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投稿入れ替わり小説 マインドちぇんじ☆ 僕だった彼女外伝(前編) 

by.りゅうのみや

本編からの簡単なあらまし)
「きゃああああぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
み、耳がキンキンする。
甲高い声が女子トイレの中からこだまする。
次の瞬間大慌てで彼女が飛び出してくる。
「ちょ……ちょっと。あんた股間になんて物ぶら下げているのよ!」
股間に……?
「ああっ!」
見れば彼女はジーパンとトランクスをおろしたままの恰好だった。
「ちょ……このままだと僕が変質者に思われるから、早く仕舞って!」
さっきは観客がいる中での羞恥プレイかと思えば、
今度はその方面からやってくるとは……
ああ、もう死にたい。
(ではマインドちぇんじ☆が始まります、ではお楽しみに)


「何、まだ怒っているの?」
「当り前じゃない! 人がいなかったからまだマシだけど」
全く、元女性の割にデリカシーがないんだから。
流石に下半身モロ出しの刑はないだろう。
「でも元はと言えばあんたが前をちゃんと
見てないからそうなったんじゃない。
どうして急いでいたのよ?」
……あ、大切なことを忘れていた。
「うわっ、デートの時間に思いっきり遅れてしまった!
ちょっと急いでるので話はまたあとで!」
そうだった、こんなところで足止めされている場合じゃなかった。
中途半端な状況でその場を立ち去ることは承知の上で約束の場所に急いだ。
「え…? あ……ちょ、ちょっと待ちなさい!」
なにか言いたそうだったけど、気に留めている暇はなかった。


待ち合わせの場所である公園のベンチにやって来た。
ベンチの前で佇んでいるのがお目当ての相手である長瀬さんだ。
彼女は辺りをキョロキョロして、まるで誰かを探しているような感じだった。
……あれ?
どうしてだろう、目の前に僕がいるのにまるで見えてないかのような反応だった。
ちょっとだけ疎外感を感じてしまった。
彼女との距離が遠く離れているような錯覚を覚えた。
でも、会わないわけにはいかない。
だから一歩また一歩、噛みしめるように歩んでいった。
「ご、ごめんなさい長瀬さん!」
「え!?」
「遅れてしまってごめんなさい……」
「ちょ……ちょっと、あの……失礼ですけど、あなたは……誰ですか?」
「誰って……、僕はりゅう…………ああぁっ!」

すっかり今の状況を忘れていた。
この体は凶暴娘のであって、僕のではない。
入れ替わりなんて非現実的なこと、信じてもらえないかもしれない。
「あ……あの、ぼ、僕は……」
「うん、何……?」
「あ、あの、僕は一体誰でしょうか?」
ズルッ
あ、肩透かしをくらった長瀬さんはずっこけてしまった。
「だ、大丈夫長瀬さん!?」
「大丈夫よ……ちょっとびっくりしちゃったけど」
こういう時、どうやって状況を打破したらいいのだろうか?
辺りを見渡すと木陰で身を潜めている凶暴娘を見つけた。
「ちょ、ちょっと待ってね、あの人に名前を聞きに行ってみるから!」
本当ならずっこけて背中に砂を被った長瀬さんの面倒をみるべきなのに、
周りが見えていない僕は今の自分の名前を確認する方が重要と判断してしまった。

「なあ、なんで止めなかったんだよ!」
「止めたわよ。でも私が言う前に勝手にどこかに行っちゃったじゃない」
「うっ……、そ、そんなことより僕の名前は何だ?」
「知らないわよそんなこと」
「違う! 僕の名前じゃなくお前の名前だよ!」
「あぁ、そういうことね。加奈よ、小笠原加奈」
「そうか、サンキュー」
名前を聞き出すと大急ぎで長瀬さんの元に戻った。

