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(2008/05/21)
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オタクに未来はあるのか!?―「巨大循環経済」の住人たちへ (2008/05) 森永 卓郎岡田 斗司夫

気になるので購入予定w

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(2008/05)
森永 卓郎岡田 斗司夫

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勇者ウィルの冒険(連載5回目)

作.amaha
キャライラスト作成&挿絵.そら夕日

(11)

 昔からヘクターはウィル・サンダースが大嫌いだった。ウィルは王家と並ぶ富と力を持つコンティ家出身の母と今をときめく宰相と一時は権力を二分した男を父に持つ王国一のスターだ。おまけに父親の元を離れてからも冒険者としての殊勲は目覚しく勇者としても名高い。
 そのウィルが女性化したと聞いたとき真っ先に思い浮かんだのは、恥じているだろうウィルを思い切り嘲ることだった。実際そのつもりで父である王についていったのだ。舞踏会の話はそのための方便だった。
 ところが目の前に現れたのはこれまで見たこともない可憐な美少女で、ヘクターは最初純粋に彼女を手に入れたいと思った。
 しかし徐々に欲望の黒い炎がヘクターのわずかに残った良心を焼き尽くした。ウィラを妻にし夜伽をさせること、それはウィルを憎む男にとっては二重の喜びである。

 舞踏会は始まり、ヘクターは自ら描いた筋書きを思い返して悦に入っていた。
 まず宰相の意をくんでその養女アビゲイルが近寄ってくる。氷山のようなとけなしはしたが、美しいのは確かだ。いくら王子だからといえ女性に恥をかかせるのはまずい。一度は踊りを申し込まなければ失礼だろう。そうすれば次は約束したウィラがそばに来る。そうだ! その時は音楽を変えさせよう。ムードがあり体を密着させるダンスを選ぶのだ。そして……
 しかし踊りが始まる時間が近づいてきてもアビゲイルとウィラは近くにいない。
 周りは宮廷貴族の娘ばかりだ。先の大戦のあと大河東に領土を広げたことで王家は富んだ。しかし戦場となり荒廃した大河西の旧領土は疲弊し経営の才がない封建貴族の多くは王宮で王に養われる存在になる。王家は彼らを養い直臣として武官や文官の地位を与えて手なずけた。それが宮廷貴族である。
 広い会場を見回したヘクターは2人を見つけたが、娘たちに取り囲まれているので簡単に動けない。
 ヘクターの忍耐は尽きかけていた。

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 アビゲイルとフレッドが次々と大皿に挑むのをウィルはあきれてみていた。ウィル自身はきつくコルセットをはめられているので干した果物を少し食べただけだ。腹部が締め付けられて食べ物が通らないし、トイレに行きたくなっても困る。会場のトイレにメイドの集団と入るのは避けたい。
 しかし、あきれてばかりもいられない。鐘がダンスの時刻が近づいているのを知らせている。ウィルは先に挨拶をしておこうと思った。もちろんアビゲイルにだ。
 近寄るとどう声をかけようかと迷う前にフレッドが紹介してくれる。思いのほか女性が板についていた。考えてみれば名前は別にしてフレッドの少女経験はウィルよりはるかに長い。切り替えが早いのは当然かもしれない。
「こちらはブレスリン宰相猊下の御息女、アビゲイル様です」
「アビゲイル・ブレスリンです。フリーダはアビーと呼んでくれますわ」
ウィルは相手を再評価した。冷たい感じを受けるのは変わらないけどとても知的で魅力的なのだ。
「こちらはお友だちのウィラ」
「よろしくお願いします。ウィラ・コンティと申します」
アビゲイルとフレッドはお腹が落ち着いたのか食べる速さをゆるめウィラと話し始めた。王国北の事情や大河周辺の話題が続く。夢中で話すうちにダンス音楽が始まった。
 音楽に気付いてアビゲイルが動きかけたのでウィルも追いかけるためにテーブルに背を向けた。ヘクターと踊りたくなどないが、約束は約束だ。振り向くとき裾を踏まぬよう足元を見ていたので視線を上げたウィルは驚くことになる。回りは3人にダンスを申し込もうと待ち構える男たちであふれていた。さすがに誰とも踊らず切り抜けることは出来ない。一瞬顔を見合わせた3人の乙女はそれぞれ気に入った男性に手を差し伸べた。


