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バブル女は「死ねばいい」 婚活、アラフォー(笑)
釣りタイトルに惹かれて読んじゃいました。
団塊ジュニア世代な作者によるバブル女への愛と憎しみ。
読ませますな。
生きる理由、産めない理由。
団塊ジュニア世代な作者によるバブル女への愛と憎しみ。
読ませますな。
生きる理由、産めない理由。
![]() | バブル女は「死ねばいい」 婚活、アラフォー(笑) (光文社新書) (2010/08/17) 杉浦 由美子 商品詳細を見る |
天国への階段 by.amaha
富裕な若者、薮ケンイチの物語
親友である野中ヒデオが奇妙な遊びにはまっているという噂を聞いたとき、彼に忠告をせず悪戯を思いついたのは別に悪意があってのことじゃない。俺と野中は研究室内ではライバル視されているし、同じ院生とはいえ親の莫大な遺産を相続した俺と奨学金とバイトで食いつなぐ野中は何かと対照的なのだが、互いに友情を感じているのは確かだ……だと思う。
野中のはまった遊びは何かってか? それは一種の被虐趣味、女王様の前に跪く奴隷のロールプレイをすることさ。もちろん元々その気があったとは思えない。ちょっとした気晴らしなのだろう。あるいはひょっとしたら良いバイトとしてやっているのかもしれない。奴が収入のため夜のバイトをしているのを俺は知っていた。
ともかく、そんな奴の現場を抑えて困らせてやりたいと俺は思ったんだ。彼が行く店は少し調べるとわかった。厳密には合法的とは言えないが、幸いやばい地区ではない。俺は金の力で店長に渡りをつけることに成功した。ただ店の信用をなくすような行為、例えば俺がプレイルームに踏み込むような行為は認められないし、女の子を巻き込むのは困るといわれた。まあ相手とすれば当然だろう。
「女の子をこちらで用意するっていうのは?」
「一応面接させてもらいますが」
「かまわないよ」
俺には一つのアイデアがあった。男女の肉体を入れ替えて遊ぶという風俗を聞いたことがあるだろう? 興味本位で俺も何度かやったことがある。もちろんこれまでの技術では実際に入れ替わるのは不可能なので一種の記憶の共有だ。これまでは……そう、実は俺たちの共同研究では、すでに入れ替わりに成功していた。もちろんいつでもどこでも誰とでも可能なわけではない……俺は被験者に極秘の実験をしたいと連絡をとった。多額の謝礼が必要だが、金ならある。
噂に戸惑う若者、野中ヒデオの物語
僕に関しての奇妙な、むろん根も葉もない噂が流れていると知ったとき薮が何も言わないことにちょっと疑問をもった。だいたいこの手の噂を本人が知るのは、知らずに終わることも多いのだろうが、最後と決まっている。なぜ彼は警告も忠告もしないのだろう。僕は彼の行動を密かに監視することにした。
彼が僕に無断で被験者と連絡をとったと新原さんが教えてくれたのは1週間ほど後の事だった。新原龍子さんは実験助手をしてくれている女性だ。
どうも藪は噂の現場を抑えて僕をからかう気らしい。まあ彼なら考えそうな悪戯ではあるが、万一この噂が本当なら冗談では済まないと思わないのだろうか……少し警告を与えた方がいいような気がする。
噂の舞台となった風俗店に客としていくほど僕は裕福ではない。ボーイ兼用心棒とバイトをしていたんだ。
久しぶりに店長に会うと彼はニヤニヤしていた。
「やあヒデちゃん、トラブルらしいね」
「友人の悪戯さ」
「しかしまんざら根拠がないとも言えないなあ」
「この店に僕が来ていたことは誰かが突き止めたのは確かですね」
「それはかまわないだろう。お子様は入れないけど、合法的な店だぜ」
「まあ、表向きは」
「おいおい、物騒なことは言わない約束だろう」
「ごめんごめん。とにかくしばらくバイトに来るのは止めた方が良さそうだ」
「しかしこの友人はどうするんだい?」
「さあ」
「頼まれた俺としては」
「店長、お金を受け取ったの?」
「えっへっへー」
