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祇堂鞠也
抱き枕のバージョンがいっぱいあるなぁw
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エクセル・サーガ 23
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1250万アクセスを突破しました!
シルバーウイークあたりからこの月末にかけて若干アクセス不調気味です。
取りあえず、様子見かしら。
取りあえず、様子見かしら。
水曜イラスト企画 絵師 吉野かやさん (4) 仮名:黒川 正臣
一行キャラ設定 黒川 正臣 少年もぐり医師 絵師:吉野かや
絵師:吉野かや

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
吉野かやさんはソフトエロOKとの事ですのでよろしくー。
絵師:吉野かや

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
吉野かやさんはソフトエロOKとの事ですのでよろしくー。
双心のサヤ-刀姫推参!
女の子同士の入れ替わり、あるいは二重人格モノのようですね。
その手の話も好きです。
内容紹介
兵藤雪柾は大財閥の子息だが安アパート暮らし。
それは屋敷にいた時から心をよせていたメイドの沙耶と駆け落ちしたからだ。ところがある日沙耶
に変化がおきる。なんとくしゃみをすると、戦国時代のお姫様と魂が入れ替わってしまうのだ! 鬼
才によるサムライアクションラヴコメディー開幕!
その手の話も好きです。
内容紹介
兵藤雪柾は大財閥の子息だが安アパート暮らし。
それは屋敷にいた時から心をよせていたメイドの沙耶と駆け落ちしたからだ。ところがある日沙耶
に変化がおきる。なんとくしゃみをすると、戦国時代のお姫様と魂が入れ替わってしまうのだ! 鬼
才によるサムライアクションラヴコメディー開幕!
![]() | 双心のサヤ-刀姫推参!- (HJ文庫 と 4-1-1) (2009/10/01) 鳥生浩司 商品詳細を見る |
創作アドバイス アルスに付いたSSを題材に
アドバイスは大変難しいのですが身の程を気にせずに果敢にトライしてみます。
作者はμさん。
セリカ。それがこの国の名前。
戦いがすべて、強さが権力となる。この世界での戦いの国。
日々強者どもが国に集まり死んでいく。死は見る側では何の恐怖でもなくなっていた。
そして、強さを求めるあまり戦いの神を決めようとまでする有様に・・・
そして世界最強の名を欲しいままに一つの大会が始まる
それが、「オリンピア」。世界の強豪が今始まる!
<世界の強豪が今始まる!は、世界の強豪が今集まる!の方が良いと思います。『この』と言う言葉は基本的には先に出た言葉を受ける使い方が好ましいです>
アルスはそのCMをテレビで見ていた。セリカの30ある地区のこの第5地区の中で最強と呼ばれるアルスは、大会のある第9地区に来ていた。
<第9地区に来ているのであれば、この第5地区、と言う表記はおかしいです。また、後の展開で必要なのかもしれませんが、あまりTSと関係ないところの設定は細かく作る必要はないですし、仮に作るとしても裏設定ぐらいに抑えて、表面には二割程度しか出さないほうが奥行きがでると思います>
大会は明日から受付か、頑張らないとな。あれのためにも。そう思い大事をとりオレはテレビを消して早めに寝た。
翌日
オレは、いつもより早く寝たせいか早く目が覚めた。そうした清々しい気分で大会受付へ向かった。まだ受付まで1時間ほどあるというのに来てしまったのでまだ誰もいないと思っていたんだが、もう数百人ほどの人が並んでいた。ふぅ。軽く溜息をつきその行列に並んだ。大会主催側もあまりにも早く人が集まりすぎたせいで、早めにエントリーを受け付け始めたようだった。
<冒頭からころころと場面が変わっています。ナレーション、ナレーションがいつの間にかCMの中、大会前日の夜。大会当日の朝。いきなり、次の乱闘シーンから始めた方が良いと思います。>
そうして並んでいるとオレの後ろに並ぶ人が来た。だがそいつはオレにとってとんでもないことを言い出した。
「んー?なんだチビがならんでやがる ガキは帰った帰った」
確かにオレは10歳でかなり背の小さい方だ。しかしそれはオレのプライドを傷つけるモノだった。どんな相手だろうと気にするヤツは雑魚だ。
振り返るとそいつはかなりの大男だった。いやいやオレから見て大男じゃなくて、一般人と比べて大男というわけだ。
「ならオレを、切り捨ててみろよ!こんなチビがでれるわけないと思うならな!」
その言葉でその大男もきれたようだった。
「上等だこのガキが!殺してこの大会のデモンストレーションにしてやる!」
そういうと大男は背負っていた一般人なら振ることも出来なそうな大剣を両手でオレのもとへ振り落とした。
「けっ。ガキが粋がるからこんなことになるんだよ」
「どういうことになるんだ?」
大男の後ろに現れたオレに大男は驚いていた。
「すばしっこい蠅が。おとなしく死ね!」
そういうと躊躇わず横に縦に大剣を両手で振り回した。
「はぁっはぁっ、これで死んだだろう」
ザシュッ
<主人公の紹介&見せ場、のはずですが、頭の悪いチンピラに頭の悪い対応をしてしまう主人公、とも受け取れます。チビ、ガキが逆鱗に触れるキーワードになるのであれば、理由の説明があったほうが良いと思います。あと、10歳の設定はのちのち問題になりそうな・・・10歳の必然性はあるのでしょうか>
大男の太刀で巻き上がった煙で見えなかったのかオレはすべての攻撃を自分の剣で受け無傷で、さらに大男の鎧を割り一撃を決めていた。
<誰が何を『見えなかったのか』が良く分かりません。後ろの分は主人公が主語になっているので文全体の流れが悪くなってしまっています>
「畜生!」
そういって不意に大剣で切ってきた。軽く鼻をかする。
<これは細かい突っ込みですが、戦いの最中なので『ボールが急にきたので』みたいな『不意』です>
だがその後のインターバルを見逃さず一気にオレの剣で胴体を切りつけた。
何度も何度も
そしてとどめを刺そうとした時
「そこまでです」
そう声が聞こえ一閃をとめる。
その声の主を探した。その男は一人ぽつんとオレの後ろにいた。だんだん冷静になってきたオレは、何故人がこうも減っているのかという疑問がわいた。だが考える間も与えず
「私はこの大会の主催側のモノです。大会の始まる前の会場での乱闘は禁止されています。即刻おやめください。でなければ・・・失格となります」
・・・
「分かったよ失格は嫌だからな」
そういってオレは剣を直す。
「では失礼します」
そういって主催側の人間は軽々と大男を背負い去ってしまった。
そして列に並び直そうとしたのだがここで思い出す。何故人は減ってしまったのか?
だがすぐに分かった。俺たちの戦いに巻き込まれぬよう散らばっていたのだ。
そして並ぼうとすると、皆順番を譲ってくれた。あの戦いは幸運だったな。
そして受付の前までにたどり着いた。
そこにいたのは、眼帯の少女だった。
「ようこそ オリンピアへ ここでは選手登録をされていますがその前に・・・」
そう言って後ろを向いて何かを取り出していた。
「はい。鼻から血が出てますよ。これで止血してくださいね」
そう言って絆創膏をくれたありがたい。
「はい、では名前と出身地区、その他などをお答えください」
「アルス・シュリアス 第5番地区。それとこれが届いていたのですが・・・」
そう言ってオレは一枚のはがきを取り出した。大会の告知が始まる前の日に届いたモノだった。はがきには不思議な文様とこの大会についてが書かれていた。
「あー、はい。これは特別に強い方へお送りさせていただいているものですね。
では、アルス・シュリアスさんを大会の予選出場者として登録します」
そう言って少女は一つの札と一枚の冊子、見たことのない紙幣の札束をオレに渡した。
オレが聞こうとすると、
「全てはその冊子に説明されていますので後でお読みください」
といわれてしまった。
「ではあとこの中から薬を一本お選びお飲みください」
・・・
「何の薬なんだ?」
「特別な方へのハンデになる薬で一本選ばせろ と聞いておりますが 死ぬことはないようですが・・・」
「絶対なのか?」
「はい。飲まなければ出場できないらしいです」
いかにも怪しい薬だが飲まなければ出場できないなら飲むしかないだろう。
そう決心をきめると、オレは無造作に薬を一本取った。
半透明の真っ赤だった薬のふたを取り一気に飲み干した。・・・。甘かった。
「はい。では完全に登録しました。大会会場内では宿をどこでも無料で借りられますのでお借りください。なお、先程渡した札はあなたのみが使えるあなたの証明書となります。ほとんどの場所で特別な人は待遇されますので見せると良いでしょう。
ではご健闘を祈ります」
普通なら笑顔を見せるのだろうが、少女は歪んだ不適な笑顔を抱いていた。というか、この薬効いてこない。何も効かないあたりもあるのだろうか?
そんなことを考えながら大会会場の中へ一歩を踏み込んだ。
大会会場に入り色々と見て回った結果夜になってしまった。会場といっても一つの街で、モンスターがいたり店があったりだった。宿は朝のうちに予約をしていたので心配ないが、それにしても広すぎた会場を見たので疲れた。体力は死ぬほどつけてあるのに、体がだるい。もしかすると薬の影響でだるいのかもしれない・・・
とにかく宿に帰ることにした。冊子は歩きながら読んだし、日用品ももらったお金で買いそろえた。大会は明日会場の中心にある競技場で午前十時から予選があるらしいので、またまた早く寝ることにした。
宿でも少しばかり待遇が良かったように感じた。やはりこれが特別な人への特権なのだろうか?
そんなことを考えながら布団で寝ようとすると、体中が火照ってきた。外と聞こうが違うのかもしれないと思い、部屋の窓を開けて寝た。
そして次の日から戦いが始まる・・・
<と、言うわけでここで続く、となりました。一応、変身フラグが立ちました。若干不安になるのは、大会設定なので一体何回戦う事になるのかと言う事です。結構長編になってしまいます。TSに関係の無いところは極力早回しした方がテンポがよくなると思います。戦う舞台などの説明はすっとばしても良いでしょう。
ハンデのための薬は自分で運悪く選んでしまっていますが、どちらかと言うともっと理不尽に押し付けられた方が美味しいかもしれません。また、クライマックスをどうするかを考えておく必要があります。雑魚っぽい大男でしたが、再戦時にハンデのせいでピンチになったりするのであれば美味しいかもしれません。
そうそう、重要なサブキャラがいるのでしたらここまでの間に出しておくべきでしたが、未だならなるべく早く出しましょう。
主人公の戦う理由ですが、感情移入のためには早めに明らかにした方が良いと思います。『あれのためにも』とぼかしてしまいましたが、そういう手法は高度な技量が必要です。
続きをお待ちしています。
オレがこのキャラでお話作るなら・・・と言う事で後日プロットを作ってみます。>

絵師:九尾裂きつね
作者はμさん。
セリカ。それがこの国の名前。
戦いがすべて、強さが権力となる。この世界での戦いの国。
日々強者どもが国に集まり死んでいく。死は見る側では何の恐怖でもなくなっていた。
そして、強さを求めるあまり戦いの神を決めようとまでする有様に・・・
そして世界最強の名を欲しいままに一つの大会が始まる
それが、「オリンピア」。世界の強豪が今始まる!
