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るしぃさんの作品
魔封の小太刀
エル
白と黒の羽
TS141 BLOOD LINE 作.luci
(1)(3) (5) (7) (9) (11) (13) (15) (17) (19) (21) (23) (25) (27) (29) (31) (33) (35) (37) (39) (41) (43) (45) (47) (49) (51) (53) (55) (57) (59) (61) (63) (65) (67) (69) (71) (73)
TS122 穴、二つ。(by luci)
TS116 ウツロナココロノイレモノ(by luci)
るしぃさんとの合作
TS96 ホムンクルスのご主人様
TS92 彼女の貞操帯(18禁)
TS109 メイド達との夜
るしぃさんがヒロインの作品
TS103 ご主人様の訪問 〜るしぃの奴隷化注意報〜
TS107 友達以上奴隷未満
魔封の小太刀
エル
白と黒の羽
TS141 BLOOD LINE 作.luci
(1)(3) (5) (7) (9) (11) (13) (15) (17) (19) (21) (23) (25) (27) (29) (31) (33) (35) (37) (39) (41) (43) (45) (47) (49) (51) (53) (55) (57) (59) (61) (63) (65) (67) (69) (71) (73)
TS122 穴、二つ。(by luci)
TS116 ウツロナココロノイレモノ(by luci)
るしぃさんとの合作
TS96 ホムンクルスのご主人様
TS92 彼女の貞操帯(18禁)
TS109 メイド達との夜
るしぃさんがヒロインの作品
TS103 ご主人様の訪問 〜るしぃの奴隷化注意報〜
TS107 友達以上奴隷未満
投稿TS小説 魔封の小太刀(4)
by.luci
「ハカラレタ……」
校長の見事に禿あがった頭が俺の目の前にあった。
一昨日おやじ殿の話を聞いた時、ピンとくるべきだった。
極近い場所で変死が続いている事。魔の力が働いている可能性があること。これはいいんだ。それが学校だというところで、こうなる事を考えるべきだったんだ。
「おい、玲。取り合えず聞いとけよ」
小声で涁の諌める声。既におやじ殿の友人だとか言う高校の理事長から聞いている事件の概要や、自分の心配事をひとしきりしゃべり、喉が枯れたのか、校長は湯飲みを手にしていた。
「――ですので、理事長の手前校内での活動を許可しますので、どうか、事を大きくせず収めてください」
生徒が数人死んだというのに、この事なかれ主義はどうかと思う。テレビや雑誌の取材で疲れているのは解るが。
「では後の事は担任に任せます。木崎先生、お願いします」
「あなたのクラスは、亡くなった二人の生徒のクラスです。まぁ、短い間ですが、せいぜいがんばってください」
校長の横に憮然と立っていた神経質そうなメガネの男が、胡散臭そうな目を俺に向けた。この小娘が、というところか。俺だってそう思った。この姿を鏡で見たときは。
「玲、俺はこれで。……なかなか似合ってるぞ」
校長室を出しな、真剣な表情で涁が言った。なるべく考えないようにしているところに、そんな風に言われると返って傷つく気がした。
『吾も良いと思うぞ』
(うるさいな。――おまえは魔の残気でも調べててくれ)
昨日から宝珠丸は何かと姿の事をからかってくる。そんな事よりレーダーのようにどこにいるか探っていて欲しい。
『してもいいが、男の記憶を貰いうけるが』
(――やはりやめよう。静かにしててくれ)
今回の件で、学校という閉鎖空間で自由に内偵をする方法として選ばれたのが、「生徒として紛れ込むこと」だった。おやじ殿は論外として(教師としてならありだが)、涁では年齢が上過ぎた。残ったのが俺という訳だ。
しかもおやじ殿も涁も今朝まで「女子高生」する事を言わなかったのだ。
生徒に戻って内偵する。それ自体は苦痛でも何でもない。しかし、女子高生としてクラスに仮編入となると話は別だ。
家ではなるべく胴着と袴を穿いて、おやじ殿が買ってくる可愛い服を着ないようにしていたくらいなのだ。大分女性の姿が慣れたからと言って、女性らしく振舞っている訳ではないし、そうあろうと思ってもいない。何しろ、男に戻りたいのだから。それ故に早く事件を片付け、太刀を追いたいのに。
ところがどうだ。紺のブレザーに赤のリボンタイ。プリーツスカートは膝上十センチ。おまけにニーソまで着用して。既成品だというのに、俺の体が一般的サイズなのか、胸以外はぴったりだった。それがなんとも情けない。
結局、校長とのアポの差し迫った朝の時間に、おやじ殿に家計が火の車だとか、玲の服をたくさん買いすぎただの言われると、折れるしかなかった。先立つ物がなくては生きていけない。大体、考える暇も与えられてない。
着替え終わった俺を見るおやじ殿のやにさがった目が全てを物語っていた。これがおやじ殿の計略でなくてなんだというのだ。
「――やさん? 御厨さん? 教室はここですよ」
若干怒りに震えながら考え事をしていたせいか、いつのまにか教師を追い抜いていた。俺は踵を返し急ぎ足で戻る。ふと廊下のガラスに映った小柄な少女は、少しだけ不安そうにこちらを見ていた。
「今日から転入してきた御厨玲さんです」
教師が俺に挨拶をと促した。転校というのは初めての経験で、しかも高校生ではないし、あろう事か女の姿。人前で話すのが不得意な訳ではないけれど、緊張する。
「あ、の、御厨です。……初めてで、わからない事が多いので、色々教えてください……」
言いながら少しざわつくクラスを見渡した。そんなに変な自己紹介だったか?
「じゃぁ、あそこの空いてる席に座って」
そのざわつきも、俺が座るべき席の指示で消えていく。その席が誰のだったのか、前もって聞いていた事もあり驚きはなかった。
色々な視線を感じつつ、一瞬躊躇しつつ席に着く。
『……好ましからざる影があるぞ』
宝珠丸の言うとおり、魔の残差とも言うべきものが漂っていた。ただそれは普通の人には感じ取れないだろうものだった。
(俺も気づいた。昼休みから、色々と話を聞き始めるか)
そう思いつつ、顔を上げると一人の少女と目が合った。その澄んだ射るような視線は忘れようがない。
『どうした? 見知った顔か?』
(――ああ。ちょっとした、な)
遠藤朋花。数年前まで道場に通っていた。高校受験で忙しくなるからと来なくなり、そのまま辞めてしまった。その彼女と一緒のクラスとは……。
家の近所の学校なのだから、知り合いがいてもおかしくない。せめて偽名にすべきだった。
『性別が違っておる。分かる筈もなかろう』
そうじゃない。宝珠丸、お前は分かってない。その恥ずかしさが解ってない。
『大体、お前が男だと言う事は、お前に近づいた時点で消えてしまう。今、このとき、あの小娘が何かを感じたとしても、それはお前が男だったという疑いにはならん』
そうか、そうだった。俺への呪詛は、俺が男だった事を周りが忘れてしまうんだった。
ばれないという安堵の他に、誰も男の俺を覚えていない事に寂しさを覚えていた。
一人の食事になるかと思っていた昼食だったが、世話好きな人間はどこにでもいるもので、お弁当を抱えた数人が俺の机に集まってきた。
どこから来たの? 彼氏は? どこに住んでるの? まるで身元調査のようだ。それにしても女の子ってのは直ぐ打ち解けられるんだな。男だとここまではできないな。
それによくしゃべるし、よく笑う。話題が尽きないからなかなかこちらの思う話題に行けない。
男子も俺に興味があるようで、遠巻きに聞き耳を立てているようだった。
「御厨さんて静かだよね」
女子の会話展開のスピードについていけず、聞き役になっていた俺に、ショートカットの娘が言った。
「そう、ですか? あまり気にした事はないんですけど」
女歴が短いから、どう話していいか分からない、とは答えられない。話し方で男だとばれたりはしないと思うが、必然的に丁寧語になってしまう。「〜だわ」とか「〜よねぇ」とか絶対言えない。言いたくない。
「なんか、かたいんだよね」
「前からこうだから……ところで」
俺の話方は取りあえずどうでもいいんだ。それより仕事だ。
「わたしの席の他にもう一つ机が空いてますけど、あれはどういう?」
一つの机に花瓶が二つ。それがどういうことなのか、俺は知っているが敢えて聞いた。教師の知っている話より、近しい人間の話の方が生々しいし、意外な発見があるかも知れないから。
女の子たちは各々の顔を見ながら、誰が言うかを決めているようだ。リーダー格なのか押しつけられ役なのか、またショートカットの娘が口を開く。
「あれはねぇ……、クラスの男子が二人、死んだんだよ。それで」
「そうなんですか。わたし、てっきりいじめかって思って」
「いじめならまだいいよ。うちのガッコ、呪われてるもん」
今度はロングの娘。
「馬場くんと安西が学校の七不思議を確かめに行くって言って。次の日に馬場くんが……。で、ひどいのが安西で、自分は馬場くんと一緒に行ってないって」
「そうそう。あいつが一緒にいたのみんな見てたのにねぇ。それで警察たくさん来てさ。取り調べ」
「でも、翌日には今度は安西が……」
「一番悲惨なのって、千草だよね。彼氏死んでわんわん泣いて」
「で、次の日自分も自殺しちゃって」
「あれって絶対馬場くんが連れてったんじゃね?」
「怖〜〜!」
彼女たちの早口の会話も、俺が知っている事と同じだった。
2年3組馬場高志、頭部損傷による脳挫傷。2年3組安西紘一、心臓損傷。2年1組千草奈緒香、頭部損傷による脳挫傷。2年1組大東文香、心臓麻痺。四件の校内死亡事件の犠牲者たちだった。
「そういえばさ、知ってる? 千草のお葬式の時、文香が、あれは自殺じゃないって、見たって」
「え、マジぃ?」
「それって何を見たんですか?」
死んだ生徒の人数や名前、自殺他殺、その位は知っていた。しかし、「文香」という少女が何かを見た事は知らない。新しい情報だ。
「? あー、あたしあとから何度か聞いたんだけど、結局何を見たかは聞いてないんだけど」
そうですか、と肩を落とす俺に、幾分引き加減で少女は言った。
「御厨さんて、もしかして、『ムー』とか好き?」
「?……よく分からないですけど、お化け関係は好き、かな?」
考えた末の返答だったが、この瞬間からクラスでの俺の位置づけは「おしい怪奇オタ美少女」になったのを、後日知った。
「ハカラレタ……」
校長の見事に禿あがった頭が俺の目の前にあった。
一昨日おやじ殿の話を聞いた時、ピンとくるべきだった。
極近い場所で変死が続いている事。魔の力が働いている可能性があること。これはいいんだ。それが学校だというところで、こうなる事を考えるべきだったんだ。
「おい、玲。取り合えず聞いとけよ」
小声で涁の諌める声。既におやじ殿の友人だとか言う高校の理事長から聞いている事件の概要や、自分の心配事をひとしきりしゃべり、喉が枯れたのか、校長は湯飲みを手にしていた。
「――ですので、理事長の手前校内での活動を許可しますので、どうか、事を大きくせず収めてください」
生徒が数人死んだというのに、この事なかれ主義はどうかと思う。テレビや雑誌の取材で疲れているのは解るが。
「では後の事は担任に任せます。木崎先生、お願いします」
「あなたのクラスは、亡くなった二人の生徒のクラスです。まぁ、短い間ですが、せいぜいがんばってください」
校長の横に憮然と立っていた神経質そうなメガネの男が、胡散臭そうな目を俺に向けた。この小娘が、というところか。俺だってそう思った。この姿を鏡で見たときは。
「玲、俺はこれで。……なかなか似合ってるぞ」
校長室を出しな、真剣な表情で涁が言った。なるべく考えないようにしているところに、そんな風に言われると返って傷つく気がした。
『吾も良いと思うぞ』
(うるさいな。――おまえは魔の残気でも調べててくれ)
昨日から宝珠丸は何かと姿の事をからかってくる。そんな事よりレーダーのようにどこにいるか探っていて欲しい。
『してもいいが、男の記憶を貰いうけるが』
(――やはりやめよう。静かにしててくれ)
今回の件で、学校という閉鎖空間で自由に内偵をする方法として選ばれたのが、「生徒として紛れ込むこと」だった。おやじ殿は論外として(教師としてならありだが)、涁では年齢が上過ぎた。残ったのが俺という訳だ。
しかもおやじ殿も涁も今朝まで「女子高生」する事を言わなかったのだ。
生徒に戻って内偵する。それ自体は苦痛でも何でもない。しかし、女子高生としてクラスに仮編入となると話は別だ。
家ではなるべく胴着と袴を穿いて、おやじ殿が買ってくる可愛い服を着ないようにしていたくらいなのだ。大分女性の姿が慣れたからと言って、女性らしく振舞っている訳ではないし、そうあろうと思ってもいない。何しろ、男に戻りたいのだから。それ故に早く事件を片付け、太刀を追いたいのに。
ところがどうだ。紺のブレザーに赤のリボンタイ。プリーツスカートは膝上十センチ。おまけにニーソまで着用して。既成品だというのに、俺の体が一般的サイズなのか、胸以外はぴったりだった。それがなんとも情けない。
結局、校長とのアポの差し迫った朝の時間に、おやじ殿に家計が火の車だとか、玲の服をたくさん買いすぎただの言われると、折れるしかなかった。先立つ物がなくては生きていけない。大体、考える暇も与えられてない。
着替え終わった俺を見るおやじ殿のやにさがった目が全てを物語っていた。これがおやじ殿の計略でなくてなんだというのだ。
「――やさん? 御厨さん? 教室はここですよ」
若干怒りに震えながら考え事をしていたせいか、いつのまにか教師を追い抜いていた。俺は踵を返し急ぎ足で戻る。ふと廊下のガラスに映った小柄な少女は、少しだけ不安そうにこちらを見ていた。
「今日から転入してきた御厨玲さんです」
教師が俺に挨拶をと促した。転校というのは初めての経験で、しかも高校生ではないし、あろう事か女の姿。人前で話すのが不得意な訳ではないけれど、緊張する。
「あ、の、御厨です。……初めてで、わからない事が多いので、色々教えてください……」
言いながら少しざわつくクラスを見渡した。そんなに変な自己紹介だったか?
「じゃぁ、あそこの空いてる席に座って」
そのざわつきも、俺が座るべき席の指示で消えていく。その席が誰のだったのか、前もって聞いていた事もあり驚きはなかった。
色々な視線を感じつつ、一瞬躊躇しつつ席に着く。
『……好ましからざる影があるぞ』
宝珠丸の言うとおり、魔の残差とも言うべきものが漂っていた。ただそれは普通の人には感じ取れないだろうものだった。
(俺も気づいた。昼休みから、色々と話を聞き始めるか)
そう思いつつ、顔を上げると一人の少女と目が合った。その澄んだ射るような視線は忘れようがない。
『どうした? 見知った顔か?』
(――ああ。ちょっとした、な)
遠藤朋花。数年前まで道場に通っていた。高校受験で忙しくなるからと来なくなり、そのまま辞めてしまった。その彼女と一緒のクラスとは……。
家の近所の学校なのだから、知り合いがいてもおかしくない。せめて偽名にすべきだった。
『性別が違っておる。分かる筈もなかろう』
そうじゃない。宝珠丸、お前は分かってない。その恥ずかしさが解ってない。
『大体、お前が男だと言う事は、お前に近づいた時点で消えてしまう。今、このとき、あの小娘が何かを感じたとしても、それはお前が男だったという疑いにはならん』
そうか、そうだった。俺への呪詛は、俺が男だった事を周りが忘れてしまうんだった。
ばれないという安堵の他に、誰も男の俺を覚えていない事に寂しさを覚えていた。
一人の食事になるかと思っていた昼食だったが、世話好きな人間はどこにでもいるもので、お弁当を抱えた数人が俺の机に集まってきた。
どこから来たの? 彼氏は? どこに住んでるの? まるで身元調査のようだ。それにしても女の子ってのは直ぐ打ち解けられるんだな。男だとここまではできないな。
それによくしゃべるし、よく笑う。話題が尽きないからなかなかこちらの思う話題に行けない。
男子も俺に興味があるようで、遠巻きに聞き耳を立てているようだった。
「御厨さんて静かだよね」
女子の会話展開のスピードについていけず、聞き役になっていた俺に、ショートカットの娘が言った。
「そう、ですか? あまり気にした事はないんですけど」
女歴が短いから、どう話していいか分からない、とは答えられない。話し方で男だとばれたりはしないと思うが、必然的に丁寧語になってしまう。「〜だわ」とか「〜よねぇ」とか絶対言えない。言いたくない。
「なんか、かたいんだよね」
「前からこうだから……ところで」
俺の話方は取りあえずどうでもいいんだ。それより仕事だ。
「わたしの席の他にもう一つ机が空いてますけど、あれはどういう?」
一つの机に花瓶が二つ。それがどういうことなのか、俺は知っているが敢えて聞いた。教師の知っている話より、近しい人間の話の方が生々しいし、意外な発見があるかも知れないから。
女の子たちは各々の顔を見ながら、誰が言うかを決めているようだ。リーダー格なのか押しつけられ役なのか、またショートカットの娘が口を開く。
「あれはねぇ……、クラスの男子が二人、死んだんだよ。それで」
「そうなんですか。わたし、てっきりいじめかって思って」
「いじめならまだいいよ。うちのガッコ、呪われてるもん」
今度はロングの娘。
「馬場くんと安西が学校の七不思議を確かめに行くって言って。次の日に馬場くんが……。で、ひどいのが安西で、自分は馬場くんと一緒に行ってないって」
「そうそう。あいつが一緒にいたのみんな見てたのにねぇ。それで警察たくさん来てさ。取り調べ」
「でも、翌日には今度は安西が……」
「一番悲惨なのって、千草だよね。彼氏死んでわんわん泣いて」
「で、次の日自分も自殺しちゃって」
「あれって絶対馬場くんが連れてったんじゃね?」
「怖〜〜!」
彼女たちの早口の会話も、俺が知っている事と同じだった。
2年3組馬場高志、頭部損傷による脳挫傷。2年3組安西紘一、心臓損傷。2年1組千草奈緒香、頭部損傷による脳挫傷。2年1組大東文香、心臓麻痺。四件の校内死亡事件の犠牲者たちだった。
「そういえばさ、知ってる? 千草のお葬式の時、文香が、あれは自殺じゃないって、見たって」
「え、マジぃ?」
「それって何を見たんですか?」
死んだ生徒の人数や名前、自殺他殺、その位は知っていた。しかし、「文香」という少女が何かを見た事は知らない。新しい情報だ。
「? あー、あたしあとから何度か聞いたんだけど、結局何を見たかは聞いてないんだけど」
そうですか、と肩を落とす俺に、幾分引き加減で少女は言った。
「御厨さんて、もしかして、『ムー』とか好き?」
「?……よく分からないですけど、お化け関係は好き、かな?」
考えた末の返答だったが、この瞬間からクラスでの俺の位置づけは「おしい怪奇オタ美少女」になったのを、後日知った。
投稿TS小説 魔封の小太刀(3)
by.luci
まだ夕方だと言うのに、校舎の裏手は既に宵闇という位だった。そこが数日前、生徒の遺体があったから、かも知れない。
そこに少年が一人、俯きながら佇んでいた。
「お前が悪いんだ。俺じゃない。俺が好きなの知っててあいつとつき合ったりしたからこうなったんだ。俺は悪く無い」
顔を歪めた表情は、後悔からではなく愉悦からだ。身体が震えるのは恐怖ではなく明日からの楽しい日々のせいだ。
「なぁ、俺が後ろに立った時、びっくりしたか? 俺の後ろにいる奴らに落とされた時、怖かったか? 俺は爽快だったぜ、馬場」
少年の背後にあった黒い影は、次第に大きくなって少年の身体を包み込んでいた。しかし目を瞑り悦に入っている彼には解らなかった。
「明日っから、千草は俺が慰めてやるよ。ちょっかい出す奴はこいつ等が始末してくれるしな」
辺りに嘲笑が響いたかと思うと、それが悲鳴に変わるのに時間はかからなかった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
* * * * * * * * * * * * * * * *
「玲先生、さようなら」
一人一人、着替えを終った子ども達が三々五々帰って行く。数十分前まで、彼等の声が響いていた道場は、今は俺だけになっていた。
魔を退治する、言葉にすれば格好いいが、実際には胡散臭さはあるし、実入りも少ないらしい。らしい、というのは、交渉はおやじ殿がしているから、俺は解らない。涁もきっとそうだろう。それに羽振りがいいとも思えない。
いい大人がぶらぶらしている訳にも行かないし、昔から道場を開いていることもあって、俺が稽古をつけて日銭を稼いでいる。
女性化して今日が初稽古になった。俺は少し期待をしていた。肉親以外には「玲」だと思われないのではないか? そんな淡い期待。
しかしそれはあっさり裏切られた。誰も疑わない、というより元々が女としか見られていない。
あまり言い続けるといけないと思って、おやじ殿や涁の前では考えないようにしていたが、こうして静かな場所で一人になると、違和感で心が折れそうになる。それまでの自分を否定されているような、誰も見てくれていないような。
ここにこうしているのに、「玲」という存在は違うところを指している。実態がない、というのが適切かも知れない。
身体の変化の戸惑いや、おやじ殿が嬉々として買ってくる女の子の服を着用することについては、毎日の生活で大分慣れてはきた。しかし、それを積極的に受け入れようと思っていない。涁も何かにつけて「女の子なんだから」というし。
いい加減にして欲しい。早く元の姿に戻りたい。そうでなければ、精神的におかしくなりそうだ。
戻ると言えば、稽古の最中に涁の車の音がしたな。例の賊の足取りが掴めたんだろうか。先程とは違う期待が沸き上がっていた。
「玲、朗報だ」
相変わらず、涁は唐突だ。しかし今はその単刀直入さがいい。
「太刀の行方が分った?」
ニヤっと笑いながら俺の側に腰を下ろした。
「今回は骨が折れたぜ。お前、●●市って知ってるか? そこに昔からウチと懇意にしてるところがあって……」
要するに、人づてに怪しい淀みを探して、その一つがそれらしいと言う事だった。
「確信があるんだよね? なら早く行こう。夜になれば動き出すだろうし、今から行こう、涁」
「いや、今日は駄目だ。明日行く」
直ぐにでもこの身体から解放されたいって言うのに、明日? 今日だってまだ終った訳じゃない。なぜ他人事のように冷静でいられるんだ?
