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催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) プロローグ   レビュー追加!

2016Q3おかし製作所DMM販売数26位

作.真城 悠 http://kayochan.nobu-naga.net/forblog.htm
絵.蜂蜜柑 http://mikanmiakn.blog.fc2.com/

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ととやすさんからレビュー頂きました!
「私のtsfの原点である真城悠さんの長編小説です。今作は真城さんも非常に力を入れておられるようで、なんとイラスト12枚も挿入された豪華な内容となっています。小説本編の方もそれに恥じぬ非常に濃密なものとなっています。話としては、非常にダーク、かつサドスティックなものとなっており、ハッピーからは程遠いです。ですが、何故か読む手が止まらない、不思議な魅力に溢れています。これはひとえにキャラクターの個性によるものでないかと。どんなに絶望的な状況でも、本作のキャラクターはもがき、苦しみ、失いながら前へ進みます。願わくは彼ら彼女らが最期に見る光景に少しでも幸せがありますように。そう思わずにはいられません。余談ですが性転換中の描写の濃さや、衣装へのこだわりっぷりに真城さんらしさを強く感じます(笑)。」

0 表紙

プロローグ

「動くな!」

 こけおどしにしか見えないのは承知していたが、俺は銃を構えた。
 それもチャチなハンドガンじゃない。両手で抱える長物で、はた目にはライフルに見えるだろう。

 これは暴徒鎮圧用のゴム弾を発射するための銃である。
 ゴム弾はよほど当たり所が悪くない限り殺傷能力は無い。怪我もさせないが猛烈に痛い。

 実銃は下手すると相手が死んでしまうのでおいそれとは撃てず、またハンドガンともなると命中精度は著しく落ちる。ロクに訓練もしていない人間が確実にかつ殺さずに末端などに当てて対象を無効化するのは至難の業だ。いっそ殺す方がずっと楽である。

 つまり、こと銃社会でない我が国に於いては威嚇用としても戦闘用としても中途半端なのだ。実銃を持つよりも暴徒鎮圧用非殺傷兵器の方があらゆる意味で実用的である。

 派手な音が響き渡った。

「ぐぎゃあああああ~っ!」

 相手を殺さないため、威嚇射撃無しでいきなりブチ当てて確保のために使うことも可能だ。
 オレは手際よくロープでその男を後ろ手に縛り上げ、薄汚れた廊下のパイプに括り付けた。

 男はみっともなくわめき声を上げ続けた。よほどいいところに当たったと見える。

「いいから黙ってろ!男ならぴーぴー泣くな!」

 なおもわめき続ける男を尻目に再びゴム銃を手に取るとオレはゆっくりと歩き始めた。
 情報を信じるならこの先の袋小路にターゲットがいるはずだ。

 逆手にした左手に懐中電灯を構え、右手を突き出すスタイルでゆっくりと歩を進める。

 3つほど部屋があった。

 一つ一つを開けては無人であることを確かめ、遂に一番奥の部屋へと到達する。
 ドアノブに触れると鍵は掛かっていない。

 ドアノブなんてのは一番トラップを仕込みやすい。

 鍵穴に百円ライターのガスを充満させておけばマヌケがガチャガチャやった瞬間に反対側から火を付けて火傷(やけど)を負わせることもできるし、金属製であることを利用して感電させることもできる。

 だが、オレのカンはその手のトラップは仕込まれていないと言っていた。

 思い切ってドアを開ける!

 ドアは外側に向かって開いた。

 正面を避けてドアと一緒にのく。

 ドアが開くことを利用したワイヤー式トラップならばここで散弾銃が発射されたり、或いはクロスボウ・ガンが起動してマヌケな闖入者を串刺しにしたりするのだが、そうしたものが飛んでくる気配はない。

 ゆっくりとドアの中を覗き込む。

「…」

 そこには一見して髪の長い女がぐったりとうなだれていた。
 椅子に縛り付けられているのか、倒れそうなのに椅子から離れない。

 オレの視線は周囲に散った。

 目立つものがどでん!と置かれているということはここに視線を引きつけたいってことだ。

「…っ!」

 カンが的中した。

 小汚く散らかった部屋の中を踏み越える様に小さな人影らしきものがこちらに向かって突進してきたのだ。

「うわあああっ!!」

 思わず引き金を絞る。
 轟音と共にゴム弾が発射され、部屋の中の一部を破壊した。

 人影はオレの脇を駆け抜けて部屋の外に走り去った。

 …女?

 肩より少し長い髪をふり乱したその人物は非常に小柄で華奢であった。

「止まれ!止まらんと撃つ!」

 部屋を出たオレは廊下の遥かに先を走るその人影の背中に向かって怒鳴った。
 なんという足の速さだろう。

 こうして見ると確かに女だ。
 白いワンピースを思わせるスカートのシルエットが確認出来る。

 背中に向けて照準を合わせる。

 逃げる女を背後から撃つのは、実銃なら抵抗があるんだろうがこいつなら大丈夫。

「…」

 元々近接戦闘しか想定していない。まさかこんなので狙撃するなんて思ってない。この距離じゃあまず当たらないし、当たっても鎮圧効果があるかどうか分からない。

 このクソでかいゴム弾は直進安定性なんぞあるまい。空気抵抗でどう蛇行するか分かったもんじゃない。だが、千載一遇のチャンスだ。

 オレはその小さな背中に向かってゴム弾を発射した。

 予想通り妙な軌道を描いたゴム弾は背後から見るとハッキリ分かるほどぐにゃりとひん曲がって壁に激突し、あちこちを跳ね回った末に床に落ちた。

 女はもう廊下の端を曲がりこんでいた。
 今から追いかけてもまず捕まるまい。恐ろしいすばしっこさだ。

 そしてこれが、オレが奇妙な世界に迷い込むきっかけとなったということをこの時点でオレは知る由も無かった。

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正義のヒーロー  (真城悠) サンプルちょい見せ①

2016Q2おかし製作所DMM販売数6位

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正義のヒーロー


 絹を裂く様な悲鳴が轟いた。
 その若い女性は何事かを発しようとしているのだが、あまりの恐怖に意味のある言葉にならない。

 人気の無い寂しい路地裏に追い詰められた若い女性の目の前には表情をうかがい知ることが困難なサングラスと、人相の特定を困難にするニット帽を被った男がいる。

「ねーちゃん。金出しな」

 若く見えるがしゃがれた声でその男が言った。

「い、いや…」

 半ばパニック状態の女性はミニのタイト気味なスカートで尻餅をつき、ガタガタと震えている。

「出せって言ってるんだよ!」

「きゃあああーっ!」

 その時だった。

「ちょっと待ったーっ!!!」

 路地裏の行き止まりに向かって若い女性を追い詰めていた暴漢の背後から澄んだ声が響いてくる。

 思わず暴漢が振り返る。

 逆光気味であるためにシルエットが浮かび上がった声の主は、驚いたことに小柄な女子高生だった。
 黒い革靴に太腿が丸出しのミニのプリーツスカート。クリーム色のベストにワンポイントの赤いリボン。
 そしてこれまた紅いリボンでその長い髪を左右にツインテールで分けている。

「そのお姉さんを放すんだ!」

 声の出し方なのかトーンのせいなのか、甲高いはずの声がまるで少年の様に聞こえる。

「へっ!何だお前は!?」

 声の主の『正体』が分かった暴漢は次の瞬間には空中を一回点して背中から地面に叩きつけられていた。

「ぐはぁっ!!」

 ロクな受身も取らなかった暴漢は一瞬呼吸困難になったショックで気絶してしまう。

「あちゃー、本当にノビやがった…まあ、命に別状無いみたいだからいいか」

 特に姿勢も崩していない様に見えるツインテールの女子高生がパンパン、と手を払っている。

「お姉さん大丈夫ですか?」

 逆光でよく見えないが、可愛らしい笑顔でへたりこんでいる女性に手を伸ばす女子高生。


 その記事が載ったのが別件とあわせても一ヵ月後の地方新聞の夕刊紙の隅っこである。
 記事には追加して別に襲われた女性のことも取り上げられている。
 全員に共通しているのは、年のころは十六から十七くらいに見える少女に危ないところを助けられた…ということだった。
 暴漢は決まって男で、時には刃物も振り回していたらしいのだが、少女に掴みかかると同時にあっという間に一回転してしまう。
 記事には専門家の話として、合気道等のように相手の力を利用する武術の達人なのではないか…という分析コメントが掲載されている。

 これだけならばそれほどの話題性は無かっただろう。
 だが、これを地方ニュースが再現映像と共に伝え、更に全国ニュースが取り上げた。
 面白がったインターネットのニュースサイトが配信した事で更に拡散する。

 しかし、この記事には実は重大なポイントが抜けている。
 恐らく、その一点を加えることで途端に記事が馬鹿馬鹿しくなってしまうために敢えて無視したのだろう。
 地元民の書き込みと、そのインターネットニュースサイトの独自取材によって、一部の掲示板の無責任な名無し書き込みでは話題に上っているが、今もってその部分を含めることなく流通している。

 その「謎の女子高生」は最初の事件でこそツインテールの制服姿であるということになっていたが、その後は推定年齢に言及するくらいで、風貌に関しての情報がなくなっていた。
 制服にしてもこれといった特徴に乏しいため、セーラー服の可能性を排除出来るくらいで、「謎の女子高生」の正体を特定する手掛かりにはなりそうになかった。

 俺はどうしてそのディティールが省略されているのかを知っている。
 理由は簡単で、「謎の女子高生」は現れる度に全く違う格好をしているからだ。
 ある時はボンデージの女王様風。ある時は看護婦さんの白衣、またある時はアニメのヒロインの大仰な鎧のコスプレ…ってな具合である。
 書き込みを見ると、ある人間は深夜の住宅街を歩く妖艶なバニーガールを目撃したといい、はたまたある者はどういう訳か事件の現場近くにからからとカートを引きずるスチュワーデスを目撃したともいう。
 実は「謎の女子高生」と思われる人物は、余りにも突飛な格好故に職務質問されたらしい形跡もあるのだ。

 その時はというのは、深夜に若い女性が辻斬りに遭うという通報が多発していたため、巡回していた若い巡査によって声を掛けられた。
 なんと、月明かりもまぶしい深夜に純白のウェディングドレスをずるずる引きずりながら歩いていた。
 その巡査は余りにもシュールな光景に「花嫁の幽霊」ではないかと身震いしたそうだが、ドレスの裾を踏んで止め、職務質問に及んだという。
 
 ところが職務質問中に花嫁は突如駆け出した。
 警官は当然制止しようとするのだが、多くの暴漢と同じく投げ飛ばされてしまう。
 だが、警察官は全員柔道が必修である。
 どうにか受身を取ってダメージを最小限に抑え、その花嫁を追いかけると既に事件は終わっていた。

 路地裏に追い詰められていた暴行魔を花嫁が投げ飛ばした後だったのである。
 職務上、その暴行魔を取り押さえている間に花嫁は逃走してしまったのだった。

 これらの事件において、直接の被害者以外の目撃者として「警察官」というのは最も強力なそれなのだが、情報が余計に混乱しただけだった。

 この他にも沢山あるんだが、報道されたり掲示板で噂になっているのはこれくらい。
 どうして俺がそれを知っているかって?

 まあ、理由は簡単にして単純明快だ。
 この「謎の美少女」が俺だからだ。

 俺は都内に住む何の変哲も無い男子高校生。
 公立の共学に通い、成績も中の中。最初から高校生活を4年と考えるようなだらけた生活をしている。
 今も噂のニュースをスマホでぐりぐり見ているところだ。

 俺がこんな事を始めるきっかけになったのは最初の事件が起こる前のこと。
 インターネット上に適当につぶやけるツールを使っていたら突如ダイレクトメッセージが来た。

 話を要約すると「正義のヒーローになりたいか?」というようなものだった。
 正直、余り相手にしたくない手合いだなと思ったのだが、「出来るもんならやりたいね」と答えた。

 その結果がこの有様だ。
 ウチの近所は決して治安が悪い訳じゃないが、都心に近いベッドタウンなので人口そのものが多く、それなりに事件は起こる。
 この頃はそういった犯罪グループが暗躍してるなんて物騒な噂もあるのだ。

 細かいディティールについて話しているとそれだけで一冊の本になるから大幅にはしょると、俺は「変身」をすることで途轍もない機動力と戦闘力を持つに至ったのだ。
 半径数十キロ程度なら一瞬で移動する。
 多分ワープしてるんだろうが、よくわからない。
 更に、プロレスラーみたいな大男だろうが、刃物を振り回すヤクザだろうが、引き締まった格闘家だろうが、直接対決してもまず負けない。
 超能力で相手をふっ飛ばしているのか、格闘の達人でロクに力も入れずに投げ飛ばしているのか良く分からないが、「圧倒的」な戦力差で勝ってしまう。
 恐らく一度に十人、二十人を相手にしても問題なく勝てるだろう。



不条理短編 手ぶら(正義のヒーローに収録) レビュー追加!

正義のヒーロー  DMM版
正義のヒーロー DLsitecom版

正義のヒーロー

ととやすさんからレビュー頂きました!

「TSF界隈において、華代ちゃんシリーズの生みの親たる真城悠氏を知らぬ者はいないだろう。かく言う私も10年以上前に華代ちゃんシリーズに初めて触れて以来、氏の作品に魅了され続けている(←要するにTSFに入門したきつかけ)。そんな真城氏が電子書籍デビューされたとあっては、手を出さずにはいられなかった。すでに数作品が発表されているが、今回は不条理劇場「手ぶら」について述べたい。TSFファンならば、タイトルの段階で何が起こるかは予想可能であろう。まぁ手ぶらで遊びに行った結果手ブラになるのである。だが、それがいい。不条理でありながらも、どこかコミカルなこの短編は、美麗なイラストと相まって私自身にTSFの原初体験をもたらしてくれる。変に理屈づけることなく、マジカルパワーで
性転換、その後は…という、TSFのエッセンスが凝縮された珠玉の一編である。真城悠氏のTSF短編は、業界屈指である。構成、変身描写、余韻あるオチなどなど、TSF作家にも学ぶところが多いと思う。是非一読してほしい。真城悠氏には今後も長編執筆の傍ら、短編集の執筆も期待させていただきたいです。」

不条理短編 「手ぶら」
作・真城 悠 http://kayochan.nobu-naga.net/
漫画・蜂蜜柑 @mikantsf

「手ぶらで来ていいから」

 確かにそう言われた。

 同じ高校に通う悪友との待ち合わせだ。特にこれといった用事がある訳でもないが、単に都会の真ん中で待ち合わせして遊ぼうってだけ。
 必要なモノは何もいらない…という意味だろうと解釈した。

 実は俺は友人連中の間では「便利屋」で通っていた。

 といっても…自分で言うのもなんだが…少しだけ目端が利くからレンタルなどの存在を嗅ぎ分けたりするのが上手いってくらい。なので「何かを用意していく」のは得意分野だった。

 待ち合わせの場所にもうついてしまった。

 周囲を見渡すが、友人はまだ来ていないらしい。

 忙しく行きかう人の群…群…群…。

 駅前の繁華街らしくビルの壁面に巨大ディスプレイがどっちがアーティスト名でどっちが曲名なんだかも分からないCDランキングをやかましくがなり立て、合間に消費者金融のCMを垂れ流している。

 信号が変わる度に大量の人々が移動を繰り返す。今時七三分けのサラリーマン風スーツの男。季節感が全く無いリクルートスーツの凛々しいお姉ちゃん。スマホをいじりながら歩いている制服姿の女子高生たち…。

 何も準備する必要が無いと言われたのは久しぶりなので逆に困った。

 そうだなあ…それこそ「手ぶら」を準備するとか…まるでとんちだな。

 そう思った瞬間だった。

 全身に違和感がある。

「…?」

 髪の毛がわさわさっ!と伸びた。

「ん!?」

 乳首に違和感を感じるや否や、その周辺が風船を膨らますかの様に皮膚を引っ張り、盛り上がった。

「わああああっ!」

 周囲の視線が集まり始めている。

 その間も変化は止まらず、豊満なヒップが形成され、そこにつらなる脚線美が盛り上がり、指が細くなり、顔の造形がすっきりしていく。

「あ…あ…」

 脂ぎっていて、どれだけ電気カミソリで押し付けてもゴリゴリとした硬さの残る顔の下半分はしっとりと柔らかい、無駄毛ひとつない剥きたての卵みたいな表面の肌になっていく。

「そんな…これは…」

 瞳はぱっちりし、長い睫をぱちくりさせるその可愛らしさは人形の様な美しさだ。

 肉体の変化が終わると、上半身のシャツが消滅し始めた。

「ちょ、ちょっとおおおぉっ!」

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【販売中】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) 第2章6

***

 考えがまとまらない内に山田は次の現場でも暴行と凌辱の限りを尽くした。

 一応罪状を聞き出しはしたし、もしもそれが本当ならこの程度で済んで感謝しろと言いたくなるほど胸糞の悪いものだった。

 だが、それにしたってコイツの口から聞く以上の客観的な証拠などあるわけも無い。それに、ある程度仕方が無いとはいえ、こいつは目撃者までボコる。

 そして…なんといってもサイコパスでないこちらには、どれほどの犯罪者であれ、泣いて許しを請う相手を叩きのめし、レイプされるのを見るのは到底愉快な体験とは言い難い。

***

「お前が追ってる女ってのはこの間オレが目撃した女と同じか?」

 また車で移動中に尋ねた。

「報告書は読んだ。典型的な『催眠術師』の目撃談だ」

「催眠術師ねえ…」

「今警察が総力を挙げて追ってるのがこの『催眠術師』だよ」 

「お前よりもか?」

「失敬な。俺は立派な警察官だぞ」

 笑えねえよ。

「催眠術師の能力についてどう思う?」

「まやかしだ」

 言い切った。

「何故そう思う」

「人間が煙のように出たり入ったりするもんか」

 ま、それはオレも同意見なんだ。問題はそれを警察が血眼になって追ってるってことだ。

 最初は疑問だった山田の投入にも合点が行った。こいつは正に「最終兵器」だ。どんな無茶をしてでも確実にターゲットに迫っている。オレの方がオマケなんだ。
 いや、予(あらかじ)め準備された「共犯者」ってところだ。

 テロリスト同然の奴を野に放って「手段を選ばずに探索」なんぞさせた日には後始末やら尻拭いだけで警察はてんてこ舞いのはずだ。そこまでのコストを掛けてすら警察は「催眠術師」を捕えたいと考えていることになる。

「もしも本当に強力な催眠術を使うんだとしたら…厄介な相手だよな?」

「下らねえ。目の前で五円玉振りはじめたら顔面にパンチを叩きこんでやるさ」

 なんというクラシックなイメージだ。今時そんな催眠術なんぞあるんか。

***

「殺す…絶対にブチ殺す…」

 震える手でオートマチック拳銃のマガジンを抜くと残弾を数えはじめる山田。

 遂に『催眠術師』のアジトとされる廃工場を突きとめたオレと山田は、急襲を決行した。

 どこかからパクってきた自動車にダイナマイトをくくりつけ、アクセルを固定して突っ込ませたのだ。

 細かくツッコむのが嫌になるほどムチャクチャだ。細かい犯罪の数を数えるだけで両手両足の指でも足らないだろう。

 結論から言うとこの襲撃は失敗した。

 死体を見分する積りでのこのこ踏み込んだオレたちは手痛い反撃を食らった。

 オレの視界に飛び込んできたのは「パチンコ」だった。

 といっても、金を払ってレバーを回す奴じゃない。

 大きな「Y」の字型のパーツに強力なゴムが渡してあり、それをはじいて鉛玉を打ち出すのだ。

 子供のおもちゃと侮るなかれ、こいつはプロ仕様のそれなら当たり所によっては人も殺せる殺傷兵器なのだ。状況を選ばず、火薬も動力も使わない。威力の減退を覚悟するなら弾切れすら起こさない。
 武器の真の強さはスペック上の無意味な数字なんかじゃない。どんな時にも確実に作動する信頼性なのだ。

 人類の歴史上、火薬によって打ち出される「弾丸」の威力が、弦によって打ち出される「弓」や「投げ槍」、「投石器」などを上回ったのはかなり後であるとされる。

 単純な物理エネルギーによる打撃は侮れない。

 物陰に身を隠してじっと耐えるしかない。

 少しでも顔を出すとたちまちパチンコ玉が地面にめり込んだ。これでは動けない。こんなものが眉間に食い込めば豆腐みたいな脳をぐしゃぐしゃにしてくれるだろう。

 オレは無傷だったが、山田は左の肩口に一発くらったらしく、へたり込んで呻いている。

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫だって言ってんだろうが!」

 いつになく機嫌が悪い。

 それにしても無茶な作戦だ。生死を問わず(デッド・オア・アライブ)なんて西部劇の世界じゃないか。そこまでしてどうして「催眠術師」を恐れるのか。

 オレはじりじりしていた。

 幾らなんでもこの襲撃は無茶過ぎる。相手の数も規模も分からないのにたった二人で突撃だなんて。

 或いは同士討ち上等ってこと?だとしたらオレたちは正に使い捨てだ。

「ここは一旦引いて出直すべきだ!」

「うるせえ!」

 少し離れたところにお互い陣取っているので大声でないと聞こえない。

 威力だけ比べれば山田の持つオートマチックとパチンコのそれは互角だ。後は命中精度。

「う…ううう…」

 山田が身体を抱え込むようにうずくまった。

「山田!」

「来るな!来るんじゃねえ!!!」

 だが、強がりもそこまでだった。その場に昏倒して動けなくなる山田。

 オレは狙撃の危険も顧みず、山田の肩を持ち上げる様にして引きずるようにその場を離れ、山田の車に放り込むと走り去った。


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【販売開始!】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) 第2章5

「…なんだって?」

「地頭の良さだけで渡ってきたあの女は地道に真面目に努力する方法を知らなかった。そんなことせんでも成績が良かったからな。だが遂にそれだけじゃあどうにもならなくなる」

「詳しいな」

「仕事なんでね。分厚いメガネに野暮ったい黒髪おさげみたいな優等生が遂に自分の点数を抜いたことで逆恨みして、あの連中に放課後犯させた」

「…」

「レイプ被害者の多くがそうであるように彼女も泣き寝入りしたんだが、ある時期からは毎日だったらしい」

「…鬼畜かよ」

「当然成績も急落。教師の覚えもめでたい連中は何のお咎めも無く無事に進級して楽しい青春送ってる」

「その子はどうなった?」

「誰だ?」

「犯されたおさげの子だ」

「当然自殺だ。ある晩校舎のてっぺんからな。ただ不思議なことに飛び降り自殺ってのは大抵はうつ伏せに落ちるのに、彼女は仰向けに落ちてた」

「…突き落とされた?」

「さあな。一つ言えるのは何故かそのホトケ(遺体)が目撃者もいないはずなのにその晩の内に救急車じゃなくてパトカーで搬送されたってことだ」

「…どうなってる」

「しかも司法解剖もなしにいきなり死体を焼却だ。親が駆けつけた時には灰になってたらしい」

「訳が分からん」

「ま、偶然だと思うが首謀者の一人の父親がその所轄署の署長らしい。ま、偶然だが」

 オレは考え込んだ。

「…それがさっきの連中ってことか?」

「説明が前後したが…まあそういうことだ」

「オレは素人だ。私立探偵なんてのは大抵元警察官なんかがやるもんだが、オレには警察官だった経験は無い」

「そうか」

「その素人の意見だが…状況証拠は真っ黒だ。刑事ならともかく民事なら戦えるんじゃないのか?」

 ふっと失笑する山田。

「一応この話の続きをしてやろう。まだプロローグだ」

「何だって?」

「日々遊び歩いてロクに勉強なんぞしないバカ娘はどんどん成績を追い抜かれる。それでも地頭がいいってのはいいもんで常に学年ベスト5には入ってたみたいだが」

「それで?」

「偶然だろうが、上位の男は襲撃され、女は犯された。謎の集団にな」

「その学校の中だけ世紀末なのかよ」

「意味不明だが言いたいことは分かる。犯人は分からずじまい。流石に勘付き始めた地元マスコミ対策なのかアンケートやなんかの調査が行われた」

「…それで?」

「結果は公表されてないが、結論は『いじめは無かった』だと」

「地獄に堕ちろ」

「まだ続きがある。勇気を持って告発めいたアンケートを書いた生徒は軒並み推薦を外され、内申書はボロボロにされたそうだ」

「なんでそういうことになるんだよ。今って二十一世紀だよな?十六世紀のスペインでも江戸時代の日本でも無いんだよな?」

「一応そういうことになってる。けど人間の意識なんぞたかが千年やそこらで変わるもんじゃない」

「なんてことだ」

「自殺成功者が二名、失敗者が三名、引きこもりやら不登校やらが…数え方によるが五名。そこまで行ってない被害者は数え切れずだ」

「…どうなってる」

「流石にバッシングに耐えられなかった学校が『いじめと言って言えなくもないことがあった可能性はある、だが自殺との因果関係は無い』と公表した」

「死んでくれ」

「ま、偶然だが私立学校で首謀者の一人は学園の有力スポンサー、もう一人は地域の教育委員会役員、もう一人は別の学校だが理事長だった」

「…現代の貴族ってところか」

「未だにこの事件の全貌は明らかになってないが、校内ではかなり厳しい箝口令が敷かれたらしい。蛮勇を振るって顔を隠してマスコミに告発した生徒もいるらしいが…将来を潰された」

「…クソが…」

「さっきの連中がそうさ」

「…」

「さっきまでの威勢はどうした?ん?」

 オレは答えられなかった。

「お前が言いにくいなら俺が言ってやる。オレは生まれつきのサイコパスでね。絶え間なく人を傷つけてないと落ち着かないんだ」

「…」

 本来なら身の危険を感じなくてはならないんだろう。だが、満腹ならライオンも同じ檻に入れた兎も襲わないという。何故か心配しなくてもいいとオレの本能が言っている。

「といってもあんまり無秩序にやっちまうと色々と困るんでな。俺は言ってみれば『凶悪犯専門のサイコパス』なんだよ。連中を思う存分食い散らかすんだ」

 やっと納得が行った。大筋では。
 だが、まだ分からないことがある。

「まあ、趣旨は分かったんだがそれは私刑(リンチ)だ」

「いや、私刑(リンチ)じゃない」

「罪刑法定主義を知らんとは言わさんぞ。法の根拠を持たない暴力の行使は許されるべきじゃない」

「それ、連中にも言えるのか?」

「それは…」

「気に入らない同級生の女子高生を野獣みてえな男どもにレイプさせるのは許されるわけだ」

「許されるとは言ってない」

「いや、言ってる」

「…物的証拠が無いなら裁かれるべきではない…だろうな」

「ご立派なこって。ならバレなきゃ犯罪やり放題だ」

「バレなきゃな」

「本気かよ」

「感情的には到底納得いかんが、感情優先にしたらどんな恣意的な判決でも下せることになる。証拠主義は貫かれるべきだ。結果的にそれが無辜の一般市民の身を守ることに繋がる」

「ま、お前はそうやって能書き捏(こ)ねてろ」

「いや、今はそういう一般論はいい。要するにオレが疑問なのは、お前の行動は国家のお墨付きありなのかって話だ」

「そんなわけねえだろ」

「じゃあ勝手にやってるのか」

「まあな」

「・・・」

 これ以上当事者であるこいつに聞いても分かるまい。タバコ男の話だと割と自由に泳がせている感じだ。
 こいつが荒らしまわった現場にしたって手袋をはめて殴ったりしてる様子も無いし、何と言ってもレイプして痕跡を残さないなんてことがある訳が無い。
 DNAから何から残りまくりだ。下手すりゃ子供すら残る。

 つまり、警察が組織的に黙認してるってことになる。そんなことってありえるんだろうか?