<世界の強豪が今始まる!は、世界の強豪が今集まる!の方が良いと思います。『この』と言う言葉は基本的には先に出た言葉を受ける使い方が好ましいです>
アルスはそのCMをテレビで見ていた。セリカの30ある地区のこの第5地区の中で最強と呼ばれるアルスは、大会のある第9地区に来ていた。
<第9地区に来ているのであれば、この第5地区、と言う表記はおかしいです。また、後の展開で必要なのかもしれませんが、あまりTSと関係ないところの設定は細かく作る必要はないですし、仮に作るとしても裏設定ぐらいに抑えて、表面には二割程度しか出さないほうが奥行きがでると思います>
大会は明日から受付か、頑張らないとな。あれのためにも。そう思い大事をとりオレはテレビを消して早めに寝た。
翌日
オレは、いつもより早く寝たせいか早く目が覚めた。そうした清々しい気分で大会受付へ向かった。まだ受付まで1時間ほどあるというのに来てしまったのでまだ誰もいないと思っていたんだが、もう数百人ほどの人が並んでいた。ふぅ。軽く溜息をつきその行列に並んだ。大会主催側もあまりにも早く人が集まりすぎたせいで、早めにエントリーを受け付け始めたようだった。
<冒頭からころころと場面が変わっています。ナレーション、ナレーションがいつの間にかCMの中、大会前日の夜。大会当日の朝。いきなり、次の乱闘シーンから始めた方が良いと思います。>
そうして並んでいるとオレの後ろに並ぶ人が来た。だがそいつはオレにとってとんでもないことを言い出した。
「んー?なんだチビがならんでやがる ガキは帰った帰った」
確かにオレは10歳でかなり背の小さい方だ。しかしそれはオレのプライドを傷つけるモノだった。どんな相手だろうと気にするヤツは雑魚だ。
振り返るとそいつはかなりの大男だった。いやいやオレから見て大男じゃなくて、一般人と比べて大男というわけだ。
「ならオレを、切り捨ててみろよ!こんなチビがでれるわけないと思うならな!」
その言葉でその大男もきれたようだった。
「上等だこのガキが!殺してこの大会のデモンストレーションにしてやる!」
そういうと大男は背負っていた一般人なら振ることも出来なそうな大剣を両手でオレのもとへ振り落とした。
「けっ。ガキが粋がるからこんなことになるんだよ」
「どういうことになるんだ?」
大男の後ろに現れたオレに大男は驚いていた。
「すばしっこい蠅が。おとなしく死ね!」
そういうと躊躇わず横に縦に大剣を両手で振り回した。
「はぁっはぁっ、これで死んだだろう」
ザシュッ
<主人公の紹介&見せ場、のはずですが、頭の悪いチンピラに頭の悪い対応をしてしまう主人公、とも受け取れます。チビ、ガキが逆鱗に触れるキーワードになるのであれば、理由の説明があったほうが良いと思います。あと、10歳の設定はのちのち問題になりそうな・・・10歳の必然性はあるのでしょうか>
大男の太刀で巻き上がった煙で見えなかったのかオレはすべての攻撃を自分の剣で受け無傷で、さらに大男の鎧を割り一撃を決めていた。
<誰が何を『見えなかったのか』が良く分かりません。後ろの分は主人公が主語になっているので文全体の流れが悪くなってしまっています>
「畜生!」
そういって不意に大剣で切ってきた。軽く鼻をかする。
<これは細かい突っ込みですが、戦いの最中なので『ボールが急にきたので』みたいな『不意』です>
だがその後のインターバルを見逃さず一気にオレの剣で胴体を切りつけた。
何度も何度も
そしてとどめを刺そうとした時
「そこまでです」
そう声が聞こえ一閃をとめる。
その声の主を探した。その男は一人ぽつんとオレの後ろにいた。だんだん冷静になってきたオレは、何故人がこうも減っているのかという疑問がわいた。だが考える間も与えず
「私はこの大会の主催側のモノです。大会の始まる前の会場での乱闘は禁止されています。即刻おやめください。でなければ・・・失格となります」
・・・
「分かったよ失格は嫌だからな」
そういってオレは剣を直す。
「では失礼します」
そういって主催側の人間は軽々と大男を背負い去ってしまった。
そして列に並び直そうとしたのだがここで思い出す。何故人は減ってしまったのか?
だがすぐに分かった。俺たちの戦いに巻き込まれぬよう散らばっていたのだ。
そして並ぼうとすると、皆順番を譲ってくれた。あの戦いは幸運だったな。
そして受付の前までにたどり着いた。
そこにいたのは、眼帯の少女だった。
「ようこそ オリンピアへ ここでは選手登録をされていますがその前に・・・」
そう言って後ろを向いて何かを取り出していた。
「はい。鼻から血が出てますよ。これで止血してくださいね」
そう言って絆創膏をくれたありがたい。
「はい、では名前と出身地区、その他などをお答えください」
「アルス・シュリアス 第5番地区。それとこれが届いていたのですが・・・」
そう言ってオレは一枚のはがきを取り出した。大会の告知が始まる前の日に届いたモノだった。はがきには不思議な文様とこの大会についてが書かれていた。
「あー、はい。これは特別に強い方へお送りさせていただいているものですね。
では、アルス・シュリアスさんを大会の予選出場者として登録します」
そう言って少女は一つの札と一枚の冊子、見たことのない紙幣の札束をオレに渡した。
オレが聞こうとすると、
「全てはその冊子に説明されていますので後でお読みください」
といわれてしまった。
「ではあとこの中から薬を一本お選びお飲みください」
・・・
「何の薬なんだ?」
「特別な方へのハンデになる薬で一本選ばせろ と聞いておりますが 死ぬことはないようですが・・・」
「絶対なのか?」
「はい。飲まなければ出場できないらしいです」
いかにも怪しい薬だが飲まなければ出場できないなら飲むしかないだろう。
そう決心をきめると、オレは無造作に薬を一本取った。
半透明の真っ赤だった薬のふたを取り一気に飲み干した。・・・。甘かった。
「はい。では完全に登録しました。大会会場内では宿をどこでも無料で借りられますのでお借りください。なお、先程渡した札はあなたのみが使えるあなたの証明書となります。ほとんどの場所で特別な人は待遇されますので見せると良いでしょう。
ではご健闘を祈ります」
普通なら笑顔を見せるのだろうが、少女は歪んだ不適な笑顔を抱いていた。というか、この薬効いてこない。何も効かないあたりもあるのだろうか?
そんなことを考えながら大会会場の中へ一歩を踏み込んだ。
大会会場に入り色々と見て回った結果夜になってしまった。会場といっても一つの街で、モンスターがいたり店があったりだった。宿は朝のうちに予約をしていたので心配ないが、それにしても広すぎた会場を見たので疲れた。体力は死ぬほどつけてあるのに、体がだるい。もしかすると薬の影響でだるいのかもしれない・・・
とにかく宿に帰ることにした。冊子は歩きながら読んだし、日用品ももらったお金で買いそろえた。大会は明日会場の中心にある競技場で午前十時から予選があるらしいので、またまた早く寝ることにした。
宿でも少しばかり待遇が良かったように感じた。やはりこれが特別な人への特権なのだろうか?
そんなことを考えながら布団で寝ようとすると、体中が火照ってきた。外と聞こうが違うのかもしれないと思い、部屋の窓を開けて寝た。
そして次の日から戦いが始まる・・・
<と、言うわけでここで続く、となりました。一応、変身フラグが立ちました。若干不安になるのは、大会設定なので一体何回戦う事になるのかと言う事です。結構長編になってしまいます。TSに関係の無いところは極力早回しした方がテンポがよくなると思います。戦う舞台などの説明はすっとばしても良いでしょう。
ハンデのための薬は自分で運悪く選んでしまっていますが、どちらかと言うともっと理不尽に押し付けられた方が美味しいかもしれません。また、クライマックスをどうするかを考えておく必要があります。雑魚っぽい大男でしたが、再戦時にハンデのせいでピンチになったりするのであれば美味しいかもしれません。
そうそう、重要なサブキャラがいるのでしたらここまでの間に出しておくべきでしたが、未だならなるべく早く出しましょう。
主人公の戦う理由ですが、感情移入のためには早めに明らかにした方が良いと思います。『あれのためにも』とぼかしてしまいましたが、そういう手法は高度な技量が必要です。
続きをお待ちしています。
オレがこのキャラでお話作るなら・・・と言う事で後日プロットを作ってみます。>

絵師:九尾裂きつね
悪魔と俺 特盛り
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ボク×カノ (角川コミックス・エース 232-1) (コミック)
![]() | ボク×カノ (角川コミックス・エース 232-1) (2009/09/26) しまだ 商品詳細を見る |
内容紹介
不器用な主人公翔太郎は、イベントで憧れの弥生ちゃんに女装姿を見られてしまう。しかし、正体を隠したまま女装姿「しょうこ」として、弥生と友達になり…!?女装男子×腐女子×男装女子の新感覚ラブコメ登場!
投稿入れ替わり小説 『僕だった彼女』 <後> by.りゅうのみや
「元に戻れそうにないわね」
「そうだな」
「だったら今の状況を楽しまなきゃ!」
「どうやって?」
「決まっているでしょ、デートよ♪」
「デデデデ、デート!?」
「そう、デートよ。せっかく目の前にこんなに可愛い女性がいて、
何もしないなんて勿体無いわよ」
それはあくまでも龍一の立場から見て、
自分の美貌にうっとりするナルシスト的な要素が
あるのなら分からなくもないが、僕の方から見れば、
自分の顔にどうやって心ときめかせろというのだ!
「何、文句あるの? 元はといえばあんたがぶつかりさえしなければ……」
「わかった、わかったから行けばいいんだろ、行けば!」
どうも彼女には敵わない。
どうしてあの男はこんな凶暴娘を好きになったのだろう?
……マゾ?
「電車に乗るのも久しぶりねー、
小さい頃はよく座席を反対に座って景色を楽しんだわ。
それで靴を脱ぐのを忘れていたから、
いつも知らないおじさんのスラックスを汚していたわ」
「小さいから仕方がないとそのおじさんに同情すべきか、
それともその頃から凶暴な片鱗が見え隠れしたと考察すべきか……」
龍一の希望で二駅離れた遊園地に行くことにした。
彼女はあまり電車に乗る機会がないためか、
えらく上機嫌だが、僕にとってみれば通学の時に利用するので、
取り立ててテンションが上がるものではなかった。
むしろ通勤ラッシュと重なるため、苦い思い出しかないのだが……
しかし……
遊園地は僕が計画として練っていたデートコースでもあった。
それを目の前に映る『僕』のために巡るとは……
「どうしたの? 溜息何かついちゃって」
「いや……、好きな人と今から行くところに誘おうとしただけに、
胸が締め付けられて……」
そう言うなり龍一は頬を膨らませて不機嫌になった。
「何よ、目の前にこんなに可愛い人がいるじゃない!
この私がいるって言うのに、少しは楽しんだらどう!?」
その発言に思わず龍一の手を掴んで、前の車両に移った。
まったく、誤解を生みかねない発言で、ますます僕に戻れないじゃないか。
わざとそうしている感じではないので、他人に対する配慮に欠けるのだろう。
「あ、着いたわよ」
電車が停車してドアが開くなり、降りるとすぐに
『一番乗り―☆』と言いながらポーズを決めた。
まったく、子供というかなんというか……
歩いてすぐの所に遊園地がある。
珍しいことに入場料は各々が払うことになった。
それほど大きくはない遊園地だが、それなりにアトラクションが揃っている。
「ねぇ、まずは鏡の迷路に行ってみましょ!」
「そ、それで楽しむのって小学生とその親じゃないの?」
「いいでしょ、乙女は常に夢を見るのよ」
その顔で乙女心云々を語るのは説得力に欠けるが、
彼女の言う通りにした。
中に入ってみると壁一面が鏡になっていて、
そのために今のこの姿をあらゆる角度で見ることができる。
「こ、これが僕だというの……」
とても不思議な感覚だった。
確かに体だけは女だが、ここにいるだけで心まで女になりそうな気がする。
「あれー、加奈どうしたの? 鏡に映る自分の姿なんか見ちゃって」
「い、いや……その、可愛いなあって………」
何を言っているのだ、男なのに自分のことを可愛いだなんて!
確かに可愛いけど、それを認めてしまうなんて!
認めることで元に戻れなくなってしまう……
それは何よりも恐れていることであり、また甘美な響きでもある。
違う、違う! 女になりたくないのにぃ、なりたくなんかないのにぃ……
どうして……、自分の魅力を認めてしまったら、
元に戻りたいという意思が弱まってしまう……
「やっと認めたのね。そう、あなたはこんなに可愛い。
可愛いのだから自分に恋をしちゃってもいい。
いいのよ、自分に恋しちゃっても。
だってあんたの性格、悔しいけど私より女っぽいのだから」
かぁ~~~~っ!
一瞬で顔が真っ赤になる。
からかっているのだろうか、それとも本心なのか。
「だって私、前々から思っていたの。
顔はこんなに可愛いのに女っぽくないって。
もしかしたら今のこの姿は世を忍ぶ仮の姿じゃないかなーって。
だからあんたと入れ替わって、今の自分が何よりも自然に思えてくるの。
えへへ、変だね、私」
それは……単に凶暴娘だからじゃあ……
でもこの体でいると、まるで私まで男の自分に
疑問を投げかけてくるような感じがして、
結局十歩も歩かないうちに入り口に戻ってしまった。
続いて向かったのはジェットコースター。
私は小さい頃に経験して、それ以来嫌いになってしまった。
「わ……、私こういうの嫌いなんです。
龍一さん、引き返しましょうよ」
もはや蛇に睨まれた蛙状態だった。
怖くて怖くて足が竦(すく)む。
「怖くない怖くない、加奈ってこういうところ嫌いなんだ」
「は……はいぃっ、怖いの嫌ですぅっ!」
そう言うなり私は龍一の袖をギュっと握って必死に訴えた。
「そっかー、大丈夫だよ。私がついているから」
ナデナデ
「りゅ、龍一さん……」
あ、私の頭を撫でてくれる。
どうしてだろう……、さっきから胸の鼓動が聞こえてくる。
私、龍一と一緒にいると心がときめく。
自分が加奈という一人の女性でありたいと思って、
それが自然であるかのように思えてくる。
……流されてはダメ。
そう思っていても、もう私の心は変わってしまっている。
心が望んでいる、女性になりたいと願ってしまう……
私、自分に、そして龍一に恋をしている……
「手、握ってもいい?