俺は立ち上がって叫んでいた。
「涁が行きたく無いなら、一人で行く! のんびり後から来い!」
「ちょっと待て玲。バックアップがいなかったらまた前回と同じだろうが。熱くなり過ぎたら見えるものも見えなくなるぞ」
「他人事だからって……! 信じて貰えてないけど、女の姿なんて早く止めたいんだっ。大体バックアップって言ったって、涁より俺の方が上だろう?! 太刀にも触れないじゃないか!」
言った直後、俺は涁の苦々しい表情を見た。その顔と興奮し過ぎたせいか出始めた頭痛で、俺は幾分冷静になっていた。
「……どう思おうと勝手だけどな。おやじに了解して貰わなくちゃいけないだろうが。どうせおやじの事だ、明日行けって言うだろう? だから明日なんだよ」
そのまま立ち上がり、背を向けて歩き出した。
冷静になってみれば、戻りたい一心で涁に当たっただけかも知れない。それに、言うべきじゃない事を言ってしまった。
御厨の家は、代々魔封の太刀を使い、人に仇なす魔を封じて来た。しかしこの太刀を扱える人間は、御厨の家でも、その代に一人いるかいないか。おやじ殿の代は兄弟がいなかったためか、使える人間がいなかった。誰も鞘から抜く事も出来なかった。魔封を生業としてきただけに、経済的には大打撃だった。だから涁と俺が産まれた時は期待された。
特に涁は長男だっただけに期待が大きかったようだ。俺は物心ついた時には太刀が傍らにあった。尤も、この辺の記憶は曖昧なんだが……。
剣の腕は別としても、涁も好きで内偵をしている訳ではない。十分解っていた筈なのに……。
おやじ殿の部屋に行こうというのか、道場から出ようとしている涁を慌てて追いかけた。
「……し、涁?」
涁の着ているスーツの袖を軽く掴んだ。涁が立ち止まると、喜怒哀楽の無い視線が降ってきた。
「あ、いや、ごめん。言い過ぎた」
「……」
「涁……」
「言葉遣い! 妹だろうと弟だろうと、もっと年上をリスペクトしろ。 ……もう怒ってねーよ」
感じた事も無かったけれど、涁の大きな手がぽんぽんと俺の頭を叩いた。涁の顔を覗こうとしたけれど、大股で歩き始めたそれを見る事は出来なかった。
<つづく>
まだ夕方だと言うのに、校舎の裏手は既に宵闇という位だった。そこが数日前、生徒の遺体があったから、かも知れない。
そこに少年が一人、俯きながら佇んでいた。
「お前が悪いんだ。俺じゃない。俺が好きなの知っててあいつとつき合ったりしたからこうなったんだ。俺は悪く無い」
顔を歪めた表情は、後悔からではなく愉悦からだ。身体が震えるのは恐怖ではなく明日からの楽しい日々のせいだ。
「なぁ、俺が後ろに立った時、びっくりしたか? 俺の後ろにいる奴らに落とされた時、怖かったか? 俺は爽快だったぜ、馬場」
少年の背後にあった黒い影は、次第に大きくなって少年の身体を包み込んでいた。しかし目を瞑り悦に入っている彼には解らなかった。
「明日っから、千草は俺が慰めてやるよ。ちょっかい出す奴はこいつ等が始末してくれるしな」
辺りに嘲笑が響いたかと思うと、それが悲鳴に変わるのに時間はかからなかった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
* * * * * * * * * * * * * * * *
「玲先生、さようなら」
一人一人、着替えを終った子ども達が三々五々帰って行く。数十分前まで、彼等の声が響いていた道場は、今は俺だけになっていた。
魔を退治する、言葉にすれば格好いいが、実際には胡散臭さはあるし、実入りも少ないらしい。らしい、というのは、交渉はおやじ殿がしているから、俺は解らない。涁もきっとそうだろう。それに羽振りがいいとも思えない。
いい大人がぶらぶらしている訳にも行かないし、昔から道場を開いていることもあって、俺が稽古をつけて日銭を稼いでいる。
女性化して今日が初稽古になった。俺は少し期待をしていた。肉親以外には「玲」だと思われないのではないか? そんな淡い期待。
しかしそれはあっさり裏切られた。誰も疑わない、というより元々が女としか見られていない。
あまり言い続けるといけないと思って、おやじ殿や涁の前では考えないようにしていたが、こうして静かな場所で一人になると、違和感で心が折れそうになる。それまでの自分を否定されているような、誰も見てくれていないような。
ここにこうしているのに、「玲」という存在は違うところを指している。実態がない、というのが適切かも知れない。
身体の変化の戸惑いや、おやじ殿が嬉々として買ってくる女の子の服を着用することについては、毎日の生活で大分慣れてはきた。しかし、それを積極的に受け入れようと思っていない。涁も何かにつけて「女の子なんだから」というし。
いい加減にして欲しい。早く元の姿に戻りたい。そうでなければ、精神的におかしくなりそうだ。
戻ると言えば、稽古の最中に涁の車の音がしたな。例の賊の足取りが掴めたんだろうか。先程とは違う期待が沸き上がっていた。
「玲、朗報だ」
相変わらず、涁は唐突だ。しかし今はその単刀直入さがいい。
「太刀の行方が分った?」
ニヤっと笑いながら俺の側に腰を下ろした。
「今回は骨が折れたぜ。お前、●●市って知ってるか? そこに昔からウチと懇意にしてるところがあって……」
要するに、人づてに怪しい淀みを探して、その一つがそれらしいと言う事だった。
「確信があるんだよね? なら早く行こう。夜になれば動き出すだろうし、今から行こう、涁」
「いや、今日は駄目だ。明日行く」
直ぐにでもこの身体から解放されたいって言うのに、明日? 今日だってまだ終った訳じゃない。なぜ他人事のように冷静でいられるんだ?
俺は立ち上がって叫んでいた。
「涁が行きたく無いなら、一人で行く! のんびり後から来い!」
「ちょっと待て玲。バックアップがいなかったらまた前回と同じだろうが。熱くなり過ぎたら見えるものも見えなくなるぞ」
「他人事だからって……! 信じて貰えてないけど、女の姿なんて早く止めたいんだっ。大体バックアップって言ったって、涁より俺の方が上だろう?! 太刀にも触れないじゃないか!」
言った直後、俺は涁の苦々しい表情を見た。その顔と興奮し過ぎたせいか出始めた頭痛で、俺は幾分冷静になっていた。
「……どう思おうと勝手だけどな。おやじに了解して貰わなくちゃいけないだろうが。どうせおやじの事だ、明日行けって言うだろう? だから明日なんだよ」
そのまま立ち上がり、背を向けて歩き出した。
冷静になってみれば、戻りたい一心で涁に当たっただけかも知れない。それに、言うべきじゃない事を言ってしまった。
御厨の家は、代々魔封の太刀を使い、人に仇なす魔を封じて来た。しかしこの太刀を扱える人間は、御厨の家でも、その代に一人いるかいないか。おやじ殿の代は兄弟がいなかったためか、使える人間がいなかった。誰も鞘から抜く事も出来なかった。魔封を生業としてきただけに、経済的には大打撃だった。だから涁と俺が産まれた時は期待された。
特に涁は長男だっただけに期待が大きかったようだ。俺は物心ついた時には太刀が傍らにあった。尤も、この辺の記憶は曖昧なんだが……。
剣の腕は別としても、涁も好きで内偵をしている訳ではない。十分解っていた筈なのに……。
おやじ殿の部屋に行こうというのか、道場から出ようとしている涁を慌てて追いかけた。
「……し、涁?」
涁の着ているスーツの袖を軽く掴んだ。涁が立ち止まると、喜怒哀楽の無い視線が降ってきた。
「あ、いや、ごめん。言い過ぎた」
「……」
「涁……」
「言葉遣い! 妹だろうと弟だろうと、もっと年上をリスペクトしろ。 ……もう怒ってねーよ」
感じた事も無かったけれど、涁の大きな手がぽんぽんと俺の頭を叩いた。涁の顔を覗こうとしたけれど、大股で歩き始めたそれを見る事は出来なかった。
<つづく>
投稿TS小説 魔封の小太刀(2)
by.luci
神社、と言っていいのかと思うくらい小さい社。その後ろには山がそびえる。その山の中には小さな祠があり、封魔の太刀が納められていた。社の近くに御厨の道場兼私邸があった。
その社に着くと、おやじ殿はそそくさと奥に行ってしまった。俺たちは言われた通り道場で待っていると、細長い木箱を持っておやじ殿が戻って来た。
「これが件の小太刀だ」
見れば何の装飾もない白鞘におさめられている。太刀と異なり、圧倒されるような凄みも触れたら切れてしまうような怖さもない。ただ、大きなお札が封印として貼られている。
涁が手を伸ばすが、あと数センチのところで固まってしまった。太刀と同じく小太刀も俺しか使えないのだろうか。
「玲、なかご」
おやじ殿が目釘抜きを渡しながら言った。小太刀を手に取ると太刀と同じ位の重量を感じた。
鞘を掴み両手に力を入れそこから抜き取る。中から現れた刀身は道場の光を反射させ、目が眩むように輝いている。しかし同時に、道場の温度が二三度下がった気がした。
目釘を抜き、柄尻を握りそのまま手首を拳で叩くと次第に緩み、ハバキがちゃりちゃりと音を立てた。そのハバキを掴み刀身を柄から引き出すとなかごが現れる。
すっかり分解した小太刀を床においた時、なかごから重く暗い空気がドッと俺たちを包んでいた。一気に緊張が高まり、イヤな感じの汗が滲んで来た。この感じは……そう、強力な魔が近くにいる時の感じだ。太刀をどうこうというより先に、この小太刀の封印を解いても良かったのか?
「おやじ殿、これは一体……?」
「静かに。今、分る」
窓から明かりが入っているにもかかわらず、一段と肌寒くなり暗い雰囲気になった――その時。
『吾は宝珠丸。封印を解いたのは誰か……? 御厨のものか?』
無気味な声が直接頭に響いた。その声で肌が泡立った。
「私は御厨第29代当主、東吾という。太刀のことで合力願いたい」
何かが小太刀に憑いている……涁も俺も顔を見合わせた。あろうことかおやじ殿はそいつに手伝わせようとしている!
俺はその危うい行為に口を挟もうと腰を上げかけた。しかし涁に手を捕まれ行動を制せられた。
『何をする?』
「それは……」
おやじ殿は太刀の盗まれた経緯を説明した。そして。
「封魔の太刀によって何故に魔が産まれるのか分らんが、その魔を封じ、太刀を奪還して貰いたい」
『満足いく見返りさえあれば、いかようにも合力しよう』
「いかなるモノでも構わん」
「ちょっと待って、おやじ殿」
あまりの事にとうとう口が動いていた。俺に取っては耳慣れない声が道場に響く。しかしこうなっては言わねばならない。
「小太刀の中になにものかが憑いているのは分った。これだけの妖気を出すんだから、それなりに力もあるんだろう。でも、封魔の太刀と同じような力があるとは思えない」
偽らざる気持ちだった。それに、あの賊は太刀、こちらは小太刀。実力差も加味すれば、悔しいが勝ち目がない。おまけに男から女になっている。一振りの小太刀が、基本的な身体能力もカバーしてくれるとは到底思えなかった。
『ふん、己の未熟な腕など俺の力でどうにでもなる』
心底見下した言い方に唇を咬んだ。
「玲、魔は魔の世界のものに任せるのがいいんだ。私たちはそれで人を救えばいい。それが商売として成り立てばもっといい。お前は私の言う事を聞いていればいいんだ」
言いたい事はあったが、それは言えなかった。全てが言い訳になりそうだ。
『……では今一度、取り引きだ。今回の使用者は誰か?』
おやじ殿も涁も俺を見た。俺も小さく手を挙げた。
『お前か……んん? お前……そうか、分った。吾は使用者の大切なモノを喰らうことで存在している。見たところ……お前はあまり物に対して執着心がないようだ。……よし、決めたぞ』
幼い時から封魔の太刀を使って生活しろと言われていた。普通の子どものように遊ぶようなことも無かったし、おもちゃを欲しがる事も無かった。
「ま、待て! 俺の家族、おやじ殿や涁の命と引換えにする気はないぞっ」
そう、大事なものと言えば、封魔の太刀と家族くらいのもの。太刀は盗まれ、残ったものは家族くらいしか想い至らなかった。俺は前もって制するために声をあげた。しかし、小太刀に憑いた魔の言葉は意外だった。
『お前の家族? そんなものはいらん。第一、ここには』
「宝珠丸っ家族でないなら何なんだ? 早く言ってみろ」
何か慌てた風でおやじ殿がヤツの言葉を遮った。涁の方を見ると、すっと視線を俺から外した。腑に落ちなかったけれど、家族以外の大事なものが気になって尋ねる事はしなかった。
『お前、聞こえるか? これよりお前とだけ話す。返事は考えるだけで良い』
おやじ殿と涁に一瞥をくれると、じっと小太刀を見据えている。聞こえている様子はないように思えた。しかしなぜ俺とだけ話をするんだろう?
聞こえる、と考えると宝珠丸が言った。
『お前が吾を使う度に、お前の【男であった記憶】をいただこうぞ』
俺はその言葉に驚いた。肉親ですら信じていなかった女性化。それをいくら強力な魔だとしても判るとは。
実を言えば入院中なぜ女になったのか考えていた。あの賊の言葉思い起こせば、何と無くヤツが関わっているに違いなかった。しかしもしそうだとすれば、人にこんなことはできない。ヤツは人外のものと言うことになる。ところがヤツは封魔の太刀を持って行った。人外のものなら太刀を持てない筈……。それに、女の体になったのが後天的ならば、なぜおやじ殿も涁も俺が男であったことを忘れているのか? 考えても明快な答えは出てこなかった。
意外なところに答えが見つかるかも知れない。こんなことを言い出す宝珠丸ならば、何か知っているに違いないのだ。
(なぜ、それを欲しがる? この姿を見たらそんなことは言えないだろう?)
『お前の周囲に淀んだ呪詛が見える。男を女とする強い呪詛が』
(……呪詛だけなら、なぜおやじ殿や涁がわからない? 適当なことを言うな)
『口の減らんガキだ。この呪詛はな、お前だけではない、その周囲の人間さえもかかってしまう。お前の傍に来るだけで、お前の元の姿は忘れられ今のその姿を本来のものと見る。本来は人を陥れ苦しめるだけの呪詛だが……』
(! どうしたら元に戻れるんだ?!)
『呪詛をかけた相手を消し去れば普通は消える。しかし、今のお前では無理だろう』
そこまで聞いて俺は再考した。ヤツを倒せば、太刀も戻り男にも戻れる。【男であった記憶】を失うとしても、倒すまでに力を借りなければいいだけだし、短時間であればそれ程でもないだろう。結局選択肢は一つしかなかった訳だ。
「おい、玲?! どうしたんだ?」
床を見ながら押し黙っている俺を不審に思ったのか、涁が声を掛けた。
「あ、いえ、取り引きの品を聞いていたんです」
『して、応ずるか否か?』
使う使わないは俺しか決められないのだ。俺は意を決し、深呼吸した。
「承知した。その代わり全力を尽くしてもらう」
『さて、これで約定は成した。吾は常にお前と一緒に居らねば肝心な時に力が出せんし、いただくこともできん。お前、左手を出せ』
確かに小太刀とは言え、刀を持って歩いては捕まりかねない。何をするのか分らなかったが、言われたとおりにした。すると。
「ああっ、入ってくるっ」
小太刀に左手をかざすと、鞘ごと小太刀が手の中に入ってきた。痛い訳ではなかったけれど、異物がぐいっぐいっと体内に入ってくる感覚など味わった事の無い俺にとって、それは思わず情けない声を上げてしまう程のものだった。おやじ殿も涁も固唾を飲んで見守っている。事の成り行きが分らないせいかも知れない。
「あ、あ、ぁん」
『そう艶っぽい声を出すな。こうすれば小太刀も吾もお前が願いさえすれば使えるのだからな』
時間にすれば二十秒程度だったろうか。魔封の小太刀は俺達の前から消え、俺の左手に住まう事になった。
退院したてで、こんなことになったからか、俺は体も心も疲れ切っていた。道場から涁に抱きかかえられるようにして出た。いつもは厳しいが、こんな時は必ず頼りになる。
「――何を要求されたんだ?」
徐に涁が聞いてきた。先を歩くおやじ殿もちらりと振り返った。興味津津というところだろう。
「あ、まぁ、えと、た、楽しい記憶です。楽しいのって尽きないから……いいかなと」
戸惑いながら言った答えを信じたのか、それ以上は聞かれなかった。心に引っかかった何かのせいで、俺は正直に話さなせなかった。その日、あまりにも疲れたせいか、引っかかりの正体を調べることはできなかった。
<つづく>
神社、と言っていいのかと思うくらい小さい社。その後ろには山がそびえる。その山の中には小さな祠があり、封魔の太刀が納められていた。社の近くに御厨の道場兼私邸があった。
その社に着くと、おやじ殿はそそくさと奥に行ってしまった。俺たちは言われた通り道場で待っていると、細長い木箱を持っておやじ殿が戻って来た。
「これが件の小太刀だ」
見れば何の装飾もない白鞘におさめられている。太刀と異なり、圧倒されるような凄みも触れたら切れてしまうような怖さもない。ただ、大きなお札が封印として貼られている。
涁が手を伸ばすが、あと数センチのところで固まってしまった。太刀と同じく小太刀も俺しか使えないのだろうか。
「玲、なかご」
おやじ殿が目釘抜きを渡しながら言った。小太刀を手に取ると太刀と同じ位の重量を感じた。
鞘を掴み両手に力を入れそこから抜き取る。中から現れた刀身は道場の光を反射させ、目が眩むように輝いている。しかし同時に、道場の温度が二三度下がった気がした。
目釘を抜き、柄尻を握りそのまま手首を拳で叩くと次第に緩み、ハバキがちゃりちゃりと音を立てた。そのハバキを掴み刀身を柄から引き出すとなかごが現れる。
すっかり分解した小太刀を床においた時、なかごから重く暗い空気がドッと俺たちを包んでいた。一気に緊張が高まり、イヤな感じの汗が滲んで来た。この感じは……そう、強力な魔が近くにいる時の感じだ。太刀をどうこうというより先に、この小太刀の封印を解いても良かったのか?
「おやじ殿、これは一体……?」
「静かに。今、分る」
窓から明かりが入っているにもかかわらず、一段と肌寒くなり暗い雰囲気になった――その時。
『吾は宝珠丸。封印を解いたのは誰か……? 御厨のものか?』
無気味な声が直接頭に響いた。その声で肌が泡立った。
「私は御厨第29代当主、東吾という。太刀のことで合力願いたい」
何かが小太刀に憑いている……涁も俺も顔を見合わせた。あろうことかおやじ殿はそいつに手伝わせようとしている!
