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サッカー部へようこそ 外伝ルート<2>

作.りゅうのみや
(1)はこちら


…………
さらに一ヶ月後の日曜日。
「おっはよー、直くん。もう、こんな美少女が彼女だっていうのに
デートの時間に遅れるなんてイケナイ子だぞ、メッ」
「何がメッだよ、それにくっつくなよ。本来の目的を忘れんじゃねーよ」
「もう、ひっど~い。少しは構ってくれてもいいのに」
「? 今日のこずえなんか変だぞ」
「べっつに~、ちょっとくらい茶目っ気があったっていいじゃない」
「ま、まぁ別にいいんだけど、あまり引っ付くと将に悪いって」
「えへへ~、直くんって本当に将くん将くんだね♪ ひょっとしてホモ?」
「ばかっ、からかうのもいい加減にしろ、あいつには本当に悪いことをした」
「そうだね、言いすぎてゴメンネ。今日は私の家に行こうよ。
私が『こずえ』になってしまったあの現場に」
私は待ち合わせのコンビニから自宅に向かった。
あそこはもう何度か現場検証したが、事の発端があそこだけに
何度検証しても足りないと思った。
「お、おいこずえ。手くらいなら握ってもいいけど肩に摺り寄るのはよせ」
「えー、ちょっとだけお願い」
「うっ……」
そう言って恐る恐る受け入れる直くん。
もう少しだけ、この時間が続くといいのになー。


「じゃーん、ここが私の家よ」
女の子だから整理整頓の行き届いたこぎれいな部屋を見せつけた。
「久々だが奇麗だし、部屋全体が乙女チックだなぁ」
えへへー、褒められちゃった。
じゃあちゃっちゃと一緒に物色しますか。
「そういえば剥離剤ってまだ持ってるの?」
「ああ、望みはゼロだが少しは可能性があるかもしれないし」
「…どうしてあの時剥離剤を渡さなかったの?」
聞かなくてもわかることをあえて質問してみた。
「えっ、そ…そりゃ俺好みの女性だったので、そのまま戻すのが惜しかったから

でもそのせいでこずえに辛い思いをさせて……」
やっぱり聞かなくても当然の質問だったようだ。
でもそれって私が魅力的だっていうことだよね、
そう思うと下着からジュンと熱いものがこみ上げてくる。
っと、いけないいけない。
その後食卓、リビングなど各部屋をあの日の状況を検証する形で執り行われた。
「ねえ、最後にまだ行ってないところがあるでしょ、そこも回りましょう」
「え~っと、も、もしかして寝室!?」
「えへへ~、正解♪」
そう、今までは間違いが起こっては大変なのでそこだけは行かないのが
暗黙の了解になっていたが、私は将を取り戻したい一心で、そう提案した。


「こ、ここで俺と将が寝て……こずえになった場所か…」
恐らく直くんはその日のこと以外に私がここで毎晩寝ている姿を
想像しているのだろう、顔が茹蛸のように真っ赤になっている。
「さぁ、もうちょっとこっちにきて。ベッドのほうも入念に調べておきましょう

「あ、あぁ……」
いつもの直くんならここまであからさまなら乗せられはしないだろう。
しかし、自分好みの女性が積極的にアプローチをしているなら話は別だ。
私は右足で千鳥足に近い直くんの足元を絡めとった。
「うわっ!」
直くんは私を押し倒すような形でベッドに倒れこんだ。
「お…、おい………これは何の冗…うっ」
質問が言い終わる前に直くんの唇を奪った。
「ただいま、直くん」


私はとびっきりの笑顔でそう言った。
突然の出来事に目を白黒してしばらくの沈黙の後、私を引き離した。
もう、ムードがないんだから。
「こずえ……? いや、ひょっとして将か!?」
「まったく、俺はもう男には戻れなくなってしまって、しかも存在まで消して、
そのうえこずえまで泣かせてしまって、呆れてしまうよ」
「その憎まれ口……、まさか本当に将なのか?
じゃあ今日、様子が変だったのは、そのころから戻ったのか?
こずえは……こずえはどうなったのだ?」
直が矢継ぎ早に質問してくる。
そんなにいっぺんにこたえられないよぉ。


「実は2週間ほど前から元の記憶と意志を取り戻していた。
その頃はまだ俺が体の主導権を握っていたのではなく、こずえがそうだった。
でも口を使わずに意志を通わせることはできた。
初めは激しい憤りに身を震わせたぞ、男なのに処女奪われてしまったし。
でも、2週間の間でお前の行動を観察していると、
こずえは勿論のこと、俺に対しても深い愛情と自責の念を
抱いてることがわかったから、だからもういいと思ってる」
「将……」
「そしてもう一つ、お前の行動を知る手掛かりになったのはこずえの日記帳だっ
た。
こずえにお願いして2ヵ月間の言動を包み隠さず見せて貰った。
どの日も俺に対して後悔の念を表す内容だったので、
そこまで気にかけてくれたのなら、それでもういいかなって…」
俺のことをそこまで思ってくれたことが本当に嬉しかった。
今の俺が女だからどうしても恋愛感情に結びついてしまうのが歯痒いけど。
「それとこずえは……、たぶん今日消えてしまうと思う」