私、あなたがそばにいてくれたら怖い気持ちが
和らぐような気がしてきて……」
「うん、いいわよ。
そうやっていると本当に抱きしめたくなるほど可愛いね」
その言葉にますます戻れなくなってしまう。
でも、もう戻れなくなってしまった。
だってジェットコースターの怖さも、龍一のお陰で全然怖くなかったから……
もう日が暮れてきた。
時間的にこれが最後のアトラクションになるだろう。
「私はねー、あれに乗りたいの。
あれで遠くの景色を眺めたいの」
龍一が指さしていたのは観覧車だった。
それは恋人同士が乗る金字塔のような乗り物だった。
「そそそそ、それに乗るつもり!?」
だめだ……、かなり長い時間、景色以外といえば
相手の顔しか見ることができないじゃないか。
さっきから女性としての価値観を埋め込まれているところに、
とどめの一撃を決めようとしているのと変わらないじゃないか。
そう考えると嫌悪の思いが一気に爆発した。
「もうこれ以上女性にしないで! これ以上感情の変化を味あわせないで!
辛いの……、怖いの……、私が私でなくなっちゃう……
心の変化についてこれないの……、ダメ…私、本当にダメなの……」
はっきりいって情緒不安定だった。
心はとっくに女性になっているものの、頭がそれに伴っていない。
あるいは理性が酷い葛藤となって押し寄せてくる。
そのためこれ以上変わることが怖くなってしまった。
それなら元に戻る算段を練ってもいいのだが、
それを考えるほど男としての価値観は、もう喪失している。
女になるのは怖い、でも男に戻ることもできない。
男でも女でもない中途半端な性別、それが今の私だった。
それだけにちょっとした気持ちの揺らぎで心が大きく動揺する。
私は地面に座り込んで泣き出した。
「う……うええぇん。変わりたくない、私…女になりたくない!
止めてぇ、ねぇ、お願いだから止めてよぉ!」
入れ替わったのは私のせいだったのだが、それでも誰かにすがりたかった。
その時、龍一が私を思いっきり抱きしめた。
「ごめんね……」
「え? あ……、あの…」
「ごめんね、私がちょっとふざけたばっかりに、
加奈をこんなにも悲しませちゃって……」
「りゅう……いち?」
「確かにぶつかったのは紛れもなくお前だ。
でもだからといって入れ替わったのはお前のせいじゃない。
分かっていたのに、悪ふざけでデートに誘って
困らせる結果になってしまって……」
「龍一さん……」
龍一は今までの凶暴娘ではもうなかった。
まるで愛しい恋人を傷つけてしまったことに、
自責の念を抱いている彼氏のようだった。
「もう、戻れないのだったらお前にだけ女にさせるのは歯痒くて仕方がない!
お前が女性になるのであれば、私も責任をもって男になる!」
「え……、龍一さんそれって……」
「お願いだ、私と付き合ってください!」
……
…………
時間が止まったかのような感覚。
何を言っているのか理解するのに少し時間を要した。
言っている意味を理解すると元自分の顔が突然別人のように見える。
ま、眩しい、眩し過ぎる。
あまりにも頼もしく、また恰好良く見えたので、直視できなかった。
「あれ? 加奈……ひょっとして嫌だった?」
「いえ……、凄く嬉しいです。
嬉しいけど、それはあなたの本心からなの?
信じて……いいの?」
「ああ、お前は私の彼女に理想的な女性だよ」
その言葉を聞くと私は考えるより先に龍一に飛びついた。
「私、龍一さんのこと好き!
『元私』だったから、そして龍一だから好き!」
「私も加奈のこと、好きだな」
二人はライトアップで辺りが夢色な景色の最中、唇を交わした。
初めてのキスは女性になれたことを嬉しく思うあまりよく覚えていなかった。
もうすっかり暗くなったので、二人は駅に戻りそれぞれの家に帰ることにした。
お互いの住所と駅からのルートを教え合った。
「じゃあ、もうここでお別れだね。
家、わかるよね加奈?」
「はい龍一さん。今日は本当に楽しかったです。
私、初めてのデートがあなたでよかった……」
「そう言って頂けると嬉しいな。
まぁ、これからよろしくお願いな」
「はい、さようなら龍一さん」
そう言って初めてお邪魔する、元彼女の家に向かった。
翌日……
「いっけなーい、寝坊しちゃった!
おかーさん、目覚まし鳴っていた!?」
「鳴っていても目を覚まさなかったじゃない」
「うわっ、もうこの時間!
トーストだけもらうから、服着替えていってきまーす!」
女性になっても相変わらず寝坊は変わりそうにない。
これはあの人が、寝坊癖があったのか、私の意識の問題なのか……
私は大急ぎで洗面台で顔を洗って髪をとかし、服を着替えたら家を出た。
女性になって最初の登校日で早々に遅刻なんて洒落にならない。
幸いなことに私の家は電車に乗らなくていいほど近いところなので、
少しダッシュするくらいで間に合いそうだ。
「よぉ、おはよう加奈」
え、その声は……
「りゅ、龍一さん♪」
石田龍一、つまり以前僕だった彼女だ。
その姿は以前の私のように気弱そうな表情ではなく、
物怖じしない男らしい顔つきだった。
「その制服姿とっても可愛いよ」
「そ、そんな……、私着こなしとかよく分からなくて、恥ずかしい限りです」
「ううん、そんなことないよ。
可愛かった私の体だから何を着ても似合うよ」
「あ、ありがとう龍一さん……」
キーンコーンカーンコーン
「うわっ……やっべー、予鈴が鳴っちゃった。
急ぐぞ、加奈!」
「うん、龍一さん」
二人は学校を目指して駆けていった。
秋の恋の空気をいっぱいに吸いこんで……
(おしまい)
あとがき
TSの分類に挙げていいのか微妙だけど、入れ替わりものでした。
タイトルの命名はいつも苦労します。今回も直球です、すみません。
「そうだな」
「だったら今の状況を楽しまなきゃ!」
「どうやって?」
「決まっているでしょ、デートよ♪」
「デデデデ、デート!?」
「そう、デートよ。せっかく目の前にこんなに可愛い女性がいて、
何もしないなんて勿体無いわよ」
それはあくまでも龍一の立場から見て、
自分の美貌にうっとりするナルシスト的な要素が
あるのなら分からなくもないが、僕の方から見れば、
自分の顔にどうやって心ときめかせろというのだ!
「何、文句あるの? 元はといえばあんたがぶつかりさえしなければ……」
「わかった、わかったから行けばいいんだろ、行けば!」
どうも彼女には敵わない。
どうしてあの男はこんな凶暴娘を好きになったのだろう?
……マゾ?
「電車に乗るのも久しぶりねー、
小さい頃はよく座席を反対に座って景色を楽しんだわ。
それで靴を脱ぐのを忘れていたから、
いつも知らないおじさんのスラックスを汚していたわ」
「小さいから仕方がないとそのおじさんに同情すべきか、
それともその頃から凶暴な片鱗が見え隠れしたと考察すべきか……」
龍一の希望で二駅離れた遊園地に行くことにした。
彼女はあまり電車に乗る機会がないためか、
えらく上機嫌だが、僕にとってみれば通学の時に利用するので、
取り立ててテンションが上がるものではなかった。
むしろ通勤ラッシュと重なるため、苦い思い出しかないのだが……
しかし……
遊園地は僕が計画として練っていたデートコースでもあった。
それを目の前に映る『僕』のために巡るとは……
「どうしたの? 溜息何かついちゃって」
「いや……、好きな人と今から行くところに誘おうとしただけに、
胸が締め付けられて……」
そう言うなり龍一は頬を膨らませて不機嫌になった。
「何よ、目の前にこんなに可愛い人がいるじゃない!
この私がいるって言うのに、少しは楽しんだらどう!?」
その発言に思わず龍一の手を掴んで、前の車両に移った。
まったく、誤解を生みかねない発言で、ますます僕に戻れないじゃないか。
わざとそうしている感じではないので、他人に対する配慮に欠けるのだろう。
「あ、着いたわよ」
電車が停車してドアが開くなり、降りるとすぐに
『一番乗り―☆』と言いながらポーズを決めた。
まったく、子供というかなんというか……
歩いてすぐの所に遊園地がある。
珍しいことに入場料は各々が払うことになった。
それほど大きくはない遊園地だが、それなりにアトラクションが揃っている。
「ねぇ、まずは鏡の迷路に行ってみましょ!」
「そ、それで楽しむのって小学生とその親じゃないの?」
「いいでしょ、乙女は常に夢を見るのよ」
その顔で乙女心云々を語るのは説得力に欠けるが、
彼女の言う通りにした。
中に入ってみると壁一面が鏡になっていて、
そのために今のこの姿をあらゆる角度で見ることができる。
「こ、これが僕だというの……」
とても不思議な感覚だった。
確かに体だけは女だが、ここにいるだけで心まで女になりそうな気がする。
「あれー、加奈どうしたの? 鏡に映る自分の姿なんか見ちゃって」
「い、いや……その、可愛いなあって………」
何を言っているのだ、男なのに自分のことを可愛いだなんて!
確かに可愛いけど、それを認めてしまうなんて!
認めることで元に戻れなくなってしまう……
それは何よりも恐れていることであり、また甘美な響きでもある。
違う、違う! 女になりたくないのにぃ、なりたくなんかないのにぃ……
どうして……、自分の魅力を認めてしまったら、
元に戻りたいという意思が弱まってしまう……
「やっと認めたのね。そう、あなたはこんなに可愛い。
可愛いのだから自分に恋をしちゃってもいい。
いいのよ、自分に恋しちゃっても。
だってあんたの性格、悔しいけど私より女っぽいのだから」
かぁ~~~~っ!
一瞬で顔が真っ赤になる。
からかっているのだろうか、それとも本心なのか。
「だって私、前々から思っていたの。
顔はこんなに可愛いのに女っぽくないって。
もしかしたら今のこの姿は世を忍ぶ仮の姿じゃないかなーって。
だからあんたと入れ替わって、今の自分が何よりも自然に思えてくるの。
えへへ、変だね、私」
それは……単に凶暴娘だからじゃあ……
でもこの体でいると、まるで私まで男の自分に
疑問を投げかけてくるような感じがして、
結局十歩も歩かないうちに入り口に戻ってしまった。
続いて向かったのはジェットコースター。
私は小さい頃に経験して、それ以来嫌いになってしまった。
「わ……、私こういうの嫌いなんです。
龍一さん、引き返しましょうよ」
もはや蛇に睨まれた蛙状態だった。
怖くて怖くて足が竦(すく)む。
「怖くない怖くない、加奈ってこういうところ嫌いなんだ」
「は……はいぃっ、怖いの嫌ですぅっ!」
そう言うなり私は龍一の袖をギュっと握って必死に訴えた。
「そっかー、大丈夫だよ。私がついているから」
ナデナデ
「りゅ、龍一さん……」
あ、私の頭を撫でてくれる。
どうしてだろう……、さっきから胸の鼓動が聞こえてくる。
私、龍一と一緒にいると心がときめく。
自分が加奈という一人の女性でありたいと思って、
それが自然であるかのように思えてくる。
……流されてはダメ。
そう思っていても、もう私の心は変わってしまっている。
心が望んでいる、女性になりたいと願ってしまう……
私、自分に、そして龍一に恋をしている……
「手、握ってもいい?
私、あなたがそばにいてくれたら怖い気持ちが
和らぐような気がしてきて……」
「うん、いいわよ。
そうやっていると本当に抱きしめたくなるほど可愛いね」
その言葉にますます戻れなくなってしまう。
でも、もう戻れなくなってしまった。
だってジェットコースターの怖さも、龍一のお陰で全然怖くなかったから……
もう日が暮れてきた。
時間的にこれが最後のアトラクションになるだろう。
「私はねー、あれに乗りたいの。
あれで遠くの景色を眺めたいの」
龍一が指さしていたのは観覧車だった。
それは恋人同士が乗る金字塔のような乗り物だった。
「そそそそ、それに乗るつもり!?」
だめだ……、かなり長い時間、景色以外といえば
相手の顔しか見ることができないじゃないか。
さっきから女性としての価値観を埋め込まれているところに、
とどめの一撃を決めようとしているのと変わらないじゃないか。
そう考えると嫌悪の思いが一気に爆発した。
「もうこれ以上女性にしないで! これ以上感情の変化を味あわせないで!
辛いの……、怖いの……、私が私でなくなっちゃう……
心の変化についてこれないの……、ダメ…私、本当にダメなの……」
はっきりいって情緒不安定だった。
心はとっくに女性になっているものの、頭がそれに伴っていない。
あるいは理性が酷い葛藤となって押し寄せてくる。
そのためこれ以上変わることが怖くなってしまった。
それなら元に戻る算段を練ってもいいのだが、
それを考えるほど男としての価値観は、もう喪失している。
女になるのは怖い、でも男に戻ることもできない。
男でも女でもない中途半端な性別、それが今の私だった。
それだけにちょっとした気持ちの揺らぎで心が大きく動揺する。
私は地面に座り込んで泣き出した。
「う……うええぇん。変わりたくない、私…女になりたくない!