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【販売開始!】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) 第2章4

「もう限界だ」

「何が」

 運転中に話しかけた。

「お前にゃついていけねえよ」

「誰も付いて来いなんて言ってない」

 最初の話と全然違う。

「これは一体何なんだ?警察の捜査じゃないよな?オヤジ狩りならぬ若者狩りか?」

「捜査だよ。確実に目標に近づいてる」

「とにかくオレはもう降りる」

「どうした?俺が全部先に食っちまうから不満か?」

「オレは行く先々で嫌がる女をレ×プする趣味はねえんだ。お前と違ってな」

 しばし沈黙。

「俺が行き当たりばったりで何の罪も無い若者を毒牙に掛けてるとでも思うのか?」

「…違うのかよ」

「結論を言えば違う」

「じゃあどんな奴だ」

 信号で車が停まった。

「最初のヤク中の女な」

「ああ」

「あいつは罪の無い女をヤク中にして風呂に沈めてた。まあ女衒(ぜげん)だ」

 風呂に沈めるというのは、性風俗で働かせることを言う。

「あの女がか?」

「そうだ」

 見たところかなり若かった。二十代の前半と言う程度にしか見えなかったが…。ただ、歴史上女が女を食い物にしていた例は数多い。
 現にアメリカで政府関係者を含めて大量の顧客を抱えていたコールガール組織の元締めはマフィアの親分のジジイではなく婆さんだった。

「同じ目に遭わされてるってことか」

「そういうことになる」

「あの場にあったクスリはどうなる?」

「違法だ。だがオレたちには権限が無い」

 所持するだけで違法となる薬物は厳密に言えば押収した警察官であれ、一時的に所持するだけでも違法と言えなくもない。その為、麻薬取締官などは法律で例外的に「違法薬物の所持」が認められている。でないと押収できないからだ。

「薬物はともかく犯罪者であれ無暗にレイプしていいって法は無いと思うぞ」

「まあな。けどこんな小噺(こばなし)知ってるか?泥棒が狙うのは泥棒の家だってさ。何故だと思う?」

 車が再び走り出す。

「…そりゃ、警察に行けないからな」

「そういうことだ。下手に警察に被害届を出しに行けばテメエが捕まっちまう」

「だから現役の犯罪者を狙う…か、腐ってやがる」

「随分な言い草だ。さっきの男女の集団は何だと思ってんだ」

「さあな。カラーギャング、チーマー、半グレ集団…どれにも見えん。古い言い方だがシティボーイシティガールって感じだ」

「何年前だ。七十年代かよ。ナウなヤングってな」

「いいとこ大学生サークルってところだ。それもスキーだの登山だののスポーツ系じゃなく、日々遊んで酒飲む系サークルのな」

「…ま、大体当たりだ」

「なんでそれを犯すんだ。気の毒だろうが。しかもお前が使ったのはスタングレネードだよな?」

「ほう、単なる素人じゃないらしい」

「いいから答えろ」

「大学生サークルってのは当たらずといえども遠からずだ。実際にはほとんどが大学生だが、同じ大学じゃない。高校時代の同級生だ」

「…じゃあ、仲良しグループの同窓会じゃないか」

「その仲良しグループがどうして他人名義の洋館占領して入口にブービートラップ仕掛けてんだよ」

「それは…若気の至りというか」

「あいつらは犯罪者集団だよ。それも一番の首謀者がさっき泡吹いて犯されてたあの女さ」

 お前が犯してたんじゃねえか…と思ったが黙っておく。

「何だって?」

「あいつらは名前を出せば誰でも知ってる有名進学校のトップグループでな。スポーツ万能、成績優秀に加えてあの見た目だ。在学中から読者モデルだのタレントの真似事までしてた」

「…別に犯罪じゃない。勝手にやればいい」

「それだけならな」

 珍しく山田が黙り込んだ。

「あいつらがいた学年は控え目に言っても『地獄』だったらしいぜ」

「大げさな。ガキの集団だ」

「あの首謀者の女が同級生のレ×プ指南をしてたと知ってもそう言えるか?」


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【販売開始!】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) 第2章3

***

 どう見てもキャリアのエリートにしか見えず、実際単なるペーペーの警察官ではないことだけは明らかな山田の正体が分かった。

 言ってみれば警察組織内で「やんごとない」立場なんだろう。現時点で偉い人のガキだとかな。

 どうしてそいつがこんな場末のゴミ拾いみたいな仕事に回されているのか。

 人格に問題がありすぎるからなのだ。

 それで組織内で持て余し、結果こんな閑職に追いやられた…恐らくそんなところだろう。

 もうオレは山田と捜査情報を共有することを諦めた。何を聞いてもナマ返事ばかりでずっと考え込んでいる。
 それでいて足は止まらず、オレは付いていくのがやっとだった。

 行く先々で山田は証言を渋る市民を殴り飛ばし、首を絞め、女ならレイプ未遂を起こしまくった。

 オレは…こいつの暴走を止めるためのお目付け役だったのか…。

 もはや「悪徳警官」という表現すら生ぬるい。悪徳警官は恐らく金で転ぶ。要は「打算」で動くのだ。

 だがこいつ…山田…は違う。

 生まれついての犯罪者だ。犠牲者の心境を何一つ慮(おもんばか)ることが出来ない、所謂(いわゆる)「サイコパス」と言う奴だ。

 暴力団対策課…俗にいうマル暴…などは「警察官にならなかったらやくざになっていた」者が多いなどと言われるが、山田もその部類だ。

 いや、警察官と犯罪者を両立させちゃいないか?

***

「…あのクソ女…ぶっ殺してやる…」

 山田はうわ言の様に呟き続けている。

「…しっかりしろ」
「さわるな!」

 仰向けに倒れ、上半身だけを起こした山田は背中を壁に預けている。

「…すまん。山田よ、応援は呼べないか」
「…」

 またダンマリだ。

 こいつが警察関係者であることだけは間違いない。オレたちチンピラと警官(デコスケ)の一番の違いは組織であることだ。だったらそれを活かしてもらいたいもんだが、何故ここで黙る。

「テメエいい加減にしろよ。お前が死ぬのは勝手だがオレまで巻き込むな」

「うるせえよこのうじ虫が」

 遂にこっちまで矛先が向いて来たらしい。

「うじ虫ならうじ虫で結構。だがエリートだろうがうじ虫だろうが死にたかねえだろうが」

「…」

 息が荒い。目が座っている。元からかなりおかしい奴なんだが、それがキレ掛けているとなれば何をしでかすか分かったもんじゃない。

***

 こっちにはサッパリ分からないが、山田は山田なりに確信があるらしくまた新しい建物を見つけた。

 それは古めかしい洋館だった。

 明らかに何年、いや十何年は人が住んでいないのであろう気配がする。

 どこからか出てきた山田の自家用車からでかい銃が登場した。

「…お前それ…」

「…」

 こちらのリアクションを確かめる間もなく窓から構えるとプシュッ!と言う音と共に何発か発射した。

「行くぞ」

 長物の銃は置きっ放しである。

 オレの理解だと、サイレンサー(消音機)というのは弾丸のお尻を点火して爆発し、そのガス圧で押し出される際の音を軽減させるものだ。
 簡単に言えば、銃弾というか発射されるエネルギーや方向性の決定に無関係ではないのである。
 狙撃には最も使いにくいギミックのはずである。

 むしろ殴り合えるほどの接近戦において「音も無く人を殺す」暗殺のためのギミックと言っていい。

 現に銃天国のアメリカでも、ほぼ暗殺しか使い道のないサイレンサーはフルオートマシンガンと並んで市販されていない。

 必死に追いかけながら何故そんな使いにくいものまで使ったのかの理由が分かった。

 こいつは洋館の入り口を見張っていた監視カメラを狙撃で破壊したのだ。

 街中で派手な銃声を響かせれば当然目立つ。それにしても何という腕前だ。

 大金持ちが今現在住み、構内にポリスボックスがある訳でもない単なる古い洋館だ。

 セキュリティの類は、「現在の住人」たちのお手製ってわけだ。

 山田はなれた手つきで有刺鉄線に流れる電流をショートさせ、邪魔になるブービートラップを解除し、或いは自分が引っかからない様にわざと作動させて無効化していった。

 こいつは驚いた。

 こちらもそうした知識は皆無ではないのだが、プロの慣れた手つきを見せつけられるとは思わなかった。

 気が付くとそばに山田がいない。

 洋館のあちこちからスモークが漏れ出している。

 …催涙弾を使ったんだ。そう思った瞬間、稲光みたいな強烈な光が窓から漏れ、叩きつけるような凄まじい音が何度もした。

 …フラッシュグレネードにスタングレネードか…まるで一人対テロ部隊だ。

 マスクもせんとあんなところに飛び込みたくはねえな…。

 オレは遂に諦めてその場でタバコを吹かし始めた。

***

 催涙ガスがマシになった頃合いを見計らって入ってみると、山田は正に「真っ最中」だった。

 甘い矯正が叩きつけられる様に繰り返し繰り返し響き、悲鳴なのか歓喜なのか分からない高い声がこだまする。

 周囲には人相が分からないほどボコボコにされた哀れな男たちがうめき声を上げて転がされている。

 女性もいたが、無残に下半身が丸出しになっており、何かの分泌物が周囲にまき散らされている。

 …これはヒドい。まるで歩く災害だ。こいつの行くところ阿鼻叫喚、暴力とレイプが山積みじゃないか。

 何度目なのかの絶頂に達し、壁にすがりつく様に立った状態で後方から犯されていた女性がその場にへたり込んだ。

「オラ立てえ!」

 髪の毛を掴んで釣り上げようとしたその手をオレが取った。

「…何だか知らんがもうその辺にしとけ」

「あぁ?あんだテメエ」

「良く分からんが、お前だって理由があって行動してるんだろうが!ここでレイプするのが目的じゃねえよな!?」

 声を荒げた。

「だったら何だ」

 ギンギンにいきりたったイチモツを隠そうともせずに正面から向き合ってくる山田。

 今度は流石にスーツの前方がはだけており、六つに割れた隆々たる筋肉が垣間見える。

 うっと息苦しくなる男の股間の匂いが鼻を突く。

 まあ、こちらも馴染んでいるそれではあるんだが、他人のものを間近で体験する趣味は無い。

「何だか知らんが早くそれを済ませちまってくれ。こちとらお前の趣味に付き合う義理はねえ」

「…お前もやりてえならそう言え。モノが多い方が盛り上がる」

「悪いがオレは生まれてこの方、和姦しかしたことねえんだ」

「へっ!このフニャチン野郎が、男ってのは女を無理やり犯す時に一番興奮するように出来てるんだ」

「見解の相違だな。俺はそうは思わん。仮にそうだったとしても法律との折り合いを考えろ。腐っても法の番人なんだろうが」

「そうさ、俺が法律だ」

「そういう意味で言ってんじゃねえよ」

「グダグダ言ってるとテメエも犯すぞ!」

 周囲が静まり返った。

 睨みあう視線が交錯する。

「あ…」

 どうにか意識が回復してきたらしい犯されていた女が必死に足元から這い出し、四つん這いのまま階段に向かって駆け出した。

「テメエ!」

 山田が足元に引っ掛かっていたズボンを蹴り飛ばすと、瞬時に追いついて全裸の女の後頭部に目一杯蹴りを見舞った。

 ドゴオ!

 …というおよそ人体同士のぶつかり合いで聞いたことの無い擬音が響き、顔面をしたたかに床に打ちつけた女が気絶したらしい。

「けっ!底辺のクセして上級国民さまに刃向いやがって」

 そういうと、意識が無くなった女を再び後背位で犯し始めた。

「おい!お前一体何考えてんだ!!」

 女は焦点の定まらない視線を泳がせ、口からは泡を吹き、全身がひくひくと痙攣(けいれん)している。

「バカ野郎!死んじまうぞ!いい加減にしろ!」

 かなりすったもんだあったが、とにかくこの場から離れることに成功した。

 狙撃をした車に再び戻ると、何事も無かったかのように新しいスーツを出した山田は綺麗に着付けると次の現場に向かった。

***

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【販売開始!】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) 第2章2

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 結局喫茶店の問答においては山田は決定的なことは何も言わなかった。

 だが、あてずっぽうではなく山田は何らかの情報を与えられており、それの手掛かりを確かめる形で聞き込みを進めていたことが徐々に分かってくる。

 確かに、ずらり並んだガード下の店を端から訊くのではなくて、いきなり妙なところを曲がり、看板もあるのかないのか良く分からない様な店に迷わず突撃しては確信を持って次のところに行ったりする。

 山田は最初の内こそ年長者のオレを立ててくれていたが、徐々に暴走気味になり、聞き込みの最中に自分だけ勝手に納得するとさっさと次の場所に歩いていく様になった。

 速足で追い掛けながら背中に声を掛ける。

「おいおい!どうなってんだかサッパリ分からんぞ!」
「静かに!目立ちます!」

 一応敬語ではあるが明らかに怒気を孕(はら)んでいる。

 遂にはどうみても風俗街みたいなところにもズカズカ踏み込んでいく。

 いや、これが単なる風俗街ならいいんだが、道中にゴミが散乱し、あばらやの軒下には薄汚い洗濯物がはためいているエリアなのだ。

 こりゃ「阿片窟」と言った方が相応(ふさわ)しい。都内にこんなところがあったなんて。

 感心する間もなく一軒に目を付けた山田は靴も脱がずに板張りの廊下を鳴らしながら狭い階段を登って行く。

 オレも入り口で躊躇ったが、靴下がささくれ立ちそうな板張りに恐れをなして心の中で「すまん!」と言いながら山田に付き合って靴のままギシギシと上がって行く。

 もう山田は修羅場の真っ最中だった。

「おい吐け!吐けっつってんだ!」
「やめて!やめてぇっ!!」

 部屋の中はヒドい匂いだった。甘いというか甘酸っぱいというか、嫌な甘ったるい匂いに汗や分泌物などの体臭が混ざり合い、換気もしていないので空気が濁り、淀んでいる。

 山田が女を責めたてていた。

 いや、胸倉を掴んで引っ張り上げていた。

 女はシュミーズというかスリップ一枚なのでそれを引っ張り上げられてしまうともうモロ見えである。

 部屋でくつろいでいたらしく膝まである長いスリップの下にはブラジャーはしていないらしい。

「おい!何してんだお前は!」

 踏み込んでみて分かった。あちこちに注射器やら結束バンドが散乱している。これは…なんらかの薬物中毒らしい。
 ヒドい匂いは中毒者(ジャンキー)が放つと言われている独特の体臭であるようだ。

 無理に持ち上げられたスリップがビリビリビリーーーーーーーーっ!と勢いよく破れる。

「きゃあああああっ!」

 まだ形のいい乳房がまろび出た。必死に抱きかかえる様にして隠す女。

 美麗な刺繍に彩られていたスリップはもはや単なる布の切れ端となり、女の上半身はむき出しになっていた、辛(かろ)うじて下腹部はショーツで守られている様だ。

 余りの光景にオレは固まった。

 どんな目的があるにしても、これじゃあ完全にレ×プ魔だ。警察…或いはそれに準じる組織…の捜査の範囲を明らかに越えている。

「さっさと言わねえからだ!」

 折れそうに可憐で細く、色白の背中の真ん中にドガっ!と革靴のままの蹴りが入った。
 そのまま吹っ飛ばされ、散乱する脱ぎ散らかされた女物の服の束に頭から突っ込む。

 なんと次の瞬間、山田はカチャカチャと金属音をさせながらベルトを外し始めていた。

「お、おい!何してんだテメエは!」

 やっと我に返ったオレは慌てて山田を制止に掛かった。

「何考えてるんだ!お前、この女をどうする積りなんだよ!」

 柔和で爽やかな青年の面影からは想像もできないほど醜く歪んだ表情で山田が吐き捨てた。

「けっ!見て分からねえか。いい年こいた大人が裸でお遊戯会でもやると思ってんのかよ」

「正気かお前は?普通に犯罪だろうが」

「警察に協力しねえ一般人にゃあお仕置きが必要だ。大体テメエこのシチュエーションで勃(た)たねえたあ不能か男色か?」

 ゾッとする表情だった。

 こいつは…警察というよりは明らかに「犯人」側だ。

 オレは得物を出さずにどうにかこの場を収めた。
 どんな口八丁を使ったのかも思い出せない。

 痩せても枯れても警察は「逮捕術」を叩きこまれている。プロの格闘家ならともかく、ひ弱な何でも屋が戦っても百パーセント勝てない。

 かといって道具で撃ち合っても不利だろう。

 山田が持ってるのはモデルガンじゃない。当たり所が良ければちゃんと人が死ぬ本物のオートマチックだ。

 あばらやの外で目を離したのが良くなかった。

 瞬時にオレを「まいた」山田は再びあの薬物中毒女の部屋に舞い戻っていた。

 気付いてその場に戻るのに数分、いや一分くらいは掛かっただろうか。

 駆け付けた時にはもう遅かった。

 既に全裸に剥かれた中毒女が後背位で男根を突かれている真っ最中だった。

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絵.蜂蜜柑 http://mikanmiakn.blog.fc2.com/

 山田はズボンは下ろしていたが、ネクタイやジャケットすらそのままである。それが脳天まで自分自身を突き通さんばかりに激しく何度もピストン運動をしていた。

 山田の高笑いと、中毒女の悲鳴にオレはその場にへたりこんだ。

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【販売開始!】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説) 第2章1

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第2章

 その「相棒」は「山田」と名乗った。
 自称・二十四歳。

 ムカつくことに背の高いイケメンだ。
 すらりと伸びた身体は『細マッチョ』と言う奴で、見るからに「デキる奴」オーラをかもし出している。
 笑顔が印象的で笑った表情になる度に白い歯が輝くモデルみたいな奴だ。
 喋らせれば物腰柔らかでまるで俳優だ。

「オレは…まあ呼びたい様に呼んでくれ」
「そうですね・・・じゃあゴリさんとか」
「誰がゴリさんだ」
「何にします?」
「適当に考えてくれ」
「じゃあキリさんで」
「なんでキリなんだ?」
「何となくです」
「それでいい」

 底辺の人間も随分見て来たが、たまにだが上流階級の人間も見てきた。明らかにこいつは「そういう世界」の住人だ。
 こっち側の人間じゃない。

「何期なんだい?」
「それはですね・・・おっと、人が悪いなあキリさん。そういうのじゃありませんって」

 オレの見立てだとこいつは国家公務員一種試験合格者か、或いはそれに近い奴だ。要は「キャリア」って奴だ。
 ただ、キャリアは年単位でもそれほどの人数が排出される訳じゃない。言ってみれば国の宝だ。

 この頃の刑事ドラマでいけ好かない役回りばかりやらされているために「キャリア」といえば時代劇の悪役みたいな奴ばかりに見えるんだが、決してそんなことは無い。
 ともかく、少なくとも現場に出てひーひー言うことなど無いし、逆にあってはならないのだ。

 オレたちの初日の仕事は聞き込みだった。
 それも「謎の女」を探してである。

 こういうのこそ組織の強みを生かした人海戦術で当たるべきなんだがどういう訳かオレたち二人だけだった。
 常にコンビ或いはそれ以上で動くのは鉄則だ。
 映画「羊たちの沈黙」は確かに傑作ではあるが、ジョディ・フォスター演じる主人公が常に単独行動をしているのはいただけない。しかも彼女はあの映画の時点で正規の捜査官ですらない、研修生なのである。
 だから二人で動くこと自体は構わないが、これだと一度に一か所しか聞き込みが出来ない。
 「組織」がオレに何をさせようとしているのかが分からない。

 オレがわがままを言う形で喫茶店の奥まった場所に席を取り、山田を質問攻めにした。

「山田よ、幾つか質問に答えてくれ」
「答えられる範囲なら」

 あくまで余裕の面構えだ。

「お前はキャリアか?」
「ノーコメント…と言いたいところですが、お答えしましょう。ロマンの無い話ですが、純粋なキャリアではありません」
「つまり?」
「それ以上はご勘弁を」
「分かった。なら次だ。この捜査は一体何なんだ?何が目的だ」

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絵.蜂蜜柑 http://mikanmiakn.blog.fc2.com/

「聞いてたでしょ?あの謎の女の探索ですよ」
「だったらどうしてオレたちみたいなの二人っきりでウロウロさせるんだ?非効率も極まれりだ」
「我々二人とは限りませんよ」
「・・・」

 そうか、その発想はなかった。今もオレと同じように雇われた都会のゴキブリみたいなのがあちこちで謎の女を追わされてるってことか。

「だとしてもオレたちはお互いの情報を共有してない。非効率と言う意味では同じだろうが」

 特に範囲を割り振られてすらいない。これだと全く同じ人間に複数の人間が聞き込みをしてしまうことも充分ありえる。
 聞かれる人間が迷惑であることもさることながら、犯人に派手に動いてますよと知らせているみたいなものだ。これはうまくない。

 山田はにやりと笑った。

***

「はあ…はあ…」

 息が荒い。極度の緊張で全身がこわばっている。

「山田…大丈夫か…」
「…」

 山田は答えなかった。
 郊外の廃工場の中で、俺たちは孤立していた。

「…」

 持てるだけ持っていたゴム弾だったがあと5発。

 種類までは見えなかったが、山田が持っていたのはオートマチックだから弾数はそれなりにあるはずだが、派手な撃ち合いに持ちこたえられるとは思えない。

 どうしてこんなことになったのか。


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【販売開始!】催眠術師(真城さんの新作DL同人小説)  第1章

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第1章

「ご苦労だった」

 薄汚れたスーツの男が目の前にどっかりと座る。

「取り逃がしたが」
「ま、しゃーない。貴重な遺留物が大量に摂れたんでそれでチャラだ」

 オレは私立探偵をやってる。
 なーんていうと安手のハードボイルドみたいだが、知っての通り日本における私立探偵ってのは「自称・名探偵」くらいの意味しかない。
 逮捕権も捜査権も何も無い。
 主な仕事は迷子の犬猫の探索と家出人捜索。そしてお馴染み浮気の素行調査だ。

 アメリカのドラマや映画でたまに出て来る「賞金稼ぎ」ってのは、保釈中に逃走した犯人を捕まえて警察に引き渡すことを生業(なりわい)とする奴らのことで、これまた日本の風土では成立しようがない。

 だが、ある時期から俺には妙な仕事が舞い込むようになる。

 どうやら政府の一部の組織とやらが「汚れ仕事」を回して来るらしい。

 大きな話に聞こえるかも知れないが、危険…というのではない。「妙」と言う表現が一番しっくりくる。

 末端であるオレなんぞには全く全貌が分からない。「ここで待ってろ」とか「ある人物を見張ってろ」とかそんなことばかり。

 元々軍曹以下に戦場の全体構想をかみ砕いて説明なんぞするまいが。

 どういう訳かギャラはこの手の仕事にしては割がいいことが多いので断りづらい。

「で?今回の事件はどんなんだ?」

 目の前のこの男も本名も知らない。常にタバコを吹かしているので「スモーキング・マン」とか呼んでやりたいが、どう見ても純度百パーセントのモンゴロイドに横文字の通り名なんぞ似合わないこと夥(おびただ)しい。

「ん?」

 またタバコに火をつける。

「まだ現場の報告待ちだが、今回取り逃がした女を捕まえる仕事さ」
「ま、そうだわな」

 あのすばしっこさではちょっと難しかろう。寝こみを襲うなりしないと。

 現場どうこうと言ってたが、どうも警察に顔が効く「組織」であるらしい。しばしばそういうことを口にする。もしかして警察そのものの別働隊?

