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「カレーライス」 第二章(9) <18禁>

作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ

(9)

「ねえ、君。名前は?」

 一人の男の子が私に尋ねた。私は脇に立っている男のほうを見ると、男は小さくうなずいた。

「あ、葵……です」
「葵ちゃんか。どこから来たの?」

 もう一度男のほうをちらと伺うと、男は無表情のまま私を見ていた。

「とおい、とこ……」
「ふうん……」

 次の質問をどうしようかと男の子が考え込もうとすると、それまで黙って立っていた男が言った。

「葵が君たちに教えて上げられるのは、女の体とセックスについてだけだ。葵がそれ以外のことを秘密にしたくなるのは、君たちにもわかるだろう?」
「個人的なこと以外なら、聞いても良いってことでしょうか?」

 眼鏡をかけた、少し賢そうな男の子が言った。

「そうだ。君は賢いね」
「いえ、それほどでもありません」
「よし、じゃあ君からだ。服を脱いで、ベッドの上に上がりなさい」

 言われると男の子は、顔を赤くしながら上着を脱ぎ始めた。
 ほかの生徒たちにはやし立てられながらパンツも脱ぐと、私が縛り付けられているベッドにのし上がった。
 私の目は、その男の子の股間に釘付けになった。
 かろうじて先端が覗いている、つやつやとした若茎の先端は、すでに透明な粘液を光らせていた。

「ほんとに、いいの?」

 男の子は、私の顔と脇の男の顔を交互に見た。

 (いいわけ、ないじゃない!)

 そう言いたかったけど、この期に及んで拒否しても、聞いてくれる筈もなかった。

「俺がいてはやりにくいだろうから、後は君たちの好きなようにして良いよ」

 男はそういうと、そちらを見なくても判るほど冷たい視線を私に浴びせ、部屋から出て行った。
 私の両足に手をかけていた男の子は、ほっと安心した表情をすると、私の顔を伺いながら言った。

「じゃぁ、行くね」

 男の子の緊張が移ったかのように、私も極度に緊張していた。
 いや、その緊張は部屋の全員に伝染していて、校庭からの賑やかな生徒たちの声だけが、遠く聞こえていた。
 私はゆっくりとうなずくと、男の子は捕まえていた私の足首を更に強くつかんで大きく広げ、私の中に割って入ってきた。

 私の膣は前技もまだしてもらっていないのに、肛門にねじ込まれたあの媚薬のせいで濡れて、蜜を滴らせていた。
 だから授業でやり方を学んでいた、この賢そうな男の子は、迷うことなく私の一番敏感な花びらを押し開き、自分自身の先端をあてがった。
 私はまるで処女喪失に怯える少女のように体を震わせ、ぎゅっと目を閉じた。

 『ごくり』、というつばを飲み込む音は、誰のものだかわからなかった。

 けれどその音が合図だったかのように、私はいきなり奥深くまで貫かれ、それだけでイってしまった。

 「か、はぁっ……」

 それまでの緊張のせいだろうか? それともやはりあの媚薬のせいなのだろうか?
 私は衝撃を伴ったその快感に眼を見開き、開いた口からはだらしなくよだれが垂れた。
 私への侵入を果たした男の子は、挿入されられただけで達してしまった淫女のことなどかまう余裕もなく、私の背中に手を回して、より深くまで刺し貫こうと、抽送をはじめた。

 「……っ、……kうっ、はぁっ、……んっ! はぁん……はぁっ! あぁん、 ああぁん❤ あぁん❤!」

 私の口からは、この若いオスに蹂躙されるのを悦ぶかのように、嬌声が漏れ始め、それがさらに二人の興奮を煽っていった。
 彼の“筆おろし”に要した時間は、それほど長くはなかったのかもしれない。
 けれど、挿入れられた時に直ぐに一度達していた私は、この稚拙だが激しい、貪る様なセックスの虜になっていた。
 そして頭の中に白い霧が立ち込めようとするまさにその瞬間、私の子宮口にそれまで感じたこともなかったような、熱い迸りを感じた。

 (ああぁ、射精されてる。私のナカに……)

 まるで溶けた岩がゆっくりと体の中に流れ込んでくるような、熱くて重いオルガスムスだった。
 私を犯していた眼鏡の男の子が、体力を使い果たしたかのように、ゆっくりと私から体を離すと同時に、部屋の中に他の男の子たちの声が響き渡った。

 「次、俺な!」

 余韻が冷めきっていなかった私は、乱暴に足首をつかむ体格の良さそうな男の子の性急な侵入を、無抵抗のまま許した。

sashi3.jpg

<つづく>

「カレーライス」 第二章(8) <18禁>

(8)

 狭い中に押し込まれ、揺らされながら運ばれているうちに、いつのまにか目的地に着いたみたいだった。

「ここは、どこ?」
「学校だよ」
「学校?」

 手を引かれてトランクから這い出して、丸まった姿勢のまま固まりかけていた体を伸ばしながら、私は尋ねた。
 学校って、いったい何をするんだろう?
 そう思っているうちに目隠しをされ、腕輪のはまっているほうの腕をつかまれた。

「ま、待って! 私、裸……」
「ああ、いちいちめんどくさいな。これでも巻いてろ」

 視界を遮られたまま、何かの布を渡された。これはシーツ? カーテン? それともテーブルクロスか何か?
 小さな裸を十分に隠せているのか、心もとなかったけれど、渡された薄い布を体に巻きつけると、また手を引っ張られ、歩かされた。

 見ることはできないけれど、懐かしいざわめきを耳が伝えてくる。ぺたぺたと歩く素足の裏から伝わってくるのは、いまどき珍しい木の床の感触かしら?
 聞き覚えのある、時を告げるチャイムがどこかのスピーカーから流れた。

「いいか? 俺が良いというまで、絶対にしゃべるなよ。もし、一言でも口を利いたら、その場で手足を切り落として、ダルマみたいにしてやるからな」

 恐ろしい男の言葉に身震いしながらうなずくと、引き戸を開けるガラッという音がして、手を引っ張られた。
 するとそれまで聞こえていた、たくさんの人が発するざわめきが、静かになった。

「えー、みなさん。今日の保健の授業は、特別授業になります」

 聞きなれない、若い男の声だった。同時にもっと若い男の子の声でいっぱいになった。

「ひゅーっ! 待ってました!」
「あのシーツの下ってハダカ? 早く見せてよ!」
「おれ、もう興奮してきちゃったよ!」
「先生ー。僕たち良く見えませーん」
「はい! 静かに! 後ろのほうの人はモニターで我慢するように。あとでちゃんと近くで見せてやるから」

 私はこれから自分が何をされるのかを悟り、足がすくんだ。
 叫んで逃げ出そうとしたけれど、あの男の言葉が思い出された。
 『もし、一言でもしゃべったら、その場で手足を切り落としてやるからな』
 まさか、本当にそんなことをされたりはしないとも思ったけど、後で必ず酷い目に合わされることはわかりきっていた。

「はい、では授業を始めます。よろしくお願いします」
「判りました」

 頭の上で声がすると同時に私は手を引っ張られた。この時、私は初めて自分を陵辱し続けてきた男の名を知った。

「いいか、シーツを取るぞ。手で隠したりするなよ。そのまま立っているんだ」

 言われるなり、体に巻いていたシーツが剥ぎ取られ、張り詰めるような空気に素肌が晒されるのを感じた。
 同時に生徒たちのものと思われる若い男たちの歓声が響き渡り、敏感になっていた皮膚に刺さるような視線を感じた。

「静かにしろ! お前ら! 隣の教室への迷惑も考えろ! 中止するぞ!」
「先生! 目隠しは取らないんですか〜?」
「あー? それは……どうですか?」

 私は慌てて首を振った。大勢の人に裸を晒すだけでも恥ずかしいのに、この上顔まで見られたくはなかった。

「今はちょっと……。泣き出すかもしれませんので」
「そうですか、じゃあこのままで。おい、お前ら! 始めるから、静かに見ているんだぞ」

 私は背中から抱きかかえられて、何かの上に座らされた。

 私は生きている教材だった。
 全裸に剥かれ、足を大きく広げられた格好で、椅子のようなものに拘束された。
 そして好奇心いっぱいの生徒たちの好奇の視線を肌に受けながら、私は辱められていた。

 教師と思しき声の主は、私の乳房に触れながらその特徴を説明し始めた。
 体に触れられながらの、私の乳房の講義は、今まで忘れかけていた“強制的に少女の体にさせられた恥辱”を思い出させた。
 そして、私の股間にあてがわれた指が、恥ずかしい部分を押し広げた。
 風が直接敏感な部分を撫でていく、ひんやりとする感触に、私は戸惑った。
 だが、教師が陰唇やクリトリス、尿道口、そして男性器を挿入する穴といった、女性器の細部とその役割の講義をはじめると、私は泣き出したくなってきた。
 早くこんな悪夢が終わって欲しい。それだけで頭がいっぱいだった。

 けれど、恥辱の授業はここで終わりじゃなかった。
 敏感な入り口に冷たい金属の感触を受けたかと思うと、それは奥深くまでずぶずぶと挿し込まれていった。
 そして私の最も恥ずかしい穴が、ぎりぎりと広げられていった。
 それが“クスコ”と言う道具によるものだとは後で知ったが、まるで実験動物を解剖するかのような陵辱に、私の頭は完全に混乱していた。
 胎内の奥深くにまで外の空気が侵入し、教師の言葉は私の躰の中身までも暴いていった。

 (もうやめて! これ以上私を辱めないで!)

 その声は心からの叫びとなって、陵辱者を怯ませる筈だったけれど、いつの間にか嵌められていた口枷に阻まれた。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 放課後になると、保健室と思しき部屋のベッドの手すりに、頭の上で両手をつながれた。

「今度は、何が始まるの?」
「楽しいことさ。ま、優秀な生徒たちへのご褒美ってところかな」

 私を連れてきた男は、目隠しを外しながら言った。
 窓の外の眩しさに顔をしかめながら、私は男に言った。

「セックス……させられるの?」
「ご明察。だが、お前が何者かは絶対言うんじゃないぞ。生徒たちが怯えるといけないからな」
「手を縛られて無抵抗の裸の女を、誰が怯えるっていうの?」
「元は連続強姦殺人犯の男だったなんて、年頃の少年には刺激が強すぎるからな。
 おい、君たち! 入ってきてもいいぞ」

 男はそういうと私の毛布を剥ぎ取った。

「ひょうー。本当にいいんですか?」
「うわ、結構カワイイじゃん!」
「俺、信じられないよ、あんなカワイイ子となんて!」
「ハダカだー」
「やっと近くで見れるぜ」

 がやがやと入ってくる男子生徒たち。10人ぐらい?
 その彼らから、驚きとともに『結構かわいいじゃん』などと言われるのは、複雑だった。
 大人の男で犯罪者だった私は、今は彼らと同世代か、もしくはそれよりも年下の少女にしか見えない。

 このままでは、間違いなく彼らに“輪姦”される。
 そう思った私は、信じられないという顔をしながら、男のほうを見た。

「いいか、自分の素性については何一つ言うなよ。言えば、わかっているな?」

 男は私に顔を近づけ、ひきつるような笑みと、恐ろしげな声で言った。
 そして、男子生徒たちから見えないように、私の肛門にあの薬をねじ込んだ。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(7) <18禁>

(7)

 翌日、私を犯していた男の一人が、アルバムのようなものを私に差し出した。
 開いてみると、昨日のあの輪姦劇を録った写真でいっぱいだった。
 蕩けるような快感にうっとりとしている、淫らな少女。
 全裸を晒し、男たちの望むままに体を開き、陵辱に身悶え、歓喜の表情の私。
 縄や枷で拘束され、淫具で弄ばれている躰。
 こんな、こんな醜態を、私は晒していたのか……。
 とても正視に耐えられなかった。
 アルバムをパタンと閉じると、男が言った。

「良く撮れているだろう? これ本になるんだぜ。ひとつは軽い性犯罪者への再教育プログラムの教本の一部。そして、市場にも出す。娯楽雑誌にな。くっくっく……」

 私は……、私はまだ見たことも会ったこともない人たちにまで、こんな恥ずかしい姿を晒すのか……?
 そう思うと、悔し涙が頬を伝った。
 だが、さらに続けて見せられたビデオが、私の中の最後のひとつを壊した。
 輪姦されているにもかかわらず痴態を振りまき、男たちのペニスを求め、欲望に腰を振って応え、精液をうっとりと飲み干している私が、そこにいた。
 そして、このビデオも商品化されるのだと、嫌らしい笑いを浮かべながら男は言った。
 写真には無い、動画の持つ説得力に、私の気力は屈服させられていた。

 もう、何もかも、どうでも良くなっていた……。

 そして私は、あまりものを考えないようになった。

 男たちは私を単なる物の様に扱い、私の意志や感情などまったく無視していた。
 拒んでも犯され、求めれば放置された。
 だから、私は抵抗しないし、何も望まない。
 男たちにされる事を、素直に受け入れるだけ。
 私を陵辱するための淫具を、目の前に並べられても怯まなくなった。
 それに歯向かえば、確実に酷い罰が待っていた。
 男たちの気まぐれで、いつ突然に殺されるか、あるいはもっと酷い事をされるかもしれないと不安を感じても、悩まないようにしていた。
 男たちの言うとおりにして、見た目どおりの女の子らしくしてなきゃならない。
 無抵抗に躰を開く性奴隷として淫辱を受けていれば、怒られないし、痛い事もされない。

 それに、そうしていないと、気持ち良くしてもらえないんだもの。

 セックスが気持ち良い事で良かった。
 犯されている間は、悲しい事も辛い事も、忘れている事ができたから。


 素直で従順になった私を、男の人たちはたまに外に連れて行ってくれた。
 髪を梳かしてリボンを付けて、かわいらしい服を着せてくれるけれど、下着だけは付けさせてもらえない。
 だって、私をこんな風にかわいらしく着飾らせるのは、お外でエッチなことをするためなのだから。

