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【投稿小説】牛上家の子供 ②

作.名無しのゴンベエ
イメージキャラ作成:シガハナコ

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何より目が離せないのが、この少女の瞳だった。それはまさしく異形の瞳だった。


そこには光彩は無く、わずかな白目も見当たらない。ただ闇よりも深い漆黒の瞳が、こちらに向けられていた。そのままこの美少女は大きな鏡をバックに座り、こちらを向いてうっすらと笑っている…。


まるで逆に向こう側から、自分の心の全ての内を覗かれるような感覚に襲われた。そうさせるだけの力が、この目にはあった。


乙女の淡い真心や、人間の希望あふれる情熱など、微塵もなかった。その瞳にあるのは純粋なる悪意、無限に広がる巨大な深淵であった。


幼い頃見たトラウマが、大人になってもなかなか忘れられないのと同様に、一目見たこの美少女の暗黒は決して頭から離れようとはしなかった。


たとえばこの写真を一目見たとして、少し長く目をつぶっていたとして、顔の輪郭や髪形、着物の模様など、細かいことは忘れたとしても、この瞳だけは忘れられない。自分の中にある恐怖という恐怖が警鐘を鳴らした。

もう結構です、と屋敷の主人に写真を返した。精神科医としてどう診断するべきか、今の私には分からなかった。

「私には…まだ判断しかねません。だがこの娘に関しては、なにやら尋常ならざる事が起きているのは確かなようですな…。何があったのでしょう?どうか要点だけでも教えてもらえないでしょうか?」

ふと気づけば主人は俯きながら目の前に組んだ手を震わせている。その恐怖の視線の先には、やはりあの美少女があった。何度か口を激しくパクパク動かすと、重苦しく話し始めた。

「一体全体どう話せばよいやら…。一言で言うならば、全てが歪んでおりました……。この娘に関することは何もかもが…出生も、性格も、血液関係も、


その肉体さえもが歪んでおりました…」

「肉体が…?」

主人が言った言葉に、私は思わず首をひねった。主人は顔を上げると、次に信じられない言葉を言った。

「先生、あなたは耳を疑うかもしれません。いや、信じなくてもそれが当たり前なのでしょう…。

先生、この娘は元々いたって普通の━━



少年でした…」

【投稿小説】牛上家の子供 ①

作.名無しのゴンベエ
イメージキャラ作成:シガハナコ

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恐ろしい。

この少女が恐ろしい。

私は写真を見てそう思った。



春の新芽が吹き始めたころ、私は旧帝大の精神科医としてある山の中の田舎町に来ていた。

田舎とは文字通り田舎で、車を持たない私が町の移動手段に考えていたタクシーは走っておらず、都市部経由の電車も二日に一度しか無かった。

道行けばかつては運営していたであろう酒屋、タバコ屋は息をひそめ、駄菓子屋に至っては瓶コーラ自販機が故障していた。

一先ず最寄りの、酷く天井の低い定食屋で一服着いたとき、目的地まで迷わずたどり着けるか不安になってしまった。

春の日差しを受けながら、道行く人に何度も道を尋ねた。中には自転車を引く高校生もいて、坂道を歩きながら流行のスマホのゲームについて喋っているのを見かけた。

どうやら過疎化が進んでいるとは言えども、まだ町に活気は残っているようだ。

そんなことを考えながら私は足を動かした。曲がりくねった林道を何とかして歩ききると、ようやく私の目的地に着いた。

山中の田舎町に存在する、この地域で一番の権力を持つ富豪の家、牛上家の屋敷だった。石造りの高い塀に囲まれた建物はまるで要塞のようだった。

チャイムを鳴らすと昭和風の女中が応対した。そのまま流れるように屋敷の応接間に案内され、ソファに座った私にお茶を差し出し、すぐに引っ込んでいった。

お茶を啜りながら待っていると、しばらくしてこの屋敷の主人と見受けられる中年の男が入ってきた。私を見ると安堵の表情を浮かべていたが、何処か血色の悪い表情だった。

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【投稿SS】寂しウサギ

作:鎖連鎖
キャラクター&挿絵:シガハナコ

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「片桐誠人、あなた、あたしのペットになりなさい」
「は?」

 放課後、クラスのボスである我が侭娘にそう言われた。
 普段、俺はこいつにからまれないように出来るだけ早く下校することを心がけているのだが、今日は運の悪いことに課題を忘れたせいで居残ってしまっていた。
 まあ、悪いのは俺なんだけど。
 しかしこれはないだろう。
 よりによってこんな我が侭娘に出会うなんて。

「まああなたの外見からして可愛くはならないでしょうけど」

 おい。
 可愛いと言われたくないが、失礼なことも言われたくない。

「そもそも俺は…」
「あなたに拒否権はないの」

 そう言うが早いか、彼女はどこからか取り出した赤い石を開いて、投げつけてきた。
 俺は咄嗟のことで避けられなかった。
 まず、石が俺の体の中に溶け込んだ。
 異変は、その直後に訪れた。
 
「!?」

 体が、熱い。
 体が無理やり作り替えられていく感覚。
 股間が熱い。
 胸がむず痒い。
 頭と尻からは、何かが生える気持ち悪い感覚を覚える。

「あ…がっ、……」

 思わず膝をついてしまう。

「あら、なかなかいい仕上がりじゃない」

 ふざけんな、もとに戻せ‼と、叫ぶ余裕もない。

「はあっ……はあっ……はあっ……」

 制服がきつい。
 いや、胸のあたりがきついのだ。
 それに気づいてそこを見てみると、見事なまでの胸部があった。

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【TSF小説・DL作品】オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~ ①

応援上げです♪

【オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~】
作:kagami0235
絵:ささくま きょうた

『第一章』


「本日は、我が組織をご利用いただき――誠にありがとう御座います。鮫塚大将様。私は、ここの総支配人を務めています。松村と言う者です」
妙に腰が低い、中肉中背の男だった。
それなりの値段はするだろう背広を纏い、きっちりと髪型を整えながら、平凡な雰囲気を拭えない彼は、『職業柄、名刺はお渡しできませんが……ご了承ください』と言い、ソファに座ることを勧めて来る。
僅かに抱いていた期待が萎んでいくのを、鮫塚大将は感じていた。
(……やっぱり、か。……どうせ無駄だったんだ)
人里離れた山奥。
山と山の隙間に潜り込むようにして、その洋館は建っていた。
広大な庭には噴水や花園もあり、一目ではリゾート施設に見えなくもない。
だが、しかし……。
「それでは……早速、ご紹介させて頂きます。お父様の方から大将様は、大変におモテになると言うことを聞きましたので――いやはや。珍しい商品を……つまりは女性を取り繕ってみたのですが……どうでしょうか?」
松村が、ぺこぺことお辞儀する。
その手から差し出された写真には、複数の女性があられもない姿で映し出されていたのである。
「例えば……これは、男性器を見せさえすれば絶対に服従してしまう娘。名前はカオリ。また、こちらはどうでしょうか。他人の排泄物を定期的に摂取しないと呼吸困難になるよう躾けた娘……レイコです。……おっと、これもお勧めですね。純潔を守ったまま、性感帯だけを過剰に開発した娘……ナナ。どれも至高の肢体たちです」
「…………」
そう、ここは普通の場所ではない。
陰湿な犯罪行為が平然と行われる日常の裏、世界の闇。
ここでは顧客の注文<オーダー>に応え、商品と言う名の”ヒト”が売り買いされているのだ。
調教済みの奴隷たちは、裏の世界でも人気が高かった。……が、しかし。
(うーん……んーっ……微妙だなぁ……僕の好みじゃないなぁ……)
客室に案内される最中にも、破廉恥な姿――ボンデージや、裸など――で恥辱の仕打ちに晒されている女性たちとすれ違っていた。
悔し気に睨むもの、怯えて震え上がるもの……そして、身も心も奴隷に堕ちたもの。
最初こそはゾクゾクと背筋が粟立ったが、それも一瞬だ。
大将は、どうしても乗り気になれない。
(それに……思う通りになる女なんて……普通にいたしなぁ……)
大企業の跡取り息子の大将は、金にも、女にも困ったことはない。
自惚れでも何でもなく容姿端麗で、優秀、しかも金持ちと来て、周りの人間たちは勝手に媚びて寄ってくるのだ。
困難も、苦しみも味わったことがない。
故に……彼の心は満たされことがなかった。
「…………ま、また。……今からでも新しい商品を納入し……御覧のような
サービスで、大将様好みの性奴隷に仕立てることも可能です。どうですか?」
用意していた商品では釣れなかった松村は、組織で行うサービスの一覧を、慌てて差し出して来た。
高級外食店のような豪勢な品目表には……一般の神経なら目を瞑りたくなるような最低で下品な記述ばかりが、隙間なく埋められていた。
だが、大将は平然と一覧に目を通していく。
(……へえ。アナルに……ダルマに……拷問。あ……壁や床に埋めて、死ぬまで飼うのもあるのか。……肉便器化サービス。なるほど、手が込んでいるのは
……認めるよ)
やはり、大将は狂っているのだろう。
異常を、異常だと思えないのだ。
(……うーん。……僕には、まだいいっていうか。どれも……興味がないっていうか……でも父さんには安心して貰いたいし……わざわざ僕に、ここを勧めるくらいだから――そろそろ奥さんも、孫も欲しいんだろうなあ。……でも)
苦労も、絶望も一度もなかったレールの上の人生。
それだけが、大将を歪ませた――わけではなかった。
むしろ、原因の大半は父親にあるのだ。
鮫塚小五郎。
過保護では、とても言い表せない彼の教育の結果、鮫塚大将と言う人間は、常識と良心を失ったまま大人になっていたのだ。
(…………あれ?……なんだ……これ?)
父には感謝しているし、困らせたくないとは思いつつ、一覧表を流し見ていた大将は、不意に視線を止めた。
それは純粋な興味だった。
内容が、よく分からなかったからだ。
「……せい、てんかん……調教……?」
――『性転換調教』。
この文字だけが、妙に意識に入り込む。すると……。
「ああ……それですか。性転換調教サービス……こちらのコースでは、私たちが用意した商品や、指定して頂いた人物を……文字通りに性転換し……お客様のご注文通りに――身も心も作り変えるサービスです」
「そんな……ことが……可能なんですか?」
「勿論ですよ。技術とは、科学とは……むしろ、世界の裏側で進歩するものです。大将様のご想像を超えて……男をオンナに、女をオトコに――変えてみせます!完璧にっ!」
その言葉が、大将の胸に、心に響いた。
どくん、どくん……どどどっ。
彼の中で、何かが目を覚ます。
「どんな人物でも……僕の望むままにっ――変える。オンナに……変える」
「はい。どんな男でも大将様のためだけの……性奴隷に変えてみせますっ!」
『まぁ、他のサービスと比べても、かなりお値段が掛かるのですが……』と零す松村の声は、もうほとんど耳に入っていなかった。
(僕の周りは……僕の思い通りになる連中ばかりだった。男も、女も……退屈する。むしろ、相対するだけで疲れる、煩わしい奴らだ。けど……普通じゃない、オンナなら?……男だったのに……女に変えられて、僕だけの……奴隷に、牝になる。……うん、いいかも。これにしよう!)
想像したこともない背徳の刺激を――大将は求めていた。
松村の言葉を聞き、男を女に変えて、牝として飼ってみたくなったのである。
まるで子犬や子猫を買い上げる感覚で、にやり、と彼は唇を歪めた。
「決めました。松村さん……僕、このサービスがいいです。これで女に変えた男を……奴隷に。いえ、パートナーにっ。僕の妻にします!」
「……おおっ。畏まりました」
「僕だけを愛して、僕だけに体を捧げる――そう……牝妻と言うくらいに、身も心も牝にして下さい」
「はい、はいっ。分かりました。……ですが、基本料金だけでも二億は掛かります。大将様のご要望のサービス内容だと……恐らく、お値段の方が五億……いえ、六億は超えると思うのですが……」
「ああ、そこは心配しなくていいです。父さんに言えば……今日中にも振り込むと思います。むしろ、どんなに金が掛かってもいいです!」
「…………は、はあ。流石は鮫塚……様で……お支払いが豪快ですねぇ」
「代わりに、完璧に!僕の注文通りの――牝妻に仕上げてください!!」
「そこはご安心ください!我々の調教技術は絶対です!!それでは……ご確認しなければならないことが幾つかあるのですが……まずは――」
先ほどの一覧表の上に……『性転換調教コース』と書かれた別の一冊を提示し、松村がふたつの項目を指差した。
「……商品はこちらで準備した人で構いませんか?それとも……お客様の方でご指定された人に致しますか?」
その問い掛けに――大将は、嬉しそうに口を開いた。
「……指定します」
「では、その方の名前は?」
「……常原勇大。それが――未来の僕の妻となる人間です」
堂々と――何一つ罪悪感なく――大企業の跡取り息子は、そう言った。

