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超常現象研究会 完全版(作・真城 悠 絵・NOMU)

超常現象研究会 完全版 DMM版
超常現象研究会 完全版 DLsitecom版

TSFのFのほん その3のC DMM版 復讐の指輪 DLsitecom版でおなじみのNOMUさんを表紙・挿絵にお迎えした真城さんの小説です! 

真城さん表紙

バニー化シーンのサンプルはこんな感じです!

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【200DL達成!】女体化劇場短編集その三

女体化劇場短編集その三 DMM版
女体化劇場短編集その三 DLsitecom版

好評の真城さんの短編集!
今回は豪華イラストレイター陣でイラストも13枚の大盤振る舞い♪
お気に入りのイラストレイターさんが見つかったら真城さんにも教えてあげて下さいね。

表紙イラスト Hiyさん
「休み時間パニック」 イラスト 柊ぽぷらさん
「能率アップ変身」イラスト ろしさん
「愛のライブ」イラスト amaiさん
「女子コミュニケーション慣れ」 イラスト yomiさん
「クローズド『女子会』」イラスト 紅憐さん
「タイムパトロール・ダイバー」 イラスト モリオビさん
「メイカー」イラスト もこもこ苺さん
「結婚式が趣味の男」 イラスト だんちょねこさん
「特殊スキル」イラスト 良之助さん
「強制マシン」イラスト りんたさん

その三

【サンプル掲載】女体化劇場短編集その三 から 休み時間パニック②

女体化劇場短編集その三 DMM版 購入はこちら
女体化劇場短編集その三 DLsitecom版 購入はこちら

岩崎「…だ、だめ…」
 自分のものとはとても信じられないブラジャーとそしてシャツに、クリーム色のベストと赤いリボンに覆われた乳房部分が、目の前の美少女のそれと押し付け合った。
岩崎「あ…」
 かつて同級生の女子の中でも胸の部分の発育が特によかった君江をチラ見しては「でかいおっぱいだなあ…」などと男同士で言い合っていたものだった。
 それが…それがよりによって自分のおっぱいと押し合いしてる…なんて…。
 ミニスカートから露出した素脚同士が「するり」と接触した。
 背筋に電流が走った。
岩崎「ぁあっ!」
 君江の圧力は止まらず、背中の壁と目の前の女子高生に挟まれる形となった。
君江「…暴れないでよ…制服がしわになっちゃうでしょうが」
岩崎「え…」
君江「…まあいいわ」
 君江の圧力から解放された。
 岩崎はその場に膝から崩れ落ちそうになった…が、どうにか踏みとどまった。
君江「で?どうよ」
 君江の口調は普段と何も変わらなかった。
君江「女になった感想は」
岩崎「…それは…」
 岩崎は何と言っていいのか分からなかった。
君江「やっぱり『スカートがすーすーする』とか思うの?ねえ」
 別に責めている口調ではない。単純に興味があると言う感じだった。ただ、目を輝かせ、頬を紅潮させての質問という訳でもない。
岩崎「…分 からない」
 背筋を伸ばす岩崎。
 長い髪の毛が揺れた。
 下半身の解放された頼りなさは相変わらずだった。
 定番の感想でつまらないが、「女子はこんな格好で普段過ごしているのか」とやはり思った。

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【サンプル掲載】女体化劇場短編集その三 から 休み時間パニック①

女体化劇場短編集その三 DMM版 購入はこちら
女体化劇場短編集その三 DLsitecom版 購入はこちら

君江「…!?…カン…ちゃん?なんてカッコしてんの!?」

真城さん2
挿絵:柊ぽぷら

岩崎「あ…ち、違うんだ!これはその…」

 小学校の頃からの付き合いだからかれこれ数年になるだろうか。
 クラスメートの小野寺君江(おのでら・きみえ)が廊下でこちらを確認すると、何とも言えない呆れたとも驚いたとも言える口調で言った。
 …それも無理も無いだろう。
 何しろオレ…岩崎寛一(いわさき・かんいち)は、「通常の男子高校生」としてはありえない格好をしていたからだ。
 太ももの中央まで張り出したその脚線美。
 可愛らしい真っ赤なリボンにクリーム色のベスト。
 清潔なイメージのシャツ。
 チェック柄のプリーツミニスカート。
 ハッキリ言えば、「女子高生の制服」姿だったからだ。
 半ば薄暗い廊下は、観音開きのガラスドアによって外部から隔てられていたが、不幸なことに今は開いていた。
 急に涼やかな風が強めに吹きこんできた。
 ぶわり!とめくれ上がるミニスカート。
 運動を阻害しない様に襞(ひだ)が入って良く広がるそれは、吹き上げる風によってその性能を最大限発揮してしまった。
岩崎「きゃあっ!!」
 ただでさえ頼りない下半身が風に嬲(なぶ)られ、その上下着までをも思いっきり見せつける格好となってしまっ たのだ!
 必死にめくれ上がるスカートを抑え込むそのリアクションは完全に「女子」だった。
 そして…そのスカートの中のパンティに包まれた肉体もまた、「女子」そのものだった。
 風は収まったが、両手を前に揃えて動揺し、長い髪を腰まで伸ばして豊かなバストを荒い呼吸で上下させているその肉体は、どこからどう見ても女子である。
 むしろ、君江がどうして目の前の美少女を「同級生の岩崎だ」と認識できたのかが不思議なくらいだった。
君江「…?なんで…なんでカンちゃん、…女になってるの?」
岩崎「いや…これはその…」
 ここで時間が少し戻る。


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女体化倶楽部 プロローグ

女体化倶楽部  作・真城 悠

プロローグ

 ただ漫然と見つめていた。

 「呆然と」ではなくて「漫然と」であるのがポイントだ。  

 人間、余りにも常軌を逸したことが起こると、パニックになる前に冷静になってしまうものなんだな…ということを学んだ。
 目が覚めると女子高生になっていた。

 事実だ。  
 事実そのまんまだ。
 なんで「女の子になっていた」ではなくて「女子高生になっていた」かといえば、女子の制服を着ていたからだ。
 布団の中で慣れない感触に違和感を覚えた。

 寝る時には季節を問わずに長袖に長ズボンのパジャマで寝ることにしている。寒がりなので。
 なのに、今朝は人肌に温まった布団の内側に素肌が…具体的に言うと「素肌の脚」…が「するり」とこすれた。
  「あ…」
 仰向けになった状態で、思わず声が出てしまった。  
 …余りの気持ちの良さに。
 全身が何か妙だった。
 柔らかくてすべすべしたものに胴回りと太ももまでが覆われている…。
 それに、何か息苦しくて重い。  
 まさか…。
 がばり!と身体を跳ね起こした!
 …となればマンガみたいなのだが、実際はそうではなくて人肌に温まった気持ちのいい布団の中で身体をタテヨコななめに動かしては、その都度全身を襲う柔らかくてすべすべする感触を楽しみまくった。
 「あ…」
 先ほどから感じていたのは「女物の下着」の感触だったのだ。  

 部屋の中に踏み出すと、いつの間にか女子高生がよく履く様な通学用の革靴を履いていた。
 室内なのに。

「…」  

 起きた時には履いていなかった気がする。
 どうなっているんだろう。

 彼は床に寝転がって「セクシー(?)ポーズ」っぽいこともしてみるが、事態は改善する気配は無かった。
 
挿絵1

彼は途方に暮れるしかなかった。  

彼もまた、数多い『犠牲者』の一人である。「女体化倶楽部」の。

女体化倶楽部 DMM版
女体化倶楽部 DLsitecom版


女体化倶楽部

女体化劇場短編集その二  ※レビュー追加×2

このざまさんからレビュー頂きました!

「真城悠さんによるTSF短編集になります。収録されている短編一つ一つがTSF好きならグッっとくるような内容で「自分はこの話が好き!」となること間違いなしの短編集なってます。さらに豪華イラストレーターによる素敵イラストでその威力はさらに破壊力をましましています。そして個人的お気に入りお話は、入れ替わり替え玉受験です。中身も良いのですが読み終わった後にやってくる孝至さんのイラストの効果も抜群で非常に良いです。短編集なので読みやすく、素敵イラストもついてくるのでおススメです。」

ととやすさんからレビュー頂きました!

「真城悠さんのTSF短編集第二弾です。10編以上の短編が収録されており、そのどれもがTSFファンの琴線を震わせること間違いなし! まずはおかし製作所さまにて公開されている短編「お礼」を読んでみて下さい! これにグッときた方、是非購入をお勧めします!
個人的には「ラインナップ」という短編がお気に入りです。真城さんなりのTS娘の家族構成論(?)が議論されており、非常に勉強になりました笑。
三人のイラストレーター様によるハイクオリティなイラストもついてくる。こりぁ買わない手はないですよ!」

女体化劇場短編集その二  DMM版
女体化劇場短編集その二 DLsitecom版

おなじみ真城さんの短編集第二弾!今回はイラストレイターさんもバラエティに富んだ強力布陣です!

女体化劇場短編集その二
4

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女体化倶楽部(真城の秘宝館新作) DLsitecom版も発売!

女体化倶楽部 DMM版
女体化倶楽部 DLsitecom版

買ったのですが、むっちゃ読みづらく(一行読むごとにクリックが必要)て改善版の要望を真城さんに出しています。
→差し替え終了し、まともに読めるようになりました♪初日に1点評価が2つついたのは上記読みづらかったためだと思います。

女体化倶楽部

【好評発売中】魅惑の闘技場 (シークエンスシーン) レビュー追加

ととやすさんからレビュー頂きました!

「真城悠さんの長編小説になります。相手を性転換させる特殊な能力(!?)に目覚めた主人公が、能力者同士の闘技場のてっぺんを目指して突き進む!・・・と思いきや、そこは流石真城さん。物語は読者の想像もつかない境地へと進んでいきます。その結末は、読者の皆さんが確かめて下さい!
本作は主人公の心理描写がすごくうまいなぁと思います。自分が同じ立場なら、全く同じこと考えてしまいそうで怖いくらいです笑。圧倒的な筆力でお届けするTSF界のレジェンドの一編、是非ご一読ください!」

真城さん&蜂蜜柑さん拘りのシークエンスをご覧ください!

シーク1

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【中身紹介】 女体化劇場短編集その二  ~お礼~④

 不思議だった。
 女物など身に付けたことも無いはずだった。
 ましてやこんなぞろっとしたスカートのドレスなんて。
 にもかかわらず、まるで生まれた時から何十年も女をやっていたかの様に華麗にスカートを操り、見事に用を足していた。
 洋式便器に座り、想像もしたことが無い場所から想像もしたことが無い形式(?)で絞り出されるそれは、ある意味異次元体験だった。
 手が勝手に動いて紙を使って軽く処理し、流す。

 またパンティを手繰り上げ、手を離すとふぁさりとスカートが落下し、空中にぶら下がった。
 膝下までの長さで、地面を引きずり大きく広がる「お姫様みたいなドレス」とは少し違うが、これもまた「綺麗なドレス」には違いなかった。
 怯えた小娘の様にそっとドアの隅から人気を確認する。
 入る時にはともかく、出る時にはタイミングは選べる。
 人気も無く、新しい電車が入って来たりしていないことも気配で確かめると、やはり慣れないハイヒールを操りながら出口に向かって歩く。
 すると、ふと青い人影が目に入った。
青年「っ!!」
 それは洗面所に配置された「鏡」だった。
青年「…これは…」
 そこにはとても美しいレディがいた。
 勿論、今の自分自身である。
 そんな…今、おれって…こんな姿に…。
 思わず目をぱちくりしてしまう。
 同様に鏡の中の美女も目をぱちくりさせていた。
 駅の半地下の男子トイレの洗面所という最悪の照明シチュエーションでもこれなのだ。
 きちんとした場であったならばさぞ映(は)えることだろう。
?「…よお」
 思わず振り返る青年。
?「見てたぜ。最高の見世物だったな」
青年「っ!!あんたは!」
?「覚えてたか…」
 そこには先ほど令嬢にチカン行為を働いた男がいた。
痴×「待ち伏せしてやろうと思って影から見てたがよ…お前さっきの男だよな?」
青年「…っ!」
 咄嗟に走り出そうとする。
 だが、痴×はトイレの出口に立ちふさがり、横に移動して美女と成り果てた青年の行く先を塞いだ。
青年「どけっ!」
痴×「どかねえよ。どくわけがねえだろうが」
 にやにやしている。
痴×「それにしても…」
 青年はゾッとする感覚がした。
 舐めまわす様に身体を見られている感覚がしたからだ。
痴×「綺麗になりやがったな…たまらねえぜ」
青年「お、おい…何を考えてるんだ」
 青年の顔色が青くなる。
痴×「はぁ?決まってるだろうが!」
 どん!と身体を押された。
青年「きゃっ!」
 バランスの悪いヒール姿なのである。たまらず冷たいトイレの床に倒れ込んでしまう。
 思わずスカートがはだけて、脚線美の一部が見えた。
青年「よ、よせ!」
痴×「ああ…その可愛い声もたまらねえ!たまらねえぜ!」
青年「きゃああああああーーーっ!!」
 必死に逃げようと床を掻いてもがく。
 だが、慣れぬ身体に動きにくい服、そして体力も瞬発力も無い。あっという間に捕まってしまう。
 床に倒れている状態で、背後から抱きしめられた。
青年「いやあっ!!」
痴×「そうだそうだ!もっと抵抗しろ!嫌がれ!」
 青年は、背中に当たる硬いものの存在を察した。
 元・男である青年にとってそれが何を意味しているのかは自明だった。
青年「よせ…おれは…男…だぞ…」
痴×「そうかもな。だが今は!」
 チカンは上からのしかかる様に背後から手を回し、綺麗なドレスに手を掛け、思い切り引っ張った。
 びりりりりりりっ!!!
 と音がして、ドレスが引き裂かれる。
青年「きゃああああーーっ!!」
痴×「女だ!!」
 床に倒れ込み、押さえつけられる青年。
 アップスタイルにまとめられていた髪がほどけ、バラバラになって波打つように床に広がる。
 そして、ドレスが引き裂かれたことで、汗ばんだ乳房がまろび出た。
青年「いやあっ!」
 遂に生まれてから初めてブラジャー…なのかどうかわからないが、とにかく乳房を覆ってくれていたものから解放された初々しい乳房と乳首が空気を感じる。