 外出は楽しい。薄暗い部屋にずっと閉じ込められているよりも、お日様の光を浴びて、風を感じているほうがやっぱり気持ちいい。
 そしてお外でセックスするのは、もっと気持ちがいい。

 男たちは屋外で他人の目があっても、公然と私を裸に剥いて犯した。
 今の私は、公園のベンチで、手首を後ろ手に縛られ、後座位で犯されている。
 遠巻きに私たちを見ている人や、足早に近くを去っていく人はいるけれど、誰も何も言わない。
 全裸で菱目模様に裸体を縛られている事を除けば、娘をひざの上に乗せている仲の良い父娘にしか見えないかも知れない。
 たまに事情を知らない人が見咎めて、警察に通報されたこともあったが、警官は私の腕に嵌められた銀色の枷をみると、何事もなかったかのように去っていった。
 私を助けてくれる人は、どこにも居ないのだと、そのとき身に染みた。

 今のところ、男たちが無関係の他人をこの陵辱劇に巻き込んだことはなかったが、いつ気が変わるかは全く予想できなかった。
 そういえば、ずいぶん前に、この公園で浮浪者たちから、朝まで集団暴行を受けたことがあったっけ……。

「葵、どうしたんだい?」

 “葵”

 私の新しい名前。本当の名前は……なんだったっけ?
 でもいいわ、そんなこと。
 ”人殺し”とか“豚”とかなじられるよりも、名前で呼んでもらえるほうが、うれしい。

「うん? あの男の人は、どんなエッチをするのかなぁって」

 私が犯されているベンチの正面には、やはり同じようなベンチに座り、雑誌の陰からちらちらとこちらを伺っている男がいた。

「葵は、本当にいやらしい子だね」
「えへへ。だって、葵はいやらしいことするためのオモチャなんでしょ?」
「じゃあどうだい? もっとたくさんの人と、エッチできるようにしてあげようか?」

 膝の上に抱かれていた私は、男の顔を見上げた。

「え? でも……。私、乱暴なことされるのは、もう嫌なの。痛いのは嫌なの」
「うーん、そうか……」

 腕を組んで考え込んだ男を見上げ、私は漠然とした不安を感じた。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 翌日の朝、大きなトランクが私の部屋に運ばれてきた。

「今日は遠いところへお出かけしよう」
「とおいところ?」
「うん。いいところへね」
「いいところ? かえってこれるの?」

 私は昨日の不安が、再び大きくなっていくのを感じた。

「ちょっと長くかかるかな。でも出かける前に支度をしないとならない。服を脱いで四つんばいになるんだ」

 私は言われるままに、素直に従った。

「体の中も綺麗にしておかないとな」

 男はそういうと、私の肛門に冷たいものをあてた。そして何かが注入されていく感じがした。

 直ぐにお腹がぐるぐると鳴り始め、苦しくなったのを手で押さえながら我慢していると、おしっこの穴にチューブを差し込まれて、無理矢理お漏らしさせられた。そして、おしりの穴の辺りにヒリヒリとするような痛みを感じて、ぴくぴくしたかと思うと、おなかのナカが爆発したみたいになって、体の中のモノを吐き出しはじめた。
 このまま腐った何もかも全部を吐き出して、空っぽになってしまえばいいのにと思った。

 中身が出ちゃったみたいになった私は、急に力が抜けて、そのまま床に倒れこんでしまった。
 以前にも何度かされたことがあったから、それほど辛くは無かったけれど、人に見られながらお漏らしするのはやっぱり恥ずかしい。
 特に、今されているように、後始末まで他人の手でされるのは……。

「どうした? つらいか?」
「ううん、だいじょうぶ……」

 不平をもらせば、殴られるかもしれない。
 家畜以下の扱いには、慣れていたつもりだけど、それでもふと胸が痛む。こんな風に虐められた時は。

「じゃあ、今度はこの中に入るんだ」

 横に倒されたトランクのふたを開けて、男が言った。

「この中……?」
「ああ、そうだ。早くしろ」

 今度は荷物扱いか……。
 そういえば、ずいぶん前に“オモチャの癖に!”と、殴られたこともあったっけ。あれはいつだったっけなぁ……?

 男の手に促されるように、体を丸めて狭いトランクの何に横になると、ふたを閉められた。
 真っ暗で狭いこの中に、いつまで入っていればいいんだろう?
 ちょっと苦しいな。でも息はできるから、密閉はされていないみたい。
 このままどっかに捨てられちゃったら、嫌だなぁ。
 暗くて冷たいのは、怖いなぁ……。
 乱暴に運ばれていく途中、あまりの惨めさに泣き出しそうになったけれど、外が騒がしくなるまで、声を出して泣くのは我慢した。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(6) <18禁>

作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ

(6)

 私は3人がかりで体を押さえつけられ、その上一番敏感で恥ずかしいところに、男たちが息がかかりそうなほどに顔を近づけていた。

「な、何を……するの? 止めて……、もう、これ以上……犯さない、で……」
「これで最後だ。みんなで同時にイこうぜ」

 男の一人が言うと、いつもの様に容赦なく私を犯す時に使う、媚薬を溶かしたローションの入ったディスペンサーの先を、前の穴に注入した。続けて後ろの穴にも。

「俺が前な。ほら、跨れ!」
「じゃ、俺は後ろ」
「なんだ、俺が口かよ。こいつ下手くそなんだよな」

 3人がかりで取り押さえられていては、左右の手足のどれも自由に動かせなかった。すでに開ききっていた膣口に、中までたっぷりとローションを注入されていた私の膣穴は、ぬるりと男を受け入れた。

 そのまま抱きしめられるようにして、男の体を下にして這いつくばらされると、肛門にペニスを押し付けられる圧迫感を感じた。

「や、やめて、そんなの……」

 無駄だと判っていても、言わずにはいられなかった。
 それがさらに男たちの欲情を掻き立てる結果にしか、ならないとわかっていても。

「かぁっ、はぁっ……」

 とっくに後ろの処女も失くしていたが、今日はまだ一度も犯されてはいなかった。
 けれど、わざと狭く作られた場所に、大きくて太いモノを入れられるだけでも辛いのに、それが前後同時にだなんて……。
 私は自分の下半身が、ペニスでいっぱいになったような錯覚を感じた。
 そして、前後の女穴に抽入されていた媚薬入りローションが、悪魔の爪の様に深く、快感の根を全身に張り巡らせはじめた。

「きゃふ……」

 もはや悲鳴にすらなっていなかった。
 間断なく引きだされ続けた体の、どこに残っていたのかと思うほどの激しい快感の衝撃に、体がビクビクと痙攣した。

「どうだい? 前と後ろを同時に犯されるのは?」
「やぁ、やめへぇ……、ふこかないれぇ……」
「ほら、口がお留守だよ」

sashi2.jpg

「んもぉっ! ふぱぁへぺぇ〜!」
 “もうやめて”と言おうとしたが、頭を両手でつかまれ、容赦なく男の肉茎を口の中に押し込まれた。

「女には突っ込む穴が3つもあるからな。どうだ、3本のペニスで蹂躙される気分は?」
「んむむぅ〜、んむうむむぅ〜」
「乳首もこんなに硬くさせているな。つねってやらなきゃかわいそうだ」
「クリトリスはどうなってる?」
「お前が邪魔でよく見えないよ」
「触って確かめてみればいいだろう?」
「それもそうだな」
「うぐっ、うむむ〜っ! んんんぅ〜!」
「さて、もっと楽しませてもらおうか」

 そういうと、男たちは腰を動かし始めた。
 媚薬入りローションの効果は、すでに体験していた以上のものだった。
 鈍りかけていた感覚は、リセットされたかのように、新鮮な刺激を全身に行きわたらせた。
 麻痺しかけていた乳房も、乳首も、クリトリスも、陰唇も、膣も、肛門も、直腸も、唇も、舌も、喉の奥も、首筋も、わき腹も、太股も、指先も、髪の毛さえも、男たちに触れられ、弄られ、撫でられ、揉まれ、つねられ、引っ掻かれ、叩かれた。
 全身のありとあらゆる場所から、怒涛のように快感が溢れ出していた。
 上下の感覚すら麻痺した私の体を男の体につなぎとめる、3本の肉の鉤(フック)。
 男たちは動きをあわせるように同時に突き入れたかと思うと、次にはそれぞれが微妙にタイミングをずらした。
 どんな姿勢になっているかもわからないほどに混乱し始めた私の躰は、私に挿し込まれている肉の鉤のどれか一本でも抜かせまいと、キュッと締め付け、それが更なる快感となって私を襲い返した。

「さすが媚薬の効果か? ゆるゆるマンコもキツくなったな」
「ケツの穴も、熱を持って奥のほうが柔らかくて気持ちいいぜ」
「なんだ、俺もそっちが良かったかな」
「おい、もっと舌を絡ませろ! そんなんじゃオレがイけないだろうが!」
「んぐぐぅ! うンむぅ〜っ!」

 『やめて! 本当に私、駄目になっちゃう!』

 そう叫びたかった。
 不規則に3本の太い肉棒で体の中を3箇所から掻き回され、両の乳房をこね回されながら乳首を弾かれ、陰核を指でくりくりと弄ばれては、何も考えられなくなってしまう。
 全身から快感の奔流が押し寄せ、脊髄を駆け上がって頭の中になだれ込み、涙や涎となって溢れ出す。それでも打ち消しきれない大量の性感の波は、再び体の隅々に打ち返して拡がり、体全体をピクピクと痙攣させる。それは私を陵辱する男たちとの触媒となり、彼らに私が快感に身を震わせていることを伝えていた。
 目の前がちかちかとするような感じがしたかと思うと、それはだんだんと明滅を激しくしていって、やがて、白い霧が私の意識を覆い隠すようにたちこめていった。

 なんだろう……? こんなに気持ちいいのは初めてだ。
 ぼうっとした視界の中で、あい変わらず裸の男たちが私の体に取り付いて、体の外も内側も掻き回しているけど、ちっとも苦しくない。
 というよりも、全身がじりじりするような、ぴりぴりするような……。
 ううんちがう。カラダがふわふわ浮いているみたいだった。
 イキっぱなしって、こういうことなんだろうか?
 どろどろで、ぐちゃぐちゃで、べとべとで、びしゃびしゃだった。

 きもち、いいなぁ……


 気がつくと、私はベッドに寝かされていた。
 全身が鉛になったように重たく感じて自分の体を見ると、腕から細いチューブが伸びていて、ベッドの脇の透明な液体の入った袋につながっていた。
 ああ、点滴だ。これ、知ってる。
 そうか。私、気絶しちゃったんだ。
 あんなすごいセックスされて、気持ちよくって失神しちゃっていたんだ。
 初めてだなぁ、気持ちよくて気を失っちゃうのって……。

 自然に涙がこぼれてきて、頬を伝っていった。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(5) <18禁>

(5)

「今日は時間があるからな。3人でたっぷりと、かわいがってやるよ」
「お願いだから、もう酷いことしないで」
「酷いこと? いつも最後には腰を振って悦んでいるじゃないか。そうだ、ビデオでも見せてやろうか? お前が俺たちに犯されている時の顔を」
「ああ、見せてやったほうが良いんじゃないか? そうすれば、自分がどんなに淫乱な女なのか、嫌でもわかるだろうよ。元男の癖にな。ははは」
「違う! 私は、んぐっ」

 反論は無理やりの口辱でふさがれ、同時に男のモノも挿入された。

「んぐぅ〜、んむっ、 いやっ! 止めて! 痛い!」
「そのうち気持ちよくなってくるさ。いつものようにな」
「うそだ! あれは、あなたたちが薬を使うから、ひぁんっ❤!」

 恥ずかしい肉の割れ目の頂上にある、敏感な肉芽を指で弄られ、私は嬌声を上げてしまった。
 もう、体が反応しているの?

「口では、嫌がっていても、体はそうは言っていないぜ」

 陳腐なセリフだったけど、自分がそんな風に蔑まれる躰になってしまったのだと思うと、とてつもなく惨めだった。
 けれど男の言うとおり、さっきまで不快な異物感しか感じていない筈だったのに、男の肉茎で膣肉を擦り上げられる感覚が、ゾクゾクと体の中心を駆け上がって行くのを感じていた。
 それが快感だとは認めたくなかった。
 男に犯されて感じるのは、あの薬のせいで、決して気持ちがいいからなんかじゃ……。
 でもそんな抵抗の意思も空しく、男の性戯によって加えられる、肉体への刺激のひとつひとつが、快感へと塗り替えられていった。
 それは私にとって、恐怖そのものだった。

 “薬を使われているから”

 それが唯一の、自分の心を裏切った体への言い訳だった。
 もし、薬なしで男に組み伏せられ、性器をまさぐられ、無理やりに犯されることに快感を覚えるようになってしまったら?
 いや! こんなカラダは自分のものなんかじゃない!
 こんな気持ちになるなんて、本当の私なんかじゃない!

