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今年の前半戦終了ー。
6/30の23時頃でマーキング。
半年で212万ですので、年425万ぐらいでしょうか。
公式予算では年末1300万が目標なのですが、それだと2010年度末2000万が苦しいので、今年467万稼いで、1400万に到達しておいて。2010年は年600万、が良いかな。
目指すぜ月50万アクセス!
おかし製作所 06/5/14 131万 07/7/29 427万 08/01/01 560万 09/01/01 933万
09/06/30 1145万
少年少女文庫さん06/5/13 750万 07/7/29 900万 08/01/01 950万 09/01/01 1061万
09/06/30 1104万
性転換を~書いてみましたさん 08/01/01 692万 09/01/01 812万
09/06/30 870万
半年で212万ですので、年425万ぐらいでしょうか。
公式予算では年末1300万が目標なのですが、それだと2010年度末2000万が苦しいので、今年467万稼いで、1400万に到達しておいて。2010年は年600万、が良いかな。
目指すぜ月50万アクセス!
おかし製作所 06/5/14 131万 07/7/29 427万 08/01/01 560万 09/01/01 933万
09/06/30 1145万
少年少女文庫さん06/5/13 750万 07/7/29 900万 08/01/01 950万 09/01/01 1061万
09/06/30 1104万
性転換を~書いてみましたさん 08/01/01 692万 09/01/01 812万
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ぷりんせす・そーど!3 戦うサツキと恋の道
![]() | ぷりんせす・そーど!3 戦うサツキと恋の道 (2009/07/15) 神野 オキナ 商品詳細を見る |
TS売れ線速報!(6/22~6/28)
先週のベスト3
1 MEGA STORE (メガストア) 2009年 08月号
2 オトコノコ倶楽部 VOL.1―カワイイ女装美少年の専門誌
3 めちゃLOVE
さてさて、今週も発表しちゃいましょう!
1位は!!前回と同様、大差を付けてメガストアだ!これまでは売れた事なんか無かったように思うがw
そして2位は!ゲームが来てます。期待のくるくるく~る!もう少し頑張ってほしいところ!
3位は!久々の定番!トランス・ヴィーナスでした。
1 MEGA STORE (メガストア) 2009年 08月号
2 オトコノコ倶楽部 VOL.1―カワイイ女装美少年の専門誌
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![]() | MEGA STORE (メガストア) 2009年 08月号 [雑誌] (2009/06/17) 不明 商品詳細を見る |
そして2位は!ゲームが来てます。期待のくるくるく~る!もう少し頑張ってほしいところ!
![]() | くるくるく~る (2009/06/26) Windows 商品詳細を見る |
3位は!久々の定番!トランス・ヴィーナスでした。
![]() | トランス・ヴィーナス (1) (リュウコミックス) (2009/03/19) たまき ひさお 商品詳細を見る |
GANTZ 26 figma付初回限定版 に付いた投稿TS小説(3)
作.amahaさん
(3) 新たな友情
翌朝はとても早く目が覚めた。でも準備に手間取ったのでマンションを出たときは当たり前の登校時間になっている。昨晩結局風呂に入らなかったのがまずかった。体を洗うのにもずいぶん時間がかかったし、長い髪を髪を洗ってしまうと乾かしてきちんと整えるのに小一時間かかってしまうのだ。おまけに球体は食事中も長々と講釈をたれる。奴の言っていることが全て真実とは限らないけど、俺の運命がその手の内にあるのは間違いない。そしてそれが本当なら地球の運命も。
とにかく俺はとりあえず奴の――あるいはスポンサーの――望むまま行動するしかない。元の肉体に戻るためにもまず生き残らないとだめだ。戦いが命がけなのは昨日思い知っている。
マンションを出た俺は昨夜の現場に足を向けた。昨夜通夜が行われたらしい自宅も気になるが、今の通学路からは遠すぎるしこの時間に制服でうろつくのはまずいだろう。だが結局現場には近づけなかった。警察や報道関係者とその車などで周辺はごった返していたのだ。考えてみれば止むを得ないことである。球体は証拠は残さなかったというけれどそれは宇宙人が関与した証を残さないという意味であって閃光や音それにめくれ上がった舗装まで直すという意味ではないのだ。
ぼーっと見ていてインタビュアーに捕まりそうになったのであわてて走り去った。何も後ろにいた俺に呼びかけなくてもいいのに。
通学路を歩いていると知った顔が増えてきた。名前を知らないような相手でもなんだか懐かしく感じる。ここは球体や鳥人間との戦いの異常さとはかけ離れた世界なのだ。
マンションをでてからよく視線を受けるのはきっと今の外見のためだろう。そうわかっていても知った奴らから好奇の目で見られるのはまた格別恥ずかしいものだ。おまけに角で出くわした姫野がまじまじと俺を見つめている。まさか見破ったとも思えないが……そんなににらむと小皺ができるよ。
正面に立っていて無視できないので勇気を出して話しかけた。
「あの~私に何か?」
姫野はわれに返ったように言った。
「あ、ああごめんなさい。うちの生徒なのよねえ?」
「あ、はい。でも制服は着てますけど今日が初登校なんです」
「転校生なのぉ」
「よろしくお願いします」
「ええ。ところでどこかで会ったかしら?」
なぜそんなことを聞く。
「少し前にこの町に来ていましたけどお会いした記憶はありません」
「だよねえ……お会いって1年生?」
「はい」
「私もそうだからもっと遠慮なくね」
そう言いながら歩こうと促した。
「はい」
「私は姫野恵」
「アムアイといいます」
「へ?」
くそ、球体の野郎珍名をつけやがって。
「安に夢でアムが苗字、名はひらがなで、安夢あい」
正直なところ今の状況なら悪夢アリスとでも名のりたい。
「良い名ね」
どこがだと頭の中で突っ込んでから返事をした。
「ありがとう」
その後職員室の前まで姫野の質問がガトリング砲のように続く。俺ははじめて球体の長広舌に感謝した。あいという架空の存在の経歴をくどくどと説明してくれたのがここで役に立ったのだ。
元の担任の挨拶を受け姫野や古田と同じクラスになると知っても大して驚きはしない。以前の友人たちと俺の絡みに視聴者とやらが喜んだと球体が言っていたからだ。俺の三文芝居で喜んでくれてスポンサーがつくなら望む所である。資金は装備を整えるだけでなく元の姿に戻るにも必要なのだ。
教室に入ったっ瞬間からクラスの男子は熱狂していた。顔もいいし本人も風呂場で困ってしまうほどのスタイルなのだから当然なのかもしれないが、男は単純である。中身が俺と知ったらどうするのだろう。それに比べ女子の反応は複雑だった。興味津々と無関心それにやや冷たい視線に3分される。
黒板に『安夢あい』と書いて、
「I am I」
と自己紹介する。大して受けないけれどごちゃごちゃ長話をする気はないので皆があっけに取られている隙にさっさと指定された席についた。
休み時間には質問攻めになる。しかしパニックになる前に俺から既に情報をしぼりつくした姫野が介入してくれたので大いに助かった。3時間目の休みになると俺に関心のある女子はお昼を一緒にする約束で開放してくれる。そばには姫野だけになった。
見るともなく視線は花が飾られた元の席の方に向く。姫野の笑みが消えた。
「あの席は」
姫野の顔は能面のようだった。
「話し難ければいいよ」
「いいのよ。アムには関係ないんだし」
「じゃあ」
「あれは昨日事故で死んだ大バカ野郎の席なの」
姫野の涙はチャイムが鳴るまで止まらなかった。
授業中俺は戦う女マシーンという自らの悲惨な境遇を忘れて姫野のことを考えていた。彼女は俺にとっては重要な存在で逆の立場なら俺も相当悩んだのは間違いない。しかし俺の死が姫野にこれほどショックを与えるとは予想外だった。なにしろ普段から彼女にボロボロのけちょんけちょんに言い負かされている俺なのだ。幼稚園のころからの腐れ縁で小さいころは発育が早かった姫野の方がずっと強かったのである。中学からは古田が入り3人で行動することもよくあった。もっとも高校に入ったあと姫野はなぜか別行動が多い。最後にゆっくり話したのは確か先週だっけかな。以前から気になっている隣のクラスの女子に渡りをつけられないか聞いたんだ……そういえばこの話は当分進められないなあ。この姿ではね。
授業終了のチャイムの後、姫野は3時間目の休みのことを覚えてないかのようにケロリとしていたので俺はほっとした。昼休み珍しく弁当を持っていない姫野とともにカフェテリアで食べることにする。同行した他の女子はほとんど弁当を持っていた。
カルボナーラ一皿を姫野と分けて食べる。彼女は満足したらしいけど俺の方は飢えたままだった。
元よりずっとか細くなったのに食欲の方は3倍くらいある。球体は肉体改変の影響だと言っていた。どうやら人類は俺が無理やり参加させられているトーナメントで戦うには柔すぎるらしい。最高性能のバトルスーツを着せても最低基準を満たさないそうだ。そのため公平を期して(あっと言う間に死んでは視聴者とやらが喜ばないせいだと俺は思う)肉体強化が許可されたのだ。スポンサーはそれに乗じて女体化プログラムを混入させたので出費は最小限ですんだという……やれやれ。
「デザート何か食べる?」
という姫野の提案に俺は飛びついた。
「ええ。転校の挨拶代わりに私が皆さんにおごるわ」
経費経費とうるさい球体もこの世界の通貨に関しては文句を言わずに出してくれる。ひょっとして偽札なのか? まさかね。
とにかく提案は全員が賛成した。それにしても食べる食べる。弁当箱は手のひらサイズのくせにケーキなどはその何倍も入るらしい。そのぶん俺のがっついた様子が目立たなくて助かるんだけど。
転校してきた俺の話は既に終わり話題は学内の噂に移っていた。ただ昨日の俺の事故のことは避けている。姫野が俺と親しかったのは皆知っているし、目ざとい女子たちが3時間目の休みの出来事を知らぬはずがなかった。
そして話題は昨日のコンビニ事件になった。決定的な証拠がないことでかえって世間の注目を集めている。テレビでは宇宙人説もまことしやかに話されていたらしい。球体の努力は無に帰すのだろうか。
「そうそう。アムちゃん今朝現場の中継で映らなかった?」
聞いてきたのは情報通の高木だ。メガネをかけていて、いまだ子供っぽい体型をしている。ただ頭は切れた。あの場所はマンションからは少し遠回りになるが……。
「ええ、お弁当を作る暇がなかったから何か買って行こうと思って。カフェテリアのメニューがこんなに充実しているって知らなかったし」
「ふんふん、そこでレポーターの目にとまったというわけね。相手すればよかったのに。現場中継でスカウトされてデビューなんて目立つわよ」
「え?」
「そのスタイルと顔なら今までも街でスカウトされたんじゃない?」
「ないない。それにそういうの苦手だし考えてないから」
全員からはやし立てられたが、否定で通した。しかし球体に呼び寄せられたのも一種のスカウトなのだろうか。
食後姫野が学内を案内してくれると言うので俺は従った。勝手知ったる場所だけど姫野の親切がなんだか嬉しい。
