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GANTZ 26 figma付初回限定版 に付いた投稿TS小説(5)

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作.amahaさん
(5) 乙女の憂鬱

 気がつくと俺はリビングでうつ伏せに寝ていた。目覚めは最悪だ。起きあがると球体が何か話しかけてきた。その声が不快でよけいに気分が悪くなる。無言のままトイレに行き吐いた。そのままバスルームに行きスーツを脱ぎ捨てる。今回も転送の際にけがは全て治癒していた。それでも目には自分の血と敵の体液が見える。どのくらい腕と胸をこすり続けただろう。止めたのは満足したからではなく疲れたからにすぎない。髪にタオルを巻き下着だけを着けてキッチンへ。冷蔵庫からスポーツドリンクを出し一気に飲んだ。時計をみると午前6時、それにしては外が暗いので窓をみると雲が厚く垂れ込めていた。
 とても学校に行く気分じゃない。PCを起動しネットで欠席の手続きをする。
「ふっ、ふふふ」
自分の行動がばかばかしくなりそのまま笑い続けた。昨日命を賭けて戦った者が学校の欠席を心配するなんて……しかも人類の存続をかけた戦いなのだ。
 また不快感に襲われてトイレに駆け込む。なんだか腹部も痛い。球体の治療が不完全だったのだろうか。
 すぐに原因は判明する。
 初めての月経(生理)だった。

 ナプキンとサニタリーショーツをつけ着替えをし落ち着いた時には30分ほど経っていた。パニックになった俺の攻撃を受けた球体は沈黙を守っている。奴が地球製なら凸凹のスクラップになったことだろう。
 改めて考えてみるとここ数日奇妙な感じがしていた。いつ戦いが始まるかもしれないという強いストレスで気付かなかったのだ。
 原因がわかりほっとするとひどい空腹感に襲われた。炒卵とベーコンを焼きトーストとオレンジジュースを用意して食べる。
 空腹が満たされるといつも賑やかな球体の沈黙が気になった。
「昨夜の敵のことだけど」
「話して良いのかい、オイラ」
「質問してるんだが」
「本当に知りたいのか?」
球体の言葉どおりなら彼の種族はもうこの宇宙に存在しない。
「いや……止める。それで」
「別に苦しみはしないのねん。あっと言う間だから」
球体の機嫌は悪くなさそうなので、今まで答えが得られなかった質問を繰り返してみる。
「スポンサーや視聴者は圧倒的なパワーと技術力を持っているだろう? そいつらが俺たちを古代ローマの剣闘士のように戦わせてそれを楽しむと言うのはありえる気がする。できればやめて欲しいけどね。でも負けた種族を抹消すると言うのは止められないのか」
「レベル2までの情報開示許可が出たから説明してやろう。その前に一言言っておく。この星の言語への翻訳には限界がある。だからスポンサーや視聴者と言うのは近似的な表現にすぎない」
「わかったってば」
「この戦いの元々の目的はこの星域で生き残る種族を1つ選ぶためなのさ」
「どういうこと」
「計算によればこの星の暦で1000年後から1200年後の間にこの辺り一帯で大きな星間戦争が起こる。その結果には若干の不確定要素があるが、たくさんの有人惑星が不毛の大地になり、大部分の種族が滅亡する。そして生き残った種族も宇宙を航行する技術を失い文明は退化すると予想されているのさ」
「その計算で俺たちの運命を決めたというのか」
「アムちゃんに証明式を説明するのは困難だけどオイラを作った世界では確立された当たり前の数学なんだぜ」
「だったら俺たちの戦いの結果もわかるんじゃ」
「さすがに個人の行動は不確定要素が多すぎる。せいぜいオッズを決めるのに使えるくらいなのねん」
 まだ話したそうな球体を残し俺は部屋に戻りベッドに寝転んだ。あまりに途方もない話でかえって疑う気がしない。それにしても……。