3

 青年は遂に絶望の余りからか抵抗する気力を無くした。
 チカン男が半裸の女…今の自分…を個室に押し込め、慌ててズボンを脱いでいる気配を感じる。

 どうして…どうしてこんなことになってしまったんだ…。

 直後に抱き起され、ガサついた生暖かい唇が、さくらんぼの様に可憐な唇に押し付けられた。
 同時に剥きだしの乳房が鷲掴みにされる。
青年「あっ…」
 決して大事なところを堅牢にガードしている訳ではないパーティドレスはあちこちをめくられ、引き裂かれただけで「その行為」に必要な準備は全て整ってしまった。
青年「あっ!あっ!あっああああああああーーーっ!」
 全身をこね回され、舐めまわされた挙句、青年の秘所は痴×自身を受け入れさせられていた。

 薄れゆく意識の中、あの謎の電話の声が脳内にこだまする。

謎の女『よっしゃ!だったら直(すぐ)にその場を離れて。いい?』
青年「…話が見えないんですが」
謎の女『アンタの為に言ってんだよ!いい?目の前の天然娘のいう事は一切受け入れないこと。何でもいいから「急用が出来た」とか「親が死にそう」とか何でもいいからすぐにその場を離れるの!いい!分かった!?』

 あのアドバイスを聞かなかったせいなのか…?
 単に痴×被害に困っていた女の子を助けただけなのに…どうしてこんなことになったんだ…。

 だが、次の瞬間、陳腐な表現ながら『女体の快楽』が全身を貫いた。
 自分でも聞いたことが無い様な声が出ていた。
 現実味のない小汚いトイレの天井を見上げながら、今度こそ意識が遠くなった。

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【中身紹介】 女体化劇場短編集その二  ~お礼~③

 きっと痴×被害なんて放っておけばよかったのだ。
 それこそ、愚かなる痴×男はすぐに自らが痴×被害を心配しなくてはならない立場に追いやられていたことだろう。

令嬢「きゃー!可愛い!きゃー!」
 自分がやらかしたことなのに勝手に盛り上がっている。
 というより「やらかした」意識も無いに違いない。ある訳が無い。
 恐ろしいことに、純粋に「いいことをした」とすら思っていそうだ。
青年「あ、あの…お嬢さん?」
 甲高くなっている声に違和感バリバリだが、努めて平静を装う。
令嬢「何でしょう?(笑顔」
青年「あのですね…。素敵な下着とか…あれとかこれとか…本当にありがたいです」
令嬢「でしょ?」
青年「なんですけど!」
 敢えてちょっと大きな声を出す。
青年「あのですね…私はその…男の方が好きなのでその…」
 確信は無いが、男を女に出来る以上、女を男にすること…何より『元に戻す』ことだってきっと出来るはずだ。
 何とかその意識に誘導しないと大変なことになる。
令嬢「あら…」
 ぽっと顔が赤くなる令嬢。
令嬢「なんだ…そうならそうと言ってくださればいいのに…」
青年「へ?」
 嫌な予感がする。
令嬢「それにしても最近の若い女性って大胆ですわね。『男が好き』だなんて」
 青年の背筋に冷たいものが流れ落ちた。
 何か言葉の意味を猛烈に誤解されている気がする。
青年「ち、ちが…そういう意味じゃなくて!」
 その声も甲高い。
青年「…っ?…うわわっ!」
 脚の周囲に『ふわっ!』と空気が流れ込んできた。
 同時に、人肌に温まっていた女物の肌着…スリップの裾(すそ)が、可憐で美しい刺繍をまたたかせながら『ふぁさり』と重力に従って落下し、生まれたばかりの乙女の柔肌に優しく寄り添った。
 しっかりと密閉されていた下腹部を覆う衣類は、下方向に向かって解放され、実に頼りない有様となってしまった!
青年「んぁっ!」
 青年のデニム地のズボンは、柔らかい素材のスカート形状に変形していたのだ!
青年「そ、そんな!!」
 きゅっと引き締まったウェストから、豊かなヒップに押されて広がるそのシルエットは、ズボンに比べても圧倒的に『女性的』なものを感じさせる。
 長い髪に細い身体、女性的なシルエットのスカート形状、その下から覗く無駄毛ひとつない大理石の様な素脚に、細い指…。
 男性的な特徴が残っているとしたら、武骨とまでは言わないが飾り気のないシャツくらいのものだ。
令嬢「ん~とても可愛いけど、やっぱり中途半端よね~。折角だから下着だけじゃなくてドレスもプレゼントするわ」
青年「はあああああぁあああ~っ!?」
 思わず絶叫に近い声まで出てしまった。
 息つく間もなくシャツが変形を始めた。
青年「あっ!あっ!ああっ!!」
 腕が剥き出しになって行く。
 背中がぱっくりと開き、素肌が露出した。
令嬢「あらごめんなさい。この形のドレスだと普通の下着じゃ駄目ね。えーいっ!」
青年「ぁっ…」
 どういう仕組みなのか、構造なのかはサッパリ分からないが、大きく背中が開いたことでみっともなくも空気にさらされかけたブラジャーやスリップが綺麗に消滅していた。
令嬢「えっへへーえらいでしょ?ちゃんと考えてるんだから」
青年「あ…ぁあっ!!」
 一気に背中が寒くなり、そして長かった髪がアップスタイルにまとめられる。
 色気のないスニーカーは高いヒールの美しい靴へと変貌を遂げ、耳にはイヤリングが施され、顔は美しいナチュラル・メイクに彩られた。
令嬢「はい完成。とっても綺麗よ」
青年「あ…あぁ…」
 茫然と自らの変わり果てた姿を見下ろすかつての青年。
 一応スカートではあるが、身体のラインが綺麗に出るブルーの控え目のドレスだった。
 男物ではありえないほど背中が開いている。
 お化粧の甘い香りが鼻孔をくすぐり、一挙手一投足がまるでキラキラと輝いている様だった。
駅員「あ、あの…」
 突然声を掛けられた。
青年「きゃっ!」
 思わず子猫みたいな声を上げて軽く飛びのいてしまう。
駅員「先ほどこのあたりで痴漢を働いた人がいるらしくて…」
 何という事だ!今ごろ駆けつけて来たのか!
 身体のどの部分を動かしても違和感だらけだ。
 な、なんてこった…。ほ、本当に…女の身体に性転換してしまったっていうのか!
 青年は思わず駆けだしていた。
 いつの間にか令嬢は姿を消している。
 冗談じゃない。
 人をこんな有様にしておきながら逃げるなんてありえないだろ!
 走る脚がスカートの中でお互いに触れあって擦(こす)れる。
 っ!!
 何なんだこの服は…まるで下半身がパンツ一丁のすっぽんぽんも同じじゃないか!
 階段をまるで社交界のレディみたいな格好で駆け下りる。
 さびが目立つとまでは言わないが、それほど清潔にも見えない手すりに、白魚の様な指を走らせながら降りる。
 慣れぬ高いヒールが動きにくい。
 耳元でチリチリとイヤリングが揺れる音がする。
 ち、ちくしょう…。一体どうしてこんなことに…。
 男子トイレのマークが目に入った。
青年「…」
 ここに入るしかないのか…。
 身に付けたものも全て消失している。
 一応確かめたがスマートフォンも無ければ財布も無い。
 実はさっきから少し催(もよお)し始めているのだ。
 分からんが、見下ろした感じでは見た目は…少なくとも男には見えないだろう。
 この格好で男子トイレにはいるってのは…場違いな変態コスプレ女ってところだ。
 かといって女子トイレに入るのも抵抗がある。
 見た目で咎められるとしたら、真昼間からパーティ仕様の場違い女ってところくらいで、仮に隅々まで身体検査されたところで逮捕はされまい。
 だが、中身は男だ。
 急に元に戻されたりした日には死ねる。
 肉体的にもこんな細いドレスが入るワケが無いから大変なことになるが、何と言っても社会的に死ぬ。
 ええい!
 混んでるコンサートの休憩時間とかだと男子トイレに女子がなだれ込んでくるとか言うじゃないか!逆ならともかく女が男子トイレに入るのは許されるだろ!
 仮に男に急に戻ったとしても、変態女装男がトイレに入ったってだけだ!それはそれで問題だが、「変態女装男が女子トイレに」に比べればマシだ。
 青年は思い切って入った。
 幸い、小便器で用を足していた男はいなかった。
 男子トイレは言ってみれば個室以外は「解放型」なので、入った瞬間に見知らぬ人と顔を合わせることになる。
 今の自分みたいなのが飛び込んで来ればそれだけで大騒ぎになりかねないところだ。
 青年…すっかりレディになっているが…は周囲をキョロキョロと見回した。
 出る時に難儀となるし、下手人を一刻も早く探さなくてはならないのも間違いないが、今の下腹部を襲う欲望もまた加速度的にひどくなっていた。
 これまた幸か不幸か個室も全て空き室だった。

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【中身紹介】 女体化劇場短編集その二  ~お礼~②

青年「いやその…」
 まるで映画に出てくる絵に描いた様な『深窓の令嬢』『箱入り娘』といった風情だ。
 肌の露出が殆(ほとん)ど無い服である。
 手首まで覆った長袖に、床を掃除できそうなほど長いスカート。
 髪は背中を通り過ぎて腰まで達しそうである。
青年「…急いでるので」
 あの電話を全て信じている訳ではないが、特に長居をする義理も無い。
 綺麗な人だとは思うがここから一気にお付き合いしようなんて図々しくは無い。
青年「どなたか知りませんけど、電話の彼女はすぐに迎えに来るそうですよ」
令嬢「じゃあ、それまでいて!」
 どうもトンだワガママ娘みたいだ。まあ、可愛いもんだが。
 状況からしてお目付け役から逃れて一人っきりで在来線に乗ったはいいが、何が何だか分からず立ちつくし続け、挙句痴漢に出くわして右往左往ってところだろう。
青年「はあ…」
 電話の謎の女は「いいから早く離れろ」とそればかり言っていた。
 まるで人を危険物扱いだ。
 まあ、箱入り娘をどこの馬の骨とも分からんのと二人っきりにするのが不安なのは分かる。
令嬢「とにかく…助けてくださってありがとうございます」
青年「はあ」
 天真爛漫な笑顔だ。
令嬢「心ばかりの贈り物をさせてください!」
青年「いやその…お迎えの方がいらっしゃるみたいですし、今はとにかく無事に帰られることを考えた方がいいと思いますよ」
令嬢「大丈夫大丈夫!すぐに済みます!」
青年「さっきの痴漢男がまだその辺にいるかもしれないし…」
令嬢「ん~そうだなあ。そうそう!この間ウィンドショッピングでとても素敵な下着を見つけたんですよ!」
 余り他人の話を聞かない人みたいだ。
青年「はあ」
令嬢「とっても綺麗で肌触りも良さそうで…でもお金はあったんですけど、発売前のサンプルだったので買えなかったんです」
青年「そうですか」
 何なんだこの話は。
令嬢「あれなら誰でも欲しがると思います!」
青年「それは…良かったですね」
 何が『良かった』のか分からないが、適当に話を合わせておく。
 む~ん、これは想像以上に苦痛だ。
 可愛い女の子と話せるのは楽しいかと思いきや、こうも興味関心のない話を続けざまにされても退屈するばかりだ。
令嬢「だからそれをプレゼントします!」
青年「あ、ありがとうございます」
 適当な相槌のまま言ってしまった後に少し考えた。
 ん?今「下着をプレゼントする」と言ったかこのお嬢さんは。
令嬢「こちらこそ有難うございます。助けて頂いた感謝の気持ちです」
 下腹部…はっきり言えば股間…パンツに違和感を覚えた。
青年「?…???」
 これと言って特徴のないガラパンだ。
 その感覚が何かおかしい。
青年「??」
 ブカブカに余裕があったはずのガラパンが…肌に吸い付いている?
青年「…!?あああっ!?」
 覆っている部分が少なくなり…ナニがはみ出しているじゃないか!間違いなくそういう感触がする!
令嬢「どう?履き心地は?」
青年「え…えええええっ!?」
 ま、まさか…まさかそんなことが…!?
令嬢「あ、そうそう。あれって上下セットだったわ。だから上も無いと」
青年「ちょ…ま…」
 当時に横隔膜の上くらいの位置を「むぎゅっ!」と掴まれた気がした。
青年「ぁあっ!!」
 青年の顔が「かあっ!」と赤くなった。
 肩にひも状のものが掛かっているのが分かる。
 その意味しているところは明らかだった。

 ぶ、ブラジャーをさせられてる!?

 青年は目を見開いて目の前の令嬢を見た。
 何の変哲もない…というには可愛らしいが…この女の子は…まさか…他人の服を変形させることが出来るっていうのか!?
 し、しかも…その「基準」というのが「自分がいいと思った」らしいのだ。
 このお嬢さんは恐らく生粋の「女の子」だろう。
 という事はつまり、「いいと思う」のは「女物」に決まっている。
 それを、相手の性別顧みず誰彼かまわず…それこそ相手が「男」だろうと…プレゼントしようとしたならば…「女装」させられてしまうことになるのだ!

