまった。溢れ出る情欲を止めることはできなかった。
「いいの?」
「うん」
部屋に入り靴を脱ぐや、俺たちは再び唇を重ねた。
「んんっ、んっ、はぁん・・・っ!?」
舌同士を絡ませ、踊らせていると、大きく張り出した胸を掴まれる感覚が。初めはどこかぎこちなく、だけどやがてリズミカルに光哉の掌が俺の乳房を弄ぶ。ブラジャー越しにおっぱいを揉まれ、気持ちいいというよりはくすぐったい。そう、思っていたのだが。
「んんんっ!? ぃやんっ、はぁん♡」
ブラとの間にできた隙間から、男らしい無骨な手が侵入して俺の乳に直で触れる。タプタプと双丘を下から持ち上げて揺らした・・・次の瞬間には、キュッと先端を直接摘まれていた。全身をゾクゾクッとした刺激が伝い、コリコリと擦られる乳首がビンビンに勃ち上がる。
「んんんっ♡ んんっ♡ あぁんっ♡」
硬くなった乳首に触れられるたび、俺は壊れたおもちゃのように、小さくなった両手で力の限り・・・光哉の大きな背中を抱きしめた。そうでもしないと、彼から与えられる快楽でどうにかなってしまいそうだったから。交わした唇から、無様な雌の啼き声が溢れる。女としての情動に抗うどころか、押し寄せる快感になすがまま振り回されるしかなかった。
「ひぅっ!んっ、あっ、はぁぁんっ♡」
いつの間にか彼の右手はスカートの中にまで及んでいた。平たくなった今の俺の股間に指を当て、すりっ、すりっとパンティ越しに擦り出す。
「あっ、あっ、やっ、あっ、ひっぃ♡」
指が前後し、薄布の内側にある女の子の大事な部分が刺激されるたび、俺の全身は耐えようのない快感に打ち震える。
「や、やらぁ・・・♡」
「気持ちいいの、美鶴さん?」
「ぅん・・・」
俺は本当は男なのに、そんな薄っぺらなプライドは、女体の肉欲にいっぺんに押し潰されてしまっていた。
「かわいいね」
ゾクゾクゾクッ!
耳元で囁かれたその声だけでまた一層感じてしまうのだった。

9
いつの間にか俺たちはベッドまで移動していて・・・それはつまりいよいよここからが『男と女の夜の運動』の本番ということで。男として経験が一度もない行為を女として味わうことになるなんて、昨日までなら噴飯もののジョークでしかなかった。だけど現実は。
ニチャッ・・・
「やぁん! は、恥ずかしいよぉ・・・」
今の俺は顔を真っ赤にして男と情事を交わす女そのものなのだ。抵抗の余地なくパンティを脱がされる。ここまでで随分と『温まって』しまっていた女陰から溢れ出た蜜が、グショグショに濡れそぼったパンティとの間に細い糸を引く。男を受け入れる準備は万端、ということになるのだろう。最後に残ったブラジャー・・・散々乳を揉まれ、ほとんど本来の役目を果たせていなかったけれど・・・のホックが外される。光哉の慣れた手つきに、彼の過去を垣間見た気がした。
(これだけのイケメンだし、さっき怒ってくれた時もそれっぽいこと言ってたし、たぶん昔から彼女いたんだろうな)
そのくらい分かってる。けれど、何故だろう。ちょっとだけ胸が痛む。
ブラジャーまで取り払い、いよいよ産まれたままの姿になる。でっぷりと垂れ気味のバスト、まるまるに膨れたヒップ、少し屈んだだけで容赦なく段々になるお腹・・・ぽっちゃり、というより既におデブちゃんに片足を突っ込んだ今の自分がこんなこと思うなんてやっぱりおこがましいことなんじゃ。
そんな俺の不安を察してか、彼はそっと俺の髪を撫でて
「かわいい・・・綺麗だよ、美鶴さん」
その一言だけで心がスッと軽くなるなんて、我ながらチョロい。でも、これが俺にとって何よりの救いなんだ。
ベッドに寝かされ、光哉は逞しい男性らしい腕で俺の両膝に手を置き、グッと広げる。
「きゃっ!」
両脚が開き、俺の全身が彼に晒される。もちろん、女の子の部分まで包み隠さずに。
(やだぁ・・・こんなこと見られてるぅ)
男の頃だって、股間を他人からそうマジマジと見られた経験はない。まして女の子になって何もない、溝だけの股間を男に凝視されるなんて耐え難い恥辱だ。対する俺の目線の先には、大きな乳房、脂肪が重なったお腹、ぐっしょりと濡れて縮れた陰毛と、
(お、おっきぃ!?)
ビンビンに勃ち上がった光哉のペニス。悲しいかな俺の元息子とは比べ物にならないほどのサイズ感!
こんなのをアソコに抜き差しされるとどうなっちまうんだ!?
(嘘ッ! 見てるだけで濡れてッ!)
トロリとした液がアソコから垂れ、お尻に伝っていった感覚があった。あぁ、もうこんなの・・・
「や、やだ、お、お願い・・・」
こんなの
「何をお願いしたいの?」
こんなの
「こ、光哉・・・くんの、おち◯ち◯を・・・い、挿れて下さい・・・ッ!」
嬉しそうな笑顔。それに胸ときめかせる間も無く。
「んはぁっっん♡」
下腹部を襲うとてつもない異物感。目線をくれると、俺の女の子としての孔が、屹立した肉棒を咥えて呑み込んでいく最中だった。徐々に、徐々に侵入したそれは、やがて俺の最奥に至り。
「んぁぁぁぁぁっっ♡」
その秘奥をコツン、と刺激する。全身に奔る高揚感と多幸感。とてもじゃないが、声なんて我慢できなかった。ゴリッゴリッと肉壁を摩擦し、ペースを上げてリズムが出来てくる。
「あっ♡あっ♡あっ♡はぁっ♡あんっ♡あっ♡はんっ♡」
その度に、俺は情け無い喘ぎ声をこぼしていく。それがまた彼を興奮させるようで、俺の中でグッと一層硬くなるのを感じとった。

