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おっ、 おんなの子あつかいするな~っ!!(7)

作.isakoさん

(3)

 女装の再開をあれほど嫌がっておいて認めるのは悔しいけど、俺の高校生生活(正確には女子高校生生活かな)はなかなか好調な滑り出しを見せた。憧れの一瀬さん、ちょっと変わっているけど魅力たっぷりなソラやココロと毎日過ごしているのだから。
 女としてじゃ意味がないってか? 幼いときの女装の反動で女っけなしの中学時代を過ごした俺はきっと彼女たちに上手に近づけなかったと思うぜ……と言ってもこれは俺の説じゃない。休日の女装を嫌がる俺に楓が指摘したそのメリットだ。
 俺を知り尽くした楓の意見はある意味確かに正しい。ただ俺への説得工作という疑いはある。
 しかし……油断しなければ男とばれないと変な自信をもったころから俺は別の不安を感じ始めていた。ご存知のように俺は物心ついたころから女として育てられ、自分でも女と信じて生活していた。その反動もありここ6年前から男であることをことさら強く意識して生きている。今だって止むを得ずの女装のはずだ。それに素っ裸になれば細身とは言え完全な男である。ところが女装している自分には自然に女として考え感じている瞬間があるのだ。
 これは女装による条件反射ではない。後天的に女の意識を持つことはない……そう俺は理解していた。楓が敢行した小学校の裏卒業式のショックで子供ながら調べてみて得た結論だ。
 狼少年――と言っても嘘つきではなく狼に育てられた野生児の方――が人になれ無いのは、後天的な経験や教育で得られるはずだった言語、人間的感覚、社会性などを持たないためだ。
 では男女に違いは? これは中学生が調べるには難しすぎた。『人は女に生まれるのではない、女になるのだ』という哲学者の言葉には絶望しそうになった。というか哲学は中学生の範囲外だ。
 でも生物学では雄雌は区分される。そして調べてみると男女の肉体差は脳にもあるらしいことが理解できた。これならそのころませた友人たちが話題にしていた同性愛も脳と肉体の不一致で上手く説明できる。もちろん最新科学でどうなっているかなんて知らない。でも俺が納得するのにはこれで充分だったのさ。
 ああ休日の女装の話だったっけ。俺が昔の悩みを蒸し返していた理由、それは……
「紅葉ちゃん、これでどうかしら?」
母さんの問いかけに閉じていた目を開けた。これが私? じゃなくって、
「母さん、これ化粧しすぎじゃない?」
楓が大会の抽選会に行っていて助かったぜ。
「あら気に入らないなら、もう一度」
「そうじゃなくって濃すぎないかってこと」
「あなたの許可したものしか使ってないわ。それにほとんど眉と目の周りだけよ。やっぱりもう少しちゃんと化粧した方が」
手を打っておいた方が良さそうだ。
「これで十分よ」
「フウテンちゃんのお兄さんとのせっかくのデートなのに」
「ソラだよ。カザマソラ(風魔天)」
「風天ってかわいいじゃない。それに野球部では皆そう言っているって、楓が。天チャンは風使いだから風天って」
「たまたまバッターに逆風ってのが続いただけ。それになんだよ風使いって」
本当にそうなのだろうか。
「楓がいないからってその言葉使いは許せないわよ」
「ごめんなさい。でも今日のはデートじゃないってば。お世話になったお礼のようなものよ」
「紅葉がお世話になったのでしょう?」
「うん」
「じゃあ今日は紅葉がお金を出すのかしら」
この指摘は痛い。今月の小遣いは今母さんが使っていた化粧品に消えた。
「そりゃまあ」
「まあいいわ。後はリボンね」
「そう言えばどうしてリボン着けるの? 見てると今そんなに流行ってないのに」
「言わなかったかしら。あなたは男の子やってる間も長髪だったでしょう」
反論したい所だが、ややこしくなるので目をつぶることにする。
「うん」
「だから髪が乱れたときの所作が女らしくないの。慣れるまではリボンが無難だと思うわ」
なるほどことさら男らしく乱暴な動作をしていた中学時代の悪影響……いや悪くないか。
「そういうことか」
「後はどの服を着ていくかだわね」
「よそ行きは一着だけでしょう」
「時をかける少女したときのは着ないって言ってなかったかしら」
しまった……しかしそうなると制服しかない。ソラの兄さんはおしゃれそうだったからちょっと気が引けた。
「心配はいらないわ。買っておいたから」
「なにを?」
「デート用の服よ」
「ありがとう!」
「ただし条件があるわ」
「分割払いは……」
服はかなり高価だ。
「私との買い物につきあうこと。もちろんこれからのあなたのお洋服購入も同じ条件よ」
買い物につきあうのは苦手だ。しかし妥協すべきだろう。
「甘井学園にいる間だけでも?」
「女の子の時限定で原則月の最初の休日。だいたい女の子の服じゃなきゃ買うの楽しくないもの」
俺は常に男なのだが、母さんの基準じゃ女装の俺は女子高生ということらしい。
「わかったわ」
「そういう紅葉ちゃん大好きよ」