「あと、現場に取り残されてた女二人についても調べんと」
「…女ふたり?」

 オレは聞きかえした。

「ああ。一人は部屋で縛られてた。一人は廊下だ。あれ、お前なんだろ?ゴム弾が直撃した跡があったぞ」
「…ちょっと待ってくれ。オレが今回制圧したのは男が一人だけだぞ?」
「…」

 タバコ男は頭をポリポリと掻いた。

「確かか?」
「間違いない」
「じゃあまたやったな…」
「すまん、話が見えないんだが」

 タバコ男が立ちあがる。
 しばしスパー、スパーと吹かしている。

「他言無用だぞ」
「…今までだってそんな話ばかりじゃねえか。今更なんだよ」
「いや、馬鹿馬鹿しいんでな」

 タバコ男がオレに事件の真相…少なくとも末端では知りようのない情報を提供してくれるのは珍しい。
 とはいえ、大した情報じゃああるまい。
 極論すれば外部に漏れても構わない情報しか末端には教えないものだ。拷問に掛けられようが知らないことは答えようがない。
 もっとも、そういう形でディスインフォメーション(誤情報)を拡散させるという手もあるが・・・。

「その女は、コードネーム『催眠術師』と呼ばれてる」
「催眠術師?」

 電話が鳴った。

 タバコ男はスマートフォンに出ると不機嫌そうにすぐに切った。明らかにオレに対する情報規制だ。

「どこまで話したかな」
「催眠術師のことだ」
「ああそうだった。催眠術師はとにかく催眠術と奇術に長けてるらしくてよ、中々捕まえられんのだ」
「…どんな罪を犯したんだ?」
「それは企業秘密だ」

 タバコ男がにやりとする。

「分からんが、犯罪者で面(めん)も割れてて、性質(たち)が悪いんなら指名手配にして交番に貼り出せばいいだろ」

 ついでにオレみたいなチンピラじゃなく、ちゃんとした警察官を使って広域捜査をしたらどうだ…と喉の奥まで出かかったがなんとか止めた。それだとおまんまの食い上げだ。

「ま、そこはよ」
「で?」
「ん?」
「さっき『またやった』って言ったよな」
「ああそれか」

 また気持ちよさそうにタバコを吹かす。

「恐らく縛られてた女ってのがその催眠術にしてやられた女だ」
「よく分からんな」
「俺たちだって分かってる訳じゃない。現場の状況から推測してるだけだ」
「それで?」
「催眠術師は縛り上げた男を気絶させ、どこからか女を調達して来て入れ替える様に代わりに縛り上げるんだ」

 しばし沈黙。

「…は?」
「あれだ。手品師が舞台の上でぐるぐる巻きにされても脱出したりするだろ?あんな感じなんじゃねえのか。しかもその時に誘拐してきただろうその女にニセの記憶を植え付ける」

 話が段々えらいことになってきた。

「ニセの記憶?」
「ああ。その正体不明の女は、どういう訳か揃って『オレは男だ』と言い続けるんだ」

 部屋が静まり返った。
 よくよく聞いてみると古臭い壁掛け時計の秒針の音がコチッコチッと異様にやかましく感じる。

「だから『催眠術師』だと?」
「そう呼ばれてる」
「男の方はどうなった?」
「今までの例だと揃って行方不明だ。煙の様に消えてる」
「女の正体は?」
「全く不明だ。わが国には戸籍制度はあっても生まれた人間全員の指紋登録にDNA登録までさせる義務は無いんだが、それにしても全く分からん。本人が自白しないこともあるが」
「ボウフラみたいに女が湧いて出たってのかよ」
「…現状、そうとしか言えん」

 オレは考え込んだ。
 そんな妙な『催眠術』なんてことがありえるんだろうか?

「…警察が血眼になって探す理由が分かった気がする」
「おいおい、俺は警察だなんて一言も言ってないぞ」
「そうだったな」

 タバコ男が胸ポケットから出したタバコの箱を降る。からの様だ。

「持ってないか」
「…」

 無言でとんとんと叩き、一本飛び出させた状態で箱ごと差し出す。 

「すまんな」

 一本取って火をつけ、またうまそうに吸う。

「で、お前さえよければこっちから一人貸してやるからもう一度探してほしい」
「ひとり貸すってどういうことだよ」
「そのままさ」
「新米デカに溝(どぶ)さらいを押し付けたってか」
「だからデカじゃねえってのに…。何と解釈してもらっても構わんが、実力はピカ一だ。お前の邪魔にはならん」
「断ったら?」

 しばしの沈黙。

「暴徒鎮圧用ゴム銃なんてのは、警官の持つ警棒或いは特殊警棒なんかと同じだ。要は人を痛めつける以外の使い道が全く無い」
「…だろうな」
「つまり、その手のものは持ってるだけで幾らでも罪状が付けられる。お前が今まであいつで何人に怪我をさせてきたかな?」

 たなびく煙。

「そりゃ脅しか?」
「別に・・・単に可能性の話を言ったまでだ」

 要は言うことを聞かなきゃゴム銃を梃子(てこ)にしてぶち込んで臭いメシを食わせるぞと言っているわけだ。
 オレがこれまであんなケッタイな代物を振り回して問題にならなかったのは、確かにこいつらがバックについていたからってことはある。

「分かったよ分かった」
「分かればいいんだ」
「新しい相棒はすぐ来る」

* * *

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正義のヒーロー  (真城悠) サンプルちょい見せ②

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正義のヒーロー

ここまではいい。
 助けるべき相手をどういう風にして選んでるのかとか、住んでいる地域から近所の事件しか防げないとか色々あるけど、基本的には人助けなんだし、多くの場合助けた女性には感謝してもらえるし悪いところは一つも無い様に見える。

 それ自体は悪くも何とも無いんだが、「変身」に問題がある。

 まあ、先に結論を言ってるみたいなもんだから分かるだろうが、「変身」して「超・能力」を発揮出来る状態になると、何故か俺の身体は女のそれに性転換してしまうのだ。
 それだけならまだしも、着ている服までが下着からアクセサリー、メイクに至るまで完璧に「女装」になってしまう。
 身体が女になっているから「女装」という表現が正しいのかどうか分からんけど、ともかく「女物の服」に変化してしまうのだ。

 インターネットで調べると、所謂(いわゆる)「魔法少女」に男が任命されてしまうといった系統のお話は結構流通はしている。
 ただ、それは漫画やライトノベルのお話であって、俺みたいに実際にそんなことになっている人間の体験談なんぞ読めるわけも無い。

 もしもこの「能力」が「魔法少女」のそれなのだったら、毎回決まった制服というかコスチュームになりそうなもんなんだが、俺の場合は毎回違った「コスプレ」というところだ。
 「コスプレ」というのは表現が正しいのかどうか良く分からん。
 ただ、妙に「制服」系が多かったり、記号的な「コスチューム」が多いのは確かだろう。

 毎回違うもんだから、極端に動きやすい場合や動きにくい場合など様々だ。
 チアガールの制服や、体操服にブルマみたいな格好だと流石に動きやすい。
 女子高生の着る様な制服は…まあ、基本的にその格好のまま通学もこなす訳だから動きやすくはある。多少スカートが長くてもそのまま走るのはそれほど支障は無い。
 どうも自分で言ってて情けなくなるけど、事実なんだから仕方が無い。
 最初はミニに限らずスカートなんて何しても「見えそう」で本当に恥ずかしかったもんだ。

 多分、俺と同年代で俺くらい多くの種類のな女子高生の制服を“着たことがある”人間はいないだろう。女子含めてね。

 だが、ハイヒール系は走りにくかったね。
 チャイナドレスはスカートの長さは床を引きずるくらい長くても、スリットがあるから凄く動きやすい。
 それはいいけど、やっぱり割り箸みたいなピンヒールは足をくじきそうで物凄く大変だった。
 この間のバニーガールも、動きやすさと言う意味では硬いレオタードみたいなもんだからそれなりなんだけど、やっぱりハイヒールが辛いね。

 やっぱり動きにくいのはタイトスカート。
 この間「OL十連発」みたいに毎晩女子事務員さんが着る様なスーツばかり着せられて参ったよ。
 折角なんで変身させられる度に全身を鏡に映して見る様になったんだけど、すらりと伸びた身体に出るところが出た感じと、タイトスカートから出た脚の感じとか「綺麗なお姉さん」そのまんまで、これが自分だと思うと物凄く複雑な気持ちになるね。

 よくよく鏡によって間近で自分の顔を見ると、した覚えの無い口紅とかファンデーションとかがくっきり分かってこれまた複雑。
 パンプスってのもハイヒールほどじゃないけどやっぱり運動には向かないね。

 まあ、動きにくさで言えばなんといってもスカートが掛け布団みたいにデカいドレス軍団。
 この間のウェディングドレスなんて本当に参ったよ。

 首の周りが大きく開いてて、首筋から背中に掛けてが寒いのにおっぱい含めた身体のラインが出るところを全部拘束具みたいな下着が締め付けててさ、どんな重さなのかと文句を言いたくなるスカートの分量!しかも外からは見えやしないスカートの中の足にはハイヒールなんだから、この移動能力が無かったらすり足でしか動けないんじゃないかと思うくらい。

 まあ、これだけのハンディがあっても暴漢やら暴行魔相手には楽勝だったけどね。

 そんなこんなで人助けを続けている。
 どうして自分がこんな役を割り振られる様になったのかサッパリ分からない。
 けどまあ、少しでも治安に協力出来るならば吝(やぶさ)かではない。

 変身すると性転換&女装してしまうからくりもサッパリ分からない。
 普通に強くなるだけでいいじゃないか。
 しかも、毎回ランダム(無作為)に衣装が変わることにどれだけの意味があるのかが全く分からない。

 まあ、毎回同じ制服を着ていたりしたら正体が特定される危険性も増すというのは分かるんだが、記号性の高い衣装を毎回とっかえひっかえとなると悪目立ちすると思けど…。

 俺も男だから、女になったり女装させられたりするのはそりゃあ恥ずかしいよ。
 一応、口調というか精神は男のそれを保持出来てるみたいだから、普通に「女言葉」になったりはしないんだけど、咄嗟のリアクションや自然な仕草はどうやら女になってしまうらしく、突風が吹いてミニスカートがめくれたりすると「きゃーっ!」と言って思わず押さえてしまったりする。

 毎回すぐターゲットは見つかるけど、近所に出現して少しは走らなくてはならないことがあったりすると、ブラジャーの締め付ける感触とか、走るたびにたぷんたぷん上下するおっぱいの感触にこれまた複雑な気分になったりする。

 高校生になるまでの十何年間の間に、まさか高校二年生になって自然な仕草として服の上からわきの下を触ってブラジャーを「くいっ」と引き上げる仕草をする羽目になるとは思わなかったなあ…。何なんだよこの生活感は。
 最初の頃には感じていた「スカート」の違和感はもう慣れた。
 というか、スカートを履いている時は決まって肉体も女になっているので、パンティの下にみっともないものがあったりしないため多少感じ方が違うことはあるだろう。
 これがストッキングを履いたりしていると尚更だ。

 ただ、一応健全な男の子だから、あんまり頻繁に肉体が女になったり女装させられたりすることで健全なアイデンティティの形成が阻害されたりするのは怖いっちゃ怖い。
 そう思ってる段階で大丈夫と言えなくも無いが…。

 でも、特に何も感じなくなっていた瞬間にふと自分の身体を見下ろしたり、そばにあった大きなガラスに自分の全身が映っていたりして、それがバニーガールだったりウェディングドレスの花嫁さんだった時の「びくっ!」という感覚はなかなか理解してもらえないだろうなあ。 

 気になるかもしれないけど、自分の女体をいじくりまわして気持ちよくなったりは実は出来ないんだ。
 出来ないというかしてる暇が無い。
 変身させられた後ってすぐに現場に急行しなくちゃいけないし、片付いたらすぐ戻っちゃうから。

 そんなこんなで、今日も「一日一善」とばかりに最低一人は人助けをして頑張っている。
 今日の学校の宿題も終わったし、面白そうなバラエティ番組も終わって深夜に近い時間帯になっている。

 …どうやら今日も人助けタイムが来たらしい。
 はい、むくむくっとおっぱいが大きくなって、同時に肩幅が狭くなり、上半身そのものがサイズダウン。
 腕もほっそりして幼くなる…と。
 ウェストがほっそりして、お尻が丸みを帯び、脚が内股に…髪の毛もグングン伸びて、瞳もパッチリと美少女に…自分で言うけど、まあ確かに可愛いからね。
 でもって、男の大事なものがきゅきゅきゅと縮んで消滅…。

 毎回この瞬間が物凄く不安。元に戻れなかったらどうしようかと思ってしまうのだ。

 じゃあ、ベッドから降りてっと。
 今夜はどんな格好かね。もう覚悟は出来てる。

 室内スリッパを履いてっと。これで靴の出現もスタンバイ。
 お、スリッパが光沢を放つピンク色に。
 適当に引っ掛けていた短パンが伸びて脚全体を包み込む…って今日はタイツかストッキング系の日らしい。
 見る見るうっすらと肌色の透ける白に変化し、上半身のTシャツはタンクトップ程度の面積に変化。羽飾りにキラキラとしたフェイクパールを鏤(ちりば)めたゴージャスな表面となる。
 背中まであった綺麗なストレートヘアはお団子にまとまっていく。

 ははあ、分かった。
 数十秒後、そこには可憐なバレリーナがいた。

<続きはお買い上げでお願いします!>

正義のヒーロー  DMM版

見世物

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:針子 http://melo.xii.jp/

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 ホラー映画とかスプラッタ映画ってご存知ですか?

 ええ、ジェイソンだのフレディだのが活躍するあれです。

 まあ、ジェイソンなんていうとホッケーマスクの大男というだけで名前こそ有名ですが案外個性が無い奴です。ええ、「13日の金曜日」に出て来る奴ですよ。

 というかお客さん、「13日の金曜日」見たことあります?

 これまた名前は有名だけど実際に見られて無い映画の典型じゃないかなあ。
 ま、しょーもない映画です。ええ。

 いや、別に悪口じゃないですよ。B級娯楽映画なんてそういう風に言われるのも使命の内ですから。

 ともかく、そういう作品が厳然としてあるんですよ、ええ。
 ちなみにジェイソンといえば「ホッケーマスクの大男で、チェーンソーを振り回す」ってなステレオタイプがありますがあのマスクを被り始めたのはパート3からで、劇中でチェーンソーで人を殺した事はありません。チェーンソーもってるのは「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスの方です。

 え?どうでもいい。

 ごもっとも。これは失礼しました。

 こういうのが苦手な人には全く理解が不能でしょうが、この手の「残酷描写・残虐描写」を売りにする映画ってのは映画の歴史と共に絶えた事がありません。
 まーこれでもかってほど次から次へと手を変え品を変え公開されるんですな。

 私も映画ファンではあるけど、そこまで念の入った研究者って訳では無いので歴史的な経緯については知りませんがね。ゾンビ映画なんて実は結構低予算で出来てそれなりに需要もあるから、今も昔も全世界の貧乏映画関係者のお供らしいですよ。楽しそうですもんね、ゾンビメイク。

 何が言いたいかってことですが、人間はどういうわけか「他人が酷い目に遭ってる」ところを見物するのが好きなところがあるんですね。

 日本の戦国武将で有名なのは何と言っても織田信長ですが、この人は人心掌握に長けた人でね。
 戦略的な虐殺だの焼き討ちだのばかり注目されますけど、「相撲大会」みたいなものを開いたりしてるんですよ?知ってました?

 それに大道芸人や職人を集めての技能披露大会なんてのも開いてる。

 え?聞いたことが無い?

 そりゃそうでしょう。そんな面白い話が歴史の教科書に載ったりするわけが無い。第一、歴史の大きな流れ、本筋からは外れますからね。

 ともかく、昔から言うじゃないですか。「パンとサーカス」ってね。

 庶民には食べ物と一定の娯楽を与えておけば統治できるってな格言ですよ。確かローマ帝国だったかな。

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花嫁のメモ

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:うつき滄人 http://utukiaoto.fc2web.com/


 このメモを発見された方がどなたになるかは分かりません。
 どうかその時はよろしくお願いいたします。

 私は(読み取れない)と申します。
 籍を入れた日より苗字が変わりまして(読み取れない)となります。
 このメモは、翌日に結婚式と披露宴を控えた晩にしたためております。ここしかチャンスが無いと感じました。

 現時点で既に招待状も出し終わり、ウェディングドレスの衣装合わせもリハーサルも全て終わっております。後は明日を迎えるばかりです。
 ただ、私の周りには不可解な事ばかり起こり、その総決算が明日なのです。
 とても信じてもらえるとは思えないのですが、ありのままをとりとめもなく書き記そうと思います。

 私はとある田舎に生まれました。
 子供の頃は大人しく、野山を駆け回ったりはせず、インドア派の子供として物心付いた時には存在していた家庭用ゲーム機に夢中になりながら過ごしました。
 順調に小学校、中学校、高校と卒業し、一浪を経て国立大学の文系学部に進学しました。

 一年の留年を経て無事に卒業し、地元の小さな法律事務所に就職し、そこで毎日書類を書きながら過ごす日々を送ってまいりました。
 折からの不況で、朝から晩まで働き、残業をしても給料は手取りで12万円ほど。
 大卒でこれでは余りにも寂しく、幾ら田舎だと言っても生活するのがやっとです。

 確かに同級生で外資系の証券会社に就職できたのが一人、国内の大手に就職できたのが一人おりまして、彼らは現時点でも手取りで私の数倍を取っており、数年でその差は十倍に膨れ上がるといわれています。
 ただ、それに比して仕事のプレッシャーもリスクも高いため、一概に羨ましいとは言えません。
 それに私は決して負け組ではありません。

 何しろ、それ以外の大半は就職する事ままならず、親の脛(すね)をかじり続けたり、正社員になれずにネットカフェ難民として彷徨(さまよ)う羽目になっているからです。

 お分かりでしょうか、実はこの時点では私は男だったのです。

 何を言っているのか分からないかもしれません。

 ある朝、目覚めると私の肉体は女になっていました。

 パニックになりそうでしたが、不思議なことにまるで無意識の行動をなぞるように女物の下着を身に付け、外出着に身を包み、髪の毛を解かし、メイクをし、アクセサリーをつけて外出していました。
 余りにも自然でした。

 出社ギリギリまで穴の開くほど自分が映っている鏡を凝視したのですが、そこには確かに自分の面影はあるものの、紛れも無く遺伝子的には女であろう人間が映っていました。

 生まれて初めて鏡を見た時の感慨もこんな感じだったでしょうか、あまりにも見続けていた為に気持ちが悪くなって吐きそうになってしまいました。

 メイクも手馴れていて、それなりに整った顔立ちだった私はどちらかといえば美人の部類に属するのではないかと自惚れてはいます。

 ただ、それで嬉しいかと言われれば嬉しいわけがありません。何しろ前の晩まで私は紛れも無く男だったのですから。

 何が何だか分からず、半ばヤケクソになっていた私ですが、会社に到着して更に驚きました。

 そこには「女の私」の机があったのです。
 勿論、ロッカールームも着替えも完備されていました。

 出社準備の時と同じく、手馴れた手順でピンク色の「OLの制服」に着替えた私は、昨日までの仕事を全く同じようにこなしていたのです。
 目の前にちらちらと見える胸の盛り上がった形や、細く長く美しい自らの指などは、一生懸命意識しなくては異常だと感じることが出来ませんでした。

 驚くべきことに、周囲の人間はまるで私が最初から女であったかのように接してきます。
 私も自然と口をついて「女言葉」が出、自然と仕草も女性的になっているのです。
 生まれてこの方一度も入ったことの無いはずの「女子トイレ」に入っても何をどうするかに戸惑うことなく用を足し、何事も無かったかのように午後の仕事をこなします。

 その日から周囲のことを探るのですが、明らかにこの世界では私は生まれた時から女として育ち、今に至ったことになっているのです。

 ゴールデンウィークに帰省しても、そこにいるのは見慣れた両親のはずなのに、私が生まれた時から「娘」だったことになっているのです。
 無論、弟たちも「お姉ちゃん」「姉貴」と当たり前のように呼んできます。

 自分以外の全てが最初から違った状態へとある日を境に変貌してしまっているのです。

 普通に考えたら気が狂ったのかと思うところなのですが、とにかくさも当たり前の様に物事が進行するので流されてしまいます。
 一体何が起こったのでしょうか?

 パラレルワールドで平穏無事に暮らしていた「男の環境の私」と「女の環境の私」の魂が何かの弾みで入れ替わったのでしょうか。
 それとも、私は本当に生まれた時からずっと女で、あの晩目が覚める寸前に「それまで男として育ってきた」と意識が混乱してしまい、今もその様に思い込んでしまっているのでしょうか。

 とてもではありませんが、そうとは思えません。
 私はあの朝の時点で25年以上男として生きてきました。間違いなく記憶があります。

 夢はどれほど長いものであっても、目覚める数秒前に全てを体験するといいます。
 確かに夢は体感的には数時間に匹敵するものもあるでしょう。
 しかし、二十五年にも渡る体験を、五感を伴って体験させる夢などありえないでしょう。
 この世の何かが、あの日を境におかしくなったのです。

 それは、私たった一人だけの環境を変えたのかもしれません。世の中には何の影響も無いのかもしれません。
 それこそ、私を含めたこの世の人間全ての性別が逆転し、しかもそれに都合を合わせる様に世界そのものが改変されてしまっているならばともかく、どうして私だけがこんな理不尽な目に遭わなくてはならないのでしょうか。

 ただ、ある意味においてこの境遇が「禁断」のものであったという自覚は確かにあります。
 最初の内は余りにも突飛過ぎ、ショックが大きくて冷静に周囲を見渡すことも出来ませんでしたが、徐々に観念する様になったのは間違いありません。
 25年付き合ってきた男の肉体が、ここではある意味において憧れ続けた女の肉体になっているのです。少しは味わってもいいではありませんか。
 とはいえ、その「憧れ」というのは主に性的対象としてであって、同一化の対象ではなかったはずなのですが…。

 日々女装し、会社において短いスカートで働くという羞恥プレイを強要させられているにもかかわらず、それが当たり前であると思い込まされる為に全く意識することが出来ませんでした。
 私はせめてもの抵抗とばかり、女体と“女性である”という社会的立場を利用して、「女装」しまくりました。
 ここでは書けない様なことも随分いたしました。
 女性的な行為を強引に押し付けることによって、周囲の狂った環境を元に戻すことを期待していたのかもしれません。
 我ながら、こうして書いていても支離滅裂です。何を考えていたのでしょう。

 当然、幾ら「男の立場だったら恥ずかしくて着られない」様なフェミニンだったりセクシーだったりする衣装に袖を通したところで、ある朝男に戻っていたりする出来事は起こりませんでした。

 何度目か忘れた月経も経験し、既に言葉遣い、仕草、立ち居振る舞いまですっかり女性的なそれが身についてしまい、今さら戻っても完全な男としてやっていけるかどうかとすら思えるほどになってしまいました。

 そんな中、今の夫である職場の同僚と恋に落ちました。

 初めの頃は「男性との恋愛など言語道断」と思っていたのですが、気が付けば規定路線であるかのようにトントン拍子に話が進んでしまいました。
 彼に押し切られて同棲生活がスタートし、毎夜の営みが日々の生きる糧(かて)となってまいりました。

 ほんの数ヶ月前の自分に、「数ヵ月後、お前は女となり、OLとして働き、男と同棲して毎晩セックスしてはケモノの様に吼えている」と「事実」を告げたとして信じてもらえたでしょうか。
 考えるまでも無く信じてもらえるわけがありません。
 こうして書いている私自身すらまだどこか信じられないのですから。

 残酷なのは私に「男性としての意識」がまだまだ残っていることです。
 女性的な何かをする度に「嗚呼、俺は男なのに…」と羞恥に打ち震える自分がいるのです。
 恐らく、生まれつきの女性にこんなことはありますまい。あったら大変です。少なくとも私ならそんな女は嫌です。

 確かに大分慣れはしたのですが、今も職場で朝スカートに脚を通す際の男としての精神的屈辱は完全に払拭された訳ではありません。

 あらゆる「女装」は勿論のこと、夫とのセックスにしても同様です。
 女にしかない器官を刺激される度、男としての自意識が蘇ってきて恥ずかしさに身をよじりたくなります。実際、その思いがより刺激を倍化させ、それによって強く感じてしまうのです。
 夫の方はそれを「自分のテクニックでより感じている」と思い込んで満足しているようですが…。

 夫の方は生まれつきの男でしょうから、私が先日の衣装合わせで鏡に映った純白のウェディングドレスに身を包んだ花嫁姿を見た際の衝撃、そして屈辱と羞恥には思い至らないでしょう。

 男にとって「花嫁衣裳を着せられ、嫁に出される」以上の屈辱があるでしょうか。
 いや、考えるまでも無くそんな馬鹿馬鹿しい状況などありえないでしょう。しかし、私が直面しているのが正にそれなのです。

 今の私は明日の結婚式の直前、礼服に身を包んだ両親の前に花嫁衣裳でおずおずと歩み寄り、ドレスのまま畳に膝を付いて「お父さん、お母さん、これまで育ててくださって有難うございます」と言う場面が脳裏に浮かんで離れません。
 恐らく、実際そういうことになるのでしょう。
 今の状況に身をおく事になって以来、この手のイメージ予想が外れた事は無いのです。