10
いつの間にか、両手それぞれ指を絡ませ、手をぎゅっと握っていた。
「美鶴さん、美鶴さん!」
名前を呼ばれ、肌と肌が触れ合うだけでこんなにも幸せな気持ちになれるなんて!
「好きぃ♡大好きィ♡光哉くぅん♡」
脳が快楽に支配され、とんでもないことを口走っていてももはや分からない。ただただ、与えられる享楽に身を任せる一人の女でしかなかったのだ。
一突き一突きされるごと、だらし無く実った乳房がブルンブルンと四方に揺れる。ストロークは回を重ねる内により早く、より深くなっていって。
チカッチカッと頭に閃光が走り出す。
「やばいやばいやばいぃぃ♡気持ッ!よすぎるよぉ♡俺、女の子のままイっちゃう〜♡」
「僕も、そろそろ・・・愛してるよ、美鶴ッ!」
「うん♡俺も♡」
「ッッッ!アッ!」
「いやっ♡やっ♡あんっ♡あっ♡あぁぁぁぁ〜〜〜んん♡♡」
胎の中を暖かな液が埋め尽くす。同時に、頭の中の光が肥大化し、俺の意識まで奪い去っていく。俺は背骨を弓なりにして絶叫して、果てた。

11
そこからはなし崩し的だった。幸いにして周囲からは俺が男だったという記憶は失われていたため、四苦八苦こそしつつもなんとか生活していくことはできた。・・・元々の人間関係が結構様変わりしていたのでボロが出ないか心配だったが。リーマンだったのがOLとして扱われるのだけはちょっとだけプライドが傷ついた部分もあったけど、時間と共に解決できた。
そして彼、光哉とのこと。女として、というよりも人間として初のセックスになったあの夜のあとも、相変わらず彼氏彼女の関係は続いていた。平日は待ち合せしてディナー後にどちらかの部屋へ。休日は朝から昼過ぎに合流してどちらかの部屋へ。二人きりでプライベートな空間にいるとやはりどうしてもそういう雰囲気になってしまい、身体を重ねることに。どうやら俺たちの相性はかなり良かったみたいたった。初めの頃は、やはりどこか女性として彼に抱かれることに抵抗感があった(あの夜はその・・・特別だ!ヒロイックな気分に酔っていただけだ!と思う)のだけれど、光哉から女の子として大切に扱われることが嫌でない、むしろ嬉しいとすら思うようになっていった。そう自覚してからは坂を転げるように俺は女の子としてのセックスに溺れていった。フェラチオ、パイズリ、69に始まり、彼の望む体位やコスプレックスでも何でも受け入れた。彼の性欲を慰めるためならどんなことでもしてあげたくて、お尻の方も少しだけ・・・。日々開発され、プレイの幅が広がっていく俺に、光哉は満足そうだった。スタイルに自信のない俺にとって、屈託ないその笑みを見つめる瞬間だけが唯一女として誇りを持てるひと時になっていた。