青年「ちょ!ちょっと!ちょっと待って!」
 青年は両手を突き出してブンブン振った。
令嬢「いいです!もう!もうプレゼントはいいですから!」
 冗談じゃない。
 こちとら女のきょうだいもいない生粋の男だ。女物に女装させられるなんてまっぴらだ。大体そんな趣味は無い。
令嬢「あら、いいのに遠慮しなくて」
青年「いや、遠慮とかじゃなくて!」
令嬢「折角だから肌着もプレゼントするわ。それっ」
青年「うわわわわっ!」
 青年の胴回りを何とも気色の悪い感触が取り巻いた。
 つるつるすべすべする。
 も、もしかして…もしかしてこれは…。
 思わず身体をひねった。
青年「…ぁ…」
 しゅるっと素肌とシャツに接触する音がして、全身を官能的な肌触りが包み込んだ。
 これは…女物の肌着…下着じゃないか!
令嬢「咄嗟に思いつかなかったから…あたしとお揃いにしちゃったんだけど…これでよかったかしら?」
青年「いやその…良かったとかじゃなくてですね…」
 顔から火が出そうだった。
 下着なので外からは分からないが、今服の中は完全に女物だ。ブラジャーにパンティにスリップ。
 とんだ「ド変態」な状態である。
 そういえば心なしか乳房に当たる部分が「こんもり」と盛り上がっている気がする。
 ぺったんこではあるが、ブラジャーそのものの形状が少し胸を盛り上げてしまっているのだ。
令嬢「え…駄目でしたか?」
 どうしたものか…ここまで常識と想像力が欠如した相手を説得するのは猫にファミコンをやらせる様なものだ。
青年「あのですね…おれは男なんでその…おっぱいも無いわけで…」
 これがまずかった。
 ハッキリ言えば致命的だった。
青年「こんなもの…っていうかその…付けててもしょうがない訳です。はい」
 なるべく否定的な言葉は使わない様に気を遣った。
 何しろ信じられないことだが、この少女には驚天動地の能力があるのだ。機嫌を損ねていいことがある訳が無い。
 下手に機嫌を損ねたり、今以上に勘違いさせてしまったりすれば、今以上の惨劇が襲ってくるのは目に見えている。
令嬢「あっ!ご、ごめんなさい!あたしったら」
青年「はい」
 どうやら分かってもらえたらしい…と思った。
令嬢「今何とかしますね」
 何やら身体に違和感を感じた。
青年「?…ぁ…」
 それは恐ろしい疑惑を指示していたが、必死に顕在意識がそれを否定していた。
 …だが、それは事態が進行するにしたがって疑問の余地が無くなって来た。
青年「ぅぁ…あああっ!」
 ぐぐぐ…もりもりもりっ!と青年の乳房が盛り上がった!
 それは空洞になっていたブラジャーのカップの内側を綺麗に埋め、乳首の先がブラジャーの内側に接した。
青年「あ…」
令嬢「これくらいのおっぱいが無いと駄目よね。ごめんなさい気が付かなくて!」
青年「ち…ちが…そうじゃなくて…」
 ブラジャーを先にして、後からおっぱいが形成されてブラジャーにフィットするなんて馬鹿馬鹿しいことがあってたまるか!と思うんだが事実だけに仕方が無い。
 ぐぐぐ…と肩幅が狭くなって行く。
青年「あ…あ…あああっ!」
 身体全体が細くなって行く。
 身体の幅も厚みも無くなって行き、美しい形の乳房だけが残っていく。
令嬢「あら!あたしったらハミ出してるのに気付かなかったわ!すぐ何とかしますからね!」
青年「ちょっと!そ、それだけは!」
令嬢「大丈夫!窮屈な思いをするのももう少しですからねー(笑顔」
青年「あっ!あっ!あああっ!」
 青年の臀(でん)部…ヒップ…が柔らかく丸みを帯びて膨らんでくる。
 それと同時にまっすぐに伸びていた脚がじわじわと内股になっていき、太もも同士が接する。
青年「うわ…あああっ!!」
 ぴっちりと肌に吸い付いていたパンティの布が伸縮し、尚更密着した。
 そして…青年の男性自身がぐぐぐ…と縮んでいき、体内に収納されて行くかの様に消失してしまった!
青年「あっ!あああっ!!」
 あわてて下腹部を触る青年。
 だが、そこにはなだらかな下腹部があるばかりだ。
 身体の前面に伸ばした手がブラジャーに包まれた豊かな乳房に遮られる。
青年「そん…な…」
 ふと気づくとその手もかつてとは違っている。
 目の前に翳してみると、ぐぐぐ…と緩やかに変形していた。
青年「手まで…」
 その指は細く長く、そして美しく変形していく。
 言葉で表現するのは陳腐だが「女の手」だった。
令嬢「やっぱり手も綺麗じゃないとねー」
 あくまでにっこにこの令嬢。
青年「ああ…」
 まるで生き物の様に髪の毛がざわざわとうごめき、押し出される心太(ところてん)の様に伸びてきた。
令嬢「髪は女の命!気にしないで!プレゼントだから!」
青年「そ、そんな…」
 まるでシャンプーなどの手入れを欠かしていないかの様に光沢を放つ美しい黒髪が流れ落ちた。
青年「これは…っ!こ、声も…」
 いつの間にか自分から鈴の鳴るような可愛らしい声が「自然と」青年…かつての青年…は気づいた。
 ば、バカな…。
 こんなバカな話が…。
 おれ…おれの身体が…せ、性転換して…お、女にぃっ!?
 ゆっくりと見下ろす青年。
 豊かな乳房が存在を主張し、色気のないシャツを押し上げている。
 胸やお尻部分は張りつめているのにウェストがダブダブになったアンバランスな服装は「男装」とも違う独特の出で立ちだった。
 その色気のない服装の下には、見る人が見れば分かる高級な下着があしらわれているのだ…。無論、女物の。
 身体の内側の直接肌に触れるところの多く…胴回りが柔らかくてすべすべする。
 女物の下着の官能的な感触だ。
 スカートを前提とした長いスリップが、ジーンズの脚の分かれ目にせき止められて脚の付け根に溜まり、何とも不格好になっている。
 とにかく女にされてしまった。このお嬢さまの特殊能力で。
 さっきの謎の女が言っていたのはこういうことだったのか…。
 きっとこのお嬢さまは、悪気も悪意も無く男を性転換したり色々してしまうのだ。
 危険すぎるので何らかの形で閉じ込めていたか何かしたのだろう。
 だが、それが野に放たれてしまった。
 全速力で関係者の謎の女が回収に向かってきてはいるものの、お人よしのマヌケがその毒牙に掛かってしまった…という構図なのだ。

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【中身紹介】 女体化劇場短編集その二  ~お礼~① 

青年「よせ。嫌がってるだろ」
痴×「あぁ!?」
 電車内は緊迫した空気に包まれた。
令嬢「…」
 浮世離れしたお嬢さんは目を見開いて固まってしまっている。
 ここは電車内である。
 それほど混雑していない車内であったが、安っぽいスカイジャンパーにところどころ黒くなっている汚い金髪の大きな男が、深窓の令嬢然とした女性を隅に押し込んでいた。
 その男…以降、「痴×」と呼称する…は手慣れているらしく、明後日(あさって)の方を向きながら巧みに令嬢の動きを封じて痴×に及んでいた。
 そこに青年が割り込んできた形だ。
 青年は痴×に対して頭一つ小さいにもかかわらず一歩も引かず、サングラスの痴×を睨み返す。
 その時、電車が駅に到着した。
痴×「けっ!」
 振り払うように悪態をつくと、そそくさと電車を降りる痴×。
痴×「覚えてろよテメエ!」
令嬢「あ、あたしも降ります」
青年「…」
 危機感の無い令嬢がそのままホームに降り立った。
 どうやら青年も丁度ここで降りるところだったらしく、仕方なく続いて降りる。
 だが、痴×は逮捕されたりすることを恐れてかそのまま改札に向かって行った。
 ホームには発車を知らせるBGMが鳴り、ゆっくりと発車する。
 元々人の少ないホームの人々はあちこちに散って行った。
青年「…大丈夫ですか?」
 特に特徴のないブルーのシャツにジーンズ姿である。
令嬢「あ、助かりました。有難うございます」
 青年から頭半分ほど小柄な令嬢はまだ危機感が足らない様子だった。怯えているというよりは本当に事態を把握できていない感じである。
 その時、携帯電話が鳴った。
令嬢「…?…」
 電車は三〇分に一本ほどしか来ない駅である。ホームには他に余り人もおらず、喧騒も無かった。
青年「…そのバッグの中では?」
令嬢「あ、そうみたい!」
 その後も十数秒に渡ってガサゴソやっていたが、やっとこさスマートフォンを取り出す令嬢。
令嬢「もしもし」
 何やら全てが慣れていない様子だ。こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか…と青年は思った。
 スマートフォンの先からはかなり激しい調子の女性の声が聞こえる。
令嬢「あ、うん。そうそう。大丈夫。うん。えっとね…チカン?っていうの?…にも遭ったけど」
 まるで駅前の募金を見かけたみたいな調子だ。
 スマートフォンの先が更にけたたましくなる。
令嬢「大丈夫だよ…。助けてもらったし。うん…」
 長引きそうだったので、青年は簡単に会釈をしてその場を立ち去ろうとした。
 その時、袖を引いて令嬢に引き留められた。
 まだ電話中だが、目で「行かないで」と言っている。
 青年は急ぎの用ではないらしく、その場にとどまった。
 すると、令嬢が青年の方にスマートフォンを差し出して来る。
青年「?」
令嬢「代われって」
青年「おれに?」
令嬢「うん」
 屈託のない笑顔だ。
 訝(いぶか)しんでいたが、仕方なく手に取る。
青年「…もしもし?」
謎の女『もしもし?あなたは行きずりの人?』
 ぶしつけな質問だ。
青年「そうですが」
謎の女『あっそ。お嬢を助けてくれてありがと』
青年「はあ…」
謎の女『落ち着いて今から言うことを聞いて。いい?』
青年「はあ?」
謎の女『あんたにお礼をしたい気持ちは山々なんだけどちょっと難しいわ』
青年「いや…いいですよ別に」
謎の女『よっしゃ!だったら直(すぐ)にその場を離れて。いい?』
青年「…話が見えないんですが」
謎の女『アンタの為に言ってんだよ!いい?目の前の天然娘のいう事は一切受け入れないこと。何でもいいから「急用が出来た」とか「親が死にそう」とか何でもいいからすぐにその場を離れるの!いい!分かった!?』
青年「…いいけど…さっきの男がまだいるかも」
謎の女『あああああ…大丈夫。あんたに説明してるヒマは無いんだけど、とにかくちょっとやそっとじゃ大丈夫だから心配しないで!』
青年「?????」
謎の女『今そっちに向かってる!車で!GPSで駅は分かってるから。お嬢のことは心配しないでさっさと失せな!』
 そこで「ブツッ!」と通話が切れた。
 耳から離してみるとスマートフォンは充電切れを起こしているらしかった。画面が真っ黒で何を押しても反応しない。
青年「…すいません。電源が切れたみたいで…」
 青年が申し訳なさそうにスマートフォンを返す。
令嬢「あらあらホントね」
青年「まあ、そういうことなんでもう行きますね」
令嬢「待ってください!」
 懇願する様な目だった。

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【DLsitecom版新発売】女体化劇場 短編集その1 少年魔法少女座談会①

真城さんの新作です!その名のように短編集ですね。収録作、少年魔法少女座談会をチラ見せしていきます!表紙や挿絵はご存知むらさきいろオレンジさんです!製品版では顔アイコンが付いています♪

女体化劇場

A「あ、どうも少年魔法少女をやっているAと申します」
B「Bです」
C「Cです」
A「何か今回は対談して欲しいってことなんですが」
B「対談ったってねえ」
C「何を話せってのか」
A「え?きっかけ?」
B「そんなアイドルグループに応募した訳じゃないんだから」
C「すいません。見れば分かりますけど一応年齢を親告しません?」
A「…高校生やってます。三年生。一七歳です」
B「うわっ!マジでそうなのか。制服着てるし若いからもしかしてと思ったけど」
A「はい…。Bさんは?」
B「二五です。サラリーマンです。彼女います」
C「大変だな」
B「まあ、大変と言えば大変ですがCさんほどじゃないでしょ」
C「Cです。四七になります。一応課長です。子供二人います」
A「え?…っていうことは結婚されてる?」
C「まあ一応」
B「家族バレはしてませんよね」
C「してたら離婚かもしれん。子供は二人とも娘だし」
B「差支えなければお子さんの年齢は?」
C「一七と一四」
A「…同い年か…女子高生と女子中×生だ」
B「そんな多感な時期に父親が女の子に変身して悪と戦ってることがバレたら大変ですね」
C「それを言うなよ…」
B「多感といえばAくんさあ」
A「はい」
B「こうして見てても普通の男の子にしか見えないけど、どんな変身してるの?」
A「それが…同級生みたいになるだけなんですよ」
C「?どういう意味?」
A「なんてゆーかその…幼×になっちゃったり、アイドルのステージ衣装みたいなフリフリのミニスカート履かされたりってことがないんです」
B「単に同年代の女の子になるだけってこと?」
A「あ、制服は着せられます」
C「リアルJKかよ」
A「いや…リアルではないと思いますけど…」
B「さっきは普通の男の子って言ったけど訂正するわ。A君可愛いもん。これで女の子になったらさぞ可愛いだろうね」
A「いやその…(もじもじ)」
B「彼女いるんだっけ?」
A「彼女…とは言えないと思いますけど、幼馴染の子が」
C「彼女バレしてる?」
A「いえ。でもしょっちゅういなくなっては別の女の子が現れる形になってるから、何となく怪しいと思われてます」
B「…それこそ男子トイレにしけこんでは変身して出て来るとかやってるわけ?」
A「…仕方が無いんで…」
C「まるでスーパーマンのクラーク・ケントだな」
A「何ですそれ?」
C「オレが子供の頃にはギリギリあったよ。平凡な新聞記者のクラーク・ケントが電話ボックスに入るとスーパーマンに変身して出てくるんだ」
B「トンだ迷惑コスプレイヤーもいたもんだよな」
A「電話ボックス?…って何です」
C「ああ…そういう世代か…」
B「携帯電話もスマートフォンも無い時代にはそこいら中に公衆電話があったんだ。日本だとシースルーなのが多いけど、スーパーマンの時代には外から中が見えなかったから」
A「へー」
B「しつこくて悪いんだけど…どうよ?一番異性の身体に興味がある第二次性徴期の男の子としては?日常的に同年代の女の子…っていうか『女子高生』になっちゃう気分は?」
C「そうだよ。オレは女っ気のない家だったからさ。道端に落ちててボロボロだったエロ本拾って帰ったり大変だったもんさ。それが自分の身体ってなるとなあ」
B「その頃に魔法少女になりたかった?」
C「ありていに言えばそうだね。もう夢見る若者って年でもないし、気ままにマンガや映画の世界に浸ってられない。心配は怪人よりもローンさ。今更幼×に変身する能力もらってもなあ…って感じでよ」
B「まさか性的に異性に興味が無くなってるとか?」
C「少なくとも自分の娘以下の子は『可愛いな』とは思うが、犬や猫見て『可愛い』と思うようなもんで、性的にどうこうなんて思わんね」
B「なるほどね」
A「まあ…ウチ、お姉ちゃんが二人なんですよ」
B「あ?そうなの?」
C「ウチは兄貴が三人いたぞ」
B「もしかしてアレかな?小さい頃はお姉さんのお下がり着せられてたとか」
A「あ、はい」
B「…当たり前みたいに言うねえ…オレは一人っ子だったから正直そういうのに憧れてもいたんだけど…」
A「…いいもんじゃありませんよ。一番上の姉は八歳離れてるからそうでもないですけど、二番目の姉は二歳違いだからケンカが絶えないし」
C「年の近い異性のきょうだいは仲は良くないよな」
B「それこそ小さい頃はお姉さんのお下がり着せられたりしてたの?」
A「はい」
C「即答だね」
A「幼稚園に入るまでは男女で着るものが違うってことも知りませんでした」
C「え…じゃあ普通にスカートとか着てたんだ」
A「はい」
B「そういう例はまま聞くけど…」