「え……それってどういうこと…?」
「うん、俺もてっきりすぐに消えるのかと思ったけど、
ここ1週間にかけて徐々にこずえとしての存在が消えつつあることを自覚したよ

最初は味覚から、次に嗅覚、触覚、聴覚、視覚と少しずつこずえの影響力が弱ま
り、
その穴を俺が埋め合わせるような日々を過ごしていた。
そして昨日、肢体の自由を俺の手にゆだねられた…。
もう、こずえとしての存在感は、俺と意志を通わせる程度のことしかできなくな
っているの」
すごく残酷な出来事だった、俺の方が消えてしまってもいと何度も思ったほどだ

こずえの、ひとつひとつの感覚を喪失していくことに
恐怖におののいていた様が、今も脳裏にこびりついて離れない。
「こずえは、もう消えてしまうというのか…」
震えるような声で俺に訪ねた。


「消えないわ! 私がこずえを演じる、
いやこずえになるわ、そう約束したから!」
そうはっきり答えた。
まったく、面倒な体になったものだ。
だって今では凄く直のことが愛しいから。
そしてもう一人の自分であるこずえのことも恋愛対象を抜きにして好きだったか
ら。
「私、この体になって直のこと好きになったから。
それはこずえだって同じ、だから私は『将』ではなく『こずえ』になるの!」
言ってしまった。
それは男に戻ることも、元の生活に戻ることも放棄した精一杯の告白だった。


……
…………
その後、簡単な口約束をした。
呼び方はこずえで統一することにした。
だって実際には私はこずえじゃないのだから、
呼ばれ方まで奪うとこずえは最初からいなかった存在になるのだから。
それに漢字で『将』よりも平仮名で『こずえ』の方が女の子っぽくて可愛いらし
いから。
他にも私と直くんとの関係は恋人となった。
これは直、将、こずえの三者が同じ方向性を示しているからこそできる荒業なの
だが…
ちくしょう、もし俺が元に戻れるのならゲンコツ百発でも足りないのにぃ!
…この体が直を求めてしょうがないんだよ。
ある意味第三の自分だよ、女性の体そのものって。
今度は直から提案を受けた。
言葉遣いは女らしくしろって。
確かに努力してるものの感情がこもると地が出てるし、
自分のことを俺と連呼されては百年の恋も冷めるというものだし、善処しないと

「それから……こずえと二人で相談して決めた
提案なんだけど、聞いてくれるよね?」
「ああ、俺にできる範囲なら何だってしてあげるぞ」
「お願い……。わ、私を………抱いて…」


「えっと、いいのかこずえ?」
「うん、だってそのために直くんを押し倒したのだから。
それにこずえとの最後の別れのためでもあるから」
あのお香によるものではない、自分の意志による初めてのエッチ。
私、自分から誘っている……。
そう思うと胸のドキドキが止みそうにない。
「あ、まって。する時はこれをつけてしてね」
スカートのポケットから取り出したのは避妊用具……、つまりコンドームだった

「え、こ…こずえ、どうしてそれを!?」
「もう、さすがにここでできちゃって、堕胎する羽目になるのはいやでしょ。
これ以上こずえを悲しませないで」
実を言うとデートの待ち合わせをコンビニにしたのもこれを買うためだった。
こずえは直に経済的な負担をかけたくない思いで、
家にネットどころかパソコンだって持ってない。
そのためにネットショップで購入することができなかった。
私が体の行使の自由を得られるようになったのは昨日の晩のことであった。
そして夜中にそんなもの買ったら、襲われるリスクも必然的に高くなる。
つまり物理的に購入できる機会はデートの直前に限定されることになる。
くそっ、直に頼めば私の存在に気づかれる恐れがあったし、
女の姿で買うなんて、一種の羞恥プレイだよぉ。


「そんなの買いに行くなんて、こずえってエッチだね」
くそ~、私の気も知らないでからかうなんて酷い。
「わ、私がエッチなんじゃないわ。だからこずえのためだって…。
(確かに私も直としたくないわけじゃないんだけど…)」
最後の方は聞こえない程度に小声でつぶやいた。
「え……、今何ていったの? ねえ、もう一度言って」
「「し、知らないわよ!」
知ってるくせに、この地獄耳めっ。
男ってどうしてこういうふうにいじめるのが好きなんだろう。
わからないことはない、こんなに可愛い女が自分に属しているのだから、
からかって反応を楽しみたいっていうのくらい。
でもそれがいざ女性の立場から見れば、男の気持ちを理解するだけの余裕がない