「あと北のぼろい校舎は部室棟になってるわ。アムは何かクラブする予定?」
「別に」
「でも帰っても1人暮らしなんでしょう。退屈じゃないかしら」
「ほら成績落ちたら1人暮らしできなくなるし、料理も苦手だから時間かかるもの。けっこう大変なのよ」
俺の親権者は北欧で仕事中という設定になっている。その人物が実在するかどうかは説明を受けていない。もっとも必要になれば球体は作り出すだろう。
「あら私こう見えてもお料理得意なのよ」
よく知っているさ。
「アムの家も見たいし今日行って良いかしら」
「え~」
戦いのことや球体のことを話すのは禁じられている。ただ戦闘中以外は部屋への入室に制限はなかった。
「だめ?」
「そういうわけじゃ」
「じゃあ決定!」
「え、ええ」
放課後姫野と俺は肩をならべて歩いた。自宅も気になるけど今日はあきらめるしかない。
「スーパーによる?」
「えーっとどうかなあ。冷凍がほとんどだけど一通りはそろっているよ」
「お肉とか野菜も?」
「肉も魚も冷凍で、野菜は根菜ならたくさんあるわ」
「やっぱり買って行こう」
別に異存はなかった。
「うん」
楽しそうに買い物をする姫野の後ろに従う。そういえばどちらの母親も働いていたので小学生のころは互いの買い物に付き合ったこともあったっけ。
「アムちゃん、グリーンピースは?」
「平気。でもピーマン……」
しまった。これは俺の好み。しかし心配をよそに姫野は頓着しなかった。
「そうなんだ。じゃあピーマンも買おうっと」
「えー!」
「食わず嫌いはだめだめ。ネ?」
とほほ。
マンションの最新式のキッチンに姫野は大歓声をあげた。今一つ理解できないけど彼女の夢に近かったらしい。
心配していた球体のことは、
「前衛芸術って良くわからないわよね~」
で終ってしまう。
そしてアムちゃんのためのクッキング教室ABCが始まった。母親が留守がちなので俺だって包丁くらいは握ったことがある。しかしレパートリーは極めて限られていた。
「冷凍食品以外で何が作れるの?」
「えっ? えーカレーと玉子焼きと目玉焼きと……」
「う~ん」
俺は鬼軍曹ににらまれた新兵のごとく小さくなった。
「じゃあとりあえず、しょうが焼きとハンバーグ、それに肉じゃがとお煮しめを作って見ましょう」
えらく面倒なことになりそうだ。
「そんなに?」
「大丈夫、保存できるわ。それにお弁当にも入れられるから」
「……」
「あら、お返事は?」
「よろしくお願いします」
「任せなさい!」
相変わらず姫野は料理が上手だ。いや記憶よりずっとすごい。(そういえば最後に作ってくれたのはもう2年ほど前になる)しかもどんどん作りながら俺へも的確なアドバイスをくれた。最近2人でいるとき感じていた気詰まりもなく楽しい。ひょっとして女性化したためなのだろうか。俺は姫野を女と意識して……そんなことはあるまい。確かに改めて見ても魅力的になったけど俺にとっては幼馴染の姫野で、そのー卑猥な言い方をすればモノにしたいとか言う対象とは違う。なんとういか、もっと大事なんだと思う。
「アム、疲れた?」
知らぬうちに手が止まっていたらしい。
「うううん。ちょっと考え事を」
「あら、どんな?」
「姫野さんと2人だと楽しいなって」
「それは光栄だけどそろそろ姫野さんはやめてほしいな」
「えーっと」
「私はアムとかアムちゃんって言ってるのに」
「姫野ちゃん?」
「それ変」
「だって」
「あなたの場合アイはクラスにいるし、アムって可愛いから良いんじゃない」
そういえばメガネの高木の名が藍だ。
「じゃあ」
「恵って呼んで」
「恵ちゃん?」
「まあいいでしょう」
「料理を教えてもらっているから師匠では?」
「やめなはれ」
「ごめんちゃい」
「うーん」
「なんだか」
「今ひとつね」
小学生のころに戻ったように俺たち2人は大笑いした。もっとも彼女にとって俺は知り合って一日の存在にに過ぎない。
それからも姫野は何度か尋ねてきた。親しくなった女子もたまに来る。戸惑いながら続ける俺の女子高校生生活を球体はいつもからかうが、それは視聴者たちも喜んでいることになるので気にしなかった。
ある意味平和な数週間が過ぎたわけである。しかし俺の精神状態はとても平穏といえる状態ではない。
まずいつ始まるかもしれない第2回戦への恐怖がある。少なくとも現状では逃げ出すことはできない。
また女性の肉体に閉じ込められていると言う違和感は奇妙な圧迫感をもたらした。そして止むに止まれず胸や股間を刺激するとこの体を男として犯すイメージより男に犯されるイメージがわき気持ち悪い。そういえば未だに自慰行為も胸を触ったり枕に股をこすりつける程度で終っている。体に何か、たとえば指を入れるのは恐いし……試そうとしたときとても痛かったのだ。
そうそう自宅の前も何度か通ってみた。両親と弟の姿も何度か見た。3人は日常に戻っており遠目には俺の不在は何の影響も与えていない。
俺の心の閉塞感は4週目のある夜、破られた。
<つづく>
20090627初出
20090627改訂
20090630追加
(3) 新たな友情
翌朝はとても早く目が覚めた。でも準備に手間取ったのでマンションを出たときは当たり前の登校時間になっている。昨晩結局風呂に入らなかったのがまずかった。体を洗うのにもずいぶん時間がかかったし、長い髪を髪を洗ってしまうと乾かしてきちんと整えるのに小一時間かかってしまうのだ。おまけに球体は食事中も長々と講釈をたれる。奴の言っていることが全て真実とは限らないけど、俺の運命がその手の内にあるのは間違いない。そしてそれが本当なら地球の運命も。
とにかく俺はとりあえず奴の――あるいはスポンサーの――望むまま行動するしかない。元の肉体に戻るためにもまず生き残らないとだめだ。戦いが命がけなのは昨日思い知っている。
マンションを出た俺は昨夜の現場に足を向けた。昨夜通夜が行われたらしい自宅も気になるが、今の通学路からは遠すぎるしこの時間に制服でうろつくのはまずいだろう。だが結局現場には近づけなかった。警察や報道関係者とその車などで周辺はごった返していたのだ。考えてみれば止むを得ないことである。球体は証拠は残さなかったというけれどそれは宇宙人が関与した証を残さないという意味であって閃光や音それにめくれ上がった舗装まで直すという意味ではないのだ。
ぼーっと見ていてインタビュアーに捕まりそうになったのであわてて走り去った。何も後ろにいた俺に呼びかけなくてもいいのに。
通学路を歩いていると知った顔が増えてきた。名前を知らないような相手でもなんだか懐かしく感じる。ここは球体や鳥人間との戦いの異常さとはかけ離れた世界なのだ。
マンションをでてからよく視線を受けるのはきっと今の外見のためだろう。そうわかっていても知った奴らから好奇の目で見られるのはまた格別恥ずかしいものだ。おまけに角で出くわした姫野がまじまじと俺を見つめている。まさか見破ったとも思えないが……そんなににらむと小皺ができるよ。
正面に立っていて無視できないので勇気を出して話しかけた。
「あの~私に何か?」
姫野はわれに返ったように言った。
「あ、ああごめんなさい。うちの生徒なのよねえ?」
「あ、はい。でも制服は着てますけど今日が初登校なんです」
「転校生なのぉ」
「よろしくお願いします」
「ええ。ところでどこかで会ったかしら?」
なぜそんなことを聞く。
「少し前にこの町に来ていましたけどお会いした記憶はありません」
「だよねえ……お会いって1年生?」
「はい」
「私もそうだからもっと遠慮なくね」
そう言いながら歩こうと促した。
「はい」
「私は姫野恵」
「アムアイといいます」
「へ?」
くそ、球体の野郎珍名をつけやがって。
「安に夢でアムが苗字、名はひらがなで、安夢あい」
正直なところ今の状況なら悪夢アリスとでも名のりたい。
「良い名ね」
どこがだと頭の中で突っ込んでから返事をした。
「ありがとう」
その後職員室の前まで姫野の質問がガトリング砲のように続く。俺ははじめて球体の長広舌に感謝した。あいという架空の存在の経歴をくどくどと説明してくれたのがここで役に立ったのだ。
元の担任の挨拶を受け姫野や古田と同じクラスになると知っても大して驚きはしない。以前の友人たちと俺の絡みに視聴者とやらが喜んだと球体が言っていたからだ。俺の三文芝居で喜んでくれてスポンサーがつくなら望む所である。資金は装備を整えるだけでなく元の姿に戻るにも必要なのだ。
教室に入ったっ瞬間からクラスの男子は熱狂していた。顔もいいし本人も風呂場で困ってしまうほどのスタイルなのだから当然なのかもしれないが、男は単純である。中身が俺と知ったらどうするのだろう。それに比べ女子の反応は複雑だった。興味津々と無関心それにやや冷たい視線に3分される。
黒板に『安夢あい』と書いて、
「I am I」
と自己紹介する。大して受けないけれどごちゃごちゃ長話をする気はないので皆があっけに取られている隙にさっさと指定された席についた。
休み時間には質問攻めになる。しかしパニックになる前に俺から既に情報をしぼりつくした姫野が介入してくれたので大いに助かった。3時間目の休みになると俺に関心のある女子はお昼を一緒にする約束で開放してくれる。そばには姫野だけになった。
見るともなく視線は花が飾られた元の席の方に向く。姫野の笑みが消えた。
「あの席は」
姫野の顔は能面のようだった。
「話し難ければいいよ」
「いいのよ。アムには関係ないんだし」
「じゃあ」
「あれは昨日事故で死んだ大バカ野郎の席なの」
姫野の涙はチャイムが鳴るまで止まらなかった。
授業中俺は戦う女マシーンという自らの悲惨な境遇を忘れて姫野のことを考えていた。彼女は俺にとっては重要な存在で逆の立場なら俺も相当悩んだのは間違いない。しかし俺の死が姫野にこれほどショックを与えるとは予想外だった。なにしろ普段から彼女にボロボロのけちょんけちょんに言い負かされている俺なのだ。幼稚園のころからの腐れ縁で小さいころは発育が早かった姫野の方がずっと強かったのである。中学からは古田が入り3人で行動することもよくあった。もっとも高校に入ったあと姫野はなぜか別行動が多い。最後にゆっくり話したのは確か先週だっけかな。以前から気になっている隣のクラスの女子に渡りをつけられないか聞いたんだ……そういえばこの話は当分進められないなあ。この姿ではね。
授業終了のチャイムの後、姫野は3時間目の休みのことを覚えてないかのようにケロリとしていたので俺はほっとした。昼休み珍しく弁当を持っていない姫野とともにカフェテリアで食べることにする。同行した他の女子はほとんど弁当を持っていた。
カルボナーラ一皿を姫野と分けて食べる。彼女は満足したらしいけど俺の方は飢えたままだった。
元よりずっとか細くなったのに食欲の方は3倍くらいある。球体は肉体改変の影響だと言っていた。どうやら人類は俺が無理やり参加させられているトーナメントで戦うには柔すぎるらしい。最高性能のバトルスーツを着せても最低基準を満たさないそうだ。そのため公平を期して(あっと言う間に死んでは視聴者とやらが喜ばないせいだと俺は思う)肉体強化が許可されたのだ。スポンサーはそれに乗じて女体化プログラムを混入させたので出費は最小限ですんだという……やれやれ。
「デザート何か食べる?」
という姫野の提案に俺は飛びついた。
「ええ。転校の挨拶代わりに私が皆さんにおごるわ」
経費経費とうるさい球体もこの世界の通貨に関しては文句を言わずに出してくれる。ひょっとして偽札なのか? まさかね。
とにかく提案は全員が賛成した。それにしても食べる食べる。弁当箱は手のひらサイズのくせにケーキなどはその何倍も入るらしい。そのぶん俺のがっついた様子が目立たなくて助かるんだけど。