つづきはこちら

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前作魅惑の闘技場も併せてよろしくです!
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【早くも100DL達成】女体化劇場 短編集その1 少年魔法少女座談会③

その1はこちら
その2はこちら

A&C「「…は?」」
B「同僚のOLはこれ幸いと逃げ出して、代わりに俺がレイプされる形になったんだな」
C「それはまた…」
B「身体が勝手に動く形になったんだけど、トイレから走って場所を移動して監視カメラの範囲に来てそこで胸の部分を破られておっぱいが半分見える感じになった」
C「細かいディティールまで覚えてるんだな」
B「ええ。この部長は制服フェチだったらしくて殆(ほとん)ど着たままめくり上げて突っ込むのが好き…って大丈夫かな未成年の前でこんな話して」
A「…大丈夫です」
C「それで…最後まで行ったのか」
B「行きましたね。こっちはストッキングもしてない生脚状態。タイトなミニスカートだからめくり上げるのも一苦労だったみたいですが、ともあれ立った状態でバックからね。目一杯中出しされましたよ」
C「…逃げたOLは?」
B「ここからがポイントです。こんな日でも警備員はいるんで、逃げるところを目撃されて警備員が飛んできます」
A「よかった」
B「幸いだったのはこの警備員は交代したばかりの正義感あふれる新人くんだったってことです。確か二二歳くらいだったかな」
C「いや、レイプ犯を捕まえるのに正義感も何も無いだろ」
B「ところがそうじゃないんですよ。創業者一族の姻族に当たるハゲ部長はこれまで何度目撃されても被害者であるOLの方を責めたてて口を封じ、馴染みの警備会社に袖の下を握らせて事件を隠ぺいしてきたんです」
A「ひどい…」
C「まあ、そういう噂はよく聞くが実際にあるとは…」
B「この新人警備員くんは不埒なスケベ野郎を殴り倒して気絶させ、あろうことか警察を呼びます」
A「いや、普通でしょ」
B「これまでは内々に処理されてきたってこと。ともあれハゲ部長はほぼ現行犯に近い形で逮捕されたんだ」
A「良かった…これで無事解決ですね」
B「ちなみにこの時逃げた同僚のOLは、ハゲ部長に逆恨みされて『お前が警備員に見つかる様に逃げるから俺が逮捕された!』と怒鳴り散らされた」
C「…」
A「…全く意味が分かんないんですけど」
B「自己中心的そのものの発言だな。正義感溢れる警備員くんもクビになった」
A「はぁ?」
B「残念ながら世の中、正義だけじゃ回って行かないんだ」
A「どうしてそうなるんです?」
B「教えてあげるよ。よりによってお得意さんの会社の幹部候補生のレイプを咎めて警察沙汰にしたことで警備会社ごと契約を切られそうになって、代わりにクビを差し出したのさ」
C「…まあ、大人の社会だとあることだ」
A「ひどい…むちゃくちゃじゃないですか」
B「まあね。更に悪いことに結局このハゲ部長は無罪放免になった」
A「えええええっ!?」
C「まあ、そうだろうな」
A「どうしてです!?」
B「犯罪ってのは被害者がいないと成立しない。この場合、監視カメラの映像に現場に残った精液なんかの物証も十分だったんだが、肝心の『レイプされたOL』が煙のように消えちまってる」
A「あ…」
B「俺が元に戻ってるからな」
A「で…!?それからどうなったんです?」
B「ここから先はいい話さ。確かに犯罪にもならず、前科にもならなかったが、レイプ容疑で一時的に警察に拘束されたって事実は重い。更に」
A「更に?」
B「被害者がこれを機会に続々と名乗りを上げてな。あっという間に10件以上の被害者が名乗り出た」
C「自業自得だな」
B「中にはセクハラを苦に辞めたOLやら、辞職に追い込まれた社員もボロボロ出てきた。特に前にも目撃したレイプを力づくで止めた一流大学卒のエリートくん…男な…は会社を辞めさせられてる」
A「意味わかんない」
C「エリートを排除してクズが残る…か。その会社も長くないな」
B「特にこのハゲ部長は聞いたことも無い駅弁大学卒業で、しかもそれも賄賂を積んで強引に出たってもっぱらの噂でね。一流国立大学を卒業した新入社員には特別辛く当たるのは有名でしたから」
A「具体的にどんなことをするんです?」
B「そのエリート氏については俺は入社する前のことなんで伝聞だけど、丸一日怒鳴り続けるとか理不尽極まりないことをさせるとか…色々ね」
C「…魔法少女としてはそういう大人を退治したいんだけどなあ…」
B「しかもこのエリートくんは母子家庭で、奨学金を使って卒業して一流の会社に入ったもんだから辞めるに辞められない。ハゲはそこを突いたんだな。絶対に辞められないからいびり放題ってわけ」
C「腐ってやがる」
A「…許せない…」
B「結局、レイプを力付くで止めたのが決定打になって遂に会社を辞めさせられる。どうも『告発しないんならクビだけは勘弁してやる』という申出を蹴ったらしい」
A「…」
B「真面目一徹だったから辞める直前は爽やかだった入社直後の面影は見るも無残にやつれ果てて円形脱毛症にもなっていたらしい。退職金も無しに放り出されたその晩に駅の階段を転がり落ちて死んだ」
A「…死んだ?」
C「自殺じゃないのか?」
B「分かりません。けど事情を知る人間はみんな『自殺みたいなもんだ』と噂してます」
C「で、そのハゲはまだ健在なわけだ」
B「ちなみに婚約も済ませて結婚間近だったOLの子がレイプされて自殺してます。会社は因果関係を否定してますが」
C「あのさあ。折角魔法少女に変身してるんだから、そのハゲの首をへし折るとかした方がよかったんじゃないか?」
B「まあ…正直俺もそう思いますが…似たようなもんです」
A「え?」
B「遂に外部の人間を巻き込んだことでこれらの悪行も全部リンクしましてね。俺なんかよりずっと文才のある人間が匿名でこれまでの事件を全部因果関係で説明した文書を各所に送りつけました」
A「やったぁ!」
B「多少横暴なことがあっても、基本はエリート…これは社内の順列でって意味です…だった夫の正体を知ったお嬢さま育ちの奥さんは寝込んだあげく責めたてたもんだからハゲに殴られて大怪我をして救急車が呼ばれました」
C「普通に刑事事件だが」
B「女子高生の娘からはムチャクチャ嫌われたそうです」
A「いや…嫌われるっていうか、ウチのお姉ちゃんだったら殺してます」
B「残念ながら高校生の娘さんはそこまで腕っぷしは強く無かったみたいで、こちらも殴られて気絶。どうにか警察沙汰は免れたらしいんですが」
C「段々分かって来たぞ。そのハゲ部長は今、会社でも針のむしろってわけだ」

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【本日DL発売】女体化劇場 短編集その1 少年魔法少女座談会②

①はこちら

C「女の子みたいに可愛い!とか言われてたんじゃないの?」
A「そうらしいんですけど、流石に幼稚園に入る前なんで余り覚えてないです」
B「キミの話ばかり聞いて悪いんだけど興味あるからさ…小学校とか中学でお姉さんの服着せられたりとかは?」
A「ん~まだ二番目の姉とそこまで仲が悪くなってない頃はお揃いのワンピースで写真コンテスト出たりとかさせられたことはあります」
B「マジか…」
A「主に一番上の姉ですね。姉が中学二年生の時にボクが生まれたんで」
C「そりゃ猫可愛がりするパターンだな」
B「羨ましい…美人の…勝手に美人と決めつけてるけど…お姉さんに無理やり女装させられたり可愛がられたりするんだろ?」
C「おいおい」
A「まあ…」
B「今現在はお姉ちゃん幾つ?」
A「二五です。都内でOLやってます」
B「俺と同い年か…」
C「うわ~一番面倒臭い年だ」
A「そうなんですか?」
B「キミも大人になればわかるよ(しみじみ)」
C「もしかして資金援助してくれたりする?」
A「良く分かりますね」
C「社会人として小金持ち始める頃だからね…女装するんだったら何でも買ってあげる!とか言うだろ」
A「…言います」
B「おいおい何だよそれは」
A「でもそんなのしませんよ。高二の時の学園祭も幼馴染の彼女の制服借りたし」
B&C「「はあぁ~!?」」
A「…そんなにおかしいですか?」
B「こんな美少年に生まれて高校時代に彼女の制服借りて公開女装とか前世でどんな功徳を積んだらそんな風に生まれられるんだよ!」
C「女の子はきゃーきゃー言ってただろ」
A「三年生と一年生は面白がってくれてました」
B「…同級生は?」
A「何か反応が微妙でした。…やっぱり男が女装なんて気持ち悪いですよね」
B「…それはさ…キミがあんまり可愛すぎるから『シャレになってない』んで同い年の女の子たちが嫉妬したんだよ」
C「間違いないね」
A「え…でも一年生と三年生は?」
B「一年生は憧れの先輩、三年生は可愛い後輩じゃないか。微笑ましく見るだけだよ」
A「はあ…」
B「ごめんごめん。最初の質問だった。きっかけって何だっけ?」
A「アプリです」
C「アプリ?」
B「じゃあ、マスコットとかは?」
A「いないです。アプリが話しかけてくるので…」
C「携帯…っていうかスマホの?」
A「はい」
B「…なるほど…はた目には女子高生が電話してる様にしか見えないってわけか」
A「そう…なりますね」
C「格好は?女子高生の制服しか着ないの?」
A「一応そうですけど、校外だと私服だったことはあります」
B「私服…一応確認するけど女の子の私服だよね?」
A「はい」
B「マジかよ…見てねえけど間違いなく可愛いだろうな…」
C「そうだな…ちなみにどんな格好?」
A「えーと…髪が長くなって…私服だと露出度は基本低いですね。真夏でもスカートはくるぶしくらいの長さです」
B「清楚系かよ…」
C「最強じゃねえか」
B「ナンパとかされるだろ?」
A「男の人に声かけられるかってことですか?」
B「そうそう」
A「しょっちゅうですね。街中歩いてると基本的には」
C「当たり前みたいに言うね」
A「もう慣れました。あとスカウトとか」
B「何か段々イヤミになってきたな」
C「そのアプリはキミに何をさせようとしてるの?」
A「それほど大きなことではないですね。口論とかご近所トラブルとか些細な行き違いからのいじめとかを解決します」
B「具体的には何をするの?」
A「特には…一緒に何があったかを聞いて話をするくらいで」
B「それで解決する?」
A「けっこうします」
C「何となく分かるな」
B「分かるんですか?」
C「ああ。ムラの外の人間がかかわった方が却(かえ)って人間関係は上手くいくことが多い。そいつに責任を転嫁できるからな」
A「そんなことをアプリも言ってました」
B「え?じゃあ特殊な能力とかもないの?」
A「…ない…ですね」
C「それは凄いな。オレなんて魔法少女で特殊能力持ってなかったらやらんことばっかりだぞ」
B「もうちょっとだけいいかな。その…お互い立場が同じなんで腹を割って話せると思って聞くけどさ…下着とかも女物になってるよな?」
A「なってる…と思います」
C「思います?」
A「見たことないんで」
B「…ちょっと待って。自分で自分のスカートめくって中見たりとかしないの?」
A「?そんなことしてどうするんです?」
B「どうするって…興味あるだろ」
A「いえ…特には」
C「これは大事なことなんで聞くけど、服も自動的に変わるの?」
A「あ、そうですね。アプリにお願いすればその場で」
B「じゃあ着付けの苦労とかはしてないんだな…」
C「男の子なら色々あるだろ。スカートがすーす―するとかブラジャーが苦しいとか」
A「まあ…でもそういうもんでしょ?」
B「…この無欲なところがいいのかも知れないな」
C「確かに…」
B「でもさ、Aくん。キミが女子高生になったら周囲の女子高生に溶け込んだりも出来るよね?」
A「あ、一度なかなか解放されなくてそうなったことはありました」
C「うわあ…」
B「もうピッチピチの女子高生に混ざって自分も女子高生姿…肉体含めて…かあ」
C「極楽だな」
A「あの…ちょっといいですか?」
C「何かな現役くん?」
A「その…『現役』から言わせてもらいますとですね…皆さん、現役女子高生の集団って、それこそアイドルグループの「愛宕坂47」みたいなイメージ持ってますよね?」
C「ああ!あの清純派グループの」
B「みんな可愛いよなあ。俺も写真集持ってるよ。黒石真紀の」
A「…申し訳ないんですけど、ごく普通の女子高生ってあんな感じじゃないですよ全然」
B「…」
C「…それは…ブスばっかりってこと?」
A「そこまでは言いませんけど…」
B「ま、現役としては言いにくかろうな」
A「最近の女の子は言葉づかいも乱暴だし…折角の可愛い制服もだらしなく着崩してるし…。。結構囲まれて怖かったですもん」
C「夢が壊れる様なこと言うねえ」
A「さっきも言いましたけど、家族も女ばっかりだったから別に十七くらいの女の子に憧れたりは全くしないです。女なんて九割はみっともなくてだらしない生き物ですよ。臭いし」
B「そっか…」
A「ウチは家事も全員で分担だったから普通にお姉ちゃんの下着もスカートも畳んでたし。今更特に何とも思わないです」
B「あのさ…これは全年齢対象じゃなくて一八禁対談だから訊くんだけど、Aくんってその…変身後に自分の身体でイタしたりしてないの?」
A「?」
C「自慰行為…オナニーしてないのかって質問だよ」
A「え?できないでしょ。変身中はおちんちん無いし」
B「だからその…おっぱいとか女のアソコとかさ」
A「???くすぐったいだけですけど」
B「(落ち込む)…これは…カルチャーショックだな」
C「そうだな」
A「え?何?何です?ボクそんなにヘンなこと言いました?」
B「あれだよ!『女として』すんだよ!」
A「どうやって?」
B「あ…もういいわ。分かった」
C「ちなみにBくんは?」
B「俺の場合は…Aくんはアプリに促されるまま、Cさんはアレですか?ある日飛来したマスコットに無理やり魔法少女にさせられたんでしょ?」
C「良く分かるな」
B「大抵そういうパターンじゃないですか」
C「まあな。ムカつくんだよあいつら」
B「で?どうです?」
C「悪いがもう中年になってくるとな。幼×のぺったんこな体型なんぞ何とも思わねえよ。思ったらそれはそれで問題だ」
B「じゃあ…」
C「何にもない!大体敵を倒したらすぐに戻っちまう。始終あいつらに監視されてる。何をする余地もねえよ」
A「敵って?」
C「(ためいき)こっちはあれだ。キミのいう「アイドルのステージ衣装みたいな」フリフリの衣装だよ。敵も着ぐるみかおもちゃみたいな連中で、ぶっちゃけ倒す側にも倒される側にも現実味が全く無い。完全に絵空事だ」
B「まあ、よく見ますけどね。そういうアニメ」
C「これで汚職政治家だの法で裁けぬ悪を滅する魔法少女だったりすれば社会性もあるんだろうけどそういうこともないしな」
B「そんな魔法少女イヤですよ…ちょっと見てみたいけど」
C「で?Bくんは?」
B「俺の場合はちょっと特殊で…そもそも「魔法少女」の定義に入るかどうかも怪しいんです」
A「へー」
B「何しろ社内で突然女になっちゃったんで」
C「前触れも原因も無く?」
B「ええ。唐突に」
A「それはビックリしたでしょ」
B「不思議なもんで余りにも状況がムチャクチャだったから逆に冷静になっちゃいましたよ」
C「そういうもんかもしれん」
B「で、気が付いたら服も変わってメイクまでしてた」
A「どうやって気付いたんです?」
B「そこトイレだったんです。しかも大きい方」
A「あ、じゃあ個室から出て鏡を見たんですね」
B「下半身モロ出しの状態じゃなくて終わった後ズボンを完全に履いた後に変身したんである意味助かったよ」
C「どう思った?初めて鏡を見て」
B「…まあ、女に見えるなあって」
A「どういう意味です?」
B「ここだけの話、俺はAくんと違う意味で女装経験があってね」
C「もしかして趣味だった?」
B「いえ、大学の学園祭です」
C「ああ、そういう奴か」
B「ええ。主役は別にいて、こちとらモブだったんですけども…まあ悲惨でしたよ」
A「悲惨って?」
B「俺はキミと違ってごくごく普通の男だからね。スカート一枚履いて化粧したくらいじゃ『気色悪い女装男』が出来上がるだけでね」
A「…はあ」
B「同級生の女子大生も随分頑張ってはくれたけど…二度とゴメンだと思ったね」
C「ブサイクだったんだ」
B「ええ。友人の顔立ちの整った奴なんかは濃い目に化粧してればそれなりでしたけど、全員『声』は男のまんまだし、すぐにボロが出る感じでした」
A「それでそれで?」
B「ん?」
A「会社の男子トイレの個室で変身しちゃったんですよね?それからどうなりました?」
B「どうもこうも…ただ、このままだと痴×ならぬ痴女だからさ。全身の違和感と戦いながら慌ててトイレ出たよ」
C「他の男子社員と鉢合わせはしなかったんだね」
B「幸い…。確かこの日って基本的に会社は休日で殆(ほとん)ど誰もいなかったんですよ」
C「休日出勤か…ご苦労さんです」
B「そしたら胸騒ぎがして…隣の女子トイレに飛び込んだんです」
A「…やっぱりするんならそっちの方がいいから?」
B「いや、胸騒ぎとしか言いようがない。そしたらハゲ部長が同僚のOLの子に襲い掛かってるところだった」
A「え…それって…」
C「…アダルト版ではあるが、魔法少女っぽくなってきたな」
B「これでCさんみたいに魔法のステッキでも出して撃退出来ればいいんですけど、そういう訳にはいかないんですよ。ハゲ部長は社内での権力も大きいし」
A「でも、セクハラどころか暴行現場ですよね?」
B「ここだけの話、ハゲ部長は新入りのOLに限らず何人もレ×プしてるって噂が耐えなかった」
A「そんな…」
C「で、どうなった?」
B「身体が勝手に動いて『まあまあ…その辺にしといてくださ~い』みたいな愛想のいい声を出しながら間に割って入ったんだ」
A「えっと…Bさんが?」
B「そう。まんまOLになってた俺がね」
C「で、どうなった?」
B「結論から言うと…ハゲ部長にレ×プされた」