止めてぇ、ねぇ、お願いだから止めてよぉ!」
入れ替わったのは私のせいだったのだが、それでも誰かにすがりたかった。
その時、龍一が私を思いっきり抱きしめた。
「ごめんね……」
「え? あ……、あの…」
「ごめんね、私がちょっとふざけたばっかりに、
加奈をこんなにも悲しませちゃって……」
「りゅう……いち?」
「確かにぶつかったのは紛れもなくお前だ。
でもだからといって入れ替わったのはお前のせいじゃない。
分かっていたのに、悪ふざけでデートに誘って
困らせる結果になってしまって……」
「龍一さん……」
龍一は今までの凶暴娘ではもうなかった。
まるで愛しい恋人を傷つけてしまったことに、
自責の念を抱いている彼氏のようだった。
「もう、戻れないのだったらお前にだけ女にさせるのは歯痒くて仕方がない!
お前が女性になるのであれば、私も責任をもって男になる!」
「え……、龍一さんそれって……」
「お願いだ、私と付き合ってください!」
……
…………
時間が止まったかのような感覚。
何を言っているのか理解するのに少し時間を要した。
言っている意味を理解すると元自分の顔が突然別人のように見える。
ま、眩しい、眩し過ぎる。
あまりにも頼もしく、また恰好良く見えたので、直視できなかった。
「あれ? 加奈……ひょっとして嫌だった?」
「いえ……、凄く嬉しいです。
嬉しいけど、それはあなたの本心からなの?
信じて……いいの?」
「ああ、お前は私の彼女に理想的な女性だよ」
その言葉を聞くと私は考えるより先に龍一に飛びついた。
「私、龍一さんのこと好き!
『元私』だったから、そして龍一だから好き!」
「私も加奈のこと、好きだな」
二人はライトアップで辺りが夢色な景色の最中、唇を交わした。
初めてのキスは女性になれたことを嬉しく思うあまりよく覚えていなかった。
もうすっかり暗くなったので、二人は駅に戻りそれぞれの家に帰ることにした。
お互いの住所と駅からのルートを教え合った。
「じゃあ、もうここでお別れだね。
家、わかるよね加奈?」
「はい龍一さん。今日は本当に楽しかったです。
私、初めてのデートがあなたでよかった……」
「そう言って頂けると嬉しいな。
まぁ、これからよろしくお願いな」
「はい、さようなら龍一さん」
そう言って初めてお邪魔する、元彼女の家に向かった。
翌日……
「いっけなーい、寝坊しちゃった!
おかーさん、目覚まし鳴っていた!?」
「鳴っていても目を覚まさなかったじゃない」
「うわっ、もうこの時間!
トーストだけもらうから、服着替えていってきまーす!」
女性になっても相変わらず寝坊は変わりそうにない。
これはあの人が、寝坊癖があったのか、私の意識の問題なのか……
私は大急ぎで洗面台で顔を洗って髪をとかし、服を着替えたら家を出た。
女性になって最初の登校日で早々に遅刻なんて洒落にならない。
幸いなことに私の家は電車に乗らなくていいほど近いところなので、
少しダッシュするくらいで間に合いそうだ。
「よぉ、おはよう加奈」
え、その声は……
「りゅ、龍一さん♪」
石田龍一、つまり以前僕だった彼女だ。
その姿は以前の私のように気弱そうな表情ではなく、
物怖じしない男らしい顔つきだった。
「その制服姿とっても可愛いよ」
「そ、そんな……、私着こなしとかよく分からなくて、恥ずかしい限りです」
「ううん、そんなことないよ。
可愛かった私の体だから何を着ても似合うよ」
「あ、ありがとう龍一さん……」
キーンコーンカーンコーン
「うわっ……やっべー、予鈴が鳴っちゃった。
急ぐぞ、加奈!」
「うん、龍一さん」
二人は学校を目指して駆けていった。
秋の恋の空気をいっぱいに吸いこんで……
(おしまい)
あとがき
TSの分類に挙げていいのか微妙だけど、入れ替わりものでした。
タイトルの命名はいつも苦労します。今回も直球です、すみません。
ヘッドフォン少女画報
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投稿入れ替わり小説 『僕だった彼女』 <中> by.りゅうのみや
「いっただきまーす♪」
そう言いながら龍一は三段に積まれたホットケーキを食べ始めている。
ここは喫茶店、朝食を抜いた罰として奢る羽目になった。
財布は中身だけ交換され、手元には万札三枚が入っているが、
なぜか迷惑料として一枚ピンハネされた。
どうして……、本当なら好きな人とのデートに使うつもりが……
「もう一人のお客様も何かご注文はありませんでしょうか?」
自分のお金で食べるのだし、あまり注文しないようなデザートでも頼んでみるか。
「えっとこのチョコレートとカスタードのアイスを……イタッ!」
テーブルからでは死角となっているが、右手を龍一に思いっきりつねられた。
「(何勝手に頼もうとしているの!?)」
「(え? だ、だって精算は僕持ちだけど……)」
「(カロリー高めのデザート頼んで太らせるつもり?
あんたにはこのメニューがぴったりなのよ!)」
そう囁きながらメニューに指差したのは……
まさか…、これを注文しろというのか……
「え……えっと、特選青汁をお願いします」
「はい、かしこまりました」
一瞬周りの空気が凍りついたような気がする。
くっそ~、こんな可愛い顔しながら渋いメニューを
選ばなければならないなんて、新手の嫌がらせか……
「なんでこんなメニュー頼まないといけないの……」
出された青汁は特選というだけあって凄かった。
まず色が凄まじかった。
青汁なのに青くなかった。
いや、七割方は青いのだが、何か青いブツブツというかモロモロとした粒があり、
残り三割は赤とかオレンジとか黄色い粒であり、全然汁ではなかった。
おまけに糸まで引いているし……
あまりに毒々しい色合いなので、店員にレシピを訊ねてみた。
どうやらホウレンソウやピーマンやパセリが主体で、
その他は人参や柚子の皮、パイナップルをミキサーにかけたものらしい。
糸の原因はオクラらしい……
こ、これを飲めというのか、何かの罰ゲームじゃあないだろうか……
ズズッ
「ご、ごめんちょっとトイレ……!」
……
…………
「……凄かった」
げっそりした顔でそう言った。
こんなもの二度と飲みたくなかった。
「あら、あんたに飲んでもらうために注文させたんじゃないのだけど」
「だったら何のために……!」
「ごめんね~、実は私別れたい彼がいてね、
で、どうやって別れ話を切り出そうか困っていたのよ」
「それでああいった手引書で勉強したり青汁を頼んだりしたのか?」
「青汁はそうだけど、あれは結局まだ読んでないわよ」
……つまりこの性格は地だというわけか。
この性格に惚れ込んだ人ってどんな人だろうか……
いや、彼女結構可愛いから面食いなのかも。
それ以前に、一日で二回も別れ話に縁があるとは、
僕ってそれほど恋愛とは無縁の人生を歩むということなのかな……
そう思いつつ何かの縁だと思い、彼女の助けになろうと
『別れを切り出す101の奥義』を手に取った。
『1.デートの30分遅刻は当たり前
2.借りたものは絶対に返さない
3.デレ要素の全くないツン状態
……
………
101.喫茶店で青汁を飲ませる』
「しっかりと青汁のアドバイスがあるし!」
「知らないわよ、偶然よ偶然」
偶然だとするとありのままの自分でいることが、
一番彼女にとっては別れさせやすいということか……
「よぉ加奈、遅れてすまんな」
軽そうな声と共に目の前にキザ男がやって来た。
「(えっと、この人が別れたい彼?)」
「(そう、そうなのよ。しかも待ち合わせ時間を45分遅刻しているし)」
一番目の項目を相手の方がしでかすとは、なかなかの猛者だ。
だが、僕達がここにやって来たのも15分前なので、
やはりこちらにも条件にかなってしまう。
もっとも僕の衝突・失恋イベントのせいで余計な時間を喰らったのだが。
しかし……
これは結構やばい状況ではないだろうか……。
「あれぇ? 加奈、こいつ誰だよ!」
そう言いながら龍一を指差す。
いや、そいつが付き合っている相手の加奈だけど……
「僕……いえ私、この人と付き合おうと思っていて別れを切り出そうと……」
それ以前に男と付き合うつもりなど毛頭ない。
これは龍一の意志であると同時に、僕の意志でもある。
「なにぃ、俺のことが嫌いになったというのか!」
逆上のあまり騒ぎたてる男。
ひ、ひえぇぇっ、怖いよぉ。
「ちょっと、俺の女に酷いことするようなやつは……撃つわよ」
「撃つ……? お前まさか……」
龍一の言葉に即座に反応した男。
もしかして彼女は普段からそういった乱暴な言葉を使うため、
相手に勘付かれたのかもしれない。
「あのあの! これ、私の気持ちです。
私のことが好きなら全部一気に飲んでください!」
そう言いながら一口飲んだだけでゲロった青汁を差し出す。
「ん? なんか誰かが飲んだ跡があるようだが……」
「わ、私が先に一口飲んだのです。
間接キスのようなものですから、跡に合せて飲んでください!」
よく考えれば別に意識して女言葉を使うより、
多少荒っぽい言葉使いの方が自然だと思った。
「なるほどね、心変りしたというのか。
よく見ておけそこの貧相な男よ!
お前には一生加奈の間接キッスにあずかる
ことはできないことを、身を持って知るがいい!」
ゴクゴクゴクゴク
「………………、プシューーーーッ!」
バタン!
あーぁ、こんなまずいのを一気飲みするから体がついていけなかったか。
「ご愁傷様、あんたには暫く眠ってもらうわ」
そう言うなり龍一は倒れた男の額にセロハンテープで紙切れを貼った。
「龍一、何を貼ったんだ?」
「ホットケーキと青汁の請求書」
「ま、まずいだろ、何も頼んでいない男に代金を支払ってもらうなど」
「だからあんたはアマちゃんなのよ、
別れを切り出すには多少冷たくあしらうのがいいのよ。
それに彼、青汁を飲んだし」
こいつのあしらい方は桁違いだ。
そう思いながら請求書の裏面に何か殴り書きが書かれているのに気付いた。
『あんたなんか嫌い嫌い、だーい嫌い!
私が別れたいのに未練たらたらだし、
こうでもしないといけないなんて鈍感過ぎなのよ!
べーだ! Byあんたの『元』彼女:小笠原加奈』
容赦ないな、こいつ。
そう思いながらも強引に腕を引っ張る
龍一によって、店を後にする結果となった。
そして今はさっき振られた公園にいる。
「はー、これでやっと肩の荷が下りたって感じよ」
「大丈夫かな、あれで」
「いいのよ。それよりどうやったら元に戻れるのかな?」
「さあ、お約束としたらぶつかったら戻るのかな?
それとも………」
タタタタタタタタ ドゴッ
「ギャッ!」
ゴロゴロゴロ
龍一のおよそ50mの助走付きタックルにより、
僕は空高く舞い上がり豪快に吹っ飛ばされた。
「加奈の嘘つきー、ぶつかっても変わんないじゃない!」
お、お約束は頭と頭がぶつかって元に戻るのであって、
決して肩でお腹をぶつけるのじゃないのだが……
あまりの痛さに反論できなかった。
もっとも気を取り戻した時にそのことを言ったら、
仲良く頭を押さえる結果になった。
あ……、頭が割れそうだ。
<つづく>
そう言いながら龍一は三段に積まれたホットケーキを食べ始めている。
ここは喫茶店、朝食を抜いた罰として奢る羽目になった。
財布は中身だけ交換され、手元には万札三枚が入っているが、
なぜか迷惑料として一枚ピンハネされた。
どうして……、本当なら好きな人とのデートに使うつもりが……
「もう一人のお客様も何かご注文はありませんでしょうか?」
自分のお金で食べるのだし、あまり注文しないようなデザートでも頼んでみるか。
「えっとこのチョコレートとカスタードのアイスを……イタッ!」
テーブルからでは死角となっているが、右手を龍一に思いっきりつねられた。
「(何勝手に頼もうとしているの!?)」
「(え? だ、だって精算は僕持ちだけど……)」
「(カロリー高めのデザート頼んで太らせるつもり?