 男と生まれた人間が、ある日を境に女へと性転換させられ、日々女としての生活を強要させられ、挙句の果てには男と恋に落ちて“女として”セックス三昧となり、遂にドレスのスカートを引きずって花嫁衣裳で両親にお礼を言うなど、明治以前の武士なら「死んだ方がマシ」と腹を切るレベルの最大限の精神的屈辱です。
 それを正に明日、私は体験させられようとしているのです。

hanayome.jpg

 今もこうして胸を揉むと、数十日前にはありえなかったとはっきり自覚できる感触に身もだえするしかありません。視線を落とすとそこにはスカートがあり、何も感じない下腹部とスカートの中で物理的に接触することの出来る素脚の感触があります。
 一体どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。一体私が何をしたというのでしょうか。

 このメモは封印します。
 もしかしたら誰にも発見されないかもしれません。
 しかし、この世界が…もしかしたら私自身が…確かに狂っているということの証明として、封印しようと思います。

 実は思い出したのです。
 あの晩、寝る前に開いた謎のインターネットのページ。
 そこに、今私が書いている様な妄想とも付かない文章が記されていました。

 馬鹿馬鹿しいと思いつつも、薄気味悪さを感じてその日はそのまま寝たのです。そして…目が覚めたら全てが変わっていました。

 もしもこの文章が流出し、めざといブログなどに掲載され、多くの人がそれを読んだりしたら…全く同じ被害が起こるかもしれません。
 そしてそれは広く知られることは決して無いでしょう。
 なぜなら、それを自覚できるのはあなた自身しかいないからです。

 それでは、ここまでとします。
 何かの原因で流出し、今これをパソコンのディスプレイ上で読んでいる読者のあなた。

 明日の朝、お覚悟を。では。



体験談

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

 結論から言うと俺たちは時空の狭間(はざま)に飛ばされ、数年間別の世界で生活した後、こちらに戻ってきたんだ。
 あっちの世界がどういう風になってるのかなんて見当もつかん。どういう風に辻褄をあわせてくれるんだかサッパリ分からん。

 その時俺はライバルのとある男とケンカをしていた。
 兵隊ってのは常に前線にいるわけじゃない。かのベトナム戦争だって実際の戦場は全体の10%に満たないし、大半の兵士は後方支援だ。
 それに近代戦で兵士の死に場所の9割は病院なんだ。戦場でバラバラになって死体も確認出来ないのはむしろ少数派に属する。

 それでもいがみ合っているよりはいない方が生存率は高くなるだろうな。
 戦場に高純度ヘロインが蔓延していたベトナムでの多くは後ろから弾が飛んできたらしい。味方に撃たれてるんだな。正常でなくなった兵士が訳も分からずにぶっ放している場合もあれば、敵よりも憎い仲間をどさくさに紛れてぶち殺している場合もある。

 まあ、とにかく虫の好かない奴だったよ。
 それでも別の部隊に配属されてれば良かったんだろうが、よりにもよって同じ部隊ときた。

 最後の最後、自分の背中を預けなくちゃならん奴にあの野郎が位置するというだけで反吐(へど)が出そうになる。
 そんな時だった。
 取っ組み合いのケンカをしている正にそこに何かの爆弾が落ちたんだ。

 実際には、爆弾が落ちたのか、設置式の何かが爆発したのか良く分からん。
 だが、俺たちふたりは一緒になって飛ばされていた。…多分。

 ここから先は余りにも馬鹿馬鹿しいんで、こういう風にインタビュー形式に音声に吹き込むことにする。目の前にインタビュアーがいたんじゃとても無理なんでな。かといっていちいち文字を打ち込むのも面倒だ。だから吹き込み形式にする。

 ともかく、次に目が覚めたのが問題の場所だった。

 目の前に妙な扮装の女がいたんだ。
 その何と言うか…冗談みたいな格好だ。ユーモラスというと聞こえがいいが、人を小馬鹿にしてるみたいな、思わず噴出しちまうみたいな格好だよ。
 実際に観てもらうのが一番なんだが、要するに目の前には『バレリーナ』がいた。

 半裸に近い、下着みたいな格好だ。
 肩ひもが一本ずつしかなくて胸から上が全部露出してる。腕なんかは全部むき出しだな。
 それでいて白くてキラキラ光る素材のぴっちりした衣装が胴回りに張り付いていて、その皺(しわ)から装飾からが乱反射してやがる。
 腰から真横に…スカートが飛び出していて、脚は全部真っ白だ。

 その女は同じくこっちをぼーっとしたツラで眺めて来やがる。
 唇は吸血鬼みたいに真っ赤だし、瞼の上はガキの絵の具のパレットみたいに真っ青。まつ毛はそのまま床掃除が出来そうなほどボーボーだった。「舞台メイク」って奴だ。
 その珍妙な格好と相俟って、とてもじゃないが「妖精」って雰囲気じゃなかったな。

 年増の勘違い女ってところだ。
 まあ、年増ったって二十代も前半の女なんだが。といっても、ピエロもかくやってな厚化粧だから実際のところオカマでも見分けつかんな。

 するとその女が妙なことを言いやがる。
 俺の名前を呼ぶんだよ。

 こんな知り合いなんぞいないから「お前は何を言ってるんだ」…と言いかけた。

 言いかけたってのは、最後まで言えなかったからだ。
 声を発してる途中に違和感に気が付いた。
 全身に感じたことのない違和感があり、同時に動物的なカンで異変を感じ取った俺は物凄く嫌な予感に包まれたね。

 まあ、予想はついたかも知れないが、視線を下げてみるとそこにはギラギラと輝く衣装があった。

真城様挿絵25

 そして窮屈な胸の谷間も。
 そう、俺もバレリーナの格好をしてたんだ。

 思わず飛び上がりそうになった。
 そしてすぐに「格好」だけじゃなくて、肉体も胸以外はガリガリで筋肉質の若い女のそれになってることが分かったんだ。

 ということは…目の前にいるバレリーナもまた、誰なのか連想が働くってもんだ。
 そう、憎いあいつだったのさ。

 俺たちは慣れない身体で必死にそこいら中を駆け回った。
 そして控え室にあったでかい鏡に自分の全身を映してやっと事態を把握したのさ。

 何がどうなってるのかサッパリ分からんが、俺たち二人はどこか異世界に飛ばされ、女の身体に入り込んだ上、バレリーナの格好をさせられてたってこと。
 その上最悪な事に、正に舞台の幕が開く寸前だったってことさ。

 で?どうしたかって?
 俺はオデット姫役だった。

 つまり、女の側の主役だな。演目はバレエといえばの「白鳥の湖」さ。
 しかも今時「これでもか」ってほど原典に忠実な奴だよ。衣装もコテコテでなんのひねりも無い。

 不思議なもんで、こっちの世界の俺はよっぽど練習してたらしくって勝手に身体が動いたな。
 舞台袖で控えて、出番になれば出て行って踊るんだ。

 何と言うか…自分の意思で動かしてるのに勝手に動く感じというか…上手く説明できないな。
 だが、必死に逆らおうというんじゃなくて勝手に自分からやってしまうというか…。

 今でこそこうやって落ち着いて話してるが内心パニック状態さ。
 何十年とまでは行かんが三十年は男をやってた俺が突如女になって、しかもバレリーナとして舞台の上で踊らされてるんだぜ?
 あんな恥ずかしい格好…。

 聞くところによれば、生粋のバレリーナですら「白鳥の湖」の衣装は余りにも男性コメディアンが女装で使いそうなステレオタイプな衣装だから着るのが恥ずかしいって嫌ってることもあるというじゃないか。
 その「女でも恥ずかしい」格好を何の経験も何も無いこの俺が着せられてるんだぜ?

 しかも、観客は満員だ。
 その観客の視線が全部この俺の女の肉体に集中してるかと思うと色んなものが噴出してきそうなほど恥ずかしかったぜ。
 しかもまあ、つま先立ちで横移動だの、背筋をのけぞらせたり、脚を高く掲げてまるでスカートの中を見せ付けたりとそんなことばかりさせられた。

 相手方の男が出てきたんだが、軍隊ではまずお目にかからないやせっぽっち野郎だった。
 まあ、こいつも筋肉質で力はかなりあるんだが、細い男には違いない。
 幾ら舞台上の演技とはいえ、この俺が女として男に抱かれて悩ましい表情をしたり、なよっとして“しな”を作るなんぞ考えたくも無いが、身体が勝手にそういう風に動くんだから仕方が無い。

 そのままヘンなところを持って持ち上げられたりとさんざんだった。

 しかもバレエの舞台ってのは妙なもんで、何かって言うと中断して観客に向かってお辞儀して拍手貰うんだよ。何なんだあれは。まあ、段々慣れたけども。

 面倒くさいんでライバルと呼ぶが、ライバルの方はコールドバレエの中の一人になっていた。
 あの集団で一糸乱れずにバレリーナが踊る奴の真ん中だ。

 こいつもこいつで余りにも恥ずかしくて顔から火が出そうだったらしいが、こちとら主役だ。たった一人で延々踊らされる上に男との「からみ」まで濃厚にあるんだぜ?比較するのもおこがましいってんだ。

 しかもこの日の舞台は全幕ものだったから、俺は黒鳥までやらされた。
 あ、オデット役ってのは真っ黒な衣装の悪役も兼ねるのが普通なんだ。
 冗談じゃないぜ。女として何かを着たことも無いのに、いきなり脱いで着替えさせられるんだから。

 それでもまあ、どうにかこなして無事に舞台を終えた。
 もう頭の中はパニックなんてもんじゃなかった。
 だけど、いい加減しつこいアンコールを十回近く繰り返した後は、汗だくの舞台衣装のまんま関係者からの挨拶が延々続く。たまらんぜ全く。
 しかも俺は主役のオデット姫だから注目が集まっちまって延々解放されない。

 といっても、身体が勝手に動く舞台上はともかく、舞台を降りたら現状をどうにかすることを考えなくちゃならん。
 控え室に行ったらお誂え向けに全く違う名前…それがこの世界の俺の名前らしい…無論女の…が書いてある。
 まさかあの道化師みたいな格好で外を歩く訳にもいかん。第一寒いからな。
 なんで着替えようとしたんだが、無理矢理にシャワーを浴びせられた。

 まあ、正直に告白するとここで俺はゼロ距離の女体を初めて直視することになり…はっきり言うと「いたして」しまった。
 目の前の乳首を弄(もてあそ)び、アソコに指を突っ込んだりして色々試したんだ。
 汗だくにもなったし、色んな液体が噴出しただろうが、シャワーの中だったのは幸いだったな。

 せかされていたこともあってすぐに出たんだけど、この世界の俺の控え室に準備されていた「着替え」というか「普段着」も…当たり前だが全部女物だった。
 脱がせた相手とお袋のものしか見たことが無いブラジャーだのパンティだのをするすると身に付ける肉体には、必死に違和感を喚起し続けないと精神が持ちそうに無かったよ。

 しかもまあ、おあつらえ向きにそこに準備されていた私服の「普段着」は全部スカートなのな。
 せめて格好のいいジーンズみたいなもんでも良かろうと思うんだが、床を引きずりそうな長いスカートに野暮ったい上着。
 恐らく着慣れてるはずなんだが、「ちゃんと服を着てる」上に、靴もしっかり履いてるにも関わらずすっぽんぽんみたく素脚がするする接触するスカートのいらつきは生まれつきの女に幾ら説明しても分からんだろうな。
 …と思ったら女も「スカート嫌い派」が結構多いことを後から知るんだが。

 ともあれ、情けないことに俺はライバルを探してた。
 この世界での唯一の知り合いってことになるからな。
 幸か不幸かこの世界の俺は男と同居なんかはしていないし、当然結婚してもいなかった。男の恋人もおらず、フリーだったらしい。
 男の方の主役は別の女と付き合ってるんでこっちはプロとして舞台の上でだけの付き合いらしい。舞台の上では情熱的な恋人同士なんだが、いずれにしてもこっちは助かる。

 訳も分からず女になったその日の夜にいきなり突如妻として夜の営みなんて冗談じゃない。昼間の羞恥舞台だけでおつりが来るってんだ。

 探してみるとライバルは簡単に見つかった。
 こちらはまあ、何と言うかある意味面白みの無いスーツ姿だった。膝丈スカートのな。ダンサーのクセに日常のファッションが冴えない女の典型だ。

 誰言うとも無く視線で状況を把握した俺たちは、所持金を確認すると同じタクシーに乗っていた。この日はまだ千秋楽じゃなかったから打ち上げの類も無かったのが幸いだった。

 愕くべきことにこの世界で俺たちは同居していた。
 そう、女同士で。
 とはいえ、深い関係というのではなくて単なるルームシェアだったらしい。
 恋人でも何でもない男女がルームシェアする例だってあるくらいなんだから同じ職場の女同士なら特に問題なかろう。

 ただ、この晩は困った。
 とにかく訳が分からん。一体俺たちはどうなってしまったのか。
 周囲を見渡してみても、元の世界に戻れそうな手掛かりすら皆無だ。

 元の世界では屈強な兵士だったんだが、心理的不安で爆発しそうだった。
 唯一の救いはこちらの世界での俺たちにはそれなりに「居場所」がありそうなことくらいだ。
 お互いにプロのダンサーとして毎日舞台に立ってるらしいことは流石に認識出来てきていた。この日だけではそれ以上の情報は得にくいんだが、恐らくそれなりのギャラは発生するんだろう。特に俺なんか主役だからさ。
 とはいえ、不安なのは間違いない。
 この世界に事情を知るたった二人の存在だ。

 しかし…こう言っちゃなんだがライバルの野郎は魅力的な女だった。
 まだ主役ではないというだけで素材は抜群。現役ダンサーだけにスタイルも最高だ。
 ショートヘアに整った顔立ち。
 そして…俺のほうも相当に魅力的だったらしい。
 いつの間にか俺たちは抱き合ってお互いの身体をまさぐっていた。
 密着したあいつからは何処(どこ)と無くいい匂いがする。多分俺の方もそうだったはずだ。

 何だかんだいいながら俺たちはいつの間にかお互いの服を下着まで含めてむしりとって全裸でベッドに転がり込んでいた。
 まあ、お互いの性的対象は女だからその意味では趣向と嗜好と需要と供給が一致したというところだろう。ただ、男のアレが無いから全く違うものにならざるを得なかった。
 やったことあるか?お互いの頭と胸を交差する様にしてお互いの乳首を吸いあうの。
 あれは気持ちよさと責めるのが同時に中々出来ないから結構難しいんだ。

 自然とどちらかが責めを担当し、次に攻守ところを変えることが以心伝心で出来た。
 この晩は半ば自暴自棄になってたこともあって朝までお互いに何度も絶頂を迎えたね。

 俺たちは次の日の朝にはもう十年来の恋人同士みたいにベタベタになっていた。
 慣れた手つきで女物に着替えると、レッスン会場に「恋人つなぎ」で手を繋いで向かったよ。

 街中でもお互いの気持ちが高ぶってきて、隙を見ては密着してキスしてたりしたなあ。
 もうレズカップルなのを隠す気も無い感じだった。

 まあ、こちらは主役であっちは端役だからレッスン会場やら開場前の扱いは全く違う。
 だからその日の舞台が終わるまではまるで引き離された恋人同士ってなもんだ。
 ぶっちゃけその手のことがそれほど珍しくない芸能界だから、そこまで異端視されなかったが、それでも余りにも堂々と女同士でイチャつくから一部の団員には白い目で見られていたらしい。

 俺は次の日もその次の日もオデット姫を演じ続けた。仕方ないだろ。仕事なんだから。
 舞台の上から見る景色ってのはまた独特でね。自分の周囲の舞台だけが明るくて、客席は薄暗いのな。そこにぼんやりと大勢の人間が座っているのが分かる。でもってその殆(ほとん)ど全員が俺の女の肉体を凝視してるのさ。
 何かやるたびに腰周りのスカートがふわふわと上下動し、華奢な肉体美を見せ付ける。
 最初の内は恥ずかしさに震えてたけど、徐々に「見られる快感」に目覚めてきたね。半ばヤケクソともいうけどさ。

 こういう立場になってみないと分からないだろうが、どんなに女性的な衣装を着てようが、舞台上で情熱的な恋を踊る女を演じていようが、鏡を見ないことには自分の外見は自覚できない。
 だから鏡を見るたびに心臓が跳ね上がりそうになる。そこにいるぞろっとした女が自分であると言う風に脳の情報がリンクしないんだ。
 いつも一瞬遅れて「ああ、これは俺か。今の」ってなもんだ。

 だからオシャレする趣味もショッピングを楽しんで鏡に向かって何度も試着を繰り返す趣味も無い。舞台以外ではメイクもしないからあまり鏡に向かって己(おのれ)のツラを延々睨む機会も多くなかった。
 それなりに金はあるし、ちょっと言えば多少の贅沢を許してくれるスポンサーだっていたから、その気になれば目が飛び出る様な値段の最新ファッションだのデザイナーズブランドだのを着倒すことだって出来たんだろう。

 しかし駄目なんだよ。
 なんつーか、日々ルームメイトに女体のあちこち責められてあえいだり甘い声を上げたりもするし、仕事となればこっぱずかしい格好で鏡に映る自分に固まって剥がれそうになる濃いメイクをすることも出来るし、おっぱい丸出しで舞台衣装あわせだって出来る。何より舞台上で女として男と絡みながら踊るのを大勢に見られてその快感に震えることも楽しめる様にはなった。
 けど、根本的なところで精神が男みたいで、プライベートで鏡を見ながら自分の可愛らしさ美しさに酔いしれながら一人ファッションショーをする価値観がどうしても育たなかったんだ。

 確かに人形みたいな美人なんだけど、毎日見続けてるとあちこち不満が出て来る。
 だからプライベートでは反対を押し切って全くメイクをしない。というか鏡を殆(ほとん)ど見ない。自分と認識出来る女がそこに映っている現実に耐えられないんだ。
 その割には女物の服をするすると着られるのは矛盾してるかも知れないが、何と言うかそこは仕方が無いって言うかさ。
 大体「男にモテ無い」って悩みは皆無なもんでね。むしろモテたくないっていうか。
 その意味でもライバルの奴は絶好の「男よけ」ではあったね。
 といっても相手も二人連れでまとめてナンパされたことは数限りなくあったりするんだが。

 あんまりしつこくて断っても断っても追いかけてくる場合は二人でそのまま情熱的なキスをすると肩をすくめるか軽く口笛を吹いて退散ってなもんだった。

 いわゆる月経っての?も当然ながら体験した。
 いやあ、女って大変だね。あんなもん定期的に食らってるのか。まあこれもこの世界の俺が慣れていたのか身体のほうは手馴れていて道具も何もかも全部すんなり装着も外すのも捨てるのもお手の物なのが何となくむかつくが。

 どうやらこの世界で俺は売れっ子だったらしく、仕事が途切れることが無かった。
 ある意味においてこれ以上女性的な格好は無いほどの格好を日々させられているに等しい訳だが、慣れてくるともう流れ作業になってくるね。
 どんなにきらびやかな衣装を合わせても、これを着た状態でどんな風に踊らなくちゃならんのか考えるだけで余りはっちゃける気にもならないというか…。

 そんな生活が五年も続いた。
 その間、お互いに進む道も違ってきて、ライバルの方も若干小さな箱ながらオデット姫を射止めたりして、遂に別居するようになった。
 別に不仲じゃないんだけど、ダンサーは仕事そのものに言葉がいらんこともあって極論すれば世界中どのバレエ団でも所属出来るところがある。
 なので別々の国に所属することになった段階で同居は不可能になった。

 この頃にはお互いに一端(いっぱし)のバレリーナとして立派にひとり立ちしてた。
 この世界に飛ばされた当初の心細さはどこへやらだ。お互いの舞台を一観客として鑑賞しに行って控え室で抱き合って健闘をたたえ合う俺たちは周囲にはどう見えたんだろうな。

 二人とも…自分で言うけど絶世の美女だから、さぞ美しい光景だっただろう。

 お互いに忙しい身だから、それぞれの期間中大抵は一日しか出会えない。
 そしてお互いにやるべきことは分かっている。
 何も会話を交さなくても適当なホテルにしけこんで、朝までくんずほぐれつだ。
 徐々に刺激も足らなくなってきたのでお互いに過激なボンデージを着込んだり縛ったりなんてこともやり始めた。

 実は意外なことにこの時期までやったことが無かった片方が男役になっての二人での踊りなんかもやったりした。
 何と言うか主従関係がコロコロ入れ替わる快感というのが決め手というかね。

 ここだけの話、もう元々自分がどこの誰で、この生活がスタートするまでどんな人生を送ってきたのかなんてすっかり忘れかけていた。
 あの状態になってから興味を持ってニューハーフのインタビュー記事なんかも読むようになったけど、自分が元男だってことをしょっちゅう忘れるとか書いてあって「んなアホな」とは思えなくなってたな。うん。実際忘れる。
 ある時なんぞ風呂に入っていてかつて自分にちんちんあったと思い出してぞっとしたりな。

 だが、それも唐突に終わった。
 ある朝新作の舞台の打ち合わせに向かって道を歩いていた時の事だ。

 その時俺は…自分で言うのもなんだが、どこかのファッション雑誌から抜け出してきたみたいなコーディネートで全身キメていた。
 といっても自分で買ったものなんぞ皆無。はっきり言って俺くらいの売れっ子バレリーナともなると、パトロンみたいなのが勝手に色んなもん買ってくれるんだよ。
 下手するとメーカーが勝手に押し付けてくる。
 無碍に断るのも失礼だと思って使うようになると、いつの間にやら適当な日用品を継ぎ接ぎで着ていた貧相なおっさん崩れ女が、洗練された世界的美女になってるんだから困ったもんだ。
 流石にこの頃になると部外者と会う日にはちゃんとメイクするようになったよ。

 もう毎朝美女が映る鏡を見ながら着替えたりメイクしたりするのにも抵抗がなくなっていた。
 思えば兵士として常に汗まみれの泥まみれになりながら、その命さえ粗末に扱われていた荒くれ生活が、いつのまにやらこんな美女になってきらびやかな装飾品にオシャレな衣装に日々身を包んで鏡に向かってメイクと来たもんだ。
 自分ですらうっとりする美しさの長い髪をなびかせつつ海外遠征の飛行機のビジネスクラスに乗り込んで、妖精みたいな美貌を振りまきながら眠りにつく感慨はかつての人生では得られなかったものだ。
 行く先々で若い女の子にはきゃーきゃー言われ、紅顔の美少年が憧れの視線で見上げてきて、おっさんたちが鼻の下を伸ばす。
 フン族の王がシンデレラになったみてーなもんだ。王子様はいねーが。
 ただ、私生活の王子様はいなくても舞台上では常にお姫様だからそれこそ男には困らない。ぶっちゃけ男に対してはこの時点でもまだ処女だった。女相手にはやりまくりだったが。
 こんな人生も悪くないかなと思いかけていた。

 最後の記憶を何となく辿ってみると、恐らく交差点を横切ろうとした時に中央で接触事故を起こした車が俺の方に向かってかっ飛んで来たらしかった。

 どうして記憶がハッキリしないかといえば、その後すぐに戦場の真っ只中に取り残されていたことに気が付いた俺は、命からがら逃げ出してくるのが精一杯だったんだ。

 もう数年来味わっていなかった感覚だった。

 日々その乙女の柔肌を官能的な感触を持つ女物の下着に包み、爪の形一つにも最新の気を遣う生活が、突如「生きていれば上等」の泥まみれの戦場に舞い戻ったのだ。
 地面を転がりまわるなんて、服のどの部分が破損するかもしれないし、数千ドルも掛けて整えた髪形が一瞬でパーになる危険もあるから絶対にありえなかったものが、身体が反射的に動いてゴリラみたいにゴツい身体をあちこちぶつけながら走り回った。
 俺はその足でジャングルに駆け込み、食うや食わずでそこいらの蛇だのケモノだのをひっとらえてはサバイバルナイフで引き裂いて食らった。

 仕方が無いから川にたまった生水を啜って腹を壊し、ゲロまみれクソまみれになりながらどうにか這い出し、友軍に保護されてそのまま一週間ほど病院で寝続け、ついこの間目が覚めたんだ。

 ライバルは生死不明だった。今もあっちの世界に取り残されて孤独なバレリーナをやっているのか、或いは戻った瞬間に吹っ飛ばされて跡形も無くなっているのかどっちなのかは分からない。
 ドッグタグすら発見されていないから、恐らくまだあっちにいるんだろう。

 こうしていると、ブラをしていない自分が妙に落ち着かないと感じることもあるしそうでないとも言える。
 久しぶりに男の象徴がいきり立った俺は、瀕死だってのに弄(いじ)り倒してタダでさえ少ない体力を使い果たし、軍医に一生分怒られた。

 今にして思えばあの舞台の上での白鳥生活は何もかも幻だったのかとも思えてくる。
 しかし、肉体の奥底に刻まれた“感覚”や“感触”は残っている…積りだ。

 とはいえ、あの流麗で細かった手足は丸太みたいにごつくなり、大理石みたいだった表面は見るも無残な毛むくじゃらだ。仮にその毛を全部そり落としたとしても、ワニ皮みたいにごわごわとデコボコなその皮膚ではとてもあの踊り子を再現することは出来ない。

 楽に出来ていたポジションだって足首が痛くてとてもじゃないが一番すら出来ない。五番なんてやったらこの丸太みたいな足首がへし折れるだろう。
 試す気も無いからやってないがポワント(つま先立ち)なんて夢のまた夢だろう。大体体重が倍以上も重くなってるからお話にならん。
 もう華麗なバレリーナとして男にリフトされることも無いのか…と思うと一抹の寂しさはある。

 そう考えるとあの甘ったるいメイク道具の匂いやら、こっぱずかしいとしか思わなかったユーモラスな衣装にも妙な懐かしさを覚えちまう。
 確かに肉体は男というメジャーセックスから女というマイナーセックスに転落はしていたよ。
 だが、世界的な有名ダンサーとして、何より絶世の美女としてその大きな影響力を振るい、自分で仕事を得ては気ままに振舞っていたバレリーナの俺は間違いなく「強者」だった。
 だが、今じゃ有名人でもなんでもない。中途半端に年をくった負傷した兵隊のおっさんでしかない。誰も俺の一挙手一投足に注目なんぞしない。

 これじゃあどちらがどちらに転落なのかわかりゃしないな。

 とても信じてもらえるとは思わんが、これが俺の体験談だ。
 俺としては爆弾で吹き飛ばされた瞬間に観た一瞬の幻覚だったと思いたい。
 或いは今の俺の軍隊生活の方が車に轢かれた哀れなバレリーナの見ている長い夢なのかもしれないなあ。






お買い得品

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

 あ、どーも訪問販売です。

 大丈夫ですって押し売りじゃありませんから。

 この頃の警報装置完備の民間住宅のことは承知してますよ。怪しい動きなんてしようもんならあっという間に捕縛されます。そんなの常識じゃないですか。

 それにほら!見てくださいこの地方公共団体のお墨付き入りの営業許可書!モグリの業者は持ってませんよこんなの。

 大丈夫ですって!気に入らなかったらお断りいただけばいいんですから!あたしらも商売だから折角営業したからには買っては欲しいですけど、買う意思の無いお客さんに延々押し売りして時間を無駄にした挙句に通報されてお縄ってんじゃ割が合いませんから。

 へえへえ、そこはわきまえてますんで。

 え?それじゃあすぐ帰れって?