転校してきた俺の話は既に終わり話題は学内の噂に移っていた。ただ昨日の俺の事故のことは避けている。姫野が俺と親しかったのは皆知っているし、目ざとい女子たちが3時間目の休みの出来事を知らぬはずがなかった。
そして話題は昨日のコンビニ事件になった。決定的な証拠がないことでかえって世間の注目を集めている。テレビでは宇宙人説もまことしやかに話されていたらしい。球体の努力は無に帰すのだろうか。
「そうそう。アムちゃん今朝現場の中継で映らなかった?」
聞いてきたのは情報通の高木だ。メガネをかけていて、いまだ子供っぽい体型をしている。ただ頭は切れた。あの場所はマンションからは少し遠回りになるが……。
「ええ、お弁当を作る暇がなかったから何か買って行こうと思って。カフェテリアのメニューがこんなに充実しているって知らなかったし」
「ふんふん、そこでレポーターの目にとまったというわけね。相手すればよかったのに。現場中継でスカウトされてデビューなんて目立つわよ」
「え?」
「そのスタイルと顔なら今までも街でスカウトされたんじゃない?」
「ないない。それにそういうの苦手だし考えてないから」
全員からはやし立てられたが、否定で通した。しかし球体に呼び寄せられたのも一種のスカウトなのだろうか。
食後姫野が学内を案内してくれると言うので俺は従った。勝手知ったる場所だけど姫野の親切がなんだか嬉しい。
「あと北のぼろい校舎は部室棟になってるわ。アムは何かクラブする予定?」
「別に」
「でも帰っても1人暮らしなんでしょう。退屈じゃないかしら」
「ほら成績落ちたら1人暮らしできなくなるし、料理も苦手だから時間かかるもの。けっこう大変なのよ」
俺の親権者は北欧で仕事中という設定になっている。その人物が実在するかどうかは説明を受けていない。もっとも必要になれば球体は作り出すだろう。
「あら私こう見えてもお料理得意なのよ」
よく知っているさ。
「アムの家も見たいし今日行って良いかしら」
「え~」
戦いのことや球体のことを話すのは禁じられている。ただ戦闘中以外は部屋への入室に制限はなかった。
「だめ?」
「そういうわけじゃ」
「じゃあ決定!」
「え、ええ」
放課後姫野と俺は肩をならべて歩いた。自宅も気になるけど今日はあきらめるしかない。
「スーパーによる?」
「えーっとどうかなあ。冷凍がほとんどだけど一通りはそろっているよ」
「お肉とか野菜も?」
「肉も魚も冷凍で、野菜は根菜ならたくさんあるわ」
「やっぱり買って行こう」
別に異存はなかった。
「うん」
楽しそうに買い物をする姫野の後ろに従う。そういえばどちらの母親も働いていたので小学生のころは互いの買い物に付き合ったこともあったっけ。
「アムちゃん、グリーンピースは?」
「平気。でもピーマン……」
しまった。これは俺の好み。しかし心配をよそに姫野は頓着しなかった。
「そうなんだ。じゃあピーマンも買おうっと」
「えー!」
「食わず嫌いはだめだめ。ネ?」
とほほ。
マンションの最新式のキッチンに姫野は大歓声をあげた。今一つ理解できないけど彼女の夢に近かったらしい。
心配していた球体のことは、
「前衛芸術って良くわからないわよね~」
で終ってしまう。
そしてアムちゃんのためのクッキング教室ABCが始まった。母親が留守がちなので俺だって包丁くらいは握ったことがある。しかしレパートリーは極めて限られていた。
「冷凍食品以外で何が作れるの?」
「えっ? えーカレーと玉子焼きと目玉焼きと……」
「う~ん」
俺は鬼軍曹ににらまれた新兵のごとく小さくなった。
「じゃあとりあえず、しょうが焼きとハンバーグ、それに肉じゃがとお煮しめを作って見ましょう」
えらく面倒なことになりそうだ。
「そんなに?」
「大丈夫、保存できるわ。それにお弁当にも入れられるから」
「……」
「あら、お返事は?」
「よろしくお願いします」
「任せなさい!」
相変わらず姫野は料理が上手だ。いや記憶よりずっとすごい。(そういえば最後に作ってくれたのはもう2年ほど前になる)しかもどんどん作りながら俺へも的確なアドバイスをくれた。最近2人でいるとき感じていた気詰まりもなく楽しい。ひょっとして女性化したためなのだろうか。俺は姫野を女と意識して……そんなことはあるまい。確かに改めて見ても魅力的になったけど俺にとっては幼馴染の姫野で、そのー卑猥な言い方をすればモノにしたいとか言う対象とは違う。なんとういか、もっと大事なんだと思う。
「アム、疲れた?」
知らぬうちに手が止まっていたらしい。
「うううん。ちょっと考え事を」
「あら、どんな?」
「姫野さんと2人だと楽しいなって」
「それは光栄だけどそろそろ姫野さんはやめてほしいな」
「えーっと」
「私はアムとかアムちゃんって言ってるのに」
「姫野ちゃん?」
「それ変」
「だって」
「あなたの場合アイはクラスにいるし、アムって可愛いから良いんじゃない」
そういえばメガネの高木の名が藍だ。
「じゃあ」
「恵って呼んで」
「恵ちゃん?」
「まあいいでしょう」
「料理を教えてもらっているから師匠では?」
「やめなはれ」
「ごめんちゃい」
「うーん」
「なんだか」
「今ひとつね」
小学生のころに戻ったように俺たち2人は大笑いした。もっとも彼女にとって俺は知り合って一日の存在にに過ぎない。
それからも姫野は何度か尋ねてきた。親しくなった女子もたまに来る。戸惑いながら続ける俺の女子高校生生活を球体はいつもからかうが、それは視聴者たちも喜んでいることになるので気にしなかった。
ある意味平和な数週間が過ぎたわけである。しかし俺の精神状態はとても平穏といえる状態ではない。
まずいつ始まるかもしれない第2回戦への恐怖がある。少なくとも現状では逃げ出すことはできない。
また女性の肉体に閉じ込められていると言う違和感は奇妙な圧迫感をもたらした。そして止むに止まれず胸や股間を刺激するとこの体を男として犯すイメージより男に犯されるイメージがわき気持ち悪い。そういえば未だに自慰行為も胸を触ったり枕に股をこすりつける程度で終っている。体に何か、たとえば指を入れるのは恐いし……試そうとしたときとても痛かったのだ。
そうそう自宅の前も何度か通ってみた。両親と弟の姿も何度か見た。3人は日常に戻っており遠目には俺の不在は何の影響も与えていない。
俺の心の閉塞感は4週目のある夜、破られた。
<つづく>
20090627初出
20090627改訂
20090630追加
戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ
文庫で購入、読了。
サイト運営とカ、(たまに自分の本業とかw)に落とし込みながらゆっくり読むべし。
サイト運営とカ、(たまに自分の本業とかw)に落とし込みながらゆっくり読むべし。
![]() | 戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ (PHP文庫) (2009/05/02) HRインスティテュート 商品詳細を見る |
仮面ライダーW
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090629-00000010-oric-ent
合体ものだぁ。
女の子と合体させて、とか、片方が女の子になって、とか夢とか胸とか膨らむなぁ。
合体ものだぁ。
女の子と合体させて、とか、片方が女の子になって、とか夢とか胸とか膨らむなぁ。
キイナ 不可能犯罪捜査官 第7話 偽りの記憶
催眠術を使って人を操り犯罪を行う女。
彼女を追い詰めるキイナだが、いつの間にか催眠術を掛けられて意識が遠くなっていく・・・と言う展開がなかなか良いですな。まぁ、主人公なのでぶっちゃけ掛ったふりなんですが、それはそれとして。
彼女を追い詰めるキイナだが、いつの間にか催眠術を掛けられて意識が遠くなっていく・・・と言う展開がなかなか良いですな。まぁ、主人公なのでぶっちゃけ掛ったふりなんですが、それはそれとして。
![]() | キイナ~不可能犯罪捜査官~DVD-BOX (2009/05/22) 菅野美穂平岡祐太 商品詳細を見る |
【多数意見募集】男性に質問です、男装癖のある女性ってどう思いますか?
【多数意見募集】男性に質問です、男装癖のある女性ってどう思いますか?
個人的には「男装癖のある女性」に関しては「似合っていれば好ましい」と思う。
だが一般男性の意見をいくら聞いても肝心の彼氏がどう思うかは読めない。
したがって、彼氏に受け入れられると質問者さんが確信するまではカミングアウトはしない方が良いと思う。
何もかもたった一人の彼氏に求めないで、彼氏には彼氏の役割をやって頂いて、男装をほめてもらうのは他の人にやってもらっても良いのではないか。
「彼に隠し事をしている今がとても辛くてカミングアウトしたいです…。」に関して、
隠し事の一つや二つは構わないのではないか。単なる趣味の話ですし。
・・・認証が面倒でなければカキコするところですが。
個人的には「男装癖のある女性」に関しては「似合っていれば好ましい」と思う。
だが一般男性の意見をいくら聞いても肝心の彼氏がどう思うかは読めない。
したがって、彼氏に受け入れられると質問者さんが確信するまではカミングアウトはしない方が良いと思う。
何もかもたった一人の彼氏に求めないで、彼氏には彼氏の役割をやって頂いて、男装をほめてもらうのは他の人にやってもらっても良いのではないか。
「彼に隠し事をしている今がとても辛くてカミングアウトしたいです…。」に関して、
隠し事の一つや二つは構わないのではないか。単なる趣味の話ですし。
・・・認証が面倒でなければカキコするところですが。
可愛いって言われたい。
可愛いって言われたい。
おかし製作所はそんなひそかな願いをひそかに応援します。
おかし製作所はそんなひそかな願いをひそかに応援します。
ユウジンと魔法のランプ(1)
作.isakoさん
キャライラスト.春乃 月さん
はい、陛下。魔法のランプのその後のことが知りたいと仰せですか? 少し長くなりますが……
はい、はい。ようございましょう。ではお話いたします。
皇女と結ばれ支那の皇帝となったアラジンの頭脳は少しも雲っておりませんでした。万能のランプの精も悪人の手に渡れば子孫や国民に多大な被害をもたらすことを知っておったのでございます。それで妻となった姫の兄弟たちを破り国内が落ち着いたとき西方を侵す蛮族への親征を行いランプを持参し自らの手で厳重に隠したのでございました。
いえいえ、もちろんこれで終わりではございません。アラジンは将来危機が起こったとき自分の様な者が再びランプを手にすることができるよういくつかのヒントを残したのでございます。
案の定数百年ののちあれほど栄えたアラジンの王朝も衰退し大陸の東は戦乱に見舞われました。と申しましてもアル=クルアーンの教えが誕生するはるか前にございます。
アラーは偉大なり!
さてランプの後継者となる若者オ=グラ=ユウジンはアラジンの国よりさらに東、海を隔てた島国で生まれました。そして……
☆
最後の行程は1人で歩み俺は中原よりはるか西の廃墟に立っていた。羊皮紙に書かれた指示に従い石版をのけて地下に進む。
ランプの置かれた石室までは半刻ほどもかかった。手をかざすと石室のたった一つしかない入り口は大石でふさがれた。別に騒ぐことはない。ランプが本物なら廃墟の上に泰山が乗っていても問題ないのだから。
さすがにランプをこするときは緊張して手が震えた。何年にも及ぶ苦労が報われるのか……それともここで。
俺は知らないうちに笑い声を上げていた。ランプから不思議な霧が出始めたのだ。成功だ!