あんたにはこのメニューがぴったりなのよ!)」
そう囁きながらメニューに指差したのは……
まさか…、これを注文しろというのか……
「え……えっと、特選青汁をお願いします」
「はい、かしこまりました」
一瞬周りの空気が凍りついたような気がする。
くっそ~、こんな可愛い顔しながら渋いメニューを
選ばなければならないなんて、新手の嫌がらせか……
「なんでこんなメニュー頼まないといけないの……」
出された青汁は特選というだけあって凄かった。
まず色が凄まじかった。
青汁なのに青くなかった。
いや、七割方は青いのだが、何か青いブツブツというかモロモロとした粒があり、
残り三割は赤とかオレンジとか黄色い粒であり、全然汁ではなかった。
おまけに糸まで引いているし……
あまりに毒々しい色合いなので、店員にレシピを訊ねてみた。
どうやらホウレンソウやピーマンやパセリが主体で、
その他は人参や柚子の皮、パイナップルをミキサーにかけたものらしい。
糸の原因はオクラらしい……
こ、これを飲めというのか、何かの罰ゲームじゃあないだろうか……
ズズッ
「ご、ごめんちょっとトイレ……!」
……
…………
「……凄かった」
げっそりした顔でそう言った。
こんなもの二度と飲みたくなかった。
「あら、あんたに飲んでもらうために注文させたんじゃないのだけど」
「だったら何のために……!」
「ごめんね~、実は私別れたい彼がいてね、
で、どうやって別れ話を切り出そうか困っていたのよ」
「それでああいった手引書で勉強したり青汁を頼んだりしたのか?」
「青汁はそうだけど、あれは結局まだ読んでないわよ」
……つまりこの性格は地だというわけか。
この性格に惚れ込んだ人ってどんな人だろうか……
いや、彼女結構可愛いから面食いなのかも。
それ以前に、一日で二回も別れ話に縁があるとは、
僕ってそれほど恋愛とは無縁の人生を歩むということなのかな……
そう思いつつ何かの縁だと思い、彼女の助けになろうと
『別れを切り出す101の奥義』を手に取った。
『1.デートの30分遅刻は当たり前
2.借りたものは絶対に返さない
3.デレ要素の全くないツン状態
……
………
101.喫茶店で青汁を飲ませる』
「しっかりと青汁のアドバイスがあるし!」
「知らないわよ、偶然よ偶然」
偶然だとするとありのままの自分でいることが、
一番彼女にとっては別れさせやすいということか……
「よぉ加奈、遅れてすまんな」
軽そうな声と共に目の前にキザ男がやって来た。
「(えっと、この人が別れたい彼?)」
「(そう、そうなのよ。しかも待ち合わせ時間を45分遅刻しているし)」
一番目の項目を相手の方がしでかすとは、なかなかの猛者だ。
だが、僕達がここにやって来たのも15分前なので、
やはりこちらにも条件にかなってしまう。
もっとも僕の衝突・失恋イベントのせいで余計な時間を喰らったのだが。
しかし……
これは結構やばい状況ではないだろうか……。
「あれぇ? 加奈、こいつ誰だよ!」
そう言いながら龍一を指差す。
いや、そいつが付き合っている相手の加奈だけど……
「僕……いえ私、この人と付き合おうと思っていて別れを切り出そうと……」
それ以前に男と付き合うつもりなど毛頭ない。
これは龍一の意志であると同時に、僕の意志でもある。
「なにぃ、俺のことが嫌いになったというのか!」
逆上のあまり騒ぎたてる男。
ひ、ひえぇぇっ、怖いよぉ。
「ちょっと、俺の女に酷いことするようなやつは……撃つわよ」
「撃つ……? お前まさか……」
龍一の言葉に即座に反応した男。
もしかして彼女は普段からそういった乱暴な言葉を使うため、
相手に勘付かれたのかもしれない。
「あのあの! これ、私の気持ちです。
私のことが好きなら全部一気に飲んでください!」
そう言いながら一口飲んだだけでゲロった青汁を差し出す。
「ん? なんか誰かが飲んだ跡があるようだが……」
「わ、私が先に一口飲んだのです。
間接キスのようなものですから、跡に合せて飲んでください!」
よく考えれば別に意識して女言葉を使うより、
多少荒っぽい言葉使いの方が自然だと思った。
「なるほどね、心変りしたというのか。
よく見ておけそこの貧相な男よ!
お前には一生加奈の間接キッスにあずかる
ことはできないことを、身を持って知るがいい!」
ゴクゴクゴクゴク
「………………、プシューーーーッ!」
バタン!
あーぁ、こんなまずいのを一気飲みするから体がついていけなかったか。
「ご愁傷様、あんたには暫く眠ってもらうわ」
そう言うなり龍一は倒れた男の額にセロハンテープで紙切れを貼った。
「龍一、何を貼ったんだ?」
「ホットケーキと青汁の請求書」
「ま、まずいだろ、何も頼んでいない男に代金を支払ってもらうなど」
「だからあんたはアマちゃんなのよ、
別れを切り出すには多少冷たくあしらうのがいいのよ。
それに彼、青汁を飲んだし」
こいつのあしらい方は桁違いだ。
そう思いながら請求書の裏面に何か殴り書きが書かれているのに気付いた。
『あんたなんか嫌い嫌い、だーい嫌い!
私が別れたいのに未練たらたらだし、
こうでもしないといけないなんて鈍感過ぎなのよ!
べーだ! Byあんたの『元』彼女:小笠原加奈』
容赦ないな、こいつ。
そう思いながらも強引に腕を引っ張る
龍一によって、店を後にする結果となった。
そして今はさっき振られた公園にいる。
「はー、これでやっと肩の荷が下りたって感じよ」
「大丈夫かな、あれで」
「いいのよ。それよりどうやったら元に戻れるのかな?」
「さあ、お約束としたらぶつかったら戻るのかな?
それとも………」
タタタタタタタタ ドゴッ
「ギャッ!」
ゴロゴロゴロ
龍一のおよそ50mの助走付きタックルにより、
僕は空高く舞い上がり豪快に吹っ飛ばされた。
「加奈の嘘つきー、ぶつかっても変わんないじゃない!」
お、お約束は頭と頭がぶつかって元に戻るのであって、
決して肩でお腹をぶつけるのじゃないのだが……
あまりの痛さに反論できなかった。
もっとも気を取り戻した時にそのことを言ったら、
仲良く頭を押さえる結果になった。
あ……、頭が割れそうだ。
<つづく>
投稿入れ替わり小説 『僕だった彼女』 <前> by.りゅうのみや
「やっばー、待ち合わせの時間に遅れてしまう!」
あろうことか片思いの人との初デートの日に寝坊してしまった。
目が覚めたのは八時半、待ち合わせの時間は九時。
当然朝食を摂る暇もない。
衣装ケースとにらめっこしながら、どの服がいいか迷っている。
え~っと、やっぱり着慣れているカジュアルとジーパンでいいか。
鏡を見ると頭が爆発しているのが分かる。
「……寝相悪いからな、俺」
いつも寝ながらトリッキーな寝返りをするものだから、
器用なことに目が覚めたら、枕の位置に足があった。
……いくらなんでも180度も回転したのは今日で初めてだ。
流石にこの頭で挑むほど危なっかしい真似はできないので、
洗面台でドライヤーをかけることにした。
……
…………
よしっ、準備も整ったことだし、早速家を出るか。
「行ってきまーす」
玄関のドアを開けると大急ぎで、待ち合わせの公園に向かった。
今は十月、一番過ごしやすく、そして恋の季節でもある。
しかし……
気がかりなことがある。
デートの誘いをしたのは向こうの方なのに、
何やら思い詰めた表情だったしあまりデートを楽しみにしている感じではなかった。
確かに僕の方が一方的にアプローチした感があるのだが、
今まであまり乗り気ではなかった。
それら二つの事柄から考えると、
今回のデートで進展はあまりないのかもしれない。
まずは少しずつ知ることで、先が見えればいいのだが……
ドン
「うわわっ!?」
「きゃああぁっ!」
……
…………
…………………
えーと、状況確認中。
これはあれこれ考え事しているうちに、
目の前の障害物に気が付かず突進してしまったのだろう。
「だぁーれが障害物よ、だぁーれが!」
え? 俺の声?
声のする方に目を向けてみる。
地面に倒れこんで凄い形相で僕を睨みつけている……僕?
……あれ?
なんで僕がもう一人いるのだろう?
「あ……あんた私!?」
「え……、そう言うお前は…僕?」
……
…………
自分の姿を確認する。
肌は白く、髪は肩まで伸ばしており、胸もしっかりある。
「「えぇーーーーっ!?」」
人って不測の事態が起きると思考が停止するって本当だったのか……
えーっと、えーっと。
これって……
「ちょっと、なんで私が男の子になって、あんたが私になっているのよ!」
「さ、さぁ? やっぱりお約束な展開だけど、ぶつかることでの入れ替わりじゃない?」
「バカも休み休み言いなさい! これは……、そうよドッキリカメラなんだわ。
私が倒れこんでいる間に特殊メイクを仕掛け、
私にそっくりな人を連れてきたんだわ、そうに決まっているわ!」
む、無茶苦茶な……
それに芸人じゃあるまいし、見知らぬ一般人にそういうことをして、
キレたら収拾がつかないではないか。
ふにふに
入れ替わった女性はしきりに自分の胸を触る。
いや、ない胸を触っても意味がないぞ。
それにさっきの騒ぎで人が集まっているし……
シクシク、軽く羞恥プレイをされている。
周りに知り合いがいませんように。
「ちょっと、なんであたしの胸がなくなっているの!?
さてはサラシで無理矢理押さえ込んだね。
このあたしの自慢の胸になんてことするの!」
そんな無茶な。
それに男が胸をアピールするような言い方をするなあぁーーっ!
もう当分この道を使えないじゃないか。
「ちょっとこっちへ来なさい!」
「ちょ……、僕をどこに連れていくつもりだ!?」
「いいからさっさと来る!」
うわっ、意外に僕の力ってすごいんだな。
体育会系ではないのに自分と同じくらいの体格の人を引っ張ることができるなんて……
いや、今のこの体が、それほど力がないのかも……
すっかり輪になっている観客を無理矢理かき分けながら、
入れ替わった女性は公園の女子トイレに連れていく。
「ちょっと、ここ狭いぞ」
「うるさいわね、それとも何? もう一度群衆の前で一悶着したいというの?」
「……ここでいいです」
しかし……
「いくら状況を確認したいからといって、
いきなり女子トイレの個室に潜り込むのはまずいんじゃあ……」
「大丈夫よ、全ての個室にノックしたから誰もいないのは確かよ」
いや、そういう問題じゃないのだけど。
「あなたが持っているポーチに手鏡があるから、取ってくれない?」
あ、これか……
小奇麗で趣味のいいポーチのチャックを外し、中に入っているものを確認する。
『新・伊藤流 人をおちょくる方法』
……なんだこの手引書?
『別れを切り出す101の奥義』
グサッ
なんか結構心に来るタイトルだったぞ。
「もういい、あんたがするといらないものを引っ掻きまわすから」
そう言うなりポーチを奪い、手鏡を取り出した。
最初からそうすればいいのに。
手鏡で自分の姿を見た途端、彼女の表情が豹変した。
「ちょ、なにこの顔! 髪をばっさり切っちゃって、
おまけに肌の質も全く違うし! こんなの……私じゃない!」
ようやく自分の置かれた状況を認識したのだろう。
彼女が茫然としている間に手鏡を奪い返し、今度は僕の姿を確認してみた。
「う、うわっ可愛い……」
こんなに可憐で美しい体つきをしているのが僕だなんて信じられない。
自分の姿にうっとりしていると、彼女がいきなり怒鳴りつけてくる。
「ゆ、許せない、許せないわ!
私がこんなにショックを受けている状況の中、
なんであんたは満更でもないって顔しているのよ!
許せない、理不尽よーっ!」
そこまで言いかけて、突然彼女が身震いをした。
「……ちょっと、今すぐこの部屋を出なさい!」
「え? あの……」
「いいから今すぐ出なさい、出ないと撃つわよ!」
拳銃でも持っているのか?
と思いながら殺気に負けて出ることにした。
女子トイレにいるのも気恥しかったので、そのまま外に出ることにした。
「きゃああああぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
み、耳がキンキンする。
甲高い声が女子トイレの中からこだまする。
次の瞬間大慌てで彼女が飛び出してくる。
「ちょ……ちょっと。あんた股間になんて物ぶら下げているのよ!」
股間に……?