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【好評発売中】魅惑の闘技場 作.真城悠 絵.蜂密柑 第二章3

「そうですか!」
「しかし、それが本当に可能かどうかはこれから判断します」
「お願いします!」
「では、あなたの能力を見極めましょうか」
「ボクの…能力ですか?」
「ええ。基本的に誰しも固有の能力があります」
「人を…女にしたり女装させたりの?」
「そうです。潜在的に気付いていないだけでね」
 マンガみたいなといえばこれほどマンガみたいな話も無いだろう。だが、目の前で展開され、被害にまで遭っている。疑う余地は無い。
「それは…生まれつき決まっているんですか?」
「う~ん、そう言ってしまうと馬鹿馬鹿しくはなるでしょう。生まれたばかりの赤ちゃんに女性の衣類の知識などあるはずもない。こう考えてください。クセとか傾向…みたいなものです」
「クセですか」
「無くて七癖…と言う通り、人は無意識に何らかのクセがあります。絵を描く方なら『画風』がありますし、プロ野球の投手などは非常に個性的なフォームの方も多い。そういうものだと考えてください」
「…はい」
「その能力を引き出します」
「どうやって?」
「それは企業秘密です。ただ、あなたには先ほど承諾された段階でもう備わっています」
「え?」
「早速私を実験台にしてみてください」
「時田さんを…ですか?」
「遠慮はなさらないで大丈夫です。これでもベテランですから」
 いい年こいた男同士がいざ目の前の相手を女に性転換して女装させようというのだ。
「…具体的にはどうすれば?」
「相手を変化させるイメージを抱いてください。相手がとくに精神的に抵抗しなければすんなり掛かります」
「でも、どんな能力なのかも分からないのに!?」
「だから生まれながらの能力と言ったでしょ?掛けようと思えばあなたの能力が掛かります」
「じゃあ…えい!」
 思わずオレはぎゅっと目をつぶった。
 …ゆっくりと目を開ける。
 時田は何も変わっていなかった。
「…まだ、不慣れなようですね」
「すいません」
「いえいえ。たまにいるんです。そういう方が」
 情けなかった。
「仕方が無い。とりあえずデビューまでのトレーニングの話をしましょう」
「トレーニング…ですか」
「ええ。ショーの側面も強いですが、なんといっても「競技」です。プロレスがショーだから練習しない訳じゃありません。むしろ逆で、しっかり練習していないと怪我をします」
「訓練するんですね」
「ええ。仮に試合中に相手のパンチを一発も食らわないほどの天才ボクサーがいたとしても、メディシンボールで腹筋を打つ練習をしない訳が無い。そうでしょ?」
「はあ」
「正真正銘、一発も打たれたことの無いボクサーが本番で強烈なパンチを初めて食らったら…どうなると思います?」
「…驚くでしょうね」
「最悪、死に至ります」
「そんな…」
「だからある程度慣れておく必要があります」
「…もしかしてそれって、デビュー前にある程度性転換して女装させられることを経験しておいた方がいいって話…ですか?」
「ええ」
「その…そこが嫌なので『全勝煽り』を提案したんですけど…」
「ほほう、最初から食らう予定が無いからそれに備える必要も無い…とこうおっしゃりたい訳ですか」
「いや…そうは言ってません!それに!」
 突然大声を出した。
「観客はあくまでもその…女になったり女装させられたりするところに戸惑ったり恥ずかしがったりするのが見たいんでしょ?…慣れ過ぎるのも興をそぎません…か?」
 しばし沈黙。
「まあ…その指摘そのものは的を射てはいます」
「いますよね?そういう人」
「…もう闘士として契約された方なのでお教えしますが…います」
「そういう人ってどうなるんです?」
「結論から言えば闘士としては引退となります」
「え…」
「おっしゃる通り、女体化も女装も日常となってしまえば一々驚いたりはしなくなっていきます。これでは見ている方は興奮しません。ましてや、対戦前に既にナヨナヨしていたりすれば最悪です。私がこちらのハウスに来る遥かに前のことですが、半ば喜んでしまう闘士もいたそうです」
「女になる…っていうか女にされるのを?」
「はい」
「…気がしれない…」
「女としての幸せや快楽に取りつかれてしまったのかもしれませんね。ともあれ、そこまで行ってしまえば闘士としての魅力はゼロです。基本的には勝とうとしてくれなくては幾ら賭けていないと言っても興ざめです」
「で?どうなるんです?そういう人は」
「さまざまです。ただ、典型的な人物は今もこのハウスで働いています」
「え?」
「次にいらした時にご紹介します」
「はあ」
「いずれにしても一回きりということはありえません。今日ももう一度『ヴェール・アップ』を体験して頂きます」
「ちょ!待ってください!まだ心の準備が」
「甘いですよ?遠藤さん?」
「うわわっ!」
 オレは思わず手で顔を覆った。
 …。
「…?」
 目を開けると…まだ身体も服も変化していなかった。
「…!?これは…ま…さか…」
 目の前で時田が苦しんでいた。
「あの…時田さん?」
「これは…この…能力は…」
 ロマンスグレーの髪が黒く染まり、生き物のようにもぞもぞと動きながら長く伸びて行く。
 深く刻まれた皺(しわ)が伸びて行く。
「あ…あ…」
 オレの方がビビっている。
 時田さんの身体が細くなり、背も低くなっていく。
 黒を基調とした執事の衣装が真っ白に染まって行く。
「もしかして…?」
 膨張した生地がぶわり!と広がる。衣擦れの音が響き渡る。
 結論を言うと、時田は「凛々しい初老の執事」から、「純白のウェディングドレスに身を包んだ美しい花嫁」になってしまった。
 物珍しげに身体をひねって身体を見下ろしている時田。
 動くたびにしゅるしゅると衣擦れの音がする。何という可愛らしい花嫁だろうか。
「…久しぶりに着ました」
 外見通りの可愛らしい声だった。
「時田…さん?」
「はい」にっこりする時田。余裕だろうか。女になっていると自然と女性的な表情も滑らかに出る様になるのだろうか。
「…遠藤さん」
「はい」
「あなたはとても珍しい能力をお持ちのようです」
「え?ウェディングドレス能力なんじゃないんですか?」
 初々しい花嫁が自らを見下ろし、指先まで覆われた長袖と手袋の手でぶっくりと膨らんだ肩の装飾…マトンスリーブ…をつんつんした。
「恐らく違うでしょう。現在のウェディングドレスのトレンドはこういう長袖にマトンスリーブの様に過剰ではなく、胸までを覆って腕も肩も露出するタイプです」
「はあ」
 鈴の鳴る様な綺麗な声だが、確かに時田の口調だった。
「遠藤さんのお年でこの能力を得たならば恐らく今風のデザインになります」
「??」
「どういうことです?」
「恐らく、あなたは対戦相手の能力を無効化し、相手に向かって跳ね返す『リフレクター』です」
「り、リフレクター?」
「はい。数十万人に一人とも言われているそうです。私も出会ったことはありません」
 時田はウェディングヴーケを両手で身体の正面に保持していた。態(わざ)となのか自然とそうなってしまうのか。
「つまり、ボクには独自の能力はなくて相手の能力を跳ね返すだけ…ってことですか?」
「恐らくそうでしょう」
 …正直、ちょっと「つまんないな」とは思った。
「悔しいですが、これならあなたの言う『全勝煽り』もいけるかもしれません」
「というと?」
「仮にあなたの能力が何であれ、毎回勝利するならば、変化後の姿は一定ということになる。しかし、対戦相手の能力を借りる形になるのであるならば、絵的にもバリエーションが豊富になる」
「あ…」
「しかも、多くの闘士は『自分の能力』を受けたことなどありません。だからかなりのベテランでも動揺は必至です。つまり、試合としてとても見ごたえがあって面白い…ということになる」
「ボクは無敵ってことですか?相手の能力が効かないんでしょ?」
 クスっと笑う花嫁…となった時田。可愛い。
「残念ながらそうではないです。きちんと抵抗しないとね。あなたさっき私が『ヴェール・アップ』を仕掛けようとした時身構えたでしょ?」
「…はい」
「しかし、そうでなければ決まります。…こんな風にね」
「?それはどういう意味…っ!?!?!」
 気が付くと目の前の視界が薄く白いものに覆われていた。
「あああっ!?」
 全身を襲う違和感。
 耳たぶをつままれている感覚に妙に寂しい首元。両手の指先までを覆い尽くすストレッチサテンのつるつするべすべの感触…。
「とってもお綺麗です」
 目の前の花嫁がにっこりした。
 思わず見下ろすと大きく広がるスカートが視界を埋め尽くしていた。先日の再現だ。