「ランプの精なのか?」
思わず母国語で叫んだ。
「ハイハイサー、ご主人様」
「え?」
「おや、時代が違いましたか。ご存じなければYou Tubeで」
「すまないランプの精よ。オマエがなにを言っているのかわからない」
「これは失礼を。私めには時間も意味をなしませんので」
「お前ははるか太古か未来の話をしているのだな」
「賢明なお方ですな」
「ありがとう。誉められたついでに聞いてしまおう。お前はランプの持ち主の願いを何でもかなえてくれるんだね?」
「はい。しかし」
「何か条件があるのか」
「過度の歴史への干渉を避けるため願い事は3つに限らせていただきます」
「3つか」
「不足ですか」
「いや、それだけあれば充分だ。まず」
「少々お待ちを」
「まだ何か条件が?」
「いえ。願い事は一度にお願いします」
「なぜ?」
「3つしかないゆえ、互いに干渉するとご主人様は満足を得られないでしょう」
「わからないなあ。たとえば?」
「最初に富を願われたとします」
「ありえる望みだね」
「次に国王になりたいと」
「わかった。国王と言っても貧乏な国もある」
「オホホ、オホホホホー。大正解ですぞ」
「3つの望みの最初は国々を平和にできるほどの力、2つ目はそれを十分に維持するだけの寿命、それから」
「永遠とは参りませんよ。私の力の及ぶ限りということになります」
「どのくらい」
「私と同じくらいです」
「長いんだよね」
「人よりは十分に。ただ何年とは申せません。何しろ魔力が尽きれば消えますからね。それで最後は?」
「えーっと」
「遠慮なさらずに」
「美女が欲しい」
「美しいだけでよろしいので?」
「頭が良くて優しい美人というとそれだけで3つじゃないのか?」
「御明察。では美しい肉体だけでよろしいのですね?」
「ああ」
「私は自由だぞ!」
「え?」
気がつくと俺の姿はランプの精(ジン)の眷属と化していた。しかも妖艶な女魔人(ジニー)である。

「どういうことだ。だましたのか」
「そうじゃない。よく考えてみなさい。望みは全てかなえた」
「しかし」
「まあまてこの種の願い事の困難さは十分心得ているはずだぞ」
「しかしこのランプは阿羅人(アラジン)の」
「前の主人のアラジンはランプが悪意を持つ者の手に渡った時の危険をよく心得ていた。そのためいくつか制限をかけたのだ。願い事を三つに限ったのもそのためだ」
「私の願いを曲解して」
「願いを厳しく判断するのはアラジンの命令による。それにお前のことは気に入っているのだぞ」
「元の姿に戻してはもらえないのか」
「やりたいことがあって力をのぞんだはずだ。それに魔人になったのは女の姿と同様願い事のせいなのだ」
「どういうことだ」
「良いか。摩訶不思議な力を持つものがこの世界の支配者になれるならお前たちが魔や神と呼ぶものは簡単にそれが実現できよう」
「たしかに」
「太古の伝説を別にすればそのような話は聞いたことがないはずだ」
「うん」
「『力』を持つものは直接支配できない。それが暗黙のおきてだ」
「俺はどうすればいいのだ」
「志を同じくするものを探して助けるのだ」
「ランプの精のように?」
「異なる世界の存在である私と違いお前には拠りどころとなるランプや壷は必要がない。自由に動ける」
「なるほど」
「お前は世を平和にするためなら身はどうなっても良いと決心してここに来たはずだ。姿かたちが変わったくらいであきらめるのか」
「指摘どおりだ。少し恥ずかしい。でも元に戻れるのかどうかは教えてほしい」
「全ての希望を果たしたとき私が訪ねよう」
「それでは?」
「そのとき特別に四つ目の願いを聞いてあげよう。さらばだ、パパラパー」
アラジンと魔法のランプ(Wikipedia)
中国で母親と貧乏暮らしをしていたアラジンが叔父を騙るアフリカ出身の魔法使いにそそのかされて、穴倉の中にある魔法のランプを手にしたところから物語が始まる。
そのランプを擦ると魔神があらわれた。魔神はランプを擦った者の願いを叶える力があり、アラジンはその力を使って大金持ちになり、皇帝の娘と結婚する。
しかし、魔法使いは魔法のランプを奪い取り、アラジンの御殿ごと皇帝の娘をアフリカに連れて行ってしまう。だが、アラジンは指輪の魔神の力を借りるなどして、魔法使いから魔法のランプを取り返す。
☆
こうしてジニーに変身したユウジンはまた1人になりました。魔力は使い慣れていませんでしたが、先ほどランプの精が使った魔力の流れを思い出し石室からの脱出に成功します。そして支那の国内の事情を知ろうと旅に出ました。これまでも旅はしていたもののランプの捜索を第一にしていたので情報、特に軍事的なものを意識していなかったのです。
旅は波乱に満ちたものでした。それは続く戦乱で人心が荒廃していたためだけでなくユウジンが女性化していたためでもあります。一度などは何度も夜這いをかけてくる醜男を切って捨てざるを得なくなる事件もおきました。
このころ既にアラジン(太祖阿羅人)が開いた蘭王朝の権威は地に落ち、首都ランプ(蘭府)も戦塵と大火で荒廃し、皇帝は近くの領主の元に落ち延びると言う目も当てられない状況になっていました。
そして数年がすぎ十分な情報を集めた所でユウジンは多くの秀才が集まる有名な先生の門をたたき研究と研鑽を始めたのです。姓は倉、名は優、字を仁尼と名のりました。男と同じように名乗ったのは女の身なれど男として生きるという意思の表示なのです。
☆ ☆
☆ ☆
学問に終わりはなく学べば学ぶほどわからないことが増える。それに最近は西方の宗教で言う煩悩に悩まされることも多い。男の心と淫乱なジニーの肉体をもつ身の辛さだ。それに耐えられるのは私の意地のおかげかもしれない。この地に平和をもたらす力がほしいと言った偉そうな人間が肉欲に溺れたらランプの精は愉快そうに大笑いするだろう。ランプの精は近くに来ることもあるのだろうか。
少し早く目が覚めたので布団の中でいろいろ考えているうちに外は明るくなってきた。床から出ようと起き上がると女の子の元気な声が聞こえてくる。
「仁尼娘娘(ジニーニャンニャン)!」
近所の少女華である。
「起きてるわよ、どうしたの?」
「大変なの娘娘、こんな大男が」
ここで華は身振り手振りで大猿のような男の形態を真似たので私は大笑いをしてしまった。
「まあ! そんな人間がいるのかしら」
「本当だってば。娘娘の家の場所を聞いてきたから遠回りの道を教えてやったわ」
「あらあら」
「逃げるなら今のうちよ」
「でも華、この村で私の庵のことをたずねたのなら先生の紹介のはずよ」
「そうなの?」
「ええ」
「私がお茶を出すわ」
頼もしい護衛の申し出を私は受けることにした。
華の話から察するとごつい外見はともかくどうやらある程度の身分の者らしい。しかし私の望む話である可能性は低いだろう。この地に身を落ち着けてから何度か誘いを受けたことはある。しかしそれは全て私を宰相の地位に導く話ではなく、妻妾にと望むものであった。
しかし驚いたことに現れた大男は私を配下にと望んだ。こうなると問題はこの男の実力である。男は城を持っているといってもこの辺りの大領主の北方の警備に当たる大きな砦程度の城をあずかっているだけだ。ただ外様でそれだけ信頼されるのは男に徳がある証拠かもしれない。私は即断を避けて考えさせていただくとだけ言った。
期待を持たせるような言い方はしなかったつもりだが、男はそれからも何度か我が庵を訪ねてきた。ただ私が出庵を決めたのは熱心な彼の勧誘ではなく、男に華がなついたためだった。
必ず側に呼んでほしいという華を残し私は男と北へ向かった。周りの景色が変わるたびに男は私に質問し、私は攻守それぞれの場合の布陣を講釈した。経験豊富な彼には私の実力がわかっただろう。もっとも私の実戦経験は乏しい。
城のある地に着き城門をくぐると1人の大男が私の前に立ちふさがった。
「戦場は女子の来るところではない。床(とこ)の中ならいざ知らず」
主君の苦虫をかみつぶしたような表情にもかかわらず。男は長柄の武器をしごいた。
「仁尼さま、あの者は放っておいて。吾が止めますゆえ」
「そうも参りません。城の中にもあの者に同調するものは多いはず。ここで力を示しておくべきでしょう」
「しかし……あの者の武勇はご存知かと」
「まあ見ててください」
今天下に1対1であの男に勝てる者はいないかもしれない。ただし人間に限ればだ。私は肉体的にもそれを凌駕していた。
私は領主の横に来た長髭の男から大薙刀を借り馬腹を蹴った。
勝負はなかなかつかない。腕力では私が勝るものの実戦を経てきた相手の習熟度は段違いなのだ。圧倒的な優位を見せつけて降参させようという作戦は捨てるしかない。かといって力で強引に押せば命にかかわるかもしれないし、ここで魔力を見せるのはまずい。私は運良く相手の武器を上方に跳ね上げることに成功した隙に馬を寄せて組み付きともに地面に落ちた。足を絡ませ胸を付き合わせると兵隊たちがはやし立てる。男は顔を真っ赤にして叫んだ。
「降参だ! 俺の負けでいい」
私はそのまま馬に跨り城主の元に戻った。彼は
「張将軍と引き分けとはすごい」としきりに感心している。私は薙刀を持ち主に返した。
「ありがとう。素晴らしい武器ですね。えーっと?」
「関と申します。雲長とお呼びください、軍師殿」
☆ ☆
こうしてユウジンはアラジンから23代目にあたる阿備玄徳に仕えることになったのです。
<つづく>
キャライラスト.春乃 月さん
はい、陛下。魔法のランプのその後のことが知りたいと仰せですか? 少し長くなりますが……
はい、はい。ようございましょう。ではお話いたします。
皇女と結ばれ支那の皇帝となったアラジンの頭脳は少しも雲っておりませんでした。万能のランプの精も悪人の手に渡れば子孫や国民に多大な被害をもたらすことを知っておったのでございます。それで妻となった姫の兄弟たちを破り国内が落ち着いたとき西方を侵す蛮族への親征を行いランプを持参し自らの手で厳重に隠したのでございました。
いえいえ、もちろんこれで終わりではございません。アラジンは将来危機が起こったとき自分の様な者が再びランプを手にすることができるよういくつかのヒントを残したのでございます。
案の定数百年ののちあれほど栄えたアラジンの王朝も衰退し大陸の東は戦乱に見舞われました。と申しましてもアル=クルアーンの教えが誕生するはるか前にございます。
アラーは偉大なり!
さてランプの後継者となる若者オ=グラ=ユウジンはアラジンの国よりさらに東、海を隔てた島国で生まれました。そして……
☆
最後の行程は1人で歩み俺は中原よりはるか西の廃墟に立っていた。羊皮紙に書かれた指示に従い石版をのけて地下に進む。
ランプの置かれた石室までは半刻ほどもかかった。手をかざすと石室のたった一つしかない入り口は大石でふさがれた。別に騒ぐことはない。ランプが本物なら廃墟の上に泰山が乗っていても問題ないのだから。
さすがにランプをこするときは緊張して手が震えた。何年にも及ぶ苦労が報われるのか……それともここで。
俺は知らないうちに笑い声を上げていた。ランプから不思議な霧が出始めたのだ。成功だ!