「わかったよ。じゃあ騙された振りをしてから逆手にとって懲らしめててやるよ」
「まあ会ってくれれば俺の方は良い。しかし面接した相手は素人っぽい美人だったぞ。お前の友人はともかく彼女に罪はないだろう」
「僕に鞭でしばかれてヒィーヒィー喜べと」
「お手柔らかにしてやれってことさ」
「了解。で、その娘はもう店に出てるの?」
「ヒデちゃんの予約が入ったら連絡することになってる」
「予約してこの店にくる金が僕のどこにあるって言うんだろう」
「金持ちにはカネの価値が分からないのさ」
「そうかもしれないね」
風俗店の店長の与太話
うちは信用のある店だからさ、盗撮なんてやっちゃいない。でも女の子の安全を守る手配はいくつもしているし、やばそうなら室内を見張ることも可能だ。まあ、そんなわけでヒデちゃんを信用しないわけじゃないけれど、ちょっとのぞくことにしたのさ。
真砂(まさご)と言う源氏名の素人女は、女王様定番のボンテージファッションにマスク、手に鞭で女王様とお呼びとか言っている。首筋から胸にかけ朱に染まっているのは興奮してる証だろう。別に彼女が根っからのSと言っているわけじゃない。誰でも普段と違うシチュエーションに興奮するものなのさ。
しばらく言われるがまま女の指示に従っていたヒデちゃんが、行動を起こしたのは10分ほど過ぎた頃だったかな。ヒデちゃんは、どノーマルなんだけど今回はセリフや行動がやけに芝居がかっていた。俺は固唾を飲んで見守ったのさ。
真砂の物語
興味本位で相手の女の記憶を移したことはあるけれど、女の肉体に入るということは全く別の次元の話だった。店側が用意してくれた衣装を着けただけで興奮はいやが上にも高まる。別に女性化願望があったわけじゃない。それでも店に来るために着替えただけでもかなり性的興奮を覚えていたのだ。

絵師:郁橋むいこ
教えられた部屋に入ると野中は床に平伏している。奴が客なのでその望みに従えばいいといわれていた。もっとも少しからかったら正体を明かすつもりでいる。
「真砂よ」
「今日はよろしくお願い致します」
「あら、女王様と呼ばなけれればいけないんじゃなくって」
「申し訳ありません。真砂様」
鞭を背中に当てお決まりのセリフを言う。
「女王様とおよび」
「申し訳ありません。女王様」
衣装の股の部分の湿りがはっきりと感じられ、乳首は勃起しやや固い衣装の下で擦れ強い刺激がうまれた。
彼が身を起こすように動いたので慌ててその背中に腰をおろした。衣装の股が濡れているのを見られたら恥ずかしすぎて正体を名乗れない。適当なセリフを言いながら下を見た。幸い外目には何の変化もない。多い日も安心な良くできた衣装だ。
「あのー」
「え?」
しまった自分のことに気をとられすぎたか。
「なにかしら」
「服を脱ぎたいのですが。これは私服なので」
「ああ。ああ、そうね」
見回すとすみにハンガー掛けやかごがある。渡されるまま上着をかけ、シャツをたたんでかごに入れた。普段は分からない奴の体臭を感じる。これが男臭さなのか。
下着だけになった彼の背中は少し見上げるほど高い。その時彼が急に振り向いたので視線があいドキッとした。
「も、もう準備はよくって?」
「ええ、女王様。ところで君って新人さん?」
舐められてはいけないだろう。
「この店では――ね」
「じゃあ僕の希望どおりだね」
「そりゃまあ……希望って?」
「ほら、向こうの」
指差す方を振り向き、
「え?」
っと言うと口が何かで塞がれた。それはボールギャグで呼吸以外の口の機能を奪われる。抗議しようとしても、でるのはうめき声だけだ。
驚いて動けない間に手は後ろでに拘束される。リストバンドの金具を背部に引っ掛けるだけなのであっという間だ。彼の発言から見ても、予定されていたプレイと言うことなのか。ひょっとすると犯される? あわてて異議を唱えるが、でたのは獣のような叫びだった。
彼は笑いながら軽々と私を抱き上げこう言った。
「せめられるのは初めてかい?」
慌ててうなずく。
「そりゃ嬉しいな」
俺だ! 止めろ!