「はぁんっ❤ い、痛い……わ! せめて、薬を……使って!」
「うそをつけ!  お前のいやらしい体は、もう男に犯されることを悦んでいるぞ」
「はぅっ、う、そだ! あぁん❤、そんなの……」
「うそなものか。お前の膣内は、快感でピクピク震えながら、きゅうきゅう俺のモノを締め付けているぞ。膣内に出して欲しいんだろう?」

 そんなこと! 絶対に……駄目。
 気をやってしまうのを我慢しようと、不快なものを思い浮かべたけれど、男が抽送を繰り返すたびに、脳が甘い感覚に痺れて消えていった。
 男を跳ね除けようと手足を動かしても、別の男の手でベッドに封じられた。

「はぁ、はぁっ、んくっ……あはぁ❤ やぁ、、もう、やめて、い、イっちゃうぅ〜❤」
「ほら、素直にイっちまいな!」

 男の腰が強く打ち付けられ、躰の奥深くまで串刺しにされた。
 そして男の腰の動きに合わせて、自分の意思とは無関係に、嬌声が漏れた。

「あ❤! んくっ! はぁっ… あふっ、あん、……はああっんっ❤!」
「ははは、もうすっかりオンナだな、薬なんかなくても、甘い声を出すようになったじゃないか」
「いyぁ、うそ……はぁっ、あン、あ、あ、はン! くはぁ、あん❤……あ❤、あ❤、あ❤、あ❤、あ❤、あ❤」
「いい声、出すようになったじゃ、ないか、ほら、いくぞ!」
「あ❤、あ❤、や、やめ❤ んぁあああああっ……!」

 どくどくと胎内に注入されていく男の精のほとばしりを感じながら、私はイってしまった。
 背中をゾクゾクとする痺れが駆け上がり、快感と恐怖が同時に私の躰で弾け、胸の中に煌めきを残していった。
 素のままのセックスの快感に、抗し切れなかった惨めな躰。
 やっと自由になった両脚と両腕が、力の抜けた陵辱者を絡めとり、いまさらながらに動きを封じようとしていた。

「おい! そろそろ放せよ。そんなに気持ちよかったのか?」

 嫌だったのに、認めたくなかったのに……。
 子宮の入り口をノックされ、精液を注ぎ込まれて、私は必死で閉じていたドアをこじ開けられてしまった。
 自分の胎内に、男の精を受け入れてしまった。
 薬が無くても、セックスを至上の快楽と感じる女になってしまった。
 一生懸命抵抗しようとしたのに、また自分の体に裏切られた。

「必死で耐えながら、イくのを我慢している顔がとても興奮したぜ」
「ああ、イク時の顔、とってもかわいくていやらしかったぜ。体もぴくぴくさせやがってさ、ははは」

 私を犯していたのとは別の男たちに、頭を撫でながら言われた。
 全部見られていた。私の恥ずかしい醜態を……。
 元男の私が、作られた女の体で快感に身悶え、膣出しされてイってしまう一部始終を、ほかの男たちにも見られていたのだ。

「じゃ、次は俺の番な」
「ああ、でもあんまりこいつが嫌らしく腰を振るものだから、膣出ししちまったんだよ」
「しょうがないやつだな、後のことも考えろよ」

 膣を精液で満たされてイってしまったショックで脱力していた私に、新たな陵辱者となる男の指が乱暴に突っ込まれた。
 そして膣内に溜まった精液を掻き出そうと、蠢いた。

「ひゃぁぅっ! たっ、やめ……、て、だめぇっ!」

 イった直後だというのに、さらに強い快感を感じてビクビクと痙攣した。

「こいつ、膣内掻き回されて、感じてやがるぜ!」
「もう、薬を使わなくても、十分オンナになったな。今日はセックス漬けにしてやるから、覚悟しとけよ」
「やぁ、もう止めて……」

 でも、そんな私の中身のこもらない抵抗の言葉が顧みられることなどなく、順番に3人に何度も犯された。
 何度イかされたのか、わからなくなるほどに。
 ベッドの上には性臭が立ちこめていて、私の躰は汗にまみれ、精液にまみれて、べとベとになっていた。

「さて、俺たちはちょっと休憩。だけどお前はまだ休めないぜ」

 うつぶせのまま、身を起こす元気もない私の前に、何かの道具のようなものが並べられた。
 用途のわからない、だがそれが私を責め立てる淫具であることがはっきりと判る、それらを。
 私は後ろ手に縛られ、足首をくくられた。
 そして、私をいやらしく飾り立てるたくさんの淫具で、視界を塞がれ、口を塞がれ、膣も肛門も塞がれた。
 抵抗の意思は完全に殺がれ、男たちにされるがままに弄ばれ、媚態を晒し続けていた。

 そして拘束が解かれた時には、感じすぎて何も考えられなくなっていて、男たちの問いかけにも、ああ、とかうぅとか意味のある言葉が返せなくなっていた。
 自分の意思では腕を上げる気力もない程に疲労しているにもかかわらず、性器や乳房を指で揉み解されると、その快感で捕まえられた蛇の様に、激しく身を捩じらせた。
 そして体力の回復した男たちに、容赦なく嬲られ続けた。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 あれから何時間、何度犯されたのだろう?
 男に抱きかかえられたまま、差し出しれたコップを震える手で受け取り、少しずつ口に含んで渇いた喉を潤していると、一人が言った。

「こいつ、意外にタフだな」
「でも、反応が鈍くなっていないか?」
「ヤリ過ぎて、鈍くなったのかな?」
「俺も、もうそろそろ限界だ。こっちが参っちまう」
「じゃ、仕上げといきますか」

 私を抱きかかえていた男が、私から飲みかけのコップを奪い取ると後ろに下がり、私の体を仰向けに転がして肩を押さえつけた。
 不安に駆られて男の顔を見つめると、別のもう一人が両足をつかんで持ち上げた。
 私は天井に向けて大きく足を広げた格好で、無防備な性器と肛門を晒されていた。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(4) <18禁>

(4)

 乳房を揉みしだかれ、乳首を弾かれ、陰裂を掻き分けられていた。
 肉の洞に指を挿入れられ、ぬるぬると潤い始めた膣の中を掻き回された。
 陰核を甘噛みされ、肛門をなぞられ、思い出したかのように唇を嘗め回されて、舌を入れられた。

 体力の回復していなかった俺は、男の強引な愛撫にほとんど抵抗もできず、新たな女体の快感に翻弄され、なされるがままだった。
 ものの10分と経たないうちに、俺は最初の絶頂を迎え、体をぴくぴくと振るわせてしまっていた。

「いやぁ! やぁ、……んくぁ! あ、ぁあ、イっ、ちゃった……」
「薬が強すぎたかな? まぁいい。何度でもイかせてやる。早く新しい体に慣れるといい」

 男は、ベッドの上で力なく息を切らせている俺から体を離すと、自分も服を脱ぎ全裸になった。
 その股間には禍々しい肉棒がそそり立っていた。
 強姦まがいのことは何度もされた。
 輪姦され、性器に酷い暴行を加えられたことだって、何度もあった。
 だが今感じているのは、明らかにそれまでとは別の種類の恐怖だった。

「や、やめて……」

 思わず弱弱しい哀願が漏れたが、男は意に介さずに言い放った。

「何を今さら。処女でもあるまいに……」

 違う、この体では……、こんな風にされるのは、初めてだ。
 男は指を二本に増やし、執拗に膣内をかき回した。
 うごめく指が肉の壁をこするたびに、目の前がちかちかするような感覚に襲われた。

「や、やめてくれ! 本当におかしくなってしまう!」

 体の中で一番弱いところを掻き回す指の動きを、俺の脳は快感と感じとっていた。

「お。このあたりかな?」

 男の指が曲げられて、膣の中のしこりのような部分を刺激されたとたんに、頭の中に火花が飛び散り、今度は激しい2度目の絶頂を迎え、体ががくがくと震えた。

「そろそろ良さそうだな。今度は挿れてやろう」

 息苦しくなって、ぼんやりとした俺の視界の隅で、男が俺の両脚を持ち上げて間に割って入ってくるのが見えた。

「はぁ、ま、待って……。い、今、イった、ばかり……だからっ……」
「避妊しなくてもいいというのは、便利だな」

 男は俺の言葉など意に介さぬように、刺し貫いた。

「ぐはぁっ、あ、あ、あ……」

 太くて長い焼けた火の棒が体に穿たれ、陰茎の先が内臓を突き破って、口から出てくるかと錯覚した。
 それよりももっと怖かったのは、今までのそれと違って抽送を始めたそれからの刺激を、“キモチイイ”と感じてしまうことだった。
 こすれ合う硬い肉棒と柔肉の筒は、下腹部に収められた内臓ごと動き、腰全体がジンワリと甘美な感覚で満たされていった。
 そしてそれはどんどんと膨らんでいき、全身を埋め尽くしてしまいそうだった。

 男の陰茎に犯され、脊髄がおののく程に体を奮い立たせ、空いた手で揉みほぐされる乳房から送られる刺激は、呼吸さえも快感に塗り替えていた。
 この体は駄目だ。感じすぎておかしくなってしまう。
 こんなに気持ち良くされたら、心が挫けてしまう。

 そして俺は、男に躰を欲しいままに弄られ続け、なすすべも無く奥深くに精を放たれた。
 熱い何かが体の中を満たしていく快感に打ち震え、全身がぴくぴくと痙攣した。
 そのことがとても悔しかった。初めて“男に犯された”と思った。
 セックスの快感に抵抗する心と、受け入れる体。
 ひとつだった自分をふたつに引き裂かれ、もう一人の自分に裏切られる悔しさと絶望。
 そしてこの感情が、無理やりに奪われた処女喪失の、心の痛みなのだと知って、涙が出た。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 その日から、肉欲に塗れた毎日が始まった。
 入れ替わり立ち代り、私を監禁している部屋に訪れる男たち。
 中には女も混じっていたようだが、記憶には残らなかった。
 連日の薬物投与で無理矢理に生み出される、強制的な性の快感。
 意思だけでは追い払えない、体が求める原始的な快楽への渇望に翻弄され、自らそれを乞い願った。
 俺の処女を奪ったあの男も、毎日のように部屋に来ては俺を犯した。
 強力な麻薬を肛門にねじ込まれ、ほんの些細な肉体への刺激でも、性的興奮が激しく湧き上がった。
 どんなに心が拒否しても、間断なく与えられる悦楽に、弱った心が抵抗できるはずも無かった。
 生物の本能に訴えかけ、無理矢理に歩かされる堕落への一本道の先にあるものに、俺は怯えた。

「お願い、もう止めて下さい。私、狂ってしまうわ!」

 女の言葉を使わなければ殴られ、黙っていれば蹴り飛ばされた。
 セックスを求める言葉を言わされ、薬を強請り、猥らに男を誘って腰を振る娼婦に成ることを強制された。
 あの男と、何人もの男達。入れ替わる様に現れては、私を犯した。
 一日のうちのほとんどを休むまもなく、セックスの相手をさせられていた。

 けれどある日、3人の男が一度に訪れた。どれも見知った顔だったが、自分よりもはるかに大きな男3人に囲まれると、今までにない恐怖を感じた。
 薄笑いを浮かべる3人の男。その中の一人がこう宣告した。

「今日は輪姦される悦びを、教えてやるよ」

 男の一人が、すばやく私をベッドに押し倒し、あっというまに薄着を剥ぎ取った。
 反射的に裸身を隠すように身を縮めたが、男は直ぐに私の股間に手を伸ばし、まさぐり始めた。

「きょ、今日は薬を使わないの?」
「何だ? 使って欲しいのか?」

 私は仰向けに組み伏せられたまま目を閉じて首を振り、否定した。
 あの薬は嫌だ!
 強制的に与えられるセックスの快感で、頭がおかしくなってしまう。
 これ以上あんな薬を使われて、もし廃人にでもなったら……。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(3) <18禁>

作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ


(3)

 鏡の中の、新しい俺。
 小柄な体に、控えめな胸。そして幼い顔つき。
 なぜこんな体に? という疑問が沸くと同時に、今まで自分が受けてきたことを思い出し、思わず体が震えた。

「気に入ったか? 未成年者への性犯罪被害の防止には、こういう捌け口があったほうが良いだろう?」

 まだ自分のものと認識できない少女の体を、“捌け口”と言い捨てた男の言葉に、俺は怒りと恐怖を同時に感じた。
 俺は震え出したりしないように、自分の身を庇うように両手で体を抱き、虚勢を張って言い返した。

「へぇ、あんたロリコンなんだ」

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 蔑むように言うと、いきなりベッドに殴り倒された。
 口の中に鉄の味がいっぱいに広がったが、歯が折れた感じはなかった。

「口の利き方に気をつけな、この大人のオモチャ!」

 俺は言い返そうと体を起こしかけたが、一瞬目の前が暗くなり、ベッドに倒れこんだ。
 男の一撃で、俺は軽い脳震盪を起こしたみたいだった。

「手加減はしたさ。おとなしく従っていれば、手荒に扱ったりはしない。まだ満足に体も動かせないだろうからな」

 手加減? 男にとってはそうだったかもしれないが、小さくなってしまったこの体には、気を失いかけるほど強烈だった。
 俺は横になったまま痛む頬を押さえながら、身を庇う様に体を丸めた。
 だが男は、俺の左の手首に嵌められた銀色の枷を掴んで無理やり起こし、顔を近づけていった。

「逆らったり生意気な口の利き方をしたりすれば、どうなるか判るよな?」
「せっかくきれいにしたのに良いのかい? キズモノにしても」

 ここで気力負けしたら駄目だと思い、精一杯の虚勢を張る。

「お前が逆らわなければいいことだ。もっとも、この腕輪がある限り、お前は俺たちには逆らえない」
「今度は何をさせる気なんだ?」
「セックスさ。お前はその体に受けることを、素直に感じてさえいればいいんだよ」
「どうせ、無理矢理でも犯すつもりなんだろう? 元男の俺なんかを犯して、楽しいのかよ!」
「言葉遣いも、少女らしいものに矯正する必要がありそうだ。興がそがれる」
「な……!」

 俺は覆いかぶさるように組み伏せられ、体を裏返された。
 そして、尻を突き上げるように腰を持ち上げられ、肛門に何かを挿入された。そして、ちりちりと痛む入り口を擦るように、奴の指で奥のほうにまで押し込まれた。

「っ……!」
「座薬だよ。注射だと腕に痕が残るし、直腸吸収でも同じ効果が得られるのでね」
「何の、薬だ?」
「ありがちな合成麻薬の一種だよ。まだ麻薬指定は受けていないがね」
「麻薬?」
「媚薬といえば判りやすいかな。さぁ、お楽しみはこれからだ」

 そういうと、医者は俺の背中に馬乗りになったまま白衣を脱いで、ネクタイを緩めた。

「役得とはこのことだな」

 男は本気で俺を犯す気なのだと、やっと理解した。
 今さら作り変えられた体の貞操を気にはしないが、屈辱的であることには変わりなかった。

「安心しろ、これから天国にいるみたいに、気持ちよくしてやるから」

 俺は男なんかに抱かれて、気持ちよくなったりなんか絶対にしない!
 そう心に決めたが、男が俺の胸をゆっくりと揉み始めた時、今まで感じたことも無かった、甘い感覚が全身を駆け抜けていった。

