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『いぬわんわんわん?』 (5)<最終回>

(5)

「わぅっ! がうっがぅ!」

 俺はクラスの連中を後ずらせた時のように、気迫を込めて威嚇するように吠えたが、アホみたいに鈍感な圭には効果がなかった。
 ヤツはお構いなしに、尻尾対応済みの俺のパジャマに手を突っ込んできやがった。

「きゃうっ!、 きゃんきゃん!(や、やめろ! 血迷うな!)」
「広だって、ボクにイタズラしたでしょ? 不公平だよ」

 いや、俺はそこまではやっていない。あっ、こんな、直接なんて❤
 ベッドの上で圭の手を振り払おうともがいたが、力では全くかなわなかった。
 今は半分少女の体で、しかも圭よりも体が小さい。
 圭だって一応立派な男子高校生なのだから、力でかなうはずがなかったのだ。
 俺はつい、いつものつもりでいたが、圭はそう思っていなかったようだ。
 迂闊だった。
 自分が半分女の子になっていたということを、わかっているようで、わかっちゃいなかった。
 
 誰が歌っていたんだっけ? あの歌……いや、そうじゃない!
 俺はどうすれば貞操の危機から、この身を守りきれるというのだ? こんな体で!
 激しく揉み合いながら、縞パン一枚にまで剥かれて、それでも何とか圭から逃れたものの、俺はベランダのガラス戸に追い詰められていた。
 圭のヤツ、目が据わっている。本気で俺にナニかするつもりだ。
 冗談じゃないぞ、おい! 俺はそこまではしなかったぞ!
 セミヌードを見せたんだから、もう良いだろう? もう赦してくれ、な?
 花も恥らう乙女の体なのに、こんな姿にされて、ミーンミーンと泣きたいぐらいだ。
 だが、そんな俺の意に反して、圭のヤツは俺に手を伸ばした。

 ヤバイ! オトコヤバイ! 
 おまいら、自分が元男だったとしても、変わり果てた半獣少女の体でハダカ晒して追い詰められたら、やヴぁいってこと、もっと知るべきだと思います。
 もし、このままベランダに追いやられて、直接月の光を浴びたら……?
 先月の圭のように、ケモノの本能に目覚めて、発情でもしちまったら?

「が、がうっ!」

 俺は次第に震え始めた体をかばって、精一杯威嚇した。
 だが、圭は臆することなく両手を広げ、俺の逃げ道を塞ぎつつ、ガラス戸の鍵をひねった。

 なむさん!

 俺はイチかバチかで、反対側の部屋の戸に逃げようと、敢えて圭に飛びかかった。
 だが、男子高校生の力には、かなわなかった。
 おれは取り押さえられ、最後の縞パンも剥ぎ取られてしまった。
 うぅ、父さん、母さん、俺は今、オンナにされてしまいます!
 俺は泣いていた、目に涙をいっぱい浮かべて。
 だって、そうする他ないじゃないか!
 けれど、昔の偉い人は言いました。“涙はオンナの最後の武器”と。
 圭は俺の目に溜まった涙を指ですくうと、すまなそうな顔をして言った。

「ごめん、広。ボク……」

 良かった、寸前で思い止まってくれた。昔の偉い人に感謝!

 覆いかぶさるように俺を押し倒していた圭の力が弱まると、その下から抜け出し、体を隠す毛布を取ろうとした。

 だが、なんと言う運命のイタズラ!
 突然部屋の明かりがふっと消えた。
 慌ててベランダの外に目をやると、どうやら町中が停電していた。
 そしてその頭上には、少し欠けた月が輝いている。
 俺は打ち消すもののない、その月の光を、小さな裸の体いっぱいに浴びた。
 全身が熱くなる感じがしたかと思うと、胸の奥底から溢れ出してくる、ケモノの本性が目覚めていくのを感じた。

 おお、神様のバカぁ……。
 
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
 

 そこから先は伝聞だ。
 まず停電の件。
 あれは偶然にも変電所の送電トラブルで、この付近一帯が停電したのだそうだ。原因は現在も調査中。

 そして俺の貞操の件だが……ご期待に添えなくてすまないが、とりあえず守られた。
 あの後、月の光を体いっぱいに浴びた俺は、全身が毛で覆われ始め、むくむくと膨れ上がり、巨大なケモノになったそうだ。
 その正体は、犬じゃなくて、オオカミだったのだ。
 PCのブラウザログから辿ってみたら、ヤツがネットから落としたファイルは、自然博物館のサイトにあったオオカミの鳴き声だったようだ。ファイル名とサイズが一致していたからな。
 突然出現した巨大オオカミに見据えられた圭は、震えながらもベランダの戸を開けると、俺は悠然とそこから部屋を出て行ったそうだ。
 月に向かって地鳴りのような遠吠えをすると、ベランダから飛び出し、一晩中街の中を駆け抜けてオオカミの遠吠えを響かせ続けたんだと。
 そのおかげで街中の犬は、今も自分の小屋なり隠れ家なりで、うずくまってガタガタ震えているんだそうだ。
 そしてその様子は、市井のアマチュアカメラマンのビデオにも撮られていたようで、今朝のニュースでは『闇夜の○×市に巨大ニホンオオカミが出現か!?』と、トップで報じていた。


「でも残念だなぁ、一晩で戻っちゃうなんて」

 圭ががっかりした顔で言う。冗談じゃないぞ、おい!
 俺は一晩中走り回ったおかげで、月の影響とやらも朝にはすっかり抜けて、元の姿に戻っていた。
 マスコミに正体がバレないうちに、元に戻れてよかったぜ。

「でもボク、てっきり犬だと思っていたんだけど、オオカミだったとはねぇ。広に食べられてしまわなくて、良かった」

 おい! 俺を喰おうとしていたのは、オマエの方だろうが!

「“♪オトコはオオカミなのーよ 気をつけなさーい❤”」

 ようやく思い出した大昔のアイドルデュオの歌を口ずさみながら、俺は残念そうにうなだれる圭を脇に従え、意気揚々と登校した。


 ああ、もちろんその日の試験の結果は、昨日に続き惨憺たるものだった……orz

<END>

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