「ねぇ、このまま一緒に住まない?」
ある夜、そう提案された。俺はというと、直前まで全身の穴という穴を使って彼を悦ばせていたばかりでクタクタで・・・特にお◯んこなんて、四、五発注いでもらってヒクヒクしていた。頭もぼーっとしていて思考もまとまらず、ただ彼に抱かれた幸福感に浮かされて
「うん、いいよ♡」
と答えてしまった。そこからは早かった。あれよあれとという間に同棲生活がスタートし、数日に一回だったセックスがほぼ毎夜の営みとなった。その頃には俺はもう、女の子としてのセックスを完全に愉しむようになっており、彼に抱かれ雌として嬌声を上げることが日々の糧となってしまっていた。
こうして一人の女として違和感なく生活するようになり、光哉くんとの関係も数年続いた。相変わらず彼はイケメンで、やはり芋臭いままの俺とは客観的に釣り合いが取れてるように見えない。これでも雑誌や動画なんかでファッションやらメイクやら髪の手入れやら気を遣うようにはなったのだが。
「美鶴さんはそのままでいいんだよ」
と彼は言ってくれているが・・・。
脱衣所の鏡の前。もはや見慣れた俺の女体。相変わらずぽちゃっとした締まりのない身体つき。いや、あの頃から時間も経ち、いわゆるアラサーという年代に差し掛かり、段々と肌から張り艶が曲がり角のような。気のせいか、バストも少しずつ垂れ始めてきたような。改めて見つめ直し、現状にゲンナリとしてしまう。
「でも、ここからここから!頑張らなくっちゃ!」
頬を軽く叩いて気合いを入れる。何故って?
それは・・・。俺は左手の薬指にはめたピンクゴールドの指輪を見つめ、発起したばかりなのにニヤニヤとこぼれ出る笑みを抑えようとして。
「やっぱ無理ー!」

ひょう3完成

12
この指輪を贈られたのは数日前。話がある、と光哉くんから改まって呼び出されたレストランでの食事の時だった。彼からプロポーズの言葉をもらった時は、嬉しいというよりビックリして思わず涙がポロポロと流してしまった。だけど今、ようやく嬉しいという感情が追いついてきたみたいだった。
だけど、それを受け容れる、ということは即ち。
(俺、このまま男には戻れないのかな)
もはや親兄弟に友人、同僚に至るまで俺が男だったと覚えている者はいない。実は俺が男だったなんていうのは思い込みで、元々女だったのにその事実から目を背けている異常者なのではないかと考えてしまっていた時期もあった。それに、現在の俺の姿はどうだ?
毎日ブラジャーを着けて化粧をし、スカートを履いて外に出る。男とデートして、夜には彼の逞しい男根に貫かれて大きなおっぱいを揺らし震わせ、喘ぎ声を上げる。自分より大柄な彼に抱かれて、すっぽり包まれていると、彼に守られているという安心感と幸福感を覚えてしまう。これが女でなくてなんなのか。どうしてもそう思ってしまうのだ。
近い将来、俺は何度も彼に組み敷かれそして・・・。これだけ膣内を満たされても上手く回避できているのは奇跡に近い。そうなった時、自分は・・・。
また一度頬を叩く。もう、そうなってしまったらそうなってしまった時だろう。どちらにせよ、俺はもう光哉くんのいない生活なんて想像できないから。だから・・・
「式までに絶対痩せてやる!」
晴れの舞台で彼に惨めな思いをさせることだけは断じて許せない。男とか女とかは関係ない。自分自身の矜持だった。
俺はネット購入したスポブラとジャージに身を包み、外へ出て走り出した。ブルブルと揺れる全身の脂肪に気を取られつつ、なすべき事に身をつぎ込む決意をしたのだった。