俺はその危うい行為に口を挟もうと腰を上げかけた。しかし涁に手を捕まれ行動を制せられた。
『何をする?』
「それは……」
おやじ殿は太刀の盗まれた経緯を説明した。そして。
「封魔の太刀によって何故に魔が産まれるのか分らんが、その魔を封じ、太刀を奪還して貰いたい」
『満足いく見返りさえあれば、いかようにも合力しよう』
「いかなるモノでも構わん」
「ちょっと待って、おやじ殿」
あまりの事にとうとう口が動いていた。俺に取っては耳慣れない声が道場に響く。しかしこうなっては言わねばならない。
「小太刀の中になにものかが憑いているのは分った。これだけの妖気を出すんだから、それなりに力もあるんだろう。でも、封魔の太刀と同じような力があるとは思えない」
偽らざる気持ちだった。それに、あの賊は太刀、こちらは小太刀。実力差も加味すれば、悔しいが勝ち目がない。おまけに男から女になっている。一振りの小太刀が、基本的な身体能力もカバーしてくれるとは到底思えなかった。
『ふん、己の未熟な腕など俺の力でどうにでもなる』
心底見下した言い方に唇を咬んだ。
「玲、魔は魔の世界のものに任せるのがいいんだ。私たちはそれで人を救えばいい。それが商売として成り立てばもっといい。お前は私の言う事を聞いていればいいんだ」
言いたい事はあったが、それは言えなかった。全てが言い訳になりそうだ。
『……では今一度、取り引きだ。今回の使用者は誰か?』
おやじ殿も涁も俺を見た。俺も小さく手を挙げた。
『お前か……んん? お前……そうか、分った。吾は使用者の大切なモノを喰らうことで存在している。見たところ……お前はあまり物に対して執着心がないようだ。……よし、決めたぞ』
幼い時から封魔の太刀を使って生活しろと言われていた。普通の子どものように遊ぶようなことも無かったし、おもちゃを欲しがる事も無かった。
「ま、待て! 俺の家族、おやじ殿や涁の命と引換えにする気はないぞっ」
そう、大事なものと言えば、封魔の太刀と家族くらいのもの。太刀は盗まれ、残ったものは家族くらいしか想い至らなかった。俺は前もって制するために声をあげた。しかし、小太刀に憑いた魔の言葉は意外だった。
『お前の家族? そんなものはいらん。第一、ここには』
「宝珠丸っ家族でないなら何なんだ? 早く言ってみろ」
何か慌てた風でおやじ殿がヤツの言葉を遮った。涁の方を見ると、すっと視線を俺から外した。腑に落ちなかったけれど、家族以外の大事なものが気になって尋ねる事はしなかった。
『お前、聞こえるか? これよりお前とだけ話す。返事は考えるだけで良い』
おやじ殿と涁に一瞥をくれると、じっと小太刀を見据えている。聞こえている様子はないように思えた。しかしなぜ俺とだけ話をするんだろう?
聞こえる、と考えると宝珠丸が言った。
『お前が吾を使う度に、お前の【男であった記憶】をいただこうぞ』
俺はその言葉に驚いた。肉親ですら信じていなかった女性化。それをいくら強力な魔だとしても判るとは。
実を言えば入院中なぜ女になったのか考えていた。あの賊の言葉思い起こせば、何と無くヤツが関わっているに違いなかった。しかしもしそうだとすれば、人にこんなことはできない。ヤツは人外のものと言うことになる。ところがヤツは封魔の太刀を持って行った。人外のものなら太刀を持てない筈……。それに、女の体になったのが後天的ならば、なぜおやじ殿も涁も俺が男であったことを忘れているのか? 考えても明快な答えは出てこなかった。
意外なところに答えが見つかるかも知れない。こんなことを言い出す宝珠丸ならば、何か知っているに違いないのだ。
(なぜ、それを欲しがる? この姿を見たらそんなことは言えないだろう?)
『お前の周囲に淀んだ呪詛が見える。男を女とする強い呪詛が』
(……呪詛だけなら、なぜおやじ殿や涁がわからない? 適当なことを言うな)
『口の減らんガキだ。この呪詛はな、お前だけではない、その周囲の人間さえもかかってしまう。お前の傍に来るだけで、お前の元の姿は忘れられ今のその姿を本来のものと見る。本来は人を陥れ苦しめるだけの呪詛だが……』
(! どうしたら元に戻れるんだ?!)
『呪詛をかけた相手を消し去れば普通は消える。しかし、今のお前では無理だろう』
そこまで聞いて俺は再考した。ヤツを倒せば、太刀も戻り男にも戻れる。【男であった記憶】を失うとしても、倒すまでに力を借りなければいいだけだし、短時間であればそれ程でもないだろう。結局選択肢は一つしかなかった訳だ。
「おい、玲?! どうしたんだ?」
床を見ながら押し黙っている俺を不審に思ったのか、涁が声を掛けた。
「あ、いえ、取り引きの品を聞いていたんです」
『して、応ずるか否か?』
使う使わないは俺しか決められないのだ。俺は意を決し、深呼吸した。
「承知した。その代わり全力を尽くしてもらう」
『さて、これで約定は成した。吾は常にお前と一緒に居らねば肝心な時に力が出せんし、いただくこともできん。お前、左手を出せ』
確かに小太刀とは言え、刀を持って歩いては捕まりかねない。何をするのか分らなかったが、言われたとおりにした。すると。
「ああっ、入ってくるっ」
小太刀に左手をかざすと、鞘ごと小太刀が手の中に入ってきた。痛い訳ではなかったけれど、異物がぐいっぐいっと体内に入ってくる感覚など味わった事の無い俺にとって、それは思わず情けない声を上げてしまう程のものだった。おやじ殿も涁も固唾を飲んで見守っている。事の成り行きが分らないせいかも知れない。
「あ、あ、ぁん」
『そう艶っぽい声を出すな。こうすれば小太刀も吾もお前が願いさえすれば使えるのだからな』
時間にすれば二十秒程度だったろうか。魔封の小太刀は俺達の前から消え、俺の左手に住まう事になった。
退院したてで、こんなことになったからか、俺は体も心も疲れ切っていた。道場から涁に抱きかかえられるようにして出た。いつもは厳しいが、こんな時は必ず頼りになる。
「――何を要求されたんだ?」
徐に涁が聞いてきた。先を歩くおやじ殿もちらりと振り返った。興味津津というところだろう。
「あ、まぁ、えと、た、楽しい記憶です。楽しいのって尽きないから……いいかなと」
戸惑いながら言った答えを信じたのか、それ以上は聞かれなかった。心に引っかかった何かのせいで、俺は正直に話さなせなかった。その日、あまりにも疲れたせいか、引っかかりの正体を調べることはできなかった。
<つづく>
投稿TS小説 魔封の小太刀(1)
by.luci
『昔々あるところに、とても腕の良い刀鍛冶がいました。
ある日刀鍛冶は神託を得、魔を祓う太刀と小太刀を作り始めました。ところがこれに驚いた魔の者たちは、そんなものがあっては困ると刀鍛冶を殺す相談をしました。
けれども刀鍛冶には神がついています。魔の者たちは触れる事さえできません。色々考えた挙げ句、刀鍛冶の想い人を使うことを思い付きました。神の力のおよばない場所に誘き出そうと言うのです。
……斯くして、小太刀は完成しましたが、太刀は未完のまま刀鍛冶はこの世を去ってしまったのでした。』
* * * * * * * * * * * * * * * *
針葉樹林に囲まれた社。その付近から妖しい気配が漂っていた。良く見れば霧中に二つの影が近づき、そして離れ、澄んだ空気に鋼が当たる音が響いている。
全身黒尽くめの痩身の男が刀を構えている。その左手には黒漆の鞘を、そして右手には一振りの太刀を持ち、構えている。ギラリと光る刀身は寒気が走る程に美しかった。
「……貴様、なぜ『封魔の太刀』を持ち出す?」
そして対峙する男、御厨玲は、同じく真剣を中段に構え、少し左足を引き気味にしながら、大きく息を吐き問うた。真剣対真剣の勝負に五感はピリピリと周囲の気を感じ、じっとりと嫌な汗が身体中を舐めている。
「わしはこの太刀の力を一番知っている。これを仕上げ、この世の『魔』を支配する。そして」
痩身の男は静かに言ってのけた。余裕があるのか、構えようともしない。刀身をじっくりと鑑賞しながら玲との間合いを一寸刻みで縮めていく。
「あやつをもう一度封じてくれようぞ」
壱の太刀を浴びてから、玲の動きは極端に悪くなっていた。只浴びたと言っても太刀が触れた訳ではない。『封魔の太刀』は初太刀に『魔』の力を削ぐ能力を有していた。
(くそっ、力が…。一体どうなってるんだ?)
焦燥、そして恐怖。これまで玲が感じた事がない感情に、押しつぶされそうになってしまう。いつも『魔』を相手に『封魔の太刀』を振るってきた玲だったが、その刃が自分に向けられるとは思いもしなかった。それに、『魔』でもない自分が力を奪われるとも。
数日前から降る雨の影響で地盤がゆるみ、山の東側では地滑りが起る程だった。群生しているコケとシダが足元を悪くし、スニーカーを履いていた玲にとっても踏み込む際に滑らないように気を取られてしまう。条件は最悪だった。
玲はこれ以上の体力の消耗を嫌い、自ら攻めに転じようと、一気に間合いを詰める。しかし極度の緊張と焦燥でほんの一瞬、まさに刹那、踏み込む足が滑ってしまった。
「!」
霧を纏うように痩身の男が間合いを詰める。その手に握られた太刀の鋭い斬撃が玲の首筋を狙うと、銀色の光が残像を残し扇のように広がりつつ、いやにゆっくりと近づいてきた。玲は突きを見舞おうとしていた刀を返し、痩身の男の太刀を鍔元で受けた、はずだった。
「うッ、な?」
『封魔の太刀』はまるでカッターで紙を切るように、玲の持つ刀の刃を「切って」いた。「キィーン」と甲高い音が鳴り、刀が宙へ舞う。
太刀はそのまま玲の身体を切って行く、玲の足は止まり、身体をその大地の冷たさを感じていた。
「ははは。なんと無様な。御厨とも在ろう者が」
足元に佇む痩身の男は、玲を嘲笑しながら見下ろしていた。玲の身体から暖かい血が冷たい土へと吸い込まれて行く。三太刀目を浴びせようと男が振りかぶった。
「? お前は……はははっ、なんと狭いものか?! わしを覚えておらんのか? 己が何者かも思い出しもせんのか!」
出血で次第に意識が朦朧としてくる玲の耳に、聞きなれない言葉が届いていた。男が何かを唱えている。
「………。ふん、これでお前は……。……………己が何者か、思い出した上で殺してくれるわ。目が覚めたら己が姿をとくと見よ」
それが薄れていく意識の中で玲が聞いた最後の言葉だった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
うっすらと回りに人の気配がした。次第に焦点が合ってくると、そこにはおやじ殿と涁がいた。
「玲! 気がついたか?!」
「!!!」
おやじ殿の声に身を起こそうとした途端、身体に激痛が走った。
「無茶はするな。今は安静にしていろ。あぁあぁ、太刀の事は後からでいい」
「……お前さ、俺がサポートに行くまで待たないからこんな事になんだよ」
心配そうなおやじ殿と比べ、我が兄は痛いところを突いてくる。
分ってはいたんだ。封魔の太刀を持ち出した事で、普通の相手ではない事を。しかしあの時は……。
「何、文句があんの? ったく、女がこんなキズ作ったら嫁の貰い手が無くなるっつの」
文句は色々あるが。それより、涁、今なんて言った?……女? 誰が?
「涁、今、なんて? あ? 声?」
声が明らかに俺のではなく、高い? そう思って自分の手だというのに重く感じる手を挙げ、のど元をさすった。のど仏が無い。俺だって二十歳前とは言え男だ。のど仏くらい出ている、いや、出ていた。それが無い。
出血のために血の気の無い顔が、もっと青くなっていたに違いない。俺は身体のあちこちをのろのろと、探った。
……上に二つ、無いものがあった。下に、あるものが無かった。
「お、おやじ殿っ、しん! 俺、俺、女に!」
痛みも一切構わず、あらん限りの力を振り絞りおやじ殿と_の腕を掴んで、叫んだ。けれど、二人は顔を見合わせて眉間に皺を寄せただけ。
「だから、男なのに、身体が、女になってるっ」
「お前、大丈夫か? 元々女だろうが」
いつでも俺に厳しく接して来た双子の兄だった筈の_は、いつにも増して冷ややかに言った。
そして、俺の混乱をよそに、その日を境に俺の環境は一変したのだった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
「はぁ……」
不必要な溜め息を吐いたのはこの数週間で何度目だろう? 抗生物質の点滴と尿道へ直接刺さっていた管のせいと、刀傷のために起き上がれなかった時には、そんなに違和感はなかった。看護士との会話の時だけ、その声が耳に入った場合に感じたくらいだ。
しかしこうして洗面所の鏡の前に立つとその変わりっぷりに戸惑ってしまう。短かく刈り込んでいた髪は長くまっすぐに背中に達し、細い眉は三日月のように形良く、ちょっと気の強そうな目には長い睫が反り返って鳶色の瞳を守っている。鼻筋は通り高からず低からず、唇はほんの少しふっくらとしている。そして、洗面台が高い……と言うより今の背が低いのか……。やっとシャワーの許可が下りた時には、色んな意味で痛かった。その体型が……。
どう考えても別人にしか映らないはずなのに……この姿を「玲」だと言う。俺が知っている「玲」の姿とは大違いだというのに。おやじ殿にも涁にも何度も言ったが、結局頭部のMRIを撮られるにいたっただけだった。
「はぁ……」
その時の事を考えるとまた溜め息が。「男だ」と言えばおやじ殿も涁もハモって「お前は女の子だ」と言われ、「俺」と言えば涁に小突かれた。涁が何度も「わたしと言え」と強要してきたから、一人称を「玲」として使い始めたが、涁には「似合わないからやめろ」と言われるに至っている。
誰にも信用されないと、自分が間違っていたのかと思ってしまう。ましてや、自分以外の事柄は、全て記憶にある通りなのだから。
俺が守れなかった魔封の太刀は、入院中色々と事件を起こして各地を巡っているようだった。勿論、刀による殺傷事件ではなく、封印していた魔を次々と解放してそれが人々に憑き事故や事件を引き起こしていた。
涁からその様子を聞く度に、ベッドで苦々しく思って来たが、今日それが解消される。退院だ。これでヤツを追える。
パジャマのボタンを外すと、ささやかに出っ張っている乳房が見えた。毎度の事とはいいながら、慣れない。しかしこれは「房」とは言い辛い……。肩口の傷跡を見ながら、シャツに手を伸ばした。
「玲、迎えに……全然成長してないな。でもわたしは構わないぞ。そういうのも好きだからな。しかしブラはしなさい。少しはごまかせるから。あ、着替え続けて続けて」
頭からシャツを被っただけの、上半身裸の状態の時、おやじ殿が扉を開けてカーテンの脇から顔を覗かせた。俺は元来男だから、男に裸を見られても構わない、が、おやじ殿は女の子だと認識している筈。この状況は明らかにおかしいのではないか?
「……おやじ殿。出てってください」
「イヤ玲。可愛いお前の着替えも手伝わないと」
「普通は手伝いません! 出て行かないならせめてカーテン閉めてください!」
大声で言うなり手近なものを投げ付けたが、おやじ殿は怯む事無く指先で摘むように受けた。
「減るもんじゃなし、いいと思うんだが」
いかにも不承不承という感じでおやじ殿は出て行った。
「……はぁ……」
これから何度くらい溜め息がでるのだろう。
着替えを済ませ一通り病室を片づけ、お世話になった看護士さん達に挨拶し、おやじ殿を回収し階下へ降りて行くと_が車の前で待っていた。
何やら_とおやじ殿がどちらが運転するかで揉めていたが、結局涁が運転席へ、俺とおやじ殿が後部座席へ座った。おやじ殿は俺の足を見てスカートがどうのと小声で言っていたが、それは敢えて無視した。スカートなんて誰が穿くか。そんな事より大事な事がある。
「……太刀の行方、どうなってますか」
入院中の情報は、二人が俺に気を使ったのか、殆ど貰えなかった。だからニュースがある度に封魔の太刀が使われたせいだと、自分の失態を呪っていた。
「大まかには分ってるんだ。でもな、解き放たれた魔をどうやって倒して封じるのか問題もあるし、おまけに太刀と正面から戦えるかどうか」
ルームミラーで俺を覗き見ながら、涁が頭を掻きながら言った。その目の下にはクマが出て、ここ最近の苦労を物語っていた。
「正直、手を拱いてる感じだ、なぁおやじ」
「いや、拱いてるのは涁だけ。方法はあるんだよ、玲。(問題もあるんだけど)」
その方法を知っているのは俺だけだとでも言わんばかりに、おやじ殿は笑みを浮かべ俺の肩を抱き寄せた。……おやじ殿ってこんな人だっただろうか?
「それってどんな方法なんですか?」
おやじ殿の手をどかし、少しドア側に腰を移動させつつ尋ねた。涁も聞かされていなかった事に腹を立てているのか、むすっとしながら視線を投げ付けた。
「御神刀は封魔の太刀だけじゃあない。実はもう一振り、小太刀がある。二振りとも同じ人物の作だと言い伝えられててな。力も太刀と同じ位あるらしい。実際使った事もないし、真偽は分らんが」
「初めて聞いたな。俺にも使えるのか?」
「知らん。使った事がないって言ったろうが」
涁は何か言いかけたが、そのまま黙って運転に集中していた。
<つづく>
『昔々あるところに、とても腕の良い刀鍛冶がいました。
ある日刀鍛冶は神託を得、魔を祓う太刀と小太刀を作り始めました。ところがこれに驚いた魔の者たちは、そんなものがあっては困ると刀鍛冶を殺す相談をしました。
けれども刀鍛冶には神がついています。魔の者たちは触れる事さえできません。色々考えた挙げ句、刀鍛冶の想い人を使うことを思い付きました。神の力のおよばない場所に誘き出そうと言うのです。
……斯くして、小太刀は完成しましたが、太刀は未完のまま刀鍛冶はこの世を去ってしまったのでした。』
* * * * * * * * * * * * * * * *
針葉樹林に囲まれた社。その付近から妖しい気配が漂っていた。良く見れば霧中に二つの影が近づき、そして離れ、澄んだ空気に鋼が当たる音が響いている。
全身黒尽くめの痩身の男が刀を構えている。その左手には黒漆の鞘を、そして右手には一振りの太刀を持ち、構えている。ギラリと光る刀身は寒気が走る程に美しかった。
「……貴様、なぜ『封魔の太刀』を持ち出す?」
そして対峙する男、御厨玲は、同じく真剣を中段に構え、少し左足を引き気味にしながら、大きく息を吐き問うた。真剣対真剣の勝負に五感はピリピリと周囲の気を感じ、じっとりと嫌な汗が身体中を舐めている。
「わしはこの太刀の力を一番知っている。これを仕上げ、この世の『魔』を支配する。そして」
痩身の男は静かに言ってのけた。余裕があるのか、構えようともしない。刀身をじっくりと鑑賞しながら玲との間合いを一寸刻みで縮めていく。
「あやつをもう一度封じてくれようぞ」
壱の太刀を浴びてから、玲の動きは極端に悪くなっていた。只浴びたと言っても太刀が触れた訳ではない。『封魔の太刀』は初太刀に『魔』の力を削ぐ能力を有していた。
(くそっ、力が…。一体どうなってるんだ?)
焦燥、そして恐怖。これまで玲が感じた事がない感情に、押しつぶされそうになってしまう。いつも『魔』を相手に『封魔の太刀』を振るってきた玲だったが、その刃が自分に向けられるとは思いもしなかった。それに、『魔』でもない自分が力を奪われるとも。
数日前から降る雨の影響で地盤がゆるみ、山の東側では地滑りが起る程だった。群生しているコケとシダが足元を悪くし、スニーカーを履いていた玲にとっても踏み込む際に滑らないように気を取られてしまう。条件は最悪だった。
玲はこれ以上の体力の消耗を嫌い、自ら攻めに転じようと、一気に間合いを詰める。しかし極度の緊張と焦燥でほんの一瞬、まさに刹那、踏み込む足が滑ってしまった。
「!」
霧を纏うように痩身の男が間合いを詰める。その手に握られた太刀の鋭い斬撃が玲の首筋を狙うと、銀色の光が残像を残し扇のように広がりつつ、いやにゆっくりと近づいてきた。玲は突きを見舞おうとしていた刀を返し、痩身の男の太刀を鍔元で受けた、はずだった。
「うッ、な?」
『封魔の太刀』はまるでカッターで紙を切るように、玲の持つ刀の刃を「切って」いた。「キィーン」と甲高い音が鳴り、刀が宙へ舞う。
太刀はそのまま玲の身体を切って行く、玲の足は止まり、身体をその大地の冷たさを感じていた。
「ははは。なんと無様な。御厨とも在ろう者が」
足元に佇む痩身の男は、玲を嘲笑しながら見下ろしていた。玲の身体から暖かい血が冷たい土へと吸い込まれて行く。三太刀目を浴びせようと男が振りかぶった。
「? お前は……はははっ、なんと狭いものか?! わしを覚えておらんのか? 己が何者かも思い出しもせんのか!」
出血で次第に意識が朦朧としてくる玲の耳に、聞きなれない言葉が届いていた。男が何かを唱えている。
「………。ふん、これでお前は……。……………己が何者か、思い出した上で殺してくれるわ。目が覚めたら己が姿をとくと見よ」
それが薄れていく意識の中で玲が聞いた最後の言葉だった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
うっすらと回りに人の気配がした。次第に焦点が合ってくると、そこにはおやじ殿と涁がいた。
「玲! 気がついたか?!」
「!!!」
おやじ殿の声に身を起こそうとした途端、身体に激痛が走った。
「無茶はするな。今は安静にしていろ。あぁあぁ、太刀の事は後からでいい」
「……お前さ、俺がサポートに行くまで待たないからこんな事になんだよ」
心配そうなおやじ殿と比べ、我が兄は痛いところを突いてくる。
分ってはいたんだ。封魔の太刀を持ち出した事で、普通の相手ではない事を。しかしあの時は……。
「何、文句があんの? ったく、女がこんなキズ作ったら嫁の貰い手が無くなるっつの」
文句は色々あるが。それより、涁、今なんて言った?……女? 誰が?
