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優しい棘

優しい棘 (ワールドコミックススペシャル)優しい棘 (ワールドコミックススペシャル)
(2008/06)
流星 ひかる

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『優しい棘(久保書店)』(作者:流星ひかる)に、「トリがサカナでイヌがネコ」が該当で収録といまさっきそこで聞いた。

モーレツ怪獣大決戦

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(2008/03/21)
唐沢なをき

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マジック:ザ・ギャザリング シャドウムーア ブースター 日本語版 パック

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投稿TS小説   宙    (by 猫野さん)

TS HEARTIES

 大空宙(おおぞらひろし)は興奮していた。

 秋の夜、幕が閉まって熱気も冷めたサーカスのテントで、少年たちが集まって床や桟敷の掃除をしていた。外の風でテントがかしぐたびに、吊されたブランコや安全網の影法師が彼らの姿にかぶり、ゆらめいていた。
 大空宙はサーカス団随一の空中ブランコ乗りで、今日も大一番の空中三回転を決めたばかりだったが、閉幕後の掃除には団員として参加していた。しかし彼は座席の最前列あたりに突っ立っているだけで、実際の仕事は下っぱに任せていた。
 宙は長くて力強い指でほうきを握りしめ、立てた柄に痩せた体躯をじっともたれかからせている。目線はしずかに、舞台に向けられていた。
 座席より高いところにある舞台では、彼の興味を引いてやまないできごとが行われていたのだ。

 宙の目の前でひとりの少女が、四人の団員に囲まれていた。
 少女は豊満な……、というより言葉を選ばなければぽっちゃりした体型で、赤いアルレッキーノ(ピエロ)の衣装を着ていた。みじかい指をピンクのほおに当てて、団員たちがことばを発するたびにぴくり、ぴくりとひざをふるわせている。
「秋姫(あき)、なんでセリフのひとつも憶えられないんだよ」
「いくらピエロだって、ましなやりかたがあるだろ」
「真剣さっていうもんがないのなー」
 モップ片手に、ひとりがつめよった。秋姫と呼ばれた少女はあとじさり、べつの団員に背中からぶつかる。怖がるあまり、ぶつかり際にしりをなでられたことにも気づいていないらしい。
「あたし……、ち、真剣だもん」
 語頭で舌をかんだのを聞いて、団員たちは爆笑した。おもしろがって腹をかかえ、秋姫の周囲でジャンプしては肩口や耳や、胸をつっつく。
「チンケンだってよぉ! やっべぇ、もう馬鹿すぎて吐きそう!」
 宙は彼らのいじめに加わったりはしなかった。ただ静かに秋姫のようすを観察していた。その実、腹の下には興奮の熱を貯めこんでいたのだ。
 女として、秋姫みたいな少女が好みなわけではなかった。あの体が、卑屈な態度をとるのがいいのだ。白いはりのある肌は、団長の愛人をやっていた宙自身の母親を連想させた。酒に酔っては団長の冷淡を嘆き、自分につらく当たった母親の色だ。そのやわらかな肌が、屈辱にふるえているのがたまらない。
(女め。女なんて……みんな雌豚だ)

 団員たちは跳び回り、ピエロのひらひら衣装にちょっかいをかけ始めた。
「やだよぉ、やぶけちゃうよぉ」
「いやだったら脱いじゃえよ! おまえなんかもう、えっちな踊りくらいしか使い道ないだろ!」
 連日の疲れがたまっていたのか、今日のいじめはいつになくエスカレートしていた。おふざけですまず、本気でかよわい少女を剥いてしまいそうな勢いだ。
 他の少年たちは見て見ぬふりをしている。四人が怖いのではない。いじめをじゃますることが、団長の隠し子である宙の機嫌にさわるのを恐れているのだ。
 そのとき秋姫の濡れた瞳が、かすかに宙のほうに向けられた。超然とした宙の静かな観察を、観察される側から破られたことは今までなかった。毒ガス箱のボタンを押した瞬間に、実験動物のネコに見かえされたみたいな気分だ。
 宙はとまどい、焦り、怒りの目で対象を見かえした。

 秋姫はひぃ、とのどを鳴らした。それから見まわして言った。
「……いやだよぅ、はずかしいよぅ……。。宙くんの、まえで」
 なにを言いだすのか。一同は苦笑するだけだった。
「宙くんだって? 宙くんがおまえなんかのこと気にかけるわけないだろう?」
「いっちょまえに意識しちゃってさぁ。なぁ、宙?」
 そう話しかけた少年は、つい調子に乗ってしまったのだろう。すぐに「しまった」という表情をうかべた。本来ならいじめの場に宙が引っぱり出されることなどないのだ。

 しかし宙は自信たっぷりにうなずいて、舞台の上の連中に言った。
「べつにからかうことないぜ。僕は前から、秋姫の演技を見ていたんだし」
 意外な声かけで、少年たちのあいだには一瞬とまどいが走った。
「え……まじで?」
「ひゃー、宙が秋姫を見てくれるだってよ」
「驚いたなぁ。おまえみたいなのにもチャンスは回ってくるんだ」
 秋姫は舞台の最前に引き出された。かげる照明の下、少女のほおに不安が浮かぶ。
「ほら、なにか演技をやってみろよ! 宙先生が見てくださってる」
 秋姫はもじもじとおしりを動かした。
「でも、でも、あたし……。できる芸なんてないから」
 宙はすかさず動いた。
「できないんじゃない、あと一歩の勇気がないだけさ」
 音もなくほうきを座席に立てかけ、壇に駆け上がる。右手をおびえるピエロのほおに伸ばした。ひとさし指に涙のしずくがかかる、そして手のひらに伝わるぷよっとした触感に叫びあがりそうになったが、じっとこらえてささやいた。
「あとで来なよ。君にもできる芸を教えてあげる」
 秋姫の目がみるみる輝いた。その瞳の黒にワインを重ねた色は、ただ肉を好むのみの宙といえども印象を覚えたほどだった。
(ふぅん……。まぁ、いいか)
 宙が生き返らせた秋姫、唖然とする一同をしりめに、手をひらひらさせて宙は去った。ちょうど団長がやってきたので、秋姫を囲んだいじめはお開きとなった。


絵師:菊咲朗 ぽいちっぷ

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