13
「んしょ、んしょ」
少し動いただけで身体が重い。やはり体重も相応に増えるんだなぁ。ベンチに腰掛け、一休み。日が経つにつれて行動が制限されていくのを実感する。来るべき時に向け、全身がエネルギーを蓄えようとしているのかもしれない。いつ何時それが起こってしまってもいいように、ここ最近は昔みたいにゆったりとしたワンピースを着ている。光哉は「昔に戻ったみたい」だなんて呑気に言ってくれるけど、もう!
彼の笑みを思い出し、私もふふっと吹き出してしまう。変わらないんだから!
おっぱいも張ってきて、いよいよ本来の機能を発揮することになるんだなぁ。女は明確に変わるものね。
ふと思い出し、スマホで数年前に保存した写真を見直す。うわー、私若いなぁ。この頃はまだ自分のことを俺って言ってたっけ。我ながらスリムなのに出るところはしっかりと出ていて綺麗だなぁ。本気だったもんなぁ。本気出しすぎて、ドレス合わせの度にサイズ変更になって慌てていたのも良い思い出だ。
この頃の私なら、街で誰が見ても美人だって言ってくれるかな。
なんて、30過ぎの人妻が何言ってんだか!
さて、愛しの旦那様が待つ我が家に帰りますか。もうしばらくしたら、新しいキャストが増えることだし!
「早く産まれておいで。私と彼の、宝物♡」

14
妻の帰りを待ちながら、昔のことを思い出していた。思春期ごろからだろうか、顔が良いと言われて色んな女の子から声をかけられるようになった。それが高じて芸能事務所なんかの誘いもあったけれど、僕からしたら違和感しかなかった。顔ってあくまで僕を形成する一要素でしょと。
実際にお付き合いした人もいたが、結局僕の趣味や内面まで理解してくれることはなかった。勝手に期待されて勝手に失望されただけ。僕は心から僕を愛してくれる誰かに飢えていたんだ。
社会人になっても同じことを繰り返していた僕は疲れ果て、気晴らしにゲーセンへ行ったんだった。たまたま隣の台に座っていた男性・・・少し太っちょで、気のいい彼。
ゲームを通じてなんとなく波長が合って、そのまま缶コーヒー片手にだべっていた。
「結局あるがままが一番なんだよな。そんな素の自分を見て、ある程度は分かってくれる人とじゃないとどっかで無理が来そう。まぁ俺はあるがまますぎて未だに恋愛経験ないんだけどw」
彼はそう笑っていた。あっけらかんと、楽しそうに話をする彼。
「どうすればそんな素敵な人見つけるんです?」
「えっ、俺に聞く?話聞いてた? んー、分からんけどマッチングアプリとかで相性良い人見つけたら?」
そんな軽い一言に流されるままにマッチングアプリを始めて・・・なかなか上手くいかないこともあったなぁ。それで、確か近所にある縁結びの神社にお参りに行ったんだっけ。神頼みなんてらしくないかなとも思ったんだけど。
(僕のありのままを愛してくれる人とご縁を下さい。愛する女性と素敵な家庭を築くのが夢なんです)
ご利益は抜群だったと思う。だって、そのすぐ後だったから。美鶴と出会ったのは。
コロコロと表情が変わり、本当に愛らしい。素朴で純粋な女性。俺、なんて一人称だけどそれも彼女らしくて好きだった。僕の趣味にも理解があるし、なんなら僕より詳しいこともあるし。僕には勿体無いくらいだ。それに、実はスレンダーな娘よりも肉付きの良い娘がタイプな僕にはストライクだった。初めて彼女を抱いた時の興奮は忘れないだろう。あんな素敵な女の子が、僕と結ばれるまで処女でいてくれたなんて!
そこから僕に抱かれるごとにエッチを覚えてくれて。いじらしくてたまらない。
彼女との日々は夢のようだった。一緒に暮らし、婚約し、式を挙げた。あの時の彼女の覚悟たるや。搾り上げたあの肢体たるや、女神そのものだった。
そして、今。彼女は僕との愛の結晶を宿してくれて。これからもきっと素晴らしい毎日だろう。本当に本当に感謝している。