「あんっ!」

 思わず漏れてしまった自分の嬌声に、俺は動揺した。

「今まで君は、その体に苦痛しか感じていなかっただろう。だけどこれからは違う。君は女の体が生み出す快感と悦楽に興じることができるようになるんだ。その初めの第一歩として、せいぜい気持ちよく悶えるがいいさ」

 “怖い”。俺がそう感じたのは、媚薬に小さな躰を蝕まれ始めていたからだけではなかった。
 恥辱には感情を殺すことで耐えられた。苦痛には心を閉ざすことを覚えた。
 けれどこの感覚は何なんだ?
 皮膚がちりちりするように痺れ、男に触れられるたびにぞわぞわとする震えが全身に広がっていく。
 心の奥底にある何かが、俺に語りかける。
 “もしここで抵抗できなければ、もう一生後戻りはできないぞ”、と……。

「や、やめて、あんっ!」

 男が今度は股間を刺激した。指で肉の谷間をわけ入り、小さな入り口を確かめるように撫で上げたのだ。
 今まで感じたことも無かった女性器からの快感に、俺は戸惑った。

「いいねぇ、その表情。今度も君には、利用価値がありそうだ」

 そういって男は、俺の全身を弄り始めた。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(2)

(2)

 それから俺は、何日も何日も強姦と陵辱を受け続けた。
 俺がヤってきた、女たちと同じように……。
 中には覚えていないものもあったが、そんなことは関係がなかった。
 変わり果てた小さな少女の体では逆らう力も無く、連日の暴虐にそんな気力も無かった。
 “死にたい”と呟くと、聞きとがめた監督官に棒で殴られ、ののしられた。

 「お前に殺された何人もの被害者も同じ気持ちだったろうよ。だが、お前には死ぬことなんか許されない! 永遠に苦しめ! この外道!」

 確かに俺は犯罪者だった。何人もの女を強姦し、時には殺した。
 だが今は無抵抗の少女の体を、木の棒で殴り倒し気を失うまで打ち据える人間が、外道では無いとでも言うのだろうか。

 しかし、俺に施された洗脳といっていい教育プログラムの成果なのだろう。わずかに残った感情が反抗心をくすぶらせても、体がそれに反応することは無かった。押し黙ったまま殴られ、蹴り飛ばされ、犯されるままだった。
 肉体的、精神的、性的虐待を、作りかえられた小さな女の体がバラバラになっても、無抵抗のまま受け続けた。
 俺は、被害者遺族の感情の捌け口であり、見せしめの生贄だった。

 何ヶ月…いや、何年経ったのだろう?
 腕を折られ、体を切り裂かれても、そのたびに治療を受け、再び叩き堕とされる地獄の毎日。
 生きる気力なんてなかった。絶望することすら無意味だった。
 脳さえ生きていれば、蘇生できる肉体の再生術。
 それをもってしても、癒えない全身の痛み。
 それすらも感じなくなる頃には、俺は感情を無くしていた。
 明確に向けられた殺意に、怯えることも忘れてしまっていた。
 ただ無気力に呼吸しているだけの、屍だった。

 目を血走らせ、“恋人の仇!”と叫びながら、俺の全身を大きな刃物でめった刺しにする男。
 俺は、怒りと憎しみに血走ったその眼を、薄れていく意識の底に見つめていた。
 そして止めに頭を割ってくれれば、死ぬことができるのに……と思いながら、俺は再び深い闇へと堕ちていった。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


「ここは……」

 重傷を負って気を失い、再び意識を取り戻すたびに目にする、特徴的な天井。
 また、死ねなかったのか……。
 眼鏡をかけ、マスクをした白衣の男が俺の顔を覗き込んでいた。
 見たことがあるような、無いような、どうって特徴の無い男だ……。

「目が、覚めたかい?」
「殺してくれ……。今すぐ殺せ。どうしてあのまま、放って置いてくれなかったんだ?」
「君には、生きる権利があるからだよ」
「権利? そんなものいらない。だから殺せ」
「どうしてだい? 君は望み通りの体になったのだろう? 少なくとも僕はそう思っていたんだが……」

 何を言っているんだ、この馬鹿医者は。
 お前たちが俺をこんな地獄に堕としたんだろう!
 自分にまだ怒りの感情が芽生えるほどの心が、まだ残っていたことに驚きを感じながら、体を起こそうとしたら、別の医者が部屋に入ってきた。

「先生、後は私が……」
「ちょっと待ってくれないか、僕はこの少女に、少し聞きたいことがあるんだ」
「ま、それは後ほど機会があれば。とりあえずお引取りください」

 俺を無視したやり取りを何度か繰り返した後、結局眼鏡の医者は病室を追い出されていった。
 残った男に俺は尋ねた。

「なぜ俺はまだ生きているんだ? もういいだろう? 今すぐ殺してくれないか?」
「君の懲役は、とりあえず終了した。これからは奉仕活動をしてもらう」
「奉仕活動? まだ、何かさせる気なのか?」
「君にはずいぶんと、経費がかかっているのでね」

 そう言って下卑た薄笑いを浮かべながら、その医者は俺にかけられていたシーツを捲りあげた。真っ白な少女の裸身が、明るい部屋の照明の下に晒される。
 俺は反射的にシーツの端をつかみ、体を隠そうとした。
 恥ずかしいからではなく、あれだけの事をされてもまだ残っていた、防御反応のせいだ。
 だが体力の回復していなかった俺は、あっさりとシーツを剥ぎ取られ、その反動でベッドの手すりにもたれ掛った。腕に嵌められている銀色の枷が、かちりと音を立てた。

「そんなに怖がらなくていい。これから君が味わうのは地獄ではなく、天国なのだから」

 俺は男の態度に不穏なものを感じ取った。

「ふん、俺にとっての天国じゃなくて、あんたにとっての天国じゃないのか?」

 全裸の弱々しい少女の体を晒し、外見につりあった甲高い少女の声しか出せなかったが、相手を睨み付ける様に見据えて虚勢を張った。
 だが男は不敵な笑みを浮かべると、ゆっくりと俺に近づいた。

「な、何をさせる気かわからないが、今回はずいぶんと丁寧に治療したじゃないか、丁寧に扱わなくていいのかい?」

 時には全身の至るところに傷が残ったまま、指の数本が無いままに、地獄に戻されることもあった。
 だが今の俺の体は、その真っ白な肌に傷痕一つ無く、欠けている部位も見当たらなかった。
 何よりも、何度治療を受けても消えなかった全身の疼痛を、今は感じない。
 髪も小さく膨らんだ乳房の先端を隠すぐらいにまで、伸びていた。
 まるで新しい体を、与えられたみたいだった。

「鏡を見てみるか? 今度も男の気を惹きそうな、極上のカラダだぞ」

 差し出された鏡を見ると、紅い瞳に艶のある真っ黒な長い髪の少女が不安な表情でこちらを見つめていた。
 元の俺とは似ても似つかない程に、変わり果てた姿。
 そういえば、俺は今まで作り変えられた自分の姿を、ロクに見たことがなかった。
 常に拘束され、犯され、暴力を振るわれ、叩きのめされていた俺には、何かに映った自分の姿を見る余裕などなかった。
 ふとした拍子にそれを見ることができたとしても、それを自分の姿だと認識することすら、できなかったのだ。
 そして、こんなことができる連中に、俺は改めて恐怖を感じた。

<つづく>

「カレーライス」 第二章(1)

作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ

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第2章 葵:贖罪
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(1)

 ワタシは胸をどきどきさせながら、お部屋のベッドに潜り込んだ。
 先生は優しい。
 何も判らない振りをして、子供みたいに甘えて、泣いて、笑って、食べて、そしてエッチなことをしてもらっていれば、それだけでとても幸せ。
 ここは私がようやく辿り着いた、心休まる場所。
 もう、誰にも邪魔されたくない。
 面倒くさいことは、何も考えたくない。
 先生にペットみたいに可愛がられて、先生がいつもゴキゲンならば、葵は他にはもう何もいらない。
 この幸せだけをずっとかみ締めていたいのに、一人でいると忌まわしい記憶が甦ってくる。
 それがいつのことだったかも、もう定かではないけれど、一生消えない心の傷。
 ワタシはこの傷口が広がっていくのが怖い。
 先生が塞いでくれなかったら、きっとワタシはバラバラになってしまう……

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


「君には、OOL法の最初の被験者になってもらう」
「OOL法? なんだいそれ?」

 連続強姦殺人の犯人として捕らえられ、有罪が確定して死刑になると思っていた俺に、刑吏は聞きなれない事を言った。

「“Outside Of Law”、法の庇護を受けないものという意味だ。幾つかのプログラムが予定されているが、死刑制度を根絶するための、実験的な贖罪の方法のひとつだ」
「贖罪? 俺は死刑にはならないってことですか?」
「終身刑というのが正しいだろう。生きている限り、君には犯した罪を償ってもらう」
「いっそのこと、死刑にしてくれたほうが楽なんですがね。この世に未練はないし、さっさとやっちゃってくださいよ」
「君には反省の色が見られない。したがって、死刑という安息は与えられないとの裁判員たちの一致した見解だった。そこで、君には新しく制定される予定のOOL法の、被験者第1号となってもらうことになったのだよ」
「それはさっき聞きましたよ。で、具体的にはどうすりゃいいんですか?」
「君には被害者と同じ体験をしてもらう。被害者のほとんどはもうこの世にいないがね。被害者がどんな気持で君に殺されたのか。残された遺族の悲しみがどんなものか。それをその身で味わうことが君への罰であり、遺族への償いとなる。そして罪を償った後は、同種の犯罪を防止するための、人柱となるのだ」
「人柱?」
「君の犯した連続強姦殺人という犯罪は、今後も根絶は難しいだろう。だがそれが合法であれば、罪に問うものはいない」
「そんなところに生まれたかったですね」
「そう思う犯罪者、いや、犯罪予備群の歪んだ願望の捌け口に、君にはなってもらう」
「俺は男ですよ。そんな物好きがいますかねぇ? いや、ゼロだとは言わないが」
「君の体は作り変えられる。君の犯した罪を償うのにふさわしい。くっくっく……」

 刑吏の下卑た笑いに、俺は怖気を感じた。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 見知らぬ天井。目を覚ますと、俺は自分の体が小さくなったような、変な違和感があった。
 全身がだるく、手を動かすのも億劫に感じたが、体を軋ませながら上体を起こした。
 かけられていたシーツがはらりと落ちて、自分の体が目に入った。
 いやに白い……だがなんだ、これは? 乳房が膨らんでいる?
 決して大きいとはいえなかったが、触ってみると柔らかな弾力で指が押し返され、同時に胸に“触られた”感覚がした。

 「こ、これは……!」

 慌ててシーツをめくって下腹部を確かめると、見慣れた自分のものはなく、無毛の股間の下のほうに、肉の割れ目があった。

「気がついたかね?」

 いつの間にか部屋に入ってきた男に声をかけられた。

「こ、これは一体!?」
「見たとおりだよ。君の体を作り変えた。罪を償ってもらうためにね」
「な、なんだと!」

 腕を伸ばし男に掴みかかろうとすると、左の手首の直ぐ上に、銀色の幅広の輪が付けられているのに気がついた。

「おや? 君は左利きだったか? まぁそんなことはどうでも良いが」
「作り変えたってどういうことだ。それにこの腕輪はなんだ!」
「太るなよ。腕を切り落とさなきゃならなくなる」

 男は俺の質問には答えず、冷たい声で言い放った。
 その男の態度に、俺は本能的に恐怖を感じた。

 そして少女の体に作り変えられた俺は、屈辱的な――洗脳といっていい教育プログラムを受けさせられた。

 そして数ヵ月後には、奴隷という言葉さえ生易しい、地獄の日々に叩き堕とされた。

 俺の処女を奪ったのは、俺が犯した犯罪の被害者遺族だった。でも性行為の結果などではなかった。
 まだ違和感の残る女の体を裸に剥かれて、身動きできないように縛り付けられ、男性器を模した木の棒を、無理矢理にねじ込まれたのだ。
 あまりの衝撃に俺は嘔吐しかけた。だが口枷を嵌められ、逆流した胃液の苦みを口中に留めさせられたまま、股間から血が噴出すまで、突付き続けられた。
 激痛に身をよじりながら、赦しを請うこともできないままに気を失い、気がついたら全裸で、どこかの公園に縛り付けられていた。
 いつの間にか集まってきた浮浪者たちに輪姦されながら、俺は自分が同じ仕打ちをした被害者の、恐怖に満ちた顔を思い出していた。
 自分もあんな顔をしているのだろうかと、ぼんやりと考えながら、激痛でさえも麻痺しかけた体に、無抵抗のまま陵辱を受け続けた。


 夜明け近くになってようやく開放された。だが起き上がる気力もなく、冷たくてざらざらとした硬い地面の上で、俺はボロボロになって異臭を放つ精液にまみれていた。
 人の気配を感じて見上げると、中年の女が俺を見下ろしていた。
 その瞳は、ぞっとするほど冷たい光を放っていた。
 まるで、“今すぐにでも殺してやる”といわんばかりに。

 (もう、赦してくれ……)

 慈悲を乞う声が、喉まででかかった。
 だが女の目からは殺気が消え、感情のこもらない笑みを浮かべた。

「今が冬でなくて良かったわね。もしそうなら、あなたは寒さで凍え死んでいたわ。私たちの娘みたいに!」

 そう言い放って、俺につばを吐きかけて去っていった。

 何かを言う気力も無く、その場に寝転がされたまま、俺は文字通り全身の痛みが少しでも和らぐことを祈りつつ、じっと目を閉じていた。
 しばらくすると背広姿の男たちに、毛布で包まれて抱えられ、車に乗せられた。