 まあ、そこは一つお願いしますよ。
 せめてお話だけでも聞いてくださいって。あ、それじゃあこうしましょう。
 あたしが勝手に話しますからそこで黙って最後まで聴いてるだけで結構です。
 会社にはちゃんと説明した上で納得してもらえなかった…ってな具合に報告しときますから。
 サラリーマンのあたしを助けると思って…お願いしますよ。

 え?聞いてくださる!?それは助かります。有難うございます。

 じゃあ早速始めましょう。

 今度ウチが売り出すのは超高性能の安眠装置です。

 現代人は忙しいですからねえ。
 忙しいだけならともかく、この頃の超ハイテク社会じゃあ夜も昼も無いから人間の感覚は大混乱!いわゆる「自律神経」って奴が困っちゃうんですよ。

 あたしも経験がありますけど、「不眠」!これは困りますよねえ。

 寝ようったって寝られないんだからたまったもんじゃない。
 部屋を真っ暗にして目をつぶって何時間じっとしてても眠れない時は眠れないですから。ええ。

 おかしなもんで、「寝ちゃいけない」シチュエーションだと嫌になるほど眠くなったりするんですけどね。

 よく経験の無いのがのたまってますけど、「眠れないんなら、いっそ眠らずに何か有意義なことをしたらどうだ?本を読んだり」なんてこと言われた事ありませんか?

 全く馬鹿馬鹿しい話で、実は「不眠」ってのは「眠りたい時に眠れない」ってのが問題なんですよね? 

 明日は大事な仕事があるから、一刻も早く眠らないといけないのに眠れない!こういうのが本当に困っちゃう「不眠」ですよ。
 そりゃ「眠れないなら別のこと」を出来るもんならしたいです。翌日が日曜日ならあたしだってそうしますけどね。
 そういう訳にもいかないんですよねえ。

 一回経験がありますよ。
 本当に眠れないもんだからそれこそヤケを起こして朝まで読書としゃれ込んだら、夜が明けていざ仕事だ!ってなタイミングで恐ろしい「睡魔」が襲ってきて大変な目に遭いました。
 その日一日は使い物にならなくて最悪でしたよ。

 そう、「不眠症」とか言ってますけど実際には「寝るタイミングが狂ってる」症状なんですよね。
 さっきポロッと言っちゃったんですけど、この原因は「自律神経」が混乱を起こしてるからなんですわ。
 落ち着いて無いといけないところで妙に興奮状態が続いちゃう。これが良くない。

 かといって睡眠薬を使うのも余り褒められたもんじゃありません。

 そこでウチの安眠マシンですよ。

 といっても、原理は簡単。要するに「適度な疲労」を体験して、健康的に眠ろうって訳です。

 睡眠障害…不眠になる人のほぼ百パーセントは「運動不足」です。間違いありません。

 かといっていきなり筋肉トレーニングみたいな運動をやったんじゃ身体を壊しますからね。
 元々人間の身体はそんなに急激な負荷を掛ける様には出来ていないんですよ。はっきり言うとスポーツは身体に悪いんです。

 え?オリンピック選手はどうかって?

 正に健康に悪い典型例ですな。

 アスリートがどれだけ怪我をしているかご存知ですか?
 単に走るだけ…というと語弊がありますけども…の陸上選手ですら肉体的にはボロボロなんですよ?これが接触のある球技なんかだと更に大変。変わったところではバレエダンサーなんかも足のマメを何度も潰すし現役の間は大抵どこかが痛いなんて言われる激務です。

 これが格闘家なんかになった日には悲惨です。プロレスラーなんて全身ボロボロ、特に大型レスラーなんて百パーセント膝を壊します。
 現役で長く戦えば怪我の後遺症が出て、痛み止めを過剰に服用しながら仕事、本末転倒なことにその痛み止めの薬品に依存して薬物依存になっちゃって内臓がボロボロなんてザラです。どんなスターレスラーでもね。

 オリンピックで金メダルを取るほどやり込んだ選手は平均寿命よりずっと若くして亡くなる例が多いのはご存知ですか?

 話がそれましたが、ともかく“適度な”運動で疲労するのが一番なんですよ。激しいのをやりすぎるのは絶対に駄目。
 それも出来たら「筋力トレーニング」はまあほどほど…というかやらなくてもいいので、有酸素運動なんかいいですねえ。
 簡単に言えば歩いたり走ったり。それも無理の無い範囲で。

 とはいえ、有酸素運動がいいのは分かったんですが、これは時間が掛かります。五分の筋力トレーニングをやるよりも3時間歩いた方が健康にいい。でも忙しい人には無理。

 そこでこのマシンですよ。これで健康的に運動が出来ます。その気になれば短時間で集中的に。

 はい、もうお分かりですね?セックスです。

 え?どうせバイアグラみたいに心臓に負荷が掛かって死んじゃうんだろうって?

 ノンノンノン。

 それは古い常識です。
 というか、バイアグラって元は…というか心臓病のクスリじゃないですか。そんな身体に負荷を掛けるものじゃないんですってば。

 バイアグラみたいに無理矢理身体を奮い起こすものは論外。だからこそ急激な負荷で心臓が止まっちゃったりする。
 …まあ、人生の最後にそれはそれでいいって考え方もありますけど、避けられるもんなら避けた方がいいでしょう。

 先ほどの答えがこれです。

 「健康な運動」。それがセックスですよ!

 セックスって体力を消耗するでしょ?余程不精で無い限りは。

 最新の研究結果で、適度なセックスは脳から健康になるホルモンがドバドバ出てむしろ健康を促進することが分かってるんですよ。

 え?それが出来るんならとっくにやってる?

 ええ、分かります分かります。

 相手がいるならとっくにやってるって?おっしゃるとおり。ごもっとも。

 だからこそウチのシステムですよ。

 この「安眠推進マシン」を使えば、誰でも寝る前に健康的なセックスが楽しめます。
 脳からホルモンはドバドバ出るわ健康的だわ運動になるわ、そしてついでに心地よい疲労で安眠も約束されるってこんないいことありませんよ!一石何鳥なんだか数えられないくらい!

 え?仕組みが分からない?

 そうなんです。聞いてよかったでしょ?はなから追い返さなくて。これから仕組みを説明しますからよく聞いてください。

 仕組みは簡単で、このテント状のマシンを部屋に設置してもらいます。
 で、中は布団だけにしてください。

 でもってこのボタンを押せば準備完了。

 細かい指示は事前にしていてもいいですし、気分によって変えても大丈夫。

 え?で、どうなるんだって?

 そうですねえ…この際なんで一回無料体験してみます?

 大丈夫ですって!一回無料でやったからもう契約した…なんて詐欺くさいことはしませんから。大丈夫ですって!ちゃんと誓約書も書きますし。

 はい、何歳でも可能ですよ。ええ。

 え?この年になってセックスは怖い?

 まあ、お気持ちは分かりますよ。前世紀だったらとっくに平均寿命は越えている計算ですからね。今お幾つでしたっけ?…127歳!そうですか。
 アンチエイジング技術も進んでますけど流石にかなり限界近いですからねえ…。

 大丈夫!あたしの顧客の中でははっきり言ってお客さんかなり若い方です。一番上は190歳だったかな…ともかく150歳なんて洟垂れ小僧ですから。

 あたしはまだ四十前ですけど、将来的にはこのマシンのお世話になるのも悪くないかなあ…なんて思ってますんで。

 じゃあいいですか?大丈夫。危険はありませんから。

 そうですねえ…最初は勝手が分からないでしょうからあたしの方でアレンジしますね。
 もしも気に入っていただけたんなら契約してもらって、ご自身でアレンジしていただくということで。

 ええ、それこそセックス無しでも全く構いませんよ。
 ここだけの話、セックスまで至らなくても物凄く活き活きするようになった方なんて大勢いますんでね。

 はい、それじゃー…っと。ピポパポ…ってレトロですな。最近ちょっとクラウドで古い映画を観るのに凝ってましてね。
 何ですかあの「エイリアン」って映画は。結構時代が進んだ頃に作られたって聞いたんですが近未来でも液晶使ってる設定になってますね。
 いやーとてもあたしらには思いつかない発想っていうかねえ…ま、当時の方々の想像力の限界だったんでしょうけど。
 その割には見たことも無い怪獣みたいなのが出て来るんだから昔の人の発想がよく分からんですねえ。

 …はい!準備出来ました。
 それじゃあ行きますよ。それっと!

 はい、どうです?
 こりゃあ素晴らしい。可愛いですね。

 あ、大丈夫大丈夫。暴れないで下さい。

 え?これですか?えーと、何でも前世紀の女子高生の制服らしいですね。
 ブレザーとか言ったかな。

 いや、そりゃミニスカートですよ。それくらい現代だってあるじゃないですか。

 え?そういう問題じゃない?

 はい、だから言ったじゃないですか。セックスしても安全だからって。

 はいそうなんです。ウチのシステムにアクセスしていただければ一定時間若い女性の身体になって衣類も調達しますので、その間に思いっきりセックスしていただくと、まあこういうことになってるんですな。

 え?オレは男なのに何で若い女の身体にならなくちゃいかんのだ?

 いやそれがですね…どうもシステム的にどうしても若い男になれないんですよ。

 それに…ここだけの話、実はこれで結構問題無いんです。皆さん楽しんでおられますよ。

 え?冗談じゃない?オレは男だこの変態野郎?

 まあ、そうかもしれませんけど先ほど申し上げたじゃないですか、セックスは身体にいいんだって。身体はすぐに元に戻っちゃいますけど脳の働きはムチャクチャ活性化するんですよ。

 いや、ここからが本番です。
 パートナーなんですけど、初心者なんで女性がいいですかね?

 え?決まってるじゃないですか。セックスのパートナーですよ。

 そりゃそうですよ。こんな大金払ってひとりエッチじゃあたしらそれこそ詐欺ですわ。

 男となんかセックスしたくない?はいはい。ごもっとも。じゃあ、女性のナビ充てますね。

 え?女とセックスするのかって?

 そうですよ。ウチは基本的に男か女かどっちかです。動物とかのサービスは提供してません。

 はい来ました。色々考えたんですけど、露出の少ないロングスカートのメイドの格好です。可愛いけど色っぽくないでしょ?それがいいかなと。

 じゃああたしはいったんマシンの外に出ますからお楽しみ下さい。

 え?大丈夫ですって。ちゃんとナビはウチが契約したエージェントで腕は確かですから。危険なんて言うに及ばずです。
 実は初心者はみんな最初のナビは女性が多いですね。やっぱり心理的に安心するんでしょうか。

 まあ、その内それに飽き足らなくなって男のナビ呼んで、エスカレートすると男複数を呼んで…なんてことにもなったりしますが。
 まあ、その場合は別料金頂きますけど大抵は都合つけますよ。お任せ下さい。

 それじゃあまた後で。


 …どうです?お楽しみいただけましたか?

 大丈夫ですか?顔が真っ赤ですよ。

真城様挿絵19

 …まあ、気持ちは分かります。一回目は大抵そうですから。段々慣れて来ますからご安心を。

 ええそうです。契約していただければこれが毎晩楽しめます。

 それが出来ない場合にはそれこそ単に女子学生になって制服を寝巻きに朝まで安眠することも出来ますよ。

 不思議なこと「着替え安眠のみ」コースの愛用者も多いんですよね。俗称「性転換パジャマ」なんつってね。あはは。

 でも大抵パジャマではなくて制服とかかなりしっかりした格好でお休みになる。ブラジャーとかキツいんじゃないかと思うんですが、気にならないどころかそれがいいなんておっしゃる。

 このコースですともしも最後まで至りたいなら「ひとりエッチ」ということになって、それは料金を頂いてないんですがこの達人もいらっしゃったりして。

 実は口止めされてるんですけど、ウチには十年来のお客さんがいらっしゃいましてね。
 ええ、お客様よりずっと年上です。

 この方もう契約は十年目になるんですが、ずっと毎晩寝る際には妙齢の美女になって純白のウェディングドレスでお休みになるんです。
 ええ。女性の身体ですよ。

 仕事柄ドレスに触れる機会も多いんですが、あれは間違いなく寝巻き向きじゃありません。
 ドレスにもよりますけどスカートを膨らませるためにチュールという固い素材が入ってますから結構ごわごわするんですよ。見た目と裏腹に。
 それに寝返りを打てばお化粧が枕に付いちゃうし、折角セットした髪もムチャクチャに。イヤリングはあちこち引っ掛かって痛いはずなんですがねえ。

 しかも旧世紀にはもう花嫁衣裳なんてシンプルなのが主流だったはずなんですけど、この方レトロ趣味なんで物凄くデコラティブな衣装をここ十年毎晩同じそれで着続けていらっしゃるんです。
 ええ、男性ですよ。当たり前じゃないですか。
 まあ、寝るときは若い美人の女性になってるんですけど。

 「寝巻きとしての性転換」の最も典型的な使用例ってことになりますね。
 きっとウェディングドレスの「着心地」もそうですけど若い女体の「寝心地」もとてもいいんでしょうね。

 今のウェディングドレスって肌触りはムチャクチャいいらしいですね。生憎(あいにく)あたしは着た事が無いんで知らないんですが、とにかく「着心地」を最優先に開発が進んで、今じゃ固いチュールじゃ肌触りが悪いってんで反重力装置でスカート広げてるってんだから技術の無駄遣いも甚(はなは)だしいですな。
 ちなみにこれが女性の婚礼衣装デザイナーじゃなくて、在野の女装愛好家の男性が特許を持ってるってんだからそれも面白い。

 余りに着心地のよさを追求しちゃったもんだから、「婚礼衣装」という本来の用途を離れて「寝巻き」としての需要が高まって、本来の目的を知らない地域にまで「寝巻き」として売り出されて老若男女着てた…なんて冗談みたいな話もあったみたいです。
 まあ、余りにもフェミニンなお衣装ですから、男性も着ていて「なんか女みたいだ」と気が付いた…というんですがここまで行くと作り話臭いですな。

 ともあれ、その「肌触り」技術は今じゃ普通の寝巻きにも応用されてますから無理にドレス着る必要も無いんですけど、きっと発売当初のことが忘れられないんでしょうね。

 話がそれましたけど、…どうでした?

 あ、話したくない。分かります分かります。ある意味究極にプライベートな事ですからね。どういうふうに感じたかなんてのは。

 え?そこまで行ってない…?

 ああ、そういうことですか。
 余りに刺激的だったんで、メイドに女子高生の制服の上からおっぱいなでられたりスカートのお尻をすりすりされただけで何度も何度も絶頂に達しちゃって指でいたす必要が無かったと。

 ありゃ確かにべちょべちょだわこれ。凄いですね。

 いやあ、これは素晴らしいお客さんですね。
 今の段階でそこまで敏感ですと、男のナビで挿入に至る頃には何度も天国見られますよ。ええ。

 ええ。出来ますよ。

 とりあえず頻度抑え目のコースで。ええ。契約有難うございます。

 はい。今度はナビと一緒にショッピングでもなさいます?

 ええ。いますいます。若い女性になってもセックスまでせずにお出かけしたりデートするだけで満足していただくお客様が。
 別料金になりますけど、それも対応しておりますので。

 実はこの状態でバイトされてる方も大勢いるんですよ。ウチとしては半ば黙認状態ですけど、そろそろ業務形態に組み込もうかなんて話も出るくらい数は増えてますね。
 ファミレスのウェイトレスに…キャバレーでのバニーガールだったかな。
 しかも給仕の方じゃなくてポールダンスでお尻を振るのをバニーガールでやってるんだそうです。事情を知らない男性客は結構メロメロになって売れっ子になってるんだとか。激しいですなあ。

 相手ですか?

 実はここだけの話、あちらもウチの別契約なんですよ。
 若い女性とセックスする仕事ってことで。ええ。

 大丈夫!女性に暴力を振るうようなのは徹底的な審査でふるい落としてますし、行動も全部監視してますからそれに近いことをやっただけで即クビです。

 それにテクニックもバッチリ仕込んでますから、大抵の女性は満足させられますよ。ましてやシチュエーションに既にべろんべんろんに酔っていて、服の上からおっぱい撫でられただけで達しちゃう方なんて、ウチの契約社員に掛かったら天国の天井突き破っちゃいますよ。

 今のあなたにおっぱい吸われたり、乳首つねられたりされる想像出来ます?

 あ、すいません。また濡れちゃいましたね。

 女性もそうですよ。そっちの趣味のある方を募集で集めてますから。

 ウチも契約社員もお客様も万々歳という幸福なサイクルなんですわ。

 それじゃあここにコース一覧とコスチュームその他サービス一覧のカタログおいておきますから。

 それじゃ!



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GW特別SS リクエスト・さらにその後

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

 如何でした?先日の作品は?納品から今度は二週間目ですけども。

 大変満足いただけた!それは何よりです。
 一応お客様のリクエストは全て盛り込みましたからね。

 お寿司を食べる時は玉子焼きみたいに味の薄いものから食べるのと同じく、衣装もフェチ度の少ないものから着せていきましたからね。

 まずは今時の可愛らしい女子高生の制服から始まってOLの制服、スチュワーデスの制服とエスカレートして行き、バニーガールに至ってラストはウェディングドレスを身に纏っての神前結婚式です。
 どうでした?映像の中とはいえ、自分の華麗なるコスプレ姿は?

 ウチのお客様に合わせた画面作りは完璧ですからね。
 アダルトビデオみたいなドギツさを最小限に抑えてセックスながらあくまでも爽やかに!

 分かります分かります。女性が欲望の対象である普通のAVと違って、自分が主役となると路線はあくまでも可愛らしく可憐に、そして清潔な感じで…となりますもんね。何しろ自分のお姫様姿が見たいって話ですから。
 そこはお任せ下さいよ。

 私もコスプレAVを観ていまして大いに不満でしたから。途中で全裸になるとか全く意味がありませんよねえ。
 それに無闇に裸を見せればいいとか、挿入シーンに至ればいいというのは安易の極みですわ。
 何と言ってもセックスに大事なのは雰囲気作り!これですよ。ここが完璧なら何度でもイケるんだから、極端な事を言えば挿入に至らなくてもいい位の話です。

 軽くハードに踏み込んだソフトな言葉責めとか最高でしょ?
 ここだけの話、ウチの女性スタッフも太鼓判を押してました。というかむしろ羨ましいとか言ってましたね。

 結構画面がちゃんとしてたでしょ?
 これには色々理由があるんですが、まず一つはきちんと照明を当てて画面をクリアにしているってこと。まあ、実写に見えますけどCGなんで本当に照明当てている訳では無いんですが、そこをちゃんと意識するってことです。

 アングラに限らずAVってのは超低予算で取り逃げすることが多いんで、機材にお金掛けられないことが多かったんですよね。だからロクに照明が当たってない。
 そういううさん臭い画面が好きだってお客様もいますけど、下手すると何が映ってるのかも良く分からない。これは駄目です。
 テレビ放送されるドラマや映画とかがきちんとして見えるのはこういう照明の問題も大きいんです。
 しかもビデオ撮影でしょ?あの当時って。
 ビデオ撮影は何でもピントがしっかり合っちゃうから画面が軽いんですよ。

 昭和ライダーと平成ライダーの違いと言えば…一部の方にはお分かり頂けるんですが。
 なのでウチはしっかりとフィルム撮影っぽい重厚感を出すことにも心血を注いでいます。

 これをやると余計に画面が暗くなるので気持ち明るすぎるくらいの調節でいいんですよ。
 ぶっちゃけ商業劇場作品ですらフィルム撮影なのに不足気味の照明で撮影するもんだから画面が真っ暗なものもちらほらあるんです。
 この点ハリウッド映画は流石です。皮肉で無しに。
 フィルム撮影なのに映るべきものはしっかり映っている。そういう基本を疎(おろそ)かにしないのは侮れないですわ。

 それからこれだけは強調したいのが音声ですね。
 低予算映画観てて何が腹立つってちゃんと声を拾えてないことですわ。
 アダルトコンテンツなんて「言葉責め」がもう一つの主役なのに音声がモゴモゴ篭ってる上に録音レベルが低すぎて何を言ってるんだか全く分からない。

 アフレコってのも映っている人間と口がいちいち合ってない何とも言えない不安感があって雰囲気としては悪くないんですがね、「ウルトラセブン」みたいに。
 ただ、やっぱりここは同録じゃないと。しかもちゃんとクリアに聞こえる。

 まあ、低予算映像作品で声をちゃんと録音しろってのがハードル高いのは経験者なんで良く知ってますけどそこは頑張らないと。裸だからピンマイク付けるのは難しいのは分かるけど、そこは指向性マイクでちゃんと拾うとか。
 ぶっちゃけ今残っている黒澤映画だって中身はともかく台詞の録音技術なんて「悲惨」の一言で、何を言ってるのか全く分かりませんからね。もっとも、当時の日本映画はみんなあんな調子らしいですが。
 黒澤映画の人気に火が付いたのはヨーロッパからですけど、字幕があるから台詞が理解出来たんでやっと内容が分かった…なんて意地悪を言う人がいるくらいです。
 私も黒澤映画は日本語字幕付きで観てますよ。

 話が逸れましたが、とにかくウチの映像作品のいいところはこういう風に普通のお客さんがまず意識しないレベルでしっかりやるべきことをやってるってことです。普通は台詞の録音レベルとか気にしないでしょ?

 で、次のご依頼は?
 え?完全オリジナルのSF活劇ですか。

 おお、これはハードル高いですね。
 ウチの料金表はご覧になってますよね?例外事項を多く持ち込むのでかなりお高くなりますが…その辺りは大丈夫ですか?

 いや、ウチは料金さえちゃんと払ってもらえば何も申し上げることはありませんから。

 内容の梗概は書いてきて頂きましたか?

 …ふむふむ、とある「宇宙海兵隊」十数人が敵軍の仕掛けたトラップに引っ掛かって異次元に飛ばされてしまう…と。

 この「宇宙海兵隊」って何ですか?

 ああ、映画「エイリアン2」に出て来るみたいなゴツい兵隊さんですね。
 いや、別におかしくないですよ。
 一般的に技術が進歩したら歩兵はいらなくなるみたいなことを言ってる人もいますが、最終的には人間が歩いて占領地を確保しないと戦争は終わりませんから。

 危険が無くなるまでロボットに偵察させたとしても、最後の最後には必ず歩兵の出番になりますから。

 で、異次元ですが…この元になる時代ってのは宇宙戦争が普通になっている程度の未来ってことでよろしいですか?
 む~ん、困ったなあ。そちらの時代って結構出てきます?
 小説と違って映像作品だと一応設定とか作らないといけないんで…。

 え?出て来ることは出てくるけど、戦場だけだから余り気にしなくていい?

 それは何よりで。装備とかは近未来のものをイメージしなくてはならんでしょうけど、それも最小限にしましょう。恐らく火薬や実体弾を使う銃なんかはそれほど形状も変わらないでしょうからね。

 で、「異次元」ですが…ふむふむ、21世紀初頭の日本の高校に集団で飛ばされると。

 これは意識だけ飛ばされる訳ですね。

 彼ら屈強の兵隊たちはふと気が付くとセーラー服に身を包んだ女子高生になった状態で全員が校舎の中で目が覚める…と。なるほど。

 この「敵の兵器」ですけど、一種のトラップみたいなもんですよね?ひとおもいに敵兵なんて殺しちゃえばいいと思うんですが…何らかの理由でこちらの方が容易なんですね。了解です。

 それにしても古風ですねえ。セーラー服ですか。
 え?あんな幼稚園児みたいに短いスカートは良くない?あはは、ごもっともですな。いえ、別におかしくないですよ。セーラー服だって立派に「学生服」です。

 現実には隆盛を極めたのが80年代くらいですね。勿論1900年代の。
 この頃には「セーラー服」が一種の性的アイコンになっちゃって大変だったみたいですね。
 当局がアダルトコンテンツへの使用を制限するお達しすら出したとか出さなかったとか。
 80年代後半くらいから…これです。この写真。
 トラッド調のチェックのプリーツスカートを基調にした制服が登場し、徐々に勢力図が塗り替えられていきます。
 世紀が変わる頃には、「セーラー服」といえば「女子中学生」のものというイメージに近くなってますね。80年代にはどのアニメも女子高生はセーラー服姿だったもんですが。
 ただ、80年代の消費の主役は少し年代が上の「女子大生」だったみたいです。バブル時代と重なりますね。

 トラッド調のブレザーと呼ばれる垢抜けた制服が流行し始めると同時に「女子高生」が消費の中心になって行きます。
 ちなみに登場直後はあんなにスカートは短くなくて、徐々に短さがエスカレートしていったみたいですね。
 次第に「制服」といえば「女子高生」という刷り込みもまたエスカレートして、外国のアーティストが制服姿のPVを作ったり、制服をアレンジした衣装で大人数で舞い踊るアイドルグループが出現したりします。

 え?じゃあ、ブレザーが垢抜けてるってことはセーラー服はそうじゃないのかって?