その一言が、ひとりの男の人生を壊すことを知りながら――。

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オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~

【投稿SS】西野さん「それセクハラです!」 

作:藤原 埼玉
キャラクター:どっきー https://twitter.com/IDockiE

「あー、くそ。だるい…」

喉が渇いたが、冷蔵庫には調味料以外なにも入っていない。
ポカリ飲みたい。
一人暮らしで、風邪引くのが如何に致命的か、30になって実感する…

「そろそろ熱も引いたかな…」

脇に挟んだ体温計から電子音が鳴る。こんなこともあろうかと、引き出しにしまっておいたのが功を奏した。

「36.9℃…か…」

この分なら、明日には出社できそうだ。

「謝罪メールを入れないとな…あと、あの引継ぎの件も確認しないと…」

ぶつぶつと独り言を言いながら買い出しに行こうと布団を這い出す。一人暮らしが長いと独り言がやたら多くなるのだ。

「あ?あ゛ー…声がおかしいな…」

オレは、やたらずってるパジャマの裾を引っ張りつつ着替えに洗面所に向かった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんでだ。

「えー、皆さん驚くかと思います。私も驚いております。」

水曜日の朝礼、オフィスにざわめきが広がる。そのざわめきの中心にいるのは、オレだ。

間に合わせにしてもひど過ぎた。シャツの裾といいジャケットといいサイズがことごとく合わなかったのだ。結局、家にあった安全ピンやらクリップやらを総出で留めた。歩くたびに当たって苛立たしいがあと少しの辛抱だ。…あと少し?

「我がハリモト商事の経理課の西野課長は、非常に勤勉で新卒入社後一度の遅刻もないということで7年勤続皆勤賞を受賞したことも記憶に新しいことかと思います。」

おい部長。なんでそんなに引っ張るんだよ。逆にいたたまれないだろうが。

「その西野課長ですが、故あって…と言いますか。医者の見立てでは、性別が染色体レベルで変わりまして、年齢も一回りか二回りほど幼くゲフンゲフン…若返ったということでして…」

おい、部長、幼いって言いかけなかったか?畜生。今度セクハラで訴えてやる。

「つまりは、ここにいる女子小×生みたいな可愛らしい容姿の子が西野課長ということでございまして…本人もいろいろ大変なこともあるかと思いますが、今まで通り接して欲しいという本人の希望もありますので、宜しくお願い致します。」

『宜しくお願い致します!』

経理課のみんなは、いつになくいい笑顔でオレに挨拶をしてきた。

うん。おい、なんでだ。

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【TSF小説・DL作品】オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~ ③

【オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~】
作:kagami0235
絵:ささくま きょうた

(俺は……恒原、勇大。……家に帰れば妻と娘が――公美子と、まゆが待っているんだ。その俺が……オンナなっ、わけ……ないっ!)
愛する家族が待っている夫なのだ。
大切なふたりを守られければならない一家の大黒柱なのだ。
『その自分が、こんなにイヤらしい体の女である筈がない』。
――と、自分に言い聞かせる。
(この……おっぱいも偽物だ。こんなに大きなおっぱいあって堪るか!公美子の胸より……二倍以上はある胸なんて、本物の筈がないんだっ!)
世間一般のサイズを大きき逸脱した――妻のモノよりも巨大すぎる――乳房に、再び指を押し当てた。
紛い物であることを証明しよう……と。
むにゃっ、ぐにゅりィ!
指先が、柔房へと沈んでいく。
「あっ、あぁっ……おれっ……んっ、ンンー!」
汗を掻き、悩ましく茹っていた肉房は、先ほどよりも蕩けるように柔らかく、指をずぶずぶと招き入れた。
歯痒い悦感が一気に沸き立ち、甘く上擦った悲鳴を漏らす。
「にせぇ……偽物の筈……だから。つ、続ければ……きっと消える。こんな……俺の……偽デカっ、おっぱい――はぁ、ンン!」
熱い疼きが、激しさを増す。
肉房を揉み解す度に巻き起こる官能的な快感。
ピクピクと細肩を震わせながら、それでも指を動かした。
「あっ、ああっ!あうっ……くふぅ!にせっ……ものぉ!俺の胸ぇ……立派なむなぁ……胸板だぁ。こんなのぉ……こんなのぉぉ!はぁ……はぁ、ンンーっ!」
本物の乳房など持ったこともないのに、懸命に肉房を揉み回しては、偽物だと言い張る。
(はあっ……くふぅんっ?あっ、あ!股間からぁ!ひっ、はぁあ、あっ!?)
ぷしゅっ、しゅわ!
恥部に割って入る肉花弁。
その奥より、熱い滑り液が滲み出た。
愛液だ。
歯痒い疼きを煽りながら、膣管らしき内臓を伝い落ちて来る。
「あっ、ああ――そ、んなぁ!くふっ……!!」
ジンジンと悩ましい熱を放つ、乳首ふたつ。
……だけではなく、もどかしい切迫感を訴える膣襞。
自分が男だと訴える行動は、皮肉にも今の勇大が女であることを証明するばかりである。
「あっ、ああ!……あんっ……!」
思わず腰を、くねりと浮かばせた。
恥部の肉割れ目より、愛液が染み垂れる。
(お、男だけど……き、気持ちイイっ。俺の……お、オンナのかぁ、からだぁ……っ!)
恥辱と、未知の快楽への期待から、勇大は真っ赤に顔を茹らせた。
……その時だった。
四方の壁のひとつに、プシュッ、と切れ目が入ったのである。
「ッ、ッッ!?」
真っ赤な顔で、振り返る。
(ええっ!?)
先ほどは境目さえも分からなかった部屋に、扉が生まれていた。
「……うふふ。お目覚めですね、勇大さん。どうですか……その新しい体は……」
男の装いをした女であった。
濡れ羽を思わせる、妖しいほど艶やかな黒髪は短く切り揃えられており、細身の長身と凛々しい顔付き。
そして黒一色と言う姿が、彼女を異性のように見せている。
高い声色がなければ、蠱惑の微笑がなければ、男と勘違いしてしまいそうだ。
(――あっ。あうぅ!)
身じろいだ振動で、悩ましく揺れ弾む乳房に悪戦苦闘する勇大。
やっと現れた他人――自分を、この悪夢から解放してくれる筈の人物に……
しかし、なぜか言葉が出てこない。
「……ひっ、はっ……ひゃんっ……!」
ばかりか――激しく頬を赤らめて、胸と恥部を手で隠す。
当たり前だが小さな手では隠し切れない巨乳房……否、爆乳と、愛液が染み垂れている女陰に、男装麗人の視線が刺さる。
「うふふ」
「――――ッ」
駄目だ。
声を出したいのに、唇が凍り付く。
近寄りたいのに、腰が抜けてどうしようもない。
プルプルと嫋やかな女体は、あまりの恥かしさに戦慄くばかりであった。
(ゆめ……なのにぃ。夢の癖に……なっ、なんでっ。俺――こんなに……はっ、はは、恥ずかしいんだよぉ!あっ、ああ!嫌だ!こ、こんなのぉ……!)