「涁、今、なんて? あ? 声?」
声が明らかに俺のではなく、高い? そう思って自分の手だというのに重く感じる手を挙げ、のど元をさすった。のど仏が無い。俺だって二十歳前とは言え男だ。のど仏くらい出ている、いや、出ていた。それが無い。
出血のために血の気の無い顔が、もっと青くなっていたに違いない。俺は身体のあちこちをのろのろと、探った。
……上に二つ、無いものがあった。下に、あるものが無かった。
「お、おやじ殿っ、しん! 俺、俺、女に!」
痛みも一切構わず、あらん限りの力を振り絞りおやじ殿と_の腕を掴んで、叫んだ。けれど、二人は顔を見合わせて眉間に皺を寄せただけ。
「だから、男なのに、身体が、女になってるっ」
「お前、大丈夫か? 元々女だろうが」
いつでも俺に厳しく接して来た双子の兄だった筈の_は、いつにも増して冷ややかに言った。
そして、俺の混乱をよそに、その日を境に俺の環境は一変したのだった。
* * * * * * * * * * * * * * * *
「はぁ……」
不必要な溜め息を吐いたのはこの数週間で何度目だろう? 抗生物質の点滴と尿道へ直接刺さっていた管のせいと、刀傷のために起き上がれなかった時には、そんなに違和感はなかった。看護士との会話の時だけ、その声が耳に入った場合に感じたくらいだ。
しかしこうして洗面所の鏡の前に立つとその変わりっぷりに戸惑ってしまう。短かく刈り込んでいた髪は長くまっすぐに背中に達し、細い眉は三日月のように形良く、ちょっと気の強そうな目には長い睫が反り返って鳶色の瞳を守っている。鼻筋は通り高からず低からず、唇はほんの少しふっくらとしている。そして、洗面台が高い……と言うより今の背が低いのか……。やっとシャワーの許可が下りた時には、色んな意味で痛かった。その体型が……。
どう考えても別人にしか映らないはずなのに……この姿を「玲」だと言う。俺が知っている「玲」の姿とは大違いだというのに。おやじ殿にも涁にも何度も言ったが、結局頭部のMRIを撮られるにいたっただけだった。
「はぁ……」
その時の事を考えるとまた溜め息が。「男だ」と言えばおやじ殿も涁もハモって「お前は女の子だ」と言われ、「俺」と言えば涁に小突かれた。涁が何度も「わたしと言え」と強要してきたから、一人称を「玲」として使い始めたが、涁には「似合わないからやめろ」と言われるに至っている。
誰にも信用されないと、自分が間違っていたのかと思ってしまう。ましてや、自分以外の事柄は、全て記憶にある通りなのだから。
俺が守れなかった魔封の太刀は、入院中色々と事件を起こして各地を巡っているようだった。勿論、刀による殺傷事件ではなく、封印していた魔を次々と解放してそれが人々に憑き事故や事件を引き起こしていた。
涁からその様子を聞く度に、ベッドで苦々しく思って来たが、今日それが解消される。退院だ。これでヤツを追える。
パジャマのボタンを外すと、ささやかに出っ張っている乳房が見えた。毎度の事とはいいながら、慣れない。しかしこれは「房」とは言い辛い……。肩口の傷跡を見ながら、シャツに手を伸ばした。
「玲、迎えに……全然成長してないな。でもわたしは構わないぞ。そういうのも好きだからな。しかしブラはしなさい。少しはごまかせるから。あ、着替え続けて続けて」
頭からシャツを被っただけの、上半身裸の状態の時、おやじ殿が扉を開けてカーテンの脇から顔を覗かせた。俺は元来男だから、男に裸を見られても構わない、が、おやじ殿は女の子だと認識している筈。この状況は明らかにおかしいのではないか?
「……おやじ殿。出てってください」
「イヤ玲。可愛いお前の着替えも手伝わないと」
「普通は手伝いません! 出て行かないならせめてカーテン閉めてください!」
大声で言うなり手近なものを投げ付けたが、おやじ殿は怯む事無く指先で摘むように受けた。
「減るもんじゃなし、いいと思うんだが」
いかにも不承不承という感じでおやじ殿は出て行った。
「……はぁ……」
これから何度くらい溜め息がでるのだろう。
着替えを済ませ一通り病室を片づけ、お世話になった看護士さん達に挨拶し、おやじ殿を回収し階下へ降りて行くと_が車の前で待っていた。
何やら_とおやじ殿がどちらが運転するかで揉めていたが、結局涁が運転席へ、俺とおやじ殿が後部座席へ座った。おやじ殿は俺の足を見てスカートがどうのと小声で言っていたが、それは敢えて無視した。スカートなんて誰が穿くか。そんな事より大事な事がある。
「……太刀の行方、どうなってますか」
入院中の情報は、二人が俺に気を使ったのか、殆ど貰えなかった。だからニュースがある度に封魔の太刀が使われたせいだと、自分の失態を呪っていた。
「大まかには分ってるんだ。でもな、解き放たれた魔をどうやって倒して封じるのか問題もあるし、おまけに太刀と正面から戦えるかどうか」
ルームミラーで俺を覗き見ながら、涁が頭を掻きながら言った。その目の下にはクマが出て、ここ最近の苦労を物語っていた。
「正直、手を拱いてる感じだ、なぁおやじ」
「いや、拱いてるのは涁だけ。方法はあるんだよ、玲。(問題もあるんだけど)」
その方法を知っているのは俺だけだとでも言わんばかりに、おやじ殿は笑みを浮かべ俺の肩を抱き寄せた。……おやじ殿ってこんな人だっただろうか?
「それってどんな方法なんですか?」
おやじ殿の手をどかし、少しドア側に腰を移動させつつ尋ねた。涁も聞かされていなかった事に腹を立てているのか、むすっとしながら視線を投げ付けた。
「御神刀は封魔の太刀だけじゃあない。実はもう一振り、小太刀がある。二振りとも同じ人物の作だと言い伝えられててな。力も太刀と同じ位あるらしい。実際使った事もないし、真偽は分らんが」
「初めて聞いたな。俺にも使えるのか?」
「知らん。使った事がないって言ったろうが」
涁は何か言いかけたが、そのまま黙って運転に集中していた。
<つづく>
投稿TS小説第141番 Blood Line (73)(21禁) <最終回>
(ひゃ、ぅあ、あんんンッ?!)
手も添えず、何も言わず高野は勃起をリサに一気に根本まで突き立てた。その怒張に串刺しにされたリサは背を反らし、口を開けたままぷるぷると震えてしまう。
「どうだ? 自分の置かれている状況が解ってきたか。挿入されただけでもイキそうだったんじゃないのか。ゲーム終了だが」
リサの目の前でテーザーを振った。我に返ったリサは唇を噛み締め首を横に振る。
(イッ……てない。我慢しなくちゃ。我慢しなくちゃ。我慢、ふああっやっ?!)
大きなストロークで高野が抜き挿しを始めた。目も眩むような快美感が立て続けにリサを遅う。より奥深く突き込めるように、高野に丸い尻を掴まれただけでゾクゾクし、自分の意志とは関係なく、肉洞はきゅきゅっと高野を締め上げてしまった。
「随分と感じさせてくれるが、敵だと思っている男に犯される気分はどうだ?」
薬のせいなのか、これまで味わった事の無い快感がリサの思考をドロドロに溶かしてしまっていた。嫌だと思う心さえ肉の悦びが塗り込めてしまう。
(はぅっ、クゥ、やっんあっ、ああぁん)
歓喜は次第に陶酔へと代わっていく。高野が動く度に大量の汁が掻き出され内腿を伝わってショーツに染みを作っていった。ぎゅっと机の縁を掴み、耐えようとした。抜き出されると肉襞が擦られ快感と共に喪失感が生じ、それを埋めようとリサの腰は無意識に高野を追いかけ突き出される。そこへ高野が腰を思い切りぶつけていく。みっちりと膣肉に満たされる野太い感触がリサの意識を飛ばそうとする。
何度も何度も、イキそうになるのに、その度に高野は抽送を止めてしまう。生殺しだった。そして「もうイキたい」とリサが思っていた事を思い出させていた。まるで「お前は肉に溺れて人を見殺しにしようとしている」と言わんばかりに。
再び腰を降り始めた高野が口を開いた。
「ん、 膣内は柔らかいし締まりが絶妙だな。やはり近親者は相性がいいと言うことか」
手も添えず、何も言わず高野は勃起をリサに一気に根本まで突き立てた。その怒張に串刺しにされたリサは背を反らし、口を開けたままぷるぷると震えてしまう。
「どうだ? 自分の置かれている状況が解ってきたか。挿入されただけでもイキそうだったんじゃないのか。ゲーム終了だが」
リサの目の前でテーザーを振った。我に返ったリサは唇を噛み締め首を横に振る。
(イッ……てない。我慢しなくちゃ。我慢しなくちゃ。我慢、ふああっやっ?!)
大きなストロークで高野が抜き挿しを始めた。目も眩むような快美感が立て続けにリサを遅う。より奥深く突き込めるように、高野に丸い尻を掴まれただけでゾクゾクし、自分の意志とは関係なく、肉洞はきゅきゅっと高野を締め上げてしまった。
「随分と感じさせてくれるが、敵だと思っている男に犯される気分はどうだ?」
薬のせいなのか、これまで味わった事の無い快感がリサの思考をドロドロに溶かしてしまっていた。嫌だと思う心さえ肉の悦びが塗り込めてしまう。
(はぅっ、クゥ、やっんあっ、ああぁん)
歓喜は次第に陶酔へと代わっていく。高野が動く度に大量の汁が掻き出され内腿を伝わってショーツに染みを作っていった。ぎゅっと机の縁を掴み、耐えようとした。抜き出されると肉襞が擦られ快感と共に喪失感が生じ、それを埋めようとリサの腰は無意識に高野を追いかけ突き出される。そこへ高野が腰を思い切りぶつけていく。みっちりと膣肉に満たされる野太い感触がリサの意識を飛ばそうとする。
何度も何度も、イキそうになるのに、その度に高野は抽送を止めてしまう。生殺しだった。そして「もうイキたい」とリサが思っていた事を思い出させていた。まるで「お前は肉に溺れて人を見殺しにしようとしている」と言わんばかりに。
再び腰を降り始めた高野が口を開いた。
「ん、 膣内は柔らかいし締まりが絶妙だな。やはり近親者は相性がいいと言うことか」
投稿TS小説第141番 Blood Line (72)(21禁)
マガジンが空になり銃撃が鳴りやんだ。その隙にリサは自分の身体の元へ一気にテレポートした。武石とその後ろにいた先生達の間に。
「捕まえろ!」
「こっちにいるぞ」
「どけぇ!」
各々の感情そのままに行動する先生達に紛れ、SPがリサの髪や腕を掴む。それに構わずリサは武石がマガジンを替える手を掴み、相手の意識の中へ集中した。リサの中に大量の想いが流れ込んでくる。
真っ黒な中に銀色の長い髪を持った少女がいた。丁度貴子位の年齢だろうか。その娘に次々と手が伸びて来てその身体をまさぐっていく。その気持の悪い感触がリサにも伝わっていく。嫌がる少女にお構いなしの手は様々な器具を持って嬲る。そして四肢をベッドに固定され頭にはヘルメットのような装置を据えられつつ全裸にされた。
(これは……璃紗さんの過去?)
銀の髪と異様に白い身体に紅い瞳。疑いようがなかった。尚も流れ込む情景は、まるでリサも体験しているような気分になり胸が悪くなりそうだ。全裸にされた少女に、大人の男が覆い被さっていく。次に何が起こるのか、リサが考えるまでもなかった。自分の手首程もありそうなペニスが、全く潤っていない少女の中にねじ込まれて行く。リサと璃紗の同調した思考は、リサに自分が体験している感覚をもたらしていた。
そんな場面が少女から大人の女性になるまで、何度も続いていく。「能力開発」という名の下に。「実験動物」「穴」と蔑まされ人としての尊厳さえ与えられなかった璃紗の人生。「なぜあたしが?」そう問う少女の声は、やがて能力者である自分を呪う言葉になり、ついにはそれを利用しようとする人間と能力者それ自体の存在への呪詛になっていた。
「人の心を覗くなああっ!」
喧噪の中、少年の声が響く。憎悪に燃える過去の自分の瞳が、今の己を捕らえていた。目の前の自分は璃紗だった。それが解ったと言うのにリサは驚喜することも出来ず、SPや数人の先生達に引き離された。
「だから嫌なんだっ、デリカシーの欠片もない、実験動物のクセにっ! 能力者なんて消えて無くなれっ!」
装填を終え銃口を向けた。至近距離でマズルフラッシュが煌めく。その瞬間、リサは再度テレポートした。めくらめっぽうの銃撃はSPも先生も薙ぎ倒した。
「気でも狂ったか、皆川!」
突然の凶行に驚いた大塚が叫びながら近づく。しかし璃紗の指はトリガーから離れず、自分を中心に弧を描くように撃ち続けた。270度も回ると丁度元の位置に戻ったリサが正面にいた。璃紗の周囲には死屍累々と倒れ伏し、大塚もその中にいた。
『璃紗さん、僕が解らないの?!』
「……その姿が嫌い。ちょっと違うだけなのに、なんでこんなに苦しまなくちゃいけないんだよ。高野がいなくなれば、能力者がいなくなれば、あんたがいなくなれば、新しい人生が拓けるの!」
お互いの境遇を憂い、気に掛けてくれた優しい璃紗の面影はそこに無かった。今あるのは、全ての憎しみと殺意を自分に向けている「武石幹彦」しか見えない。
執拗に銃弾がリサを狙う。狭い室内では身を隠そうとしてもその隙間は無かった。リサは狼狽えながら右へ左へと辛うじて銃弾を避けていく。これまでのようにトリガーを引く指を切ったり折ったりすれば攻撃は止むだろう。けれど、それをすれば璃紗の憎悪は益々大きくなるだけだ。
「捕まえろ!」
「こっちにいるぞ」
「どけぇ!」
各々の感情そのままに行動する先生達に紛れ、SPがリサの髪や腕を掴む。それに構わずリサは武石がマガジンを替える手を掴み、相手の意識の中へ集中した。リサの中に大量の想いが流れ込んでくる。
真っ黒な中に銀色の長い髪を持った少女がいた。丁度貴子位の年齢だろうか。その娘に次々と手が伸びて来てその身体をまさぐっていく。その気持の悪い感触がリサにも伝わっていく。嫌がる少女にお構いなしの手は様々な器具を持って嬲る。そして四肢をベッドに固定され頭にはヘルメットのような装置を据えられつつ全裸にされた。
(これは……璃紗さんの過去?)