「今度はどこに、連れて行かれるんだい?」

 そう尋ねたが、男たちは一言も発しなかった。

<つづく>

「カレーライス」 第一章(2)

(2)

「なぁ、葵?」

 私は驚くほど軽い葵をひざに乗せ、頭を撫でながら慎重に話しかけた。

「はい、先生」
「明日、お客さんが来るんだ。その人に葵も会って欲しいんだけど、いいかな?」

 とたんに葵の顔が蒼褪めていく。

「怖がらなくても大丈夫だよ。葵と同じ女の人だよ。だから心配しなくても、怖いことは何一つないから」
「葵はどこも悪くないです! 熱だってないし、お腹だって痛くありません! だから!」

 そうか。葵は先週のことをまだ覚えていて、それを怖がっているのか。

 熱を出した葵のために呼んだ医者は、葵の恐怖心を煽るには出来過ぎていた。
 大柄な筋肉質の体に、ひげを生やした男性医師を見たとたんに、葵はべそをかき始め、診察のために胸をはだけさせようとしたのを、泣いて抵抗した。
 せめて女性の医師を頼むべきだったかもしれない。
 高熱に立つ事もできない筈の小さな体の、どこにそんな力が残っていたのか、泣き叫んで必死に抵抗する葵を押さえつけ、注射までさせるには、結局麻酔をかがせるしかなかった。
 内科相当の所見でなければ、私が診てやれたのだが……。

「訪ねてくるのは女の人だよ。葵と同じね。だから怖がらなくても大丈夫だ」
「でも……」
「できれば、葵にはその女の人と、仲良くなってもらいたいんだ」
「どうして?」
「一緒に住んでもらおうと思うんだ。先生には……」

 言いかけたところで、葵はわっと泣き出してしがみついてきた。

「嫌! 先生が他の女の人のものになっちゃうなんてイヤ! 先生は、先生は葵だけのものだもん!」
「葵、先生はお仕事がたくさんあってね。昼間の間、葵と一緒にお留守番をして、面倒を見てもらう人を頼んだんだよ」
「葵は、先生の迷惑になっているの……?」
「そんなことはないよ。葵が来てくれて先生はとっても毎日が楽しいよ。でもね、先生だってたまには外に出て仕事をしなきゃいけないんだ。葵は僕がちょっと買い物に出かけようとするだけで、泣いて引き止めようとするだろう?」
「だって、……一人は嫌なんだもん。先生と一分、いいえ、一秒だって離れるのは嫌なの。だから……」

葵はすすり泣きながら、くぐもった声で言った。

「葵には、いつか普通の人と同じように、暮らしていけるようにしてあげたいと思っているんだ。これはその第一歩だよ」
「ワタシ、先生に迷惑ばかりかけているの、自分でもわかってる。でもね、葵はどうしようもなく不安なの。先生のそばにいないと、葵、胸が押しつぶされそうになるの。だけど、先生がどうしてもって言うなら、我慢する。でもね、先生……」

 葵は顔をぐちゃぐちゃにさせたまま立ち上がり、薄布一枚のワンピースを脱いだ。
 虐待の跡が生々しく残る、儚げな裸身が惜しみなく晒される。

「ご褒美をください……。葵を不安にさせないで、お願い!」
「ああ、判ったよ」

 葵は私の胸に飛び込んで来た。
 私は一日に最低2度は葵とセックスをする。
 多いときは、日に4回。
 朝と夜。そして私が自宅にいる場合は、葵が感情を昂ぶらせた時。
 葵にとって、セックスをするということは、食事をするのと同じ。
 いや、それ以上に大切なことなのだ。
 そういうふうに、心と体に深く刻み込まれてしまっていたのだ。
 葵にとってはセックスをするということは生きることであり、それ以外の時間は死んでいるも同然だった。

 股間に手を這わせると、ビクンと骨ばった体を強張らせる。
 しかしそれは抵抗を示すものではなく、極限までに高められた性のセンサーが機能していることを示す、悦びの反応だった。
 その証拠に、指を差し入れた肉洞から、泉のように愛液が溢れ出してくる。
 本人の意思とは関係なく、無理矢理に求められても直ぐに反応できるように作り変えられた、悲しい少女の躰。

「先生? どうしたの?」

 頬を赤く染め、とろんとさせていた瞳を不安の色に変えて、私の顔色を窺う。
 いけない、つい手が止まってしまった。

「いや、なんでもないよ。ここじゃあ寒いだろう。葵の部屋に行こうか?」
「……うん。先生がそう言うなら。ワタシ、先に行って待っていますね」

 本当は今すぐにでも、高みに連れて行って欲しいのだろう。
 一瞬、辛そうにうつむいたけれど、涙をこらえるような笑顔を見せると、一糸纏わぬ裸身を翻して、部屋を出て行った。
 醜い大きな傷痕を残したままの背中を見送りながら、私はため息をついた。

「少しは体を、綺麗にしたやったほうが、よかったかな……」

 衰弱してやせ細り、至る所に虐待の後を残す葵の裸身。多少血色が良くはなったものの、透き通るような白い肌に残る、無数の斑模様は見ているだけでも痛々しい。
 もしかしたらそれが、陵辱者を怯ませる為の鎧になるかと思って、敢えてそのままにしておいたのだが……。
 だが、小さな背中に今も残る、大きな傷痕を見るたびに、自分がこの少女に刻み付けてしまったものの罪深さに、自責の念を深めるばかりだった。

「先生、早くぅ!」
「ああ、今行くよ」

 私は机の引き出しから、ボイスレコーダーを取り出して、スイッチを入れた。
 これからの情事を録音しておいて、後でメディアに焼いておくのだ。
 こうしておけば、葵は私が留守の間にメディアを再生して、私とのセックスを思い出しながら、自慰に耽ることが出来る。
 一人では寂しくて胸が張り裂けそうになると訴える、葵の悲しい精神安定剤だ。

 葵の心を蝕もうと忍び寄る過去の記憶。
 それは一日に何度も甦っては、葵の心を痛めつけていく。
 私とのセックスから得られる性的な快感を唯一の依りどころとし、千切れかけた精神の糸を繋ぎとめる。
 そうやって一日を過ごすことで、葵は自分が生きていることを実感し、明日に心を継いでいくことが出来るのだった。

<つづく>

「カレーライス」 第一章(1)

作.ダークアリス キャライラスト&挿絵:キリセ

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第1章 医師:罪深きもの
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 人は、どうしてこれほどまでに、残酷になれるのだろうか?
 誰もが心の中に、悪魔を眠らせているのだろうか?
 それとも、きっかけさえあれば、自らを悪魔に変えていくのだろうか?
 できれば自分は一生、そんな悪魔とは無縁でいたかった。
 だが、いま私がしていることは何だろうか?
 一度人の道から外れたものは、二度と元の道に戻ることなど、出来ないのだろうか……?

「先生、何をしてらっしゃるの?」

 薄手の白いワンピースだけを纏った少女が、心配そうに私の顔をうかがう。
 長い黒髪に赤い瞳。華奢で細い体には、抜けるような白い肌の、美しい少女。
 私がこの娘の体を“造った”ときは、そうだった。

 だが、今のこの娘の姿はどうだ?

 濡れるように美しかった黒髪は、艶のないかさかさの白髪に変わり、やせ衰えた小さな体は、赤黒い傷痕と変色した痣で覆われ、左の腕には囚人を思わせる、鈍い銀色の腕輪が嵌められている。
 いったいどれほどの虐待をその身に受けたら、これほどにまで痛々しい姿に変わってしまうのだろうか?

「どうしたら、葵を守ってあげられるのかな、と思ってね」
「守る? でも先生、葵は先生に守られていますよ」
「うーん、なんていうか……そうだな、葵がもっと幸せになれる為の方法だよ」

 私は椅子の向きを変えて葵に向き直り、腕を広げた。
 すると葵はうれしそうに近づいてきて、私に抱きついた。

「葵はこうして、先生のそばにいられるだけで、幸せです」

 葵は潤んだ瞳で私を見つめ、手をとって自分の体に触れさせる。
 好意を寄せる相手に性的な奉仕をすることこそ、自分の役割であり、またそれを自らの喜びだと思い込まされているのだ。
 深層意識の奥深くにまで刷り込まれた、後学習を消すことはとても難しい。
 個人の人格を無視したこの処置は、“洗脳”といって良かった。
 こんな事をされた人間が、幸せになれるはずが無い。
 一生を籠の中の鳥のように、生きていくしかないだろう。
 だが私は、葵にはできる限りのことをしてやりたかった。
 知らずにとはいえ、このプロジェクトに関わってしまった者の責任として、あの口先だけの連中から葵を守らなくてはならない。
 “犯した罪に対する相応の処置”“性犯罪の抑止”などという美辞麗句を隠れ蓑に、実態は偏った思想と、新たな差別構造を作り出しただけではないのか!
 現にこうして、何の罪の記憶もない少女に、籠の中ですら怯える様な生活を強いているではないか!

「先生、どうしたの?」

 葵が不安そうな顔で私を見つめる。

「なんでもないよ。怖がらせてしまったかな?」

 ぷるぷると頭を振って、私に顔を押し付ける。
 葵は私の感情の変化にとても敏感だ。心の中に芽生えた、敵意を感じ取ったのだろう。
 生きる為には、そうした術を学ぶ必要があったのかもしれない。
 そっと抱きしめて頭を撫でてやると、葵は顔を上げて安心したように笑顔を見せた。

「部屋が乾燥しているので、喉を痛めたようだ。何か飲みものを持ってきてくれないかな?」
「はい、先生」

 葵が部屋の戸を閉めると、私はため息を付いた。
 いけない、やっとここまで回復したのだから、葵を不安にさせるようなことをしては。
 だが、聖人君子のように心を常に平穏に保ち、社会とかかわりを持つことのできない少女の面倒を一人で見続けるのは、やはり無理がある。
 ストレスの溜まる仕事を抱えながら、幼い子供を育てているようなものだ。
 そのため葵にも、ずいぶんと寂しい思いをさせている。
 それにもう、私には余り時間が無い……。

 運ばれてきた茶を一口すすり、傍らに立つ葵を見あげた。
 褒めて貰うのを待っている、不安気な表情の葵。
 私が手招きをしてやると、きゅっと抱きついてくる。
 葵の背中に手を回し、額を寄せて頭を撫でてやると、やっと安心したように笑顔を見せた。

<つづく>

バーカ! オマエが男だなんて信じられっかよ!!<甘口・辛口+中辛>

条件:
・一人称視点。
・冒頭以外は全て主人公のモノローグ。
・設定はシチュエーションが理解できる、最低限以上の描写はしない。

       *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

<甘口>

「バーカ! オマエが男だなんて信じられっかよ!!」

 降りしきる雨の中、傘もささずに追いかけてきた彼は、そう言って僕を抱きしめた。
 バカはキミのほうだよ。
 追いかけてなんて来なければ、僕はキミの前から姿を消せたのに……。

 面白半分で試してみた変身薬。
 それがこんなことになるなんて、思っていなかった。

 彼と出会ったのは、怪しげな露天商から面白半分で買った薬を、初めて試した日の事だった。

 “頭に浮かんだイメージどおりの姿になれる”

 そうあの露天商は言っていた。
 半信半疑で飲んだ薬は、女の子になってみたいというボクの密かな願望を、叶えてくれた。

 でも、有頂天になったボクが、偶然街角で出会った彼の誘いに乗らなければ……。
 いや、どこかで薬を使うのを止めていれば、こんな思いをしなくても済んだのに。

 だけど……
     彼と会うのは、楽しかった。
     彼と話をするのは、楽しかった。
     彼と食事をするのは、楽しかった。
     彼とゲームセンターで遊ぶのは、楽しかった。
     彼とカラオケBOXでデュエットするのは、楽しかった。
     彼と明日何をするのかを考えるのは、楽しかった。

 でも……
     彼の事を思うと、切なかった。
     彼を騙し続けるのが、嫌だった。
     本当の自分を知られることが、怖かった。

 だけどそれも、もうおしまい。薬もこれが最後の一粒。
 だからボクは、彼に真実を告げて、別れることにしたんだ。
 それなのに……。

 バカだなぁ、彼も、ボクも。
 こんな土砂降りの中、傘をささないでいたら、びしょ濡れじゃないか。
 服も、髪も、顔も、暖かい雨で滲んで見える。

  
 明日は彼と、あの露天商を探しに行こう。
 
       *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
 
<辛口>

「バーカ! オマエが男だなんて信じられっかよ!!」

 俺は半裸で身を庇う、この女にそう言い放った。
 苦し紛れのつまらない言い訳なんかしやがって!

 “思い通りの姿になれる、薬を使ってこの姿になっただけだ”だと?

 そんな薬があるわけないだろ!

 だが、目の前の女は現実だ。
 俺がこの女をたっぷりと、犯しぬいてやるのもな。
 ゲームだ、カラオケだ、イタメシだと、金がかかっているんだ。
 投資に見合う、見返りはきっちりと頂くぜ!
 そうそう、これはオマエにも責任があることだ。
 のこのこと無防備に、初めて会った男の部屋に来るなんざ、ヤッてくれといっているようなもんだ。

 “音楽の趣味が合いそうだから、CDを貸してやるよ”。

 それは狙った女を自分の部屋に誘う、常套文句だぜ?
 大胆に足を広げて座りやがって。
 わざわざ下着を見せていたのは、そのつもりがあったからだろう?