「ああっ!」
見れば彼女はジーパンとトランクスをおろしたままの恰好だった。
「ちょ……このままだと僕が変質者に思われるから、早く仕舞って!」
さっきは観客がいる中での羞恥プレイかと思えば、
今度はその方面からやってくるとは……
ああ、もう死にたい。
……
…………
「ところで自己紹介がまだだったわね、私は小笠原加奈よ」
「僕は石田龍一、遼東学園の一年生です」
「へぇ、私も遼東学園よ、二年生だけど」
「で、ややこしいから呼び方を統一するため、
これからは僕が加奈になるけど、それでいいかな」
「それで構わないわ。ところで何を急いでいたのよ」
「あっ!」
今までの騒動ですっかり忘れていた。
約束の時間に間に合わなくなるためにダッシュしていたんだ。
「ま……まずい、初めてのデートの約束がもう15分も遅刻になっちゃった」
「デート? モテない顔で無理しちゃって」
「顔はいいだろ、顔は。この公園で待ち合わせしていたから、
大急ぎで行かなきゃ!」
「待ちなさい!」
「引きとめるなよ、彼女カンカンになっているに違いない!」
「その姿で会いに行くつもり?」
「え……、あっ!」
すっかり今の状況を忘れていた。
この体は小笠原加奈であって僕ではない。
こんな恰好で行ったとしても彼女を当惑させるに違いない。
「すっかり困った顔しているわね、
何なら私が変わりにデートに行ってもいいわよ」
「い、いやいや、余計話がこじれてしまう!」
故意ではないとはいえ、自分の方からぶつかったのは紛れもない事実。
それだけに根に持ってデートを破綻させることだってするかもしれない。
「大丈夫よ、乙女心はあんたよりよく知っているわ。
今回だけは悪い印象を与えるような行為は避けてあげる」
次はないという意味だろうか、
それともデートの後で元に戻る算段でも立てるつもりだろうか。
待ち合わせはこの公園のベンチにしている。
僕は垣根の陰から見守ることにした。
「あの……、遅くなってすみません」
「ううんいいよ、私もちょうど今来たところだから」
「えっと、今回が僕たちの初めてのデートだったよね。
とっておきのデートスポットを知っているのだけど」
おお、なかなかうまい感じで話を進ませようとしているぞ。
良いぞ、その調子だ。
「そのことだけど……、本当にごめんなさい」
「え? どうしたの?」
「私がここに呼んだのはデートをするためではなく、
別れ話を切り出すためだったの」
え……?
そ、それって……
「藤井さん、いいわよこっちにきて」
彼女がそう言うと、体格のいい男がやってきて軽くお辞儀をする。
「今まで黙っていたけど、私は彼と付き合っているの」
「どうして……、どうして黙っていたんだ…?」
「あなたがあまりにも積極的に誘っていて、断りづらかったから。
ごめんなさい、あなたを傷つけちゃうことをしちゃって……」
そんな、そんな……
確かにあまり乗り気じゃないとは思っていた。
向こうの方から誘ってくるにしては不自然な部分も多いとも思っていた。
だけど、まさかこんな結果になるなんて……
「そう……。ごめんね、僕…無神経なせいであなたを困らせちゃって」
「ううん、私の方こそ話を切り出せなくごめんね……」
「えっと、藤井さん。彼女のことよろしくね」
藤井という人は軽く礼をして答えた。
「じゃ、じゃあ……これで失礼します!」
そういうなり僕…、いや龍一は走り去っていった。
彼女にとってみれば全てが演技で、どこも傷付く箇所はなかったのだが、
それを傍で見ている僕にとってみれば大いに傷付いてしまった。
「うわああぁぁん、振られちゃったー!」
あれから龍一と二人っきりになって大声で泣いていた。
「仕方がなかったわ、もうあの様子じゃあどこにも付け入る隙がなかったし」
何の慰めにもならない言葉を述べる龍一。
いや、彼女にしてみればできる最大限の努力はしたのは知っているのだが……。
ナデナデ
「え……?」
「べ、別にあんたのこと何とも思わないけどね、流石に可哀想かなーっと思って」
慰めてくれた…?
あの凶暴娘が?
ポカッ
「いったーい!」
「何か知らないけど、今無性に殴りたくなったわ」
考えていることがばれているのかな?
顔に出やすいタイプだとは思っていたけど……
「ほら、これで涙を拭いなさい。せっかくのメイクが台無しになっちゃうじゃない」
そう言うなりポーチからハンカチを取り出した。
口は悪いけど、性格はそれほどでもないのかもしれない。
クー キュルルルル
「あ…」
朝食を摂ってなかったため、龍一のお腹が鳴った。
「か、加奈っ! 今はこの体だけど、心は女よ!
乙女に恥かかせたいのかしら!」
そう言いながら首を絞めてくる。
「ちょ……、この体を傷つけたらそれはそれでまずいだろ」
「それもそうね……、じゃあ裸踊りで我慢するわ」
「男に戻れなくなるという意味でやめてぇ!」
こいつはツンデレなのか、それとも単なる凶暴娘なのか……
<つづく>
おっ、 おんなの子あつかいするな~っ!!(7)
作.isakoさん
(3)
女装の再開をあれほど嫌がっておいて認めるのは悔しいけど、俺の高校生生活(正確には女子高校生生活かな)はなかなか好調な滑り出しを見せた。憧れの一瀬さん、ちょっと変わっているけど魅力たっぷりなソラやココロと毎日過ごしているのだから。
女としてじゃ意味がないってか? 幼いときの女装の反動で女っけなしの中学時代を過ごした俺はきっと彼女たちに上手に近づけなかったと思うぜ……と言ってもこれは俺の説じゃない。休日の女装を嫌がる俺に楓が指摘したそのメリットだ。
俺を知り尽くした楓の意見はある意味確かに正しい。ただ俺への説得工作という疑いはある。
しかし……油断しなければ男とばれないと変な自信をもったころから俺は別の不安を感じ始めていた。ご存知のように俺は物心ついたころから女として育てられ、自分でも女と信じて生活していた。その反動もありここ6年前から男であることをことさら強く意識して生きている。今だって止むを得ずの女装のはずだ。それに素っ裸になれば細身とは言え完全な男である。ところが女装している自分には自然に女として考え感じている瞬間があるのだ。
これは女装による条件反射ではない。後天的に女の意識を持つことはない……そう俺は理解していた。楓が敢行した小学校の裏卒業式のショックで子供ながら調べてみて得た結論だ。
狼少年――と言っても嘘つきではなく狼に育てられた野生児の方――が人になれ無いのは、後天的な経験や教育で得られるはずだった言語、人間的感覚、社会性などを持たないためだ。
では男女に違いは? これは中学生が調べるには難しすぎた。『人は女に生まれるのではない、女になるのだ』という哲学者の言葉には絶望しそうになった。というか哲学は中学生の範囲外だ。
でも生物学では雄雌は区分される。そして調べてみると男女の肉体差は脳にもあるらしいことが理解できた。これならそのころませた友人たちが話題にしていた同性愛も脳と肉体の不一致で上手く説明できる。もちろん最新科学でどうなっているかなんて知らない。でも俺が納得するのにはこれで充分だったのさ。
ああ休日の女装の話だったっけ。俺が昔の悩みを蒸し返していた理由、それは……
「紅葉ちゃん、これでどうかしら?」
母さんの問いかけに閉じていた目を開けた。これが私? じゃなくって、
「母さん、これ化粧しすぎじゃない?」
楓が大会の抽選会に行っていて助かったぜ。
「あら気に入らないなら、もう一度」
「そうじゃなくって濃すぎないかってこと」
「あなたの許可したものしか使ってないわ。それにほとんど眉と目の周りだけよ。やっぱりもう少しちゃんと化粧した方が」
手を打っておいた方が良さそうだ。
「これで十分よ」
「フウテンちゃんのお兄さんとのせっかくのデートなのに」
「ソラだよ。カザマソラ(風魔天)」
「風天ってかわいいじゃない。それに野球部では皆そう言っているって、楓が。天チャンは風使いだから風天って」
「たまたまバッターに逆風ってのが続いただけ。それになんだよ風使いって」
本当にそうなのだろうか。
「楓がいないからってその言葉使いは許せないわよ」
「ごめんなさい。でも今日のはデートじゃないってば。お世話になったお礼のようなものよ」
「紅葉がお世話になったのでしょう?」
「うん」
「じゃあ今日は紅葉がお金を出すのかしら」
この指摘は痛い。今月の小遣いは今母さんが使っていた化粧品に消えた。
「そりゃまあ」
「まあいいわ。後はリボンね」
「そう言えばどうしてリボン着けるの? 見てると今そんなに流行ってないのに」
「言わなかったかしら。あなたは男の子やってる間も長髪だったでしょう」
反論したい所だが、ややこしくなるので目をつぶることにする。
「うん」
「だから髪が乱れたときの所作が女らしくないの。慣れるまではリボンが無難だと思うわ」
なるほどことさら男らしく乱暴な動作をしていた中学時代の悪影響……いや悪くないか。
「そういうことか」
「後はどの服を着ていくかだわね」
「よそ行きは一着だけでしょう」
「時をかける少女したときのは着ないって言ってなかったかしら」
しまった……しかしそうなると制服しかない。ソラの兄さんはおしゃれそうだったからちょっと気が引けた。
「心配はいらないわ。買っておいたから」
「なにを?」
「デート用の服よ」
「ありがとう!」
「ただし条件があるわ」
「分割払いは……」
服はかなり高価だ。
「私との買い物につきあうこと。もちろんこれからのあなたのお洋服購入も同じ条件よ」
買い物につきあうのは苦手だ。しかし妥協すべきだろう。
「甘井学園にいる間だけでも?」
「女の子の時限定で原則月の最初の休日。だいたい女の子の服じゃなきゃ買うの楽しくないもの」
俺は常に男なのだが、母さんの基準じゃ女装の俺は女子高生ということらしい。
「わかったわ」
「そういう紅葉ちゃん大好きよ」
予想しておくべきだった。嬉しそうに母さんがクローゼットから出してきた5着の服はどれもフリフリ、ぴらぴら、ふわふわだ。何のことかわからないって? 待て而(しこう)して想像せよ!