「むぅー、あぐぅ」
「感じるまま反応してくれればいいから」
彼が触ると衣装の胸と股の部分がハズレ空気に触れひんやりする。そしてその刺激にさえ、今の俺の肉体は反応した。
「ふぅ~」
「もう興奮してるんだね」
そう言って俺の脚を持ち上げ顔を股間に近づけた。
息が吹きかけられ唇が触れる。
「あ~!」
かつて写しとった女の記憶が頭の中を駆け巡る。彼の舌は優しく柔らかい部分に触れ、濡れた音をたてる。そしてそれに慣れ始める前に舌が強く一番敏感な部分を打った。
頭の中で何かが爆発したような気がして俺は意識を失った。
金沢武弘教授の独白
娘のトモとの間が開き始めたのは彼女が思春期を迎えた頃だった。妻が亡くなってから全てを彼女に注いだ私は寂しかったが、父と娘の間なんてこんなものだろうと思っている。ただ何かの弾みで口喧嘩になったとき私が仕事にかまけ小さかった頃の彼女を放置したと言われたのはショックだった。確かに教授選に勝ち教室を主催した時期は娘の小学生時代と重なる。しかし私としてはベストを尽くしたつもりだった。甘やかしすぎたのかもしれない……
しかし本当の問題は娘が相談無く私の教室員の実験被験者になったことだ。しかも男女の意識交換実験のである。本来なら私の知り得る情報ではないのだが、有能な実験助手の新原龍子がそっと教えてくれた。おまけに心理テストによれば娘はいわゆる性同一性障害ではなく、男の支配を抜け出たい欲求がある。私のことなのだ。
悩むうちに何度か実験は行われた。そして今日、無許可の実験に娘が応じたと聞いて私はたまらなくなり実験施設に向かった。
金沢トモの話
目覚めると龍子さんが優しく微笑んでいた。私の本心を知る私の味方だ。今の私は父の教室員である薮ケンイチの肉体をまとっている。いけすかないきざな男だけれど見た目も良いし資産もあった。
「お嬢様」
「おいおい、俺は藪だぞ。新原君」
私の冗談に龍子さんは笑わず困った顔をして視線をとなりのベッドに向けた。そこには父が寝ている。
「なぜ?」
「お説教をされるおつもりで見えたようで」
「そうじゃなくて、どうして私のことがバレたのかしら」
「それは私にはちょっと」
「でもなぜベッドに」
「今のお嬢様には説教しづらいということで」
「あら、それって」
「肉体的には教授の方が弱いですから」
「で?」
「お嬢様を私の肉体にと。予備実験で私も被験者になったことがありますし」
「ひどい! 龍子さんを親子げんかに巻き込んで男にするなんて」
「寝たまま元に戻していただければ問題ありません」
「でもどうして父を寝かせて私を起こしたの?」
「想定外の事態ですし、お嬢様だって不意打ちはちょっといやじゃないですか。ですから紅茶に少しお薬を」
「私の方が父に文句を――そうだ! 龍子さん」
「なんですか?」
「私と父を入れ替えて」
「教授として教室員を怒るというわけですか」
「う~ん、それじゃインパクトが弱いかなあ。ねえねえ、私にその機械あつかえるかしら」
「といいますと、私を?」
「ええ、龍子さんが藪の体に……でもそうすると寝たままってわけには」
「父娘入れ替わりで逆に説教をと言うわけですね」
「アイデアとしておもしろいでしょう? でも龍子さんが」
「構いませんわ。一度くらい男を体験するのも良いでしょうし」
真砂の告白
目を開けると天井の鏡に映る姿はマスク以外全裸だった。手で隠すことを思いつく前に野中がのしかかる。
「良かったみたいだね。あとは普通に」
「普通っ、あっ」
友人とのキスへの戸惑とは無関係に入れられた舌を無意識に迎え入れ絡めあう。女の記憶がさせるのか、女の肉体の快感に負けたのか、それとも友人に犯される被虐感に心の闇がこじ開けられたのか……いや、それは自分自身の。
彼が口を離したわずかのすきに早口で願う。
「マスクだけは」
「もちろん素顔は知らないままで」
そのまま彼の言葉を奪うように私の方からその唇をうばった。
薮ケンイチの事情聴取
はい。教授は娘のトモさんを偶然施設の外で見かけて心配されたようで。
もちろんトモさんが実験に参加していることは御存知ありませんでした。それに被験者にも守秘義務がかせられているので……
ですから教授と新原竜子は同じ教室にいても直接会う機会はなかったんです。この施設に来られなければね。
まさか殺人事件と言うわけでは? え? ああ、そうなんですか、心臓麻痺。
でも何か疑いがあるのですか。司法解剖すれば疑念はとけるかと。
なるほど解剖は避けたいわけですか……
トモさんですか。彼女は恋人である私の同僚の所にいます。
There's a lady who's sure all that glitters is gold
And she's buying a stairway to heaven.