 さぁ、お楽しみの始まりだ。
 泣こうが喚こうが、オマエが俺とヤるのは、既定事項なんだよ。
 
 ふう……。いつまで泣いているんだよ。
 終わっちまった事を悔いても、何の足しにもならないぜ。
 最後は自分から腰を振っていたじゃねえか。

 しかし、オマエのカラダは最高だったぜ。
 吸い付くように柔らかい乳房も、張りのあるケツもな。
 何よりもオマエの膣内は、絡み付くように締め付けてきやがって、キモチ良かったぜ。
 おかげでたっぷりと膣出ししちまった。妊娠するかもな、はっははは。
 どうだ? 一息ついたら、もう一戦やるか?
 今度はたっぷりと楽しめるように、ベッドに縛り付けてやろうか?
 失神するまで犯してやるぜ、へへへ。
 そうだ、俺のダチも呼んでやるよ。みんなで楽しもうぜ。

<↑を中辛にするスパイスw>

 何? それなら精力剤をあげるから、それを飲めだと?
 なんだ。オマエも結局、好きモンじゃねえか。

 本当に効くんだろうな? この薬。
 おお、なんだか体が熱くなってきやがったぜ……

     *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

いいか、お前が・・・(辛口)

by.ありす

「いいか、お前が本当は男だってばらされたくなかったら、オレの言うことをなんでも聞くんだ。
わかったな。」

ボクは羽交い絞めにされ、背中に何かを突きつけられていた。
ここは女子トイレのはず。
けれど殺気を伴ったこの声は、くぐもってはいるが、明らかに男の声だった。

「ど、どうすればいいんだ?」
「まずは抵抗できないように、目隠しをさせてもらう。それと手も縛らせてもらおう」
「な、なぜボクが男だと? 完璧に女性化しているはずなのに」
「密告があったんだよ。ある男が女性化薬を使って、女子トイレの盗撮をしようとしているってな」
「く、ばれちゃ仕方ない。これでも食らえっ!」

 ボクはぐっとしゃがみこんで相手の手をとり、背負い投げをしようとした。
 だがにわか仕込みの柔道の技、しかも少女化している体では思うように相手を倒すことができなかった。逆に相手の強烈なボディーブローを食らい、ダウンさせられてしまった。

 気がつくと、ボクは大きく脚を広げた格好で縛られていた。両手も頭の上で縛られて自由が利かない。

「気がついたか?」
「ボ、ボクをどうしようってんだ! ここはどこだ!」
「ここは男子トイレ。縄で拘束されて身動きのできない少女が縛られていたら、男ならどうすると思う?」
「な……」
「表には、サービスタイム中❤って張り紙をしておいたぜ。さ、どれぐらいで最初の客が来るかな? じゃ、せいぜいオンナの体を堪能しろよ」
「ま、待ってくれ! 勘弁してくれよ。もしこのまま、な、膣出しでもされたら、ボクは……」
「女のまま、元に戻れなくなるだろうな」
「か、勘弁してくれ! な、頼む!」
「後で回収に来てやるよ。それまでたっぷりと、犯してもらえ。さっきここのことをネットの掲示板にもアップしておいてやったから、朝まで宴会かな、ふふふ……」
「あ、待ってくれ! ボクを解いてくれ! このままじゃ……」

いいか、お前が・・・(甘口)

by.ありす

「いいか、お前が本当は男だってばらされたくなかったら、オレの言うことをなんでも聞くんだ。
わかったな。」

「なんでもって、何をさせるつもりだよ」

 ボクは彼がそんなことを言うなんて思ってもいなかった。
 10年以上も付き合ってきた、無二の親友だと思っていたのに……。

「まずはそうだな……。キスさせろ」
「な! ボクが誰だったか、知らないわけじゃないだろ!」
「もちろん。だが、俺が女子と付き合ったことが無いことも知っているだろう?」
「だからって、ボクとするって言うのか?」
「嫌か?」
「嫌に決まってんだろ! 男となんかキスできるかって言うの!」
「キスだけじゃないぞ、オマエを抱かせてもらう」
「☆◎△×! 冗談じゃない、この状態で男と、その……シタら、元に戻れなくなるの知っているだろう!?」

 ボクは慌てた。突発性性転換症に罹って、女性化したとは言え、ちゃんと治療を続ければ、元のカラダに戻れる筈なんだ。
 いまは仮に自分の病気と元の性別を伏せて、女子として学校に通っているけれど、治療を順調に続ければ、あと1年で元通りに治る筈なんだ。

「もちろん。だがな、俺は……、俺はオマエをもう男に戻したくは無いんだよ!」
「そ、それってどういう……?」

 TS病に罹って半年。病気に罹ったことを伏せて、女の子の生活もバレない様に過ごせたのは、彼のフォローもあったからだ。だから、ボクは彼がボクが元通りになることを手助けしてくれていた……そう思っていたのに、どうして……?

「責任は取る。だから、俺はオマエを俺のものにしたい! 彼女にしたいんだ!
将来のことも真剣に考えている」
「せ、責任って……」

星の海で(4) 〜トイブルクのエミリア〜 (13)

ありすの不思議な国はこちら

(13)-------------------------------------------------------

 艦隊がトイブルク星域に駐留して1週間が経った。
 いつまでもこの星域にとどまってばかりもいられず、前線に向う時がやってきた。

 艦隊が進発する前日、エミリアに対する軍事裁判が開かれた。
 判決は惑星犯罪の嫌疑は不十分。脱走兵という汚名は免れたものの、命令服従違反として、2階級降格の上軍籍は剥奪との、厳しい裁定が下った。
 フランチェスカはリッカルドに、せめて軍籍剥奪だけはと粘ったが、エミリアの証言が確かなものであるという証拠がない以上、どうすることも出来なかった。

 次の補給艦隊との邂逅までという期限付きで、エミリアには艦内に小さな部屋が与えられた。
 エルザに関しては記録がないということで難民扱いになり、暫定的にエミリアに保護者としての義務が課せられた。
 エミリアの部屋を訪れたメリッサは、じゃれ付くエルザの相手をしていた。

「“脱走と惑星犯罪の罪で死刑”にならなかっただけ、儲けものかもね。エルザとも一緒にいられるし……」
「エミリア教官……」
「もう教官じゃないのよ。ただの民間人」
「これから、どうなさるおつもりですか?」
「そうね。せめてこの子が一人前になるまで、育てなきゃ。軍を追い出された私に、働き口なんてあるかしら?」
「きっと見つかりますよ。 そうだ! 私、少しは蓄えがあるんです。本当は退役する予定でしたし、今の契約任期が切れたら、一緒にどこかの星で暮らしませんか? トリポリなんか、意外にいいところでしたよ」
「でも、あなたにそんな迷惑はかけられないわ。それに、2週間後にはこの艦を降りなきゃならないの」
「そうですか……」
「そうだわ。しばらくこの艦で雇ってくれないかしら?」
「雇い口なんて……軍艦ですよ。確かに軍属の人はいますけど、ラヴァーズ以外はみんな男性ばかりですし……」
「そのラヴァーズになるわ。あなたと同じ」
「ラヴァー、って。そんな! だって、せっかく……」
「ラヴァーズ不足は今でもそうなんでしょう? ならば私、経験だってあるし、お給料だって、民間のそれよりはずっといいんじゃない?」
「いや、それは確かにそうですが、でもラヴァーズだなんて……」
「昔、私が言ったこと覚えてる?」
「“ラヴァーズだって、悲しいことばかりじゃない。生まれ変わったんだから、絶対に、幸せになれる……”」
「そうよ。15年間眠り続けて、生まれ変わったと思えばいいわ。ねぇ、エルザ。メリッサおねえちゃんと、もうしばらく一緒にいたいでしょ?」
「うん、いたい!」
「しかし……」
「明日、ジナステラ大尉にお願いしてみるわ」
「でも、いいんですか? その、またラヴァーズになんて……」
「働かざるもの、食うべからずよ。ジナステラ大尉も良い方みたいだし、あなたもいるんでしょう?」
「はぁ……」
「心配しないで。メリッサ。あ、でも私、2階級降格だから、復帰してもあなたのほうが上官ね」
「そんな……。でもわかりました。教……いえ、エミリアさんがおっしゃるのなら、もう反対しません。私からも大尉にお願いしてみます」
「よろしくお願いね、メリッサ曹長」
「よろしくおねがいね。めっりさそうちょう」

 エミリアの真似をするエルザに、メリッサも思わず笑みがこぼれた。

「そうだ、明日星系を進発する前に、トイブルク基地の慰霊祭を行うそうです。ジナステラ大尉がおっしゃっていました」
「そう、慰霊祭か……」
「私、ティッシュペーパーをたくさんもらってきたんです。献花を作りませんか?」
「ティッシュペーパーで、献花?」
「亜里沙が……。ああ、私の後輩というか、妹分みたいなラヴァーズなんですけど、その子が作り方を教えてくれたんです。“センバヅル”とか言うのも作ったほうがいいって、仕損じの紙やいらない紙を、たくさんもらってきていましたよ」
「センバヅル? 私に出来るかしら?」
「簡単ですよ。きっと出来ます」
「えるざもできるー!」
「そうだね、エルザちゃんも一緒に作ろうか?」
「うん!」

      *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

 エミリアの私室。エルザとエミリアは、メリッサから“センバヅル”の作り方を教わっていた、

「ねえ、メリッサ。この艦は、トイブルク基地の衛星軌道上に、いるのよね?」
「ええ、そうです。2時間ほど前に到着して、静止軌道上を周回中です。あと1時間ほどで慰霊祭が始まりますから」
「じゃあ、その前に電子窓の映像を切り替えてくれないかしら。基地のある辺りが、見たいのだけれど……」
「……いま、映っているのがそうです。無人ですが、自動の気象観測装置と航法用の保安設備があると聞いています。基地がある辺りが、具体的にどこかはわかりませんが……」
「え? これが、この赤茶けたのが、基地のあった第五惑星だって言うの?」
「……今は、“第4惑星”なんです。エミリアさん」
「なんですって? そんな、じゃあ……」
「いずれわかってしまうことだから、黙っていましたが……。軌道要素を見る限り、あの星は元から第4惑星だそうです。15年前の事件の後、防備の手薄になったトイブルク星系に敵が進駐しました。7年後に再びこの星域は我々の支配宙域に戻りましたが、トイブルク星系の惑星の数は全部で12個」
「14個あった筈よ!」
「もっとも外側にあった第14惑星は公転軌道を離脱。トイブルク基地のあった第五惑星、トイブルク5は、消滅……」

 メリッサの告げた事実に、衝撃を受けたエミリアはただ呆然とし、言葉を発することが出来なかった。

       *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

「……むなしく散った、トイブルク基地の英霊の安らかなることを、ここに願うものである。 星暦2045年8月15日、第106遊撃艦隊司令、リッカルド・ガルバルディ准将」

 リッカルドが鎮魂の辞を述べると、アンドレア・ドリアの主砲が3回、長い光芒を放った。

 艦載機着艦デッキからは、エミリアたちが作った献花や千羽鶴が放たれ、艦の後方に白い航跡を残していった。

挿絵4
挿絵:東宵 由依

 僅かながらも青い海と緑の森を有していた、かつてのトイブルク第五惑星の姿はそこになく、赤茶けて荒涼とした大地が広がるその星が、涙で滲んで見えなくなるまで、エミリアはずっと見つめていた。


<了>





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星の海で(4) 〜トイブルクのエミリア〜 (12)

(12)-------------------------------------------------------

エルザ
挿絵:東宵 由依

「艦隊、予定宙域に集結を完了しました」

 航法士官が訓練行動の終わりを、フランチェスカに告げた。

「浮遊物か何かの発見の報告はなかったの?」
「今のところ、特にこれといった物は……」
「そうですか……。それで、模擬攻撃の結果は?」
「再計算してみましたが、想定の65%というところじゃないでしょうか?」
「艦隊に戦艦の比率が、少ないからかしらね……」
「巡洋艦の半数を打撃戦艦と想定してありますから、それはないです。それにこれ以上戦艦の比率を変えると、星系内重力場に異変が生じて、内惑星軌道がぶれちゃいますよ」
「そうね……、わかったわ。訓練終了。全艦に指示」
「アイ、マム! 訓練終了!」

 演習は終了したが、フランチェスカの予測とは異なり、エミリアの証言のとおりに、トイブルク基地に反撃を与えないまま全滅させるほどの火力を集中させるのは、不可能だった。


リッカルドの私室で、グラスを弄んでいたフランチェスカにリッカルドがいった。

「15年前の兵器水準とは違うからじゃないのか? フランチェスカ」
「リッカルド、このボクがそんなことぐらい、考慮に入れていないはずないだろ」
「じゃ、やっぱり、カセラート准尉の証言は信用が出来ないってことか」
「でも、うそをついているようには見えないんだよねぇ。明日もう一度本人に直接聞いてみよう」
「俺も、調べたいことがあるんだが?」
「何を?」

 リッカルドはフランチェスカの体を撫で回した。

「いや、こことか、ここを弄ると、どうなるのかなって……」
「な゙っ!いきなり変なところ触るな! このスケベ!!」
「いや、だって、そんな下着姿で俺のベッドにいるからだな……」
「暑いから脱いでるだけだよ! いいだろ! そんなこと」
「はいはい。素直になれよ……」

      *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

「……そうですか」
「カセラート准尉、ほかに何か思い出したことはない? 例えば、何か変わったものを見かけたとか」
「変わったもの? ……そういえば、ヴァンデル士長が、“縮…”何とかを使ったのかも知れないとか……」
「“縮”?」
「そうだわ、確か条約違反だとも」
「“縮”……、“条約違反”……。まさか!」
「何か?」
「その、なんとか士長はこう言ったんじゃない? “縮退炉を使うのは、条約違反だ”と……」
「はっきりは覚えていませんが、確か、そんなようなことを言っていたかもしれません。あの時私、いくつもの白い光の点が、大きく膨れ上がっていく、トイブルク5に気が動転してしまっていて……」
「光の点? そのときの様子を詳しく教えてくれない?」