こうして美鶴と出会えたのも、ひいてはあの日話した彼のお陰、と言えるかもしれない。たった一度の出会いだったのでもう顔も覚えていないけれど、あの日のことはいやに印象に残っている。また会うことができたら自慢してやりたい。僕は素の自分を受け入れてくれる女性に出会えたよと。

初出20230716

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【投稿小説】第二次性徴異常発育症候群 性転換症 第三十話 歪(いびつ)な世界

作 kyosuke

少々ギクシャクした雰囲気の昼飯も終えると新たなボート小屋になる建材や道具と人員を搭載したトラック数台が来た。令も航も出迎える……二人とも小型船舶免許を保有しており航に至っては牽引免許も保有している。迅が愛車であるスカニアから降り二人に気が付いた。
「令に航か……」
「盆の時に申し訳ない、本当に」
令は気まずい表情になるも迅は笑いつつ言う。
「な~に、普段の顧客も盆休みだしな……だから将の勤め先も」
作業員の中に明らかに“初老”と見受けられる面々が居て令は気が付いた、将の表情が緊張している。
「会長、それに相談役まで……」
空調服に冷却タオルを頭に巻いての参加で御年を考えると止めたくなる、しかし二人とも叩き上げであり時折現場に来て社長業を“現実逃避”する一面も……将がハンドルを握るスカニアの助手席に座る事も多い。
「一ノ瀬本家当主の困りごとを聞いたしな……主任、巧い後継者が出て来たな。倉敷 茉奈か……」
あんな難コースだ、往路が控えているが安堵した表情は美しい……。
「主任、後一台はもう少しで到着します」
20ftコンテナ二個をメインにするボート小屋、道路条件が良ければ40ft用トレーラで行けるのだが、今回は作業工程の関係上二台チャータしている。迅のスカニア重低床トレーラの荷台には“ラフテレーンクレーン車”が搭載されオペレーターが下す作業をしていた。公道走行可能であるが使用する現場までのルートに変速機に負担を生じる峠道だったので陸送に……。
「朱鳥や陸は初めてか?迅伯父さんは」
「はい、あの父からは聞いた事があります」
「一ノ瀬運輸の社長をしている迅だ……こうして見ると玲とそっくりだな」
朱鳥を見た迅が発した言葉に玲は薄ら笑いをする、彼女が自分の故郷に来た時には誰か常にいないと危ないかもしれない。
「この分だと明恵さんにも逢ったか?」
「はい……母があれほど敵意を出すなんて初めてみました」
玲も驚くのも迅は分かっていた、結婚前に初顔合わせになった時の気まずさは今でも覚えている。
「ほう、可愛くなったなぁ。玲」
「田島相談役に錦社、いや会長、御無沙汰してます……」
玲は父の勤め先である建設会社の相談役と会長とは顔見知りであるのは年に一度家族を招いてのイベントを開催しているのだ。変性症発症した事も把握しており直ぐに休暇を与えた程だ。
「監督、準備OKです」
新たなボート小屋になるコンテナをトレーラから降ろす準備は終えていたのである。二人はヘルメットを被り相談役は視線を建設現場全体に向け、会長は設置個所に……。ラフテレーンクレーン車はコンテナを吊るし上げ始めた……海風の影響もあり開けた場所とは言え揺れる事に変わりはない。
「基礎が大分広いな」
「二隻追加になりそうだからな……親父の趣味仲間にレストアの達人が居る、俺は自前の船は持ってないって知ってな……」
令の言葉に迅はポケットからメモを取り出して言う。彼も営業する事もある事は令も分かる。
「サイズは?」
「動画でサイズを計測している、最寄りの漁港まで運んでくれると助かる。そこなら国道沿いだ」
航は自前のボートを持っているがメンテナンスの観点からライトトレーラで運べるサイズにしており自宅ガレージにある。この方が船体にフジツボやら付着しないのでメンテナンスが楽である。確かに漁港と言う場所柄大型車が出入りするので国道も整備される……漁港としても一部をマリーナに開放すれば収益が出て来るのだ。



