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白と黒の羽 by.伊達ん子 (1)
あむぁいおかし製作所掲示板(絶賛過疎中)にて謎の覆面新人(ウソ)TS作家伊達ん子さんが超不定期連載中の小説です。ときどき、こうやって表にサルベージしときます。
ふと顔を上げると、ゆっくりと、たゆたうように落ちてくるそれと目が合っていた。
青。白いそれを包む空より青い瞳に、俺は吸い込まれそうになる予感が心に過ぎった。しかしその神秘的な青い視線を、俺は外すことができなかった。
やぱい、と思った時には既に遅かったのか、俺はそれが落ち行く先を目指して走り出していた。
手を翳し、白い羽に包まれた身体を落とさないよう、それを受けた。手には羽毛のくすぐったさと、僅かな重さ。それと遭遇した奇跡というか、運命というか、複雑な心境が交錯し、俺の鼓動が速く、激しくなっていた。
きみはだれ。なんて陳腐な言葉だろう。見たままの存在なら、いや、たとえそうでは無かったとしても、俺は相当運がいい。
どう見える? 反対に問われ俺は動揺を隠せなかった。羽毛に包まれた、いや、白い羽根に包まれた裸体が、否応なく目に飛び込んできた。
て天使? いるわけない、と思っても目の前の現実は消えたりしない。半裸のそれを道ばたで抱き留めている俺の姿は、想像すると変だった。けれど道行く人々はそんな俺に一切構わず、目も向けず歩き去っていった。
なら、そういうものなのよ。人は見たいモノを見る動物だから。青い目が瞬きもせず、その表情に笑みを浮かべながら、解らないことを言った。
わたしと目があったのはあなただけ。真に何かを求めていないと見つけられない筈。俺は何も求めていないのに、なんで見つけてしまったのだろう。確かに一人になりたいとは思っていたけれど。……違う。自分に嫌気がさしていただけだ。
2007/4/12(木)12:38
ふと顔を上げると、ゆっくりと、たゆたうように落ちてくるそれと目が合っていた。
青。白いそれを包む空より青い瞳に、俺は吸い込まれそうになる予感が心に過ぎった。しかしその神秘的な青い視線を、俺は外すことができなかった。
やぱい、と思った時には既に遅かったのか、俺はそれが落ち行く先を目指して走り出していた。
手を翳し、白い羽に包まれた身体を落とさないよう、それを受けた。手には羽毛のくすぐったさと、僅かな重さ。それと遭遇した奇跡というか、運命というか、複雑な心境が交錯し、俺の鼓動が速く、激しくなっていた。
きみはだれ。なんて陳腐な言葉だろう。見たままの存在なら、いや、たとえそうでは無かったとしても、俺は相当運がいい。
どう見える? 反対に問われ俺は動揺を隠せなかった。羽毛に包まれた、いや、白い羽根に包まれた裸体が、否応なく目に飛び込んできた。
て天使? いるわけない、と思っても目の前の現実は消えたりしない。半裸のそれを道ばたで抱き留めている俺の姿は、想像すると変だった。けれど道行く人々はそんな俺に一切構わず、目も向けず歩き去っていった。
なら、そういうものなのよ。人は見たいモノを見る動物だから。青い目が瞬きもせず、その表情に笑みを浮かべながら、解らないことを言った。
わたしと目があったのはあなただけ。真に何かを求めていないと見つけられない筈。俺は何も求めていないのに、なんで見つけてしまったのだろう。確かに一人になりたいとは思っていたけれど。……違う。自分に嫌気がさしていただけだ。
2007/4/12(木)12:38
投稿TS小説第132番 そんな、おままごとみたいな……(17)
<17:ハンスのたくらみ>
さて、母親であるドーラがクララと仲良くなれば、愛らしい少女になったクノは自分のものになると考えたハンスは、さっそく昼間クノが勤めている村役場にやってきたのでした。
「クーノちゃん!」
「やぁ、ハンス。どうしたの?」