挿絵01_納品
挿絵:ささくま きょうた

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オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~




【TSF小説・DL作品】オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~ ②(先行紹介)

【オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~】
作:kagami0235
絵:ささくま きょうた

恒原勇大は、二十九歳を超えたばかりの成人男性だ。
健康志向の強い彼は、一度も会社を病欠したことがない。
毎朝のジョギングだって、欠かしたことがなかった。
二メートル近い背丈。
大きく浮き出た筋肉。
同僚、先輩から羨ましいと言われるくらい、逞しい体だった。
そう……少なくとも昨日まで、勇大は確かに”男“だったのである。
(……え?)
見知らぬ場所。
奇妙な、と言うか、不気味な雰囲気に包まれた白い部屋に、勇大はいた。
冷たい床の感触。
硬いけれども、滑らかさを持った妙な質感である。
プラスチックのような――スマホの表面に近いような――材質に手を乗せ、起き上がる。
「うわっ、ひゃうっ!」
すると、胸の方で途方もない振動が躍動した。
「わ、わあっ!……え。……ええっ?」
反射的に、視線を胸に向ける。
ぷるん、たぷるんっ、ぷにゅん。
見事な弾力をまるで誇るように、その柔房ふたつが波打っていた。
「……はあっ?……なんだよ、これぇ――ひゃぁ、はぁうぅっ!?」
甲高い悲鳴が、唇より漏れた。
四方八方に暴れる生肌の球体を握り締めた……途端に、勇大は、未体験の刺激を味わったのである。
「な、ななっ――えっ、ええっ?まさか……これって……あっ、ひぁんん!」
今度は、優しく柔房を下から揉み上げた。
もみもみ……ぷるん、にゅぷるんっ。
指が食い込み、形が歪むほど、甘い当惑が滲み出る。
「はぁあ……ふぅ。お……おっ、ぱい……えっ?俺に……おっぱいっ!?そ、それに――この声……うわっ、あああ!気持ち悪いっ!なんでこんなに……声が高いんだ!?」
違和感を拭えない、小鳥のように高い声。
分厚い胸板の代わりに、巨大な乳房がくっ付いている。
「あ、あうっ?……う、わあっ、ああっ、わああぁっっ――!?」
一切の衣類を纏っていなかった肉体――。
それは今までとは、まるで違う。
不健康と思えてしまうくらいに、白い柔肌。
頼りない小さな肩に、括れた腰のライン。
胸の巨大房と張り合うように、ぷるっ、と震えるのは、肉感的な桃型の尻であった。
しかも……その上で、勇大は、もっと大きな違いに気付いてしまう。
「……う、そっ……だろ?な、ななあっ……ないっっ!?」
瞳を見開き、顔を青くする。
震えながらに伸ばした、ほっそりとした指が、股間に触れた。
本来なら触れるであろう、男性器の感触は……なかった。
まるで最初から、勇大が男ではなかったかのように――そこにあるのは乙女の証。
ぬじゅるっ。
「ひゃっ……はぁ、ンン!」
恥部の内側にまで響く衝撃が、迸った。
指先が股座に割って入る肉花弁を、押し歪めてしまったのである。
あまりにも甘美な感覚、異性の――女の快感だった。
(な、なんだ……これっ?ゆめ……なのか?)
戸惑いつつも、さらに奥へと指を突っ込みたい衝動に駆られる。
未体験の、心地いい誘惑。
はふぅ、と切なげな吐息を零し、勇大は己の肉体を観察した。
(……お、女だっ。こんな……でかっ、おっぱい。デカおっぱい付いてる女に――俺、なってる!そ、そんなぁ!うそ、だろっ!?)
淑やかな造形の女の肉体。
特に巨大おっぱいの質量には、驚くばかりである。
愛する妻、大切な娘がいる、ごく普通の社会人だと言うのに。
昨日までは、確かに『男』だった筈なのに。
「……あぅっ……」
無理やり癒着したような、馬鹿でかい肉房が胸で揺れた。
ジンと熱く、悩ましい疼きが渦巻き、勇大は小さく呻く。
その声すらも、可憐な音色を宿しているのだ。
(違う。こんな……こんなの俺じゃない!だっ、だだ……だって!寝る前は胸もなかったし、ちんこも玉もちゃんとあったっ!それに公美子やまゆとも、久しぶりに一緒に過ごしたばかりなんだぞっ!そっ……その俺が女なわけない!こ、こんな……イヤらしい体の女な訳ないぃ!)
就寝する前は、確かに男の体だった。
連休を利用して出張から家に戻り、妻と娘と楽しい時間を過ごしてから――再び出張先に舞い戻ったばかりの、普通の夫だった。
(……夢だ。ゆめ――ひゃ、くふっ!?)
断じて……自分は 、こんな淫靡な体付きの『女』ではなかったのである。
だからこそ、眼前の光景を夢と決めつけ、彼は頬を抓った……が。
「い、いたっ!?」
予想を超えた痛みが襲い掛かり、飛び上がる。
ぷるん、たぷるん、と巨乳房が四方八方に揺れ靡く。
「あっ、あうっ?くっ、ンン――!?ひゃっ、はっ、はあ……!」
お蔭で、立つことも困難だ。
おっぱいに重心を乱されて、細足でか弱げに踏ん張る。
(いたっ、い。なんで夢なのに……すごく、痛い。そ、それに……この体――全然、立っていられないっ。う……ううっ……!)
じわっ、と涙さえも瞳に込み上がる。
涙腺さえも、緩いようであった。
巨大な乳房に翻弄され、狼狽するばかりの自分。
足の先からプルプルと震えている様は、あまりにも情けなかった。
「……だ、誰か。いないのかっ?……お、おーい!!」
夢の中だとしても、受け止めきれない。
イヤらしいボリュームの――胸も、尻も、肉感的な――女体に意識を囚われ、勇大は声を上げた。
「……な、なんだよ!ここは……どこなんだよ!だれかっ、だれか!お、おーいっ!!」
四方が壁に囲まれた、キューブ型の部屋。
白一色で、天上からは眩しい光が透過している。
そこには、勇大以外何もなかった。
女となった彼以外――何もない。
「……っ、う!うう!き、聞こえないのか!たっ……助けてぇ!」
普段の勇大ならば、ここまでは狼狽えない。
けれども、男から女へと肉体が変わり……しかも、一糸纏わぬ姿で、不気味な環境に身を置くことで、精神が孤独と不安に支配されいた。
バン、バンバン。
「おっ……お願いだァ。ここから出してくれっ!助けてくれぇ!!」
懸命に壁を叩く。
もう本物の女性がヒステリックに泣き叫んでいるようにしか見えなかった。
だが――それも、直に終わる。
「はぁ、はぁ……疲れる。この、からだ……なんてっ、体力がないんだぁ……」
ほっそりとした女体が、限界を迎えた。
肩で息をこぼし、浮き立つように柔らかな肌より汗を流した。
「…………っ」
むわん、と立ち昇る汗の匂い。
蠱惑的に……牝の香りがして、勇大は、恥ずかしそうに頬を染めた。
(……ちがう。俺は男……男だ。だから……これは夢なんだ。……体の感覚も……痛みも、苦しさも――この落ち着かない、疼きだって……偽物だッ!)
白い部屋に、ひとり佇む女体――それが、今の勇大である。
否が応でも意識は、揺れ弾む巨乳房や、腰の細い括れに向いてしまう。
お尻や太腿の悩ましい肉付きにも、思わず、ごくっ、と生唾を飲み込んで、凝視した。

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オーダーメイド~牝妻唯愛の事情~

【投稿小説】 chain change

文:鎖連鎖
キャラデザイン:涼川ゆい

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「ねーねー君一人?」
「俺らと一緒にどこか遊びに行かない?」
 そう言ってあたしに声をかけてきたのは、いかにもチャラい男たちだった。
 あたしも前までそっち側だったから気持ちはわかるけどね。
 っと、そうじゃなくて。
「ごめんなさい…ちょっと連れを待ってるので…」
「連れって女の子?」
「え、そうですけど…」
 しめしめ、かかった。
 内心でそう呟く。
「じゃその子も一緒にどこか行こうよ。そうしたらちょうど二対二だしさ」
「あ、それならいいと思います」
 この男たちをリージュ様に差し出して、また激しくセックスしてもらおっと。

 あたしが女の子になったのは数日前。まだ男だった時にいつものようにナンパしている時だった。
「ねぇ彼女、暇だったら俺と一緒にお茶でもしませんか?」
「彼女って、私のことかしら?」
 そう言って振り向いたのは、桃色の髪をした美人の人だった。
「そうね…。一緒に行ってあげてもいいけど、一つ条件があるわ」
「え、な、何ですか?」
「どこに行くか、私に決めさせてくれない?」
「よ…、喜んで!」
 そんな感じで連れてこられたのは、ラブホテルの一室だった。
(うわ…初めて入った)
「さてと…ここなら人目もないから思う存分吸えるわね…」
「え?吸う?」
 そんな声が聞こえて振り向くと、彼女の目は妖しく光り、
「さてと…それじゃいただきます」
 そして、意識が飛んだ。

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2016 1月DLsitecom売上ベスト10 1位は騎士団長壊落ス 女体変化に屈した騎士 第2章  2位はオレの調教係

騎士団長壊落ス 女体変化に屈した騎士 第2章
オレの調教係
maidencarnation -monochrome-
我が妻となれ勇者♂よ
コミックアンリアル Vol.58
今日から俺がうどんげちゃん!
女体化したら【快感10倍!!】とかありえないっ~妹カレシにハメられ失神!?~【フルカラー】(1)
俺が…百合!?【フルカラー】 6
にょたいかアプリっ~エロ指令に翻弄されるオレ(4)
にょたやん!お仕置き ナマイキ 女体化 ヤンキー【分冊版】 5
ツインテールナイトメア
東方TSF 妖夢に憑依
女体化即落ち10連発
熱き血汐に触れもみで

芦村君の体の事情~その4~

作.藤原埼玉
キャラ造形.こじか

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その1はこちら

その2はこちら
その3はこちら

「……こ、この前の……っつ、つづき……」

芦村は、興奮と不安と羞恥で上手く呂律が回らない。

「……」

神野は驚いた顔をした後、後ろめたいような微妙な顔をした。

「…いいのか??」

「……おなかが……じんじんして……つらくて……だから……かんのだったら……いい……っから……」

「……」

神野の返答がないので訝しく思って見上げると神野は少し険しい顔をしていた。

「……お前さあ……自分が何言ってるのかわかってんの??」

「え?」

そんな心情を知ってか、神野はぽんと少しぶっきらぼうに芦村の頭に手を置くと、ぐい、と顔を上向かせた。

「オレだからして欲しいくらい言え。この口で。今すぐ。じゃないと容赦なく全力で犯す。」

神野の目は笑ってなかった。芦村は血の気がさっと引く。でも今は兎に角理性が崩壊していた。

「か、神野に……神野だからして欲しいです……」

芦村は息を荒げて懇願するように言った。

「俺に何をして欲しいって?」

「わ、わかんない……」

「ちゃんと言え。ナニでナニをどうしてほしい?」

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芦村君の体の事情~その2~  (こじかさんの挿絵追加)

作.藤原埼玉
キャラ造形.こじか https://twitter.com/kojica_m45

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その1はこちら

その3はこちら


ざわざわ

「……」

芦村は自分の机の前で灰色の目で立ち尽くしていた。
その目線の先……芦村の机の上には……女子の体操着……しかも今の時代どこから調達してきたのかブルマが置いてあった。