 知らないうちにまた寝てしまったらしい。目覚めたのは鳴っているドアフォンのせいだ。確か何かを思いついて……。
 内線をつなぐと来客は姫野だった。
『大丈夫なの、アム』
「ええ、もう」
そう言いながらドアを開ける。姫野は一度帰宅したらしく買い物鞄だけを持っていた。
「差し入れと授業のノート」
「明日でよかったのに。すぐにコピーするわ。試験が近いから恵もないと困るでしょう」
彼らの基準では地球の物価は相当低いのか備品はたいてい高級な物がおいてあり、プリンターも多機能な複合機である。姫野は勝手知ったる我が家のキッチンでコーヒーをいれ始めケーキをテーブルに並べた。
「ねえ、コピーとお茶が終ったら勉強しない? 私と」
「でもー」
姫野は優秀だ。俺の成績はもともとたいして良くはない。それにこの1ヶ月は勉強どころではなく授業も上の空だった。姫野にうるさくせっつかれなければきっとノートなど全くとらなかっただろう。
「遠慮なんてなしよ」
「恵は成績良いでしょう。足引っ張りたくないもの」
「あのねーアムは成績悪ければ1人暮らし止めになるんでしょう。親代わりの方のところへ行ったらもう会えないじゃない!」
確かに最初の頃そんな説明をしてしまった。
「ええ、まあ、それは」
「心配しなくてもアムとのことも含めて勉強の予定立てたから」
「どうも」
姫野といるのは嫌いじゃない。俺は姫野と馬が合うのだ。そして女性化したことで高校に入った頃から高くなった障壁は消えていた。ただ逆にこの家に2人きりでいると俺はどうしても失った自分の男の部分を強く意識してしまう。姫野が俺を女性として扱えば扱うほど。

 コーヒーを飲み終わるとさっそく姫野の特訓が始まった。なかなか厳しいけれど頭のいい姫野の説明は分かり易い。
「アムちゃん、理解が早い!」
「恵の教え方が上手だからよ」
「そうじゃないわ。だってアイツ……えーっと次は地理か」
「うん」
姫野が言いかけたアイツはきっと俺のことだ。中学最初の定期試験は小学校時代ののりで一緒に勉強したっけな。俺の成績はさんざんで姫野は嘆き俺は姫野をわずらわせたくなかったので最初で最後になったんだ。
 姫野は下を向いたまま黙っている。
「恵?」
「あ、ごめん。えーっと地理はコピーしたノートの最後にまとめを書いておいたから、それを覚えればいいだけよ。それからあげてある統計集の重要項目を見るのを忘れないでね」
「う、うん」
まとめは姫野のきれいな字で6ページに及んでいる……おまけに資料集もか。
「無理なら私も付き合うわよ」
「がんばるから」
「そう」

 それから夕食をはさんで2時間ほど姫野の特訓は続き、泊まっていっても良いという申し出をとりあえず断って途中まで送っていくことにした。なんとなく生理と知られるのが嫌だ。知られたら岡士郎の変身だとばれてしまい気がした。
「遠慮しなくてもいいのよ。家には泊まるかもって言ってあるんだし」
「でも、ほら今日はたくさん覚えないといけないから。深夜の特訓は直前にお願いしたいな」
「わかったわ。きっとよ」
「ええ」
 
 マンションの前の坂を下りしばらく行くと大きな通りで明るくなる。
「ここでいいわよ。アムの帰り道の方が心配になっちゃうもん」
「うん。今日はありがとう」
「これからも」
「頼りにしてます」
姫野が角に消えるまで俺は見送った。
 帰る途中スーパーで飲み物を買う。球体は定期的に冷蔵庫を補充してくれるのだけど俺の好みを聞いてくれるはずもなく、こうやって足を運ばねばならないものもある。
「安夢さん」
駐車場の街灯の下で知った声に呼び止められた。
「古田君?」