「クノちゃんに会いたくなってさ、来たんだ」
「あら、クノさん。かわいい恋人ですね」
「からかうのは止めてくれよ、ヘルマ。こいつ、すぐ調子に乗るんだから」
「えー? クノちゃん。僕のこと嫌いなの?」
「ほらな、ヘルマ。 あのな、ハンス。おまえ、パン屋のアイリーンはどうしたんだ? この前まで好きだとか何とか、言ってたじゃないか」
「アイリーンは子供なんだもん。僕は見た目は子供でも、大人のクノちゃんが好きなんだ」
「はいはい、それはありがとうございます。 でもな、ハンス。人には”分相応”ってもんがあってだな」
「あら、恋愛は自由ですよ。クノさん」
「ヘルマ、まぜっかえさないでくれよ……」
「だって、クララにーちゃんと、かーちゃんがつきあえば、クノちゃんは自由じゃない。そしたら僕と付き合おうよ」
「ハァ? なに言ってんだハンス。クララとドーラが付き合うはずなんかないだろ? だいいちウォルフはどうすんだよ。離婚でもするのか?」
「良くわかんないけど、かーちゃんはクララにーちゃんのことが好きみたいだよ」
「まぁ、不倫ですね!」
「……あのなぁ、ハンス。"好き”っていっても、いろいろあってだなぁ。その、なんていうか……」
「あら、クノさん。恋愛問題で男の子に意見できるだなんて、やはり女の子になったんですねぇ」
「ヘルマぁ、頼むから少し黙っていてくれよぉ」
「ねぇ、ハンス君。ドーラおばさまが、クララさんのこと好きだっていうの、ホント?」
「うん。きっと間違いないよ。今日、かーちゃんがクララにーちゃんに弁当作ってたんだけど、なんかすっごく張り切っててさぁ、すっげぇゴージャスな弁当作ったんだぁ。”今夜大切な話があるから、早く帰ってきてください”って、手紙までつけていたんだぜ」
「「ははーん、なるほどぉ……」」
さて、母親であるドーラがクララと仲良くなれば、愛らしい少女になったクノは自分のものになると考えたハンスは、さっそく昼間クノが勤めている村役場にやってきたのでした。
「クーノちゃん!」
「やぁ、ハンス。どうしたの?」
「クノちゃんに会いたくなってさ、来たんだ」
「あら、クノさん。かわいい恋人ですね」
「からかうのは止めてくれよ、ヘルマ。こいつ、すぐ調子に乗るんだから」
「えー? クノちゃん。僕のこと嫌いなの?」
「ほらな、ヘルマ。 あのな、ハンス。おまえ、パン屋のアイリーンはどうしたんだ? この前まで好きだとか何とか、言ってたじゃないか」
「アイリーンは子供なんだもん。僕は見た目は子供でも、大人のクノちゃんが好きなんだ」
「はいはい、それはありがとうございます。 でもな、ハンス。人には”分相応”ってもんがあってだな」
「あら、恋愛は自由ですよ。クノさん」
「ヘルマ、まぜっかえさないでくれよ……」
「だって、クララにーちゃんと、かーちゃんがつきあえば、クノちゃんは自由じゃない。そしたら僕と付き合おうよ」
「ハァ? なに言ってんだハンス。クララとドーラが付き合うはずなんかないだろ? だいいちウォルフはどうすんだよ。離婚でもするのか?」
「良くわかんないけど、かーちゃんはクララにーちゃんのことが好きみたいだよ」
「まぁ、不倫ですね!」
「……あのなぁ、ハンス。"好き”っていっても、いろいろあってだなぁ。その、なんていうか……」
「あら、クノさん。恋愛問題で男の子に意見できるだなんて、やはり女の子になったんですねぇ」
「ヘルマぁ、頼むから少し黙っていてくれよぉ」
「ねぇ、ハンス君。ドーラおばさまが、クララさんのこと好きだっていうの、ホント?」
「うん。きっと間違いないよ。今日、かーちゃんがクララにーちゃんに弁当作ってたんだけど、なんかすっごく張り切っててさぁ、すっげぇゴージャスな弁当作ったんだぁ。”今夜大切な話があるから、早く帰ってきてください”って、手紙までつけていたんだぜ」
「「ははーん、なるほどぉ……」」