客人である鷹を見送った朱鳥らは海を見る、浜辺はあるが遊泳には向かない……海底地形上海流が強いらしく陸が溺れて肝を冷やした事もある。
「あら……」
朱鳥はスマホを見て怪訝な顔になり、玲は尋ねる。
「クラスメイトが来るわね、玲……逢わない方がいいかも」
「……客室に戻るよ。陸君の他の宿題も見て置くわ」
玲は察した、余程癪に障る相手なんだろうなぁ。


玲は客室にて陸から聞き出す。通学している学園は戦前から歴史がある名門校な故に生徒の両親若しくは祖父母も大企業で重役や著名人も多く在籍している。一ノ瀬家は名門になるが事業規模は小さい方だ。この様な力関係を生徒が持ち込んでしまうのが多々あると言う。
「檜沢 久留実?」
「うん、中等部じゃ一番の実力者で祖父が理事長しているからね……嫌がらせも多いし。高等部に通う兄になる一騎さんが毎回対応しているからね」
スマホの画像を見ると確かに人が良い感じだ。ヤンチャな妹に苦労している事は分かる、久留実は雰囲気的に傲慢なのはどうも母親が少々問題がある。
「はいるよ、あれ?」
客室に来た少年は玲を見て驚く……確か妹と逢っている筈の朱鳥がここに居るのは?否違う……。
「っ!一騎先輩も来ていたんですか!」
「分家筋になる玲です、初めまして」
「……分家の子か、そりゃあ朱鳥も隠したい訳だな、ん?玲?」
彼は持っていたスマホを操作して動画を再生した。それは昨年玲が空手の流派対抗大会にて組手をしている姿、まだ少年だった頃の姿に玲は微笑む。
「去年の大会ですね、これ」
「性転換症発症したのか……今年はエントリー見送った知ったから色々と憶測飛んでいたが……」
「はい、もしかして嗜んでいるんですね」
「そうさ……日下部師範代は?」
「元気にされてますよ、最近も不届き者を成敗してますから」
「日下部師範代?」
「私と父、兄、そして伯父の空手の師匠になる方の一人」
陸はキョトンすると一騎は苦笑しつつ言う。
「先生かな……まあ怒らすとコワイ人さ。久留実も小学校低学年まではしていたけど母親が嫌がってね」
成程、世の中の実情に疎い方らしく息子も苦労している感もある。
「様子見に来たんですか?」
「ああ、宿題終わらしているかなぁと思ったが昨年よりは進んでいるな」
宿題を見て一騎は思う、玲の学力も中々だ……。
「ボート小屋建て替えるんだな、業者が来ていたけど」
「父の勤め先と伯父が社長をしている会社です」
「挨拶にいかないとな」



「おおっ、檜沢君か……神楽坂師範代は元気にされているかな?」
「押忍」
「玲の事か、見ての通りだ」
迅は一騎を見て直ぐに流派と師範代の名を告げると彼も返事する。作業は主要のコンテナ二個が到着し据付作業を終え、空調設備をクレーンで上げていた。将は機材の確認に余念がない、仮倉庫にしているJR貨物コンテナは自家発電ユニットに改造する予定であり太陽光発電と蓄電池を備えると言う。
「空手、続けさせているんですか?」
「三沢市は人の出入りが激しいからな、ならず者も多いし……」
一騎も師範代から聞いてはいたが三沢自動車本社工場に加えて関連する部品メーカーも製造工場や支社を設けているので自ずと人の出入りが激しい。期間工の中には素行が悪い方も珍しくない。この事は一騎も見聞きしているので分かる。
「まっ……玲にはもう恋人もいるしそいつとは裸で寝ている」
「……はい?」
「社と同類さ……組手しがいがある相手って」
彼は悟った、これはこれで自分が玲を女にすると言うお役目は無い事に安堵した……一ノ瀬兄弟はアマチュア空手家の間では全国区だからだ、当然社や正弘の事は知っているし何度か試合をした事もある。そのレベルと同等なら……。
「(大学生か社会人か)」
空手をしている身としては見てみたい気がした。彼女の恋人は……。
「玲、車内にモバイルバッテリーがあるからとってくれ」
「うん」
迅のスカニアに乗り込むと玲は気が付いた、朱鳥らが見えたので傍に居る陸にモバイルバッテリーを渡すと後部スペースに隠れた。大型トラックのキャブの後方はベットスペースになる仕様もあり、スカニアは本社工場がスウェーデンに拠点を置くので陸続きの欧州各国を走る事も珍しくない。
「(なるほどね、如何にも生意気な感じって……リーナと合わせたら……)」
小学校時代何度キャットファイトを止めたか……ビンタ喰らってもリーナはビンタで返した辺りは自制してくれているからよかったが。
「(お嬢様ね……ん?)」
玲はふと思い出した、一昨年流派対抗大会の際にリーナと対戦した相手の少女って……。スマホを操作して隆士にLトークを送信した。あの時勝敗が付かずに相手もリーナも過熱しバックヤードで場外乱闘寸前になりあちらの門下生らと一緒に間に入り止めた。
「(あっ……あのこが)」
迅のスカニア車内で玲は隆士からの返信にため息をついた。