 まあ、はっきり野暮ったいですわな。
 元々、男の服装をスカートでアレンジしただけですし、制服ってのは年がら年中同じ服を着てますからデザイン云々よりも頑丈さが優先されるところがあります。
 デザイン的にもオシャレで独自性を出しにくいし。
 毎日こすれるスカートのお尻のところなんて擦り切れてテカテカになってるのが当たり前ですからね。

 冬服ともなれば血みたいにドス赤いスカーフにカラスみたいに全身真っ黒。スカートも長くて露出度がほぼゼロだし、白い三本ラインがワンポイントですけど、これは暗闇を歩いていて自動車に轢かれない様にした工夫じゃないのかと言いたいくらいです。
 夏服は多少明るい色使いとか増えますけど、申し訳ないけど悪い意味での「制服」って感じですな。

 あ、すいません。個人的にセーラー服に思い入れが余りないので。
 ただ、時代的に「セーラー服」とか「スクール水着」とかに「フェティッシュな意味合い」が全く無かった時代ってのもあったことは間違いないみたいですよ。むしろ「野暮ったさの象徴」みたいな。

 あ、でも確かにセーラー服に髪の長い清楚な美少女然とした姿は似合いますけどね。
 どんなに上品な雰囲気を出しててもふともも全部露出したキュートな制服じゃあお嬢様感も半減ですから。

 ともあれ了解です。
 全員がセーラー服の美少女として戦場にいたはずが気が付いたら教室で机に突っ伏して寝ていたと。

 ちなみに今回はサイズはいかがいたします?映像の長さですが。
 え?テレビサイズで1クール13話!?
 えーと…1話につき30分ですか?

 これは凄いですね。こんな本格的な依頼は初めてかもしれません。
 諸々(もろもろ)含めると5時間近いですが…その辺大丈夫ですか?予算的に。

 問題無いと。はい、了解しました。今法務部に書類作らせてますから。
 いやあ、こんな大型契約は久しぶりです。金額の端数はオマケしときます。いや、気にしないで下さい。私の点数も上がりますんで。

 今回はデザインも完全に変わっちゃいますけど、そこは「演技」で見せるようにしますんでご安心を。
 可愛らしい…女子高生ってことは15歳から17歳くらいですか…美少女たちが、無理しておっさんぽい喋り方をしてる感じでやりますんで。

 ふむふむ、この台詞は必ず入れて欲しいと。

「隊長!間違いありません!…今の我々には…乳房と…女性器まで…あります」

「ふむ…ということは、妊娠・出産も可能ということだな」

「そうなります」

真城様挿絵28-2

 なるほどねえ。あくまでも軍人として健気に頑張ろうとするわけですね。いじましいなあ。
 この台詞を骨格から何から完全に年頃の女の子が声を振り絞って言うわけですね。これは萌えますね。

 で、これってどういうシチュエーションですか?

 まず気が付いた彼らが周囲の風景は勿論、自らの身体及び服装にパニックになりながらも必死に探索してやっと落ち着いた状況ですか。なるほど。

 この時代ってずっと戦争してるんですか?

 アニメ「ボトムズ」みたいに宇宙をまたにかけた戦争が何十年も続いていて、彼らは生まれた時からずっと薄汚れた戦場で戦い続けていると。

 つまり、この時代の日本人みたいに第二次性徴前の男女が一箇所に集められて勉強するみたいな施設とかで育った経験は全く無い訳ですね。
 いやあ、なるべくならそんな時代に生まれたくないもんです。

 と言うことは彼らは小奇麗な「校舎」やら「教室」、「女子の制服」…というか「学生の制服」にすら馴染みが無いですね。

 流石に男女の違いは分かりますよね?
 え?「マクロス」じゃないって?失礼しました。お詳しいですね。

 ただ、それほどありふれた存在ではないと。それこそたまに行く娼館で見かけるくらいであると…。
 なるほどこれは興奮しますねえ。
 ロクに女体に縁も無い…あってもこんなに若い女体には縁が無い…むくつけき荒くれ者たちがよりによって花も恥らう年頃の女子高生になって制服姿で放り出されるってんですから。

 最初の内こそパニックだけで済ませていたものの、徐々に全身を覆う女物の下着の感触やらスカートの頼りない感じに自覚的になっていく…と。
 そして、遂に肉体だけではなくて仕草や口調まで勝手に年頃の女の子のものが自然と出て来る様になる訳ですね。

 それに精神的に抵抗しつつも、徐々に染まっていく…という。
 なるほどこれは面白いですね。

 ちなみに直百合行きます?その場でスカートめくりあったり、服の上からおっぱい揉みあったりする内に…という。

 まだそこまではいいと。
 ですよね~。映画みたいに2時間しかないんならともかく長丁場ですから。

 そして、やっと自分たちがおかれた状況を把握したところで…他の生徒たちが登校してくる!
 お客さん、脚本家の経験がおありになるんじゃないですか?

 そうですよね。やっぱりこういう場合は「共学校」でないと。

 女子校ってのも男の妄想を膨らませるには悪くないシチュエーションですが、彼らには「男と比較しての少女の立場」ってのを味あわせ無いとね。

 彼ら…彼女ら…は男子生徒や他の女子生徒もぞろぞろ登校してくると同時に身体が勝手に動いて「学生」としての生活を送り始める訳ですね。

 これは素晴らしいですね。単に男子学生としてこのシチュエーションに放り込まれるだけでもカルチャーギャップでひっくり返りそうでしょうに、ましてや女子になっちゃうなんて。

 で、学生生活でも色々描写しますよね?
 それこそ水泳の時間の着替えとか、体育の時間のブルマとか。

 やるけども、いきなりはやらないと。
 これはテレビシリーズサイズならではのじっくりとした描写って訳ですね。 

 一日無事に過ごした彼らは「自宅」に帰ると。

 するとそこには全員に「家族」がいて、それぞれの生活を営んでいる…と。
 ふむふむなるほど。

 小学生になったばかりのやんちゃな弟がスカートをめくってきてゲンコツで泣かせる賑やかなお宅もあれば、憧れの大学生のお兄ちゃんが何かと小馬鹿にしてくる家庭もあれば、娘一人の箱入り家庭もあり…。
 双子同然の年子で仲良し妹がいる家庭やら、寮住まいの孤独な女子高生ありと。

 で、主役は誰なんです?

 あ、先ほどの「隊長」で。

 隊長の家庭環境はどうします?

 娘一人の三人家族ですね。了解です。

 第一話ってどこまで行くんですか?

 Aパートが戦場で、Bパートに入るや否やトラップ周辺の話し。この辺で多少は各キャラの描写をしておくと。

 Bパートの最後で飛ばされ、隊長一人が意識を取り戻したところで「来週に続く」となる訳ですね。

 でもって第2話の前半で変わり果てた自らの身体と、見たことも無い異世界の周辺を探索し、さっきの台詞に繋がるわけですね。

 え?彼らはスカートを知らないから、めくり上げながら「何だこの変な服は!?」とかやるべしと。お任せ下さい。

 Bパートで怒涛(どとう)の学園生活一日目。
 そして、足が勝手に向いてしまう「自宅」の自室に思わず制服姿で倒れこんだところで「来週に続く」と。

 いいですねえ。ねっとりとした描写!

 3話Aパートでは、女子高生らしい可愛らしいアクセサリーがびっしり付いた携帯が鳴って、クラスメートになっちゃってる部下からの電話を受けると。

 必死に男言葉に修正しようとするけど、女子高生っぽい言葉遣いになっちゃう!これは演出側の腕の見せ所ですね。

 喋りながら「どうやって元の世界に戻るか」とか「この世界を知るには」みたいなことを話しつつ、部屋中においてある可愛らしいグッズとかに目が入って、気が付くと髪の毛を指でぐるぐるして遊んでたり、スカートをひらひらいじってたりするわけですね。

 遂には持ち運び出来る携帯電話であるのをいいことに、部屋においてあった全身鏡に自分の姿を映して軽くうっふん、みたいなポーズをとってぽっと顔を赤らめる…と。

 素晴らしい!お約束のシーンながら世界観の説明と彼らの置かれた状況を見事に説明してます。
 徐々に世界に流されて「身も心も」少女になってしまいそうになりつつ、その甘い欲望に負けそうになるのがいいですね。

 この後、Bパートに突入するんですが、ここで遂に自らの女体に誰憚(はばか)ることなく興味が行くと…。

 そりゃさっきまでは部下の手前だし、公衆の面前でしたからそれは出来なかったけど、たった一人のシチュエーションだし、完全プライベート個室ですから…そりゃやりますよね。

 そうですか、3話はBパート全部使って隊長の初オナニーをねっとり描写ですね。
 いやあ、これも商業作品ではまず無理ですわ。
 でも、リアリティを追求するならこういうのもなければ嘘ですからね。タブーが無いだけなまじの商業作品よりも腰の据わった描写になってますよ。
 一枚一枚制服やらスカートやら下着を脱ぎながら…という。この辺はわが社の培ったエロシチュエーション演出力にお任せを。
 ここで大事なのはあくまでも「女子高生」ということです。
 単なる女体ならその辺のエロ本でも読んでればよろしい。

 脳内に鳴り響く男声のモノローグに乗せて丁寧に丁寧に「女子高生」のそれを実況しますよ。
 それこそ自らの身体が性的どころかフェチの対象ですから、さっきまで自分が着ていた制服やら下着に顔を埋めて匂いをかぐとか…。いやあ、これまでにない作品になるかも。

 4話から愈々学園生活…違うと。

 ああ、あれですね。4話のAパートは登校前の身づくろい描写!
 これはありそうで無いですから。
 生まれたままの女体から、パンティを履き、ブラジャーをつけ、スリップに脚を通し、セーラージャケットを羽織り、スカートをずり上げてホックをし、ファスナーを上げる…。
 靴下を履いて髪をとかし…ってな描写をAパート全部使ってやるわけですね。

 何しろ彼らは身体が勝手に動いてやってしまうので、半ば従ってるだけなんだけど…という。
 この感にも脳内で男声が響き続けると。
 ブラをしようとすれば「…うおおっ!ぶ、ブラジャーなんて…したくないのに…あああっ!」ってな具合ですね。

 日々命のやり取りをしていた現役の兵隊が女物の下着一枚でそこまで動揺するもんなんでしょうか…まあ、所変われば品変わるというか、女体になってるんで感じ方も変わるんでしょう。

 そしていつの間にか集結してしまう「女子高生」たちと言うわけですね。

 その後日々「女子高生」として流されて生活してしまう彼女たちがBパートで描かれるんですね。

 5話の冒頭に「3ヵ月後」というテロップが入って、試験が終わって「んん~っ!」と“伸び”をしている隊長の姿…そこに「ちょっと」と呼び出しに来る副長。

 ふむふむ、何故か半分くらいしか集まらなかった「元・宇宙海兵隊」少女たちが校舎裏に集結していると。

「あんたたち!何をこの生活に馴染んでんのよ!元の世界に戻る方法考えなさいよ!」

 わはははは!これはおかしい。すっかり馴染んじゃってたんですね。

 しかし、本格的にこの生活に馴染み始めていた彼女たちの賛同は得られず、自然解散に。

「もしかして明日の試験範囲が気になってるんじゃないでしょうね!」とか言われちゃう。わはははは!

 これはアレですよね?それこそこの中の一人や二人は、試験も終わったしこれから渋谷か原宿に行くこと考えてたりするんでしょ?

 そしてこのBパートでスクール水着での水泳の授業とか、ブルマでの体育の授業とかが描写されるわけですね。
 いやあ、屈強な大男たちなんて、女体はセックス時に見慣れてるでしょうに、女子更衣室で体操服とブルマに着替えるシチュエーションでドキドキしたりするのかなあ。
 まあ、そこが腕の見せ所でしょうけどね。

 この、脳内のモノローグが野太いおっさんの声で見かけが清楚な女子高生ってのはタチの悪い冗談みたいな絵面ですけど面白いですよ。
 ちょっと舵取りを間違えると馬鹿馬鹿しくてみてれらんないものになりそうですが、何とかしてみましょう。

 6話ですね。
 今回は隊長の恋バナですか。

 気が付くとあの急先鋒だった副長までがいつの間にか「彼氏」を作ってよろしくやっているのを目撃してしまうと。
 いやあ、これを仕掛けた敵軍が何を考えていたのか分からんですけど、案外幸せにしちゃってますよね。

 そして「隊長」も何故か告白され、当然「男に告白されるなんて気持ちの悪いことが耐えられるか!」とばかりに振り切るんだけど、何故か胸がドキドキしてしまうと。
 肉体的には少女なんで、その身体機能に引きずられて精神まで少女化し始めたのか、この6話目一杯使って悩み苦しむけど、最後の最後で「YES」の返事をして次回に続く。くぅ~っ!

 こんなのがもしもテレビ放送されたら、単なるTS萌えの視聴者も余りにシャレになってない展開にドン引きですよ!最高じゃないですか。

 そして7話ではこれまたABパートぶち抜きで「初体験」描写ですよ!なんという贅沢!

 8話ではその後の学園生活で、彼氏の浮気疑惑やら恋の駆け引きなんかの「少女としての心の揺れ動き」を体験させられる羽目に。

 そしてラストには「このままこの世界で女として生きて行く」決意を固めて、本格的に受験勉強を開始する描写ですよ。

 9話は全編使って受験本番描写ですね。
 すっかり元の世界に戻ることなんて諦めた元・宇宙海兵隊…今は女子高生…軍団が全国バラバラに二次試験に散っていき、受かったり落ちたりの悲喜交々(ひきこもごも)。

 そんな中、一人が不慮の事故死を遂げ、「もしかしたらいつの日か全員で元の世界に戻れるかも」という希望が打ち砕かれることに。
 しかも一人がもう受験せず、就職すると言い出すと。

 彼女は…なんと恋人との「できちゃった結婚」でいきなり家庭に入ることを選択!なんとまあ。

 この時点で大半がセックスの体験がありながらも、「妊娠」ってのは「一線を越えた」行為だっただけにそのタブーまで破られて更に衝撃。

 9話Bパートで遂に全員の進路が確定。
 これまでは同じ高校だったけど、2人の地元浪人生を残して本格的に全国に散らばることに。
 一応連絡先を交換はするものの、卒業直前までそれぞれの人生に精一杯で疎遠だった彼女たちは、言葉には出さないけど「もう余り一緒に集まることも無いんだろうな」と思うに至ると。

 むふう、これは卒業にまつわる寂しさを感じさせるいい話じゃないですか。内容が余りにも変態的な路線だということを忘れて普通にテレビ放送したくなりますよ。

 これって、「女子高生になっちゃった」という一種の「出オチ」というか「シチュエーションに放り込んで投げっぱなし」の話かと思ったら結構その後もやるんですね。13話の内の9話で高校生活終わっちゃいましたよ。

 主人公はどうなるんです?この後。

 ほうほう、女子大生として普通に生活すると。
 女子高生と女子大生じゃあ生活の水準が大分違いますからねえ。それこそ男性関係だってもっと奔放でもいいわけだし。

 デザインですか?お任せ下さい。少し前までの女子高生とは同じ女優に見えながら全く雰囲気の違った凛々しいコーディネイトをお見せしますよ。

 ここから先は…大枠は決まってるけど余り細かくは設定していないんですね。

 高校時代の初体験の彼氏のことなんてすっかり忘れた「隊長」はここでも新しい恋をしてまた振られ、何だかんだで大学を成績優秀で卒業し、OLとして就職…と。

 どうも普通のことを書いてあるだけなのに、女子高生がOLになったとか書いてあると妙にエロいですな。

 ははあ、この辺でまた着替え描写ですね。
 すっかり女として馴染んでいる「隊長」がまた一から着付けるところですね。

 何しろ今回は「メイク」が入って来ますから女子高生みたいな小娘とはエロ度が段違いですよ。

 そして、会社内でセクハラどころかレイプまがいの目に遭うと。このビリビリに破られた制服がまたエロいんですよ。普通の男なら彼女に感情移入しますからね。まるで自分がレイプされてるみたいな気持ちになること請け合いです。

 そして、劇中では三人目の彼氏と職場結婚が決まり、ラストは結婚式…と。

 お客さんのリクエストは最後結婚式で幸せに終わるパターンが多いですね。
 え?ここでもフェチ描写を炸裂させたいと。

 最終回のBパートで結婚式で終わるんだけど、Aパートではこれまでの出来事を簡単に振り返りつつ、鏡に映った花嫁姿の自分に今さらながらの「これが…俺…?」描写をしつつの、スカートを持ち上げてくるくる回ったり…。勿論、直前の着付けシーンもねっとりと。

 結婚式と披露宴…無論、全国にバラバラになった元・宇宙海兵隊たちも参列…挟んでラストのCパートで赤ちゃんにおっぱいをちゅーちゅー吸われている場面で幕…。

 いやあ、これは素晴らしい感動巨編ですね。

 腕が鳴りますよ。では、早速取り掛かりますので、とりあえず次回打ち合わせまで!それでは!



GW特別SS リクエスト・その後

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

 どうも、お久しぶりです。
 納品から一ヶ月ほど経過したんですが…如何でした?

 最高!それは何よりです。我々も頑張った甲斐があります。

 いやあ、凄いですよね。途中までの展開は正に“萌え”ならぬ“燃え”る展開で、それこそ普通に劇場公開しても問題無いくらいのクオリティですもんね。

 そうなんです。この辺をちゃんとやっておかないと後半の“堕ちて行く”展開を存分に堪能できませんから。

 苦労の果てに敵を撃退しての、打ち上げの席上ですよね。突如主人公の肉体が性転換し始める!
 衆人環視の中、次々に盛り上がる胸!伸びる髪!丸く膨らむお尻!

 そこに近寄ってくる宿命のライバルキャラがいきなりセクハラ!勝手に出てしまう甘く黄色い声!

 獣欲にかられて思わず服を引き裂く!露出する乳房!もおたまりませんね。

 その後パーティ会場はパニックになりますよね。
 身動きのままならない主人公の唇を奪うライバルもすぐに性転換してしまって…。

 そこに乗り込んでくる敵幹部たち!

 不思議なことに彼らは性転換した元・男にばかり興味を持ってレイプしまくり!

 女性たちも内心複雑だったんじゃないですかね。「あたしたちもいるんですけど…」とか「あたしの女としての立場は…」とか。ってフィクションですけども。

 ウチのいいところは「そこまではやったら駄目だろ」というタブーも軽々と乗り越えるところにあります。
 ある種健康的な若者たちが強制性転換・陵辱の対象になるのはまだありとしても、渋い壮年の司令官やロマンスグレーの大統領まで被害の対象になることですわ。

 渋い重低音の少将閣下が「むっ」とか言って胸を押さえた時には、生まれて初めてTS漫画やアニメを見た時の衝撃がよみがえりませんでしたか?

 その後もイメージを崩しきらず、太った中年女性ではなくて妙齢のセクシー美女が凛々しい軍服を着ている状態にしてから、突如服をむしりとられるとおっぱいぽろりん…というのが最高ですよね。

 この頃の「男の娘」ものですか?あれはイカンですよ。
 いや、あれにはあれのよさがあるんでしょうが、まるで女の子みたいな男の子がいくらイヤイヤだからって女装しても「女の子が女装している」様にしか見えませんわ。

 そんなんじゃ駄目で「まさかこの人が」ってな人を性転換させたり女装させたりしなくちゃ。
 そういう「タブーを破る」ところが正に醍醐味なのに、「男の娘」ってのは妙に予定調和でいけません。

 あ、すいませんね。私情が出てしまいました。

 ともあれ、ご満足頂けたみたいで私どもとしても何よりですはい。

 で、次ですか?有難うございます。
 いえね、ウチでご注文いただいたお客様はほぼ間違いなくリピーターになって頂けるんですよ。この快感を覚えたら温(ぬる)い地上波テレビなんぞ観てられませんよ。
 いや、地上波テレビどころかケーブルだのCSだのを見渡したってここまで「欲望に忠実」なものが観られるメディアなんて皆無ですとも。
 ここだけの話、「インターネット」ってそんなに大層な代物ですかね?

 いや、革命的に人間の生活を変えたのは否定しませんよ?しかし、お客様みたいに特殊なフェチの場合だったりするとちょっと検索した程度じゃあまず見つかりません。
 案外「痒いところに手が届かない」メディアなんですよね。

 で、次はどういった作品をお望みで。

 実写?勿論出来ます。どの作品の後日談をご希望でしょうか?

 お客様はTS展開がお望みで?

 ならばハッピーエンドに終わったあの作品やこの作品で今回みたいに「強制性転換レイプ集団」が襲ってくる展開で参りましょうか?

 え?自分が主人公の話は出来るかって?

 はあ…要するにこれまで我々がやっていたのと同じようにお客様のCGモデリングデータを元にしてお客様自身を主人公にしたいと。

 …実は裏メニューですけど対応しております。はい。
 その代わりかなり危険度も増しますので特別料金を頂いておりますが…それは大丈夫なんですね?
 了解いたしました。

 で、どんな展開がお望みで?周囲の気に入らない上司とか、意地悪な同僚の男性なんかを片っ端から性転換して犯しまくりましょうか?

 え?そんな気持ちの悪いことは出来ない?

 …ごもっとも。ええそうですよね。どれほどブサイクでもイケメンでも、面識のある人間がそんなことになるのを想像するのはショッキングですからね。

 はあはあなるほど。
 お客様自身が性転換されて散々にレイプされた上、女として生きていかざるを得なくなる映像作品をご所望ですね?

 ええ。分かります。

 妙な話なんですが、仮にもしもそんなシチュエーションになったとしても自分で自分を客観的に見られる訳じゃありませんからね。
 やられてる時には下手すりゃ目をつぶってますから何にも見えない。

 そこに持ってくると「映像作品」ってのはあちこちからカメラで狙ってますから、揉まれるおっぱいに表情のクローズアップ。絡みつく脚…みたいな具合に「効果的」な「演出」を伴って見る事が可能になりますものね。

 乳首をちゅっちゅされた時の紅潮した頬に恍惚の表情でのけぞった瞬間…とか客観的に見るにはある意味映像に残すのが最も効果的。よく分かりますよ。

 お客様フェチでいらっしゃいます?モノには。

 ええそうです。ハイヒールとかストッキングとか。

 そうですか、ならばレパートリーにバニーガールは必ず入れましょう。抱きしめられてあんあん言っている時に、カメラで効果的にハイヒールとかお尻のしっぽとか網タイツのバックシームとか、力のこもった「わき乳」とか、バニーコートで引き締まったウェストに、表面の微妙な皺(しわ)だの光沢だのにバッチリクローズアップしておきますのでご安心下さい。

真城様挿絵27

 それこそもしも本当に誰かの超能力でバニーガールにされてレイプされるよりも張るかに気持ちのいい映像体験を保証しますよ。まさかそんなことありえるとは思えませんが。

 え?セーラー服と今時の女子高生の制服も着たい?

 …お客様案外キュート系もお好きなんですね。てっきり鬼畜よりの陵辱レイプファンかと思ってました。自分には甘いみたいな…。すいません。

 こういう露出度の低い服って清純・清楚に見えますからねえ。ある意味男性の理想の女性像と言われる「ぶりっ子」御用達なんですよ。メイドさんとかも。

 ま、とにかく承りましたんでご安心してお任せ下さい。

 ただ、くれぐれも流出にはお気をつけ下さい。

 これまでのに比べても俳優さんじゃなくて一般の方を動かしますから。万が一他人に見られた日にはやってもいない犯罪の証拠ビデオにされかねません。

 では、完成をお楽しみに。


GW特別SS リクエスト

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園


 あ、どうもいらっしゃいませ。
 こちらがクリエイティブ・カンパニーでございます。

 ご注文を頂さえすればどの様な内容の作品でもたちどころに仕上げてお客様の元にお届けいたします。
 内容は二次創作がメインでございます。
 と、いうよりも弊社は二次創作のニーズの高まりに応じて設立された会社です。
 残念ながら版権をクリアすること適いませんので、アンダーグラウンドな活動のみとなっております。

 ええ。どの様な作品であっても自由な「その後」のオリジナルエピソードを製作させていただいております。実写・アニメどちらにも対応いたします。
 内容の難易度及び長さによって料金は変動いたします。
 当社にストックがあり、ノウハウがある展開につきましては…そうですねえ、流行の「ジェネリック医薬品」と同じく…若干の割引サービスがございます。

 ただ、くれぐれも念を押しておきますが外部に流出させることのないようによろしくお願いいたします。スクリーンショットの一枚でも外部に流出した場合、莫大な違約金をお支払いただくことになります。つきましては当社の作品を鑑賞するためだけのハードをご購入いただき、一切の外部接続を遮断する手続きを取っていただくことになりますがそれについてはよろしいでしょうか?