 男同士だったオレたちは、誰もいない豪奢な広い部屋の中で、女同士となり花嫁姿になっていた。

「あ…あ…」
 また…オレ…女に…女の身体に…!
 しゅるり…と音がして目の前に迫ってくる花嫁。お互いにお揃いのドレスに身を包んだ美女の共演は、華やかでありながらどこか背徳的なものを感じさせる。
 広く広がるスカート同士が大量に接触し、押し付け合ってしゅるるるるっと音がする。
「ちょ!ちょっと!な、何をするんですか…」
 綺麗な声…事実なんだから仕方が無い…でオレが言った。
「お忘れですか?この能力は『ヴェール・アップ』ですよ?相手のヴェールをあげて、誓いのキスをするまでの能力です」
「え…だって…時田さんも女に…」
 口調はマヌケなんだが声が綺麗なので自分の耳でも複雑な気分になる。
 可愛らしく首を振る時田。
 二十代くらいに見える美女ぶりが可愛い。首が細いなあ…と思った。
「関係ありません。この能力は相手が主体です。誓いのキスを受けるのは花嫁ですが、するのは花ムコとは限らないので」
 目の前に迫る時田…であった美女…の頬がほんのり紅いのはほお紅のためだけではないらしい。
「それに、私の能力のコピーなのだとしたらあなたも相手に『ヴェールアップ』をしなくてはなりませんよ?」
「え…」
 オレの折れそうに細くなった美しい形状の腕が目の前の可憐な花嫁のヴェールを上げて後ろに落とした。
 益々接近する花嫁たち。
 ドレスのスカートの押し付け合いは限界に達し、遂にストレッチサテンに包まれたお互いの形のいい乳房同士が接触した。
「「ぁ…」」
 お互いに小さく声を出していた。
 一瞬戸惑い、軽く見つめ合うと、何故かお互いにふっと微笑んでしまった。
 その後、目をつぶり、頭を傾け合って花嫁同士が唇を重ねた。

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【好評発売中】魅惑の闘技場 作.真城悠 絵.蜂密柑 第二章2

 ノート型にしたのは小さくて安かったからだが、帰ってきて四苦八苦してセッティングしてみると大事なことに気が付いた。
 インターネットに接続していないのだ。
 幸いスマートフォンがあったので調べてみると、まず固定電話を契約し、その上で「ワイファイLANルータ」なるものを購入してやっとまともにインターネットが使い放題になるらしい。LANケーブルでもいいが、固定電話を契約しなくてはならないところは全く同じだ。
 ただ、気になっていたこいつの中身を閲覧することは可能だ。
 先日のウェディングドレス写真が満載されていた封筒の中に入っていたUSBフラッシュメモリだ。
 脇のポートに差し込んでみる。
 一応こんなんでもパソコンは職場の仕事で使っている。買ったばかりなので店頭に置いてあるサンプルと同じく次々に立ち上がるコマーシャルみたいなウィンドウがウザいことこの上ないが、一つ一つ根気良く閉じて行く。
 USBメモリの中身は大したものではなかった。
 例の写真のデータだったのだ。
 次々にめくって行くと気絶して倒れたらしいところまであった。…どうやら印刷された写真よりずっと枚数が多いみたいだ。
 …動画もある。
 思い切ってアイコンをクリックして再生してみた。
 クリアな音声で男口調だか女口調だかよく分からない花嫁コスプレ女が妙なやりとりをしている。
 …自分だ。
 自分が映った写真や映像を見ると妙に気恥ずかしくなったりするが正にそれだった。
 その上、その「自分」は花嫁衣装姿の上、妙に甲高い声で喋っているのである。
 その時、スマートフォンが鳴った。

「また来てくださると確信しておりました」
 時田がうやうやしく出迎えてくれた。ここは「ハウス」である。出迎えの高級車に乗せられてまたやってきた。
「…どうやら支度金を有効活用して頂いているみたいで有難うございます」
 全部把握されているだろうことは予想がついていた。
「封筒をどうも」
「よく撮れていたでしょ?」
「…」
 覗き見の最たるものだ。
「お返事をお聞かせいただけますね?」
「出来たらもう少しだけお話を聞きたいのですが」
 今日は普段着である。
 といってもオレの経済状況なので二本しかない外出用のズボンとチェックのシャツくらいのものだ。ネクタイのスーツは二日に一度は自分でアイロンを掛けている。お金が使えないなら手間と暇を使うしかない。母の教えだ。
「困りましたね。当ハウスの情報はこれ以上は、「入る」と決意されていない方にお見せすることは出来ません」
「なら一般論でいいです」
「一般論ですか」
「ええ。先日は定期的な収入の目安について結局お答えいただけなかったのですが」
「そういうことなら答えは同じです」
「いえ、そうじゃなくてこちらがする質問に答えて頂きたいってことです」
「結構。答えることが出来る質問なら答えます」
「仮に定期的にこちらのハウスで指定された回数戦ったとして、報酬は月払いですか?」
「いえ。その日の内に支払われます。銀行振り込みの場合は残念ながら午後三時を過ぎていた場合、翌日の処理となりますが、「現金」でその場で手渡しする形でのお支払いも可能です」
「そのお金をこちらにお預けすることは可能ですか?」
「…と、いいますと?」
「別に指定銀行とかでも構わないんですが、要するに管理して欲しいんです」
「もう少し具体的にお願いします」
「オレに何らかの形で報酬が発生した場合、月の決められた日に振り込んで下さい。そして仮にその金額が三〇万円を超えていた場合、振り込むのは三〇万円。それ以上の金額はプールして頂きたい」
「ほう…」
「仮に三〇万円に届かなかった場合はプール金より補充してください。プール金以上のお金はいりません」
「…なるほど。実に堅実だ。定期収入の形にしたいということですね」
「そして支払いは、仮にボクがこのハウスを引退したとしてもプール金が尽きるまで続けてください」
「…年金と言う訳ですか」
「ええ。ボクは用心深いのでね。仮に月に一億の収入があったとしても一度に手に入るのは三〇万円」
「遠藤さんはもうすぐ二四歳ですね」
「はい」
「仮に八〇歳まで行きたとしてあと五六年。六七二か月。約二億円です。仮に約二億円以上稼いだとなるとそれ以上については如何なさいます?八〇歳以降にお使いに?」
「それはその時考えます。毎月の月額を少しずつ増やしてもいいだろうし」
「なるほど。…可能か不可能かでいえば問題なく可能です」
「そうですか。…あともう一つ」
「何でしょう」
「時田さんは闘士としてこの闘技場で生き残るコツは決して勝利し続けることだけではないとおっしゃいました」
「…まあ、いいでしょう。似たようなことは言いました」
「ということは、ずっと勝ち続けることは可能ですね?」
「?おっしゃっている意味が分かりかねますが…」
「悪いんですが、ボクはむざむざ負ける気はありません。先日は時田さんに不覚をとりましたけど、あれは何も知らなかったからです」
「…勝ち続ける…というのは?」
「そのまんまです。負けないと」
「不可能ですね」
「そんなことは無いでしょ?」
「あなた将棋はご覧になりますか?」
「いえ…」
「一流棋士の多くは育った地域一円の将棋の腕自慢の大人たちをバッタバッタとなぎ倒してきた天才たちの集まりです。しかしプロとなって戦うのもまた同じような天才たちです。一流棋士の多くは勝率は五割と少しです。六割もあれば伝説的な大天才です」
「…」
「あなたが闘技場において無敗というのは、プロ野球の試合で一年間一敗もしないで優勝すると言うのに等しい。いや、バッターとして投げられた投球全てを安打にすると言っている様なものだ」
 時田は軽くため息をついた。
「余りナメた発言はなさらない方がよろしいでしょうな」
「…もしもこちらで行われているのがガチの対戦だったならそうでしょうね」
「…というと?」
「必ずしも強いから人気がある訳じゃないとおっしゃいましたね」
「ふむ…」
 少し考え込む時田。
「要するにプロレスである…筋書きがあるとおっしゃりたいんですね?」
「一応そうです」
「それ以前にプロレスについて軽くレクチャーして差し上げた方がよさそうだ」
「…はい」
「プロレスの試合をご覧になったことは?」
「それほど熱心にはないです」
「プロレスラーについてどの様なイメージをお持ちですか?」
「そりゃ大きくて猛々しくて逞(たくま)しくて筋肉質で強そうな感じですかね」
 我ながらバカみたいな答えだ。
「まあ、言わんとすることは分かります。概(おおむ)ねそんなイメージでよろしいでしょう」
「はい」
「自分がプロレスラーになったイメージをしてみてください。相手に華麗に技を掛け、投げ飛ばしたり殴り倒したり、蹴り飛ばしたりといった」
「…はい」
「恐らく今も小学校…もしかしたら中学校でも…行われている『プロレスごっこ』においてはそういったイメージでしょう」
「そうですね」
「ただ、それは全体の半分しか活写していません」
「…」
「プロレスラーとは、『技を掛けたり、掛けられたり』する職業なんです」
「?それはそうでしょ」
「プロレスは相手の技を受け、最大限にダメージを受けた演出をし、会場を盛り上げなくてはなりません。単純な技…ボディスラム一つとっても「掛けられる側」の協力なくしては成り立たないのです」
「…お互いに演技しているって話は良く聞きますが」
「いや、あなたは何も分かっていらっしゃいません。どれほど常勝無敗のチャンピオンであったとしても…いや、常勝無敗のチャンピオンであればなおさら、相手の技は最大限に「受ける」ものなのです。というより、「受け」の下手な一流レスラーはいません」
「…」
 益々お芝居みたいだな…と思った。
「あなたは相手の技を全く受けずに勝ち進みたいと言っているのも同じです。そんな自分勝手は許されません」
「…なるほど」
「これでよろしいですか?」
「ハッキリ言ってボクの心はもうほとんど決まっています」
「ほう」
「お願いしたいと思っています」
「参戦して頂けると」
「ですが、そこで時田さんにお願いがあります」
「…何でしょう?」
「時田さんってボクの言ってみればマネージャーみたいな存在なんでしょ?」
「…何故そう思われます?」
「あんまりにも特殊ですからね。どうせ引き入れるなら最初のナビゲーターがその後もお世話した方がいい」
「…」
「それにボクシングやプロレスみたいな競技なんでしょ?」
「…はい」
「プロレスはともかくボクシングには必ずセコンド必要だったはずです。そうですよね?」
「よくご存じで」
「何しろボクは全く右も左も分かりません。時田さんにアドバイスを頂きたいんです」
「…そこまで理解しているんなら、マネージャーが世話をするのは当然…という結論になりませんか?」
「なります。だからボクはアングルを持ち込みたい」
「…もしかしてプロレス用語を学習なさったので?」
「付け焼刃ですけどね」
 アングルとはプロレス用語で「仕掛け」「仕込み」みたいな意味だ。「疑惑の判定」などをわざと演出し、「遺恨試合」として盛り上げたりする。「筋書き」みたいなものである。
「ポっと出以下のあなたにどんなアングルが仕掛けられるんですか?」
「先ほど時田さんは一流レスラーほど相手の技を受けるものだとおっしゃいました」
「いかにも」
「しかし、この闘技場における戦いでは相手の技を受けたら即敗北です。ですよね?」
「…続けて」
「ボクの分析するところだと、この闘いで何より重要なのは『関係性の変化』だと思います」
「ほう」
「単に有象無象の男が女になって女装させられてもそれだけじゃパンチが足らない。そこには必然的に「演出」が必要…そうですよね」
「演出」
「『試合』を観戦している方々が、どちらかの勝敗に賭けている訳ではない…と言う話は既に承りました。要するに観客の皆さんは男が女にされ、女装させられ…場合によってはそれ以上のことをさせられるのを見るのが三度のメシより好きな方々ばかりだ…そうでしょ?」
「…まあ、そうした理解でよろしいでしょう」
「だったらボクが参加する試合は『その様な展開』は間違いなく起こります。観客を退屈させることはありません」
「ほほう…必ず勝つと」
「はい」
「大した自信でいらっしゃるが、その根拠は?このロートルの不意打ちもかわせないあなたにそれだけの素養があるとは到底思えませんが」
「…それを時田さんと一緒に考えて欲しいんです」
「私が?」
「まず、試合そのものは決して退屈はさせません。どちらか一方がその…女にされて女装させられる展開は必ず起こる訳で…。そしてその調子で勝ちまくれば観客は必ずこう思います『いつかこいつが被害に遭うところが見てみたい』ってね」
「ふむ…」
 考え込む時田。
「『全勝対決』煽りってわけですか…なるほど」
「ボクなら一度も負けたことが無い奴が何時(いつ)負けるかには注目して目が離せないと思います。そうでしょ?」
「…どなたかから入れ知恵されたりしましたか?」
「まさか!自分で考えましたよ」
 かなり長時間考え込む時田。
「驚きましたね。アイデアとしては抜群に面白い」
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【好評発売中】魅惑の闘技場 作.真城悠 絵.蜂密柑 第二章1

第二章

 オレは忙しく働いた。
 社長にとりあえず目的地に行ったことくらいは報告しなくちゃと思ったのだが、これだけでかい会社の社長ともなると内部の人間が会うのもアポイントがいる。
 思い切って受付に話しかけてみた。
「樋田社長はいらっしゃいますか?」
「はい?樋田でございますか?」
 型通りの答えだ。メイクが似ているのか先日の社長秘書の美人によく似た受付の美女が答える。
「事務課の遠藤です。先日社長に呼ばれた件で…」
「えっと…事務の遠藤さん…アポイントは…」
「何もないです」
 少し考えた受付美女。
「…どういうこと?」
「…え…何が?」
「社長なら出張で一週間は帰らないわ。週一の朝礼聞いてなかったの?」
 同じ社の人間と分かった瞬間タメ口だ。
「…変なアポ取らせないでくれる?あたしが怒られるんだけど」
「そう言わずに。携帯番号伝えてもらうだけでも」
「あんた正気?社長にあんたに電話しろっての?」
「でも、社長に呼び出された件だから…」
「(ため息)一応訊くけど、仕事の話でしょうね?」
 どう考えても「あれ」は社長の趣味だろう。
「プライベート…かな」
「社長と平社員がプライベートで一緒に釣り仲間だったりするわけ?映画の見すぎよ」
「もういいよ。直接社長室に行くから」
「わーったわーった!…秘書課の…社長秘書のケイコがあたしの友達だから…一応そんな話があったって伝えとくわ」
 あの美女は「ケイコ」さんというらしい。
「助かります!」何故かこっちは敬語でペコペコしてる。
「(小声で怒鳴る)いいからどいて!次のお客さん!」
「あ…」
 直(すぐ)に後ろにならんでいたビジネスマンが前に出て来る。
「いらっしゃいませ」
 あっという間に受付スマイルにも戻って声も一オクターブ高くなってやがる。女は怖い。…もっとも、そのこの世で一番不可解な存在にこの間このオレがなったわけだが…。