「くそお!!誰だああああああ!!」

芦村は涙目でその体操着を掴むとゴミ箱に投げ捨てた。

「……流石にこんな嫌がらせはひどいね……」

「芦村くんが可哀想……」

芦村は同情の視線が降り注ぐ中でもういっそほっといて欲しいと思いながら机に突っ伏した。

ざわざわ

一際ざわめきが激しくなり、芦村は不思議に思い顔を上げた。すると………

「いでででででででででで!!」

教室に入ってきたのは神野と神野に耳を引っ張られて入ってきた男子生徒だった。

「か、神野?」

「犯人見つけた。こいつ。」

神野は連れてきたその男子生徒を指で指すと冷ややかに言った。

「ちげえよ!!」

その男子生徒は悪びれる様子もなく言ったが、今度は神野はそいつの目の中を見て言い放った。

「うっせえな、こっちには証人はいんだよ。しかも複数人。このこと担任に言っとくから覚悟しとけよ。」

そいつは神野の目の奥から放たれる怒気に気圧されたのか、今度は少し掠れた声で言った。

「ち、ちげえっていってんだろ!!……」

「弁解なら担任に言え、じゃあな」

神野が手を離すとその男子生徒はほうほうの体で教室から出ていった。

「か、神野……」

芦村は胸の奥がスッとしたと同時に、親友が見せた自分のための怒りに素直に感動で胸が熱くなった。

「神野くんすごーい!!」

「やるー!!」

「……あ」

女子生徒たちが神野の周りに群がり、にこやかに対応する神野。芦村はなんとなく近づき辛そうに遠巻きにしていると神野と目が合った。

「あ、ありがと……」

俯きがちにそれだけいうと芦村はふいと教室の外に出ていった。

「芦村君??どうしたんだろ?」

「なんか、そっけないね……助けてもらったのに」

「ああ、ちょっと今色々あって」

「そうなんだ」

「まあ、芦村君も色々大変だもんね~、可哀想―」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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芦村君の体の事情~その3~

作.藤原埼玉
キャラ造形.こじか

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その1はこちら

その2はこちら

(翌日の昼休み)
(……結局、全然寝れなかった……)

「芦村!どうしたそのクマ!?」

「昨日全然寝れなくてさ……」

「なんだ?エロ画像サーフィンでもしてたら寝付けなかった??」

「お前と一緒にするな!!」

話しかけてきたクラスメイトの関村は芦村の男友達の一人。芦村が女子になっても変わらず能天気にバカ話をしてくるので、芦村は話しやすいと感じているのだった。

「そうそう!そんな芦村にピッタリのものがあってな……これなにか分かるか?」

関村がカバンから取り出したのは見るからに妖し気な栄養ドリンクだった。

「なにそれ??『絶汁』??……」

「精力剤。アカマムシ的なあれだよ。」

「学校になに持ってきてるんだよ……」

芦村はあきれ顔で言った。

「駅前で配ってたんだよ。そんで何本かもらってきたんだけどお前にもやるよ。」

そういって芦村に手渡すと、関村は一口にドリンク一本を飲みほした。

「うわっ!大丈夫??」

「不味っ!?でも力付きそうだわ。」

「なんか変な感じとかしないの??」

「ん、全然。」

「じゃあ、僕も飲もうかな。昨日から体が怠(だる)くて……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はあ…はあっ…」

(なんか……お腹の奥の方があっつい……)

今は授業中。しかし、芦村は体が疼くように熱くなって授業の内容が全く頭に入らなかった。

(これ絶対……あのドリンクのせいだ……くそう……関村の奴は平気そうなのに……)

ちらりと見ると関村は相も変わらず授業中なのに能天気に鼻歌を歌っている。

(どうしよう……水たくさん飲めば治るかな……保健室行って…………)

芦村は時計を見る。あと三十分もすれば休み時間だった。

(でも、あと二限だから……がまんしよう)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はっ……はあ……」

「お、おい芦村大丈夫か??」

「すごい顔赤いよ?大丈夫?」

一限の間に芦村は、汗だくになっていた。顔は赤く紅潮していて太ももは痙攣するように震えていた。<追加イラスト希望>

「らい……じょぶ……あと、一限……だ……し……」

「おい、芦村どうした?」

聞きなれた声が頭上で聞こえた。神野の声だった。

芦村は緩慢な動作で、神野の方を見上げた。

「か……んの……?」

芦村は震える吐息を吐き出した。

欲しい。

欲しい?

え、ぼくは何が欲しいんだろう?

「お、おい大丈夫か?」

芦村の潤んだ瞳と吐息に神野は少し動揺したようだった。明らかに様子がおかしい。

「あ、芦村……大丈夫か?今のお前なんか……え、エロぶふう!」

関村の顔に神野の鉄拳が飛んだ。

「か、神野くん!落ち着いて!!」

「おい、どうした?もう授業始めるぞ?なんだ?芦村調子悪いのか?」

「……先生。なんか、芦村の様子がおかしいんです。」

神野は、教卓に向かって歩いていき何かを先生と話してるみたいだった。

「か……んの」

芦村は気が付いたら手を神野の手に向けて伸ばしていた。

どうしよう。あつい。からだがあつい。

へんなことばっかりあたまのなかでもやもやぐるぐるする。

どうしようもなくほしい。ほしい。ほしい。

さわってほしい。

かんのに。

……

神野に?

そこで芦村は考えるのを止めて素直に一番の欲求に従うことにした。

(なんかもう…なんでもいいや……)

芦村は汗だくになりながらがた、と席を立ちあがった。クラスの全員が芦村の方を振り向く。

「せ、先生……ちょっと保健室いってきます……」

「だ、大丈夫か??芦村??顔赤いぞ??」

「は、はい……っちょ、ちょっと歩けないので神野についてきてもらっていいですか??」

神野は少し驚いたような顔をしたが、直ぐに席を立つと芦村の脇を抱えて歩き出した。

「ああ、気を付けてな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふう……はあ……」

「……」

神野は終始無言だった。少し不機嫌そうに見える。実際そうなのかもしれない。親友が苦しそうなのに一言も声かけしないなんて、神野にしてはあり得ない。

(…なんだろ……怒ってんのかな神野…)

「……」

(……っていうか一言声ぐらいかけてくれたっていいのに……)

「……」

(……こいつは昔っからいい恰好しいで、相手の気持ちなんか関係なくて……)

「……」

(なんで……僕はこんなに大変なのに……今もこんな大変な思いをしてんのにこいつは涼しい顔しやがって……)

「……」

(…僕は…こいつの……狼狽えた顔がみたいだけなんだ……これはきっとそうなんだ……)

神野は、いつもの優しい手つきでゆっくりとベッドに芦村を横たえ、毛布をかけた。
神野は、椅子を引っ張ってきてそこに無造作に腰かけた。

「熱……風邪か?……」

神野は芦村のおでこに手を触れた。そのひんやりとした人肌の感触にお腹がうずうずした。

「……わかんにゃい……」

「……じゃあ……オレ授業戻るからな」

神野は芦村のぼんやりとした瞳を少しだけ覗き込むと、そう言って椅子を立った。

「ま、待って……神野……」

芦村は、神野のシャツの端をぎゅっと掴んで上目づかいで言った。

「……はあ」

「え……あ」

神野はこれみよがしにため息をついた。そのことで不思議なくらい胸が詰まった。

「お前……これ以上近づいたらどうするって言った?忘れたか?」

神野は振り向かずに言った。吐き捨てる、という表現がしっくりくるような言い方だった。

「……いい…よ…」

「は?」

芦村は、上半身をなんとか起き上がらせると、おぼつかない手でシャツのボタンを外し始めた。

「……あ、あの……」

「……お前……」

神野が無言で佇んでる間にボタンはすべて外せてしまった。芦村はシャツの袖からゆっくりと腕を抜く。

「……こ、この前の……っつ、つづき……」

<つづく>

投稿小説『幸せの薬』 ⑤ by 名無しの権兵衛


 上層部が動かなかったのは、捕まえた男が漏らした『あの男なら薬の気体化くらいこれだけ時間があればしている可能性が高い』という情報があったからだ。突撃自体はガスマスクをすれば問題ないとはいえ、万が一にも周囲に漏らすわけにはいかない。人体を一から作り替える効果があり、しかも洗脳までしてしまうのだ。強力すぎて、場所が小学校の地下ということもあり、万一があっては取り返しがつかない。
 相沢の暴走を避けて情報を伏せていたのだが、現場を見張らせていた警官が『被害者の一団が入っていった』と報告を寄せたときは、『恥ずかしそうに俯いている小×生も一緒にいた』という情報のせいで、最初は迷子でも見つけて連れて行ったのか、あるいは被害者の一人がその小学校の卒業生だから、近所の子の付き添いで行ったのだろうと考えたが、署内から相沢の姿が消えていた事から、いつもの暴走だと判断して、行動に移したのだ。
 ことのあらましを後から聞いて、相沢は素直に謝った。一般人を巻き込んでもいるので、これは懲戒免職だなとのんびり考えていた。

「それが、こうなるなんてなぁ」

 相沢は目の前の4人を見ながら、苦笑を浮かべた。同じ制服を着たセミロングの少女と、金髪のロングヘア―の少女と、ツインテールの少女が、自分と同じ初等部のワンピースタイプの制服を着た少女とワイワイ言いながらケーキを食べていた。

「ねぇ、お姉ちゃん、あれも食べたい!」
「そんなに食べると、太りますよ」
「だいじょーぶ。その分走るから!」
「食べた分だけ運動すれば、大丈夫よね!」
「義果ちゃんは運動しないと思うから、太るだけだと思いますよ」
「ワタシもそうおもいマス」
「二人とも、ひっどーい!」

 あの二人は、元には戻らなかった。姫条澪も英語が堪能な警官と話してもらったところ『記憶はあるが、感性が変わったせいか前ほど戻りたいとは思わない』と言っていたそうだ。吹っ切れたからかはわからないが、今ではカタコトだが日本語も話せるようになっている。この調子でいけば、そのうち以前と同じように話せるようになるだろう。
 そういう相沢も、どこかこのままでいいやという思いもあるが、自分まで気を抜くわけにはいかない。
 4人目の少女――自分と同い年ということになっている少女は、あの男のなれの果てだ。ショートカットの見るからに活発そうな少女で、学校でも陸上部に入っている。聞いた話では、元は天才的な頭脳を持つ科学者ということだったが、今の彼女は勉強は全然だめだ。どうやら別のところに才能が移ってしまったらしく、陸上部以外の運動部から助っ人のお願いが後を絶たないのだ。

世の中には
キャラデザイン:松園

 もう心配がないとは思うが、今の自分の仕事はこの今回の元凶の監視だ。今回の被害者にはサポートが必要と、3人が姫条と同じお嬢様学校に編入させたのは、まぁわからなくはない。だが手続きがまとめてできるからという理由で公立校ではなくこの私立に自分たちも入れたのは、費用的にも本当にこれでいいのかと疑いたくなる。