「ランプの精なのか?」
思わず母国語で叫んだ。
「ハイハイサー、ご主人様」
「え?」
「おや、時代が違いましたか。ご存じなければYou Tubeで」
「すまないランプの精よ。オマエがなにを言っているのかわからない」
「これは失礼を。私めには時間も意味をなしませんので」
「お前ははるか太古か未来の話をしているのだな」
「賢明なお方ですな」
「ありがとう。誉められたついでに聞いてしまおう。お前はランプの持ち主の願いを何でもかなえてくれるんだね?」
「はい。しかし」
「何か条件があるのか」
「過度の歴史への干渉を避けるため願い事は3つに限らせていただきます」
「3つか」
「不足ですか」
「いや、それだけあれば充分だ。まず」
「少々お待ちを」
「まだ何か条件が?」
「いえ。願い事は一度にお願いします」
「なぜ?」
「3つしかないゆえ、互いに干渉するとご主人様は満足を得られないでしょう」
「わからないなあ。たとえば?」
「最初に富を願われたとします」
「ありえる望みだね」
「次に国王になりたいと」
「わかった。国王と言っても貧乏な国もある」
「オホホ、オホホホホー。大正解ですぞ」
「3つの望みの最初は国々を平和にできるほどの力、2つ目はそれを十分に維持するだけの寿命、それから」
「永遠とは参りませんよ。私の力の及ぶ限りということになります」
「どのくらい」
「私と同じくらいです」
「長いんだよね」
「人よりは十分に。ただ何年とは申せません。何しろ魔力が尽きれば消えますからね。それで最後は?」
「えーっと」
「遠慮なさらずに」
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「美しいだけでよろしいので?」
「頭が良くて優しい美人というとそれだけで3つじゃないのか?」
「御明察。では美しい肉体だけでよろしいのですね?」
「ああ」
「私は自由だぞ!」
「え?」
気がつくと俺の姿はランプの精(ジン)の眷属と化していた。しかも妖艶な女魔人(ジニー)である。

「どういうことだ。だましたのか」
「そうじゃない。よく考えてみなさい。望みは全てかなえた」
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「しかしこのランプは阿羅人(アラジン)の」
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「私の願いを曲解して」
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「どういうことだ」
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「たしかに」
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「うん」
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「俺はどうすればいいのだ」
「志を同じくするものを探して助けるのだ」
「ランプの精のように?」
「異なる世界の存在である私と違いお前には拠りどころとなるランプや壷は必要がない。自由に動ける」
「なるほど」
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「指摘どおりだ。少し恥ずかしい。でも元に戻れるのかどうかは教えてほしい」
「全ての希望を果たしたとき私が訪ねよう」
「それでは?」
「そのとき特別に四つ目の願いを聞いてあげよう。さらばだ、パパラパー」
アラジンと魔法のランプ(Wikipedia)
中国で母親と貧乏暮らしをしていたアラジンが叔父を騙るアフリカ出身の魔法使いにそそのかされて、穴倉の中にある魔法のランプを手にしたところから物語が始まる。
そのランプを擦ると魔神があらわれた。魔神はランプを擦った者の願いを叶える力があり、アラジンはその力を使って大金持ちになり、皇帝の娘と結婚する。
しかし、魔法使いは魔法のランプを奪い取り、アラジンの御殿ごと皇帝の娘をアフリカに連れて行ってしまう。だが、アラジンは指輪の魔神の力を借りるなどして、魔法使いから魔法のランプを取り返す。
☆
こうしてジニーに変身したユウジンはまた1人になりました。魔力は使い慣れていませんでしたが、先ほどランプの精が使った魔力の流れを思い出し石室からの脱出に成功します。そして支那の国内の事情を知ろうと旅に出ました。これまでも旅はしていたもののランプの捜索を第一にしていたので情報、特に軍事的なものを意識していなかったのです。
旅は波乱に満ちたものでした。それは続く戦乱で人心が荒廃していたためだけでなくユウジンが女性化していたためでもあります。一度などは何度も夜這いをかけてくる醜男を切って捨てざるを得なくなる事件もおきました。
このころ既にアラジン(太祖阿羅人)が開いた蘭王朝の権威は地に落ち、首都ランプ(蘭府)も戦塵と大火で荒廃し、皇帝は近くの領主の元に落ち延びると言う目も当てられない状況になっていました。
そして数年がすぎ十分な情報を集めた所でユウジンは多くの秀才が集まる有名な先生の門をたたき研究と研鑽を始めたのです。姓は倉、名は優、字を仁尼と名のりました。男と同じように名乗ったのは女の身なれど男として生きるという意思の表示なのです。
☆ ☆
☆ ☆
学問に終わりはなく学べば学ぶほどわからないことが増える。それに最近は西方の宗教で言う煩悩に悩まされることも多い。男の心と淫乱なジニーの肉体をもつ身の辛さだ。それに耐えられるのは私の意地のおかげかもしれない。この地に平和をもたらす力がほしいと言った偉そうな人間が肉欲に溺れたらランプの精は愉快そうに大笑いするだろう。ランプの精は近くに来ることもあるのだろうか。
少し早く目が覚めたので布団の中でいろいろ考えているうちに外は明るくなってきた。床から出ようと起き上がると女の子の元気な声が聞こえてくる。
「仁尼娘娘(ジニーニャンニャン)!」
近所の少女華である。
「起きてるわよ、どうしたの?」
「大変なの娘娘、こんな大男が」
ここで華は身振り手振りで大猿のような男の形態を真似たので私は大笑いをしてしまった。
「まあ! そんな人間がいるのかしら」
「本当だってば。娘娘の家の場所を聞いてきたから遠回りの道を教えてやったわ」
「あらあら」
「逃げるなら今のうちよ」
「でも華、この村で私の庵のことをたずねたのなら先生の紹介のはずよ」
「そうなの?」
「ええ」
「私がお茶を出すわ」
頼もしい護衛の申し出を私は受けることにした。
華の話から察するとごつい外見はともかくどうやらある程度の身分の者らしい。しかし私の望む話である可能性は低いだろう。この地に身を落ち着けてから何度か誘いを受けたことはある。しかしそれは全て私を宰相の地位に導く話ではなく、妻妾にと望むものであった。
しかし驚いたことに現れた大男は私を配下にと望んだ。こうなると問題はこの男の実力である。男は城を持っているといってもこの辺りの大領主の北方の警備に当たる大きな砦程度の城をあずかっているだけだ。ただ外様でそれだけ信頼されるのは男に徳がある証拠かもしれない。私は即断を避けて考えさせていただくとだけ言った。
期待を持たせるような言い方はしなかったつもりだが、男はそれからも何度か我が庵を訪ねてきた。ただ私が出庵を決めたのは熱心な彼の勧誘ではなく、男に華がなついたためだった。
必ず側に呼んでほしいという華を残し私は男と北へ向かった。周りの景色が変わるたびに男は私に質問し、私は攻守それぞれの場合の布陣を講釈した。経験豊富な彼には私の実力がわかっただろう。もっとも私の実戦経験は乏しい。
城のある地に着き城門をくぐると1人の大男が私の前に立ちふさがった。
「戦場は女子の来るところではない。床(とこ)の中ならいざ知らず」
主君の苦虫をかみつぶしたような表情にもかかわらず。男は長柄の武器をしごいた。
「仁尼さま、あの者は放っておいて。吾が止めますゆえ」
「そうも参りません。城の中にもあの者に同調するものは多いはず。ここで力を示しておくべきでしょう」
「しかし……あの者の武勇はご存知かと」
「まあ見ててください」
今天下に1対1であの男に勝てる者はいないかもしれない。ただし人間に限ればだ。私は肉体的にもそれを凌駕していた。
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「降参だ! 俺の負けでいい」
私はそのまま馬に跨り城主の元に戻った。彼は
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「ありがとう。素晴らしい武器ですね。えーっと?」
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☆ ☆
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<つづく>
ドラゴンクエストIX 星空の守り人
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ザ・階級偏差値
ザ・階級偏差値をなんとなくゲットして、なんとなく読了。
若干シニカルになりつつも、下流に落ちる恐怖を煽って奮起を促す、みたいな?
オレの手持ちの情報ではTSファンには現実逃避的な傾向が(あたり前だが)あって、それはひょっとして下流層が多い現れなのかもしれないな、とか少し思った。ビジネス書もあんまり売れないしなw
バースティンがあげる貧困層を再生産する会話の特徴(p.181)
1)文法的に構造が単純
2)文が短い
3)形容詞・副詞の種類が少ない
4)理由と結論が合わない
若干シニカルになりつつも、下流に落ちる恐怖を煽って奮起を促す、みたいな?
オレの手持ちの情報ではTSファンには現実逃避的な傾向が(あたり前だが)あって、それはひょっとして下流層が多い現れなのかもしれないな、とか少し思った。ビジネス書もあんまり売れないしなw
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1000万ヒット記念作品 神魔大戦ラグナゲドン3(13-16ページ目) <18禁>
今週も落とさずに頑張りました。
★ラグナゲドンは別の場所に移動しています。
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不透明な時代を見抜く「統計思考力」
発売時点から気になっていた本ですが、やっと買ってすぐ読みました。
数字はオレの知識欲を刺激する。
ブラックショールズの式は前提の、”正規分布”がほんとは正規分布でないとこに気をつけろ!財産するぜ!
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GANTZ 26 figma付初回限定版 に付いた投稿TS小説(1)(2)
作.amahaさん
プロローグ
死んだはずの俺は見知らぬマンションの1室で目覚めた。室内の家具はそろっており冷蔵庫には食べ物もある。奇妙なものと言えばリビングの中央にある黒い球体だけだ。
窓からは見覚えのある景色が見えるが、窓もドアも開かない。
なすすべもなく日が暮れるのを窓から見ているうちに空腹を覚えた。死んだはずなのに。
冷蔵庫にあった冷凍ピザを温めてコーラで流し込んだ。
もう一度ドアを試そうと立ち上がったとき球体から奇妙な音楽が鳴り声が聞こえた。
俺の質問や叫びを無視し、球体は変な日本語で変な話を始めた。それによると球体は地球外の産物で俺は地球代表として選ばれたので異星人と地球の存続をかけて戦わねばならないらしい。
「なぜ俺なんだ」
『お前の宿命なのねん』
「俺は事故で死んだはずだ」
『偽装だよ。お前を世間から隔離するための』
「断ると言っても無駄なんだろうな」
『ルールはさっき言ったとおりさ。まあオイラがコーチしてやるからがんばるんだな。喜べ最初はホームだ』
「まてよ。戦うといわれても異星人なら、あるいは俺がアウェーで異星に行ったら大気が呼吸できないとか重力が違うとか」
『心配ないのねん。このバトルスーツを着てみるべし』
球体の一部が引き出しのように開くと黒い衣装と武器らしいものがある。素材は柔らかでかなり伸縮性もあった。
『直に着ることよん』
「下着も?」
『全部脱いで』
「やれやれ」
『60秒前』
「おいおい」
あわてて着て教えられた圧着ボタンを押したとたん全身が傷みに襲われた。
騙された? しかし何のために。奴は俺に強制できるだろうに……。
『5秒前 3,2,1』
目覚めると肉体は女性化していた。ボケをかませる暇もなく胸のふくらみと先ほどまでいやと言うほどあった股間の圧迫感の消失で気付かざるを得ない状況ってわけ。
次々起こる異常事態に俺の精神が冷静に対応していたわけじゃない。錯乱したっておかしくないと思う。それなのに思考が曇らないのは先ほどから頚部に感じている熱い感じのせいだと思う。鎮静剤か何かを経皮的に注入されたのだ。球体が異星産だとしても地球人の生理は十分研究済みってわけだ。
『どうしたのかわいこちゃん。おいらに言ってごらん』
まあ言語情報の収集には妙な偏りがあるが……。
「うるさい! それより戦わせるのに女性化するって矛盾じゃないのか?」
『スポンサー獲得のため我慢するのねん』
「スポンサー?」
『オイラのような最新鋭の機械を使うには莫大な経費かかかる。こんな辺境のしかも遅れた星に大して価値のあるものはないから、かわいこちゃんが自分で稼ぎながら戦うのねん』
「うーん」
俺は引き出しに残るヘルメットと武器らしい物を手に取りながら考えた。
どうやら冗談ではないらしい。それに俺を騙すためにしこまれたドッキリとも思えない。
『まあ戦ってみればコツはわかるぞ。ゴングはもうすぐなのねん』
「ちょっと待てよ。この武器は? 使えば相手は死ぬんじゃないだろうな」
『相手の死こそかわいこちゃんの確実な勝利だよん』
俺にそんなことができるのか? 少なくとも相手がヒューマノイドの場合。
「他には?」
『相手が全面降伏した場合も勝ちだ。でも相手は降参しないだろうしおいらは勧めないね』
「なぜ?」
『その種族は滅びるんだぞ。宇宙にただ1人生き残って何の意味がある』
「……」
『それより装備や今回の敵のことをオイラが教えよう。もうあまり時間がない』
「誰が決めたんだ。人類やその異星人の未来をこの戦いで決めるなんて」
『視聴者さ』
「し」
『ファンがつけばスポンサーが増えて武器も良くなるがんばるんだな』
☆ ☆ ☆
球体がケンタッキーとなずけた俺の敵は2足歩行の鳥形生物だった。今回の装備はほぼ互角、ただ相手は地球の重力なら短い距離だが飛行可能で聴覚も人を超えると言う。
「それで俺のほうの長所は」
『胸が感じやすい』
「なんだと!」
実のところスーツにこすれる乳首の感覚にほとほと手を焼いていた。
『冗談だって』
「それで?」
『ナイスバディ』
俺は思い切り球体を蹴り上げた。
(1) 緒戦
閉じ込められていた部屋から未知の科学技術で戦いの場に飛ばされた。SFドラマで言う転送ってやつだ。場所は俺の自宅や学校がある町、文字通りのホームってことになる。もう日はとっくに暮れて時刻は9時過ぎで一帯の住宅街では人通りも少ない。それでもこの恰好では通報されそうだ。教えられたパネルを操作して熱光学迷彩を使用し透明になる。敵もほぼ同レベルの技術力の生産品を使っているので透明化は有効と教えられている。
辺りは静かで平和である。しゃがんで隠れている塀の中から楽しげな家族の声が聞こえてくると孤独感を覚えた。うるさくても球体の声を聞いているときには感じなかった。不意に視野が歪む。涙だ。あわててゴーグルをあげて涙をぬぐう。今回はホームで大気が呼吸可能なのでフェイスマスクはずらしている。 涙なんて……女になったためか。いや関係ないだろう。この異常な状況下では地球一勇敢な男だって泣きたくなるに違いない。
ここになって透明化したのだから隠れている必要もないことに気付き苦笑しながら立ち上がった。この勝負に引き分けはない。ああ、ないわけではないけれどその時点で両方の種族とも抹消される。とにかく今日は勝って球体と交渉し地球人代表を降ろしてもらおう。確か最初の説明で戦闘中以外のとき代表に問題が生じれば交代することはありうると言っていたから。
それにしてもいったいどうやって敵を見つければいいのだろう。装備にレーダーの役を果たすものはあり生体反応を表示しているけど、この辺りの住人のものである。自動的に敵をターゲットしてくれるわけではないのだ。
とりあえずこの辺りで一番明るいコンビニを目指す。歩いていると嫌でも下腹部が湿ってくるのに気付かされる。スーツの下でこすれる乳首と自らの妄想で興奮しているのだ。くそ! 早く終わらせ女体化スーツを脱ぎ男に戻ってもっとふさわしい人物と交代してもらうのだ。
コンビニの周りを歩きながら光の歪みを捜す。あいても同じく透明化しているなら肉眼で捜すしかない……と思う。
後ろから話し声がするので避けながら振り向く。
「明日学校に行っても士郎君に会えないなんて」
「僕だって信じられないよ、岡が」
幼馴染の姫野恵と親友の古田だ。姫野の顔には涙の跡があった。2人はコンビニ前で行われている水道工事の穴を避けてコンビニの入り口に近づいていく。彼らはこんな時間なのに制服を着ていた。恵が握り締めているのは数珠……ああ。
「俺は」
そう叫びかけたとき閃光が何度かきらめき俺の左手が蒸散した。
(敵だ)
あわててとおりの反対側までジャンプした。スーツのおかげで俺はアメコミヒーローなみの、いやヒロインなみの運動能力を発揮できる。
スーツ搭載のAIがうるさく喚いている。
『止血完了。ペンタゾシン及びエピネフリン投与』
痛みも感じず気を失うこともなかったのはAIのおかげかもしれない。見ると左手首から先はきれいに消えていた。幸いスーツがすっかり覆っているので傷口は見えない。俺はそういうのは苦手なので助かる。感心してる場合じゃない。相手が俺を見つけたのは叫んだせいだろう。確か聴覚が鋭敏だっけ……うかつだったなあ。射線からすると奴は上空だ。それにしてもなぜ止めを撃ってこない? ひょっとしてレーダー装備を持っていないのだろうか。技術的には同等でも選択はそれぞれだ。しかしなぜ……とにかく聴覚に頼っているのは間違いない。姿の見えない音源こそ敵と言うわけだ。
まずAIを黙らせた。普通なら心配ない音量だけれど相手の能力は未知数なのだ。もっと球体に詳しく聞けばよかった。
相手は上空で待機していて聞き耳を立てている。石を投げて撃たせて居場所を探るか? いやそれほど間抜けではないだろう。それなら今頃コンビニの回りは穴だらけのはずだ。水道工事の穴のせいで周りには小石が多い。先ほども古田が力任せに蹴っていたが敵は反応しなかった。
俺が空を見上げた。せめて星でも出ていれば見つける可能性もあるだろうが、あいにくの曇りだ。持久戦はまずい。AIによればかなり失血したために救急装置では治療が難しいらしい。
(勝率は万に一つもないけれど適当に空に向けてぶっ放すか)
そのとき俺の脳裏に浮かんだのは両親でも思い続けている女性でもなく涙の跡がある姫野の顔だった。
足音を立てぬようにコンビニの前に戻る。工事現場の穴をのぞくと人はいず、菅がむき出しになっていた。右手の武器を構えなおして水道管を撃ちすぐに飛びのいた。
俺の選んだ銃は鳥人間のようなエネルギー兵器ではなく実体弾を射出するタイプだ。エネルギー兵器は大気内では威力が減弱しやすい。できれば遠距離からの狙撃で決着をつけたかった。また弾丸は自壊するので後に証拠は残らない。
かなり太い水道管に空いた穴は巨大な噴水になり、上空に奇妙な影が、出来損ないのビッグバードのような影が浮き上がった。
弾を打ちつくした俺は指示されていた現場処分用のナノマシンを撒いてから立ち去り球体の転送を待った。
(2) 勝者の困惑
戻ってまず驚いたのは治っている左手ではなく飾り付けられた室内だった。球体は手や足を出すことができるのだろうか?