 予想しておくべきだった。嬉しそうに母さんがクローゼットから出してきた5着の服はどれもフリフリ、ぴらぴら、ふわふわだ。何のことかわからないって? 待て而(しこう)して想像せよ!
「どうかしら。あなたが好きだったのを思い出しながら買ったのよ」
「う、うん」
 確かに幼女少女時代の……女装した児童少年時代の写真は派手な服を着ていたし、フリルの服を好んだ記憶もある。しかしだなあ。
「迷っているなら、これを推薦するわ」
「ぴ、ピンク?」
「紅葉ちゃんには断然ピンクが似合うわよ」
「そうかなあ」
普通の町でどピンクの服をきた女子高生は珍しいと思うのだが……。おまけに俺は女としては相当背が高い。これじゃ見世物だぞ。
「そうそう、昔からね」
「こっちの紺にする」
フリルはあるもののデザインがシックで落ち着いている。
「あら」
いけない母さんが不満そうだ。
「年も年だし、大人っぽいのをね」
「まあ! まだまだ若いわよ」
「そりゃまあ」
15才だから当たり前だと言おうとして母さんがピンクのトレーナーを着ているのに気がついた。――そっちかよ。


 どうにか紺の洋服で納得してもらう替わりに頭に大きな赤いリボンがつけられた。母さんが言うにはピンクに比べ紺は重いイメージなのでつり合わせるためなんだそうだ。理解できないけれど反対しない方がいいと勘が告げていた。
 母さんの持ち物検査が終わり出かけるときは結構厳しい時間になっていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「そんなに慌てなくても」
「でも、ほら時間が」
「男の人より先に着くと悪いじゃない」
時代が違う気がするが、逆らうのは止めておこう。
「まあ、とにかく行ってきます」
「はいはい、いってらっしゃい、キキちゃん」
「え?」

 謎の言葉に送られて家を元気よく出たものの、やはり不安である。デートは初めてなのに相手は男なんだものなあ。とにかく駅に急ごう。
 前回の時をかける少女事件の目撃者を避けるため待ち合わせ場所は都心に近い町にした。いつもより視線を集めている気がするのは、この服のせいだろうか。母さん、恨みます。