「レンちゃん、たべないならそれちょーだい!」
「うちの勝手に取らんといてーな」

 今はひとまず仕事の事は忘れて、皆と一緒に楽しもう。
 相沢はそう思うと、その輪の中に入っていくのだった。

終わり

投稿小説『幸せの薬』 ④ by 名無しの権兵衛


 ついにやった。ついにあの男も救済できた。
 英語が話せず、優秀な成績をとれず父親と義母との間でぎくしゃくしていた少年は、祖母の家で育てられた『二人の実子」として居場所を得た。有り余る力と熱い性格のせいで家族と壁ができてしまった少年は、おしとやかで礼儀正しい華奢な少女になったことで問題がなくなり、家族との幸せな暮らしに戻ることができた。人格面については変わったのか、現実逃避の結果なのかは判断に少し困るが、英会話が堪能になっていたことから、おそらくは変わったのだろうと結論付けた。最後にそのひねくれた性格から周囲から浮いていた少年は、表裏のない少女となることで、誰とでもすぐに打ち解けられるようになった。
 どの例を見ても、元の状態と比べて幸せになっていることは確かだ。この実験を経て誕生したあの薬を投与した刑事といえば、かわいらしい少女になっている。
経歴を見た限り特に不幸なことはなかったはずだから、今後どうなるのかはそれも含めて要観察だ。
 そう思って一人祝杯をあげていると、電話の音が部屋に鳴り響いた。こんなところにかけてくるとしたら、今回も力を貸してくれた同志たちしかいない。
 ワシはこんな時にかけてくるなよと思いながら、受話器を取ると相手は一方的に言うことだけを言って切ってしまった。なんでもあの男に薬を投与した男が捕まったらしく、しかもわしの居場所を言ってしまった可能性が高いらしい。
 電話口の男は逃げろと言っていたが、これはチャンスだ。ワシの薬を今度はガス化して準備をしておけば、ここに来た奴らを全員救済できる。
 時間が惜しい。のんびり祝杯を挙げている暇などない。ワシは急いで、薬の気体化の研究の準備を始めるのだった。



「もう、かんにんしてやー」
「だーめ」

 相沢は頭を撫でようとする手から逃げようとしたが、簡単に捕まってしまった。それだけではなく両手で抱え上げられ、そのうえ膝の上にのせられ、頭を撫でられる。

「ほ、ほんまにかんにんしてや」

 このままではだめだ。悔しくて仕方がないのに、撫でられると嬉しくて気持ちがいい。ずっと撫でてもらいたくなる。
 この気持ちに流されてはダメだと逃げようとするが、大人と子どもほどの体格差があるのだ。逃げ出そうにも、逃げられそうになかった。

「あんまり、相沢をおもちゃにするなよ」
「はーい」

 そういってやっと解放されると、相沢はかつての同僚を見上げてお礼を述べた。
ここにいるのは皆相沢の事を知っている。一応は新人の婦警ということで周囲には伝えてあるが、実際は違うし、鳳源花のことが本当ならば、ずっとこのままであるという保証もない。
 実行犯は確保できたし、場所も特定できた。あとはこの薬を作った犯人を捕らえて解毒薬を手に入れるだけなのだが、上は一向に動こうとしなかった。
 聞いた鳳や池田、姫条のような変化が自分にもあるかもしれない。そうなる前に解毒剤を手に入れたいと思うのだが、何故か以前のように『すぐに動かなくては』という気持ちがわいてこない。どこか、そのうちでいいやーとか、このままでいいやというのんびりとした考えが自分を満たしている。
 これが聞いていた変化なのだろうかと感じながら、相沢は逃げるように部屋から出た。このままここにいては、いつおもちゃにされるかわからない。
 部屋を出て人気のない廊下に身を隠すと、携帯にメールが来ていることに気が付いた。差出人を確認すると、今回の被害者の一人である池田からだった。

「ほんまかなぁー」

 そこには、犯人の居場所が分かったから、一緒にいこう! とだけ、書かれていた。


「よしかねーちゃん、ウチの恰好がめだつんはわかるんやけど、もうちょいどうにかならへんの?」
「えー!」
「私も、それはあんまりだと思いますが、一番いい変装だと思います」

 確かに、変装としてはこれ以上のものはないかもしれない。
 源花が小×生の頃に着ていたというワンピースに池田が持ってきたおしゃれなシュシュで髪を結んでいる姿は、どうみても年相応の女の子にしか見えない。頭には黄色の通学帽を被り、背中には赤いランドセルを背負ったその姿は、どうみても小×生にしか見えなかった。

「通学帽とランドセルはいらんのとちゃうん?」

 ほんとはこんな女の子っぽい恰好は男として避けたいし、本音を言えば恥ずかしさで死にそうなのだが、確かに変装としては良いだろう。だができれば通学帽とランドセルだけはやめてほしい。
 そう訴えるような目で見てみたが、二人とも首を横に振った。これから行くところを考えると、そのほうが良いらししいのだが、相沢は食い下がった。

「まさか隠れ場所が小学校やったとしても、ゴールデンウィーク中やし、これはいらんのとちゃうん?」
「あたしそこの卒業生だけど、みんな休みの日に行くときは帽子をかぶってたよー?」
「ランドセルがあったほうが、学校では怪しまれないと思います」

 本当にそうかとも思うが、譲ってはくれなさそうだった。
 相沢はあきらめ混じりにため息をつくと、3人に目をやった。行けばどんな危険があるかわからないのだ。警官としては一般人を危険な目にあわせるわけにはいかないのだが、状況が状況である。
 一人は人格と記憶と環境を変えられれ、別人へと仕立て上げられてしまった。一人は日本語が分からなくなり、周囲とコミュニケーションが取れなくなってしまった。一人は言動の自由を奪われ、別人格に体を支配されてしまっている。そして一人は、周囲から小動物のようにかわいがられ、かつての同僚を先輩として敬わなければならなくなってしまった。

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キャラデザイン:夏森深笠 http://www.pixiv.net/member.php?id=1469500

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「おれのみがわり」  第8話 by.おもちばこ

前回までのあらすじ
「キスケに彼女ができました」
「それだいぶ前の話だよねそれ」
「この話など覚えておるやつなど」
「やめろー!」

おれのみがわり 8話


ごくごく一般人の俺は目を覚ました。白い天井だ。俺のアパートではないようだ。病院の一室みたいな部屋だ。高校の保健室で眠っていたときを思い出す。
「ん?お、起きたか、アカネ」
「ん……?」
どこかで聞いた声がする。少なくとも高校時代に出会った人物ではないな。夢ではないとするとここはどこだ。話しかけている人物は誰だ。アカネって……ああ、俺が皮を着ていたときの偽名か。
そばにいた金髪碧眼で部屋の中にも関わらずコート姿の女性が電気ケトルに水を入れながら俺に話しかける。
「まさか1年もぐっすりとは思わなかったぞ」
「1年……へ!?今何月」



俺の複雑な感情がこもった叫び声が部屋いっぱいに響き渡った。



「まったく、喜助はこの私、みょりんに命をなぜかもわからぬまま狙われていたのだ、そこでグミョウジとやらが送りつけてきた完全に別人の女性を着ることによって私の目をごまかしていたわけだ、だがとうとう私にばれてしまったわけだ、なぜかな」
「何を今更なことを言っているんだ……」
「まあ忘れている事があるだろうからな、誰かとは言わんが」
それはともかく、とみょりんは続ける。
「まあ無理に決まっているがな…あれ?、分量を間違えたかな、ええとこの量を1day(日)だろ……あ、1week(週)だったということをやってしまっていてな、けっこう喜助は長い間眠っていたのだよ」
リアクションを気力も体力もなく、まっすぐな目の状態なので。俺はきっとみょりんを無視しているかのような状態なのだろうがみょりんは続ける。
「で……さすがに私も落ち度があったもんでな」
みょりんの話によると、俺の皮をコピーして代わりに俺として生活をしていたというのだ。それは何を隠そう俺はみょりんに生活パターンや行動パターンまで筒抜けであったということだ。
「授業やレポートも代わりにやっといた」
「あ、どうも、はああああああ!そんなことよりあおいちゃんはどうしたんだよ!」
「ああ、それについてもちゃんとやることはやっといたから」
サムズアップをするな。サムズアップを。しかも両手で。
「一応あおいルートは残しておいたから安心しろ」
(何勝手にやってくれちゃってんの!うまくいかないかもしれないけれど俺に段階を踏ませろよ!)
「改めて思うけれどなんか結構長い期間キスケのまねにしていたせいでしゃべり方が一緒になってしまったな」


俺はいくつか疑問を解決することにした。
「みょりんって皮の先輩ってことでいいの?変な言い方になったけれど」
「違うよ、だってさ、人格をのっとられたら自分に不利になるようなこと絶対にいわないと思うんだ」
「あー」
「だからキスケに見せたファスナーは偽者、はがすとき痛かったぞ」
「……そういえばグミョウジっていうジジイどうしてんの」
「生きてはいるが、君が知らないほうがいい」
みょりんはその言葉からずーっと表情を崩さない。死んでいるとかではないらしいが結構事態をややこしくしたということで相当絞られているようだ。誰からかは俺の知る由もないが。
「いっそのことぶっちゃけるが別にお前の命を狙っていたわけではない」
「へっ?」
「狙っていたのは前の住人だ、かつてここを根城として使っていたみたいだ」
「あー」
「グミョウジはその前の住人とつながっていてな、お前をその住人と勘違いしていたみたいなんだ、だからかくまった、電話番号は調べたらしいが本人である確信は最後まで持てなかったみたいだ、本人でないのだから当たり前だ」
お茶でも入れるかとみょりんは誘ったので俺はお願いすることにした。
「皮を着ていなければすでにターゲットは転居済みということで片付いていたのだがな」
「そうか」
俺が生身の状態であれば助かっていたのか、納得。
「じゃあいくぞ、ちょっほおはがふるうなってあふぁf(ちょっとお茶がぬるくなってるかな)」
「えっ、ちょっ、口移し!」
俺はおもいっきりむせた。








「ふふふ……よくも俺を振り回しやがって、だがそれも今日で終わりだ」



つづく

投稿小説『幸せの薬』 ③ by 名無しの権兵衛



 やはり、ワシは天才だ。
 狙った通り、鳳という小僧は元の存在があやふやになり、池田という小僧は言動に影響を与えられた。
 なぜあの光を浴びたものとワシだけ鳳の元の姿を覚えているのかはわからんが、いずれにせよ検証はおわった。たったこれだけのサンプルで分析できるのだから、間違いなくワシは天才だろう。
 液体化も難なくできたことだし、あとはこれをあの男に投与するだけだ。これくらいならば、あいつらに任せるとしよう。
 わしの悲願に協力的じゃった組織の生き残りだ。あいつらもさぞあの男にもわしらの理想の素晴らしさを伝えたいはずだから、きっと手伝ってくれるだろう。
 ワシは笑みを浮かべながら、受話器を手に取った。きっと、今回はうまくいくだろうと信じて……