「なんだこれは」
『祝勝パーティーさ』
「パーティーって」
『まあオイラと2人きりだがな』
「しかし」
相手のことを考えると――それに特に目の前の鳥の丸焼きはちょっとね。
『戦闘スーツであれだけ動けば空腹のはずなのねん』
言われて見れば確かに腹は減っている。でも食べるのはスーツを脱いでからでいいだろう。
「でもとりあえず汗を流してくる」
『了解だよ~ん』
脱衣場についた俺は少し緊張しながら鏡の前で脱衣シーケンスを開始した。元の姿に戻るとき女性化と同じ時間がかかるなら今の――球体の言う――ナイスバディを少し拝めるはずなのだ。自分で言うのもおかしいが今の俺の肉体は男なら誰でも……まあ分かるだろう?
エアーが入り密着していたスーツが体から浮く。首のロックをはずすと縫い目も見えなかった背中が大きく開いた。かなり汗をかいたはずだけどスーツの機能なのか肌はさらりとしている。腕を抜いて上半身が出たとき思わず生唾を飲んでしまった。大きな胸はスーツを脱いでも重力を無視するようにきれいなラインを保っている。見とれていた俺はあまり時間がないと思いスーツを完全に脱ぎ捨てた。そして自分自身であるために決して自分のものにできない女神の体を見つめ続けた。
どのくらいその状態でいたのだろう。少なくとも5分は経過したに違いない。しかし胸はでかいままだし、股間はスースーするし、かすかに元の面影の残る顔も美女もままである。俺はあわてて球体の所に戻った。
「大変だ。女体化スーツを脱いでも変身しないぞ」
『目の保養だぜ』
しまった素っ裸だ。
「み、見るな!」
そう叫んで脱衣場に走りこみタオルを巻いた。鏡を見ると真赤な顔をした自分が可愛い……それどころじゃないや。あわててまたリビングに戻る。
「どうして男に戻らない」
『お前はなにを言っているんだ』
「だって戦いも終わったし」
『1回戦に勝っただけだ。それだけでもたいしたものだけど』
妥協するしかないかな。
「わかった。しかし2回戦までの間は関係ないだろう」
『費用の問題もある』
「え?」
『かわいこちゃんを男にするには費用がかかるのねん』
「この姿のまま2回戦までここで過ごせと」
『完璧な肉体だよん』
「俺は男だ」
『今は女』
「もどせ」
『まあ費用を負担するなら可能かもな』
「いくらだ」
『この星の通貨じゃ無理』
「どうすれば」
『スポンサーを捜すんだな』
「って?」
『オイラの言う通りにするしかないよ』
「くそ!」
そのとき俺の腹が鳴った。
『まあ食べなよ。せっかくのパーティーなんだし』
「あ、ああ」
食べ始めると止まらなかった。この細い体のどこに入るのかと思うくらい食べる。大食い選手権で優勝が狙えそうであった。球体は喋り続けている。少々うるさいが少しでも情報が欲しいので我慢することにした。
『そうそう。コンビニ前でかわいこちゃんの同級生が登場した場面はまるで銀河ドラマのようだと評判なのねん』
球体は俺の反応を見るように間をおいたが、胸に痛みを覚えた俺は無視して黙ったままミネラルウォーターをグラスに注いだ。姫野や古田とバカな冗談を言い合う日常は戻らないのか。
『お前たち人間を1人きりで閉じ込めておくと正常状態を維持できないと報告した』
「どういうことだ?」
鳥の丸焼き以外食べつくしたので俺はデザートに取り掛かっている。肉体の変化で好みも少し変わったのか甘いものが美味い。
『喜べ! かわいこちゃんも学校に行けるのさ。元の』
「え~」
見破られることはないだろうけどこの恰好で知り合いに会うのはなんだか恥ずかしい。
『じゃあこの部屋で過ごすかい? トーナメントの1回戦は試合数が多いから2回戦まで間があるよん』
それもうっとうしい。しかしだな……。
「でもそういう情報操作にも費用はかかるだろう?」
『かわいこちゃんは視聴者に気に入られたらしいからスポンサーは試合前に流す映像を作りたいのさ』
別に損はなさそうだ。コーヒーをそそぎながら返事をした。
「わかったよ」
『必要書類と制服だ。教科書などは朝までに用意する』
立ち上がって球体から飛び出した引き出しをのぞくとクリップでとめられた書類の束と俺の学校の制服があった。もちろん女生徒用の。
球体が制服を着てみろとうるさく言うのを無視して俺は疲れたからと寝室に下がった。タオルを取り去りクローゼットを見ると当然のように女性用ばかりだ。文句を言ってもしようがない。なるべく地味なショーツと大きめのTシャツを選んでベッドに入った。
眠いはずなのだが、戦いの興奮が続いているのかなかなか寝付けない。気になってうっかり乳首に触れたら女性化したことが強く意識される。股間に充実感が湧いてこないのがなんだか情けない。喪失感を補おうと大きな枕を股にはさみこすり付けているうちに寝てしまった。
<続く>
090625初出
090627改訂
プロローグ
死んだはずの俺は見知らぬマンションの1室で目覚めた。室内の家具はそろっており冷蔵庫には食べ物もある。奇妙なものと言えばリビングの中央にある黒い球体だけだ。
窓からは見覚えのある景色が見えるが、窓もドアも開かない。
なすすべもなく日が暮れるのを窓から見ているうちに空腹を覚えた。死んだはずなのに。
冷蔵庫にあった冷凍ピザを温めてコーラで流し込んだ。
もう一度ドアを試そうと立ち上がったとき球体から奇妙な音楽が鳴り声が聞こえた。
俺の質問や叫びを無視し、球体は変な日本語で変な話を始めた。それによると球体は地球外の産物で俺は地球代表として選ばれたので異星人と地球の存続をかけて戦わねばならないらしい。
「なぜ俺なんだ」
『お前の宿命なのねん』
「俺は事故で死んだはずだ」
『偽装だよ。お前を世間から隔離するための』
「断ると言っても無駄なんだろうな」
『ルールはさっき言ったとおりさ。まあオイラがコーチしてやるからがんばるんだな。喜べ最初はホームだ』
「まてよ。戦うといわれても異星人なら、あるいは俺がアウェーで異星に行ったら大気が呼吸できないとか重力が違うとか」
『心配ないのねん。このバトルスーツを着てみるべし』
球体の一部が引き出しのように開くと黒い衣装と武器らしいものがある。素材は柔らかでかなり伸縮性もあった。
『直に着ることよん』
「下着も?」
『全部脱いで』
「やれやれ」
『60秒前』
「おいおい」
あわてて着て教えられた圧着ボタンを押したとたん全身が傷みに襲われた。
騙された? しかし何のために。奴は俺に強制できるだろうに……。
『5秒前 3,2,1』
目覚めると肉体は女性化していた。ボケをかませる暇もなく胸のふくらみと先ほどまでいやと言うほどあった股間の圧迫感の消失で気付かざるを得ない状況ってわけ。
次々起こる異常事態に俺の精神が冷静に対応していたわけじゃない。錯乱したっておかしくないと思う。それなのに思考が曇らないのは先ほどから頚部に感じている熱い感じのせいだと思う。鎮静剤か何かを経皮的に注入されたのだ。球体が異星産だとしても地球人の生理は十分研究済みってわけだ。
『どうしたのかわいこちゃん。おいらに言ってごらん』
まあ言語情報の収集には妙な偏りがあるが……。
「うるさい! それより戦わせるのに女性化するって矛盾じゃないのか?」
『スポンサー獲得のため我慢するのねん』
「スポンサー?」
『オイラのような最新鋭の機械を使うには莫大な経費かかかる。こんな辺境のしかも遅れた星に大して価値のあるものはないから、かわいこちゃんが自分で稼ぎながら戦うのねん』
「うーん」
俺は引き出しに残るヘルメットと武器らしい物を手に取りながら考えた。
どうやら冗談ではないらしい。それに俺を騙すためにしこまれたドッキリとも思えない。
『まあ戦ってみればコツはわかるぞ。ゴングはもうすぐなのねん』
「ちょっと待てよ。この武器は? 使えば相手は死ぬんじゃないだろうな」
『相手の死こそかわいこちゃんの確実な勝利だよん』
俺にそんなことができるのか? 少なくとも相手がヒューマノイドの場合。
「他には?」
『相手が全面降伏した場合も勝ちだ。でも相手は降参しないだろうしおいらは勧めないね』
「なぜ?」
『その種族は滅びるんだぞ。宇宙にただ1人生き残って何の意味がある』
「……」
『それより装備や今回の敵のことをオイラが教えよう。もうあまり時間がない』
「誰が決めたんだ。人類やその異星人の未来をこの戦いで決めるなんて」
『視聴者さ』
「し」
『ファンがつけばスポンサーが増えて武器も良くなるがんばるんだな』
☆ ☆ ☆
球体がケンタッキーとなずけた俺の敵は2足歩行の鳥形生物だった。今回の装備はほぼ互角、ただ相手は地球の重力なら短い距離だが飛行可能で聴覚も人を超えると言う。
「それで俺のほうの長所は」
『胸が感じやすい』
「なんだと!」
実のところスーツにこすれる乳首の感覚にほとほと手を焼いていた。
『冗談だって』
「それで?」
『ナイスバディ』
俺は思い切り球体を蹴り上げた。
![]() | GANTZ 26 figma付初回限定版 (ヤングジャンプコミックス) (2009/06/19) 奥 浩哉 商品詳細を見る |
(1) 緒戦
閉じ込められていた部屋から未知の科学技術で戦いの場に飛ばされた。SFドラマで言う転送ってやつだ。場所は俺の自宅や学校がある町、文字通りのホームってことになる。もう日はとっくに暮れて時刻は9時過ぎで一帯の住宅街では人通りも少ない。それでもこの恰好では通報されそうだ。教えられたパネルを操作して熱光学迷彩を使用し透明になる。敵もほぼ同レベルの技術力の生産品を使っているので透明化は有効と教えられている。
辺りは静かで平和である。しゃがんで隠れている塀の中から楽しげな家族の声が聞こえてくると孤独感を覚えた。うるさくても球体の声を聞いているときには感じなかった。不意に視野が歪む。涙だ。あわててゴーグルをあげて涙をぬぐう。今回はホームで大気が呼吸可能なのでフェイスマスクはずらしている。 涙なんて……女になったためか。いや関係ないだろう。この異常な状況下では地球一勇敢な男だって泣きたくなるに違いない。
ここになって透明化したのだから隠れている必要もないことに気付き苦笑しながら立ち上がった。この勝負に引き分けはない。ああ、ないわけではないけれどその時点で両方の種族とも抹消される。とにかく今日は勝って球体と交渉し地球人代表を降ろしてもらおう。確か最初の説明で戦闘中以外のとき代表に問題が生じれば交代することはありうると言っていたから。