男は大局を見据える能力に優れるのに対し、
女は目先のことや感情に左右されやすいとよく言われるけど、
その通りかもしれない。
だって、この2週間でどれほどこずえのことで涙を流したのか分からない。
そう考えればこずえの方が感情をコントロールする力に長けているのかもしれな
い。
作り物の記憶と経験とはいえ、十数年間女としての実績のあるこずえと、
たった2週間ちょいの私とは比較にならないだろう。
これは約束事がまたひとつ増えてしまったな、あまりいじめるなって。
まぁ、そこらへんは両者の問題だから、私も打たれ強くならなきゃ。


色んなことを頭の中で思い巡らしているうちに、胸元が次第に熱を帯びてきた。
その感覚はむず痒い快感を伴っていた。
はうーっ、頭の中がぼーっとなる。
もっとこの感覚に浸りたい。
……でもまてよ、これってもしかして…。
「ちょっ、まだいいって言って…はぅっ」
「こずえ、こずえ!」
ありゃりゃ、もしかして結果的にじらしてしまったから我慢できなかったのかな

そりゃ今の恰好は生まれたままの姿だし、興奮するのも理解できるけど。
男はオオカミってほんとなんだね…。
「いいよ、直くんもっと強くしていいから…、はぁん」
よく考えれば疑似恋愛して2カ月もお預けくらってるので、
衝動を抑えられないのかも……。
ああそっか、それなら仕方ないよね。
形のいい二つの胸が直くんの掌によってグニグニと形を大きく歪ませる。
その度に激しい快感が押し寄せては引いて行って、
引いたと思ったらまた押し寄せて、まるで海岸の波のようだった。
自分では恥ずかしくて揉むのも躊躇ってしまった性行動を直くんは遠慮なく揉み
ほぐしていく。
そっか、そうなんだ。
自分では怖くてできないから相手の人が必要になってくるのか…。
何となく間違った価値観を植え付けられているような気もするが、
女性としての人生が短いのだから仕方がない。
ここはエッチ以外の時間を多めに取り分けないと、
それ以外の価値基準を見出せなくなってしまう。
エロ漫画でよくある性欲に堕ちて、目から光を失った姿を思い浮かべ、
ぞぞっと嫌悪の身震いをあげた。


「どうした、怖いのか? 大丈夫、俺を信じろって」
そう言って愛撫の手をやめ、私の頭を何度も優しく撫で回した。
あ…、撫でられると安心する。
うん、たぶん大丈夫。
今の直くんなら酷いことはしないと思う。
もし、私が将という人格しか存在していなかったのなら、
好奇心に駆られて堕ちるところまで堕ちてしまうかもしれない。
でも、もうすぐいなくなるこずえは
直くんの過ちによって存在するようになったのだから。
もう二度と同じ過ちは犯さない!
彼女の分まで幸せにするって固く誓ったから。
それがほとんど自己主張しなかったこずえのもっとも望んでいたこと。
私の人生は私だけのものではない、二人のものだから。
今にも消えそうな蝋燭の灯をずっと絶やさぬこと、それが彼女の『生きた証』と
なるのだから。
淫欲に負けて、こずえの記憶を絶やしたくなかった。


「こずえは本当に可愛かったぞ、思わず手を出しそうになったことも何度もあっ
た。
でもその度に理性を働かせた。ここで襲ってしまうと
お前をもう二度と助けることができないとおもって」
そうか……そうだったんだよね、直くんも大変だったんだ。
私とこずえだけが辛い思いしてるんじゃないんだ。
そう思うと直くんを好きになってよかったってきになってしまう。
こずえがどうしても得られなかった直くんの愛情に良心がチクリと痛むが、
もうこれは仕方がないことだ。
それに私を消すこともできたのに、
自分の方から身を引いたのだから、もう後には戻れなかった。
相当の覚悟を決めたこずえの善意を、すべて把握できることなんてできないのだ
から。
把握できないのに断ることは、受け入れて消えてなくなる
ことより辛いものだと思えたから。
「おねがい、キスして……こずえのために、
もういつ消えてもおかしくない彼女のために…」
「落ち着いて、こずえ。焦る気持ちは分からなくはないけど
お前も少しは楽しまなきゃこずえだって喜ばないぞ」
え……? こずえが喜ばない…?


≪大丈夫よ、将……。もう少し激しくっても私は大丈夫だから…≫


聞き慣れたもう一人の自分の声がした。
今日になって、もうほとんどその声を聞くことが
できなかったこずえの声が、力を振り絞って脳に直接呼びかけている。
そう、ありがとうこずえ…。
「わかったわ直くん、私もあなたを感じたい。だから…」
言い終える間もなく直くんの唇に触れ合った。
う…うわっ、私本当は男なのにキスしちゃった…。
もう何度も自分の意志でキスをするとはいえ、
やっぱり心まで女になりきってないので、多少の嫌悪感は拭えなかった。
それでも恋人になれたという甘い思いが全身を駆け巡り、えも言われぬ陶酔感に
酔った。

<つづく>

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