銀の髪と異様に白い身体に紅い瞳。疑いようがなかった。尚も流れ込む情景は、まるでリサも体験しているような気分になり胸が悪くなりそうだ。全裸にされた少女に、大人の男が覆い被さっていく。次に何が起こるのか、リサが考えるまでもなかった。自分の手首程もありそうなペニスが、全く潤っていない少女の中にねじ込まれて行く。リサと璃紗の同調した思考は、リサに自分が体験している感覚をもたらしていた。
そんな場面が少女から大人の女性になるまで、何度も続いていく。「能力開発」という名の下に。「実験動物」「穴」と蔑まされ人としての尊厳さえ与えられなかった璃紗の人生。「なぜあたしが?」そう問う少女の声は、やがて能力者である自分を呪う言葉になり、ついにはそれを利用しようとする人間と能力者それ自体の存在への呪詛になっていた。
「人の心を覗くなああっ!」
喧噪の中、少年の声が響く。憎悪に燃える過去の自分の瞳が、今の己を捕らえていた。目の前の自分は璃紗だった。それが解ったと言うのにリサは驚喜することも出来ず、SPや数人の先生達に引き離された。
「だから嫌なんだっ、デリカシーの欠片もない、実験動物のクセにっ! 能力者なんて消えて無くなれっ!」
装填を終え銃口を向けた。至近距離でマズルフラッシュが煌めく。その瞬間、リサは再度テレポートした。めくらめっぽうの銃撃はSPも先生も薙ぎ倒した。
「気でも狂ったか、皆川!」
突然の凶行に驚いた大塚が叫びながら近づく。しかし璃紗の指はトリガーから離れず、自分を中心に弧を描くように撃ち続けた。270度も回ると丁度元の位置に戻ったリサが正面にいた。璃紗の周囲には死屍累々と倒れ伏し、大塚もその中にいた。
『璃紗さん、僕が解らないの?!』
「……その姿が嫌い。ちょっと違うだけなのに、なんでこんなに苦しまなくちゃいけないんだよ。高野がいなくなれば、能力者がいなくなれば、あんたがいなくなれば、新しい人生が拓けるの!」
お互いの境遇を憂い、気に掛けてくれた優しい璃紗の面影はそこに無かった。今あるのは、全ての憎しみと殺意を自分に向けている「武石幹彦」しか見えない。
執拗に銃弾がリサを狙う。狭い室内では身を隠そうとしてもその隙間は無かった。リサは狼狽えながら右へ左へと辛うじて銃弾を避けていく。これまでのようにトリガーを引く指を切ったり折ったりすれば攻撃は止むだろう。けれど、それをすれば璃紗の憎悪は益々大きくなるだけだ。
投稿TS小説第141番 Blood Line (71)(21禁)
微かなショックとともに扉が開く。冷たい印象の薄暗い廊下が正面に延び、その奥に扉がある。扉の両脇には警備が二人、サブマシンガンを携えて立っている。その間を通り大塚と武石は室内に入った。
室内には大塚より年配の男達十名が長く伸びたテーブルに付いている。その二十の瞳が一斉に二人に浴びせられた。
「先生方、お待たせして申し訳ございません」
「おお、大塚君。ま、座りたまえ」
そのグループのリーダーなのか、扉側とは反対の上座の席に座した、禿げ上がった頭を横から持ってきた白髪で隠した初老の男が声を掛けた。言葉とは裏腹に男の視線は二人を射抜く程に鋭い。恐縮し背を丸めて席に着く大塚を後目に、武石は飄々とイスに座った。
「これで揃ったな。始めよう。菊永君」
「…… 国内に残った殺傷能力のある能力者は、把握している範囲で一名を残すのみとなっています。故長谷川氏所有の島にいた能力者達は、一昨日、高野により排除されております。ただし当の高野の行方は解っておりません。危惧されるのは高野が情報をマスコミに流す事ですが、これはマスコミ各社に協力していただいているため心配には及びません。今後、我々の採る方向ですが、まずは高野の確保となるかと思われます」
菊永と呼ばれた四十台の男が、初老の男に向かって一礼した後、現状を坦々と語った。大塚、武石以外の八名は腕組みをしたり目を瞑ったり書類に目を通したりしていた。
「大塚君」
「は、はい」
初老の男が顎に手をやりながら呼びかけた。大塚は大粒の汗をハンカチで拭う。
「解っていると思うが、高野が持つ情報が外に漏れては国家の一大事だ。黙らせなくてはいけない」
「はい、解っております。ですから全力を持って」
「そう。それからね。今回の一件は我々には全く関係の無い事だ。君が立案し実行に移したものだ。我々の名前も出されたら有権者の皆様に顔向けできん」
暗に切り捨てると言っているようなものだったが、大塚は頷いていた。
「万が一、明るみに出た場合、身の処し方は解っているだろうね」
「……も、勿論、です」
緊張で喉が乾いたのか、大塚の声は掠れ震えていた。初老の男は大塚の答えを満面の笑みで受け取った。
「皆さんもお聞きの通り、大塚君は我々の意向を汲み取ってくれましたよ。さて、ここで大塚君からの今後の提案ですがね」
自分の言葉ではなく、あくまでも大塚の提案である事を強調しつつ、男は先を続けた。
「高野を確保、などと甘い事ではダメだと言う事なので、ここはどうでしょう、見つけ次第『処分』ということで。で、いいんだよな、大塚君」
大塚に残された返答は肯定しか無かった。
「ま、これが何事も無く処理出来れば、大塚君も本当に我々の一員となれるんだから。気合いを入れて頑張って欲しいものだね」
再び、今度は全ての視線が大塚へと集まっていた。大塚は小声で何事が呟いていたが、横にいる武石の耳にも聞こえなかった。
室内には大塚より年配の男達十名が長く伸びたテーブルに付いている。その二十の瞳が一斉に二人に浴びせられた。
「先生方、お待たせして申し訳ございません」
「おお、大塚君。ま、座りたまえ」
そのグループのリーダーなのか、扉側とは反対の上座の席に座した、禿げ上がった頭を横から持ってきた白髪で隠した初老の男が声を掛けた。言葉とは裏腹に男の視線は二人を射抜く程に鋭い。恐縮し背を丸めて席に着く大塚を後目に、武石は飄々とイスに座った。
「これで揃ったな。始めよう。菊永君」
「…… 国内に残った殺傷能力のある能力者は、把握している範囲で一名を残すのみとなっています。故長谷川氏所有の島にいた能力者達は、一昨日、高野により排除されております。ただし当の高野の行方は解っておりません。危惧されるのは高野が情報をマスコミに流す事ですが、これはマスコミ各社に協力していただいているため心配には及びません。今後、我々の採る方向ですが、まずは高野の確保となるかと思われます」
菊永と呼ばれた四十台の男が、初老の男に向かって一礼した後、現状を坦々と語った。大塚、武石以外の八名は腕組みをしたり目を瞑ったり書類に目を通したりしていた。
「大塚君」
「は、はい」
初老の男が顎に手をやりながら呼びかけた。大塚は大粒の汗をハンカチで拭う。
「解っていると思うが、高野が持つ情報が外に漏れては国家の一大事だ。黙らせなくてはいけない」
「はい、解っております。ですから全力を持って」
「そう。それからね。今回の一件は我々には全く関係の無い事だ。君が立案し実行に移したものだ。我々の名前も出されたら有権者の皆様に顔向けできん」
暗に切り捨てると言っているようなものだったが、大塚は頷いていた。
「万が一、明るみに出た場合、身の処し方は解っているだろうね」
「……も、勿論、です」
緊張で喉が乾いたのか、大塚の声は掠れ震えていた。初老の男は大塚の答えを満面の笑みで受け取った。
「皆さんもお聞きの通り、大塚君は我々の意向を汲み取ってくれましたよ。さて、ここで大塚君からの今後の提案ですがね」
自分の言葉ではなく、あくまでも大塚の提案である事を強調しつつ、男は先を続けた。
「高野を確保、などと甘い事ではダメだと言う事なので、ここはどうでしょう、見つけ次第『処分』ということで。で、いいんだよな、大塚君」
大塚に残された返答は肯定しか無かった。
「ま、これが何事も無く処理出来れば、大塚君も本当に我々の一員となれるんだから。気合いを入れて頑張って欲しいものだね」
再び、今度は全ての視線が大塚へと集まっていた。大塚は小声で何事が呟いていたが、横にいる武石の耳にも聞こえなかった。
投稿TS小説第141番 Blood Line (70)(21禁)
* * * * 再会 * * * * *
コンピューターと人が発する熱で暑い位になっている室内には、数十のモニターが並んでいる。制服を着込んだ男達がインカム越しに流れる情報とモニターをチェックしつつ、背後に立っている五十台がらみの恰幅の良い男と、この場に似つかわしくない十代の少年に逐一報告をしていた。
「島内の能力者は全て死亡しています」
「こちらの情報にない人物の死体が数名分あるようです」
「逃亡したと見られるヘリがレーダー圏外に入った模様。着陸地点の予想範囲を出します」
「……今、大きな能力反応がありました」
「三名、生命反応ありません」
通常であれば隊員が見ている映像が映っている筈のモニターはブラックアウトし、フラットラインとなった心拍表示のみを映す三つのモニター示しながら、一人のオペレーターが二人を振り返った。
「なかなか手強いガキだな。手練れをこうも簡単にとは」
傍らに立つ少年に冷たい視線を送りながらひとりごちる。少年はその視線の意味を知ってか知らずか、そちらに顔を向けず答えた。
「化け物と言っても所詮ガキですから。心配しなくても、網を張っていればいずれ消せますよ、大塚さん」
大塚と呼ばれた男は「ふん」と鼻を鳴らした。
「高野も逃がしおって……。明後日、上の人間と対策会議がある。皆川、お前も同席して貰うぞ」
「……高野はそちらが捕捉して貰わないと。こっちは化け物駆除に全力を注いでるんですから」
勿論同席します、と付け加えながら、大塚に背を向けてオペレーターに何事が囁く少年。その姿を見ながら大塚は踵を返した歩き出した。どこからともなく人相の悪いSPが周囲を固めた。
(自分もその「化け物」の一人だったんだろうが。能力者は何を考えてるんだか理解できん。高野の件さえなければ利用価値など無いものを)
部屋を出る大塚の背中に、振り返った少年が冷めた目で見送る。
「そういう事はここから出て行ってから思って下さい。丸聞こえです。それから名前を間違えないで下さい」
「あ、ああ、すまんな。ついだ、つい。失礼するよ、武石君」
少年の声に表情を強張らせた大塚はそそくさと退出して行った。武石幹彦の姿を持つ者は、リサの捜索指示を出すのも忘れ唇を噛み締めていた。
コンピューターと人が発する熱で暑い位になっている室内には、数十のモニターが並んでいる。制服を着込んだ男達がインカム越しに流れる情報とモニターをチェックしつつ、背後に立っている五十台がらみの恰幅の良い男と、この場に似つかわしくない十代の少年に逐一報告をしていた。
「島内の能力者は全て死亡しています」
「こちらの情報にない人物の死体が数名分あるようです」
「逃亡したと見られるヘリがレーダー圏外に入った模様。着陸地点の予想範囲を出します」
「……今、大きな能力反応がありました」
「三名、生命反応ありません」
通常であれば隊員が見ている映像が映っている筈のモニターはブラックアウトし、フラットラインとなった心拍表示のみを映す三つのモニター示しながら、一人のオペレーターが二人を振り返った。
「なかなか手強いガキだな。手練れをこうも簡単にとは」
傍らに立つ少年に冷たい視線を送りながらひとりごちる。少年はその視線の意味を知ってか知らずか、そちらに顔を向けず答えた。
「化け物と言っても所詮ガキですから。心配しなくても、網を張っていればいずれ消せますよ、大塚さん」
大塚と呼ばれた男は「ふん」と鼻を鳴らした。
「高野も逃がしおって……。明後日、上の人間と対策会議がある。皆川、お前も同席して貰うぞ」
「……高野はそちらが捕捉して貰わないと。こっちは化け物駆除に全力を注いでるんですから」
勿論同席します、と付け加えながら、大塚に背を向けてオペレーターに何事が囁く少年。その姿を見ながら大塚は踵を返した歩き出した。どこからともなく人相の悪いSPが周囲を固めた。
(自分もその「化け物」の一人だったんだろうが。能力者は何を考えてるんだか理解できん。高野の件さえなければ利用価値など無いものを)
部屋を出る大塚の背中に、振り返った少年が冷めた目で見送る。
「そういう事はここから出て行ってから思って下さい。丸聞こえです。それから名前を間違えないで下さい」
「あ、ああ、すまんな。ついだ、つい。失礼するよ、武石君」
少年の声に表情を強張らせた大塚はそそくさと退出して行った。武石幹彦の姿を持つ者は、リサの捜索指示を出すのも忘れ唇を噛み締めていた。
投稿TS小説第141番 Blood Line (69)(21禁)
リサの視界がブラックアウトしそうになった時、周囲の木陰から小さな音が聞こえた。草の擦れる音は俊治の耳にかろうじて届く程度だったが、誰もいなくなっている筈の島で自分達以外の存在の出現に驚いた俊治は、手の力を緩め上体を起こした。
自分が俊治だった事、他の能力者を嬉々として殺して回った事、そしてリサを殺そうとしている事。それらの感情や思いが俊治の中で錯綜していなければ、あるいは能力で避けられたかも知れない。しかし、現実は違った。
意識がはっきりし始めたリサの目の前で、胸から音もなく血を吹き出してリサの横たわる右側に倒れゆく俊治の姿があった。
(あ? あっああ?! 俊治君っ)
瞬時には何が起こったのか理解できないリサが俊治に手を伸ばす。その鼻の先を何かが掠めていった。リサが振り向くとヘルメット、ゴーグルを備えた、まるで機動隊を重装備にしたような人間が三人、小銃を構えて近づいていた。
命を狙っている事は想像に難くない。今日は既に何度も同じ様な経験をしていた。やられる前にやるしかない状況で、リサは怒りと恐怖の感情を爆発させた。
『待ってて』
俊治の耳に【声】を残し立ち上がった。
紅い瞳が三人を射抜く。制止の声も発せず三人はトリガーに力を込めようとした。リサは銃器の構造を知らない。射撃を止める為には人間をどうにかする必要がある。リサは三人の人差し指を第二間接からねじ切った。
いきなりの激痛に屈強な男達の悲鳴が辺りに響く。それでも小銃を落とさず、痛みに震える手から反対の手に持ち替え狙いをつけた。しかし、それだけの時間があればリサには十分だった。扇型に広がった左右の男達の心臓を破裂されるイメージを作る。と、ばったりと倒れていく。
ゴーグル越しの表情はよく解らなかったが、動揺しているようにリサには思えた。改めて照準が向けられた時、リサは対峙する男の両肘と両膝を捻った。絶叫が耳に痛かったけれど、自分の行為が残酷だとは思わなかった。人を殺そうと思っていたのだ。自分にもそれが起こる可能性があることも認識している筈だ。
ひくひくと痙攣している男のもとへ駆け寄ると胸元を掴んで【声】を使う。
『高野は?! どこに行った!』
「……高野? そんなヤツは知らん」
てっきり高野の伏兵かと思っていた。高野の居所を知っている筈だと思い一人残したのだ。しかし高野の手の者でないならなぜ、どうして自分が狙われなければならないのか。
『誰? 誰が狙ってるんだよ? なんで?』
力一杯身体を揺らすが、男は痛みの冷や汗を流しながらニヤニヤとするばかりだ。このままでは無駄な時間だけが過ぎていく。業を煮やしたリサは、いつか読んだマンガのように人の思考を読もうと意識を集中させた。
色々なイメージがリサの心に入ってきた。古そうな思考は欠けが目立ち、新しそうなものは鮮明に残っている。最も鮮明な思考とイメージに、リサと高野の顔写真があった。そして、ここに向かう直前に出てきた建物のイメージ。
(建物……字が……えぇ? なんで?)
リサでもそれが政府関係の機関だと解る。しかし狙われる理由が解らなかった。真理が父親のコネクションを通して話をつけているものとばかり思っていたし、数ヶ月間も放って置かれて今更の感も否めない。
『政府機関の人がなんで……』
「――俺の思考を読んだのか?! 化け物が」
当然の疑問を投げかけると、男はさも嫌そうな顔をして舌打ちをした。そして見る間に口から大量の血を吐き出しながら動かなくなってしまった。
(あっ?!)
リサにも男が自害した事は解った。たくさんの疑問が沸き上がってくるが、それを一時しまい込み俊治のもとへ走っていく。
衣服には四箇所も穴が開いて、そこからだくだくと血が流れ出る。失血はおびただしく既に俊治の顔は白くなりつつあった。手で押さえても止まらない。
失血の部位もどこの血管が切れているのかも解る。しかしどうしていいのかが解らない。
『俊治君……起きてよ……』
うろたえるリサの声に反応して俊治が瞼を開く。空を見る眼とは対照的に、俊治の手が動きリサの首筋を力無く捕らえた。その行為がリサを悲しくさせた。
その手を取ろうとしたけれど、リサの手をかいくぐり、俊治の手は地面に落ちていった。
自分が俊治だった事、他の能力者を嬉々として殺して回った事、そしてリサを殺そうとしている事。それらの感情や思いが俊治の中で錯綜していなければ、あるいは能力で避けられたかも知れない。しかし、現実は違った。
意識がはっきりし始めたリサの目の前で、胸から音もなく血を吹き出してリサの横たわる右側に倒れゆく俊治の姿があった。
(あ? あっああ?! 俊治君っ)
瞬時には何が起こったのか理解できないリサが俊治に手を伸ばす。その鼻の先を何かが掠めていった。リサが振り向くとヘルメット、ゴーグルを備えた、まるで機動隊を重装備にしたような人間が三人、小銃を構えて近づいていた。
命を狙っている事は想像に難くない。今日は既に何度も同じ様な経験をしていた。やられる前にやるしかない状況で、リサは怒りと恐怖の感情を爆発させた。
『待ってて』
俊治の耳に【声】を残し立ち上がった。
紅い瞳が三人を射抜く。制止の声も発せず三人はトリガーに力を込めようとした。リサは銃器の構造を知らない。射撃を止める為には人間をどうにかする必要がある。リサは三人の人差し指を第二間接からねじ切った。
いきなりの激痛に屈強な男達の悲鳴が辺りに響く。それでも小銃を落とさず、痛みに震える手から反対の手に持ち替え狙いをつけた。しかし、それだけの時間があればリサには十分だった。扇型に広がった左右の男達の心臓を破裂されるイメージを作る。と、ばったりと倒れていく。
ゴーグル越しの表情はよく解らなかったが、動揺しているようにリサには思えた。改めて照準が向けられた時、リサは対峙する男の両肘と両膝を捻った。絶叫が耳に痛かったけれど、自分の行為が残酷だとは思わなかった。人を殺そうと思っていたのだ。自分にもそれが起こる可能性があることも認識している筈だ。
ひくひくと痙攣している男のもとへ駆け寄ると胸元を掴んで【声】を使う。
『高野は?! どこに行った!』
「……高野? そんなヤツは知らん」
てっきり高野の伏兵かと思っていた。高野の居所を知っている筈だと思い一人残したのだ。しかし高野の手の者でないならなぜ、どうして自分が狙われなければならないのか。
『誰? 誰が狙ってるんだよ? なんで?』
力一杯身体を揺らすが、男は痛みの冷や汗を流しながらニヤニヤとするばかりだ。このままでは無駄な時間だけが過ぎていく。業を煮やしたリサは、いつか読んだマンガのように人の思考を読もうと意識を集中させた。
色々なイメージがリサの心に入ってきた。古そうな思考は欠けが目立ち、新しそうなものは鮮明に残っている。最も鮮明な思考とイメージに、リサと高野の顔写真があった。そして、ここに向かう直前に出てきた建物のイメージ。
(建物……字が……えぇ? なんで?)
リサでもそれが政府関係の機関だと解る。しかし狙われる理由が解らなかった。真理が父親のコネクションを通して話をつけているものとばかり思っていたし、数ヶ月間も放って置かれて今更の感も否めない。
『政府機関の人がなんで……』
「――俺の思考を読んだのか?! 化け物が」
当然の疑問を投げかけると、男はさも嫌そうな顔をして舌打ちをした。そして見る間に口から大量の血を吐き出しながら動かなくなってしまった。
(あっ?!)
リサにも男が自害した事は解った。たくさんの疑問が沸き上がってくるが、それを一時しまい込み俊治のもとへ走っていく。
衣服には四箇所も穴が開いて、そこからだくだくと血が流れ出る。失血はおびただしく既に俊治の顔は白くなりつつあった。手で押さえても止まらない。
失血の部位もどこの血管が切れているのかも解る。しかしどうしていいのかが解らない。
『俊治君……起きてよ……』
うろたえるリサの声に反応して俊治が瞼を開く。空を見る眼とは対照的に、俊治の手が動きリサの首筋を力無く捕らえた。その行為がリサを悲しくさせた。
その手を取ろうとしたけれど、リサの手をかいくぐり、俊治の手は地面に落ちていった。
投稿TS小説第141番 Blood Line (68)(21禁)
リサへの攻撃は再び飛礫を含んでくる。避けながら自分も攻撃したいところだけれど、高野の話も気になっていた。そこへ高野の声が再度響いた。
『0106号、君を必死になって助けようとしたヤツの脳だけが生きていたとしたら?』
リサを助けようとした人物など、その人生の中で片手で数えられる程だ。ましてや必死になるなど一人だけ―俊治しかいない。しかし彼はリサの目の前で殴り殺された。確かに心臓が止まったと聞いた。リサには高野の一連の発言自体が、リサの隙を作る方便だと思えた。
『嘘つき野郎! 俊治君はお前が殺したんじゃないか!』
激しい憎悪がリサに沸き上がった。能力による攻撃は、飛礫と違って目に見えない。しかし今のリサには「来る」事が解り始めていた。目を凝らせば身体に秘められた能力の渦が視覚化されはっきりと見える。さっき初めて見え、ここに来るまで見えなかったと言うのに。0124号から出る黒い渦はリサの身体の各部位に巻き付いてくる。その巻き付いた所が攻撃されている。
目に見えないからやっかいなだけで、見えるなら後手に回らず防ぐ事も簡単な話だった。
『私の力を低く見ないで欲しいね。君が傑作ならもう一人もそうだ。目の前にいるだろう?』
目の前の女は俊治とは似ても似つかない。しかしリサ自身が男の脳を女の身体に移植された存在だ。それが他人にも転用されたとすれば……。
愕然とするリサの集中力が一瞬切れた。0124号が逆転を狙うには十分すぎる程の時間。そしてリサは崩れるように倒れた。
『0124、能力が拮抗しているなら腕力でねじ伏せろ!』
響き渡る高野の言葉は、0124号にどこか違和感を抱かせていた。
(目の前? わたしの事? わたしが0106号を助けた?)
頭の奥で鋭い痛みが波のように広がっていく。と同時に、0124号の心にもさざ波が立ち始めていた。しかし高野の言葉は0124号にとって絶対だ。0124号は速やかにリサの倒れた場所に駆け寄っていく。
頸動脈を圧迫され一時的に意識を失っていたリサが、0124号の足音で覚醒した。けれどその意識は未だ混沌として、目の前の女がなぜ自分の首を絞めるのか、なぜ絞められているのか、把握するのに数秒を費やした。白い顔が鬱血して真っ赤に変わっていく。
(くる…しぃ――あっ、俊治くん? ほんとに?)
0124号の手首を掴み振り解こうと力を込めるけれど、容易には放してくれない。それどころか放すまいとより一層力を込める。
本当に俊治なのか、リサはそれを確かめないではいられなかった。自分の為に犠牲になってしまった俊治に対して自責の念もあった。どうしたらその答えを得る事が出来るのか。リサは自身の疑念を0124号に直接ぶつける方法しか思い浮かばない。声は出せなくとも直接鼓膜を震わせて。
『俊治君? 俊治君なの?』
『0106号、君を必死になって助けようとしたヤツの脳だけが生きていたとしたら?』
リサを助けようとした人物など、その人生の中で片手で数えられる程だ。ましてや必死になるなど一人だけ―俊治しかいない。しかし彼はリサの目の前で殴り殺された。確かに心臓が止まったと聞いた。リサには高野の一連の発言自体が、リサの隙を作る方便だと思えた。
『嘘つき野郎! 俊治君はお前が殺したんじゃないか!』
激しい憎悪がリサに沸き上がった。能力による攻撃は、飛礫と違って目に見えない。しかし今のリサには「来る」事が解り始めていた。目を凝らせば身体に秘められた能力の渦が視覚化されはっきりと見える。さっき初めて見え、ここに来るまで見えなかったと言うのに。0124号から出る黒い渦はリサの身体の各部位に巻き付いてくる。その巻き付いた所が攻撃されている。
目に見えないからやっかいなだけで、見えるなら後手に回らず防ぐ事も簡単な話だった。
『私の力を低く見ないで欲しいね。君が傑作ならもう一人もそうだ。目の前にいるだろう?』
目の前の女は俊治とは似ても似つかない。しかしリサ自身が男の脳を女の身体に移植された存在だ。それが他人にも転用されたとすれば……。
愕然とするリサの集中力が一瞬切れた。0124号が逆転を狙うには十分すぎる程の時間。そしてリサは崩れるように倒れた。
『0124、能力が拮抗しているなら腕力でねじ伏せろ!』
響き渡る高野の言葉は、0124号にどこか違和感を抱かせていた。
(目の前? わたしの事? わたしが0106号を助けた?)
頭の奥で鋭い痛みが波のように広がっていく。と同時に、0124号の心にもさざ波が立ち始めていた。しかし高野の言葉は0124号にとって絶対だ。0124号は速やかにリサの倒れた場所に駆け寄っていく。
頸動脈を圧迫され一時的に意識を失っていたリサが、0124号の足音で覚醒した。けれどその意識は未だ混沌として、目の前の女がなぜ自分の首を絞めるのか、なぜ絞められているのか、把握するのに数秒を費やした。白い顔が鬱血して真っ赤に変わっていく。
(くる…しぃ――あっ、俊治くん? ほんとに?)