 はい。了解です。
 そうです。これからあなた様の望むままの作品をお作りいたしますから、ハードの一台くらい購入することは躊躇いませんよね。

 ちなみに制作費とは全く別にミーティングごとに料金を頂く形態を取らせていただきますがそれについてはよろしいですね?
 ええ。当方といたしましても演出をお客様の望むように煮詰める事吝(やぶさ)かではないのですが、打ち合わせ時間もバカにはなりませんのでね。
 一応途中から全てお任せで、出来上がりのサプライズを楽しみたいというニーズもございますが、どうなさいます?サンプル映像を観ながら細かくディレクションする方向で参りましょうか?
 そうですか。承りました。

 では、早速打ち合わせとまいりましょう。
 サンプルはお持ちですか?お持ちでない。ではここに繋がっているインターネット端末から画像検索その他を駆使して煮詰めてまいりましょう。

 メディアは?アニメですか。了解です。
 で、どういったアニメを?
 はあ、ウルトラロボット対戦。ああ、あの戦略シミュレーションのユニットを各ウルトラロボットアニメにしたゲームですね。
 あれってアニメーション作品って存在しているんですか?

 そのものは無いが、派生作品がテレビアニメ化されたことがある。流石よくご存知でいらっしゃる。

 なるほどウルトラロボット対戦ですか。これはハードルが高いですね。
 こんなアニメを普通に作ったら各方面に幾ら支払わなくてはならないのかと考えると…ね。
 ええ。完全プライベートなアニメ作品ですから、当社の規定の料金だけで結構ですよ。

 え?それでも充分高額?

 ははは…ま、安いとは言えないかもしれませんがウチも結構なリスクを負っておりますのでね。

 ジャンルは了解です。ウルトラロボット対戦に登場する各アニメのヒーローたちが一堂に会して悪の宇宙人を力をあわせて撃退する痛快活劇という訳ですね。

 え?違う?

 はあはあ。

 まずはウルトラロボット達によって敵を一回は撃退すると。

 ふむふむ、ところが反撃に出た敵によってヒーローたちが強制性転換させられ、淫乱な性的メス奴隷にされてしまうハードコアポルノをご希望であると。

真城様挿絵26

 …なるほど。

 いえ、別にお客様を変態などと思ったりはしませんよ。

 ここだけの話、ウチはどんなニーズにもお応えできるクリエイティブ・カンパニーです。二次創作専門ですから、こうした傾向の作品のご注文は珍しくありません。というか、今お客様がおっしゃった内容なんてまだまだ穏当な部類にすら属します。

 ええ。ウチの作品は完全にプライベート、お客様お一人でお楽しみいただくことが前提になってますから、テレビの放送コードや映画の倫理審査など全く気にしなくて大丈夫なんです。

 サイズは劇場版くらいでよろしいですか?2時間くらいで。

 ええ。音声合成ソフトによって各ヒーローに自由にお芝居させることが簡単に出来ますし、全く同一人物の声を女性に置き換えるのもお手の物です。

 前世紀までのこうした作品の場合、「性転換された後」はどうしても女優さんや女性の声優さんが演じることになるんですが、「女性にされた男性の演技」なんて突飛なお芝居がすんなり出来る女優さんなんていらっしゃいませんから、どうしても「ただの女性があえいでいる」風にしか聞こえないものですけど、その点ウチは完璧です。ええ。

 なるほどなるほど。
 ではウチのノウハウをば。

 劇中で登場人物が性転換してしまう作品というのは、どうしても生真面目に女性の素晴らしさを謳いあげる感動ものになるか、おっぱいもんであっはん式の底の浅いセクシャルコメディになるか、さもなければ途中で前提がどうでも良くなる単なるポルノになるかしかなかったんです。

 これは不特定多数の一般客を相手にしなくてはならないために思い切りが付かないから中途半端な演出になってしまうんですね。
 或いは作り手側に「男性が性転換して犯される」という前提の作品であると言う問題意識が欠落しているんです。
 単なるポルノならばそんな前提は必要ありませんからね。そうではないからこそ、独自の演出プランと演出上の重点が存在する訳で。

 ただ、「セオリー」ってのはあります。長年作られてきた映像作品においては「こういう演出が効果的ですよ」ってなノウハウがあるんですね。

 まず、主人公たちは徹底的に格好よく、男らしく描きましょう。2時間の映画サイズですけど3/4まではそういう形で問題無いですね。
 最初っから主人公たちがいきなり女になっちゃうでは駄目なんですよ。多くの性転換映画…ってそんなジャンルがあるかどうかはともかく…が失敗するのは、観客にその人物がきちんと人格として認識されないうちに性転換とかさせちゃうから。

 そうではなくて、「この人物はこういう格好いい男性なんだ」としっかり認識させた上で女にして、おっぱいもまれていやん!とかじゃないと。

 まあ、普通の劇場映画でやったらマトモな大人の男の観客が馬鹿馬鹿しくて席を立ってしまうくらいの“仕掛け”が不可欠ですな。
 お客さんの嗜好からすると、あれですよね?それこそ変身後の姿ってのは“蝶よ花よ”の可愛らしさ重視のトキメキものじゃなくて、セクシーさ路線の「耽美と退廃」路線がお好みなんでしょ?

 ああやっぱり。そうだと思いましたよ。

 だったら、それこそ目の前で手がムクムクと変形して白く細くなったり、おっぱいがむりむり盛り上がったりするのをみながら、一瞬吐きそうになる、グロテスクと紙一重みたいな「変身」シーンがお好みなんでしょ?

 そうですそうです!正にそんな感じですね。

 コスプレはOKですか?バニーガールとウェディングドレスのみOKと。まあ確かにそうですよね。基本的に性奴隷にされるのに別のアニメキャラの扮装してたんじゃ訳分かりませんからね。
 今回のメインはオシャレでもお化粧でもなくてあくまでもセックス!というかレイプ!ですからね。

 といってもこれは中々に難物ですね。完全に女性に変えられていながら、元の姿が類推できる絶妙の衣装及びキャラデザインが不可欠ですなあ。
 まあ、その辺はお任せ下さい。

 こういうのは徹底的にキチンとやらないと駄目です。「安いパチモン」に見えるのは絶対にNG。本物にしか見えないくらいの作りこみが突如ありえない方向に捻じ曲がるのがウチの二次創作の醍醐味なんですから。

 え?他にどんなのがあるかって?
 そりゃ色々ありますけど…聞くだけで気分が悪くなるようなのもありますよ?大丈夫ですかその辺。
 ま、ウチにいらっしゃるお客さんに限ってとは思いますけど、アメリカ辺りじゃあ余りにもエグいテレビドラマの内容を世間話してたら「気分が悪くなった」ってんで訴えられたりするらしいですからね。

 まあ、一番多いのは何と言ってもポルノですね。
 朝の連続ドラマとか、絶対にポルノになりそうにないのが突如女性の主人公がレイプされる陵辱ものになるってのが定番です。

 あと、残虐ものなんかもありますね。
 ほのぼの日常系萌えアニメが突然の乱入者によって血で血を洗う残虐ショーに早変わりする…なんてのも定番です。
 これはウチでは基本的にクライアントさんにしか完成品は見せないんですが、許可がいただけた場合はサンプルとしてスクリーンショットをご覧頂くことも出来ます。

 ここにあるのが、ある国民的アニメの主人公の少女の解体された状態ですね。余り崩しちゃうと分からなくなるから生首はそのまんまですけど、両手両脚に臓物。お客さんによっては目玉と脳みそ状態にしないと満足しなかったりもしますが…ご覧になります?

 あ、よろしい。そうですね。おやめになった方がいいでしょう。
 一旦こっちに嵌(はま)ると抜け出せなくなりますから。

 今回みたいに屈強だったり格好よかったりするヒーローたちを軒並み強制性転換して淫乱メス奴隷にすると言う展開は珍しいですね。
 え?どんな展開が多いかって?

 いや、普通に性転換“せずに”淫乱メス奴隷にする展開の需要は多いですよ。ええ。

 …主に女性のニーズですね。お分かりでしょ?腐女子っておっしゃってましたね。

 ということで承りました。
 とりあえず代表的な場面のサンプルと全体の梗概が完成した段階でまたご連絡いたします。

 それにしてもこの展開だと普通にウルトラヒーロー達は負けちゃうんですけど、地球はどうなるんでしょうね?悪の魔の手から守れるんでしょうか。
 ま、滅びちゃうか或いは男性は全員淫乱メス奴隷にされちゃうんでしょう。

 ええ。普通の商業映画だったらここまで後味の悪いバッドエンドなんてまずありえません。全体の半分以上をヒーロー然として指揮って来た主人公が、お尻を鷲づかみにされ、おっぱい揉まれたり吸われたり、アソコに肉棒を突き立てられて、汗ばんだ女体に苦悶と喜悦の入り混じったあえぎでエンドマーク。最高じゃないですか。

 こういうことが出来るのもウチの会社だからこそですよ。
 CG技術の発達のお陰です。ここまでアホらしいお芝居を実際の声優さんに強要することも無いから罪悪感もないし、何より恥ずかしくない。

 それでは、完成をお楽しみに。


選択の幅

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

★今回、女装モノですので耐性の低い方はスルー願います。

 ええ。プログラムの故障です。本当なんですって。

 たった1日!1日あれば治りますから。綺麗サッパリ。

 え?その間の業務についてだれか補償してくれるのかって?

 えーと…私の認識が間違いでなければオタクは営業は全て外注していましたよね?

 必要のあるやりとりは全て電話とFAX、或いはメールで事足りるのではないですか?

 ええ。お食事はその…外食に頼る形にして、お弁当の出前でも頼んでは如何でしょう?

 え?気安く言うなって?お怒りはごもっともなんですが、契約書に書いてあるでしょ?万が一の故障の場合は、24時間以内に修理が完了し、業務に支障をきたさない場合は補償の対象にならないって。

 ええ。間違いありません。保険会社付きの弁護士呼びましょうか?

 はい。なので本社勤務の皆さんは、外出さえなさらなければお仕事は勤まるんじゃないかと…。

 まあ、命に別状は無いですしね。そりゃ多少見苦しくはあるでしょうけど。

 そうですねえ。滅多に無い事例ですので…一応わが社に残っていたアーカイブによりますと、より活動的な衣装を最終的には選択なさったそうです。

 ええ勿論。最終的に会社を出る際には全て元通りになります。

 この中から選んでください。どうにか5種類だけ引っ張り出せました。

 …ええ。何回もお答えしてますけど、この5種類だけです。勿論サイズも全て完全対応しますからその点の心配はいりません。どこかに必ず会社のセキュリティ認証タグを含みますのでご心配なさらず。

 というかTSマシンを通したお召し物でないと会社内で働くことがそもそも出来ません。ええ。

 もう余り時間が無いんですけど…時間を経過してしまうと勝手に決まります。

 え?どれもそう変わらん?まあそうおっしゃらずに…。

 そうですねえ…無責任に聞こえてしまったら恐縮ですけど、私はこの女子高生風制服がいいんじゃないかと…。

 ええ。とてもスカートが短いのでスカートを履きなれない男性社員の方々は大変かと思いますが、脛(すね)毛は綺麗に処理されますので見苦しさは無いかと…え?そういう問題じゃない?失礼しました。

 元々「学生服」ですから、デスクワークにはもってこいというか。

 ええ。規定で社内に社外から衣類を持ち込むことは禁止されていますから、着替えることは出来ません。出来たら意味が無いですからね。
 一応冷え性の女性のためにひざ掛け毛布の使用は許可されているみたいですから、スカートで脚が寒いのに耐えられない方は試してみては如何です?見苦しいモノを曝(さら)す危険性も少なくなりますよ。

 こちらのチャイナドレスは…実は動きやすさではかなりのものがあるのですが、いかんせんハイヒールの歩きにくさは格別です。ノースリーブですので夏の今の時期ですと逆に冷房で冷えて寒いかもしれません。
 一応スカート丈は長いとはいえるので、特に男性社員の見苦しいものが露出しにくくはありますね。ええ。女子高生の制服に比べれば。
 あ、下着ですか?
 これははみ出すべきでないものについてははみ出さない形状のそれに対応しますからその点は心配いらないのですが…。前は空いてませんけど。

 一応申し添えておきますと女子高生の制服の時点ではいわゆるパンティ形状ですけど、チャイナドレスの場合はひも状のパンティになります。
 ええ。でないとスリットからパンティ見えちゃいますからね。極限まで生地を少なくしたパンティでないとチャイナは着られません。
 そりゃもう。下着まで完全対応ですとも。

 こちらのウェディングドレスは論外ですね。動きにくいですし、トイレもままなりません。
 恐らくこの手袋では…薄いストレッチサテンではありますが…ペンを持って文字を書いたりするのは難しいでしょう。ええ。何しろ儀礼用の衣装ですから、見た目重視で機能性はゼロですからねえ。

 え?男に女の…上着までならともかく、下着まで着せるのは不合理ですって?

 ごもっともではあるんですが、TSマシン導入当初に頻発した事故と、それから一部の好事家の方々のご意向を汲む形で万が一女性ものを男性がお召しになる場合も、「対応した」形状になるようにプログラミングされているんです。
 でないと、「はみ出す」パンティの状態で一日過ごすことになりますよ?

 私は経験ありませんけど、経験した同僚によると痛い上に寒いので散々だったそうです。
 下着って意味でいえば普通の男性にウェディングドレスの下の補正下着なんて絶対に入りませんからね。
 まるで最初から「男性用女装衣類」という体でチューニングしたみたいな不穏なことになってますけど、純然たる「女性用衣類」を強引に着せられることに比べれば相対的に被害は少ないんですよ。ええ。

 こちらのバレエ衣装もまた普通のデスクワークには甚(はなは)だ向かないと存じます。机に座るのもスカートが邪魔になりますし。これまた胸から上が全露出ですからかなり肌寒いです。

 如何です?もう女子高生の制服しかないんじゃないかと…。ジャケットを脱いだり着たりすれば寒さの調節にもなりますし…。
 ええ。スカートの長さってそれほど寒さに直接は影響しませんからチャイナでも大差ないですよ。というか、スリットから常にむき出しになってる太腿が氷みたいに冷たく冷えるそうです。ぶるぶる。


 あっ!

 …すいません。説明している内に時間が来ちゃいました。

 えっと…決定したのは…すいません。この中では一番厄介な衣装かもしれません。

 これです。

 ええ。バニーガールと呼ばれてる衣装ですね。

 それがその…かしこまった席では着ることもある「バニータキシード」がこの衣装には付属してないんですよ。ですからお気の毒ですけど、胸から上、肩や腕は全部むき出しってことになります。はい。

 冷房が寒いかとは思うんですけど、そこは根性で何とかしてください。

 あ、大丈夫です。わきの下の毛は綺麗に処理してつるっつるになりますから。男女問わず。

 それからですね…男性には特に体型補正のコルセットがオプションで付いてきますから、かなりウェストは引き締まったプロポーションに見えると思いますよ。

 え?男なのにこんな格好出来るかって?

 もう観念してください。そろそろ業務開始の時間ですよ?

 ウチのサポートは万全ですから。メイクは勿論、イヤリングまでしっかり装着、マニキュアも完備です。
 ただ、デスクワークにおいては長い付け爪はちょっと邪魔かもしれませんね。

 大丈夫です。メイク落としの経験の無い男性社員の方々も心配なさらずとも、帰りにTSマシンを逆に通っていただければアイシャドウも付けまつ毛もマスカラもルージュも全て落ちますから。

 ええ。黒光りするエナメルのハイヒールはどんなに足の大きなお客様でも完全対応。しかもストラップ式ですから簡単には脱げません。

 女性でも難儀するほどの急角度ですから、男性の皆さんは大変かと思いますがそこは我慢して下さい。幸い皆さんデスクワークでしょ?余り歩かなくていいんだからいいじゃないですか?

 え?一部の事務員は書類持って移動が多い?

 まあ、頑張ってください。つま先をくじいたり、外反母趾になったりするかもしれませんけど、お尻がきゅっと出ていい姿勢になるかもしれませんよ。

 あ、ではどうぞ。

* * *

 いや~とってもお似合いです。

 そんなにぶすっとしないで下さいよ。可愛いうさぎちゃんが台無しですよ。

真城様挿絵24

 失礼ですけど、お客様の様な典型的な男性的な体型の方でもかなりコルセットによる矯正が効いてますね。

 そして特性サポーターと、わが社が特許を持っているタック技術によって下腹部もぺたんこにしか見えません。いや~見事なものです。ええ。

 いや、それにしてもこのフロア見渡す限りバニーさんだらけですねえ。これは壮観だ。

 え?私ですか?出入りの業者IDがあるから普通に入れますので。

 え?今日の出入りの業者対応はどうするのかって?

 まあ、秘密厳守ってことでやってもらえばいいんじゃないですかね。

 そうそう、大事なことを一つ。

 このバニーガールの衣装っておトイレに行く際は一旦全裸にならないと用を足せないんですよ。
 なので、出る際は入り口のTSマシンでもう一度着付けてもらってください。
 じゃないと股間のタックが外れてもっこりバニーが出来上がっちゃいますんで。

 勿論、トイレ以外でこの「制服」脱いじゃ駄目ですよ。セキュリティが鳴りますから。

 …だから言ったでしょ。どれも恥ずかしいかもしれないけど女子高生の制服にしとけばよかったんですよ。
 ごく普通のスカートだから簡単に用も足せますしね。ジャケットで寒さも調節出来るし…。

 …とはいえ実はかなり分厚いストッキングに網タイツだから下半身が冷えないのはバニーの方だったりするんですけどね。むしろむき出しで素脚をさらしてる女子高生のミニスカートの方が冷えますはい。
 逆に上半身はバニーの方が冷えますから一長一短ですね。ごく普通の革靴と地面に突き刺さりそうなハイヒールって差もあります。

 ええ。ウィッグも特製ですから今日一日簡単には取れません。
 背中までありますから、素肌に髪の毛が直接当たって少しくすぐったいかも知れないですけど、ある意味防寒効果はあるかな?って。

 ということで私はこれで失礼します。
 今夜中にこちらに入らせてもらってメンテしておきますから、明日から皆さん自前のスーツやらOLさんは制服で働いていただける様に復旧しますので。

 それでは!






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目撃談

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園

★今回、女装モノですので耐性の低い方はスルー願います。

 正直、今でも夢だったんじゃないかと思う。
 細かく段階を追って書いていたのではキリが無いから、なるべく起こった現象そのものを端的に淡々と記して行きたい。

 その日俺たち生徒は何故か体育館に集められていた。
 全校生徒が体育館に集められるシチュエーションといえば週一の全校朝礼とか始業式、終業式、入学式、卒業式みたいに何らかのイベントがらみだ。
 文化祭の開会式なんかもあったな。
 そうそう、高校であったかどうかは忘れたが、小学校の頃は体育館に集められて映画鑑賞なんてのもあった。内容は大抵つまらん説教臭い映画だったけどね。

 その日俺たちは何故か体育館に集合していた。
 どうしてそういうことになったのかは全く覚えていない。
 何か「集まることになっているらしい」ということで集まった。

 いざ入ってみると中央に舞台になりうる盛り上がりがあり、体育館全体が暗くなっていた。
 みんな覚えてるかな?少なくとも太陽が燦燦と照りつけた真昼間に体育館全体を暗くするのは一苦労なのだ。
 密閉するための設備なんて無いから、黒いカーテンを引くんだけどあちこちから太陽の光が漏れるもんだからあっちを引っ張りこっちを引っ張り、ガムテープで目張りをしたりと大変な騒ぎになる。
 どうしても閉まらない非常口もどうにか塞いだりとか。
 壁の下のほうに設置されたすりガラスを強引に障害物を置いて光をさえぎったりと大変なことになった。
 少なくとも完全暗転などは夢のまた夢というところだが、とりあえず真昼間にも関わらずかなりの程度の暗さを獲得することには成功していた。
 子供の頃ってのはお手軽なもんで、こういう「人工的な暗さを作り出す」シチュエーションだけで無闇にワクワクしたりしたもんだ。

 普通は舞台に向かって全員が前向きに座らされるのだが、この日は中央の舞台に向かって正対する様にみんなが体育すわりをしていた。
 一応説明しておくとウチの学校は特にこれといった特徴の無い共学の高校である。
 男子は学ラン、女子はセーラー服でもブレザーでもない白いブラウスに黒いスカートの「女子の制服」としか形容し様の無い地味な「制服」だ。
 女子は勿論、男子にも不評ではあったが、日常生活を常にセーラー服で劣情を催させられたり、或いはファッションショーみたいにオシャレで可愛らしい制服を見せ付けられるよりはある意味マシかもしれない…なんて思える様になっていた。

 こんなんでも一応は私立なのだが、通う生徒の親の収入格差が甚(はなは)だしい。
 ウチはごく平凡なサラリーマン家庭だが、この学校では「中の下」くらいに属するだろう。

 とある生徒…というか彼が今回の主役なんだが…を仮に「M」としよう。一応言っておくが匿名ということだから彼の苗字のイニシャルとは限らないと思って欲しい。

 Mなどは正にこの学校の主役と言うべき生徒だった。
 何故か特注のデザイナーズブランドの制服に身を包み、常に優雅な物腰で女子生徒の熱い視線を一身に集めていた。
 同じクラスなので何度か話したこともあるが、全身からかもし出される「育ちのいい」オーラってのは俺たち庶民には逆立ちしても身に付けられるものではないな、と感じさせられた。

 髪型一つとってもスキが無いのは当然としても、制服は毎日仕立て直しているのかホコリ一つ付着しておらず、細かい持ち物…ハンカチとか筆記用具とか…も全て高級感が溢れていた。
 同じ男として既に嫉妬の範囲すら逸脱した整った顔立ち…強引に今風に言えば「イケメン」…をしており、すらりと伸びたスタイルも抜群。
 それも「優男(やさおとこ)」風ではなくて、目鼻立ちがくっきりしていて、かなり「濃い」顔立ちのイケメンなのだ。
 こういういい環境で育つと、物腰柔らかな爽やかイケメンになることもあるらしいんだが、彼の場合は今時珍しい「逞(たくま)しい」風だった。
 言うべきことはしっかり主張し、おどおどしたところがない。

 当然成績も抜群で、校内でもトップの偏差値を誇るという。
 むかつく話だが、スポーツも万能。少なくとも高校で必須となっている陸上競技や球技程度ではMに並ぶのは不可能だった。
 それどころか格闘技すら修めているらしく、柔道の授業ではどさくさに紛れて痛めつけてやろうと画策していた柔道部員を悉(ことごと)く破り、逆に面目を丸つぶれにさせたという伝説がある。

 当然ながら女子にはモテる。
 同じクラスの女子は席替えの際には隣に座ろうと権謀術数を駆使するといわれているし、休み時間ともなれば他所(よそ)のクラスから見物人が集まる。
 ウソかホントか「ファンクラブ」めいたものまで存在し、その人気は他校にも及び、放課後は「出待ち」の生徒が校門に屯(たむろ)しているとすら言われる。

 それでいて己(おのれ)の容姿を含めた存在を全く隠さず、最大限に利用して立ち回る自信家だ。はっきりと真偽を確認した訳では無いが、中学の時点で既にプレイボーイの素質があり、高校に入ってからも「彼女」をとっかえひっかえしているという。
 確かにMと一緒に幸福そうな表情で歩いている女子生徒の姿を見かけたことはある。
 観る度に相手が変わっていたりもしたが。

 普通はここまで完璧でしかも同級生を喰いまくっているとなれば、男子からは「いじめ」の対象になりそうなものだ。
 私立なのでそこまでガラの悪い生徒が大勢いる訳でもなかったが、それでも格闘技系の部員でMを快く思わない勢力は存在した。

 風の噂だが、彼らによって行われた「闇討ち」は見事なまでの失敗に終わったという。
 物心付いた頃からMが通わされていた「空手」「キックボクシング」などの、打撃系格闘技によって、全員が返り討ちに遭ってしまったというのがもっぱらの噂だった。

 つまり、Mという男は顔もよく、頭もよく、女にはモテモテで大金持ち、しかも腕っ節も強い…と男としては全く申し分の無い完璧な人間だったのだ。
 しかも決して「草食系」ではない。プレイボーイであり、自分に自信があって堂々としている。何と言うか精神的な頼もしさ、逞(たくま)しさを感じる非常に魅力的な人間なのである。
 どこで鍛えているのか細身ながら均整の取れた筋肉質で、無駄な贅肉が全く無い。
 性格も押しが強く、プライドが高い。
 決して傲慢と言うほどでは無いが、慇懃無礼に感じられることはあり、心のどこかで我々“下々の庶民”を見下しているところはあったかも知れない。
 だが、それだけにいざとなったら守ってくれそうな雰囲気をかもし出している。

 襲撃を逆に返り討ちにしたという噂が流れ始めたと同時に、彼ら「番長グループ」とでも言うべき存在は逆にMの取り巻きと化した様な有様だった。
 これについては、腕っ節では互角以上であったこともあるが、Mが番長グループに女の子を斡旋してやるという密約が交わされたとも言われている。 

 一学期も半ばに入る頃になるとMの名声と権力は揺ぎ無いものであるかに思われた。
 あろうことかMは「読者モデル」としてファッション雑誌にすら顔を出し始めていた。
 ブランドだの着こなしだの組みあわせだのには全く疎(うと)いのだが、ちらりと目にした限りでは確かに格好いい。
 実は身長はそこまで高くないのだが、整った上に目鼻立ちのくっきりした顔は他の読者モデルにも決して引けは取らない。