「どうかしら。あなたが好きだったのを思い出しながら買ったのよ」
「う、うん」
確かに幼女少女時代の……女装した児童少年時代の写真は派手な服を着ていたし、フリルの服を好んだ記憶もある。しかしだなあ。
「迷っているなら、これを推薦するわ」
「ぴ、ピンク?」
「紅葉ちゃんには断然ピンクが似合うわよ」
「そうかなあ」
普通の町でどピンクの服をきた女子高生は珍しいと思うのだが……。おまけに俺は女としては相当背が高い。これじゃ見世物だぞ。
「そうそう、昔からね」
「こっちの紺にする」
フリルはあるもののデザインがシックで落ち着いている。
「あら」
いけない母さんが不満そうだ。
「年も年だし、大人っぽいのをね」
「まあ! まだまだ若いわよ」
「そりゃまあ」
15才だから当たり前だと言おうとして母さんがピンクのトレーナーを着ているのに気がついた。――そっちかよ。
どうにか紺の洋服で納得してもらう替わりに頭に大きな赤いリボンがつけられた。母さんが言うにはピンクに比べ紺は重いイメージなのでつり合わせるためなんだそうだ。理解できないけれど反対しない方がいいと勘が告げていた。
母さんの持ち物検査が終わり出かけるときは結構厳しい時間になっていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「そんなに慌てなくても」
「でも、ほら時間が」
「男の人より先に着くと悪いじゃない」
時代が違う気がするが、逆らうのは止めておこう。
「まあ、とにかく行ってきます」
「はいはい、いってらっしゃい、キキちゃん」
「え?」
謎の言葉に送られて家を元気よく出たものの、やはり不安である。デートは初めてなのに相手は男なんだものなあ。とにかく駅に急ごう。
前回の時をかける少女事件の目撃者を避けるため待ち合わせ場所は都心に近い町にした。いつもより視線を集めている気がするのは、この服のせいだろうか。母さん、恨みます。
最終的に約束の10分前に着いたのだけど、彼はもう待っていた。
「お待たせしました」
「まだ早いくらいだよ」
「は、はい」
「そんなに緊張されると困るなあ」
無理だ。
「えへへ」
「じゃあ少し早いけど軽く食べましょうか」
食べてりゃ間が持つな。
「はい」
「あのビルのレストランは眺めが良いんですよ」
「お、お高くありませんこと?」
彼はもう歩き始めていたので慌てて続く。あまり離れているとかえって目だって嫌だ。
「そりゃ定食屋さんよりはね。でもランチはリーズナブルなんですよ」
彼は当たり障りのない、それでいて興味深い話をしてくれるので退屈せずに店に着く。
K'onという店は彼の言う通りランチは1000円前後で選べた。眺めも良い。
「レディースランチとシェフお勧めランチをどちらもドリンクセットでお願いします」
注文を終えた彼と目があってどきどきする。しかたないだろう。窓際のテーブルは小さくて彼の目がすぐ前にあるんだから。
「まだリラックスできないんですか?」
「無理かも」
落ち着こうと水のグラスを手に取った。
「やはり僕よりソラの方が、女の子の方がいいですか?」
「うぇ、ごほごほ」
もう少しで水を吹きかけるところだった。やはり男とばれている。
「大丈夫ですか?」
「少しむせただけです」
「このまえ私とソラが表裏一体というお話をしたと思います」
「ソラが変身したのがあなただったりして?」
「どうして」
「じょ、冗談ですってば。そんな恐い顔しないで下さい」
「そうですか。話を戻しましょう。私どもの家は古い家系で代々当主が本家を守り続けてきました。そしてそろそろ次期当主を決める時期にきたのですが……。現在候補者は私とソラの2人しかいません。ソラはご存知のようにおとなしい性格でつい最近まで当主を継ぐのが当然と思われていたし本人もその覚悟のようでした。しかしあなたと会ってからすっかり変わってしまって」
「そんなこと急におっしゃられても」
「失礼。あなたにご迷惑をかけるつもりはありません。それに私は当主を引き受けるつもりです」
彼は当主、ソラは投手ってわけだね。
「私になにを」
「当主になれば私はそう出て来れません。ソラのことをお願いしたいのです」
「友だち、いえ私は親友だと思っていますし、私に出来る限りのことはするとお約束します。でも女子高生にできる範囲でですよ」
男に戻れば、違う違う、女装をやめればソラやココロとはお別れだ。それは当然のことである。彼が私の正体を知っていれば意味はわかるはずだ。
「ソラを拒んだりされないなら、それで充分です。妹には少し変わった所がありますので」
妙な話に戸惑っているうちにランチの配膳が始まった。少し早い時間なので店内を見回してもまだ三分の一くらいしか席はうまっていなかった。
食事が始まると彼の話題はまた愉快なものに戻った。そして注意して聞いていると男女どちらにも受けるものである。俺はタイミングを計り思い切って質問しようときめた。
食事は美味しかったが、レディースにしたため量は少ない。救いはデザートにボリュームがあることだ。
食べ終わりお茶になったところで切り出す。
「先日ソラには秘密にしてとお願いした件ですが」
「もちろん話していません。しかし……」
「しかし?」
「あれは勘のいい子です。不本意な結果かもしれませんが、彼女は気付いていると思いますよ」
「えぇ!」
「私も確認したわけじゃありません。あなたのことは話題にできないのですから」
「そうですか」
女装に気付いているとは思えない。先日も目の前でいきなり脱ぎ始めたくらいだ。
ところで食後のことですけど。どこへ行きましょう」
「今のお話が今日の目的じゃなかったのですか」
「いやだなあ。デートですよ、デート」
「でも――」
ここまで来てまだ知らない振りをするのか。
「私があなたを好きなことに変わりはありませんよ」
俺は思い切り身を引いた。
「いやだなあ。別にいやらしい意味じゃなく、友情と思ってください。妙な趣味を持った人との」
こう言われてしまうと俺が変態ってことになる。なんだかなあ。
「は、はあ」
「そうだ同じブロックにあるホテル付属の水族館にいきませんか」
「水族館?」
「イルカのショウが面白いって評判なんですよ」
「へぇー」
実のところ俺はそういうのが大好きなのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
紅葉とソラの兄のデートの2日前、終鈴後の教室にはソラとココロ2人だけが席に着いていた。紅葉が日直の仕事を終えるのを待つ2人は無言のように見える……人類の持つ感覚器では。微妙な電磁波を関知できる機材があり暗号のようなやり取りを解読できれば奇妙な会話が聞けただろう。
「風の」
「なんですか、雷の」
「本気なのか、男の肉体を封印するというのは」
「きわめて論理的な決断です。私は彼が好きなのですから」
「そう上手くいくかな」
「あなたが抜け駆けして先に接触したことは不問にしましょう」
「そりゃありがたいな」
「やむを得ずです。今の時代、2人が争えば人類に存在を知られるのは確実ですから」
「過去に例がないことじゃあるまい」
「現代人はあなたをゼウスやトールとは思わないでしょう」
「ほーう。では彼にも秘密に? 取り決めに反して自分を人と偽り続ける気かい」
「そうではありません。でも現状で告白するのは卑怯です」
「俺にも機会を?」
「一瀬玲子です」
「こりゃまたえらいライバルだな」
「男女どっちつかずじゃ勝機はありませんよ」
「そうかな。彼が女体になりたいと思う可能性は十分あると思うぜ」
「性別がばれそうなときならね。女の生活を知る彼は男であることにこだわり続けるでしょうね」
「だがお互い女神として人と恋してから何千年もたつぜ」
「実際目覚めていたのは10人分くらいの人生です。人の形を取ってからの我々は前世の記憶を持ちながら新しい人生を繰り返しているというのが実状に近いのですから」
「そう簡単に女になれるものかな、風の」
「彼の影響で私の精神の女性面が強くなってるのに気づいていないとは言わせませんよ」
「影響を受けていない俺に名乗り出る権利はないというのかい。あいつが好きなのに変わりはないんだぞ」
「気づいてないのですか?」
「何に」
「私が好きになった相手を見ようとしゃしゃり出たあなたは偶然会ったあの娘に惚れたんです」
「しゃしゃり出たはひどいぜ。でもあの娘って……」
「私の相手がこれまで通り女と信じきっていったので、最初たぶん男だと気づかなかったでしょう」
「そう言えばそうだったな」
「あなたが惚れたのは女の子の紅葉ですよ」
「まさか」
「一目惚れ。神話ではゼウスの得意技ですのに」
「くそ! 勝ち目は薄そうだな」
「あきらめますか」
「とんでもない」
「そう思ってました」
「いやに冷静だな」
「とにかくハルマゲドンはなしですよ」
「当然だ。今のおまえの重力技を使われたら地球は持つまい」
「あなたの電磁力もね」
紅葉が戻ってきたので会話はここで終了した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少々子供っぽい気もするけれどイルカショウはとても面白かった。不思議なことに女子の振りをしている時の方がはしゃいでも恥ずかしく無い。というより、これが俺の正直な反応で普段は無理してるのかなあ。
「ほらすごい! あんなにジャンプして……あっ」
ソラの兄には正体がばれているのを思い出して絶句しているとやさしく言葉をかけられた。
「安心して。誰にも言いませんから」
ままよ、どうせこの男にはばれているんだ。ここで妙に男っぽく振舞って周りの他人に引かれるほうが恥ずかしいと言うものさ。
そんなわけで女子高生の仮面に隠れて思う存分イルカショウを堪能した。
ショウの後、夕食にも誘われたが、さすがに遠慮する。送ってもらうのも駅までということにして肩をならべて歩いた。
無言の彼の方を盗み見ると結構機嫌が良さそうだ。
「楽しかったですか、あなたも」
「それはもう。説明したように跡目を継げば、もうあなたと会う機会はほとんどないでしょうし」
「はあ」
どう返事をして良いかわからない。
「あなたの女性の目で見て私はどうです?」
「どうですと言われても」
俺は男だぜ。
「一種の思考実験ですよ」
「うーん」
俺は言われるまま、初対面からの出来事を思い返してみた。なんだかどきどきするのは思考実験成功の印なのか……。
「どうです?」
「そうですねー、興味と好意を持ったのは確実と思うのですが」
「が?」
「私のは正体がばれたかどうかが大きな問題で、あなたの行動にもそれが大きな影響を与えたと思いますから詳細まで推測できません」
「肉体が枷(かせ)になるとおっしゃるのですか」
もうお別れだし、はっきり言っておいたほうが良いだろう。
「あのー言う機会がなかったのですが、この恰好は私の希望や趣味ではなく、ある事情から止む無く行っているのです。ですから枷になっているのはこの服装なので……」
切符売り場には人が多く、彼のつぶやきは私には聞こえなかった。
「ではここで」
「さようなら、ソラをよろしく」
<つづく>
(3)
女装の再開をあれほど嫌がっておいて認めるのは悔しいけど、俺の高校生生活(正確には女子高校生生活かな)はなかなか好調な滑り出しを見せた。憧れの一瀬さん、ちょっと変わっているけど魅力たっぷりなソラやココロと毎日過ごしているのだから。
女としてじゃ意味がないってか? 幼いときの女装の反動で女っけなしの中学時代を過ごした俺はきっと彼女たちに上手に近づけなかったと思うぜ……と言ってもこれは俺の説じゃない。休日の女装を嫌がる俺に楓が指摘したそのメリットだ。
俺を知り尽くした楓の意見はある意味確かに正しい。ただ俺への説得工作という疑いはある。
しかし……油断しなければ男とばれないと変な自信をもったころから俺は別の不安を感じ始めていた。ご存知のように俺は物心ついたころから女として育てられ、自分でも女と信じて生活していた。その反動もありここ6年前から男であることをことさら強く意識して生きている。今だって止むを得ずの女装のはずだ。それに素っ裸になれば細身とは言え完全な男である。ところが女装している自分には自然に女として考え感じている瞬間があるのだ。
これは女装による条件反射ではない。後天的に女の意識を持つことはない……そう俺は理解していた。楓が敢行した小学校の裏卒業式のショックで子供ながら調べてみて得た結論だ。
狼少年――と言っても嘘つきではなく狼に育てられた野生児の方――が人になれ無いのは、後天的な経験や教育で得られるはずだった言語、人間的感覚、社会性などを持たないためだ。
では男女に違いは? これは中学生が調べるには難しすぎた。『人は女に生まれるのではない、女になるのだ』という哲学者の言葉には絶望しそうになった。というか哲学は中学生の範囲外だ。
でも生物学では雄雌は区分される。そして調べてみると男女の肉体差は脳にもあるらしいことが理解できた。これならそのころませた友人たちが話題にしていた同性愛も脳と肉体の不一致で上手く説明できる。もちろん最新科学でどうなっているかなんて知らない。でも俺が納得するのにはこれで充分だったのさ。
ああ休日の女装の話だったっけ。俺が昔の悩みを蒸し返していた理由、それは……
「紅葉ちゃん、これでどうかしら?」
母さんの問いかけに閉じていた目を開けた。これが私? じゃなくって、
「母さん、これ化粧しすぎじゃない?」
楓が大会の抽選会に行っていて助かったぜ。
「あら気に入らないなら、もう一度」
「そうじゃなくって濃すぎないかってこと」
「あなたの許可したものしか使ってないわ。それにほとんど眉と目の周りだけよ。やっぱりもう少しちゃんと化粧した方が」
手を打っておいた方が良さそうだ。
「これで十分よ」
「フウテンちゃんのお兄さんとのせっかくのデートなのに」
「ソラだよ。カザマソラ(風魔天)」
「風天ってかわいいじゃない。それに野球部では皆そう言っているって、楓が。天チャンは風使いだから風天って」
「たまたまバッターに逆風ってのが続いただけ。それになんだよ風使いって」
本当にそうなのだろうか。
「楓がいないからってその言葉使いは許せないわよ」
「ごめんなさい。でも今日のはデートじゃないってば。お世話になったお礼のようなものよ」
「紅葉がお世話になったのでしょう?」
「うん」
「じゃあ今日は紅葉がお金を出すのかしら」
この指摘は痛い。今月の小遣いは今母さんが使っていた化粧品に消えた。
「そりゃまあ」
「まあいいわ。後はリボンね」
「そう言えばどうしてリボン着けるの? 見てると今そんなに流行ってないのに」
「言わなかったかしら。あなたは男の子やってる間も長髪だったでしょう」
反論したい所だが、ややこしくなるので目をつぶることにする。
「うん」
「だから髪が乱れたときの所作が女らしくないの。慣れるまではリボンが無難だと思うわ」
なるほどことさら男らしく乱暴な動作をしていた中学時代の悪影響……いや悪くないか。
「そういうことか」
「後はどの服を着ていくかだわね」
「よそ行きは一着だけでしょう」
「時をかける少女したときのは着ないって言ってなかったかしら」
しまった……しかしそうなると制服しかない。ソラの兄さんはおしゃれそうだったからちょっと気が引けた。
「心配はいらないわ。買っておいたから」
「なにを?」
「デート用の服よ」
「ありがとう!」
「ただし条件があるわ」
「分割払いは……」
服はかなり高価だ。
「私との買い物につきあうこと。もちろんこれからのあなたのお洋服購入も同じ条件よ」
買い物につきあうのは苦手だ。しかし妥協すべきだろう。
「甘井学園にいる間だけでも?」
「女の子の時限定で原則月の最初の休日。だいたい女の子の服じゃなきゃ買うの楽しくないもの」
俺は常に男なのだが、母さんの基準じゃ女装の俺は女子高生ということらしい。
「わかったわ」
「そういう紅葉ちゃん大好きよ」
予想しておくべきだった。嬉しそうに母さんがクローゼットから出してきた5着の服はどれもフリフリ、ぴらぴら、ふわふわだ。何のことかわからないって? 待て而(しこう)して想像せよ!