「僕の名前がわかったよ、小笠原加奈って言うの」
「そ、そうなんだ。それで、私に何の用かしら?」
「い、いや……その…………」
うわっ、気が動転しているとはいえ後先考えない行動をしてしまった。
初対面の人同士、どうやって会話が進むんだよ。
確かに今の僕は長瀬さんのこと一方的に知ってるけどさ、
いや、ストーカーとかそういう意味じゃなくて……
「あの……、あそこにいるのって石田さんですよね?
あなたとどういった関係でしょうか?」
げ……しっかり見えていたか。
ここは自分が加奈になりきる必要があるか。
「じ、実はね、道端を歩いていると彼とぶつかっててね、
その時にポーチの中のコンタクトレンズのケースからレンズを落としてしまったの。
それで今まで、彼と一緒に探していたの」
ぶつかったのは本当だが、その後のことは作り話だ。
「それで、時間を大幅に費やしてしまって、
彼、ちょっと会い辛くなって代わりに謝りに行ったの」
「そうだったの、……うん、私は気にしてないから、
石田さんと話をさせて頂けないでしょうか」
よかった、かなりヤバかったが何とか理解してくれたし。
僕は軽く会釈をしながら凶暴娘のもとに向かった。

「あら、また何か用?」
「お願いだ、僕の代わりにデートしてくれ!」
「は? あんた頭に蛆湧いているんじゃないでしょうね? なんで私が!」
「お願いだから、初めが肝心じゃない! 僕の代わりを務めてよ!」

ガシガシガシ

僕は叫びながら凶暴娘の肩を掴んで思いきり揺さぶった。
「ちょ……わかったわよ、後で覚えてらっしゃい!」
強引な押しにたじろいだのか、意外とすんなり受け入れてくれた。


それから僕は二人と一端離れて公園を巡っていた。
今の僕は第三者だからいると不自然なのだ。
しかし……
「僕は、どうなってしまったのだろう」
気が動転してるから不可解な行動をしていることは十分分かる。
だけど、それとは別の行動が見え隠れし始めてきた。
長瀬さんに嘘ついてまで都合の悪いことを隠そうとしたこと、
そして凶暴娘に積極的に自己主張して、代理を引き受けさせたこと。
今までの僕では考えられないことを、
果たして気が動転したからの一言で片づけられるだろうか……
自分が自分でなくなってしまうような錯覚を感じてしまう。
怖い……
僕は『僕』であって、『私』ではないよね?
潰れそうな心を支えるようにギュっと両手をあてがった。

ふにょん

「あ……」
今の自分が小笠原加奈の体だということを忘れていた。
胸に手を添えるということは、必然的にボリュームのある胸を触ることを忘れていた。
心臓は胸より少し高い位置にあるから、
そこに手を当てるだけなら触ることはないけど腕で触ってしまう。
ぼ、僕が女性の体になってしまったんだ……

ドキドキドキドキ

異常なことだって分かっているのに、鼓動がどんどん早まってゆくのがわかる。
お願い、止まって!
僕は凶暴娘の体で欲情している場合じゃないんだ。
長瀬さんと付き合うために今まで頑張ってきた苦労を無にしてどうするんだ!
興奮なんかしてない、してないわよ!


その後の展開が気になった僕は再びベンチに赴いた。
そこには凶暴娘しかいなかった。
「あれ? 長瀬さんは?」
「駄目だったわ、別の好きな人がいたようで振られてしまったわ」
「な、なんだって!?」
「どうもこのデートは彼を連れてきて諦めさせることが目的だったみたいね」
そうだったのか……
複雑な感覚だった。
振られて悲しいはずなのに、感情がそれに追いついていない。
どうして……、僕の中から長瀬さんに対する執着心が薄れてしまっている。
この体のせいだ。
心が受け入れようとしている、この体に順応しようとしている。
いや、出て行って!
男としての価値観が消え去っていく、失っていく……
「悲しくなさそうな顔しているわね、むしろ当惑しているように感じるわ」
「やっぱり分かる? 僕は……一体誰なんだろう……」
「知らないわよ、名前もちゃんと聞いてないんだもん」
「違う、僕は……僕は…………」
それ以上言葉が続かなかった。
溢れている感情を汲み取ることができなかった。
喪失感を感じたが、それは振られたことなのか、
それとも自分でなくなりつつある現状からなのか理解できなかった。