     *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

「リッカルド、わかったよ。縮退炉だ!」
「なんだ、突然」
「トイブルク5を全滅させたやつらの方法がわかった。無人の輸送艦を何隻かトイブルク5に落としながら、艦砲射撃で輸送艦の貨物室を打ち抜いたんだと思う。積荷は縮退炉」
「ばかな! そりゃ完全なガリエスタ条約違反だぞ。そんなことがもし明るみにでもなったら、連邦評議会が黙っちゃいない」
「だからさ。一瞬のうちにトイブルク駐留軍を全滅させる必要があったんだ。目撃者を残さないために」
「あのなぁ、いくら当時のトイブルクが辺境だからって、星系内には早期警戒システムがあったんだぞ、そのどれかひとつでもあれば、超光通信で、何が星系内で起きたかぐらい、他の星系に中継が……」
「それはボクが演習で、ひとつ残らず叩き潰せることはやって見せたでしょ」
「しかしな、縮退炉ってのは暴走すればえらいことになるから、防護壁だって厳重に……」
「戦艦の艦砲射撃ならあんなもの薄紙と一緒だよ。でもきっとトイブルクで使ったのは、かろうじて暴走しないだけに弄った制御システムで、駆逐艦か巡洋艦クラスの砲撃で、艦ごとぶち抜いたんだと思う」
「証拠は、得られるか?」
「難しいかもしれない。15年も前じゃ、残留物を回収できるかどうか……」

 だがフランチェスカの懸念どおり、仮説を立証できるだけの証拠は得られなかった。

「もうひとつ不可解な点がある」
「なんだい? リッカルド」
「敵はなぜ、トイブルク5を全滅させたんだ?」
「だからそれは、条約違反を隠蔽するためで……」
「俺が言っているのはそうじゃない。なぜ縮退炉まで持ち出して、トイブルク5を消滅させたのかってことだ」
「そんなこと! ……わからないよ」
「それじゃ、敵の行動を裏付けるのには程遠いな」
「鉱物資源……とか?」
「トイブルク星系はごくありふれた星系だ。30年前にわが軍が駐留するまで、生命の痕跡もなかったし、算出する資源もこれと言った物は無い。」
「あたらしい戦術を試して見たかったとか?」
「そんな理由でか? しかもガリエスタ条約違反まで犯して?」
「ううん……」

 フランチェスカは腰掛けていたベッドから立ち上がり、手をあごに当てながら部屋の中を歩き始めたため、リッカルドが伸ばした手は空を切っただけだった。

     *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

「残念ながら、あなたの言うことが事実であるという証拠は得られなかったわ」
「お手数をおかけしました、ジナステラ大尉」
「かわいそうだけど、貴女には軍事裁判を受けてもらう」
「ええ、わかっています。でもこの子は……エルザだけは」
「その子、"ラヴァーズ”なんでしょう?」
「い、いえ! いえ……隠しても、無駄なんですよね」
「蘇生させる時に、体細胞のサンプルをとったからね」

 エミリアがうなだれると、それまでエミリアの陰に隠れるようにしていたエルザがフランチェスカにいった。

「おねえちゃんは、えみりあおねえちゃんをいじめる、わるいひとなの?」
「エルザ、この方は……。このお姉さんは悪い人なんかじゃないわ。大尉すみません。エルザが失礼なことを」
「いいえ、かまわないわ。その子、記憶は?」
「この子は何も、何も覚えていないんです。だから、できれば普通の女の子として、暮らしていけるようにしたいと思ったんです」
「あなた、エルザちゃん……だっけ? あなたは男の子? それとも、女の子?」
「えるざ、おとこのこ」
「エルザ! ち、ちがいます。大尉、この子、本当は何も覚えてなんか」

 慌てて取り繕おうとするエミリアを、フランチェスカは手で制した。

「カセラート准尉。事実を隠し通すことはとても難しいわ。うまく隠したつもりでも、いとも簡単に露見してしまうことがある」
「で、でも! 私はエルザをラヴァーズなんかにしたくないんです。こんな、何も知らない小さな子を。好きでラヴァーズになった大尉にはお分かりにならないでしょうが……」
「カセラート准尉! 私が好きでこの体になったと思っているの?」

 フランチェスカが崩壊しかけた瀕死の艦隊の士気を立て直そうと、ラヴァーズになったのは決して本意ではなかった。
 リッカルドの指示を無視して、ラヴァーズ選出のくじに加わったのは、確かに自分の意思ではあったが。
 
「す、すみませんっ 大尉!」
「おねえちゃんをいじめないで!」

 エルザはエミリアとフランチェスカの間に、両手を広げて立ちはだかった。


「准尉。あなたの時代ではラヴァーズは虐げられ、冷遇されていたかもしれないけれど、今はそんなに酷い扱いは受けないわ。あなたがいうように、好きでラヴァーズになった人だっている。だからラヴァーズだから、不幸になるのが当たり前になるだなんて考え方は止めて」

「でも、それでも私はこの子を、エルザをラヴァーズにしたくは無いんです!」

 そういうとエミリアは、フランチェスカとの間に立つエルザを抱き寄せた。

「私たちは、その子をラヴァーズにするとは言っていないわ」
「わかっています。でも、私は……、兄……いえ、あの人が家族のように思ってくれた、あの子を守ってあげたいんです……」

「エルザちゃん、よく聞いて。エミリアお姉ちゃんと一緒にいたかったら。あなたは“女の子”じゃないといけないのよ。あなたは生まれつき“女の子”。わかった?」
「えるざ、おんなのこ……」
「そう。ちゃんと聞き分けてね。エミリアおねえちゃんのいうことをよく聞いて。約束できる?」
「やくそくすれば、もうおねえちゃんのこと、いじめない?」
「約束するわ、エルザちゃんは?」
「やくそくするー」

 ゆびきりの誓いをするエルザとフランチェスカを見ていたエミリアは、ため息をついて言った。

「大尉……、私……」
「事実を変えることはできないわ。でも書類は作ることができる。この子が行方不明の、ただの少女であると言う書類ぐらいなら」
「……大尉、ありがとうございます」

「でもこれだけは、覚えておいて。ラヴァーズだからって不幸になることが決まっているなんて事は絶対に無いわ」

 エミリアははっとした。いつも自分が候補者たちを励ますためにいっていた言葉。
 『ラヴァーズだって、悲しいことばかりじゃない。生まれ変わったんだから、絶対に、幸せになれる権利がある』 
 その言葉を本当に信じていなかったのは、エミリア自身だったのかもしれない。

<つづく>

星の海で(4) 〜トイブルクのエミリア〜 (11)

(11)-------------------------------------------------------

「……で、何も聞き出せなかったの?」
「はい。すみません、大尉」
「あなたがトイブルク出身だったとは、私もうっかりしていたけど、昔話をするためにカセラート准尉の世話をするように言ったのでは、ありませんよ」
「申し訳ありません。でも……」
「まぁ、いいでしょう。懐かしい人に再会できたのなら、仕方ないわ」
「それで、生存者捜索の件なのですが……」
「15年も前の事件ですからね。無駄でしょう。あの二人のポッドを回収できたのは奇跡に近いわ。彼女たちの蘇生だってぎりぎりだった。あと半日も回収が遅れれば、ポッドの電池が放電しきっていて、完全に凍結していたでしょうね」

 コールドスリープと言っても、完全に人体を冷凍させるわけではなく、低温状態で代謝機能を極限にまで下げているだけだった。もし救命ポッドの電池が切れ、宇宙空間と同じ絶対零度にまで肉体が凍結してしまっていたら、蘇生はまず不可能になる。

「それでは……」
「艦隊はこれから訓練に入ります。15年前、本当に敵がいてトイブルク5を陥としたのか、それを検証します」
「検証?」
「艦隊をショートジャンプでカイパーベルト全域に散開させた後、ステルスモードで公転面を時計方向に渦を巻くように、中心に向かって星系内に進入します。カセラート准尉の言うとおりに、早期警戒システムに察知されずに奇襲をかけたのなら、敵はおそらくそうしたはず。艦隊の隊形を維持したまま恒星系内に侵攻したのなら、重力異常で即座に探知できますからね」
「大尉は、エミリア教官の証言を、信じてはいらっしゃらないのですか?」
「それを確かめるのです。それにこの方法を使えば、短時間で恒星系内の探査ができるわ。人工物体の残骸でもあれば、見つけることができるかもしれない」
「あ、ありがとうございます! 大尉」
「あなたはもう一度、カセラート准尉のところに行って、脱出時の話を詳しく聞いてきて下さい」
「判りました!」

 メリッサは笑顔で敬礼すると、エミリアの病室へと走った。
 フランチェスカも戦闘副官席に着くと、司令が声をかけてきた。

「いっぱしの指揮官らしいじゃないか、フランチェスカ」
「リッカルド。見てたの?」
「まぁな。突然訓練を行いたいとか言うから、何かと思ったが、そういうことだったのか?」
「トイブルク5の事件には、謎の部分が多いからね。何故突然大規模な天体現象が起きたのか。カセラート准尉の言うとおり、敵艦隊の襲撃だとしたら、短時間のうちに惑星ごと焼き尽くすほどの火力を、どうやって投入したのか」
「それが、この方法だというのか? えらく面倒な作戦だな」
「ばかげてるって、思ってる?」
「いや、お前がそういうんなら、きっとそうなんだろう」

 リッカルドがフランチェスカの肩に手を伸ばそうとした瞬間、作戦参謀が報告にきた。

「提督。艦隊の配置終了しました。いつでも開始できます」
 
 リッカルドは小さく舌を鳴らすと、フランチェスカに言った。

「お前が考えた訓練メニューだ。お前が指揮を執れ」
「いいの?」

 リッカルドはリクライニングシートを倒し、興味がないかのように手をひらひらとさせて応えた。

「では参謀、私が指揮をします。訓練開始!」
「アイ、マム! 訓練開始!」

     *---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*

「―――以上よ。ジナステラ大尉にも報告したとおり、それ以外のことは何も」
「そうですか……」
「私たち、どうなるのかしら?」
「大丈夫ですよ、エミリア教官。大尉がきっと、教官の嫌疑を晴らしてくれます」
「脱走兵もしくは惑星犯罪者とはね……。私はいいけど、この子が心配だわ」
「あの、教官? その子は本当は誰の子なんですか? 誰にも言いませんから、私には本当のことを教えていただけませんか?」
「この子は……トイブルク最後の、ラヴァーズ候補生」
「ラヴァーズって、こんな小さな子が!?」
「できれば、ラヴァーズにはしたくないわ。この子、記憶がないの。だから普通の女の子として、暮らしていける筈だわ」

 メリッサが手を伸ばしてエルザの頭を撫でようとすると、それを避けるようにエミリアの膝の上から飛び降りて、とととっと、ベッドの周りを走りってメリッサとは反対の側に隠れるように身をかがめた。
 最初に目覚めたときの印象が良くなかったのか、エルザはメリッサに警戒心を解かなかった。
 
「教官は、ラヴァーズ法には、今でも反対なのですね」
「あなただって、好きでなったわけではないでしょう?」
「そうですね。でも、今はだいぶ変わりましたよ。ラヴァーズを取り巻く環境も」
「そういえば、ずっと気になっていたんだけど、そのチョーカーは何? 階級章みたいに見えるけど」

 メリッサの首元に光る、ラヴァーズ徽章に気づいたエミリアは尋ねた。

「これですか? これは……そういえば、教官はご存じないですよね。10年ほど前から、ラヴァーズにも階級待遇制度が導入されたんです。軍属と同じように給料も支払われますし、民間施設でも軍人と同じ扱いになるんですよ」
「そうなの? 信じられないわ」
「今はどこも人手不足で……。昔みたいに死刑囚をラヴァーズにしているだけでは足りないんです。それに性奴隷みたいな扱いで軍隊に従事させられている人間がいるなんて、人権委員会が黙っていませんから」
「そう、なの……?」
「ほらこの徽章。星じゃなくてハートの形になっていますけど、曹長待遇なんですよ、私。その気になれば退役もできますし、自分よりも下の階級の下士官や兵士なら、“お誘い”を断ることもできるんです。もちろん、上官だからって、無理やりに乱暴されることはありません」
「眠っている間に、ずいぶん変わったのね」
「ジナステラ大尉も、元ラヴァーズだったそうです。もっとも大尉の場合は、ちょっと事情が違いますけど」
「あの若い女性士官の方が?」
「ええそうです。私たちラヴァーズのことを気にかけてくださっていて、いろいろ便宜を図ってくださっています。艦隊幕僚とはいえ、今は尉官なので人事権は無いそうですが、『少佐になったら艦隊全体のラヴァーズを集めて、部隊を編成する』って言ってましたよ」
「部隊を?」
「今は個人ごとにバラバラなので、艦隊全体のラヴァーズを統括して、なるべく個人毎の負担が少なくなるようにしたいと、おっしゃっていました」
「なんだか信じがたい話だわ」
「この艦に限っては、既にジナステラ大尉の発案で当番制が試行されていて、私たちこの艦のラヴァーズの負担は、だいぶ軽減されていると思います」
「そう、なんだ……」
「教官はおっしゃっていましたよね。“いつかきっとラヴァーズだからって虐げられたり虐待されない、そんな風な仕組みを作りたい”って。少しずつですが、教官の望んでた事が実現してきていると思います」
「……」
「昔は……本当にこの仕事が嫌でした。戦闘に巻き込まれて死ぬかもしれないし、そうで無くても毎日、不安や不満を抱えた兵士たちのはけ口にされて、心も体もボロボロでした」
「そうね。だから私は、そんな状況を何とかしたかった」
「教官、初めてお会いしたときの事、覚えていらっしゃいますか?」
「ええ、あなたはとても泣き虫だったわ」
「私、今思い出しても恥ずかしいぐらいの、泣き虫でしたからね」
「突然記憶のほとんどを奪われて、罪悪感だけを心に深く刻み込まれたうえに、あんな教育を受けさせられていたんですものね。無理も無いと思うわ」
「そうですね。女であることを意識させられる服を着せられて、言葉遣いとかお化粧やら立ち居振る舞いやら……。特にセックスの授業が一番嫌だった」
「あなた、最初の授業のとき、内容を聞かされるなり逃げ出して、トイレに立てこもったこと覚えてる?」
「ええ、もちろん。あのときのゲンコツの痛みは、今でも思い出すと頭がずきずきします」