 そのまま数日が経過した。
 平社員としては下手に動けない。
 仕方が無くその日の業務を淡々とこなす。
 しかしどうしてもあの夜のことを考えてしまう。
 本当にオレが女になってウェディングドレスなんて着たんだろうか…。こういう風に言葉にして考えれば考えるほど馬鹿馬鹿しくなる。
 仕事は毎日夜八時近くまで続いた。
 ドアトゥドアということでいうなら仕事が終わってから自分の部屋にたどり着くまで長いと二時間は掛かる。途中でコンビニに寄って夕食を準備したりするからだ。
 母が死んでからというもの、学生時代には当たり前だった自炊もキツいものがある。こんな時間に帰宅するともなればなおさらだ。
 四千円という大枚をはたいて買った米一〇キロを少しずつ炊いては適当なおかずと共に食べる日々だ。東京のど真ん中に住んでいて月に手取り一二万円では当然そうなる。家賃が四万円もするのだ。
 社長からも、「ハウス」からも連絡は来なかった。
 名刺にはなけなしの金で契約させられたスマートフォンの電話番号が入っていたはずだが、履歴には何も残っていない。
 …本当にそんなところって存在しているのだろうか?
 あれだけ体験しておきながらまだ信じられない自分がいた。
 だが…手元にある通帳を睨む。
 そこには確かに五〇万円の文字が刻まれている。
 手元に一万円を残し、四九万円を貯金した。直後に諸々(もろもろ)の引き落とし日がやってきたため、結果として五〇万円の額面となったのだ。
 つまり、オレは毎月たった一万円の余剰金でやっと生活していたってことになる。
 スマートフォンを充電器に差し込んだ。
 ウチにはテレビもパソコンもない。このスマートフォンが世界を繋ぐ唯一のデバイスだ。
 玄関と台所、そして自室のたった3部屋しかないこの部屋から脱出できる気配も見えない。
 六畳の部屋にはゴミ捨て場から拾ってきた炬燵(こたつ)台と、質屋(結構今も営業してる)流れの炬燵(こたつ)布団、そして万年床がある。
 そういえば…。
 オレはあの日のみやげをとりあえずぶち込んでおいたコンビニの袋をかき分けた。
 …あった…。
 茶封筒だ。
 確か「思い出したくなったら開けろ」みたいなことを言っていた気がする。
 ハサミを出しているのももどかしく、ノリをべりべりと剥がした。
 …写真?
 逆さに振ってみる。
 そこから先は驚異の洪水だった。
 出てきた写真には純白のウェディングドレスに身を包んだ美しい花嫁が「これでもか」と映っていた。そしてその舞台は…あの部屋だ。大きな鏡もある。鏡の内側にカメラを設置したとしか思えないアングルのものもある。
 そして…時田にヴェールを上げられてキスをする瞬間まで激写されている。
 全部で三〇枚はあっただろうか。
 あっという間にテーブルの上は写真で埋め尽くされた。
 …なんてこった…やっぱりあの話は本当だったんだ…。
 ここに映っている花嫁は自分だ。間違いなく。
 そしてあの顔…時田も映っている。
 ということはあの部屋は隠しカメラだらけだったってことか…。いや、というよりも人が女にされたり女装させられたり…女の女装ではある(?)が…するところを観察して楽しむ連中が、言ってみれば「最初に女にされる」美味しい瞬間を逃す訳が無いのだ。
 とはいえ、自分の元の姿は一枚も映っていない。
 仮にこの写真を他人に観られたところで、少なくとも同一人物認定などされないだろう。されるわけがない。
 …もしかして、オレがそれなりに化粧映えするツラだったから選ばれた?ってことか??
 背筋がブルっとした。
 冗談じゃない。やめてくれ。
 とはいえ、タニマチ…会員と「闘士」は直接顔を合わせることも出来ないというじゃないか。…全くどういう関係なんだよ…。

 オレは休日だった次の日、秋葉原に来ていた。
 五〇万円は確かに大金ではあるが、六〇〇万円の借金を持つ身としては「焼け石に水」だった。
 恐らく必要になるのでパソコンを買いに来たのだ。
 結果的に性能がそれなりにいいらしいノート型を買った。一五万円もした。今後のことも考えてディスプレイはなるべく広めにした。
 いかんな…この調子だとあっという間に無くなってしまう。
 ほぼ入ったことも無いファーストフード店で風景を見ながらぼんやり考えていた。子供の頃は金が掛かるので買い食いも外食も殆(ほとん)どしたことが無かった。なるほどこうして数百円で済ませられるなら便利なものだ。「金で時間を買う」ってなもんだ。
 貧乏ヒマなしとはよく言ったもので、こちとら「時間で金を買う」みたいなことばかりしていた。
 オレって結局どうしたいんだろう…。
 今の会社は毎日日付けが変わるほど働いてる様な部署ではないので、ある意味生活は楽だとも言える。給料は手取りでたったの一二万円だが、特に使い道があるわけでもない。趣味らしい趣味もないし、職場環境的に飲み会も無い。妻子だっていない。酒もたばこもギャンブルもやらない。
 風俗に通う趣味も無ければ「ソーシャルゲーム」の課金をする趣味も無い。
 五〇万貰ってるなんて奴は流石にオレよりはモーレツ社員だろう。でなければ困る。
 オレは「可能な限り贅沢で高い夕飯を一回くらいは食べてみよう!」と勝手に思った。
 「吉田家」の牛丼の大盛りと卵、みそ汁で合計七〇〇円だった。
 七〇〇円だなんて、二日分の食費だ。それをたった一食で使うなんて…。
 だが、確かに美味かった。
 オレはその後特に何をするでもなく、生来の貧乏性もあってかなり重いノートパソコンを箱ごと持って帰った。
 持って帰る間中もずっと考えていた。

 金のため…なのか?

 どういう巡り会わせなのか分からないが、オレはとにかく社長…というかあの「闘技場」に選ばれたらしい。馬鹿馬鹿しい話ではあるが、現実にこうして信じられない様な買い物も出来た。あの金が身の回りに存在することそのものは事実らしい。
 本当に金の為に魂というか男としての尊厳を売り渡すみたいなことをしてもいいんだろうか?
 とはいえ「金の為に働くのが卑しい」訳が無い。金を得なければ干上がってしまう。
 ただ、それでも限度はある。
 表現が難しいがヌードグラビアみたいなものなんだろうか。ポルノ俳優とか。
 もしも時田の能力が「ヴェールアップ」などという馬鹿馬鹿しいものであると本当にするならば、キスをした段階で終わりということになる。…犯される危険性は無い…か。
 男の尊厳以外に危険性はなさそうだ。
 花嫁姿の女装にしても、俳優…役者なんて日常的にやってるといえなくもない。お笑い芸人だってそうだろう。
 そう考えると益々どうと言うことは無いとも思えてくる。

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【DLsitecom版新発売】魅惑の闘技場 作.真城悠 絵.蜂密柑 第一章2

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 数分後、オレの目の前で展開した狂気のパノラマによって「リフトアップ」の全容が分かった。
 背が高くがっしりした「新人」は、何故かサラリーマンの様なスーツ姿の哀れな子羊に対して恐らく「能力」を使用した。
 そこから先はさっきの自分に起こったことの再現だった。
 ただ違うのは、被害者が…こうして書くのも馬鹿馬鹿しいが…白銀のチュチュに身を包んだ美しきバレリーナとなってしまったと言う点だ。
 身を捩(よじ)って嫌がる気の毒なバレリーナだったが、徐々に優雅な動きになっていき、いつの間にか股間がもっこりした男性バレエダンサーの格好をしていた「新人」に導かれる様に抱かれ、手の中で回転させられ、そして「持ち上げ」られた。
「リフトアップ…」
 意味が分かった。これは「相手をバレリーナにし、一緒に踊って「持ち上げる」」と言う能力なのだ。だから「リフトアップ」。
 何という馬鹿馬鹿しさだろう。
 オレは頭を抱えた。
「つまむものをお持ちしましょうか?」
「…それはもういいんで、どうか説明して頂けませんか?」
「…結構。本日のイベントはこれにて終了です。お部屋の中央にどうぞ」
 そこにはさっきの全身鏡があったので行きたくなかったが、仕方が無い。
 鏡に差し掛かるとドレスの花嫁が見えそうな気になるが、実際にはしょぼくれたサラリーマンが映っているだけだった。
「…」
「気になるなら目に入らない向きにしましょうか」
「お願いします」
 流石は執事だ。ゲストの気持ちを良く察する。
 時田は部屋の中央付近に向かい合う様に配置され、間に低めのテーブルを挟んだ席に座った。執事がゲストと同じように座っている構図は余り観慣れず、新鮮だった。もっとも、執事そのものも見慣れない物ではあったが。
「なんなりと。知っている範囲でお答えできる質問にはお答えします」
「…これって何なんです?」
「質問が漠然となさっていらっしゃいますね」
 余裕の笑みを浮かべるロマンスグレー。
「まあ、お気持ちは良く分かります」
「はあ…」
「私どもも初めての方に一から説明するのは中々難しいために、様々な説明方法を試してはいます」
 プレゼン資料でも出て来そうだった。手元には「リフトアップ」の文字のあるパンフレットがあることはあるが。
「結論から言えば、プロレスと同じショーです」
「プロレス?」
「ええ。プロレスです。一応「ボクシング」に対する「プロボクシング」があるように、「レスリング」に対する「プロ・レスリング」ということになってはいますが、ご存じの通り独自の進化を遂げた全く別のスポーツ…いや、ショーです」
「…じゃあ今のもショーなんですか?あのバレリーナとかも」
「ある意味に於いてはそうです」
「結末も予(あらかじ)め決まってると」
「そこが問題でしてね」
「…はあ」
「ショーであるということは入場料を支払っていただくことになっております。そして当然『賭ける』ことも可能です」
「…賭博であると」
「はい。ご存じの通り我が国は「競馬・競輪・競艇」の公営ギャンブルと「富くじ」…所謂(いわゆる)「宝くじ」ですな…以外の賭博は法律で禁じられています。つまり、我々のこの集まりはその点において天下に公明正大とは言い難いものであることは否定しません」
 闇カジノみたいなものってことか…。
「ただし、あくまでも勝敗に賭けるのは余興です」
「そう…なんですか?」
「はい。ここのお客様は賭けることで私財をより増やそうといった方はまずいらっしゃいません。ですので天井もありますし、倍率も一定です。個人間の勝負も禁止させていただいております」
「それはどうして…」
「勝敗にばかり気を取られてしまいますと本質を見失います。それこそ身代を失うほど賭けられてしまいますと、対戦相手に直接危害を加えるといった事態に発展しかねません」
「勝敗が問題じゃないってことは何が目的なんですか?」
 確かにそうだ。
 よく映画何かで見る「地下格闘場」みたいなのが本当にあって、そこの戦士の生死に賭けていたとすれば相当血なまぐさい話になるだろう。
 きっとお世辞にもガラがいい客層ではあるまい。それに、現実の「相撲」ですらあんなに怪我人が続出してしょっちゅう横綱が場所を休むのである。
 リアルな殺し合いなんぞやった日には死屍累々であっという間にそんな戦士の人材なんぞ枯渇してしまうだろう。
「あくまでもショーです。見世物」
「…ヴェールアップとか…リフトアップがですか?」
「はい」
「対戦相手の…男を無理やり女にして持ち上げたりキスしたりする戦いを?」
「お察しが速くて助かります」
「…見てどうするんです?」
「楽しむんです」
 そんなの楽しいのか!?と言いかけたが、確かに背徳的な魅力がある。
「お客さんはみんなこういう部屋で観戦するんですか?」
「ははは…残念ながら違います」
 余裕の笑いだった。
「それですとお客様は最低でも十数人程度になってしまいます。こちらのリングはそれほど広くありませんからね」
 確かに。
「身元の確かなお客様が…正確な人数は申し上げられませんが…かなりいらっしゃいます」
「お金持ち…なんでしょうね」
「お金持ちの定義にもよるかとは思いますが…一般的に言えばそうでしょう」
「中継で見ているわけですか」
「録画派の方も多くいらっしゃいます」
 男が女にされ、ウェディングドレス姿にされ、唇を奪われるところとかバレリーナにされて持ち上げられるところを大金払って見物してるってのか。
「皆さんの多くは贔屓の闘士を見つけてお金を支払ったりします」
「それは…お小遣いってことですか」
「そういうことになりますが、直接会うことは禁止されています。また手紙などでレスポンスを得ることも出来ません」
「何にお金を払うんです?賭けは制限されてるんでしょ?」
「少なくとも勝敗ではありません。多少の『お小遣い』を支払ってしまえば、勝ち分などあっという間に吹っ飛ぶでしょう」
「じゃあ何で」
「(苦笑して)先ほども申し上げましたが、こちらにいらっしゃるお客様はもうお金は十分すぎるほどお持ちです。そしてこの世の大半の遊びはし尽くしました。今更数万数十万といったお金を惜しむ方はいらっしゃいません。冷たい言いかたですが庶民とは『金銭感覚』が全く違います」
 益々分からなくなった。
「闘士の皆さんのプライバシーは完全に守られます。もしも会員や闘士から漏れる様なことがあれば…いや、ありえません」
「…多分次のが一番大事な質問なんですが…」
「どうぞ」
「どうしてボクなんですか?」
 時田が立ちあがって歩き始めた。
「…気になりますか?」
「そりゃね」
「立ちいったことをお伺いしますが、遠藤さん、あなたお給料は月に幾ら貰っていますか?」
「え…」
「手取りでいいです。大雑把で結構」
「…それ、何か関係あるんですか?」
「話の流れとしてです。大丈夫、決して笑いません」
「大体一二万とちょっとです」
「その金額が手取りとすれば…総額は恐らく一五万というところでしょうね」
「確かそんな感じです」
 余り賃金明細を凝視はしない。ただ、何とか保険料だの所得税だのと細かい名目で沢山引かれて、額面から一~二万も減るのが驚きだったことは良く覚えている。
「賞与(しょうよ)は?」
「え?」
「所謂(いわゆる)「ボーナス」です」
「夏と冬に一月分くらいですかね」
「ふむ…」
 顎に手を当てて考えている時田。