「お待たせしました、ミックスジュースになります」
僕らは、今喫茶店にいる。
呆然と立ち尽くしていた僕を見て気を利かせたのか
凶暴娘……もとい、龍一が奢ってくれた。
ああ、なぜ凶暴娘をそう言っているかといえば、
彼女の別の一面も見れたからだ。
今まで彼女のツンだけしか見えていなかったが、
このようにデレの部分が見え隠れしている。
だから名前で呼ばないと失礼と感じるようになった。
お互い入れ替わっているから、僕の呼び名は加奈となり、彼女は龍一になった。
「ありがとう~、おかげで少し気分も落ち着いたよ」
「ば、ばっかじゃない、少し不測の事態が生じた
からといって心まで変わるわけないじゃない」
そう言いながら龍一はそれほど長くない髪の毛を指でくるくると絡め始めた。
「あれ? ひょっとして照れてる?」
「なっ、なななな…… 照れてないわ、照れてなんか!!」
ぉ…ぉ……、耳がキンキンする……そんな怒鳴らなくても…
龍一の顔を見ると頬を真っ赤に染めていて、俯き加減だった。
あ、ちょっと可愛いかも。

え……?
ち、違う違う!
なんで……なんで自分の素顔にときめかなきゃいけないんだ!
だけど動き始めたときめきは止みそうになかった。
やっぱり変わってしまった。
私は今のこの体と、加奈の心が宿っている龍一に心ときめいている。
そして……もしかしたら龍一も私に対して特別の感情を抱いているかもしれない。
そうだとしたら私の方がちょっぴりお得かな。
龍一は好きな人の対象が一つなのに対し私は二つも持っている。
ふふ、ちょっぴり優越感を抱いてしまう。

「加奈、何が楽しいの?」
「いや、こういうの、なんかベタな入れ替わり漫画みたいだなーって。
面識がない二人が入れ替わることで関係が深まっていくって
ちょっとロマンチックかなと思いに耽っちゃって」
「な、なに言ってんのよ馬鹿馬鹿しい!」
やっぱり照れてる。
可愛いな、反論すればするほどボロが出ちゃってまるで子供みたい。
「ねぇ龍一、私のこと嫌い?」
「う……そ、それは………」
「それは……?」
「馬鹿っ、なんでそう言うこと聞くの!?」
えへへ、龍一って隠し事が下手だね、バレバレじゃない。
私と龍一は相思相愛、でも私の方が一枚上手。
ちょっと前なら考えられないことだけど、
体の変化で心が大きく変わってきたみたい。
もう凶暴娘の面影は影を潜めてデレ要素の大きいキャラに変容している。
私は二人の対象に恋していて、その自信と優越感によって自己主張が芽生え始めている。

「もう気付いているかもしれないけど、
私、この体になってあなたのことが気になり始めたの……」
「加奈……」
「だから龍一も私を好きでいて欲しい、お互い元々は自分だったから」
「よくそんなクサイ台詞が言えるわね……
そう……、だったら私がしようと思っていた清算を果たしてからにしてよね」
「清算……ですか?」
「そう、私は一年半ほどある人と付き合っていたんだけどね、
付き合いだしてからその人は自分はモテるんだと天狗になっていたわ。
とにかく、私の心はその人の内にはないわ」
「つまり、龍一が振ろうとしたけど、
こうして入れ替わったから私が代わりにということ?」
「そういうこと、私のことが本当に好きなのであれば、
初対面の相手を振ることもできなくはないわ」

「龍一、私を試しているの?」
「ええ、あなたと会った時、どこか頼りない人だと感じたわ。
それが見違えるように強気になっていって私を食らいつくまでになって来た。
でもそれができるのは十数年間見続けた自分の顔だからできる技なのよ。
初対面の人に虚勢を張りつづけることなどできっこないわ」
「できるわ、今の私はひとりじゃないもの。
私とそしてこの加奈の体の二人がいるのだから」
今なら自分に自信が持てる。
だから相手が何であろうが全てはね退けてみせる!