 ある時など、一種のパロディ企画なのだろうが「スーパーマン」めいたコスプレにすら身を包んで美人モデルと決めている写真すらあった。
 スーパーマンの格好なんて、二枚目のガイジン俳優がやったって噴出しかねない代物だが、細身で筋肉質のMには良く似合っていた。
 股間含めた下半身のシルエットをそのまま浮かび上がらせるぴっちりしたスーツはある意味において最も男性らしいコスチュームであると言えなくも無い。

 だが、Mに悪夢が訪れる。

 その日、体育館に集められた俺たちは、何故か全校の中でもトラブルメイカーとされる男子生徒と、その悪友による「異種格闘技戦」を見せられる羽目になった。
 トラブルメイカーの方はボクシングのグラブとトランクス、そしてリングシューズというボクサースタイル。
 悪友の方は某レスラーを思わせるシンプルな黒のパンツにリングシューズである。

 試合(?)は終始グダグダのままに進んだ。
 何しろスタイルが全く違うし、ルールも違う。
 だが、高校生の年頃の男の子はこの手の格闘技なんかは大好物だ。
 しょっちゅう行われている大相撲中継なんかは「格闘技」と言う感じがしないが、稀に放送されるボクシングの世界タイトルマッチや、「総合格闘技」なんかは大いに盛り上がるものがある。

 なので、一応「戦っている」この試合には大いに声援が飛んでいた。
 一方、そんなものには殆(ほとん)ど興味の無い女子はめいめい勝手におしゃべりをしたり、携帯をチェックしたりしていた。

 その時である。
 舞台の裾に肩から足元まで届く大きなガウンを羽織ったMが佇(たたず)んでいたのだ。

 俺は最初にそれが目に入った時、瞬時にMだとは気が付かなかった。

 全てにおいて完璧な彼の唯一の泣き所が成長期であるためか若干身長が低い点である。とはいえ、有名なハリウッド俳優にも「実はチビ」なんて大勢いる。彼の総合的な魅力を考えれば若干小柄であることなど何の問題があろうか。

 その彼に気が付かなかった理由は沢山あったが、やはり第一のそれはこの時点で唯一外部に露出していた「頭部」が普段とかけ離れたものであったことだろう。
 彼は別に頭髪が薄かったわけでもなかろうが、その大人びた顔立ちを最大限に活かすため、オールバックで決めることが多かった。髪型の名前は知らないが、そのまま角ばった形にまとめていたのだ。

 だが、この時は何やら頭部にごてごてと装飾が付いており、妙な乱反射をしている。
 そしてなによりも顔全体に塗りたくられた色が強烈だった。

 舞台の上ではレスラーとボクサーの取っ組み合っての殴り合いが続いているのに構わずMは全身をガウンで包んだまま登っていった。そのガウンは余りにも大きく、床を引きずるほどの長さで前進を覆い隠していた。こういうのも「ガウン」と呼んでいいのかよく知らないが。

 この時点で体育館全体が異常を察してMに注目する。一部の女子生徒はそれがMであることに気が付いて黄色い歓声を上げていたが、この時点でこの「謎の人物」がMであることに気が付いた人間は多めに見積もっても半分くらいだろう。

 俺には聞き取れなかったが、Mは此処で裏返った声で何事かを発した。

 そして同時にガウンをゆっくりと肩から落とした。
 スローモーションのように獣の毛皮で作られたかのような豪華なガウンが落下する。

 そこに現れた光景は信じられないものだった。
 余りにも馬鹿馬鹿しいので夢かと思ったくらいだ。

 まずガウンが滑り落ちることでむき出しになったMの無駄毛一つ無い「肩」の「肌色」が目に飛び込んできた。
 男子生徒が「肩」を見せ付けることなど、水泳の授業でもなければありえまい。夏も冬も制服にはそんなデザインはありえないし、それこそ女子のそれだって肩を露出するデザインの制服など存在しない。

 つまり、この時点でMが相当に露出度の高い格好をしていることが反射的に合点出来るのだ。

 俺は正直、全身を覆うガウンからして、もしかして全裸で登場して、男のストリップショーとしゃれ込むのかと思ってしまった。
 だが、その予感は刹那の次の瞬間には外れた事が分かった。

 その瞬間に体育館が違う意味での甲高い悲鳴に満ちた。

 肩には一本の白い線が残され、そしてそれは胴回りに張り付く銀色に輝くコスチュームへと直結していた。
 キラキラと輝く装飾に彩られ、そして縁(ふち)を羽根に囲まれたその衣装は、艶(なまめ)かしいほど胴回りにぴっちりと張り付き、そして光沢を放つ皺(しわ)を生じさせている。
 あろうことか背中の真ん中までしか覆っていないそれは、露骨に言ってしまうとモロに女性物の下着の形状を思わせた。
 これは比較的後方から観る羽目になった俺の感想で、比較的前方から見ていた人間は、突如胸の部分を覆う装飾が現れ、ブラジャーかと思ったと証言している。

 どこからともなくコントロールされたスポットライトに照らされたその衣装は「白銀」と形容するのが相応(ふさわ)しい輝きを放っていた。
 そのままするすると落下したガウンがMの腰を通過すると、それまで押さえつけられていた「それ」が「ぴよん」と跳ね上がった。

 この時点で館内の悲鳴はほぼ最高潮に達した。

 それは「スカート」だった。

 といっても、ごく普通の…それこそウチの女子生徒の制服みたいな…それではなく、腰の高さからまるでコーヒーカップみたいに真横に飛び出している非常識な形状のそれである。
 俺が瞬時にそれを「スカート」だと認識出来たのは、それ以外に形容する単語が見当たらなかったからに他ならない。

 足元にふぁさ…と着地したガウンのその下には…本体…というよりもその非常識な形状のスカート…によって影が落ちていたものの、その脚線美が全てうっすらと肌色の透けた白いタイツに覆われていることも見せ付けたし、何よりもピンクがかった肌色の…これくらいは俺でも知っている…トゥシューズに包まれていることもまた見せ付けた。

 俺は舞台の下で控えていたガウン人間に対する違和感がやっと分かった。
 唯一露出していた頭部には、羽根をあしらった装飾が施され、更には王冠みたいなそれまでが縫いとめられていたのだ。もっと言えば吸血鬼みたいな真っ赤な口紅に、酔っ払ったみたいな真っ赤な頬紅、更に瞼は絵の具をためてあるみたいに真っ青で、既に重そうな領域に突入するほどつけまつげが施されていた。
 要するに、頭部もまた装飾とメイクが濃厚な「舞台仕様」だったのだ。

 結論から言うと、Mは普段のダンディなスタイルはどこへやら、全身…頭のてっぺんから文字通りつま先に至るまで、完璧に「バレリーナ」の装いで公衆の面前に姿を現したのである。
 胸の部分もご丁寧にツンと上向きに盛り上がっている。詰め物までされているらしかった。

 彼に憧れていた女子生徒たちは余りにもみっともなく、恥ずかしい格好にあられもない悲鳴をあげ、“信じられない”とばかりに泣き伏して顔を覆った。

 一方、男の方はというとこれがまた何とも複雑だった。
 格闘技だのスポーツだのと言う風に、ストレートに衝動をぶつけるに足りる対象ならばともかく、男の女装…それも、そのセクシーさ故に女性的な記号として男にアピールしかねないそれ…を見せ付けられて、何とも複雑な気持ちにならざるを得なかった。

真城様挿絵23

 正直、俺も背後側から引き締まったウェストの上にブラジャーをしているかのごときひもの伸びた素肌の背中を見せ付けられ、その下の純白のスカートや素脚に密着するタイツが浮かび上がらせるシルエットなどで、思わず下腹部を押さえ込んでしまったくらいだ。
 紛れも無い男にたいしてこうも分かりやすい反応をしてしまうなど、それこそ恥ずかしくてたまったもんじゃない。

 だが、その「恥ずかしさ」なんぞ、舞台の上でそんな恥さらしの格好をしているM本人に比べたらたいしたものではないだろう。
 その「バレリーナ」は慣れた足つき(?)でトゥシューズのつま先に引っ掛ける様にしてガウンを舞台の下に蹴り出すと、その場で優雅に踊り始めた。

 一体何が起こっているのかサッパリ分からない。
 舞台の反対側では相変わらずボクサーとプロレスラーがグダグダな試合を続けている。
 これほどシュールな見世物があるだろうか。

 「Mさん!やめてー!」

 なんて泣き声が響いてくる。
 そりゃあそうだろう。
 アイドルどころか一種のカリスマとしてダンディな魅力を振りまいていたMが、あろうことか踊り子…バレリーナの姿となって公衆の面前で可憐な踊りを披露しているのである。

 言葉を選ばずに言えば完全に服装倒錯者の変態だ。

 こうして観ていて分かったのだが、バレリーナの衣装というのはあの奇態な形のスカートに目が行きがちだが、あれはあくまでも動きによってふわふわと動くことでダンスを強調するための装飾である。つまりはオマケだ。
 激しく動き回るバレリーナのシルエットとしてはあくまでも「レオタードにスカートがついている」と言う風に見える。
 ほぼ純粋に肉体美を躍動感にくるんで見せるものなのだ。

 これが本物の女性ダンサーならばその肉体美の美しさにうっとりも出来たのだろうが、Mは別に肉体が女性化した訳では無い。あくまでも「女装」しているだけだ。
 なので、動けば動くほどその肉体の男性的な特徴が明確になり、衣装の女性的な様態と乖離していく。

 しかも、その踊りというのが単なるダンスではなく、あくまでも「女性が踊るための振り付け」であることに観客たちも気が付き始めた。
 そもそも爪先立ちをするのは女性ダンサーである「バレリーナ」特有の動きである。男性のバレエダンサーはあれはしないらしい。基本的に体重が重いので難しいということもあるらしいが、過度に女性的な踊りになってしまうからではあるまいか。

 にもかかわらず、肉体的にも男性であるにも関わらず、女性の衣装に身を包んだMの踊りは、腰をくねらせ、よよと泣き崩れるかの様に「しな」を作り、時に横に崩した姿勢で座るように倒れこみ、恍惚に至っているかのように背筋をのけぞらせ、悩ましい表情で両手を頭上に掲げて、しっかり無駄毛が処理された状態のわきの下を観客に見せ付けた。

 素人であっても、ここまで見せ付けられれば「バレエにおいて男性と女性の踊りは違うもの」だということがはっきり分かる。
 そして今、目の前でれっきとした男性であるMが踊っているのは間違いなく「女性の踊り」である。それも女物の舞台衣装であるチュチュに身を包んで。

 ふわりと空中に舞い上がり、羽根のように着地したMには一瞬後れて降りてくるスカートの挙動が余りにも似合っていた。
 一部の女子生徒は、憧れのMのあまりの変態ぶりにショックの余り何人も気絶していた。

 見ているほうは大混乱である。
 これは一体何なのか?何が起こっているというのか?
 男が女装し、舞台上で女として踊ることイコール変態ではない。
 わが国には「女形(おやま)」という伝統があり、男性が女装して演じる専門の役職が存在する。基本的には伝統芸能の歌舞伎のそれだが、旅芸人一座などの大衆芸能でもしばしば一番の見世物となっている。

 ただ、それは多くの場合は体型を隠し、露出度の少ない和服によって演じられるものであろう。バレリーナのように半裸で肉体美を見せ付けながら跳躍奮迅目まぐるしい「ダンス」をするものではあるまい。
 というか、海外の演目である「バレエ」に「男のバレリーナ」などという伝統は存在しない。
 あるとしたら、男性のみで構成される「コミックショー」団体のそれだ。

 そもそもMがその様な仕事…女形など…をしていたなど聞いたことも無い。

 そこで更なる悲劇が襲い掛かってきた。

 同じく大きなガウンに身を包んだ第四の人物が舞台袖に現れたのだ。

 もう悲鳴だか何だか分からない怒号に館内が包まれた。
 俺にはすぐに分かった。
 それが、今度は男子生徒の人気を一身に集めるマドンナ「R」であったことを。

 ただ、普段は清楚な長い髪を腰まで伸ばした深窓の令嬢の雰囲気は同じく違っていた。

 今度は無理に野太い声を出さされた「彼女」は同じく舞台に上がり、そしてガウンを自由落下させた。

 そしてまた同じく女子から黄色い悲鳴が上がり、そして今度は男子からおお~っと野太い歓声が上がった。

 違和感の原因は氷解した。

 「彼女」は肩パットもまぶしい「逞(たくま)しい」男性ダンサーの舞台衣装に身を包んでいたのだ。
 ご丁寧に、白一色で固められた股間にはよく男性ダンサーを揶揄するのに使われる形容である「もっこり」までが際限されているではないか。
 長かった髪は短いカツラの中にまとめられているのか、ポマードでガチガチにかためられて、「角刈り」にも見える状態になっていた。

 この時点で事態を把握できていない観客は一人もいなかった。

 MとRは、それぞれ異性の憧れを一身に集める存在だったが、この頃遂に二人は付き合い始めたと噂されていた。
 男子生徒の多くが憧れつつも、「高嶺の花」と憧れるだけで我慢していた存在は、Mの「お手つき」になることで「諦めがついた」とすら言われていたのである。

 唯一障害があるとすれば、小柄なMに対してR嬢はすらりと背の高い美女であり、並ぶとR嬢の方が少し背が高いと言う点くらいだった。

 彼女もまた雑誌で読者モデルを勤めるセミプロの「超高校生」であり、マニッシュな衣装からガーリー、そしてセクシーな衣装まで着こなす「理想の女性」だった。

 それが一体何の因果か「もっこり」なシルエットの浮かび上がる男性ダンサーの格好で舞台に上がっているのである。

 R嬢はその凛々しい男性ダンサーの姿で、バレリーナ姿で踊るMの背後から優しくその身体を支えた。

「あ…」

 そんな声が聞こえたわけは無いが、その苦悶と恥辱にまみれた悩ましい表情からは噴出しそうな感情が伝わってきた。

 いい年をこいた男が、むき出しの肩を他人に触られることなど早々あるまい。ましてや背後から優しく。

 皮肉なことに、女性であるR嬢の方が若干高かった身長は、バレリーナとなった男性で小柄なRとは理想的な身長のバランスだった。
 そのまま引き締まった腰に両手を添えてくるくると回し、Mは完全に背後に向けて体重を預け、恍惚にも見える表情で紅く染まった口角を広げたMは悲しげな表情で、露出した首筋もうなじも観客に見せつけながらその腕の中に身をゆだねる。
 その仕草、挙動は正に女性そのものだった。

 女性であるはずのR嬢も、「完璧に」男性ダンサーを演じきり、“か弱い”女性ダンサー役のMを背後から抱きしめ、ささえ、そして持ち上げた。
 二人は男女の立場を逆転させた理想のバレエダンサー同士となっていた。

 すっかり幻滅したのか、延々終わる気配を見せない踊りに疲れ果て、生徒たちは次々に体育館を後にした。
 舞台の一方では相変わらずグダグダの格闘が続いており、最悪な事に観客映えしない「寝技」に移行して、玄人にしか分からない「攻防」を延々と繰り返した。

 俺がこの日どうやって体育館を出たのかはよく覚えていない。
 だが、少なくとも数時間は踊り続け、闘い続けていたこの4人は怒涛(どとう)のような聴衆の目に晒されると共に、数え切れないほどの「素材」を齎(もたら)すことになった。

*****

 翌日、何食わぬ顔でMは特注のデザイナーズブランド制服で登校したが、明らかに空気が違っていた。
 女子生徒は離れたところでMの顔を見てはヒソヒソと話している。
 男子生徒は合わせようとせず、距離を離している。
 距離を離すのはいつものことではあるが、今はその意味合いが全く違っている。

 掲示板の周囲に人だかりが出来ていた。
 Mはそれを見て血相を変えた。

 そこにはバレリーナ姿でメイクもばっちりのMが、悩ましくも恍惚の表情で両手を頭上に掲げてわきの下を見せつけながら背筋をそらしている写真が大きく引き伸ばして張られていたのである。
 Mはかっ飛んで行ってその写真を引き剥がし、破り捨てた。

 だが、周囲の好奇の目が自分に集中しているのを感じるとそのまま教室に走った。

 しかし、一旦凋落した王への仕打ちはこれに留まらなかった。

 校内のあちこち、掲示板のみならず普通の廊下にまでバレリーナ姿のMの写真が張られまくっていたのである。
 それも華麗なダンスシーンだけではなく、ポワント(爪先立ち)を決める足首から先の部分だけとか、スカートの真ん中に見えるパンツ部分(ツンという)を背後から捉えたものや、汗だくの鎖骨から胸に掛けての接写、背中のセクシーな部分などのフェティッシュな写真すらある。
 これが紛れも無い男が女装した状態のそれであることを考えると撮った方もディープな変態であると言わざるを得ない。

 何と言っても背後から抱きしめられ、背中部分のスカートがぐしゃりと歪みつつもうっとりとした表情で背中の「王子様」を見つめる、二人を捕らえた写真が強烈だった。
 それぞれのダンサーの性別が逆であることを考えると、余りにも美しく、そしておぞましい写真であった。

 これなどはご丁寧に「額装」してあり、Mは壁から引き摺り下ろすと額ごと破壊しなくてはならなかった。

 もう、校内で何が起こったのかは言うまでも無い。
 席についてみれば、わざわざ買って来たのか可憐なバレリーナがポーズを決めるバレエ雑誌が置いてある。
 それどころか、椅子を引いてみるとそこには女子の制服があるではないか。

 これは同じ教室のR嬢のそれがいつのまにか盗み出されて置かれていたものだと判明した。

 俺などは遠巻きに眺めていただけだったのだが、Mの立場は完全に破壊された。

 名前をもじった「○○子ちゃ~ん」と呼ばれるのは序の口だ。
 おどけた男子生徒が目の前で手を上下にひらひらさせながらくるくると回ってみせる。
 当然、先日公衆の面前で可憐なバレリーナ姿を晒したMをからかっているのである。

 可憐なバレリーナ姿の写真はどんなに剥がしても毎日何物かによって張られ続けた。

 当然、膨大な枚数に達した写真はインターネットに拡散してしまっている。
 言うまでも無く、踊っている動画もだ。
 最も、こちらはプロの男性によるバレリーナ舞台などがありふれた電子の海の中ではさほどの注目も集めなかったらしいが、「関係者」が見れば間違いなく本人だと分かるレベルだ。

 何しろ、それまで全く気配すら無かったMが突如公衆の面前で完璧なバレリーナ女装をして、しかも「男役」の女子と共に踊りまくったのだ。
 それも「女物」の踊りまで完璧にマスターしてである。

 学校中の総意として、Mは「ダンディな男前」から「女装趣味の変態」へと認識が転落してしまったのだ。
 しかもその日休んで「舞台」を見られなかった生徒にはそれが歪んだ形で伝わり、「実は家では常に女装して過ごしているらしい」とか「日々バレリーナとして活躍してる」など根も葉もない状態までエスカレートしていた。

 といっても仕方があるまい。
 彼がバレリーナ姿で踊ったのは事実だし、写真や映像の証拠も沢山ある。

 不憫なことに、ガチで女装願望のある男子生徒に個人的な相談を持ち掛けられたり、「そっちの趣味」のある大男に襲われて貞操を奪われそうになったりもしたらしい。

 風の噂だが、こんなことを聞いた。
 余りにも馬鹿馬鹿しいので笑って流して欲しいのだが、目撃証言として伝わっている話だ。

 何でも、その日謎の飛行物体が目撃されたというのだ。
 それは、なんとあの広がったスカートでお馴染みバレリーナの衣装こと「チュチュ」を中心とした女性ダンサーの衣装一式だったらしい。

 そう、「未確認飛行物体」としてそれらが飛んでいたというのだ。

 「未確認飛行物体」の目撃例としてはお馴染み円盤型だの、スカイフィッシュみたいな三角形だの、巨大葉巻型だの色々あるが、それにしても「バレエ衣装一式」みたいな奇妙な話は聞いたことが無い。

 この日、身長差というハンディをものともせずにMはR嬢にアタックし、見事「付き合ってもいい」という返事を貰ったという。
 ところがその直後、「謎の飛行物体」が襲来し、危うくR嬢に直撃しそうになった。

 それを男として「身を挺して」守る形となったMは、R嬢の代わりに「謎の飛行物体」の直撃を受けてしまったというのだ。
 そして…書くのも本当にアホらしいんだが…その「謎の飛行物体」はMの着ていた服を全て剥ぎ取り、そしてその肉体に纏(まと)わりついて行ったという…。

 数秒も掛からず、彼はその衣装とメイクだけは「完璧な」バレリーナ姿へと変えられてしまった。
 肉体的には男性のままなのだが、少なくとも外見はそうだ。


 何でも、「呪われたチュチュ」なるもので、一生を掛けた舞台を前に事故で大怪我をし、そのまま舞台に立てなかったバレリーナの怨念が篭っているという。
 この衣装は「乗り移れる肉体」を探していて、誰かに物理的に憑依し、そのまま「人前で思う存分踊る」ことが出来れば無事に成仏出来るという。
 そして実際、そのまま大勢の集まる体育館に行き、思う存分踊った後、思い残す事は無いとばかりに消滅した…というのだ。

 …馬鹿馬鹿しくなって来たろ?俺だってそうだ。
 ただ、そういう「論理」を当てはめれば一応の納得は行く。

 誰しも知っている様に、バレエの踊りというのは一朝一夕で身に付くものではない。
 Mが習っている中にバレエが無かったとは言い切れないが、それでも「女の踊り」は全く別物だから、すぐに踊れるようなものではない。
 にも拘らずあんなに華麗かつ可憐に踊る事が出来たのは、本人の意思でも能力でもなく、着せられていたバレリーナの衣装…チュチュ…こそがそれをなさしめていた…と考えれば辻褄は合う。

 となると、これは恐ろしいことだ。
 Mは別に女装の趣味も何も無いのに、望まない女装…しかも、メイクまで含めたバレリーナ…を強要された挙句に、大勢の前で華麗に「女として」の踊りを強制的にさせられたことになる。

 言うまでも無く、男としてこれ以上の屈辱・恥辱はあるまい。
 それに、どういう因果なのか知れないが、そこで「かばった」はずのR嬢までが「男性ダンサー」の姿で追い討ちを掛ける様に舞台に現れ、「バレリーナ」相手に男性ダンサーのパートナーとして踊ることで、結果的により「女性の立場」を強要し、辱めたということになるのだ。

 これに匹敵する「男としての屈辱」などあろうか。

 ただ、こんな馬鹿馬鹿しい夢物語をまともに信じる人間などおるまい。

 ということは、極めて常識的でかつ「そうとしか考えられない」結論に行き着くしかないことになる。

 そう、Mは実は女装趣味のある変態で、女装した状態で大勢の前で踊ることで快感を覚えるドM野郎である…という結論だ。
 確かにあの恍惚の表情はそう勘繰られても仕方が無いものがある。
 しかも、偶然彼が小柄であったため、長身のR嬢と「男女ペア」としてのバランスが良かったことも悪い方向に働いた。

 ただ、好意的に推理するならば、あの表情は「呪われたチュチュ」に憑依した霊によるものであり、苦悶して屈辱に耐えているかのように見えた表情は、自分の意思で自由に動かせず、勝手に公衆の面前でバレエを踊る自らの肉体の恥ずかしさに必死に耐えていた表情であると解釈も出来る。

 とはいえ、その「証拠物件」であるチュチュを始めとした舞台衣装の一切は現場からは発見されていない。それは「男性ダンサー」役を割り振られたR嬢の着ていた衣装にしても同じである。

 その後、Mは日々エスカレートするいじめに耐え切れず、転校してしまった。
 「○○子ちゃ~ん」とからかわれるのみならず、体育の時間や水泳の時間に着替えを隠されて女物に摩り替えられるなどの嫌がらせを度々受け、すっかり立場を失ってしまったのだ。

 それにしても、あの夢みたいな舞台は一体なんだったのだろうか。
 良くも悪くも悪夢のようだった。

 単なる傍観者としては、多くの思い出の中の一つとして今も強烈に思い出す。
 此処だけの話、あの日目に焼き付けられたMの「バレリーナの背中」のビジュアルイメージは決して消えることが無く、それをおかずに何度も達してしまったのである。
 今では校内において好んで口に出すことも無くなった、半ば「封印された」出来事である。
 ただ、俺だけは「呪われたチュチュ」の説を頑固に信じている。そうと考えなくては辻褄が合わないからだ。

 そして、それほどの不条理も無いだろう。突如飛来した謎の飛行物体(?)によって男として最大限の屈辱を与えられ、結果人生が暗転してしまったのである。
 更に言うならば、我々ごく普通の一般人にも、いつそうした災いが降りかかってくるのかも分からない…ということになる。

 そんなわけで、今日も俺は他人に比べれば遥かに多い割合で空を見上げながら歩いている。
 そこに飛んでいた「呪われた何とか」を、回避するためだ。
 あんなムチャクチャな「呪われたチュチュ」なんてものの存在が許されるならば、「呪われたセーラー服」だの「呪われたブレザー」だの「呪われたウェディングドレス」だのが幾らでも成立することになってしまうからだ。
 だが、あのMの恥辱に震えながらも恍惚の表情を思い出すたび、もしもそういったものが飛来したとして、回避するのではなく、敢えてそれに飛び込んで行ってしまう衝動に駆られないという絶対の自信がこの頃揺らぎつつある。







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