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【DLsitecom版発売】魅惑の闘技場 作.真城悠 絵.蜂密柑 第一章1 

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第一章

「おい遠藤!」
 いつもの様に自分の仕事部屋に行こうとしたところ呼び止められた。
「社長が呼んでるぜ。社長室だ」
 同期の石川だ。研修の際に席が隣だったので社内では唯一タメ口で話せる間柄だ。
「…社長?」

 会社の中で歩いたことも無い棟の深部にどんどん入って行く。
 いつも見かける灰色の光景とはちがって、誰が来てもいいようにまるでショウルームだ。ホコリひとつ落ちておらず、あちこちの壁に落ち着いた照明と骨董品みたいなものがディスプレイしてある。これが一流企業の社長室への道のりか…。
「事務課の遠藤です」
 社長室手前には「秘書室」があった。
 当たり前だが顔とスタイルと若さ…要は見た目…で選ばれる秘書課は美人揃いだ。正に高嶺の花って奴だ。
 そこを通過し、ノックの後ドアを開け、ハキハキと名乗った。
「おお。まあ掛けたまえ」
「失礼します」
 促していた秘書の美人が笑顔で会釈をする。ドアが閉まった。
 案内された「社長室」は広く、中央に立派なソファがあり、テーブルを囲み、広いデスクがあって、壁には何だか分からないけどどっかの風景画みたいなのが掛かっている。
 妙な表現だが「典型的な社長室」と言う感じだ。
「遠藤くんは…」
 向かいに座った社長が口を開きかけるタイミングで、秘書が緑茶をお盆に二つ乗せて入ってきた。
「どうぞ」
「…どうも」
 少し距離があるのにいい匂いがする。
 ただでさえ美女なのに美女オーラも半端じゃない。社長ともなればこんなのと一日顔を突き合わせられるのか…。
「鈴木くん…内密な話なので呼ぶまで入らない様に」
「はい」にっこり。
 ドアが閉まった。
「ま、遠慮なく。コーヒーが良かったかもしれんが私は緑茶党でね」
「あ、私も緑茶好きです」
 適当なことを言う。
 社長は年齢七〇と聞いている。
 年相応よりも若干若く見えるというくらい。苦労して就職を決めた、知名度はそれほどないが一流企業の社長らしく「財界人」に片足突っ込んでいて、しょっちゅう会費が万単位のパーティに呼ばれて行く。
 実に貫録のある人だった。
「遠藤くんは幾つになったね?」お茶をゾロゾロ飲む。
「…今年の誕生日で二四です」
「若いね」
「…あ、有難うございます」
 この場合は「有難う」でいいのだろうか。良く分からない。
「立ちいったことをお伺いするが、お母様は」
「あ…就職を決めた後亡くなりました」
「それはご愁傷様で」
「有難うございます」
「在籍中なら会社から香典も出したが」
「あ、大丈夫です。もうすべて終わっておりますので」
 この場合は通夜や葬式が終わっていると言う意味だ。
「母子家庭できょうだいもいなかったと聞いているが」
「…はい」
 少ししんみりした。
「あ、でも一流企業に就職が決まって本当に安心してました。有難うございます」
 別におべんちゃら言う訳ではないが素直な気持ちだった。
「そうか…。今の仕事はどうかね?」
「やり甲斐を持って毎日やらせていただいています!」
 これは少しウソだった。
 大きな会社なのだが、ここまで大きくなると事務に掛かる負担もかなり大きくなる。
 こちとら日がな一日朝から晩まで「書類書き」だ。
 それも、言ってみれば「書類のみを書く部署」の総元締めみたいなのから次々に送られてくる書類の転記チェックとか清書とか、要するに社内での「下請け」みたいな部署だ。
 営業みたいに個人成績でのし上がったり、広報宣伝部みたいに華々しくマスコミ応対をしたり、宣伝素材を企画・製作して一流クリエイターやモデルに出会ったりといったクリエイティブな部門ではない。
 今どき大企業が出自の差別をするとは思えなかったが、ごくごく普通の偏差値の大学をごくごく無難に卒業しただけの人間だけに、社内の下請けの下請けみたいな部門に押し込められた形だ。
 それでいてアホみたいに忙しいこともあるかと思いきや、半日は待機になったりする。やっと、決算時期だとか忙しい時期の目星は付く様になって来たが、誰も教えてくれる訳じゃない。全く見通しの付かない窓の無い部屋での生活は、油にまみれたりはしていないが大げさに言えばチャップリンの「モダン・タイムス」ってところだ。
「今日はちょっと君に頼まれてもらいたい」
「はい!どんなことでしょう」
「軽いお使いだ。場所は運転手が知ってる」
「…運転手さん?…ですか」
「ああ」
 送迎付きってこと?たかが平社員のお使いに?
「今日は直帰していい。きみの上司には私から言っておく」
「あ…はい」

 それが来て見ればこのザマだ。
 やっと解放されたオレは気が付くと仰向けに寝転んでいた。
「…あ…」
 見知らぬ天井…ではある。が、気を失っていたらしい。
 …ちくしょう…なんて夢だ…。
 いきなり身体を女にされて…それも目の前でムクムク変形までして…その上ウェディングドレスを着せられてキスされる?…バカバカしい。マンガやアニメじゃあるまいし、男が女になってたまるか。
 …?
 何やら耳の感触がおかしい。
「…!?ッ!」
 オレはまたイヤな予感がして、ガバリ!と一気に上半身を起こした。
「あああああっ!!」
 目の前が真っ白だった。
 白く光沢を放つ生地の洪水だ。これがたった一着の服の分量だというのか!ヤローの適当な服の一〇倍はあるぞ!
 見下ろすと目の前に「胸の谷間」があった。純白のレースに縁(ふち)どられて。
 オレは未だにウェディングドレス姿のままだったのだ。勿論、身体だって女のままだ。
「お気づきになられましたか?」
 聞き覚えのある声だ。
「時田…さん?」
 なんて可愛らしい声なのだろう。この声だけでも理性が吹っ飛んでそのまま押し倒したくなる。自分自身の声なのに。
 妙なもので「自分で自分の姿」を視認することは出来ない。恐らくは今自分の顔はうっとりするほど美しい花嫁メイクがなされているはずだが、それこそゾンビメイクさせられていたとしても鏡を見ないことには分かったもんじゃないということになる。
 …何故か反射的にそんなことを考えていた。
「ははは…大丈夫ですか?本戦を前に『お姫様抱っこ』まで体験して頂くことになってしまって恐縮です」
 …そう言えば何となくその感触に覚えがあるぞ。
 腋の下に突き入れられ、膝の裏あたりを持って運ばれている『身体の感触の記憶』が。
 お、お姫様抱っこだって…!?男のオレが!?
 かあっと顔が赤くなった。
「もっと楽なお姿になって頂くことも考えたのですけどね。残念ながらこの能力はそれほど万能と言う訳ではございませんので」
 「能力」?「能力」といったのかこのジジイは。
 場所はどうやら先ほどの部屋らしかった。
「まあ、とりあえず一通りの説明をいたしましょう。現在ならご理解いただけるでしょう」
「…」
 オレは全身の感触に注意を払った。
 何もかも分かる訳では無かったが、確かに男性器は無い感じがする。そしてクラシックでかつゴージャスなウェディングドレスが目の前に広がっている。
「結論から申し上げますと、私…時田…の持つ能力『ヴェールアップ』は対戦相手のヴェールをめくり上げて唇を奪うと言う能力です」
「…」
「一口に『ヴェールをめくり上げる』といっても、対戦相手にはそれに相応(ふさわ)しい状態になっていて頂かないといけません。何しろ『誓いのキス』ですからね」
「…」
 オレは余りのアホらしさに絶句していた。な、何じゃそりゃ…。
「対戦相手には美しい女性の肉体になって頂き、ウェディングドレスをお召しになってもらいます。というより、それを含めての能力ということになります」
「それが…『ヴェールアップ』」
「その通りです」
 確かにこの話だけ聞いたんじゃ、ヨッパライの妄想以下だろう。
 だが、現実にその「毒牙」に掛かり、慣れぬ胸の谷間を控え目に露出させられ、男の身で嫁ぎ前の生娘みたいな恰好をさせられている。信じないわけにはいかない。
「…それは分かったんですけど…だから何なんです?」
 オレは自分がこのデタラメな状況の真っただ中にいるというのに奇妙に落ち着いていることに気付いた。
「流石ですね。随分落ち着いていらっしゃる」
「…」
 何故かは分からない。ただ、明日をも知れないこの状況では泣いたりわめいたりパニックになったりしそうなものではある。
 昔からオレはこういう時、逆に落ち着いてしまう方ではあった。鳴いてわめいてどうにかなるのなら幾らでもそうするが、恐らく今は何の意味もない。
「安心してください。その状態は一定時間が経過したら元に戻ります」
「!!」
「安心して頂けたようですね」
 この化粧の上からでも分かるほど顔に出ていたらしい。これは仕方が無い。
「じゃあ何故こんな…」
 スカートの分量が物凄くて、ソファからはみ出ている。どうやらスカートを膨らませるための素材が入っているらしく、盛り上がって全く落ち着かない。
「そのままの方がご理解が早いかと思いましてね」
 確かに、元に戻ってしまえば「夢だった」で片づけられそうだが、現にこの有様ではどれほど荒唐無稽な話でも信じざるを得ない。
「…時田さんの技が『ヴェールアップ』なんですよね?」
「いかにも」
「こんなことが出来る人が他にもいるってことですか?」
「その通りです」
「どんな人たちなんです?それは一体何のために!?他の人の能力ってどんなのがあるんですか!?」
 にこりと執事スマイルを崩さない時田。
「一度におっしゃられても一つづつしかお答えできませんよ。そうですね…これまた論より証拠。本日は新人のデビューの日です。というより、そういう日を選んで樋田さんはあなたを派遣なさったのです」
 「樋田(ひだ)」とはウチのあの社長だ。
「え…じゃあ社長も知ってるんですか?」
「勿論です…そろそろ時間ですね」
「時間?…あああああっ!」
 オレの身体にまた違和感がある。馬鹿馬鹿しいが結論を言えば、オレはウェディングドレス姿の女から、ドブネズミ色のスーツにネクタイの男に戻っていた。
「…まるでシンデレラですな。夢の時間はあっという間だ」
 ギシギシと動かしながら見下ろす。間違いなく男に戻っているらしい。
 男に対して「シンデレラ」などと言って侮辱にならないのは一夜にしてスターになる「シンデレラ・ボーイ」くらいだろう。
 だが、事実であったことは間違いない。
「…質問に答えて頂けますか?」
 やはり自分の声は落ち着く。
「確かめなくても大丈夫ですか?」
 自分の身体をと言う意味だろう。
「結構」
「そうですか」
「お願いします」
「質問が多岐に渡りますのでね…」
 時田が円を描く様に歩き出した。オレはソファに座ったままである。
「本日の新人のデビューをご覧になるのがよろしいでしょう」
「新人?」
「ええ。こちらの席は特等席ですよ」
 背後に照明が付いた。
 中央にリングがある。ボードの様な板張りに目の前のガラスが壁となる多角形リングだ。
 オレは思わずソファから立ち上がり、硝子(がらす)の前に設置してあった椅子に移動した。
「…」
「飲み物はいかがです?」
「え?」
「今夜のあなたはVIP待遇です。なんなりと」
「…じゃあ、ホットのウーロン茶で」
「かしこまりました」
 居酒屋でも滅多に見ない変な注文だったのにすんなり通る。
 すると、スポットライトを浴びながら一人の男が入場してきた。周囲にアピールに余念がない。ただ、周囲には人の気配が無い。観客の居ない戦場で戦っていながらどうしてあんなにテンションが高いのだろう。
 そして…驚いた。
 「リング」が異様なほど狭いのだ。
 狭いというか、この「観客席」からの中心までの距離が五メートルも無い。
 この部屋は先端に行くほどすぼまっていて最前部は幅一メートル強というところだ。硝子(がらす)そのものがリングの壁になっており、もしも目の前で寝技の攻防などされたら「密着出来る様な距離」でくんずほぐれずが観られることになる。
「…近い…」
 思わずそうつぶやいていた。それこそ手を伸ばせば掴めそうな距離だ。実際にはガラスに阻まれているのだが。
「お持ちしました。今夜の選手のプロフィールもです」
「…どうも」
 そう言われても何が何だか分からない。対決めいたことをするらしいことだけは分かるが。
 もしかしてあれか?ヤミの闘技場で、人知れず本当に殺し合いが行われていて、その様子をスナッフ・フィルム(本当に人を殺す様子を撮影したフィルム)見るみたいに楽しもうって趣向なのか?
「時田さん、解説お願いしてもいいですか?」
「ええ…ほぅ…」
 パンフレットを一瞥するなり時田が感心したような声を出した。
「何か?」
「パンフレットによると、今夜デビューする新人は『リフトアップ』の使い手だそうです」
「リフトアップ?」
「ええ。リフトアップです」
 『リフトアップ』といえば…確かレスリングの試合で対戦相手を持ち上げるみたいな意味だったはずだ。と言うか確か「リフトアップ」という単語それ自体が「持ち上げる」と言う意味だ。
 これが『ヴェールアップ』だったりしたならば、余りにも異様な造語なので逆に「技」として分かりやすい。だが「リフトアップ」と言われても…。

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