0124号の手首を掴み振り解こうと力を込めるけれど、容易には放してくれない。それどころか放すまいとより一層力を込める。
本当に俊治なのか、リサはそれを確かめないではいられなかった。自分の為に犠牲になってしまった俊治に対して自責の念もあった。どうしたらその答えを得る事が出来るのか。リサは自身の疑念を0124号に直接ぶつける方法しか思い浮かばない。声は出せなくとも直接鼓膜を震わせて。
『俊治君? 俊治君なの?』
投稿TS小説第141番 Blood Line (67)(21禁)
自分の能力に拮抗し、あまつさえ強引に無力化してしまうリサの能力に、少なからず0124号はショックを覚えていた。自分こそ高野のお気に入りである、それだけの特別な能力がある、そう思っていた。高野のリサに対する執着は、最初の移植者であり、見た目が一般人とは違う事が起因していると想像していた。
しかし、他の能力者とは違う訓練を受けている自分が、何もしていない小娘に負けているのだ。
(違う、負けた訳じゃない。問題は能力の使い方だわ)
リサの視線が高野のヘリコプターの方に向いた。それをチャンスと、0124号はリサの鳩尾目掛けて拳大の石を投げつけた。
前を見るリサの目に、飛んでくる凶器が映った。不格好に身体を捻り、避ける。
(! うわっ)
一旦安堵したリサに向かって、第二、第三の飛礫が向けられていた。同時に五つも飛んでくると避けようが無く、腕に身体に脚に傷を作って通り過ぎていく。体側を掠めるだけでなく、いずれ身体の中心に当てられてしまうのは目に見えていた。
一歩一歩近づいてくる0124号から逃れようと、リサは通りに出ようと走り出した。しかし、通りは0124号の背後にある。ほんの10メートル先が途轍もなく遠い。
壁際に追い詰められたリサの背後から、大人が一抱えできるかどうかの大石が飛んで来ていた。
押しつぶそうとする質量の塊。鼻先から「すーっ」と上がってリサの頭の上で止まった。そしていきなり落下した。
辺りに地響きが鳴り響き、それ以降は遠くでヘリコプターの音が聞こえてくるのみ。
(やった……意外とあっけない)
血の池に沈むリサを想像しながら駆け寄る。しかしそこには滴る血も無ければ、押しつぶされたリサの姿も無かった。周囲に目を配るけれど、どこにも、何も見あたらない。
(──そんな……確かにこの石の真下にしたのに……え?!)
その時、塀で隔てられた隣家から走り去る足音が0124号の耳に届いた。塀のこちらから向こう側へ瞬時に移動したとしか0124号には理解できない。しかし、0124号でさえ瞬間移動や物体すり抜けは出来ない。
しばし、呆然としていた0124号は、リサの走っていった場所へと急ぎ走り走って行った。
しかし、他の能力者とは違う訓練を受けている自分が、何もしていない小娘に負けているのだ。
(違う、負けた訳じゃない。問題は能力の使い方だわ)
リサの視線が高野のヘリコプターの方に向いた。それをチャンスと、0124号はリサの鳩尾目掛けて拳大の石を投げつけた。
前を見るリサの目に、飛んでくる凶器が映った。不格好に身体を捻り、避ける。
(! うわっ)
一旦安堵したリサに向かって、第二、第三の飛礫が向けられていた。同時に五つも飛んでくると避けようが無く、腕に身体に脚に傷を作って通り過ぎていく。体側を掠めるだけでなく、いずれ身体の中心に当てられてしまうのは目に見えていた。
一歩一歩近づいてくる0124号から逃れようと、リサは通りに出ようと走り出した。しかし、通りは0124号の背後にある。ほんの10メートル先が途轍もなく遠い。
壁際に追い詰められたリサの背後から、大人が一抱えできるかどうかの大石が飛んで来ていた。
押しつぶそうとする質量の塊。鼻先から「すーっ」と上がってリサの頭の上で止まった。そしていきなり落下した。
辺りに地響きが鳴り響き、それ以降は遠くでヘリコプターの音が聞こえてくるのみ。
(やった……意外とあっけない)
血の池に沈むリサを想像しながら駆け寄る。しかしそこには滴る血も無ければ、押しつぶされたリサの姿も無かった。周囲に目を配るけれど、どこにも、何も見あたらない。
(──そんな……確かにこの石の真下にしたのに……え?!)
その時、塀で隔てられた隣家から走り去る足音が0124号の耳に届いた。塀のこちらから向こう側へ瞬時に移動したとしか0124号には理解できない。しかし、0124号でさえ瞬間移動や物体すり抜けは出来ない。
しばし、呆然としていた0124号は、リサの走っていった場所へと急ぎ走り走って行った。
投稿TS小説第141番 Blood Line (66)(21禁)
「0124号。三十分やる。0093、0035と合流して0106をもう一度捕獲しろ。難しいなら……排除して構わん」
ヘリの待つ広場まで足早に移動する高野が、後ろを歩く0124号を振り返らず口を開いた。一度捉えた獲物が逆襲し、反対に追い込まれてしまっているようにも思える状況下で、どんな表情でそれを言っているのか0124号は気にはなった。しかし、そんな子どもじみた好奇心を敢えて押さえ込む。
「はい。時間内に最上の結果を出してきます」
抑揚の無い声で返答するとそのまま踵を返し、元来た道を戻っていった。
「井原」
「はっ、なんでしょうか」
上半身裸でサブマシンガンを構え、周辺への注意を怠らない男に声を掛けた。
「十五分したら出るぞ」
「待たないんですか」
先程まで冷静だった高野が、血走った目をして立ち止まった。
蛇に睨まれた蛙のように、井原の身体が固まる。
「……化け物同志の戦いに巻き込まれたいのか? 私さえいればいくらでも化け物を造り出せるんだ。何が不満なんだ?」
「いえ……そういう訳では……」
さも、井原の考えは解らないとばかりに首を振りながら歩き始めた高野。それを井原は数歩遅れて歩き出し、前に出た。
(こりゃ、気を付けないと俺も……)
高野の組織が崩壊した訳ではないが、持てる才能と技術を駆使し創り出した暗殺道具が、こうも簡単に駆逐されてしまう様を見て、井原は次回の契約更改をしない決意をしていた。尤も、仮にも恋人と称していた真理を自らの手であっさり射殺した高野だ、期限前に井原を切る事も考えられる。高野の護りに集中しながらも、背中に嫌な汗が流れる井原だった。
ヘリの待つ広場まで足早に移動する高野が、後ろを歩く0124号を振り返らず口を開いた。一度捉えた獲物が逆襲し、反対に追い込まれてしまっているようにも思える状況下で、どんな表情でそれを言っているのか0124号は気にはなった。しかし、そんな子どもじみた好奇心を敢えて押さえ込む。
「はい。時間内に最上の結果を出してきます」
抑揚の無い声で返答するとそのまま踵を返し、元来た道を戻っていった。
「井原」
「はっ、なんでしょうか」
上半身裸でサブマシンガンを構え、周辺への注意を怠らない男に声を掛けた。
「十五分したら出るぞ」
「待たないんですか」
先程まで冷静だった高野が、血走った目をして立ち止まった。
蛇に睨まれた蛙のように、井原の身体が固まる。
「……化け物同志の戦いに巻き込まれたいのか? 私さえいればいくらでも化け物を造り出せるんだ。何が不満なんだ?」
「いえ……そういう訳では……」
さも、井原の考えは解らないとばかりに首を振りながら歩き始めた高野。それを井原は数歩遅れて歩き出し、前に出た。
(こりゃ、気を付けないと俺も……)
高野の組織が崩壊した訳ではないが、持てる才能と技術を駆使し創り出した暗殺道具が、こうも簡単に駆逐されてしまう様を見て、井原は次回の契約更改をしない決意をしていた。尤も、仮にも恋人と称していた真理を自らの手であっさり射殺した高野だ、期限前に井原を切る事も考えられる。高野の護りに集中しながらも、背中に嫌な汗が流れる井原だった。
投稿TS小説第141番 Blood Line (65)(21禁)
廊下の角や物陰には細心の注意を払わなくてはいけない。その鉄則を忘れていた0035号は、曲がった直ぐそこに蹲る人影が見えなかった。蹴躓いて蹌踉けた時、0035号は胸を押さえた。
「あ? なん、で?」
「どうし――あっ、お前!」
引きつるような違和感に0035号が胸を拳で叩く。けれどそれは何も解決できなかった。背後から足下にいる銀髪を見つけた0093号が叫ぶ。
白と銀の奥に光る紅い瞳が二人を睨み上げる。0035号の身体の中で、それまで動き続けていた心臓が止まった。倒れ込んでくる0035号の身体を避け、リサは下がりながら立ち上がった。直後に首が絞め付けられる。
(うぐぅ……苦し、ううううっ)
首を絞める見えない手を、リサの手が払おうと動く。けれどその動きは空しくも用を為さない。廊下の角には憎々しげに睨んでくる0093号の姿があった。
「答えなさい。ワタシ達に会う前に会ったのはどうした」
ゆっくりとリサに近づく0093号。リサはそれに答えず再び蹲った。
「――捕らえるなんてヌルイ。この手で殺してあ、ぎゃ?!」
リサの首をねじ切ろうと力を強めた瞬間、0093号は小さな叫びを上げ耳を押さえた。リサが鹿島にやったように鼓膜を破ったのだ。突然の痛みに0093号の首を絞める能力が消え去り、リサは喉を押さえて激しく咳き込んだ。
「あ? なん、で?」
「どうし――あっ、お前!」
引きつるような違和感に0035号が胸を拳で叩く。けれどそれは何も解決できなかった。背後から足下にいる銀髪を見つけた0093号が叫ぶ。
白と銀の奥に光る紅い瞳が二人を睨み上げる。0035号の身体の中で、それまで動き続けていた心臓が止まった。倒れ込んでくる0035号の身体を避け、リサは下がりながら立ち上がった。直後に首が絞め付けられる。
(うぐぅ……苦し、ううううっ)
首を絞める見えない手を、リサの手が払おうと動く。けれどその動きは空しくも用を為さない。廊下の角には憎々しげに睨んでくる0093号の姿があった。
「答えなさい。ワタシ達に会う前に会ったのはどうした」
ゆっくりとリサに近づく0093号。リサはそれに答えず再び蹲った。
「――捕らえるなんてヌルイ。この手で殺してあ、ぎゃ?!」
リサの首をねじ切ろうと力を強めた瞬間、0093号は小さな叫びを上げ耳を押さえた。リサが鹿島にやったように鼓膜を破ったのだ。突然の痛みに0093号の首を絞める能力が消え去り、リサは喉を押さえて激しく咳き込んだ。
投稿TS小説第141番 Blood Line (64)(21禁)
* * * 覚醒 * * * * *
(真理、さん? 真理さんが……あああああああっうわああああああああああああああ!)
目の前で打ち抜かれた真理の姿に、一瞬何が起こったのか解らなかった。昨日も貴子が目の前で血を流して死んでいった。今日もまた、大事な人の命が奪われていった。リサを強制的に男から女へ換え、陵辱の限りをつくし人間の尊厳などお構いなしな高野の手で。それもこれまでで最も深く心を寄せていた真理の命が。
能力が使えたとしても助けられなかったかも知れない。しかしおめおめと指を銜えて見ているような、手も足も出せないと言うことは無かった筈だと感じ、リサは自責の念と高野への憎悪で感情が一気に爆発した。
全身に溜まった能力の黒い渦。それが身体の内側から外側へ出ようと暴れまくる。それがリサに激しい痛みを与えていた。静かに髪を掻きむしりながら転げ回る様子に、周囲の男達も驚き声も上げずにそれを見ているしか無かった。
(ぐぅうあああっ、無くなれっ消えちゃええええ!)
不意にリサの身体は苦痛から開放されていた。掻き乱した髪を持つ手の中に小さな装置が握られていたけれど、周囲の人間には解らない。蹲ったリサに、さっきまでリサを後ろから犯していた佐久間が側にやってきた。
「なんだ突然狂いやがって――う、ぎゃああああ!」
リサの銀髪を掴み、顔を上げさせた佐久間が叫び声を上げていた。掴んだ右腕の肘を基点として一瞬の内に捻ってしまった。何が起こったのかも解らず、ただ佐久間の叫び声だけしか聞こえなかった他の面々は、不思議そうな顔でその姿を見ていた。しかし、ぶちぶちと筋が切れる音と、佐久間の止まない叫びに、井原が異変を悟った。
「垣内っ渡辺っ0106を拘束しろ! 所長はこちらへっ」
高野以外の男は全員が裸だ。それは武器が手近に無いという事と、急所が容易に解る事を意味していた。リサは情け容赦なく佐久間と垣内と渡辺の股間を捻り潰す。それは鹿島にしたような若干の遠慮もなく、擦り潰すように。悶絶して動かなくなった三人を後目にリサはドアの外に消えた高野を追う。
西岡と時田が散らばった衣服から銃を取りリサに向ける。しかし、トリガーを引く筈の指をイメージしただけで引き千切ってしまった。室内に二人の叫びが少し響いたが、それも直ぐに止んでしまった。
憎悪に燃えたリサの能力は、それまで以上に強く、そしてその能力を自身の手の中でコントロールしていた。
(真理、さん? 真理さんが……あああああああっうわああああああああああああああ!)
目の前で打ち抜かれた真理の姿に、一瞬何が起こったのか解らなかった。昨日も貴子が目の前で血を流して死んでいった。今日もまた、大事な人の命が奪われていった。リサを強制的に男から女へ換え、陵辱の限りをつくし人間の尊厳などお構いなしな高野の手で。それもこれまでで最も深く心を寄せていた真理の命が。
能力が使えたとしても助けられなかったかも知れない。しかしおめおめと指を銜えて見ているような、手も足も出せないと言うことは無かった筈だと感じ、リサは自責の念と高野への憎悪で感情が一気に爆発した。
全身に溜まった能力の黒い渦。それが身体の内側から外側へ出ようと暴れまくる。それがリサに激しい痛みを与えていた。静かに髪を掻きむしりながら転げ回る様子に、周囲の男達も驚き声も上げずにそれを見ているしか無かった。
(ぐぅうあああっ、無くなれっ消えちゃええええ!)
不意にリサの身体は苦痛から開放されていた。掻き乱した髪を持つ手の中に小さな装置が握られていたけれど、周囲の人間には解らない。蹲ったリサに、さっきまでリサを後ろから犯していた佐久間が側にやってきた。
「なんだ突然狂いやがって――う、ぎゃああああ!」
リサの銀髪を掴み、顔を上げさせた佐久間が叫び声を上げていた。掴んだ右腕の肘を基点として一瞬の内に捻ってしまった。何が起こったのかも解らず、ただ佐久間の叫び声だけしか聞こえなかった他の面々は、不思議そうな顔でその姿を見ていた。しかし、ぶちぶちと筋が切れる音と、佐久間の止まない叫びに、井原が異変を悟った。
「垣内っ渡辺っ0106を拘束しろ! 所長はこちらへっ」
高野以外の男は全員が裸だ。それは武器が手近に無いという事と、急所が容易に解る事を意味していた。リサは情け容赦なく佐久間と垣内と渡辺の股間を捻り潰す。それは鹿島にしたような若干の遠慮もなく、擦り潰すように。悶絶して動かなくなった三人を後目にリサはドアの外に消えた高野を追う。
西岡と時田が散らばった衣服から銃を取りリサに向ける。しかし、トリガーを引く筈の指をイメージしただけで引き千切ってしまった。室内に二人の叫びが少し響いたが、それも直ぐに止んでしまった。
憎悪に燃えたリサの能力は、それまで以上に強く、そしてその能力を自身の手の中でコントロールしていた。
投稿TS小説第141番 Blood Line (63)(21禁)
固く屹立した垣内の分身の先端が、粘液を滴らせたリサの淫口を上下に弄ぶ。先走りと愛液が混じりあうと、それを肉粒へ擦りつけていく。薄いグリーンのショーツから覗く快楽の門は熟れきって真っ赤になっていた。
(はぁっやっ、くっうぅぅ)
一端離れたと思った途端、一気に肉柱がリサの身体に埋まっていった。久しぶりのその感触に、快楽を司る神経はリサに歓喜を伝えてしまう。
「おっおおっ。こいつは、イイ。柔らかく締め付ける割りには……具合が抜群だな」
リサの腰を持ちながら、垣内は自らの股間をピッタリと押しつけていた。ねじ込んだまま腰を上下左右に揺さぶると、膣壁の色々な部位に当たり亀頭への刺激がまた違ったものとなった。我慢しきれなくなったのかリサが腰を引こうとすると、垣内はピストン運動へと腰の動きを変えた。(あぉっひぃ、や、はぁ)
「――そ、そんなにいいんすか?」
年若い渡辺が結合部へと視線を移しながら声を上げた。ショーツは穿かせたままの為に、そこからぬらぬらと光る肉筒が出入りする様は異様に見えた。しかし、それが新たな獣欲を男達に呼び覚ましていく。
「あ、とで、味わえ」
次第に息が荒く、腰の動きを速くしていく垣内。抜けそうな程引き抜き、勢いよく肉杭をリサの襞穴へたたき込んでいく。ぶるぶると揺れる乳房を西岡と渡辺が握っていた。リサは何も抗う事が出来ず、ただ為すがままに鹿島に開発された身体を提供していた。
「うひっ早くヤリテー」
「うっおっイクッ」
渡辺がズボンの上から怒張を握りしめた時、垣内が軽く呻き、身体を痙攣させていた。
(うっああン……中で……)
能力を封じられ、女の身体に閉じ込められた男の心は、陵辱され、汚された女のように泣いていた。
「向こうは始めちまいましたよ」
佐久間が物欲しそうに呟くが、井原は無言で真理の亀裂に指を沈めていた。指先で包皮を剥き上げクリトリスの周りに薬剤を塗り込むと、じりじりとソコが熱くなっていく。浅く早い吐息は熱を帯び、徐々に身体全体が紅潮し始めていた。
(んんん、あ、つい……見ないで、ああ、いやぁ、?! はうぅ!)
熱く感じた肉芽が充血しだし、その体積を増してくるのを認めた井原は、薬剤を膣口に塗り込んでいく。ほんの少し、身体の奥から沁みだした粘液が、淫欲の口に出かかっていた。それを見透かされたように男の指は薬剤と粘液のカクテルを膣奥深くに浸透させてるべく、抜き差しされた。
(あ? あ、あぁ、やだっ溢れる、いやっそんなにしないで! 感じ、過ぎっひぁん)
薬剤の効果は急激に現れた。抜き差しされる中指は今や大量の粘液を真理の身体から掻き出した。指が往復し襞の一枚一枚を擦る度に峻烈な陶酔感に見舞われてしまう。たらたらと流れる愛液が尻まで達したけれど、普段なら気持ち悪い筈のそれも気にならなくなっていた。男の指がクリトリスまで嬲り始めるに至り、真理の性感は極限まで持ち上げられた。
(うっぐう! いやっいやっ、これ以上しないでっ! ひっいっくっイッちゃうっイッちゃうっ、ふぁああああ!)
見られているとか無理矢理だとか、そんな事は薬剤でトンでしまった真理の頭には残っていなかった。ただ、その愉悦にしがみついてしまっていた。押さえつけられた拘束された腕を力一杯引き、股間をいたぶる井原の身体を腿で締め付けていた。絶頂に達した瞬間、びくびくと腹を中心に身体を震わせ、井原の指をリズミカルに締め付けた。
「――おい、こっちは一回イかせたぞ」
ゆっくりと力が抜けていく真理の身体と恥口。井原はそこから指を抜くと、愛液が滴る指をしゃぶりながら、誇らしげに垣内達の方を向いていた。
「井原さん、早くやって下さいよ。こっちも辛抱たまらんです」
目一杯固くなった一物を扱きながら時田が催促する。井原はそれを敢えて無視し、真理の両足を自分の肩に担ぎ、涎を垂らした秘口に分身を当てた。
(……ん、あ? ! イヤっ放してっ)
くぐもった叫びを上げる真理が死力を尽くして暴れまくる。けれど、屈曲させられた身体では殆ど何も出来ない。
「おら、先生、入ってくぞ――お、結構いい壺してるじゃないか」
(あああっ、いやあぁ……)
少しづつ入っていく剛直が真理の間隙を突いていく。レイプを防げなかった絶望感と、クスリによる喜悦が真理の思考をぐちゃぐちゃにさせていた。少しでも気を緩めると自分の肉欲に心が支配されてしまいそうだった。
「全部入ったなあ。犯されてるってのにきゅうきゅう締め付けて。医者はスケベだって言うが女医もそうなんだな」
(う、違うっ。あたしは、そんなんじゃ、ひぃっ、きゃう!)