 その時の罪滅ぼしであるかのように、エミリアはメリッサの頭をそっと撫でた。

「あなたたちの将来に、直接関る事だったからね。心を鬼にしてゲンコツでも何でもしたわ」
「将来ですか……。あの頃は、私の人生は完全に終わったと思っていました。記録では死刑囚だったんだからとっくに終わっていてもおかしくなかったんですけど。私はそれをどうやって終わらせるか、そんな事ばかり考えていたときもありましたよ」
「でも、私は自殺なんて絶対に許さなかった」
「そうですね。教官はそんなときにいつも言ってましたね」

「「ラヴァーズだって、悲しいことばかりじゃない。生まれ変わったんだから、絶対に、幸せになれる権利がある」」

 二人はお互いの顔を見合わせると、くすっと笑った。

「教官のおっしゃっていた事は、本当だったんだって、つい最近知りました」
「?」
「私、前の艦隊で恋人ができたんです。がさつでデリカシーのかけらも無い人でしたけど、妙に私とウマがあって、付き合いが長かったんです。その彼が、結婚しようって言ってくれた時は、その言葉が信じられませんでした。だって、私はラヴァーズですから」

 メリッサは目を閉じチョーカーのラヴァーズ徽章をそっと手で押さえた。

「でも、前の寄港地で、その恋人を亡くしたんです。事故でした。彼は私をかばうようにして亡くなりました」
「それは……、残念だったわね」
「軍属だから、人が死ぬ事には慣れていました。医務室で前の晩に寝た兵士を看取った事もあった。でも……今でも信じられない……」

 メリッサは手をぎゅっと握り締め、うつむいた。

「だから私、本当は信じてなんかいないんです。彼が死んだなんて。きっとどこかにいるって。だから私はこの艦に乗って、彼を探し続けているんです」

 エミリアはすっと手を伸ばして、メリッサの頬に手を当てた。
 メリッサは昔、良くこんな風にエミリアに慰めてもらっていたことを、思い出した。
 懐かしい人の懐かしい仕草に、辛かった15年以上も前のあの頃の思い出が、鮮明によみがえってきた。

 15年前、メリッサは泣き虫で弱虫で、何も出来ないラヴァーズだった。
 自分の身に起きた出来事を受け入れることができず、エミリアを困らせてばかりいた。
 食事にも手をつけず、死んだ方がマシだと何度も訴えて、自殺しようとしたこともあった。
 だがそうせずに今生きているのは、エミリアが献身的にメリッサのことを慰め、励ましてくれたからだった。

「教官がおっしゃったとおりでした。ラヴァーズだって、悲しいことばかりじゃないって。生まれ変わったんだから、絶対に、幸せになれる……権利が、あるんだって……ぐすっ。でも……、会いたい! もう一度、マルチェロに……会いたいよぉ……」

挿絵3

挿絵:東宵 由依

 メリッサは泣きべそをかきながら、エミリアにしがみついた。
 そんなメリッサをエミリアは優しく抱きとめながら、泣きじゃくるメリッサの頭を撫でた。
 
「泣き虫メリッサに戻ってしまったわね……」
「だって、ひくっ……。ずっと、我慢してたのに……。ぐすっ、教官が、あんまり昔のままだから……」

 エミリアは膝の上で子供のように泣きじゃくるメリッサの頭を、泣き止むまでずっと撫で続けた。

<つづく>

星の海で(4) 〜トイブルクのエミリア〜 (10)

(10)-------------------------------------------------------

 メリッサは旗艦アンドレア・ドリアに所属する所属するラヴァーズの中でも、一番階級が上の曹長待遇だった。
 そのためラヴァーズのまとめ役をしていた彼女に、雑務の多い艦隊司令副官のフランチェスカから、彼女の代わりにエミリアの身の回りの世話をするようにと、頼まれていた。
 メリッサは15年も前に、コールドスリープで眠り続けていたというラヴァーズに興味を感じ、二つ返事で引き受けたは良いものの、その手始めに手間のかかる少女の面倒まで見させられるとは、予想していなかった。
 手間のかかる少女――エルザは、冷凍睡眠から覚醒するなり、どこにそんな元気があるのかと思えるほどに泣き喚き、『おねえちゃんはどこ?』と、メリッサを煩わせた。
 メリッサは子供みたいに甘えたりわがままを言う、大人の男たちの相手をするのには慣れていた。
 だが、ぐずりつづける正真正銘の少女の扱いには困り果て、『検査がまだ残っているから』と難色を示す艦医を説得して、件のラヴァーズの元へエルザを抱きかかえて訪れたのは、その翌日だった。

「おねえちゃん!」
「エルザ! 良かった。無事に蘇生できたのね」
「エミリア教官……? あの、失礼ですが、エミリア教官では?」
「あなたは……]
「メリッサです。トイブルクでお世話になった……」
「ああ、覚えているわ。去年……といっても私にとってだけど、確か……再教育ぎりぎりで、修了試験を3回も受けなおした……」
「はい、そうです! 覚えていてくださったんですね」
「私、15年も眠ったままだそうね。私のことを知っている人がいて、良かったわ」
「あの時は、お世話になりました」
「あなたは、ずいぶんきれいになったわね。見違えたわ。体つきもすっかり女性らしくなって、お化粧もうまくなったわね」
「あれからもう、15年もたちましたから」
「そうね、そうだったわね。いまでもラヴァーズを?」
「ええ、その、いろいろとありまして……」
「事情があるのなら聞かないわ、でも曹長待遇なら、後もう少しの辛抱ね」
「ええ、まぁ……。あ、暫くは教官のお世話をするようにと、ジナステラ大尉から言い付かりましたので、何でもおっしゃってください」
「ありがとう。それで、この子の体のほうは?」
「肉体的には、特に問題は無いそうです。激しい運動はまだダメですけど」
「そう、良かったわ」

 エミリアがエルザの頭を撫でてやると、エルザもうれしそうにエミリアに抱きついて頭を摺り寄せた。

「この子、教官の娘さんですか?」
「え? いえ、この子は……とある人から預かっているのよ」
「す、すみません、教官。いえ、あのぉ、ほら! 教官には恋人がいらっしゃったじゃ無いですか、だからてっきり……」
「恋人?」
「教育隊の隊長ですよ。私たち候補生の間では、いつ結婚なさるんだろうって、噂してたんですよ」
「あの人は……兄よ」
「ええっ!? そ、それは知りませんでした」
「私も最近……といっても、コールドスリープに入る直前に、知ったばかりだけどね。それに、たぶん……」

 エミリアの心の動きを敏感に感じ取ったのか、エルザはエミリアにきゅっと抱きついて、心配そうに見上げた。

「おねえちゃん、どこかいたいの?」
「なんでもないわ、エルザ。心配しなくていいのよ」

 その様子に、メリッサは自分の失言を後悔した。
 メリッサにとっても思い出深い、トイブルク基地がどうなったか、忘れていたわけではなかった。
 だが15年前とほとんど変わらぬ姿で目の前にいるエミリアを見ていると、あのときに戻ったような錯覚を覚えていたのだった。

「申し訳ありません、教官」
「どうして、謝るの?」
「その、トイブルク基地は……」
「全滅、したそうね」
「はい……。あ、でも、きっと教官のように脱出した人がいますよ。私、ジナステラ大尉に頼んで、周辺を捜索してもらうように頼んできますから。きっと教官のほかにも、生存者がいますよ!」
「そうね……ありがとう、メリッサ」
「いえ、任せてください。必ず、教官の嫌疑も晴らして見せますから!」
「嫌疑?」
「あ、いえ、その、なんでも……。し、失礼します!」

 メリッサは、エミリアに脱走兵の疑いがかけられているなどとは、信じたくなかった。
 それにフランチェスカからは、まだ軍事裁判についてのことは、蘇生間もないエミリアの心理状態を不安定にさせるから、本人に言ってはならないと、釘を刺されていた。

<つづく>

星の海で(4) 〜トイブルクのエミリア〜 (9)

(9)-------------------------------------------------------

「それで、どうする? リッカルド」

 艦隊司令が使う、少し広め――といってもフランチェスカのよりも少し狭かったが、賓客を迎えることもあるリッカルドの私室で、フランチェスカは部屋の住人と共にくつろいでいた。

「どうするって、軍事裁判しかないだろう。“脱走兵”なんだから」
「だって、唯一の生存者だよ?」
「地上要員が勝手に持ち場を離れて、恒星系外縁を漂っていたんだぞ? しかも戦闘艇の脱出カプセルで」
「トイブルク5の危機を見越して、脱出したんでしょ?」
「それじゃ何で通常の遭難信号を発信していなかったんだ? それにカイパーベルト天体軌道に乗るとなると、それなりの準備が必要だ。怪しすぎる」
「でも……」

 フランチェスカはグラスに氷を入れながら、リッカルドを見た。

「記録では敵の艦隊も味方の艦隊もトイブルク5からは、遥かに離れた距離を遊弋(ゆうよく)していた。トイブルク5に敵襲があったという記録はない」
「本人は、『敵襲があったので偵察命令を受けていた』って言うんだけど、回収できたのは、ポッドだけだったから……」
「その敵がいないのにか?」
「まだそうと決まったわけじゃないよ」
「どの恒星系にも、早期警戒システムがある。敵が居たならそれは直ぐにこちらの知るところとなる。だが公式には何も記録されていない」
「彼女が嘘をついているって、言うの?」
「あまりに怪しい点が多すぎるからなぁ」
「残っている記録が乏しいから、事実がわからないだけだよ」
「それにトイブルク5の件に関しては惑星テロの疑いがある」
「テロぉ!?」

 フランチェスカはリッカルドの意外な言葉に聞き返した。

「あのなぁ、自然現象であんなことが起きるわけ無いだろう? 人為的な何かが無ければ、一瞬のうちに大規模な天体現象なんて起きないよ。それは、記録を調べたお前だってわかるだろう?」

 リッカルドはフランチェスカの用意したグラスを受け取ると、めんどくさそうにソファに深く腰掛けた。

「確かに不自然な点が多すぎるのは認めるよ。でもだからって、彼女が惑星犯罪に関係しているとは限らないでしょう?」
「戦闘艇は何がしかの命令が無ければ動かせない。航法システムは正規の命令コードが無ければ、ロックされたままだからな。そしてそれは救命ポッドにも同時に記録されることになっている。それが無いって事は、なにかしらの非正規的手段で戦闘艇を動かした事になる。彼女の載っていた救命ポッドには、何の記録も無かったのだろう? 仮にあれば、遭難した時点で艦政本部のデータバンクに登録されて、とっくの昔に発見されているはずだしな」
「何らかの理由で消えてしまったとか?」
「命令コードを記録するチップは、そんなやわなものじゃないし、カプセル自体がダメージを受けて回収不能にならない限り、消えたりしない」
「誰かが救命ポッドに細工したとか?」
「何のために? そんな事するぐらいなら、回収するか、それが嫌ならブラックホールか恒星に突っ込ませたほうが早い」
「だからって、彼女がテロリストだとは……」
「俺が問題にしているのは、彼女が命令無しに前線から離れたことだ。犯罪者だとは思っていない」
「15年も前の話だよ?」
「せめて、命令書なり何なりの記録があればなぁ。本当に何も無いのか?」
「今のところは……」

 フランチェスカは、自分のグラスを見つめた。

「“惑星犯罪に関与して”いれば即死刑だし、そうでなかったとしても“命令服従違反”の上に“命令コードの偽造”なら極刑だからな」

 フランチェスカは、むっとした表情でリッカルドからグラスを奪い取ると言った。

「そんな、確たる証拠も無いのにあんまりじゃない? 命からがら脱出して、15年も眠り続けて、目覚めたら死刑だなんて! 何のために裁判するのさ!」
「俺に言うなよ。まだ死刑と決まったわけじゃない。軍事裁判といっても、事実関係を確認して、軍規のとおりに処罰を決するのが決まりだ。判決は軍令部の人事コンピュータが出す。一応の権威が必要なので、現地司令官が法廷を開くが、あんなもの、総務部の派遣アルバイトだってできる」
「それじゃ、法廷なんか開かなくたっていいじゃない。それに……」
「なんだ、元ラヴァーズ同士の情けって奴か?」
「それなんだけど……、小さな女の子のほう。あの子も、どうもラヴァーズみたいなんだ」
「ん? それは聞いていないぞ」
「コールドスリープから覚醒させる前に体細胞のサンプルを取るじゃない? 分析してみたところ、DNAに改変の後があるって、軍医が……」
「あんな小さな子が?」
「体の大きさは、性転換処置の長さで決まるからね」
「なるほど、確かに小さいな」

 フランチェスカの胸に手を伸ばそうとするリッカルドを、睨み付けながら手の甲をつねった。

「もしかしたら敵が迫っていたので、急いで処置を終わらせたのかも。だからどの記録を当たっても、あの少女のことは出てこない」
「それで?」
「それに、トイブルク駐留の教育隊ってラヴァーズの教育班があってね。カセラート准尉は、その教官だったらしいんだ」
「らしいってのは、どういうことだ?」
「15年も前に消滅した部隊のことだよ? 核恒星系のライブラリにでも行かなきゃ、調べられる情報には限りがあるんだ」
「脱走兵に、未登録のラヴァーズ候補か。どうすりゃいいんだ、ったく……」
「温情ある措置をお願いしますわ、提督」
「それは副官のがんばりに、左右されるかもな……」

 リッカルドは隣に座っているフランチェスカの腰に手を回して抱き寄せ、胸のあたりを撫でた。

「どこ触ってんだ、このスケベ!」
「ん? 触らせるために来たんじゃないのか?」
「あの二人のことを相談しに来たんだよ!」
「んじゃなぜ下着姿で、オレの部屋のソファに並んで座ってるんだ?」
「あ、暑いからだよ! この部屋」
「なら、そんなにくっつくなよ」
「うるさいな。いいだろ、そんなこと!」
「大尉、正直に言わないと、偽証罪で裁判だぞ」
「へえ? 嘘をついたら、どういう罰があるのかしら?」
「今からじっくりと教えてやるよ……」

<つづく>

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