 幸いなことに、何故か鳳は英語が分かった。話すこともでき、この姿で改めて3人の自己紹介を済ませた。状況を整理すると、鳳 源二 は 鳳 源花という少女に、池田 義景はその妹の池田 義果という女の子に、そして、姫条 澪 は 姫条 レイナという日本人とイギリス人のハーフの少女になっていた。
 よくもまぁ、これだけばらばらになったものだと頭をかきながら、3人は同じことを考えていた。長年つるんでいたこともあり、言葉に出さなくても、全員、結論は同じだと視線と頷きだけで把握した。
 目の前の刑事、相沢 恋壱にすべてを話す。信じてはくれないかもしれないが、もしかしたら信じてくれるかもしれない。本音を言えば、自分たちではこれ以上何もできず、力を貸してくれそうな大人に心当たりが他になかっただけなのだが、3人の思いは同じだった。
 あとは誰が話すかということだが、消去法で鳳が話すしかないと3人とも思っていた。本来ならば、一番温厚な姫条か、ひねくれてはいても交渉事が得意だった池田のほうが適任なのだが、今の二人はあれである。一番鳳がマシだと、3人ともが感じていた。

「相沢刑事、ちょっといい、ですか?」
「なんだい、もとかちゃん」

 できるだけ丁寧に話すことを意識しながら、鳳は少しずつ話し始めた。元の自分のこと、姫条の事、池田の事、そしてあの不思議な光と、今置かれている状況の事。いつもの鳳だったら、途中でため口になっていただろうが、不思議と丁寧な口調のまま最後まで続けられた。

「信じられないような、信じられるようなぁ……」

 意外なことに、相沢は最初から否定しなかった。不思議そうな6つの瞳を向けられ、相沢は口調を変えた。

「義景と澪だったら、もうこっちでええやろ。余所行きやったり、初見の相手用にしてきだけどよ、本当にお前らだったら、今さら驚かんよな」

 そういえば澪はどっちもいっしょかと笑いながら言うあたり、配慮というかデリカシーがない。だが、鳳も池田も、驚きはしなかった。

「驚かんところを見ると、ほんまっぽいな。こっちに戻すと、たいていの奴はギャップいから驚くんやけどな。あぁ、それよりも頭から否定せんのわな、お前や、鳳。お前が澪と義景の『友達』やと俺の記憶じゃなっとんやけど、それがどうにも引っかかっててな。なんで源花ちゃんみたいなええ子があんな奴らと仲良しなんやと不思議やったんやけど、その話通りやったら納得できるからなぁ」

 その方法が全く思いつかないから、完全には信じられへんと続けながら、相沢は席を立った。

「今はそれだけで十分です」
「うん、あたしも!」

 姫条もそうだとばかりに頷いている。完全に信じたわけではないのだが、美少女3人に輝いた目で見られると、なんだか照れ臭くなる。

「ひとまず、今の仕事が終わったら、休みがもらえるんや。そんときにでも、ワイがしらべたるわ」

 だから早く終わらせるんだとばかりに、相沢はドアノブに手をかけ、もう片方の手を上げながら外に出ようとした。

「うぉ、なんや!?」

 瞬間、こわもての男が相沢にタックルをし、そのままのしかかった。

「よくも組織をつぶしてくれたな!」
「組織って、お前が残党が!」

 相沢は必死に抵抗をするが、男からは抜け出せそうになかった。いつもの鳳ならば、何も考えずにこの不審者に殴り掛かったのだろうが、今は足を震わせながらただ見ているだけだった。
 澪は何やら英語で叫んでいるし、池田に至っては「おまわりさーん!」と叫んでいる。男はそんな3人を一瞥しただけで無害と判断すると、懐から一本の注射を取り出した。

「これでもくらえ!」

 男はそう叫ぶと、相沢の腕を無理やり固定してそれを刺した。少しずつ中の液体が相沢の体内へと入っていき、それがすべてなくなったのを確認すると、男は相沢から飛びのき、外に向かって走り去った。

「お、お巡りさんを呼ばなくちゃ!」

 池田はそう叫ぶと、スマホを取り出した。姫条はいち早く相沢のもとに駆け寄り、心配そうな顔で手を貸していた。鳳は一人、その場にしゃがみこみ、両手で自分の体を抱え込んだ。
 本気で怖かった。これまでどれだけ怖くても、恐怖で動けないということはなかった。恐怖で足がすくみ、息が止まるかと思った。その事実と、自分の変化に、鳳はただ震えることしかできなかった。

「う、くっ……」
「相沢さん、どうしたの! きゅ、救急車も呼ばなくちゃ!」

 突然苦しみだした相沢を見て、池田はまたスマホを取り出した。そして電話を切ると、半ば反射的に動画のアプリを起動させ、スマホを相沢に向けた。
 二人の目の前で、相沢の姿が少しずつ変わり始めた。175cmはあったはずの体が縮みはじめ、警官としては若干問題のあった茶髪も、その根元から黒く染まっていった服の中に埋まっていった体は、その見えないところで脂肪に包まれ、その胸元が気持ち程度膨らんだ。体の変化に合わせて顔も小顔になり、子ども特有のやらかそうな感じに変わっていった。毛先まで黒く染まった髪の毛は、今度はその長さをどんどん長くしていくと、腰のあたりまで伸びて床にきれいに広がった。
 そこには、元の鍛えられた刑事の姿はなかった。スーツに埋もれたかわいらしい少女が、かわいらしい寝息を立てながら、幸せそうな顔で眠っていた。

「相沢さんが、女の子に……?」

 鳳はそうつぶやくと、ゆっくりと意識を失った。これ以上は、もう限界だった。

あいざわ
キャラデザイン:キリセ

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投稿小説『幸せの薬』 ② by 名無しの権兵衛



 すごいものを作ったかもしれない。
 ワシは調査機の映像と手元の銃を見比べながらそう思った。
 画面には、かわいらしい衣服を前に戸惑う少女が映し出されている。ワシが被験者の元の姿を覚えているので、少年が消えてしまったわけではない。しかしあの部屋の様子やあの女の反応を見ている限りでは、先ほど生まれたばかりのはずであるあの少女は、元からこの世界にいたことになっている。
 これは、思っていたものとは違うが、いいものができた。これと依然作った『幸せな夢を見せる薬』を合わせれば、より良いものができるかもしれない。
 すべては人類救済のため。かわいそうな人々を救うためだ。運のいいことにあの忌々しい男が今どこにいるのかもわかった。ワシの悲願を台無しにいたあの男を救済するためにも、できるだけ早く新薬を作りたい。
 調査機は残り3機ある。最後の1機はあの男に使うとして、実験に使えるのはあと2機だ。変化前と後の情報を多く知るためにも、あの少年の知り合いを選ぶのが一番だろう。
 そうときまれば、善は急げだ。ワシは電話をとると、そういうことに手慣れている友人に連絡をとるのだった。



 やばいことになった。真面目で気のいい同居人が、何の連絡もなしに帰ってこないのだ。これは絶対何かに巻き込まれている。
 もう高校生なのだから、帰ってこなくても心配することではないのかもしれない。だが、もしかしたら自分に恨みを持つ誰かにさらわれたのかも知れない。いや、昨日も一昨日も大喧嘩をしたばかりなのだ。普通に考えたら、あいつらの誰かにさらわれたと見るべきだろう。
 あいつらは、手段を選ばない。俺も選びはしないし、実際同じように相手の親しい人間をいたぶったこともある。だから、これがどれだけやばいことが、よくわかる。
 ケンカには自信がある。ひとまず持てるだけの武器をもって、心当たりのある場所を巡ろう。もしかしたら最悪の事態になるかもしれないが、その時はその時だ。
 腹をくくると姫条にばれないように隠しておいた凶器を取りに隠し場所に向かった。そのとき、ちょうど窓際に立ったときだ。突然外から眩しい光が差し込んできた。思わず腕で目を覆いながら、おかしいことに気付く。今は朝方だ。西向きのこの窓に朝日がさすはずはないし、車の光ということも考えられない。
 やられた! おそらくは姫条をさらった連中が奇襲をかけてきたのだ。
まずは俺の目をライトで潰し、その隙に攻撃をするつもりに違いない。幸いにもここは2階だから、攻め入ってくるとしたら玄関からしかありえない。
 目がやられていても玄関の方向はわかる。来るなら来いと意識を集中したところで、構えた手が自分の胸に当たった。おかしなことに当たった感触がえらく柔らかかったが。少しずつ目が慣れてきたこともあり、ゆっくりと目を開けながら視線を下に向けると、柔らかそうなお胸が、自分の胸についていた。
 なんだこれは。まるで女の胸みたいではないか。そういえば手もなんだか細くなった気がするし、足元も何だかおかしな感じがする。
 もしかしたら、先ほどの光のせいかとも思うが、現実的に考えてありえない。こんな技術聞いたこともないし、そもそも不良のけんかで使われるようなものでもないはずだ。
 とにかく今は相手の襲撃に備えなければならない。けれども1分、2分、3分と経ったが、誰も入ってくる気配がない。さすがにこれはおかしいだろうと、金属バットを両手に持って玄関へと向かった。
 窓から外をのぞいてみたが、誰もいない。人っ子一人いない。静かな街並みが、そこにあるだけだった。

「はぁ……」

 ひとまず、よかった。だが、さらにやばいことになったのは確かだ。前までは片手で扱えた金属バットが、両手でやっと持ち上げられる程度なのだ。筋力はかなり落ちていると見るべきだろう。
 姫条には悪いが、自分の今のスペックを確認しよう。今まで使ったことのないチェーンロックをかけると、部屋へ戻り、一つずつ確認するのだった。


 結論から言うと、さんざんな結果だった。
 腕立て・腹筋・背筋はそれぞれ2回しかできず、反復横とびは3回しただけで息切れを起こした。おまけに隠しておいた凶器の数々は、そのどれもがへそくりになっていた。これでは、姫条を助けに行こうにも、いけるわけがない。どうしたものかと途方に暮れていると、突然電話が鳴り響いた。
 反射的に電話に出ると、なんといえばいいのか迷った。今の自分の声は以前とは全然違う。名乗ったところで、相手にはわからないだろう。そう困惑していると、能天気な声が受話器から聞こえてきた。

「もしもーし、池田だよ! げんちゃん、今から会えないかな? あ、なんかさっき変な光を浴びちゃってから、あたしちょっとかわっちゃったんだー。信じてくれないかもだけど、いつもの駅まで来てね!」

