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放課後の部室にて

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練習でラクガキとの事ですが、結構良いですよこれ。

その名はアステカーナ!(3) by.isako

その名はアステカーナ!(1)と(2)はこちら

飛鳥hukuyama.jpg

I'M IN YOU, YOU'RE IN ME
You gave me the love,
love that I never had

(3)

 疲れと満腹で早く寝てしまったためか翌日は早く目が覚めた。体はちゃんと男のままだけどハンガーのジャケットは実在している。そしてジャケットに入っていた財布が机の上にあった。身分証には福山和彦とありこの近所に住んでいる。
 いきなり警察に届けるのは不味い。拾った場所や状況を説明できないし、この福山さんもどうなったことやら。あの電波娘に何かされて行方不明にでもなっていたら俺はどうすりゃいい。
 別に利己的な考えだけで言っているのではない。背中から翼手を出して飛ぶような怪人だ。さらうとか、ひょっとしたら食べちゃうくらいやりかねない。
 とにかく放課後にこれを届けてみよう。警察に届けるかどうかは成り行きしだいだ。
 そう決心した頃にはいつもの起床時間近くになっていた。パンとコーヒーで簡単に朝食を済ませて家を出る。ジャケットと財布は紙袋に入れて鞄に詰めた。

 学校までは徒歩で15分ほどだ。今日は梅雨の晴れ間というやつで天気は良いが、湿度が高過ぎ汗ばんでしまう。
 途中でクラスメイトの三木と福田と会う。挨拶をして一緒に歩くが2人は所属するバスケット部の話をしていたので邪魔せず黙っていた。
 しばらくそのまま歩いていると福田が話しかけて来た。
「麻耶、知ってるか?」
2人の世界からはじかれた俺に気を使ったようだ。高校生らしからぬ妙な気配りをする男だ。
「世界創世の秘密のことならあと3日待て」
冗談は受けず2人は引いた。
「ちっ、なんのことだ?」
「今日転校生が来るらしいぞ、俺たちのクラスに」
福田は事務のミコちゃんと親しい。
「また妙な時期に」
「海外からさ」
なるほど6月で学年が終るならそう変でもないか。まあ俺ならゆっくり休んで9月から来るが。福田がもっと聞いて欲しそうな顔つきなので質問を続けた。
「帰国子女か?」
「それが留学生なんだ。しかも女子。残念ながら名前はわからない」
「ふーん」
「しかもメキシコかららしい。おまえ、話せるんだろう?」
「挨拶程度さ」
「ご両親と」
「お、おい!」
慌てて三木が割り込んだ。
「すまん」
「いいよもう。気を使われると帰って息苦しい。両親が行方不明になってもう1年なんだから」
ちょうどこのとき校門をくぐったので会話は終った。

 教室の特に男子は留学生の噂で持ちきりだ。在校生に女子留学生はいない。
 担任のゲンゴロウ(原田ゴロウ)と共に登場した陽気なセニョリータは挨拶前からクラス全員を虜にした。とにかく可愛いし日本語も驚くほど上手だ。
「アナ・マリア・サンタ・アナといいます。アニータと呼んでくださいね」
Ana Mariaは名前でAnaは英語圏のAnnaにあたり、愛称形がAnitaである。
 担任に中南米での生活経験があると紹介されて俺は彼女のお世話係の1人として認められた。おまけにしばらくは机を並べて授業中を受けるように言われる。福田たちの険しい視線が突き刺さり全身から血が吹き出そうだ。
「Mucho gusto. Como te llamas?」
「え~」
「わからないの?」
「いや、聞いたでしょう。麻耶だよ」
「Nombres?」
「Asuka」
しばらくスペイン語の実力を試す質問をしてからやっとアニータは許してくれた。
「合格よ、アスカ」
可愛いのは確かだけどこれは少し重荷だ。
「そりゃどうも。日本語上手だね」
「そりゃもう勉強したもの。授業始まるわ」
「うん」
いきなり日本史! どうするんだ?

 アニータのおかげなのか一度も居眠りすることなく午前中を過ごした。
 心配していた昼休みは女子の攻勢に救われた。何しろセニョリータは積極的なので福田たちは大いに勘違いをしている。2人の距離が近いのは別に彼女が俺に気があるわけじゃないのだ。ただ嫌われていないのもまたたしかではある。
 弁当を、と言っても買ったサンドウィッチだが、出していると福田と三木も側に来た。たいてい俺たちは3人で食べていた。2人は愛母弁当である。
「アニータちゃんとえらく仲いいじゃないか」
福田家の揚げ物はなかなか美味い。
「ひょっとして知り合いだったのか?」
三木家は出し巻き卵が絶品である。
「いや」と俺はかの国の情熱的セニョリータたちの説明した。
気を取り直した2人から野菜サンドと交換で海老と卵をゲットする。
「なるほどなあ」
「海老うまいぞ」
「しかし麻耶が一歩リードしているのは確かだな」
「ちょっと好みより甘いが出し巻もな」
「俺は甘いほうが好きなんだ」
「明日は卵サンドにしよう」
「砂糖を控えるように言っておく」
おかずの交渉を成功させて油断した俺は福田の口車に乗っていらぬ約束をさせられた。週末にデートしたいと言うのだ。
「いくらなんでも日本に来ていきなり1対1は難しいぞ」
「じゃあ俺も」と三木が言う。
「お前の相手は誰だよ」
「適当にみつくろってくれ」
「あのなー」
「じゃあ頼んだぜ」
2人は3対3でも良いと勝手なことを言いながら弁当を片付け離れて行った。体育館でいつも通り一汗かくのだろう。

 午後も能天気なセニョリータのテンションは変わらず終鈴がなったときには疲れ果てていた。
「アスカ、町を案内していろいろ教えてよ」
「悪いアニータ。ちょっと野暮用があるんだ」
嘘ではない。俺の鞄には例の上着が入っている。
「でもタクシーで来たから帰り道がわからない」
やれやれ……。
「で、どこだっけ?」
「ホテル。駅前の大きいやつ」
「ああ」
この市で一番大きいそこは大きなイベントも可能な規模だ。
「いつまでそこに?」
「お父様がマンションを買ってくれるまで」
アニータは相当金持ちらしい。
「俺、本当に用があるから誰か友人に」
上手くさばいて福田に押し付けたい。
「何のよう?」
「落し物を届けるのさ」
「一緒に行く」
「え?」
「決心してきたけどちょっとホームシック……スペイン語で話したいの。ね?」
ここまで言われて断れまい。俺はあきらめて同意した。
「じゃあ、寄り道するときは近くで待っていてね」
「了解しました。上官殿」
どこで覚えたんだ、その日本語。

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