それにしてもいったいどうやって敵を見つければいいのだろう。装備にレーダーの役を果たすものはあり生体反応を表示しているけど、この辺りの住人のものである。自動的に敵をターゲットしてくれるわけではないのだ。
とりあえずこの辺りで一番明るいコンビニを目指す。歩いていると嫌でも下腹部が湿ってくるのに気付かされる。スーツの下でこすれる乳首と自らの妄想で興奮しているのだ。くそ! 早く終わらせ女体化スーツを脱ぎ男に戻ってもっとふさわしい人物と交代してもらうのだ。
コンビニの周りを歩きながら光の歪みを捜す。あいても同じく透明化しているなら肉眼で捜すしかない……と思う。
後ろから話し声がするので避けながら振り向く。
「明日学校に行っても士郎君に会えないなんて」
「僕だって信じられないよ、岡が」
幼馴染の姫野恵と親友の古田だ。姫野の顔には涙の跡があった。2人はコンビニ前で行われている水道工事の穴を避けてコンビニの入り口に近づいていく。彼らはこんな時間なのに制服を着ていた。恵が握り締めているのは数珠……ああ。
「俺は」
そう叫びかけたとき閃光が何度かきらめき俺の左手が蒸散した。
(敵だ)
あわててとおりの反対側までジャンプした。スーツのおかげで俺はアメコミヒーローなみの、いやヒロインなみの運動能力を発揮できる。
スーツ搭載のAIがうるさく喚いている。
『止血完了。ペンタゾシン及びエピネフリン投与』
痛みも感じず気を失うこともなかったのはAIのおかげかもしれない。見ると左手首から先はきれいに消えていた。幸いスーツがすっかり覆っているので傷口は見えない。俺はそういうのは苦手なので助かる。感心してる場合じゃない。相手が俺を見つけたのは叫んだせいだろう。確か聴覚が鋭敏だっけ……うかつだったなあ。射線からすると奴は上空だ。それにしてもなぜ止めを撃ってこない? ひょっとしてレーダー装備を持っていないのだろうか。技術的には同等でも選択はそれぞれだ。しかしなぜ……とにかく聴覚に頼っているのは間違いない。姿の見えない音源こそ敵と言うわけだ。
まずAIを黙らせた。普通なら心配ない音量だけれど相手の能力は未知数なのだ。もっと球体に詳しく聞けばよかった。
相手は上空で待機していて聞き耳を立てている。石を投げて撃たせて居場所を探るか? いやそれほど間抜けではないだろう。それなら今頃コンビニの回りは穴だらけのはずだ。水道工事の穴のせいで周りには小石が多い。先ほども古田が力任せに蹴っていたが敵は反応しなかった。
俺が空を見上げた。せめて星でも出ていれば見つける可能性もあるだろうが、あいにくの曇りだ。持久戦はまずい。AIによればかなり失血したために救急装置では治療が難しいらしい。
(勝率は万に一つもないけれど適当に空に向けてぶっ放すか)
そのとき俺の脳裏に浮かんだのは両親でも思い続けている女性でもなく涙の跡がある姫野の顔だった。
足音を立てぬようにコンビニの前に戻る。工事現場の穴をのぞくと人はいず、菅がむき出しになっていた。右手の武器を構えなおして水道管を撃ちすぐに飛びのいた。
俺の選んだ銃は鳥人間のようなエネルギー兵器ではなく実体弾を射出するタイプだ。エネルギー兵器は大気内では威力が減弱しやすい。できれば遠距離からの狙撃で決着をつけたかった。また弾丸は自壊するので後に証拠は残らない。
かなり太い水道管に空いた穴は巨大な噴水になり、上空に奇妙な影が、出来損ないのビッグバードのような影が浮き上がった。
弾を打ちつくした俺は指示されていた現場処分用のナノマシンを撒いてから立ち去り球体の転送を待った。
(2) 勝者の困惑
戻ってまず驚いたのは治っている左手ではなく飾り付けられた室内だった。球体は手や足を出すことができるのだろうか?
「なんだこれは」
『祝勝パーティーさ』
「パーティーって」
『まあオイラと2人きりだがな』
「しかし」
相手のことを考えると――それに特に目の前の鳥の丸焼きはちょっとね。
『戦闘スーツであれだけ動けば空腹のはずなのねん』
言われて見れば確かに腹は減っている。でも食べるのはスーツを脱いでからでいいだろう。
「でもとりあえず汗を流してくる」
『了解だよ~ん』
脱衣場についた俺は少し緊張しながら鏡の前で脱衣シーケンスを開始した。元の姿に戻るとき女性化と同じ時間がかかるなら今の――球体の言う――ナイスバディを少し拝めるはずなのだ。自分で言うのもおかしいが今の俺の肉体は男なら誰でも……まあ分かるだろう?
エアーが入り密着していたスーツが体から浮く。首のロックをはずすと縫い目も見えなかった背中が大きく開いた。かなり汗をかいたはずだけどスーツの機能なのか肌はさらりとしている。腕を抜いて上半身が出たとき思わず生唾を飲んでしまった。大きな胸はスーツを脱いでも重力を無視するようにきれいなラインを保っている。見とれていた俺はあまり時間がないと思いスーツを完全に脱ぎ捨てた。そして自分自身であるために決して自分のものにできない女神の体を見つめ続けた。
どのくらいその状態でいたのだろう。少なくとも5分は経過したに違いない。しかし胸はでかいままだし、股間はスースーするし、かすかに元の面影の残る顔も美女もままである。俺はあわてて球体の所に戻った。
「大変だ。女体化スーツを脱いでも変身しないぞ」
『目の保養だぜ』
しまった素っ裸だ。
「み、見るな!」
そう叫んで脱衣場に走りこみタオルを巻いた。鏡を見ると真赤な顔をした自分が可愛い……それどころじゃないや。あわててまたリビングに戻る。
「どうして男に戻らない」
『お前はなにを言っているんだ』
「だって戦いも終わったし」
『1回戦に勝っただけだ。それだけでもたいしたものだけど』
妥協するしかないかな。
「わかった。しかし2回戦までの間は関係ないだろう」
『費用の問題もある』
「え?」
『かわいこちゃんを男にするには費用がかかるのねん』
「この姿のまま2回戦までここで過ごせと」
『完璧な肉体だよん』
「俺は男だ」
『今は女』
「もどせ」
『まあ費用を負担するなら可能かもな』
「いくらだ」
『この星の通貨じゃ無理』
「どうすれば」
『スポンサーを捜すんだな』
「って?」
『オイラの言う通りにするしかないよ』
「くそ!」
そのとき俺の腹が鳴った。
『まあ食べなよ。せっかくのパーティーなんだし』
「あ、ああ」
食べ始めると止まらなかった。この細い体のどこに入るのかと思うくらい食べる。大食い選手権で優勝が狙えそうであった。球体は喋り続けている。少々うるさいが少しでも情報が欲しいので我慢することにした。
『そうそう。コンビニ前でかわいこちゃんの同級生が登場した場面はまるで銀河ドラマのようだと評判なのねん』
球体は俺の反応を見るように間をおいたが、胸に痛みを覚えた俺は無視して黙ったままミネラルウォーターをグラスに注いだ。姫野や古田とバカな冗談を言い合う日常は戻らないのか。
『お前たち人間を1人きりで閉じ込めておくと正常状態を維持できないと報告した』
「どういうことだ?」
鳥の丸焼き以外食べつくしたので俺はデザートに取り掛かっている。肉体の変化で好みも少し変わったのか甘いものが美味い。
『喜べ! かわいこちゃんも学校に行けるのさ。元の』
「え~」
見破られることはないだろうけどこの恰好で知り合いに会うのはなんだか恥ずかしい。
『じゃあこの部屋で過ごすかい? トーナメントの1回戦は試合数が多いから2回戦まで間があるよん』
それもうっとうしい。しかしだな……。
「でもそういう情報操作にも費用はかかるだろう?」
『かわいこちゃんは視聴者に気に入られたらしいからスポンサーは試合前に流す映像を作りたいのさ』
別に損はなさそうだ。コーヒーをそそぎながら返事をした。
「わかったよ」
『必要書類と制服だ。教科書などは朝までに用意する』
立ち上がって球体から飛び出した引き出しをのぞくとクリップでとめられた書類の束と俺の学校の制服があった。もちろん女生徒用の。
球体が制服を着てみろとうるさく言うのを無視して俺は疲れたからと寝室に下がった。タオルを取り去りクローゼットを見ると当然のように女性用ばかりだ。文句を言ってもしようがない。なるべく地味なショーツと大きめのTシャツを選んでベッドに入った。
眠いはずなのだが、戦いの興奮が続いているのかなかなか寝付けない。気になってうっかり乳首に触れたら女性化したことが強く意識される。股間に充実感が湧いてこないのがなんだか情けない。喪失感を補おうと大きな枕を股にはさみこすり付けているうちに寝てしまった。
<続く>
090625初出
090627改訂
心に残る男性被支配(165) 魔法の女の子ちゃ~み~チャコちゃん
魔法の女の子ちゃ~み~チャコちゃん (ノーラコミックス)P
煽りのオビの「こんなにかわいらしい魔法少女が実は・・・」
タイトルの「魔法の女の子」
ぺたん娘。
作者は女装モノ漫画も描いているひな。さん。
あたりから「男の子が変身した魔法少女もの」である可能性を感じて購入、そして玉砕w
(超厳密にはP.120は広義のブルマ女装と言えなくもないが萌える絵ではない)
漫画はなんとも言えない脱力系。
第四話で男の子を催眠洗脳したり、第一話で男の子を半魚人に変身させたりとギャグゆえに結構ひどいことをするw
煽りのオビの「こんなにかわいらしい魔法少女が実は・・・」
タイトルの「魔法の女の子」
ぺたん娘。
作者は女装モノ漫画も描いているひな。さん。
あたりから「男の子が変身した魔法少女もの」である可能性を感じて購入、そして玉砕w
(超厳密にはP.120は広義のブルマ女装と言えなくもないが萌える絵ではない)
漫画はなんとも言えない脱力系。
第四話で男の子を催眠洗脳したり、第一話で男の子を半魚人に変身させたりとギャグゆえに結構ひどいことをするw
![]() | 野に咲く薔薇のように 1 (アクションコミックス) (2009/04/11) ひな。 商品詳細を見る |
1140万アクセスを突破しました!
15日で20万アクセス。
そろそろイラスト企画の補充をしないと。
そろそろイラスト企画の補充をしないと。
ここ最近の拍手実績
今回は巴ちゃんが強かった。そして新人黒い枕さんも好調!!