 アトランとシマラは交代に踊りながらウィルの様子を見ていた。ご馳走のあるところではロックは役に立たない。
 適当なところで踊りを切り上げて2人揃ってウィルの見える壁際による。ウィルは壁にもヘクターにも近寄れず踊り続けていた。フレッドはテーブルの皿にもどり、アビゲイルはヘクターのそばまでもう少しの所にいる。
 運ばせた大杯を飲み干してアトランがつぶやく。
「俺たちのお姫様は勇者ウィルほど器用じゃないらしい」
シマラはちゃんと聞いていた。
「ねえ君。どじな戦士は顧みられないだろうけど、ダンスの申し込みを断らない娘を悪く言うものはいないよ」
「そりゃそうだが……。ところでどうなんだ、宰相猊下の作戦とやらは」
「うん。昨日までに集めた情報と会場で集めた噂話からするとアビー嬢と王子をくっつけるのはまず間違いないな」
「待ちたまえ。そんなことは最初から分かっていた事だろう。縁談の申し込みがあったと王子自身が陛下の前で言ったのだからな」
「だからだねぇ、君。国王陛下ご自身も縁談に反対していない、いやそれどころか乗り気だとしたら?」
「何を言っているんだ。じゃあ俺たちへの依頼はどういうことだ?」
「王子がアビー嬢を避けたいのは本当だろう。君も見たろう?」
「尻にひかれるのは間違いなさそうだ。しかし国王陛下が妨害工作を止めなかったのはなぜだい」
「こういう問題は本人同士の気持ちもある。王子が納得した上でないとまずかろう」
アトランが口を開きかけたのをシマラは遮った。
「待ちたまえ、確かに王族や上級貴族に政略結婚は珍しくない。しかし今回の相手は王国の全権を掌握し、かつ宗教界の最高権威である宰相猊下が相手だ。遠い異国の姫より夫婦仲が問題になるのは目に見えている」
「妨害工作のほうがまずいだろう」
「君、相手のことをお忘れかな」
「ウィルか?」
「正確にはウィラだな。国王は王子とウィラの結婚も視野にいれていると思うな」
「確かにサンダース家とコンティ家によしみを通じれば宰相を蹴落とせる。しかしだな、ウィラが本来男と知っていればありえないだろう」
「過去に同様の例があるのを王家の者が知っているとしたらどうだ」
「私は聞いたことがない」
「僕だってさ。しかしこの女性化魔法に永続性があると王や王子が知っていれば」
アトランは若い貴族に何か耳打ちされて真赤な顔のウィラを見ながらうなった
「むぅ」


 次々に相手が現れ進めないのでウィルは途方にくれていた。気がつけばアビゲイルは既に王子と踊り始めている。やっと新しい相手と踊り終えてお辞儀をして振り向くとまた男がいた。
「お嬢さん、御相手お願いできますか」
相手はまだ若く少しおどおどしている。これなら拒否できるかもしれない。
「でも、わたくし」
「あ、あのー、友人たちは皆あなたと踊ったので……」
男の視線の先にはにやけた笑いを浮かべた3人の男がいた。1人はウィルにキスを迫った奴だ。気の弱い友人が拒絶されるのを期待しているのだろうか。
 ウィルは相手に聞こえない程のため息をついてこう返事をした。
「一曲お願いいたします」
「ありがとう!」
 背中が大きく露出して胸を強調するドレスを着て男のリードで踊るのはとても恥ずかしい。体を密着させるダンスでなくともだ。見上げれば今の自分の体と男たちとの身長の差を意識するし、男に握られた自分の手はあまりにも小さく非力に感じられる。これほどの体格差で女たちは男が恐く無いのだろうかとウィルは不思議に思った。
 音楽がスローテンポになり男の手が腰に当てられるとウィルは顔が熱くなるのを感じた。おとなしそうな男が大胆な行動に出たわけではない。これがこのダンスの型である。
「ご気分でも悪いのですか。お顔が赤いですが」
「いえ」
「休憩されますか?」
確かに少し疲れたかもしれない。モンスターとの戦いなら長時間がんばれるウィルも男とのダンスには苦戦していた。
「よろしいですか?」
「もちろんです」
2人がテーブルに向かおうとすると男の友人3人も動き始めたのでウィルは近くにいたアトランとシマラに目配せした。

「君たち、野暮なことは止めたまえ」
「大人しくした方がいい。シマラはウィラのことになれば容赦しない男だからな」
「彼はアトラン、あっちで牛を丸ごと食べているのがロックだ。名前くらい聞いたことがあるだろう?」
3人はすごすごと引き下がった。