井原は体重を真理の足に預け、膝が肩口に着くまで上げさせた。それまで以上にぐっと挿入され内蔵まで押しだされてしまいそうに感じてしまう。しかしその苦しさも甘美な快楽へと変換され、真理は目を瞑ってそれを否定するように首を振った。
ぬちゃぬちゃと室内に音が響く度に、真理の身体は新たな高みへと持ち上げられてしまう。いつの間にか押さえつけられていた腕が自由になって、無意識の内に手首で拘束された腕の中に井原の首を抱え込んでいた。
(んーっ、もっだめっイヤっまたっ)
「いいねぇ先生。いい道具持ってるよ。あんた、イキそうだろ。俺ももう限界だ――」
愛液が泡になって滴り落ちる真理の穴に突き込んでいく井原。その言葉は生で中出しされるという事だと反応した真理だったが、身体を離す事も叶わなかった。
「くッおぉぉ」
(ふあっ! いクゥううう!)
牡の雄叫びが耳元で聞こえた途端、真理は体内に吐き出された白濁液の熱さを感じていた。と、同時に自らも二度目の絶頂へと導かれていた。
「ふぅ……出た出た。これで二回イッタと。おう、交代だ」
井原は満足そうな笑顔で真理の上から離れながら、イッた回数が解るように乳房に「正」の字のうち「T」をマジックで書いた。放心状態の真理は、だらしなく足を開いたまま時折ビクビクと痙攣を起こしていた。その度に襞穴がひくひくと蠢き、中から真理と井原のカクテルがトロッと溢れ床に溜まり始めた。
「待ってました。先生、まだまだへばるのは早いぜ」
佐久間は入れ替わりに真理の上に乗り、そのまま肉棒を突っ込んでいく。真理の肉体はそれを喜ぶようにキュッと侵入者を締め付けたが、心はそれをよしとした訳では無い。レイプなのに何度もイカされ、あまつさえその回数を男達の娯楽のようにされている。快感を感じながらも真理は涙に歪んだ視線を天井の一点に集めていた。
それから丸一日、真理もリサも六人の男達の欲望の捌け口となった。入れ替わり立ち替わり、休む間もなく犯され続ける。真理は井原、佐久間、時田に、リサは垣内、西岡、渡辺に蹂躙された。そこに人権などは無く、ただ男達が射精する為だけの穴としか扱われない。ある意味、リサが「能力開発」と称して陵辱されたよりも悲惨な状況だった。二人の乳房には「正」の字が重なって書かれいくつ書いてあるのか解らなくなっていた。
途中、イッた回数が解らなくなると、その余興にも飽きたのか「肉穴」を取り替えた。それぞれが口々に具合の評価をしあい、卑猥な言葉で二人に告げていく。身体ばかりか心さえも犯すように。
最初リサは媚薬を使われなかったが、三時間もすると粘膜が痛み始めると濡れ具合も悪くなり、結局リサも真理もクスリで狂わされていた。それでも二人とも口での奉仕や尻への挿入は拒否していた。 ただそれも、拳銃を額に押しつけられ今にも引き金を引かれそうになれば従う他無く、口も尻も、使える所は全て使わされてしまっていた。
そして夜が明けた。
「はあ〜……流石に疲れましたね」
足を投げ出し手を後ろにつき、煙草を銜えた垣内が、リサを後ろから犯している佐久間と真理を座位で貫く渡辺を見ながら井原に尋ねた。
「そうだな。まぁ、商売女でもここまでできないからな。作戦も楽だったし、ある程度満足だろ、みんな」
時田と西岡は満足そうな顔で仮眠を取っていた。井原がもう一度口を開こうとした時、ドアが開いた。
「――うん? 随分と派手にやってるなぁ」
「あ、所長」
ドアから顔を覗かせたのは紛れもなく高野だった。貫かれ霰もない姿を見せる二人に彼は冷たい視線を送った。
聞き慣れた声に真理の意識が覚醒する。
「まもる、さん? んぐっ」
「やぁ、真理。楽しんでるかい?」
高野は真理の方を見る訳でも無く、井原の座る所へ行き何事か話ながら答えた。
何かを期待していた訳では無かったけれど、真理は高野の生きている姿を見て少しだけ心の澱が澄んだ気がした。ただそれは愛情が残っているという事では無く、知っている人が生きていた事の安堵だと真理は思おうとしていた。
「おっ先生締め方変わった……イクっ」
渡辺が何度目か解らない白濁液を真理の体内へ放出した。それに構わず、真理は渡辺の身体から降りた。疲労困憊の身体に鞭打ち、真理は縛られた手を使って高野の側へと這いずっていく。足腰は乱暴に扱われた事で力が入らない。媚薬で愛液が垂れ流し状態になって、同時に膣内に溜まった精液も床にしみていた。
「守さん、あなた、何をしてるか解ってるの? 人を、能力者を、殺して、一体、どうして? なんで?」
叫ぶ真理の声に、リサは虚ろな顔を上げてその様子を見ていた。
「人を生かす事が医師でしょう? あなたはそれを願っていたんじゃないの? こんな、殺戮行為は許される事じゃないわ」
高野の足元にまで真理が来ると、そのままズボンの裾を掴み、高野を揺すった。しかし反応が無いと見るや、真理はズボンを手がかりに立ち上がろうとしていた。
(真理さん……)
真理の悲痛な心の叫びは、リサを悲しみで包んでしまう。気にしていないようでも、真理の高野への好意は消えていなかったのだから。高野が真理の問いかけに答えないのは、高野もまた真理への気持ちが残っているのだと、リサは考えた。憎むべき高野と仄かな憧れと好意の対象である真理。その二人のやり取りに、リサは目を奪われていた。
「天才なのは知ってる。でも、こんな事にあなたの知力をつぎ込むなんて愚か過ぎる! 事の大きさが解ってないタダのバカな犯罪者に成り下がってるのよ?! 今からでも間に合うわ、お父様に言っ」
乾いた轟音が室内に響いた。そこにいる誰もが二人の結末がこうなるとは思ってもいなかった。高野は振り向き様、ポケットから小型の拳銃を取り出すと真理の眉間に当て無表情に引き金を引いていた。真理の眉間と後頭部から栓を抜いたように鮮血が流れ出た。
「うるさいな。長谷川氏を殺した今、真理、お前は用済みなんだよ」
何事も無かったように銃をポケットへ仕舞う高野。その場の誰にも戦慄が走っていた。
<つづきはこちら>
(はぁっやっ、くっうぅぅ)
一端離れたと思った途端、一気に肉柱がリサの身体に埋まっていった。久しぶりのその感触に、快楽を司る神経はリサに歓喜を伝えてしまう。
「おっおおっ。こいつは、イイ。柔らかく締め付ける割りには……具合が抜群だな」
リサの腰を持ちながら、垣内は自らの股間をピッタリと押しつけていた。ねじ込んだまま腰を上下左右に揺さぶると、膣壁の色々な部位に当たり亀頭への刺激がまた違ったものとなった。我慢しきれなくなったのかリサが腰を引こうとすると、垣内はピストン運動へと腰の動きを変えた。(あぉっひぃ、や、はぁ)
「――そ、そんなにいいんすか?」
年若い渡辺が結合部へと視線を移しながら声を上げた。ショーツは穿かせたままの為に、そこからぬらぬらと光る肉筒が出入りする様は異様に見えた。しかし、それが新たな獣欲を男達に呼び覚ましていく。
「あ、とで、味わえ」
次第に息が荒く、腰の動きを速くしていく垣内。抜けそうな程引き抜き、勢いよく肉杭をリサの襞穴へたたき込んでいく。ぶるぶると揺れる乳房を西岡と渡辺が握っていた。リサは何も抗う事が出来ず、ただ為すがままに鹿島に開発された身体を提供していた。
「うひっ早くヤリテー」
「うっおっイクッ」
渡辺がズボンの上から怒張を握りしめた時、垣内が軽く呻き、身体を痙攣させていた。
(うっああン……中で……)
能力を封じられ、女の身体に閉じ込められた男の心は、陵辱され、汚された女のように泣いていた。
「向こうは始めちまいましたよ」
佐久間が物欲しそうに呟くが、井原は無言で真理の亀裂に指を沈めていた。指先で包皮を剥き上げクリトリスの周りに薬剤を塗り込むと、じりじりとソコが熱くなっていく。浅く早い吐息は熱を帯び、徐々に身体全体が紅潮し始めていた。
(んんん、あ、つい……見ないで、ああ、いやぁ、?! はうぅ!)
熱く感じた肉芽が充血しだし、その体積を増してくるのを認めた井原は、薬剤を膣口に塗り込んでいく。ほんの少し、身体の奥から沁みだした粘液が、淫欲の口に出かかっていた。それを見透かされたように男の指は薬剤と粘液のカクテルを膣奥深くに浸透させてるべく、抜き差しされた。
(あ? あ、あぁ、やだっ溢れる、いやっそんなにしないで! 感じ、過ぎっひぁん)
薬剤の効果は急激に現れた。抜き差しされる中指は今や大量の粘液を真理の身体から掻き出した。指が往復し襞の一枚一枚を擦る度に峻烈な陶酔感に見舞われてしまう。たらたらと流れる愛液が尻まで達したけれど、普段なら気持ち悪い筈のそれも気にならなくなっていた。男の指がクリトリスまで嬲り始めるに至り、真理の性感は極限まで持ち上げられた。
(うっぐう! いやっいやっ、これ以上しないでっ! ひっいっくっイッちゃうっイッちゃうっ、ふぁああああ!)
見られているとか無理矢理だとか、そんな事は薬剤でトンでしまった真理の頭には残っていなかった。ただ、その愉悦にしがみついてしまっていた。押さえつけられた拘束された腕を力一杯引き、股間をいたぶる井原の身体を腿で締め付けていた。絶頂に達した瞬間、びくびくと腹を中心に身体を震わせ、井原の指をリズミカルに締め付けた。
「――おい、こっちは一回イかせたぞ」
ゆっくりと力が抜けていく真理の身体と恥口。井原はそこから指を抜くと、愛液が滴る指をしゃぶりながら、誇らしげに垣内達の方を向いていた。
「井原さん、早くやって下さいよ。こっちも辛抱たまらんです」
目一杯固くなった一物を扱きながら時田が催促する。井原はそれを敢えて無視し、真理の両足を自分の肩に担ぎ、涎を垂らした秘口に分身を当てた。
(……ん、あ? ! イヤっ放してっ)
くぐもった叫びを上げる真理が死力を尽くして暴れまくる。けれど、屈曲させられた身体では殆ど何も出来ない。
「おら、先生、入ってくぞ――お、結構いい壺してるじゃないか」
(あああっ、いやあぁ……)
少しづつ入っていく剛直が真理の間隙を突いていく。レイプを防げなかった絶望感と、クスリによる喜悦が真理の思考をぐちゃぐちゃにさせていた。少しでも気を緩めると自分の肉欲に心が支配されてしまいそうだった。
「全部入ったなあ。犯されてるってのにきゅうきゅう締め付けて。医者はスケベだって言うが女医もそうなんだな」
(う、違うっ。あたしは、そんなんじゃ、ひぃっ、きゃう!)
井原は体重を真理の足に預け、膝が肩口に着くまで上げさせた。それまで以上にぐっと挿入され内蔵まで押しだされてしまいそうに感じてしまう。しかしその苦しさも甘美な快楽へと変換され、真理は目を瞑ってそれを否定するように首を振った。
ぬちゃぬちゃと室内に音が響く度に、真理の身体は新たな高みへと持ち上げられてしまう。いつの間にか押さえつけられていた腕が自由になって、無意識の内に手首で拘束された腕の中に井原の首を抱え込んでいた。
(んーっ、もっだめっイヤっまたっ)
「いいねぇ先生。いい道具持ってるよ。あんた、イキそうだろ。俺ももう限界だ――」
愛液が泡になって滴り落ちる真理の穴に突き込んでいく井原。その言葉は生で中出しされるという事だと反応した真理だったが、身体を離す事も叶わなかった。
「くッおぉぉ」
(ふあっ! いクゥううう!)
牡の雄叫びが耳元で聞こえた途端、真理は体内に吐き出された白濁液の熱さを感じていた。と、同時に自らも二度目の絶頂へと導かれていた。
「ふぅ……出た出た。これで二回イッタと。おう、交代だ」
井原は満足そうな笑顔で真理の上から離れながら、イッた回数が解るように乳房に「正」の字のうち「T」をマジックで書いた。放心状態の真理は、だらしなく足を開いたまま時折ビクビクと痙攣を起こしていた。その度に襞穴がひくひくと蠢き、中から真理と井原のカクテルがトロッと溢れ床に溜まり始めた。
「待ってました。先生、まだまだへばるのは早いぜ」
佐久間は入れ替わりに真理の上に乗り、そのまま肉棒を突っ込んでいく。真理の肉体はそれを喜ぶようにキュッと侵入者を締め付けたが、心はそれをよしとした訳では無い。レイプなのに何度もイカされ、あまつさえその回数を男達の娯楽のようにされている。快感を感じながらも真理は涙に歪んだ視線を天井の一点に集めていた。
それから丸一日、真理もリサも六人の男達の欲望の捌け口となった。入れ替わり立ち替わり、休む間もなく犯され続ける。真理は井原、佐久間、時田に、リサは垣内、西岡、渡辺に蹂躙された。そこに人権などは無く、ただ男達が射精する為だけの穴としか扱われない。ある意味、リサが「能力開発」と称して陵辱されたよりも悲惨な状況だった。二人の乳房には「正」の字が重なって書かれいくつ書いてあるのか解らなくなっていた。
途中、イッた回数が解らなくなると、その余興にも飽きたのか「肉穴」を取り替えた。それぞれが口々に具合の評価をしあい、卑猥な言葉で二人に告げていく。身体ばかりか心さえも犯すように。
最初リサは媚薬を使われなかったが、三時間もすると粘膜が痛み始めると濡れ具合も悪くなり、結局リサも真理もクスリで狂わされていた。それでも二人とも口での奉仕や尻への挿入は拒否していた。 ただそれも、拳銃を額に押しつけられ今にも引き金を引かれそうになれば従う他無く、口も尻も、使える所は全て使わされてしまっていた。
そして夜が明けた。
「はあ〜……流石に疲れましたね」
足を投げ出し手を後ろにつき、煙草を銜えた垣内が、リサを後ろから犯している佐久間と真理を座位で貫く渡辺を見ながら井原に尋ねた。
「そうだな。まぁ、商売女でもここまでできないからな。作戦も楽だったし、ある程度満足だろ、みんな」
時田と西岡は満足そうな顔で仮眠を取っていた。井原がもう一度口を開こうとした時、ドアが開いた。
「――うん? 随分と派手にやってるなぁ」
「あ、所長」
ドアから顔を覗かせたのは紛れもなく高野だった。貫かれ霰もない姿を見せる二人に彼は冷たい視線を送った。
聞き慣れた声に真理の意識が覚醒する。
「まもる、さん? んぐっ」
「やぁ、真理。楽しんでるかい?」
高野は真理の方を見る訳でも無く、井原の座る所へ行き何事か話ながら答えた。
何かを期待していた訳では無かったけれど、真理は高野の生きている姿を見て少しだけ心の澱が澄んだ気がした。ただそれは愛情が残っているという事では無く、知っている人が生きていた事の安堵だと真理は思おうとしていた。
「おっ先生締め方変わった……イクっ」
渡辺が何度目か解らない白濁液を真理の体内へ放出した。それに構わず、真理は渡辺の身体から降りた。疲労困憊の身体に鞭打ち、真理は縛られた手を使って高野の側へと這いずっていく。足腰は乱暴に扱われた事で力が入らない。媚薬で愛液が垂れ流し状態になって、同時に膣内に溜まった精液も床にしみていた。
「守さん、あなた、何をしてるか解ってるの? 人を、能力者を、殺して、一体、どうして? なんで?」
叫ぶ真理の声に、リサは虚ろな顔を上げてその様子を見ていた。
「人を生かす事が医師でしょう? あなたはそれを願っていたんじゃないの? こんな、殺戮行為は許される事じゃないわ」
高野の足元にまで真理が来ると、そのままズボンの裾を掴み、高野を揺すった。しかし反応が無いと見るや、真理はズボンを手がかりに立ち上がろうとしていた。
(真理さん……)
真理の悲痛な心の叫びは、リサを悲しみで包んでしまう。気にしていないようでも、真理の高野への好意は消えていなかったのだから。高野が真理の問いかけに答えないのは、高野もまた真理への気持ちが残っているのだと、リサは考えた。憎むべき高野と仄かな憧れと好意の対象である真理。その二人のやり取りに、リサは目を奪われていた。
「天才なのは知ってる。でも、こんな事にあなたの知力をつぎ込むなんて愚か過ぎる! 事の大きさが解ってないタダのバカな犯罪者に成り下がってるのよ?! 今からでも間に合うわ、お父様に言っ」
乾いた轟音が室内に響いた。そこにいる誰もが二人の結末がこうなるとは思ってもいなかった。高野は振り向き様、ポケットから小型の拳銃を取り出すと真理の眉間に当て無表情に引き金を引いていた。真理の眉間と後頭部から栓を抜いたように鮮血が流れ出た。
「うるさいな。長谷川氏を殺した今、真理、お前は用済みなんだよ」
何事も無かったように銃をポケットへ仕舞う高野。その場の誰にも戦慄が走っていた。
<つづきはこちら>
投稿TS小説第141番 Blood Line (62)(21禁)
* * * 虜×2 * * * * *
コンクリートで固められた四方の壁に金属製の扉。鉄筋の建物の機械室に、井原始め部隊員六名が二人の女が目覚めるのを固唾を飲んで待ちわびていた。ウェーブした髪と白衣が印象的な方は、猿轡を付けられ手首を拘束され、もう一方の白い髪と白い肌の娘には猿轡は無く、手首だけを縛られていた。
「ん……。ンん? !! う〜っ、ぅむ〜!」
目覚めた真理には状況が飲み込めていなかった。ここがどこなのかも、立ち並ぶ男達が何者なのかも解らない。気絶する前に対峙したのは冷たい目をした女だった筈。
「ぎゃうっ」
「動かず静かにしてろよ。騒いだからって何も良くなんねーぞ。かえって痛い目にあうだけだ。受け容れちゃえば、お互い気持ち良くなれる」
井原に付き従っている時田が、真理の腿を蹴り上げながらも冷静な声色で言う。その最後の内容に真理は血の気が引いていた。
(気持ちよくって、こいつら?!)
密室に縛られた女と男達。次に何が起こるのか想像に難くない。何とか逃げられないかと周囲を見回すとリサの姿が見えた。真理の呻き声で覚醒し始めたのか、瞼が重そうに動いていた。
(リサちゃんも? リサちゃんの能力が使えれば)
「ひっ? やああぁっ」
そんな思いも直ぐにかき消されてしまう。井原が真理に歩み寄り、白衣と一緒に上着を左右に引き裂いた。ブラに隠された胸が揺れながら男達の目の前に晒された。身体の前で縛られた腕で隠そうとするけれど、井原が真理に馬乗りになり腕を床に押さえつけてしまう。
(いやあ、やめてっ、放してぇ!)
くぐもった叫びははっきりとした言葉にはならず、男達の耳には届かない。届いたとしても、止める気はさらさらない。朝からの作戦で無精ひげの伸びた井原が、真理の首筋に舌を這わせる。時折ちくちくしながら、おぞましさを感じ真理は首を竦めた。胸まで降りてくると腕の扱いに困ったのか佐久間と時田を呼ぶ。
「お前らも手伝え。腕抑えてろ」
「おう、リーダーも始めたし、こっちもかかるか」
サブリーダーの垣内が目尻を下げながら真理に群がる井原を見、そして西岡と渡辺を見た。股間をがちがちに膨らませた渡辺は言うに及ばず、西岡も垣内の言葉に瞬時に反応した。
まだ覚醒していないリサの服を垣内はサバイバルナイフで一気に引き裂いてしまう。まるで昆虫が脱皮するように服を割ると、中から真っ白な裸身とピンクに色付く乳首が覗いた。後ろ手に縛られたリサの腕には構わず、垣内が上に乗るとその大きな手で感触を楽しむように揉んでいく。
(う、なに? ……だれ? あっ! やめっ触るな! ぐっあうう)
胸を愛撫される感覚に気持ち悪さを覚え、リサは目覚めていた。知らない男に身体をまさぐられ記憶が混乱していた。能力を使って何とか止めさせようとした瞬間、これまでより強烈な、身体を焼かれるような痛みが全身を貫いた。
「ああ、能力なんぞちょっとでも使ったら、速攻で痛みが走るぞ。新型のリミッターらしいからな」
新型のリミッターは、これまでのものと違い完全に能力を抑え込むのに成功している。そして同時に痛感を司る脳の部位に直接信号を送り、これまでの痛みのレベルを一と考えると数十倍の効果が得られる。それを気絶している間に高野が撃ったのだ。
垣内が話す間にも、佐久間と渡辺は微妙な刺激を乳首に与えていく。そして垣内はリサの様子を見下ろしながらショーツの上からワレメを指先で弄っていく。
コンクリートで固められた四方の壁に金属製の扉。鉄筋の建物の機械室に、井原始め部隊員六名が二人の女が目覚めるのを固唾を飲んで待ちわびていた。ウェーブした髪と白衣が印象的な方は、猿轡を付けられ手首を拘束され、もう一方の白い髪と白い肌の娘には猿轡は無く、手首だけを縛られていた。
「ん……。ンん? !! う〜っ、ぅむ〜!」
目覚めた真理には状況が飲み込めていなかった。ここがどこなのかも、立ち並ぶ男達が何者なのかも解らない。気絶する前に対峙したのは冷たい目をした女だった筈。
「ぎゃうっ」
「動かず静かにしてろよ。騒いだからって何も良くなんねーぞ。かえって痛い目にあうだけだ。受け容れちゃえば、お互い気持ち良くなれる」
井原に付き従っている時田が、真理の腿を蹴り上げながらも冷静な声色で言う。その最後の内容に真理は血の気が引いていた。
(気持ちよくって、こいつら?!)