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1000万ヒット記念作品 神魔大戦ラグナゲドン3(13-15ページ目) <18禁> 1.1% 17
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投稿TS小説 ドッペルゲンガーの悪夢(2) 作.黒い枕 0.6% 10
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世界の果てで愛ましょう 1 (1) 0.4% 7
あなたのTS嗜好進行度 0.4% 6
星の海で(3) 0.4% 6
女人化研究所のイッツアヒロインタイムが大変に良いのです!! 0.3% 5
部分漫画化TS小説第1号 ペット稼業もラクじゃない!? 0.3% 5
電想幻士ミルキューア 0.3% 5
水曜イラスト企画 絵師 うつき滄人(3) 仮名:青木かずと 0.3% 5
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新バナー完成です!! 0.3% 5
1000万ヒット記念作品 神魔大戦ラグナゲドン3(9-12ページ目) <18禁> 0.2% 4
水曜イラスト企画 絵師 眠り猫四郎さん(3) 仮名:如月 拓哉 0.2% 4
碧井先輩ごめんなさい(めちゃLOVE☆収録)柚木N’ 0.2% 4
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桃色・本気モード! (ちゃおコミックス) 0.2% 3
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エントリー名 グラフ
1000万ヒット記念作品 神魔大戦ラグナゲドン3(13-15ページ目) <18禁> 1.1% 17
美奈さまのお陰です(1) 0.7% 12
投稿TS小説 ドッペルゲンガーの悪夢(2) 作.黒い枕 0.6% 10
投稿TS小説 ドッペルゲンガーの悪夢(1) 作.黒い枕 0.6% 9
世界の果てで愛ましょう 1 (1) 0.4% 7
あなたのTS嗜好進行度 0.4% 6
星の海で(3) 0.4% 6
女人化研究所のイッツアヒロインタイムが大変に良いのです!! 0.3% 5
部分漫画化TS小説第1号 ペット稼業もラクじゃない!? 0.3% 5
電想幻士ミルキューア 0.3% 5
水曜イラスト企画 絵師 うつき滄人(3) 仮名:青木かずと 0.3% 5
猫NYAN☆猫NYAN☆パニック(7) 0.3% 5
仮面ライダーディケイドが女の子に変身!? 0.3% 5
新バナー完成です!! 0.3% 5
1000万ヒット記念作品 神魔大戦ラグナゲドン3(9-12ページ目) <18禁> 0.2% 4
水曜イラスト企画 絵師 眠り猫四郎さん(3) 仮名:如月 拓哉 0.2% 4
碧井先輩ごめんなさい(めちゃLOVE☆収録)柚木N’ 0.2% 4
水曜イラスト企画 絵師 倉塚りこさん(5) 仮名:有川 てる 0.2% 4
桃色・本気モード! (ちゃおコミックス) 0.2% 3
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マーケティングとPRの実践ネット戦略
アメリカのネット系マーケティングの翻訳本。4Pなんざ関係ねぇ。ペルソナだペルソナ、な物言いが楽しい。ペルソナはウチ的には主人公のキャラにも使えるので一度真面目に作ってみるつもり。
![]() | マーケティングとPRの実践ネット戦略 (2009/02/11) デビッド・マーマン・スコット 商品詳細を見る |
メイド嫁
![]() | メイド嫁 (ホットミルクコミックス) (2009/06/30) 鬼月あるちゅ 商品詳細を見る |
投稿TS小説 ドッペルゲンガーの悪夢(3) 作.黒い枕

(1)からはよるいちさんのイラストをクリック♪
―――――目の前には『私』がいた。
暗闇の中にあるのは『私』と目の前の鏡だけだった。
そして、その輝く壁の向こうにいるのはまぎれもない『黒崎 直輝』だった。
そうだ、これが『私』の身体。まぎれもない男の体。
―――――――戻れたんだ。
『違うよ。 キミはそっち、それは『俺』の鏡』
声が響き、振り返る。
またしても、正真正銘の『兄さん』が立っていた。 『兄さん』が笑いかけて違う鏡を指差す。
その鏡には『私』がうつっている。
変えられ、捻じられ、狂わされた果ての姿。
美女といってもいいほどの美貌をもっている『私』。
綺麗なはずなのに今の『私』には目の毒でしかなかった。
――――違う、『私』はじゃない。 これは違う。
もう一度、最初に見た鏡に向きなおそうと足掻く。 けれども、この鏡さえも、うつるのは女の『私』だけになっていた。
男の『私』をうつしだされない。 じゃあ、『私』はどこにいるんだ………。
『さて、遊戯のはじまりだよ。 キミは耐えられるかなぁ――――――』
『兄さん』の不気味な宣言とともに、『兄さん』と『私』だけの世界に亀裂が入り、やすやすと『私』の精神を希薄にしていく。
――――――――――そして、『私』はさらなる悪夢の中に放り込まれること、となる。
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「う………こ、ここ…は……?」
目覚めれば、真っ白で統一されているベットの上にいた。
清潔感ただよう空間ながらも薬品の臭いが漂ってくる微妙な部屋。
ここは――――――――――――――。
「ほ、保健室? なんで………?」
取りあえず、起きないと………。
むくりと、起き上がるが何か球体のモノが胸で弾み躍る。
目をみやる。
制服の下でありながら、その存在を誇示しているなにかがあった。
そうか、これが動いた拍子に変形したのが、妙な感覚の原因か。
そりゃあ、これだけ大きい乳房なら少し揺れただけでも振動が伝わってくるってもんだ。
それにしても大きい胸だ。まさしく巨乳…………。
――――――――――――――――――巨乳?
「アアアアァァァァ―――――――――っっつつ!!!」
「え?! な、なに。 なんなの?」
閃光のように記憶が脳内が駆け巡り、血管を暴走していく。
そうだ、俺は、俺は………。
―――――――思い出せるのは悪夢のような出来事。
だが、悪夢ではなかった。
冗談のような、悪戯のような、幻のような、それでいて絶対の現実。
そうだ。――――――鏡。確か、保健室の壁には大きな鏡があったはず……。
とにかく、確かめまいと、と起き上がり鏡に向き合う『私』。
そこにただずんでいあた人物は――――――やっぱり『黒崎 直輝』ではなく『私』だった。
記憶と寸分の狂いなくうつされる自分の姿。
それは今までの『私』の姿ではなく、さびれた教室の使い古された鏡にうつしだされた女性の容姿だった。これが、今の『私』。 『兄さん』ではない『私』。
「………夢…で…は……なかっ…た……ハハ、ハ…」
力なくペタリ、と座ってしまう。
腰に力がまったく伝わっていかないのは、もしかしたら腰が抜けてしまったからかもしれない。
鏡を見れば、ペタリ座りをしている『私』が異様に可愛くうつる。
それが無性に恥ずかしさを生み出し、顔が赤く変色していった。
自然と涙が溢れだしているのが、屈辱心はそれでもなお自分の中で高まっていく。
「本当に、どうしたの? …って泣いているの、黒崎さん!?」
「ふぇ…っ?!」
《追加希望イラスト、ペタリと、座って泣いている姿が鏡にうつるシーン》
人に見られた。 おまけに何て反応をしているんだ、『私』はっ!?
………って、そうじゃない。 誰だ、この人。 目がめかすんでよく見えない。
けれども、ここが保険医でこの声なら…………多麻先生。
――――――居たんだ、この人。
動転していたので、気付かなかったが確かに呼び止められていたような気にする。
「大丈夫、黒崎さん。 悩みごとだったら先生が聞いてあげようか?」
「…………………先生…………………」
「ほら、取りあえず、涙を拭いて、落ち着きましょう。 はいっ、椅子に座って深呼吸して、ね」
「―――――――――――――――っ!!」
優しさが骨身に染みることをこれほど感じたことがあっただろうか。
女の子みたいに俯きながらコクンと、何度も、何度も頷く。
考えれば、考えるほど、恥ずかしい行為をしていると思うが…………この理不尽な状況の中で精神を落ち着かせるには誰かに縋るのが、一番効果的だったからしかたない。
人間、処理できない事態になったら協力者ほど喜ばしいものはないのだから。
薦められるままパイプ椅子に腰を下ろす。
やはり、違う。 たかが、座るという行動だけでも男と女の違いが如実に伝わってくる。
特に胸やヒップの振動が男の比じゃなく、何故だか心もないような感覚が脳に伝わってくる。おまけに一物がなくなった股間部分に両足がフィットする感触までついて来る。
これが――――――女の身体。 今の『私』の体………。
「大丈夫? 落ち着いた?」
「―――――あっ……は、はい、大丈夫………です……」
とはいったモノの………どう説明しよう。 落ち着いて考えれば、どう話すべきなんだ。
まさか、『兄さん』に女の子にされたんですけでも……『私』は『黒崎 直美』なんです、なんて言えるわけないし…………。
第一に、何で『私』のことが分かるんだ。
落ち着いてみれば、先生の対応のしかたも妙だ。 『黒崎』さんって、言ってるんだから『私』のことを『黒崎 直輝』として話してくれているのは分かるけども……。
――――――――ふと、自分の身体を観察する。
ずけずけと、制服を押し上げる巨乳。
男とはまた違う、素晴らしいお肌。
男の一物がなくなり、悲しいほどまですっきりしている股間。
美を追求しすぎたように完成された乙女の体が、そこにはあった。
これが今の『私』。
感覚が勘違いとさえ思えるほど変わり果てた身体。
とてもじゃないが『黒崎 直輝』としては見えないだろう容貌。
これを、どうしたら『私』に見えるんだ………?
「黒崎さん…………?」
考え込んでいたせいか、先生はより真剣に悩みを聞きだそうと『私』に詰め寄る。
とにかく聞いてみよう――――――――これ以上待たせるのも失礼。
そう、思い。 疑問を押しのけて会話をはじめる。
「先生………………」
「ん、なに?」
「あの先生は、どうして『私』のことを『黒崎』さんって、呼んでいるんですか?」
「……? 質問の意味が良く分からないわ?」
「い、いえ。 ですから、どうして『わた――っ?』」
ストップ。落ち着け、落ち着け『私』。
今、なんて言った。 私………って言ったのか。
――――『私』の名前は『黒崎 直輝』って。
「……っつ!!」
思おうとするイメージがずれている。
自分自身のイメージが思い出そうとする記憶と異なって、内にも外にも反映される。
「なんでっ! どうしてっ! 『私』って思うんだぁつつ?!」
「ちょ、落ち着いて黒崎さん、どうどう」
「それは、馬のあやし方だぁっっつつ?!!」
などと、突然立ち上がった『私』に対して、ボケた先生に突っ込んでも頭は冷えず、むしろオーバーヒートしそうで倒れそうだ。
『私』が『私』として認識できない。
自分のことをイメージすると、変身前の『私』の姿ではなく、変身後の女の姿が浮かんでくる。
どうなっているんだ。 自分が思う自分がいつの間にか、女の『私』になっている。
注意深く考え込まなければ、あの『ドッペルゲンガー』のことを『兄さん』としてでしかイメージ出来なくなっていた。『私』…………『黒崎 直輝』については固有名詞みたいな感じではイメージ出来るが、自分として認識して思い出そうとしても『私』として頭の中でが上書きされる。自身の名前は 『黒崎 直美』と言う、知らない名前の人物しか頭には蘇らない
「わ……『私』……『わた…し…』、くっ!ちくしょう! やっぱり言えないっ!!」
「あはは、く、黒崎さんが壊れた。 私のせい…か…な? 私があまりにも綺麗な寝顔にスリスリしちゃったからかな~。 でもね、神様、仏様、あんな寝顔になにもしない生物はいないんです。
だから、許して、お願い…………………」
確かに、『私』は壊れている……否、壊されてしまった。
自分の姿形すらも奪われて、さらには自分としての意識すらも強奪されてしまったってことなのか。 もう、なんがなんだか分からない………。
こんなの分かるわけがないのは当たり前だろう。
――――――――――――――『私』は誰だ………誰、なんだ。
「すいませーん。 多麻先生、『ナオミ』の体調は大丈夫ですか?」
「ああ、黒崎くん。 良い所に来てくれたよぉ――っ!」
「――――――――えっ!」
多麻先生が向いたドアの向こう。
そこには――――――――『黒崎 直輝』こと『兄さん』が微笑んでいた。
《続く》
オタクアミーゴスの逆襲
もう旬は過ぎてるかなぁと思いつつ購入したら結構良くて早期に読了。
眠田さんはまだ現役だそうだ。
恋戦士ラブコメッサーは少年と少女の合体ものアニメ。
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本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
ソフトエロOKです。
絵師:眠り猫四郎

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