 それだけ言うと、池田と名乗る女は電話を切った。おそらくは質問されるのを嫌ったのだろうが……。

「まさか、あいつもか?」

 知り合いに池田という名字の奴は一人しかいない。普通なら違う奴だと思うところだが、残念ながらそうは思えなかった。

「スカートであっちゃ、やべぇよな」

 鏡がないのでわからないが、変態じみた格好にはなっていてほしくない。だが女ものの服を着てあいつに会って、変態だと思われるのも嫌だ。
 ぶかぶかでも、似合ってなくてもいつもの服で会おう。そう考えると、自分用のクローゼットを開けたが、そこで目を疑った。

「女のばかりだと……ありえねぇだろ、これ」

 そこにあたのは、革物の女もの一式と、スカート、それにパンクファッションと思われる服の山だけだった。これを見ていると、今着ている服のほうがはるかにましな気がしてくる。
 姫条には悪いが、あいつの服を借りよう。そう考え、あいつのクローゼットを開けたところで、絶句した。そこは黒と白と、フリルで満ち溢れていた。

「まさか……あいつもかよ!?」

 どうやら、3人揃って何かに巻き込まれたらしい。そしてそれは断じて自分のせいではない。いや、あってたまるかと思いながら、そそくさと部屋を飛び出すのだった。



「げんちゃーん、まった?」
「お前、義か?」
「うん、そうだよ!」

 元気の良い女の子が、キャピキャピしながら寄ってきた。元の捻くれた奴からは想像ができない言動に驚きながら、ふと気になったことを聞いてみた。

「それより、よく俺だとわかったな。普通わからんだろ」
「だって、あたしがこうなっちゃったんだよ? それにほら、あたしとちがってげんちゃんには面影があるもん! ほら、これ!」

 そういって指さしたのは、腕の入れ墨だった。以前金を貯めて実際に掘ってもらったもののはずだが、さっき確認したところタトゥーシールになっていた。好みの柄ではないからはがそうとも思っていたのだが、どうやら義景はこれで区別したらしい。

「それより、どこかのお店に入ろうよ! 立って話すのも疲れちゃってあたし嫌だなぁー、ほら、あそこにはいろーよ!」

 そういって指さしたのは、おしゃれなカフェだった。本当にこいつ、あの義景かと疑った、続く言葉に俺は凍り付いた。

「ごめんね。あたし自分の思った通りには、あまり動けないんだ。だから、ゴメンね?」

 自分ももしかしたらこうなってしまうのか。さぁ、いこう、と手を引かれながら、その可能性を考えずにはいられなかった。

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絵師:そら夕日 (うずら夕乃)

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投稿小説『幸せの薬』 ① by 名無しの権兵衛



 世の中には、かわいそうな人で満ち溢れている。
 家族に愛されず非行に走る者や、金がないために犯罪に手を染める者など、数え上げたらきりがない。
 だが、これさえあれば万事解決だ。どんな者だろうと、たちどころにその元を絶ってしまう。まだ使ったことがないから副作用などはわからないが、理論上は解決するはずだ。
 誰か丁度いい実験体・・・もとい被検体、いやかわいそうな迷える者はいないかと夕暮れ時の街を徘徊していると……見つけた。ちょうどよさそうな若者だ。
 髪を金髪に染めた、チャラそうな男だった。見るからに非行に走っている。きっと、何か不幸なきっかけがあったのだろう。
 草むらに隠れ、ターゲットが射程に入ると、迷わずに引き金を引いた。白い閃光が銃身から放たれると、ターゲットを包み込んだ。
 まばゆい光が治まると、そこには少年の姿はなかった。金髪のかわいらしい少女が、目を瞑って立っていた。
 どういうことだろうか。機械は無事に作動したのだろうか。あれは何かの副作用だろうか。そもそも、あの少女は誰なのだろうか。先ほどの少年と関係があるのだろうか。
 調べないといけない。調査用の機械を起動させると、ばれないようにその場を離れるのだった。





 何がお先に失礼だ。あの野郎。
 にやけた笑みのまま去っていく池山の顔を思い出すと、今でも殴りたくなる。あいつとは小学時代からの付き合いだが、鳳も俺もあいつのひねくれた性格にはいつもイライラさせられる。
 昔お世話になった先輩に誘われて合コンに行ったものの、なぜかあいつだけすぐに相手が見つかる。そして先輩もその友達も見つかるが、なぜか俺だけ一人寂しく変えることになる。鳳と一緒に騒ごうと思っても、電話に出ないのだから仕方がない。おそらくはまたどこかで喧嘩でもしているのだろう。
 仕方がなしに一人でゲーセンにでも行こうと裏道を歩いていると、突然目の前が真っ白になった。こんな裏道に車がっと思いながら思わず腕で顔を覆ったが、いつまでたっても痛みを感じない。おかしいと思いながら、ゆっくりと腕をどかした。
 徐々に目が慣れてきたが、どこにも車はいない。車どころか、人っ子一人いないし、先ほどの光の原因が、影も形もない。今のはいったい何だったんだと思いながら周囲を見渡していると、それらしきものを見つけた。何の変哲もないカーブミラーだ。きっとあそこに夕日が反射して、それが運悪く直撃したのだろう。そう思いながら視線をそれに向けると、首を傾げた。
 そこにはかわいらしい少女が映っていた。長くきれいな金髪を赤いリボンで結んでいる。この界隈じゃ有名な私立の女子中学校の制服を着ていることから中×生であることは分かるのだが、問題はそこではない。
 鏡に映っている。しかし周囲にそれらしい人影はない。まだ春の、それも明日からゴールデンウィークというこの時期にお化けかと思って走り出そうとしたところで、あることに気が付いた。
 位置が悪いのかと思い、唾をゴクンと飲み込むと、ゆっくりとカーブミラーに近づいた。すると先ほどの少女もミラーに近づき、俺が近づけば近づく程、少女も大きくなる。
 認めたくない考えが、頭の中で強くなってきた。歩くときに感じる足元の違和感や胸に感じる妙な重み、そして背中にちょくちょく当たるものの感覚が、その考えが正しいのだと主張しているように思えた。
 とうとうカーブミラーの真下にたったが、やはり鏡には見慣れた自分の姿はない。あるのは見慣れた自分とはかけ離れた、金髪の美少女の姿だけだった。
 あきらめて確認するしかない。見たくないという気持ちを押し殺して下に視線を向けると、あの有名女子校の制服が目に飛び込んできた。
 やっぱりか……。
 事前にある程度予測がついていなければ、おそらく悲鳴を上げていただろう。これからどうすればいいのかと途方にくれながら、俺はその場に座りこむのだった。

20131230194617842_20160520000935ead.jpg
絵師:liya http://crowclock.sakura.ne.jp/

 どのくらい時間が過ぎただろうか。気が付けば、既に薄暗くなっていた。
 いつもなら真っ暗な道だろうが平気だったのに、なぜか心細く、不安な気持ちになってきた。このままこの場所にはいたくない。
 まるで何かにせかされるようにその場を離れると、繁華街へと向かった。いつもならここから走ってもすぐに着くのだが、ほんのちょっと走っただけで息が上がってそれどころではなくなった。どうやら、体力も、筋力も落ちてしまっているらしい。
 苦しいのを我慢して人気の多いところまで走ると、その場にしゃがみこんだ。おかしい。なんで俺がこんな目にあわなければならないんだ。そう思うと悔しいやら悲しいやらで、気を抜くと泣き叫びそうだった。

「嬢ちゃん、大丈夫か?」

 叫びだしたいのを抑えていると、見慣れた奴が心配そうな顔でこちらを見ていた。

「あ、い、ざ、わ、さん?」

 俺と池山と鳳。悪ガキ三人組がいつもお世話になっている警官が、そこに立っていた。

「俺と会ったことあったか?」

 こんなかわいい子はあったら忘れないはずだとか小さくつぶやいているが、最後にひとまず交番に来るかと聞かれ、俺は小さく頷いた。
 差し出された手を握って立ち上がると、以前はそう変わらない身長だったはずなのに、見上げる形になっていた。先ほどまでなら悔しくて仕方がなかったはずなのに、逆に不思議と安心感を抱くと、俺はそのまま手を引かれて、通いなれた交番へと連れていかれるのだった。


 何を言っているのかわからない。相沢が必死に何かを言っているようだが、本当に何を言っているのかわからなかった。
 周りを見てみても、張り紙に書いてある人の名前も読めない。相沢に話しかけても、どうやら伝わっていないらしく、そのたびにため息をつかれた。
 自分の身に一体何が起こったのかと思っていると、相沢が俺の鞄を指さすと、何かを身振り手振りで必死に伝えようとしている。どうやら鞄の中を見たいということらしいと察すると、俺は小さく頷いた。
 相沢は律儀に手袋をすると、一つずつ机の上に置きはじめた。懐かしさを感じる教科書の中に、見慣れない教科書もあった。それを手に取ると、試しに開けてみた。
 それを見て、俺は自分の置かれている状況を理解した。『アルファベットで書かれている日本語の解説文はすらすら読める』のに、『書かれてある日本語は、全くと言っていいほど読めなかった』のだ。
 何故かはわからない。意味不明だし、困ったことになったなとも思う。だけど同時にこうも思ってしまった。これだけ英語で困らなければ、親と不仲になることもなかっただろうに、と――。
 そんなことを考えていると、相沢が今度は電話をしてもいいかと身振り手振りで伝えてきた。俺自身どこに電話をすればいいのかわからないので、頷いておいた。
 今の自分はいったい誰なのだろう。元の自分はどうなったのだろう。相沢に姫条澪を覚えているかと聞いてみたが、困った顔で首を傾げられるだけだった。


「レイナちゃん!」

 交番に駆け付けた人の顔を見て、俺はいやな顔になった。実際に会うのは2年ぶりくらいだが、それより前は毎日のように顔を合わせていた相手――母親が、心配そうな声を上げて駆け込んできた。

「お巡りさん、ご迷惑をおかけしてしまって、申し訳ございません。まだこの子、日本に来て間がないものでして……」
「いえいえ、お気になさらず……」

 相沢とアイツが何やら話しているようだが、しばらく話すと幼少期のころにしか見たことのない笑顔でこちらを向いた。

「さぁ、帰るわよ!」

 嫌な奴とはいえ、相手の言っている意味が分かる。たったそれだけの事なのに、不思議とほっとした気持ちになった。
 今の姿のままシェアしている部屋に戻ったところで、鳳に怪訝な顔をされるだけだろう。どうやら今の自分は、中×生だ。そのうえ、実家の世話になっているらしい。中卒の時点ですら、親元を離れて暮らすのに苦労させられたのだ。中×生の時点で、不本意だが保護者の元で――実家で暮らすしかない。
 今が何年生かわからないが、今はひとまず帰るしかない。俺は相沢に頭を下げると、アイツの後に続いて、実家に帰るのだった。