久留実って言う子は昔から人を振り回す……朱鳥も辟易するが彼女の母親がどうしょうもないお嬢様、叔母同様……本当に。
「一ノ瀬さん、御爺様の御自宅まで押しかけて申し訳ないです。ご予定があったのに」
「いいのよ、あのこは言い出したら曲げないから」
朱鳥の横に居るのが幼馴染でもある碧山 遥、戦後に街の洋食屋を生業にする祖父を持ちそれを一大チェーン化し成功した両親を持つ。久留実は下僕と思っているが実際は違うらしい。
「例の従妹は?」
「隠れているから、でも奇妙な事もあるわね。久留実が一目ぼれしたって空手の少年の名前も“アキラ”だったし」
詳細は知らないが大会の際に出会ったらしいが、どうも母親が止めるように強要したぽい……一騎さんは男性だから必要って言うけど。
「……その方って変性症になって女性化ですよね」
「最近ね」
久留実はボート小屋建て替え作業を見ていると兄を見つけた。
「おにい……えっ」
直ぐに振り向くと朱鳥は居る、兄の隣に居る少女は……久留実は駆けだすと少女に向けて突きをするも彼女はヒョイと回避した
「やっぱり一昨年にリーナと喧嘩した方だったね」
「!」
「一ノ瀬 玲、分家の子だよ」
兄の言葉に久留実は動揺する。
「な、なぜ私の事をしっているんですが!!!」
「あの時は少年だったから」
一騎もわらうしかない、一目ぼれする程イケメンだったのが今や爆乳中学生……合掌モノの失恋である。
「錆びついてないね、こっそり鍛錬していたかな?自分の方は今の身体に慣れてないから寸止めとか出来ないよ」
「はい?」
玲の言葉に久留実はキョトンした。



「まあ、女性になると大変になるんですね」
遥も変性症の事は知ってはいたが実際に発症者と逢うのは初だ。
「胸と尻は重たくなるし……何よりもブラのバリエーションが無い」
そこは朱鳥の胸を見れば分かる、彼女も同様の事を言っている。遥も久留実も中学女子の平均サイズよりもやや上である事には救われている。
「朱鳥さんが隠したいのも分かりますわ……よくわかりましたね」
遥は清楚で本当に中学生離れしている美貌だ。
「幼馴染の祖父が師範代しているからね、対戦記録確認したら」
「楊はまだ空手をしているのか?」
「はい、部もないので……日下部師範代の元で。それに通っている中学校にも札付きのワルが居るから続けるられている」
玲は遠目になる、GW明けにプッツンして不良三年生らを全員KOさせたのだ。そりゃあ制服が開けたリーナを見れば……気が付いた時には生徒会副会長が抑えていた。
「もしかして茶道や生け花が苦手?」
「……」
久留実は頷くと朱鳥と遥も遠目になる。



「護身術は習わせた方はいいわね、茶道やら生け花で男性が釣れると思っているの?私も習っていたけど触り程度だったし」
本家屋敷にある厨房に居た日菜子はあっさり言う。
「?」
「私の父親は板長だからね……どうしても必要って思って」
「失礼ですが旧姓は」
「神田川」
遥は祖父からその名を聞いた事がある、洋食の面々も一目置く存在だ。置かれている包丁セットは主婦が持つ品物ではない……確実に料理人が使用する。
「女だから武道ははしたないっておもっていると取り返しがつかない事になるわね……」
久留実の我儘の原因はストレスだ。

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