(Stairway to Heaven;Led Zeppelin)
親友である野中ヒデオが奇妙な遊びにはまっているという噂を聞いたとき、彼に忠告をせず悪戯を思いついたのは別に悪意があってのことじゃない。俺と野中は研究室内ではライバル視されているし、同じ院生とはいえ親の莫大な遺産を相続した俺と奨学金とバイトで食いつなぐ野中は何かと対照的なのだが、互いに友情を感じているのは確かだ……だと思う。
野中のはまった遊びは何かってか? それは一種の被虐趣味、女王様の前に跪く奴隷のロールプレイをすることさ。もちろん元々その気があったとは思えない。ちょっとした気晴らしなのだろう。あるいはひょっとしたら良いバイトとしてやっているのかもしれない。奴が収入のため夜のバイトをしているのを俺は知っていた。
ともかく、そんな奴の現場を抑えて困らせてやりたいと俺は思ったんだ。彼が行く店は少し調べるとわかった。厳密には合法的とは言えないが、幸いやばい地区ではない。俺は金の力で店長に渡りをつけることに成功した。ただ店の信用をなくすような行為、例えば俺がプレイルームに踏み込むような行為は認められないし、女の子を巻き込むのは困るといわれた。まあ相手とすれば当然だろう。
「女の子をこちらで用意するっていうのは?」
「一応面接させてもらいますが」
「かまわないよ」
俺には一つのアイデアがあった。男女の肉体を入れ替えて遊ぶという風俗を聞いたことがあるだろう? 興味本位で俺も何度かやったことがある。もちろんこれまでの技術では実際に入れ替わるのは不可能なので一種の記憶の共有だ。これまでは……そう、実は俺たちの共同研究では、すでに入れ替わりに成功していた。もちろんいつでもどこでも誰とでも可能なわけではない……俺は被験者に極秘の実験をしたいと連絡をとった。多額の謝礼が必要だが、金ならある。
噂に戸惑う若者、野中ヒデオの物語
僕に関しての奇妙な、むろん根も葉もない噂が流れていると知ったとき薮が何も言わないことにちょっと疑問をもった。だいたいこの手の噂を本人が知るのは、知らずに終わることも多いのだろうが、最後と決まっている。なぜ彼は警告も忠告もしないのだろう。僕は彼の行動を密かに監視することにした。
彼が僕に無断で被験者と連絡をとったと新原さんが教えてくれたのは1週間ほど後の事だった。新原龍子さんは実験助手をしてくれている女性だ。
どうも藪は噂の現場を抑えて僕をからかう気らしい。まあ彼なら考えそうな悪戯ではあるが、万一この噂が本当なら冗談では済まないと思わないのだろうか……少し警告を与えた方がいいような気がする。
噂の舞台となった風俗店に客としていくほど僕は裕福ではない。ボーイ兼用心棒とバイトをしていたんだ。
久しぶりに店長に会うと彼はニヤニヤしていた。
「やあヒデちゃん、トラブルらしいね」
「友人の悪戯さ」
「しかしまんざら根拠がないとも言えないなあ」
「この店に僕が来ていたことは誰かが突き止めたのは確かですね」
「それはかまわないだろう。お子様は入れないけど、合法的な店だぜ」
「まあ、表向きは」
「おいおい、物騒なことは言わない約束だろう」
「ごめんごめん。とにかくしばらくバイトに来るのは止めた方が良さそうだ」
「しかしこの友人はどうするんだい?」
「さあ」
「頼まれた俺としては」
「店長、お金を受け取ったの?」
「えっへっへー」
「わかったよ。じゃあ騙された振りをしてから逆手にとって懲らしめててやるよ」
「まあ会ってくれれば俺の方は良い。しかし面接した相手は素人っぽい美人だったぞ。お前の友人はともかく彼女に罪はないだろう」
「僕に鞭でしばかれてヒィーヒィー喜べと」
「お手柔らかにしてやれってことさ」