 最終的に約束の10分前に着いたのだけど、彼はもう待っていた。
「お待たせしました」
「まだ早いくらいだよ」
「は、はい」
「そんなに緊張されると困るなあ」
無理だ。
「えへへ」
「じゃあ少し早いけど軽く食べましょうか」
食べてりゃ間が持つな。
「はい」
「あのビルのレストランは眺めが良いんですよ」
「お、お高くありませんこと?」
彼はもう歩き始めていたので慌てて続く。あまり離れているとかえって目だって嫌だ。
「そりゃ定食屋さんよりはね。でもランチはリーズナブルなんですよ」
彼は当たり障りのない、それでいて興味深い話をしてくれるので退屈せずに店に着く。
 K'onという店は彼の言う通りランチは1000円前後で選べた。眺めも良い。
「レディースランチとシェフお勧めランチをどちらもドリンクセットでお願いします」
注文を終えた彼と目があってどきどきする。しかたないだろう。窓際のテーブルは小さくて彼の目がすぐ前にあるんだから。
「まだリラックスできないんですか?」
「無理かも」
落ち着こうと水のグラスを手に取った。
「やはり僕よりソラの方が、女の子の方がいいですか?」
「うぇ、ごほごほ」
もう少しで水を吹きかけるところだった。やはり男とばれている。
「大丈夫ですか?」
「少しむせただけです」
「このまえ私とソラが表裏一体というお話をしたと思います」
「ソラが変身したのがあなただったりして?」
「どうして」
「じょ、冗談ですってば。そんな恐い顔しないで下さい」
「そうですか。話を戻しましょう。私どもの家は古い家系で代々当主が本家を守り続けてきました。そしてそろそろ次期当主を決める時期にきたのですが……。現在候補者は私とソラの2人しかいません。ソラはご存知のようにおとなしい性格でつい最近まで当主を継ぐのが当然と思われていたし本人もその覚悟のようでした。しかしあなたと会ってからすっかり変わってしまって」
「そんなこと急におっしゃられても」
「失礼。あなたにご迷惑をかけるつもりはありません。それに私は当主を引き受けるつもりです」
彼は当主、ソラは投手ってわけだね。
「私になにを」
「当主になれば私はそう出て来れません。ソラのことをお願いしたいのです」
「友だち、いえ私は親友だと思っていますし、私に出来る限りのことはするとお約束します。でも女子高生にできる範囲でですよ」
男に戻れば、違う違う、女装をやめればソラやココロとはお別れだ。それは当然のことである。彼が私の正体を知っていれば意味はわかるはずだ。
「ソラを拒んだりされないなら、それで充分です。妹には少し変わった所がありますので」
妙な話に戸惑っているうちにランチの配膳が始まった。少し早い時間なので店内を見回してもまだ三分の一くらいしか席はうまっていなかった。
 食事が始まると彼の話題はまた愉快なものに戻った。そして注意して聞いていると男女どちらにも受けるものである。俺はタイミングを計り思い切って質問しようときめた。
 食事は美味しかったが、レディースにしたため量は少ない。救いはデザートにボリュームがあることだ。
 食べ終わりお茶になったところで切り出す。
「先日ソラには秘密にしてとお願いした件ですが」
「もちろん話していません。しかし……」
「しかし?」
「あれは勘のいい子です。不本意な結果かもしれませんが、彼女は気付いていると思いますよ」
「えぇ!」
「私も確認したわけじゃありません。あなたのことは話題にできないのですから」
「そうですか」
女装に気付いているとは思えない。先日も目の前でいきなり脱ぎ始めたくらいだ。
ところで食後のことですけど。どこへ行きましょう」
「今のお話が今日の目的じゃなかったのですか」
「いやだなあ。デートですよ、デート」
「でも――」
ここまで来てまだ知らない振りをするのか。
「私があなたを好きなことに変わりはありませんよ」
俺は思い切り身を引いた。
「いやだなあ。別にいやらしい意味じゃなく、友情と思ってください。妙な趣味を持った人との」
こう言われてしまうと俺が変態ってことになる。なんだかなあ。
「は、はあ」
「そうだ同じブロックにあるホテル付属の水族館にいきませんか」
「水族館?」
「イルカのショウが面白いって評判なんですよ」
「へぇー」
実のところ俺はそういうのが大好きなのだ。


     ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 紅葉とソラの兄のデートの2日前、終鈴後の教室にはソラとココロ2人だけが席に着いていた。紅葉が日直の仕事を終えるのを待つ2人は無言のように見える……人類の持つ感覚器では。微妙な電磁波を関知できる機材があり暗号のようなやり取りを解読できれば奇妙な会話が聞けただろう。