密室に縛られた女と男達。次に何が起こるのか想像に難くない。何とか逃げられないかと周囲を見回すとリサの姿が見えた。真理の呻き声で覚醒し始めたのか、瞼が重そうに動いていた。
(リサちゃんも? リサちゃんの能力が使えれば)
「ひっ? やああぁっ」
そんな思いも直ぐにかき消されてしまう。井原が真理に歩み寄り、白衣と一緒に上着を左右に引き裂いた。ブラに隠された胸が揺れながら男達の目の前に晒された。身体の前で縛られた腕で隠そうとするけれど、井原が真理に馬乗りになり腕を床に押さえつけてしまう。
(いやあ、やめてっ、放してぇ!)
くぐもった叫びははっきりとした言葉にはならず、男達の耳には届かない。届いたとしても、止める気はさらさらない。朝からの作戦で無精ひげの伸びた井原が、真理の首筋に舌を這わせる。時折ちくちくしながら、おぞましさを感じ真理は首を竦めた。胸まで降りてくると腕の扱いに困ったのか佐久間と時田を呼ぶ。
「お前らも手伝え。腕抑えてろ」
「おう、リーダーも始めたし、こっちもかかるか」
サブリーダーの垣内が目尻を下げながら真理に群がる井原を見、そして西岡と渡辺を見た。股間をがちがちに膨らませた渡辺は言うに及ばず、西岡も垣内の言葉に瞬時に反応した。
まだ覚醒していないリサの服を垣内はサバイバルナイフで一気に引き裂いてしまう。まるで昆虫が脱皮するように服を割ると、中から真っ白な裸身とピンクに色付く乳首が覗いた。後ろ手に縛られたリサの腕には構わず、垣内が上に乗るとその大きな手で感触を楽しむように揉んでいく。
(う、なに? ……だれ? あっ! やめっ触るな! ぐっあうう)
胸を愛撫される感覚に気持ち悪さを覚え、リサは目覚めていた。知らない男に身体をまさぐられ記憶が混乱していた。能力を使って何とか止めさせようとした瞬間、これまでより強烈な、身体を焼かれるような痛みが全身を貫いた。
「ああ、能力なんぞちょっとでも使ったら、速攻で痛みが走るぞ。新型のリミッターらしいからな」
新型のリミッターは、これまでのものと違い完全に能力を抑え込むのに成功している。そして同時に痛感を司る脳の部位に直接信号を送り、これまでの痛みのレベルを一と考えると数十倍の効果が得られる。それを気絶している間に高野が撃ったのだ。
垣内が話す間にも、佐久間と渡辺は微妙な刺激を乳首に与えていく。そして垣内はリサの様子を見下ろしながらショーツの上からワレメを指先で弄っていく。
投稿TS小説第141番 Blood Line (61)(21禁)
「! 誰!? あっ」
あと二部屋を残すのみとなった時、二人の背後で扉の軋む音が聞こえた。真理が即座に振り返ると、リサの腕に銃身が当たってしまい、瞬間的に真理の指が銃を放すまいと力をいれていた。途端に耳をつんざく轟音が室内に響き開いた扉に大きな穴が二つ開いていた。
『ままま真理さん、ああぶない、です……』
離れて歩いていたら自分の身体に大穴が開いていたかと思うと、リサはへたっとその場に座り込んでいた。真理もまた、「ほーッ」と大きく溜息を吐いた。
「ご、ごめん、ね。当たんなくてよかったぁ……」
力が入りすぎて白くなった手を銃から放し、リロードする。中折れ式のショットガンから煙を吐きながらショットシェルがぽーんと放たれた。白衣のポケットから二つ弾を取り出し、込め直す。
「……ここ、もう誰もいないわね。あんなに大きな音がしたのに誰も騒がないんだから」
能力者達がいないという事実だけを収穫に、二人は建物を出ようと玄関までくると、人影が見えた。
「あ、あなた! 大丈夫だった? 一体みんな……」
真理の問にも頓着が無いとでも言うかのように、腕組みをした女が二人の前に立っていた。艶やかなショートカットの黒髪は、黒のスーツと白のブラウスに良く似合っている。これから会議にでも赴くような格好は、とても荒事をこなしてきたようには見えなかった。事実、真理もリサも、彼女が能力者であり、今し方大量殺戮を行って来たとは到底思えなかった。だからこそ、真理も声を掛けたのだが、状況から考えれば味方ではあり得ないし、真理もリサも見たこともない相手だ。
真理が言葉を飲み込みショットガンを突きつけるが、それには構わず女はリサを値踏みするように上から下までじっと見つめる。その瞳には、感情が無いように見えた。
「あなた、誰? みんなをどこにやったの?」
あと二部屋を残すのみとなった時、二人の背後で扉の軋む音が聞こえた。真理が即座に振り返ると、リサの腕に銃身が当たってしまい、瞬間的に真理の指が銃を放すまいと力をいれていた。途端に耳をつんざく轟音が室内に響き開いた扉に大きな穴が二つ開いていた。
『ままま真理さん、ああぶない、です……』
離れて歩いていたら自分の身体に大穴が開いていたかと思うと、リサはへたっとその場に座り込んでいた。真理もまた、「ほーッ」と大きく溜息を吐いた。
「ご、ごめん、ね。当たんなくてよかったぁ……」
力が入りすぎて白くなった手を銃から放し、リロードする。中折れ式のショットガンから煙を吐きながらショットシェルがぽーんと放たれた。白衣のポケットから二つ弾を取り出し、込め直す。
「……ここ、もう誰もいないわね。あんなに大きな音がしたのに誰も騒がないんだから」
能力者達がいないという事実だけを収穫に、二人は建物を出ようと玄関までくると、人影が見えた。
「あ、あなた! 大丈夫だった? 一体みんな……」
真理の問にも頓着が無いとでも言うかのように、腕組みをした女が二人の前に立っていた。艶やかなショートカットの黒髪は、黒のスーツと白のブラウスに良く似合っている。これから会議にでも赴くような格好は、とても荒事をこなしてきたようには見えなかった。事実、真理もリサも、彼女が能力者であり、今し方大量殺戮を行って来たとは到底思えなかった。だからこそ、真理も声を掛けたのだが、状況から考えれば味方ではあり得ないし、真理もリサも見たこともない相手だ。
真理が言葉を飲み込みショットガンを突きつけるが、それには構わず女はリサを値踏みするように上から下までじっと見つめる。その瞳には、感情が無いように見えた。
「あなた、誰? みんなをどこにやったの?」
投稿TS小説第141番 Blood Line (60)(21禁)
『たか、?!!』
乾いた破裂音と共に貴子の頭が膨れたように見え、次の瞬間、貴子の左頭部が無くなっていた。真っ赤な血が噴き出し、それまで貴子だったモノがリサに向かって倒れ込んできた。
言葉が頭に浮かばないリサは、声にならない叫びを上げていた。
(……あ、う、ああ、わあああああああああっ)
リサの手を真紅に染める物体を押し返し、尻餅をついていた。その拍子に下半身が生暖かく濡れてしまった。四つん這いになってそこから離れようとした。けれど、手足が上手く動かない。
(なにが? なんで? どうして? 貴子ちゃんが、頭が?!)
真理がいる家は貴子の家からごく僅かの筈なのに、なかなか近づいてこない。それが四つん這いのせいで長くかかっているのか、それとも精神的なものなのか。途中、なんでハイハイなんてしてるんだろう、と変な事を考えながら這々の体でリサは帰り着いた。
『真理さんっ真理さんっ真理さんっ! 大変っ貴子ちゃんっみんなっ! 真理さん!』
「なにっ? 一体どうしたの? ――リサちゃん、大丈夫?!」
スリッパの音を響かせながら、開業準備をしていた真理が診察室から姿を現した。銀髪が返り血を浴びて所々赤く染まり脳漿の一部が付着している。身体のそこかしこに残る血を、真理はリサの血だと勘違いしていた。
「これは……どうなってるの? 何があったの?」
駆け寄り頭や腕をチェックしながら、目まぐるしく頭を働かせる真理。
『貴子ちゃんがっ目の前で! おじさんもおばさんもおばあちゃんも、みんな倒れてて!』
「リサちゃんっ。落ち着いて。最初から話して。それからもう少し小さな【声】でお願い」
力をセーブしないで鼓膜を震わせるリサの【声】は、まるでライブ会場でスピーカーの目の前にいるかのように痛みを真理に与えていた。リサに深呼吸させ少しずつ落ち着きを取り戻させる。そして、朝から起こった事を一つづつ注意深く聞いた。
真理は無言で携帯電話を取り出し、メモリから父親の番号へと通知しようとした。けれど、携帯電話の画面には「圏外」の文字が見えた。いつもならアンテナレベルは最高だと言うのに。
(電話が通じない?! そう言えばいつも聞こえてくる人の声がしない……まさか……あの人が……)
不通となった電話。喧騒の無いいつもと違う朝。真理の頭の中でパズルのピースが組み上がっていく。いくつかは「仮説」というピースだったが。
『真理さん?』
眉根を寄せ考え込む真理に、リサが不安な表情で尋ねていた。
「リサちゃん、わたしが用意する間に顔洗ってらっしゃい。用意出来たら移動するから」
リサがどこへと問う間も無く、真理は自室に戻っていった。部屋にはガラス張りの縦長キャビネットがある。そこからのぞくいている物が、真理が「用意」する物だった。
(ああっもうっ。まどろっこしい!)
鍵束を出した手が震えて、うまく鍵が刺さらない。一度大きく息を吐き出してから鍵を入れ、捻る。キャビネットをあけると鉄と油の匂いが漂ってきた。頑丈そうなチェーンを外し、「それ」真理の愛用の猟銃、ブレイザーF3を取り出した。
ブレイザーF3はドイツ製のショットガンで縦に銃身が二つあり、各々の口径は十二ゲージ。真理のF3は銃身を一番短いものに交換しているが、それでも重量は3・6キロある。この銃の特徴はトリガーを移動させる事ができる事だった。比較的手の小さい真理は、一番手前にセットしている。一時期はよく父親と狩りに出る事もあった。
ずっしり重たい銃を取り出し、薬室を開けショットシェルが入っていないことを確認した。ショットシェルが入っている箱を開け、無造作にシェルを掴み出し白衣のポケットに詰め込んでいく。ぱんぱんに膨らんで入らなくなると、薬室に二個詰め閉じた。
用意が済み玄関に行くと、濡れた髪を後ろで纏めたリサが待ちかまえていた。
『真理さん、用意でき……それ、どうするんですか?』
「後で説明するから。今は早くここを出て生存者を捜さないと」
銃に驚くリサの手を引き、玄関から、そして出入口まで頭を低くしていった。
乾いた破裂音と共に貴子の頭が膨れたように見え、次の瞬間、貴子の左頭部が無くなっていた。真っ赤な血が噴き出し、それまで貴子だったモノがリサに向かって倒れ込んできた。
言葉が頭に浮かばないリサは、声にならない叫びを上げていた。
(……あ、う、ああ、わあああああああああっ)
リサの手を真紅に染める物体を押し返し、尻餅をついていた。その拍子に下半身が生暖かく濡れてしまった。四つん這いになってそこから離れようとした。けれど、手足が上手く動かない。
(なにが? なんで? どうして? 貴子ちゃんが、頭が?!)
真理がいる家は貴子の家からごく僅かの筈なのに、なかなか近づいてこない。それが四つん這いのせいで長くかかっているのか、それとも精神的なものなのか。途中、なんでハイハイなんてしてるんだろう、と変な事を考えながら這々の体でリサは帰り着いた。
『真理さんっ真理さんっ真理さんっ! 大変っ貴子ちゃんっみんなっ! 真理さん!』
「なにっ? 一体どうしたの? ――リサちゃん、大丈夫?!」
スリッパの音を響かせながら、開業準備をしていた真理が診察室から姿を現した。銀髪が返り血を浴びて所々赤く染まり脳漿の一部が付着している。身体のそこかしこに残る血を、真理はリサの血だと勘違いしていた。
「これは……どうなってるの? 何があったの?」
駆け寄り頭や腕をチェックしながら、目まぐるしく頭を働かせる真理。
『貴子ちゃんがっ目の前で! おじさんもおばさんもおばあちゃんも、みんな倒れてて!』
「リサちゃんっ。落ち着いて。最初から話して。それからもう少し小さな【声】でお願い」
力をセーブしないで鼓膜を震わせるリサの【声】は、まるでライブ会場でスピーカーの目の前にいるかのように痛みを真理に与えていた。リサに深呼吸させ少しずつ落ち着きを取り戻させる。そして、朝から起こった事を一つづつ注意深く聞いた。
真理は無言で携帯電話を取り出し、メモリから父親の番号へと通知しようとした。けれど、携帯電話の画面には「圏外」の文字が見えた。いつもならアンテナレベルは最高だと言うのに。
(電話が通じない?! そう言えばいつも聞こえてくる人の声がしない……まさか……あの人が……)
不通となった電話。喧騒の無いいつもと違う朝。真理の頭の中でパズルのピースが組み上がっていく。いくつかは「仮説」というピースだったが。
『真理さん?』
眉根を寄せ考え込む真理に、リサが不安な表情で尋ねていた。
「リサちゃん、わたしが用意する間に顔洗ってらっしゃい。用意出来たら移動するから」
リサがどこへと問う間も無く、真理は自室に戻っていった。部屋にはガラス張りの縦長キャビネットがある。そこからのぞくいている物が、真理が「用意」する物だった。
(ああっもうっ。まどろっこしい!)
鍵束を出した手が震えて、うまく鍵が刺さらない。一度大きく息を吐き出してから鍵を入れ、捻る。キャビネットをあけると鉄と油の匂いが漂ってきた。頑丈そうなチェーンを外し、「それ」真理の愛用の猟銃、ブレイザーF3を取り出した。
ブレイザーF3はドイツ製のショットガンで縦に銃身が二つあり、各々の口径は十二ゲージ。真理のF3は銃身を一番短いものに交換しているが、それでも重量は3・6キロある。この銃の特徴はトリガーを移動させる事ができる事だった。比較的手の小さい真理は、一番手前にセットしている。一時期はよく父親と狩りに出る事もあった。
ずっしり重たい銃を取り出し、薬室を開けショットシェルが入っていないことを確認した。ショットシェルが入っている箱を開け、無造作にシェルを掴み出し白衣のポケットに詰め込んでいく。ぱんぱんに膨らんで入らなくなると、薬室に二個詰め閉じた。
用意が済み玄関に行くと、濡れた髪を後ろで纏めたリサが待ちかまえていた。
『真理さん、用意でき……それ、どうするんですか?』
「後で説明するから。今は早くここを出て生存者を捜さないと」
銃に驚くリサの手を引き、玄関から、そして出入口まで頭を低くしていった。
投稿TS小説第141番 Blood Line (59)(21禁)
通常の生活を営んでいる時に、突然命を奪われていく島民達。夜が明ける頃には、殆どの島民の姿がその家々から消えていた。早朝から活動していた漁船も動き出さず、登校する子ども達の声も聞こえない街並み。ただ、能力者達が住まう場所以外、全てが昨日とは違った風情を見せていた。
ローターの風切り音とエンジン音を伴い、二機のヘリコプターが先発部隊が待つ島の北側に降り立った。次第に力を無くすローターの下から、高野と0124号が地上に足を付けた。一言二言言葉を交わし、0124号だけが歩いていく。
「ご苦労さまでした。これよりわたしたちが能力者の掃討に向かいます。井原さん達はバックアップをお願いします」
低めのハスキーな声が響く。全員一様にベリーショートの髪の女達。脳移植の為に頭髪を剃り上げた跡だ。その彼女達が0124号を無言のまま出迎えた。そして彼女の言に頷く。能力者部隊の8名は能力者が住む建物へと移動していった。
「垣内、西岡、渡辺、お前達は残りの島民を刈り取れ。佐久間と時田、俺とバックアップだ」
装備をいくつか外しながら井原が命令を発した。五名の隊員達もそれに倣う。
「いやー、早く終わらせてお楽しみといきましょうよ。二人っていい女なんすかね?」
「ブリーフィングで何見てたんだ? ちゃんと画像が出てたろうが。間違えて撃ち殺すんじゃねえぞ」
誰に話しているのか渡辺が軽口を叩くと、それを諫めるように西岡が横から小突いた。
「……家が分かってるから大丈夫っすよ」
リーダー他、隊員達の目線が渡辺に集中する中、何とか一言だけ返す。そして再び無言で二組に分かれると、森の中へと入って行った。
八人の女達がひっそりした道路を歩いていく。十分程行くと前方に建物が見えていた。そこから一組の男女がジャージを着て出てきた。早朝の散歩なのか、それとも他の用件なのか、暗い雰囲気の街を気にするでも無く、女達の方も見ずに歩を進めていった。
その一人が突然倒れ、もう一人が焦ったように抱きかかえているのが見えた。遠くで叫びながら辺りを見回し、0124号達をみとめると助けを求めた。七人の能力者達は、それをニヤニヤしながら見つめるだけ。ただ一人0124号だけが蔑むように目を細めると、叫び声は途絶え、やがて折り重なるように倒れていった。
「これから掃討に移ります。……はい、捕縛後、直ちに連絡を入れます」
携帯電話を取り出した0124号が高野へ連絡した。そうしている間にも、数人の能力者達が建物から出てきていたが、高野の能力者達はちらりと見るだけだった。
「予定通りに進めます。0035、0093、0103はわたしに、0071、0079、0116は0085に従って下さい。反撃出来るような能力者がいるとは思えないけれど、もしいたらPKで四肢を抑えること。これで相手はパニックになります。その間にわたしと0085が息の根を止めます。それ以外は各自で」
ローターの風切り音とエンジン音を伴い、二機のヘリコプターが先発部隊が待つ島の北側に降り立った。次第に力を無くすローターの下から、高野と0124号が地上に足を付けた。一言二言言葉を交わし、0124号だけが歩いていく。
「ご苦労さまでした。これよりわたしたちが能力者の掃討に向かいます。井原さん達はバックアップをお願いします」
低めのハスキーな声が響く。全員一様にベリーショートの髪の女達。脳移植の為に頭髪を剃り上げた跡だ。その彼女達が0124号を無言のまま出迎えた。そして彼女の言に頷く。能力者部隊の8名は能力者が住む建物へと移動していった。
「垣内、西岡、渡辺、お前達は残りの島民を刈り取れ。佐久間と時田、俺とバックアップだ」
装備をいくつか外しながら井原が命令を発した。五名の隊員達もそれに倣う。
「いやー、早く終わらせてお楽しみといきましょうよ。二人っていい女なんすかね?」
「ブリーフィングで何見てたんだ? ちゃんと画像が出てたろうが。間違えて撃ち殺すんじゃねえぞ」
誰に話しているのか渡辺が軽口を叩くと、それを諫めるように西岡が横から小突いた。
「……家が分かってるから大丈夫っすよ」
リーダー他、隊員達の目線が渡辺に集中する中、何とか一言だけ返す。そして再び無言で二組に分かれると、森の中へと入って行った。
八人の女達がひっそりした道路を歩いていく。十分程行くと前方に建物が見えていた。そこから一組の男女がジャージを着て出てきた。早朝の散歩なのか、それとも他の用件なのか、暗い雰囲気の街を気にするでも無く、女達の方も見ずに歩を進めていった。
その一人が突然倒れ、もう一人が焦ったように抱きかかえているのが見えた。遠くで叫びながら辺りを見回し、0124号達をみとめると助けを求めた。七人の能力者達は、それをニヤニヤしながら見つめるだけ。ただ一人0124号だけが蔑むように目を細めると、叫び声は途絶え、やがて折り重なるように倒れていった。
「これから掃討に移ります。……はい、捕縛後、直ちに連絡を入れます」
携帯電話を取り出した0124号が高野へ連絡した。そうしている間にも、数人の能力者達が建物から出てきていたが、高野の能力者達はちらりと見るだけだった。
「予定通りに進めます。0035、0093、0103はわたしに、0071、0079、0116は0085に従って下さい。反撃出来るような能力者がいるとは思えないけれど、もしいたらPKで四肢を抑えること。これで相手はパニックになります。その間にわたしと0085が息の根を止めます。それ以外は各自で」