 この姿になってから古田と話をしたことはあった。しかしそれはちょっとした挨拶や姫野の同席の世間話だったし、ごく短時間のことである。
「家、あの坂の上だろう。送っていくよ」
「ありがとう」
並んで歩くのはなんだか気まずい。
 坂を登りかけたところで古田は再び口を開いた。
「姫野恵と一緒だったんだろう?」
「ええ、まあ」
それがどうしたというのだろう。なんだかえらく真剣な顔だ。古田が姫野を好きなのは知っている。以前の俺はなるべく2人でいられるようにといろいろ骨を折ったものだ。まさか女の俺に嫉妬でもあるまいに。
「変なことを言うようで悪いんだが」
「私が知らない恵のことなら教えて欲しいな。転校した日に泣かしちゃったのは知ってるでしょう」
「そのこととも関係あるんだ」
「気になるわ。教えてちょうだい」
「俺と彼女の友人岡士郎は事故で死んで入れ替わるように君が転校してきた」
「ええ、まあ」
「彼女は元々面倒見が良いし、君と彼女は馬が合うだけかもしれないけど……僕の見るところ彼女は君の中に士郎をみている」
「まあ!」
「そう思って良く君を見ていると――ストーカーしたわけじゃないぜ――雰囲気も外見も、まあ第一に性別も違うけど何となく彼を思い出させるところがあるんだ。まさかアイツが憑依したとか、その生まれ変わりと言うわけじゃないよな」
「えー!」
足を止めて青ざめた顔で見上げる彼は大笑した。
「ごめんごめん、冗談だって。それとも怪談とかだめな方?」
「その話、冗談にすべきじゃないんじゃないかしら。だってあなたもお友だちだったんでしょう」
「もちろん親友だったさ。でも残された姫野のことをアイツに託されている気がしてさ。今はアイツに代わって姫野を守りたい」
なんだか泣けてきたぞ。
「すごい友情だと思うけど私とどういう関係が」
「彼女が君の中に士郎を見ているようなのは本当のことだ。当分側にいてやって欲しい」
「それはもう。今は一番の友だちなんだし」
「女同士の友情じゃ不安だったんだ」
「恵のことが好きなの?」
「ああ。でもあきらめるしかなさそうだな」

 古田はエントランスまで送ると大きく手を振って帰って行った。まああいつに限って送り狼になる可能性はない。
 部屋に戻ると今飲むスポーツドリンクだけ残して冷蔵庫にしまった。そしてナプキンを薄手のものに替えショーツを穿いて球体の前の長椅子に寝そべる。もうほとんど汚れていなかった。
『その飲み物をなぜ選ぶかなあ。効果は水道水とかわらないよん。まあ若干の糖分は』
「この味が好きなの」
『アムちゃん、ずいぶん話し方が板についてきたのねん』
「からかおうとしているなら無駄だぜ」
『おやおや』
「それより次の戦いはもっと短い間隔で始まるんだよな」
『たいていは。しかし断言はできないよん。他の試合の結果で変化するから』
何か引っかかるなあ。
「それは引き分けだと2種族消えるから不戦勝になるって意味?」
『そんなところなのねん』
まてよ……。
「じゃあトーナメント方式なら当たり前のことだけど残りの試合数、最大の試合数はわかってるんだな」
『……』
「違うのか?」
『聞いてどうする』
「知りたいと思うのが普通だろう?」
『一戦一戦に全力を尽くすのを勧めたいのねん』
「全力は尽くすさ。死にたくないから」
『この星の種族が滅亡を逃れるためにはあと4試合勝ち抜く必要がある』
命をかけてあと4試合も……おまけに相手はどんどん強くなる。
『聞いて後悔したか』
「そうでもないね」
『ふ~ん』
人類に希望はほとんどないってことがよくわかったぜ。ではどうする。球体が与えてくれる金で遊びまくる? 相当の金額をもらっているからやり放題だぞ?
「なあこの体の基礎体力や筋力が上がれば戦闘スーツのパワーも上がるのか?」
『単純なパワーには変化がない』
「というと?」
『素体が早く動けるようになればそれに応じて素早さは上がる』
「たとえば時速20kmで走れるのが、25kmになれば?」
『現状のスーツで60km/hが75になる』
「もっと高性能のスーツも使用可能なのか? スポンサーや視聴者の反応は?」
『今日はたくさん話してくれて嬉しいのねん。地球人は軟弱なのでもともと最高性能のスーツだってことは言ったはずよん』
「そうだったな」
『そうそう。アムちゃんは人気者だから武器の購入資金には余裕ありりん』
「じゃあカタログを頼む」
『その前に着替えをするねん。ショーツに染――』
俺はペットボトルを球体に投げつけてバスルームに駆け込んだ。

<つづく>

20090704前半UP
20090712後半追加

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