「風の」
「なんですか、雷の」
「本気なのか、男の肉体を封印するというのは」
「きわめて論理的な決断です。私は彼が好きなのですから」
「そう上手くいくかな」
「あなたが抜け駆けして先に接触したことは不問にしましょう」
「そりゃありがたいな」
「やむを得ずです。今の時代、2人が争えば人類に存在を知られるのは確実ですから」
「過去に例がないことじゃあるまい」
「現代人はあなたをゼウスやトールとは思わないでしょう」
「ほーう。では彼にも秘密に? 取り決めに反して自分を人と偽り続ける気かい」
「そうではありません。でも現状で告白するのは卑怯です」
「俺にも機会を?」
「一瀬玲子です」
「こりゃまたえらいライバルだな」
「男女どっちつかずじゃ勝機はありませんよ」
「そうかな。彼が女体になりたいと思う可能性は十分あると思うぜ」
「性別がばれそうなときならね。女の生活を知る彼は男であることにこだわり続けるでしょうね」
「だがお互い女神として人と恋してから何千年もたつぜ」
「実際目覚めていたのは10人分くらいの人生です。人の形を取ってからの我々は前世の記憶を持ちながら新しい人生を繰り返しているというのが実状に近いのですから」
「そう簡単に女になれるものかな、風の」
「彼の影響で私の精神の女性面が強くなってるのに気づいていないとは言わせませんよ」
「影響を受けていない俺に名乗り出る権利はないというのかい。あいつが好きなのに変わりはないんだぞ」
「気づいてないのですか?」
「何に」
「私が好きになった相手を見ようとしゃしゃり出たあなたは偶然会ったあの娘に惚れたんです」
「しゃしゃり出たはひどいぜ。でもあの娘って……」
「私の相手がこれまで通り女と信じきっていったので、最初たぶん男だと気づかなかったでしょう」
「そう言えばそうだったな」
「あなたが惚れたのは女の子の紅葉ですよ」
「まさか」
「一目惚れ。神話ではゼウスの得意技ですのに」
「くそ! 勝ち目は薄そうだな」
「あきらめますか」
「とんでもない」
「そう思ってました」
「いやに冷静だな」
「とにかくハルマゲドンはなしですよ」
「当然だ。今のおまえの重力技を使われたら地球は持つまい」
「あなたの電磁力もね」

 紅葉が戻ってきたので会話はここで終了した。

     ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 少々子供っぽい気もするけれどイルカショウはとても面白かった。不思議なことに女子の振りをしている時の方がはしゃいでも恥ずかしく無い。というより、これが俺の正直な反応で普段は無理してるのかなあ。
「ほらすごい! あんなにジャンプして……あっ」
ソラの兄には正体がばれているのを思い出して絶句しているとやさしく言葉をかけられた。
「安心して。誰にも言いませんから」
ままよ、どうせこの男にはばれているんだ。ここで妙に男っぽく振舞って周りの他人に引かれるほうが恥ずかしいと言うものさ。
 そんなわけで女子高生の仮面に隠れて思う存分イルカショウを堪能した。

 ショウの後、夕食にも誘われたが、さすがに遠慮する。送ってもらうのも駅までということにして肩をならべて歩いた。
 無言の彼の方を盗み見ると結構機嫌が良さそうだ。
「楽しかったですか、あなたも」
「それはもう。説明したように跡目を継げば、もうあなたと会う機会はほとんどないでしょうし」
「はあ」
どう返事をして良いかわからない。
「あなたの女性の目で見て私はどうです?」
「どうですと言われても」
俺は男だぜ。
「一種の思考実験ですよ」
「うーん」
俺は言われるまま、初対面からの出来事を思い返してみた。なんだかどきどきするのは思考実験成功の印なのか……。
「どうです?」
「そうですねー、興味と好意を持ったのは確実と思うのですが」
「が?」
「私のは正体がばれたかどうかが大きな問題で、あなたの行動にもそれが大きな影響を与えたと思いますから詳細まで推測できません」
「肉体が枷(かせ)になるとおっしゃるのですか」
もうお別れだし、はっきり言っておいたほうが良いだろう。
「あのー言う機会がなかったのですが、この恰好は私の希望や趣味ではなく、ある事情から止む無く行っているのです。ですから枷になっているのはこの服装なので……」
切符売り場には人が多く、彼のつぶやきは私には聞こえなかった。
「ではここで」
「さようなら、ソラをよろしく」

<つづく>

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