 ウィルよりはるかに緊張しているおとなしそうな男と話しているとウィルはかえって落ち着いてきた。今までの自分がバカに思える。何もウィルが緊張する必要はない。クエストでは勇者が、戦場では騎馬武者が、そして舞踏会では高貴な姫が華なのだ。
 ウィルが求めたジュースの杯を手渡して男が言った。
「もう大丈夫ですか?」
「ええ」
そう言いながらウィルが浮かべた笑顔に今度は男のほうが赤くなる。
「そ、それならいいんです」
「ところでお名前は? 私は」
「存じ上げています。おそらく会場の全員が」
「あら」
「わが名はコンラッド。コンラッド・ロートリンゲンと申します」
「コンティ家にお仕えのオットー様とご関係が?」
「自慢の祖父です」
「まあ! あなたは今なにを?」
「陛下の近衛部隊の……」
 そのまま話し込んでしまったウィルがふとヘクターに目を向けるとアビゲイルとのダンスを終えたところだった。おそらく2度目になる。コンラッドに礼を言い急いでヘクターのいる会場中央に向かおうとするとまた引き止められた。
「申し訳ありませんが……シマラじゃあ」
「一曲お願いいたします」そして小声で付け加える。「しぃー、少し話しがある」
「こちらこそお願いいたします」


 アビゲイルとの2度目のダンスを終えたヘクターは焦っていた。氷山のように冷たくて貧乏性で大嫌いなはずの女だのに、ダンスをして目をのぞきこんだとたん魅入られたようになってしまう。1度目はともかく2度目はかなり効いていた。
 1人勝手に歩き去るのは無作法で無様なのでダンス相手が欲しかった。誰かと踊りながらアビゲイルから遠ざかればよい。宰相の娘であるアビゲイルに遠慮して宮廷貴族の娘たちは離れていた。
 ヘクターはウィルが近づこうとしているのに気付き小躍りする。しかしそれはシマラによって防がれた。その時ヘクターはアビゲイルと行動していた小娘がいることを思い出した。社交界デビューぎりぎりの年令でまだ結婚話が出るには幼い。そばに行き声をかけた。
「お嬢さん、踊りませんか?」
振り向いた娘は良く見るとかなり可愛いのでヘクターは喜んだ。しかしなかなか承諾の返事はこない。皿の無花果とヘクターを見比べているのだ。
「では腹ごなしにお受けしましょう」
何かの侮辱かとヘクターは身構えたが、女はごく自然体だった。何か地方で流行っている冗談なのかもしれない。
「お名前は?」
「フレデリカ・ザリエル」


 ヘクターがフレッドと踊り始めるとシマラはウィルをアトランの元にともなった。まだ食べ続けているロックが壁代わりである。
 ウィルはアトランとシマラの顔を交互に見てから不審げに質問する。
「どうして邪魔を? 約束は破りたくないんだけど」
 アトランは説明した。それは、王子がアビゲイルとの婚姻を嫌っているのは事実だが、国王と宰相はそれを望んでいるらしいこと、国王がこの妨害工作に反対しなかったのはどうやらウィラなら宰相の娘に負けない好条件なので乗り換えても良いと考えたと推測できること、などである。
「でも僕は男だよ」
とウィルは小声で2人に主張した。
「しかし魔法探知では君の体は完全な女性なんだよ」
「それはそうだろうけど」
「結婚も出産も可能ってことさ」
「それは」極力ウィルが考えないようにしている事実だ。
アトランも小声で参加した。
「君が王子と踊れば、アビゲイル嬢に対する王子と同じ立場になるのさ」
「どう?」
「王家がコンティ家の養女を嫁に望めばコンティ家の拒否は戦争の火種になりかねない。それにそうなったら本当のご両親であるサンダース家も今度は何らかのお咎めを受けるだろう。君の父上はかなり強引に辞職したからね」
「そんな」
「おいシマラ、あれも話せよ」
「焦るなよ、君。これから話すところさ。アビゲイル嬢を間近で見るのは今回が初めてなんだが、どうも怪しい」
「魔力は少し感じたけど邪悪な物ではなかったよ」
「ウィラの言う通りなんだがな。じゃあ聖魔法か?」
「王国教会の使うものじゃなかった」
「ではなんだ?」
「良く分からないや。巨大なものの一部で全体が見えない感じだった」
「諸君、ウィラの意見は傾聴に値する。どうやらアビゲイル嬢は見た目で判断できぬ強力な存在らしいぞ」
「確かにこの会場のベストスリーの一角に入るな」
と、いつの間にか会話に参加していたロックが言った。テーブルの食べ物がなくなったのが参加理由だ。アトランがロックの巨躯を見上げてたずねる。
「後の2人は誰だ」
「もちろん1人は俺、もう1人はフレッドさ」
シマラは空の皿しかないテーブルを見て言った。
「大食選手権じゃないんだぜ」

 4人の前方では魅入られたような目をしたヘクターがアビゲイルと3度目のダンスをしていた。アビゲイルを気に入ったフレッドが一肌脱いだのだ。もちろんシマラの合図も受けてのことである。それに未来の妻のウィラをヘッポコ王子に渡す気はさらさらなかった。

<つづきはこちら>

5/8 投稿コメントより転載
5/23 イラストUP

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