「さて……俺も仕事に戻るか」

 相沢はそんな二人を見送ると大きく伸びをして、ネオンに照らされた街中へと向かうのだった。

【投稿作品】芦村くんの体の事情 (こじかさんの挿絵2枚目追加)

作.藤原埼玉
キャラ造形.こじか https://twitter.com/kojica_m45

TW-178_201603271551231c8.jpg

芦村一朗太はイケメン、学力、運動神経、優しく穏やか真面目な性格。そのどれをとっても非の打ち所のないイケメンだ。
芦村の親友の神野(かんの)は同じく眼鏡と肩まで流れるような髪の似合うイケメン、学力、運動神経、ニヒルだが優しい性格(但し、女子に対してに限る)と芦村と双頭を為す学園きってのイケメンだ。

折しも今日はバレンタインデー。只でさえ目立つ二人に学園中のチョコが集まることは自明すぎるほど自明の理であった。そのチョコラッシュは放課後になってもやむ気配はなく、芦村は少し困った様子で女子たちの相手となっていた。

「おい、芦村。帰るぞ。」

神野はそんな芦村の様子を見かねて声をかけた。

「あ、うん!ごめんねみんな。神野が呼んでるから。」

『えー!!芦村君帰っちゃうのー!!』

「ちょっと芦村君のこと考えなよー!困らせちゃダメだよー!」

「芦村君ばいばーい!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「神野、悪い……助かったよ」

そう言うと芦村は困ったような笑みを浮かべた。その手には紙袋五個分と紙袋に収まり切らなかった分の両手一杯のチョコがあった。

「おまえ、そんな量のチョコレートどうするつもりだよ。」

神野は見かねて若干冷たく言い放つ。自分の手に余る分は捨てる、と事前に明言するのはこの男のむしろ好感が持てるところで羨ましいところでもあると芦村は常々思って居るところである。

「あ……はは……い、妹に食べてもらおうかな……」

「お前は環奈ちゃんを糖尿病にでもするつもりか……おまえなあ……そうゆうの後手後手っていうんだよ。やさしさでもなんでもないから。」

「…そうだね…」

痛いところをつかれて芦村は黙って項垂れてしまう。すると急に神野は芦野の持ってる紙袋の内三つをひったくった。

「母さんに言って町内会の集まりの菓子作りとかに使えないか聞いてみるよ。」

「か、神野!」

芦野の顔に感謝と喜びの色がぱあっと咲いた。

「ただし」

神野が釘を刺すように付け加えた。

「それでも使い切れなかったり使えない分は容赦なく捨てるからな!食いもん捨てるの大嫌いなオレが!!優柔不断なお前に代わって!!」

「ごめん……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「じゃあな」

「色々とありがとう神野」

芦村はふうとため息をつくと、よいしょと紙袋を抱えて帰途につく。そしていつもの公園に差し掛かった時だった。

がさ!

「あ、芦村一朗太!!」

突如公園の生垣から姿を現した影があった。

「え、な、なに?」

その顔には見覚えがあった。確か体育の時間のバスケで一回だけ一緒のチームになったことがある……

「あ、君は同じクラスの……ええっと、ネクラくん!」

「オレは米倉だあああああああああ!!」

「ご、ごめん」

その男の憤慨やるかたない様子に芦村は漸く相手との温度感に大きな落差があることに気づき始め、一歩後ずさった。つまりは引いていた。

「おまえさえ……おまえさえいなければ坂代さんは……」

「坂代さん?」

「うるさい!!バインド!」

そういうと米倉が手に持っている分厚い広辞苑ぐらいの本が光り、芦村が気が付いた時には芦村はその光の帯に手と足を拘束されていた。

「え、なにこれ?………」

「ふはははははは!!あ、あれ?」

米倉は高らかに哄笑したかと思うと膝をがくりと崩し、ひゅーひゅーと肺から漏れ出るような呼吸をした。

「か、体に力が……し、死ぬ!死ぬお!……」

米倉は地面を必死で掻きむしった。

「おのれ芦村一朗太あああ……!呪ってやる……なんでもいいから呪ってやるぞおお!」

そういうと米倉は必死で例の分厚い本のページを震える手でめちゃくちゃにめくった。

「な、なんでもいいって……」

「とにかくこのページよ!!なんでもいいから奴を不幸にしてしまえ!!」

「なんでもいいってええええええ!!??」

米倉がそういうと一際強い光りが辺りを埋め尽くした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(い、いきが……できない!!)

芦村は光の中でもがいていた。まるで深い海の中にいるような異常な圧力を感じて恐怖から体をよじるが、その光からも圧力からも逃れられそうにはない。

(し、しぬ……!!)

……

「あれ?」

芦村が目を開くとそこはさっきの公園だった。いつの間にか光も圧力もきれいさっぱりと消えている。

「え?え?」

芦村は混乱から辺りを見渡した。するとそこにはさっきの男、米倉が倒れていた。

「ね、ネクラくん!!ネクラくん!!ちょっと起きてよ!!」

芦村は米倉に駆け寄り体を揺する、まさかとは思ったが呼吸はあるようで一先ずは安心したが一向に目覚める気配はない。

ふと、芦村は自分のスラックスのかかとが地面に引きずられていることに気付いた。訝しく思って裾を上げようとすると……

ふに

なにやら膝を圧する柔らかい感触があった。芦村がまたも訝しく体を見下ろすと、そこにはふくらみがあった。

なにか詰め物でも入りこんだか?と芦村はそのふくらみを自らの手で掴む。

ふにゅ

「いだあ!?」

芦村は慌てて手を離した。どうやらこれは体の一部のようだ。

芦村は生死のパニック状態から頭が冴えてくるに従って、自分の今の状況がパズルのピースのようにつながってくるのを感じた。つまりは……

芦村はここが公共の場であることも忘れ咄嗟に自らの股間に手をやり一撫でする。

「……ない。」

それは感想とも呼べない。何の感情も伴わない一言だった。厳然たる事実を口にしただけである。

「ということは」

つまりは……

「女の子になっちゃった??……」

…………

「どっ」

芦村の額に幾筋も冷たい汗が噴き出した。

「ど、どどどどどどどうしよう……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あ、お帰りー!おにいちゃん!」

「……」

ぱたん

「??」

環奈は兄が何の返事もなく自室に飛び込むように入っていったのを訝しく見送った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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チェンジ・ライフ・ラプソディー2 (21)~(24)エピローグ

作.エイジ

 それから数日が経ち、本日は休日。
 当然学校はなく、今日は部活も休みだ。
 だけど俺は部室にいて、剣道着に着替えていた(防具はつけてないけど)。
 なんでか? それは鷹野が言った『ゲーム』に俺が参加しているからだ。
 目を閉じて、記憶を呼び起こす。


『そう。ゲームですわ。飛鳥さん、あなたウォークラリーはご存知?』
『ウォークラリーってチェックポイントを順番にまわっていって最後にゴールを目指すっていうあれ?』
『そう。それをやろうと思いますの』
『………なんとなくわかった。当然ゴールには直樹がいるわけね』
『そして最後のチェックポイントには私がいますわ』
『………………』
『まあ、参加する、しないは一応自由にしてあげます』
『………参加しないわけにはいかないでしょ』
『わかっているなら結構。まあ、告白させてあげるのですし、これくらいは乗り越えてもらわなくてはね』
『………嬉しくて涙が出るね』


 目を開き、竹刀を手に取る。
 いくつチェックポイントがあって、誰が待っているのかはわからないけど、鷹野がいる以上絶対に必要になるはずだ。これは。
 鷹野との決着は『これ』以外にありえない。
 いや。ひょっとしたら鷹野以外にも使う相手が出てくるかもしれない。
「さて、と。それじゃあ始めますかね」
 自分の気持ちに決着をつけるために。
 そして前に進むために。
 俺は部室を出て、体育館へと向かった。
 そこで待っていたのは―――
「最初は春菜ちゃんか」
 同じ剣道着姿、そして同じくその手には竹刀が握られている。
「私程度じゃ不服でしょうけど。でも―――」
 竹刀を構える。
「私程度も越えられないなら、この先に行っても意味ありません」
「でしょうね」
 俺も同じく竹刀を構えた。
「………行きます」
 こくりと俺は頷く。
 それとほぼ同時に、
「胴!」
 ガッ。
 春菜ちゃんの胴打ちを俺は竹刀で受ける。
 予想済みだったんだろう。すぐに春菜ちゃんは竹刀をひるがえして、
「小手! 面!」
 と連続して打ってくる。
 だけどそれを通す俺じゃない。確実に、余裕をもって防ぐ。
 確かに彼女は強くなった。この前の団体戦で初勝利をおさめて以来、その成長速度にはさらに磨きがかかっている。将来が楽しみな逸材だ。いつか俺を超えるかもしれない。
 だけど、今はまだ俺の方が上―――!
「小手ぇっ!」
 バシィッ!!
 俺が繰り出した竹刀の一撃は春菜ちゃんの手に命中し、彼女は竹刀を取り落とした。


「平気?」
「大丈夫です」
 春菜ちゃんの手に濡れタオルを当てながら俺は問いかける。
 防具もつけてないむき出しの手に竹刀を打ち込んだんだ。当たり所が悪ければ骨折していてもおかしくない。
 でも春菜ちゃんは首を振って、
「ちょっと赤くなってますけど、平気です」
「本当?」
 その言葉をそのまま信じるような事はしない。手首を取って揺らしてみたり、強く握ったりして反応を確かめる。
 でも春菜ちゃんは眉一つ動かさない。
 俺はほっとして息を吐き、
「本当に大丈夫みたいだね」
「だから言ったじゃないですか。信用しないんですから」
 春菜ちゃんはぷぅっと膨れる。
「ごめんってば」
 それに俺は平謝り。
 それでも春菜ちゃんは膨れていたけど、やがて、
「わかりました。今日はこれぐらいで許してあげます」
「あ、ありがと」
「それじゃあ部長。次はここに行ってくださいね」
 そう言いつつ春菜ちゃんが取り出したのは一枚の紙切れ。
 そこに書かれていた文字は『サッカー部・部室』。
 とすると待っているのは―――
「まあ誰が待っているかなんてわざわざ言う必要ないですよね?」
「まあね」
 そんな所にいる人物なんて一人しか思い浮かばない。
 そして今回の事に絡んでくるのも当然といえば当然か。ある意味あいつが一番巻き込まれているわけだし。
「部長」
「なに?」
「―――いえ。なんでもありません」
「―――そう。大丈夫だと思うけど、念のために保健室で診てもらいなよ?」
 俺はそう言い残し、体育館を後にした。

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