「了解。で、その娘はもう店に出てるの?」
「ヒデちゃんの予約が入ったら連絡することになってる」
「予約してこの店にくる金が僕のどこにあるって言うんだろう」
「金持ちにはカネの価値が分からないのさ」
「そうかもしれないね」
風俗店の店長の与太話
うちは信用のある店だからさ、盗撮なんてやっちゃいない。でも女の子の安全を守る手配はいくつもしているし、やばそうなら室内を見張ることも可能だ。まあ、そんなわけでヒデちゃんを信用しないわけじゃないけれど、ちょっとのぞくことにしたのさ。
真砂(まさご)と言う源氏名の素人女は、女王様定番のボンテージファッションにマスク、手に鞭で女王様とお呼びとか言っている。首筋から胸にかけ朱に染まっているのは興奮してる証だろう。別に彼女が根っからのSと言っているわけじゃない。誰でも普段と違うシチュエーションに興奮するものなのさ。
しばらく言われるがまま女の指示に従っていたヒデちゃんが、行動を起こしたのは10分ほど過ぎた頃だったかな。ヒデちゃんは、どノーマルなんだけど今回はセリフや行動がやけに芝居がかっていた。俺は固唾を飲んで見守ったのさ。
真砂の物語
興味本位で相手の女の記憶を移したことはあるけれど、女の肉体に入るということは全く別の次元の話だった。店側が用意してくれた衣装を着けただけで興奮はいやが上にも高まる。別に女性化願望があったわけじゃない。それでも店に来るために着替えただけでもかなり性的興奮を覚えていたのだ。

絵師:郁橋むいこ
教えられた部屋に入ると野中は床に平伏している。奴が客なのでその望みに従えばいいといわれていた。もっとも少しからかったら正体を明かすつもりでいる。
「真砂よ」
「今日はよろしくお願い致します」
「あら、女王様と呼ばなけれればいけないんじゃなくって」
「申し訳ありません。真砂様」
鞭を背中に当てお決まりのセリフを言う。
「女王様とおよび」
「申し訳ありません。女王様」
衣装の股の部分の湿りがはっきりと感じられ、乳首は勃起しやや固い衣装の下で擦れ強い刺激がうまれた。
彼が身を起こすように動いたので慌ててその背中に腰をおろした。衣装の股が濡れているのを見られたら恥ずかしすぎて正体を名乗れない。適当なセリフを言いながら下を見た。幸い外目には何の変化もない。多い日も安心な良くできた衣装だ。
「あのー」
「え?」
しまった自分のことに気をとられすぎたか。
「なにかしら」
「服を脱ぎたいのですが。これは私服なので」
「ああ。ああ、そうね」
見回すとすみにハンガー掛けやかごがある。渡されるまま上着をかけ、シャツをたたんでかごに入れた。普段は分からない奴の体臭を感じる。これが男臭さなのか。
下着だけになった彼の背中は少し見上げるほど高い。その時彼が急に振り向いたので視線があいドキッとした。
「も、もう準備はよくって?」
「ええ、女王様。ところで君って新人さん?」
舐められてはいけないだろう。
「この店では――ね」
「じゃあ僕の希望どおりだね」
「そりゃまあ……希望って?」
「ほら、向こうの」
指差す方を振り向き、
「え?」
っと言うと口が何かで塞がれた。それはボールギャグで呼吸以外の口の機能を奪われる。抗議しようとしても、でるのはうめき声だけだ。
驚いて動けない間に手は後ろでに拘束される。リストバンドの金具を背部に引っ掛けるだけなのであっという間だ。彼の発言から見ても、予定されていたプレイと言うことなのか。ひょっとすると犯される? あわてて異議を唱えるが、でたのは獣のような叫びだった。
彼は笑いながら軽々と私を抱き上げこう言った。
「せめられるのは初めてかい?」
慌ててうなずく。
「そりゃ嬉しいな」
俺だ! 止めろ!