「そう……、今の加奈ならこの私を受け止めてくれるかもしれない……
ねぇ、私のこと初めて会った時どう思ったの? 包み隠さず話して!」
「なんて気性の激しい凶暴娘だろうって思ってしまったわ」
「そっかー、やっぱりそう思われちゃうよね。でも本当は違うの」
違う?
どういうことだろう。
「私は本当は甘えたなの、誰かに依存されたい人なの。
でも、彼は付き合ってから私の願望を叶えてくれる人じゃなくなってきた。
自分勝手で我儘で……そんな彼を見ていると私までイライラしちゃって、
衝突が絶えないようになってきて、いつしか言葉遣いと性格まで歪んでしまったの」
テーブルを挟んで映る龍一は、遠くを見るような物悲しい目をしていた。
そんな龍一を見ると私まで悲しくなってしまう。

「龍一は私に何を期待しているの? 何をして欲しいの?」
「私が異性に求めているのは私を受け止めてくれる相手。
ただそれだけでいいの…… 私のことを愛して、支えて、
寂しい時には慰めてくれる。そんな人が欲しいの」
龍一の目から大粒の涙が頬をつたって零れ落ちてゆく。
ドキッ
胸が高鳴ってゆく。
何とも奥ゆかしくて、そして儚い考え方の持ち主だろう。
もう、龍一のことを凶暴娘と呼ぶことはないだろう。
彼女は好きで凶暴娘になったのではない。
駄目な彼氏によって虚勢を張らないといけなかったのだ。
そして心が優しいからそんな自分に傷付いていたかもしれない。

他の誰もが知らない本心を私だけが共有している、
そのことが凄く嬉しかった。
でも今までのギャップがあまりにも大きいのでにわかには信じにくい。
もちろん嘘を言っていると思っているとは考えにくい。
「龍一が本当は心が優しい人だってことはわかったわ。
でも私ってちょっと疑り深い性格なのよね。
だから証拠を見せてくれる?」
「え……、証拠って……?」
「甘えたであるなら私が頭を撫でたら喜ぶと思うの。
今まで私が抱いていたイメージだと激しく怒りだすから見分けがつきやすいわ」
「な、なるほど。確かに撫でられてみたいかも……」
「じゃあ行くよ……」
龍一は顔を真っ赤にしながらコクリと頷いた。

ナデナデ

「あ……、あのあの……」

ナデナデナデナデ

「あぅー、加奈ちゃん…………」

ぽーっと夢心地の龍一。
初めて会った時と今とでは全く違う態度を示す龍一に私もすっかり虜になった。
でもここは喫茶店、場所をわきまえる必要があったからここで中断した。
「あ……」
名残惜しそうに話した手を見つめる龍一。
「また今度な、その彼を振ったらいつでもしてあげるから」
「うん、頑張ってね加奈ちゃん……」

彼との待ち合わせの時間までまだ少し時間がある。
その間に何としてでも別れることが成立する手段を考えることにした。
龍一が用意した二冊の手引書もこういう時のために
存在するのだから、ざっと読みとおした。
なるほど……、こちらが優位な立場を保ちながら振る手段があるのか~。
「なかなか使えそうな情報があるわね。
ねぇ龍一、ちょっとその彼のことで聞くけど……」
「うん、何かな加奈ちゃん?」

……
…………
「……そっかー、うんうん、材料が揃ったわ」
これで大丈夫、私はその男のものではないわ、龍一がパートナーよ!
私にたかるお邪魔虫は容赦なく排除してみせるわ!
ガッツポーズを決めて勝利の決意を新たにした。

<つづく>

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