「どうかしら。あなたが好きだったのを思い出しながら買ったのよ」
「う、うん」
確かに幼女少女時代の……女装した児童少年時代の写真は派手な服を着ていたし、フリルの服を好んだ記憶もある。しかしだなあ。
「迷っているなら、これを推薦するわ」
「ぴ、ピンク?」
「紅葉ちゃんには断然ピンクが似合うわよ」
「そうかなあ」
普通の町でどピンクの服をきた女子高生は珍しいと思うのだが……。おまけに俺は女としては相当背が高い。これじゃ見世物だぞ。
「そうそう、昔からね」
「こっちの紺にする」
フリルはあるもののデザインがシックで落ち着いている。
「あら」
いけない母さんが不満そうだ。
「年も年だし、大人っぽいのをね」
「まあ! まだまだ若いわよ」
「そりゃまあ」
15才だから当たり前だと言おうとして母さんがピンクのトレーナーを着ているのに気がついた。――そっちかよ。
どうにか紺の洋服で納得してもらう替わりに頭に大きな赤いリボンがつけられた。母さんが言うにはピンクに比べ紺は重いイメージなのでつり合わせるためなんだそうだ。理解できないけれど反対しない方がいいと勘が告げていた。
母さんの持ち物検査が終わり出かけるときは結構厳しい時間になっていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「そんなに慌てなくても」
「でも、ほら時間が」
「男の人より先に着くと悪いじゃない」
時代が違う気がするが、逆らうのは止めておこう。
「まあ、とにかく行ってきます」
「はいはい、いってらっしゃい、キキちゃん」
「え?」
謎の言葉に送られて家を元気よく出たものの、やはり不安である。デートは初めてなのに相手は男なんだものなあ。とにかく駅に急ごう。
前回の時をかける少女事件の目撃者を避けるため待ち合わせ場所は都心に近い町にした。いつもより視線を集めている気がするのは、この服のせいだろうか。母さん、恨みます。
最終的に約束の10分前に着いたのだけど、彼はもう待っていた。
「お待たせしました」
「まだ早いくらいだよ」
「は、はい」
「そんなに緊張されると困るなあ」
無理だ。
「えへへ」
「じゃあ少し早いけど軽く食べましょうか」
食べてりゃ間が持つな。
「はい」
「あのビルのレストランは眺めが良いんですよ」
「お、お高くありませんこと?」
彼はもう歩き始めていたので慌てて続く。あまり離れているとかえって目だって嫌だ。
「そりゃ定食屋さんよりはね。でもランチはリーズナブルなんですよ」
彼は当たり障りのない、それでいて興味深い話をしてくれるので退屈せずに店に着く。
K'onという店は彼の言う通りランチは1000円前後で選べた。眺めも良い。
「レディースランチとシェフお勧めランチをどちらもドリンクセットでお願いします」
注文を終えた彼と目があってどきどきする。しかたないだろう。窓際のテーブルは小さくて彼の目がすぐ前にあるんだから。
「まだリラックスできないんですか?」
「無理かも」
落ち着こうと水のグラスを手に取った。
「やはり僕よりソラの方が、女の子の方がいいですか?」
「うぇ、ごほごほ」
もう少しで水を吹きかけるところだった。やはり男とばれている。
「大丈夫ですか?」
「少しむせただけです」
「このまえ私とソラが表裏一体というお話をしたと思います」
「ソラが変身したのがあなただったりして?」
「どうして」
「じょ、冗談ですってば。そんな恐い顔しないで下さい」
「そうですか。話を戻しましょう。私どもの家は古い家系で代々当主が本家を守り続けてきました。そしてそろそろ次期当主を決める時期にきたのですが……。現在候補者は私とソラの2人しかいません。ソラはご存知のようにおとなしい性格でつい最近まで当主を継ぐのが当然と思われていたし本人もその覚悟のようでした。しかしあなたと会ってからすっかり変わってしまって」
「そんなこと急におっしゃられても」
「失礼。あなたにご迷惑をかけるつもりはありません。それに私は当主を引き受けるつもりです」
彼は当主、ソラは投手ってわけだね。
「私になにを」
「当主になれば私はそう出て来れません。ソラのことをお願いしたいのです」
「友だち、いえ私は親友だと思っていますし、私に出来る限りのことはするとお約束します。でも女子高生にできる範囲でですよ」
男に戻れば、違う違う、女装をやめればソラやココロとはお別れだ。それは当然のことである。彼が私の正体を知っていれば意味はわかるはずだ。
「ソラを拒んだりされないなら、それで充分です。妹には少し変わった所がありますので」
妙な話に戸惑っているうちにランチの配膳が始まった。少し早い時間なので店内を見回してもまだ三分の一くらいしか席はうまっていなかった。
食事が始まると彼の話題はまた愉快なものに戻った。そして注意して聞いていると男女どちらにも受けるものである。俺はタイミングを計り思い切って質問しようときめた。
食事は美味しかったが、レディースにしたため量は少ない。救いはデザートにボリュームがあることだ。
食べ終わりお茶になったところで切り出す。
「先日ソラには秘密にしてとお願いした件ですが」
「もちろん話していません。しかし……」
「しかし?」
「あれは勘のいい子です。不本意な結果かもしれませんが、彼女は気付いていると思いますよ」
「えぇ!」
「私も確認したわけじゃありません。あなたのことは話題にできないのですから」
「そうですか」
女装に気付いているとは思えない。先日も目の前でいきなり脱ぎ始めたくらいだ。
ところで食後のことですけど。どこへ行きましょう」
「今のお話が今日の目的じゃなかったのですか」
「いやだなあ。デートですよ、デート」
「でも――」
ここまで来てまだ知らない振りをするのか。
「私があなたを好きなことに変わりはありませんよ」
俺は思い切り身を引いた。
「いやだなあ。別にいやらしい意味じゃなく、友情と思ってください。妙な趣味を持った人との」
こう言われてしまうと俺が変態ってことになる。なんだかなあ。
「は、はあ」
「そうだ同じブロックにあるホテル付属の水族館にいきませんか」
「水族館?」
「イルカのショウが面白いって評判なんですよ」
「へぇー」
実のところ俺はそういうのが大好きなのだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
紅葉とソラの兄のデートの2日前、終鈴後の教室にはソラとココロ2人だけが席に着いていた。紅葉が日直の仕事を終えるのを待つ2人は無言のように見える……人類の持つ感覚器では。微妙な電磁波を関知できる機材があり暗号のようなやり取りを解読できれば奇妙な会話が聞けただろう。
「風の」
「なんですか、雷の」
「本気なのか、男の肉体を封印するというのは」
「きわめて論理的な決断です。私は彼が好きなのですから」
「そう上手くいくかな」
「あなたが抜け駆けして先に接触したことは不問にしましょう」
「そりゃありがたいな」
「やむを得ずです。今の時代、2人が争えば人類に存在を知られるのは確実ですから」
「過去に例がないことじゃあるまい」
「現代人はあなたをゼウスやトールとは思わないでしょう」
「ほーう。では彼にも秘密に? 取り決めに反して自分を人と偽り続ける気かい」
「そうではありません。でも現状で告白するのは卑怯です」
「俺にも機会を?」
「一瀬玲子です」
「こりゃまたえらいライバルだな」
「男女どっちつかずじゃ勝機はありませんよ」
「そうかな。彼が女体になりたいと思う可能性は十分あると思うぜ」
「性別がばれそうなときならね。女の生活を知る彼は男であることにこだわり続けるでしょうね」
「だがお互い女神として人と恋してから何千年もたつぜ」
「実際目覚めていたのは10人分くらいの人生です。人の形を取ってからの我々は前世の記憶を持ちながら新しい人生を繰り返しているというのが実状に近いのですから」
「そう簡単に女になれるものかな、風の」
「彼の影響で私の精神の女性面が強くなってるのに気づいていないとは言わせませんよ」
「影響を受けていない俺に名乗り出る権利はないというのかい。あいつが好きなのに変わりはないんだぞ」
「気づいてないのですか?」
「何に」
「私が好きになった相手を見ようとしゃしゃり出たあなたは偶然会ったあの娘に惚れたんです」
「しゃしゃり出たはひどいぜ。でもあの娘って……」
「私の相手がこれまで通り女と信じきっていったので、最初たぶん男だと気づかなかったでしょう」
「そう言えばそうだったな」
「あなたが惚れたのは女の子の紅葉ですよ」
「まさか」
「一目惚れ。神話ではゼウスの得意技ですのに」
「くそ! 勝ち目は薄そうだな」
「あきらめますか」
「とんでもない」
「そう思ってました」
「いやに冷静だな」
「とにかくハルマゲドンはなしですよ」
「当然だ。今のおまえの重力技を使われたら地球は持つまい」
「あなたの電磁力もね」
紅葉が戻ってきたので会話はここで終了した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少々子供っぽい気もするけれどイルカショウはとても面白かった。不思議なことに女子の振りをしている時の方がはしゃいでも恥ずかしく無い。というより、これが俺の正直な反応で普段は無理してるのかなあ。
「ほらすごい! あんなにジャンプして……あっ」
ソラの兄には正体がばれているのを思い出して絶句しているとやさしく言葉をかけられた。
「安心して。誰にも言いませんから」
ままよ、どうせこの男にはばれているんだ。ここで妙に男っぽく振舞って周りの他人に引かれるほうが恥ずかしいと言うものさ。
そんなわけで女子高生の仮面に隠れて思う存分イルカショウを堪能した。
ショウの後、夕食にも誘われたが、さすがに遠慮する。送ってもらうのも駅までということにして肩をならべて歩いた。
無言の彼の方を盗み見ると結構機嫌が良さそうだ。
「楽しかったですか、あなたも」
「それはもう。説明したように跡目を継げば、もうあなたと会う機会はほとんどないでしょうし」
「はあ」
どう返事をして良いかわからない。
「あなたの女性の目で見て私はどうです?」
「どうですと言われても」
俺は男だぜ。
「一種の思考実験ですよ」
「うーん」
俺は言われるまま、初対面からの出来事を思い返してみた。なんだかどきどきするのは思考実験成功の印なのか……。
「どうです?」
「そうですねー、興味と好意を持ったのは確実と思うのですが」
「が?」
「私のは正体がばれたかどうかが大きな問題で、あなたの行動にもそれが大きな影響を与えたと思いますから詳細まで推測できません」
「肉体が枷(かせ)になるとおっしゃるのですか」
もうお別れだし、はっきり言っておいたほうが良いだろう。
「あのー言う機会がなかったのですが、この恰好は私の希望や趣味ではなく、ある事情から止む無く行っているのです。ですから枷になっているのはこの服装なので……」
切符売り場には人が多く、彼のつぶやきは私には聞こえなかった。
「ではここで」
「さようなら、ソラをよろしく」
<つづく>
人間やめますか?
それとも、 男性やめますか?
けんぷファー 10 1/2
アニメ化した話題作。もうちょっとサービスが欲しいなぁ。
→読了。女の子に変身している時間が極端に少ない。そして、サブキャラに脚光が当たった巻。
こうなったら最後まで付き合いますが、基本的に『コレクターなら』でよいです。
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日本の未来はのぞみにおまかせ! マンガで分かる新経済成長戦略
経済産業省さまのお手並み拝見すべく読了。
コンサル勝負マンガ。
ターゲットとか効果とは色々不明瞭なところはありますが、さほど金の掛かるやり方でもないのでトライ&エラーでやってみればよろしいのではないでしょうか。
マンガの出来はそこそこ。ヒロイン二人のコンサルの腕は凡庸だけれども、まぁ、しょうがないですわな。
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これはゾンビですか?3 いえ、それは爆発します
内容(「BOOK」データベースより)
人生、あきらめが肝心だ。これは、俺の座右の銘だが、毎回あきらめるタイミングがつかめない。このところ俺は、目の前から消えた少女ユーを捜し回っているのだけれど、手がかりもなく途方に暮れている。そんな夏休み前のこと―「い、一緒にプラネタリウムでもどうかな」トモノリからデートに誘われた俺。失踪したユーや傷ついたセラが気になるが、あきらめるにはいい機会かもしれない。と、そんな俺の前にハルナやセラが現れ、さらにはあんな場所で夜の王に出くわして。突然京子も出没するし、しまいにゃユーまで―!?あーもう!やっぱりあきらめきれねーっ。
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トイレに行こうとしたら大切なものがなくなっていたと思い込まされる催眠
他にももっとハイレベルなところでは、男性二人が催眠術にかけられて、妊娠して赤ちゃんを産んだり、自分がカンガルーだと思い込んだ男性がジーンズにベイビーカンガルーのための食べ物を詰め込んだり、トイレに行こうとした男性が自分の大切なモノがなくなった、と騒いだりしてました
催眠術にかかってみたい
(一般の方のブログみたいです)
確かにそんな催眠術になら掛かってみたい方はいっぱいいると思いますw
ぼいトレ!
ごりぽんさんからのタレコミ情報です♪
「Not lesbian(のーれず)」「Not lesbian SECOND(のーれずせかんど)」の2話が女装ものですね。
全校生徒憧れのお嬢様は、実は父(かなりの権力者)の趣味で女装させられ女子高に通っていた男の子で、それが下級生の女の子にバレて……という内容です。
どちらかというとラブラブえっちぃ系(もちろん成人向けなのでエッチ主体ですが)なので、脅されて陵辱とか期待しないように。
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今までの人類女体化計画は・・・
今までの人類女体化計画はことごとく失敗した。
だが、今度の計画は違うっ!!!
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