「むぅー、あぐぅ」
「感じるまま反応してくれればいいから」
彼が触ると衣装の胸と股の部分がハズレ空気に触れひんやりする。そしてその刺激にさえ、今の俺の肉体は反応した。
「ふぅ~」
「もう興奮してるんだね」
そう言って俺の脚を持ち上げ顔を股間に近づけた。
息が吹きかけられ唇が触れる。
「あ~!」
かつて写しとった女の記憶が頭の中を駆け巡る。彼の舌は優しく柔らかい部分に触れ、濡れた音をたてる。そしてそれに慣れ始める前に舌が強く一番敏感な部分を打った。
頭の中で何かが爆発したような気がして俺は意識を失った。
金沢武弘教授の独白
娘のトモとの間が開き始めたのは彼女が思春期を迎えた頃だった。妻が亡くなってから全てを彼女に注いだ私は寂しかったが、父と娘の間なんてこんなものだろうと思っている。ただ何かの弾みで口喧嘩になったとき私が仕事にかまけ小さかった頃の彼女を放置したと言われたのはショックだった。確かに教授選に勝ち教室を主催した時期は娘の小学生時代と重なる。しかし私としてはベストを尽くしたつもりだった。甘やかしすぎたのかもしれない……
しかし本当の問題は娘が相談無く私の教室員の実験被験者になったことだ。しかも男女の意識交換実験のである。本来なら私の知り得る情報ではないのだが、有能な実験助手の新原龍子がそっと教えてくれた。おまけに心理テストによれば娘はいわゆる性同一性障害ではなく、男の支配を抜け出たい欲求がある。私のことなのだ。
悩むうちに何度か実験は行われた。そして今日、無許可の実験に娘が応じたと聞いて私はたまらなくなり実験施設に向かった。
金沢トモの話
目覚めると龍子さんが優しく微笑んでいた。私の本心を知る私の味方だ。今の私は父の教室員である薮ケンイチの肉体をまとっている。いけすかないきざな男だけれど見た目も良いし資産もあった。
「お嬢様」
「おいおい、俺は藪だぞ。新原君」
私の冗談に龍子さんは笑わず困った顔をして視線をとなりのベッドに向けた。そこには父が寝ている。
「なぜ?」
「お説教をされるおつもりで見えたようで」
「そうじゃなくて、どうして私のことがバレたのかしら」
「それは私にはちょっと」
「でもなぜベッドに」
「今のお嬢様には説教しづらいということで」
「あら、それって」
「肉体的には教授の方が弱いですから」
「で?」
「お嬢様を私の肉体にと。予備実験で私も被験者になったことがありますし」
「ひどい! 龍子さんを親子げんかに巻き込んで男にするなんて」
「寝たまま元に戻していただければ問題ありません」
「でもどうして父を寝かせて私を起こしたの?」
「想定外の事態ですし、お嬢様だって不意打ちはちょっといやじゃないですか。ですから紅茶に少しお薬を」
「私の方が父に文句を――そうだ! 龍子さん」
「なんですか?」
「私と父を入れ替えて」
「教授として教室員を怒るというわけですか」
「う~ん、それじゃインパクトが弱いかなあ。ねえねえ、私にその機械あつかえるかしら」
「といいますと、私を?」
「ええ、龍子さんが藪の体に……でもそうすると寝たままってわけには」
「父娘入れ替わりで逆に説教をと言うわけですね」
「アイデアとしておもしろいでしょう? でも龍子さんが」
「構いませんわ。一度くらい男を体験するのも良いでしょうし」
真砂の告白
目を開けると天井の鏡に映る姿はマスク以外全裸だった。手で隠すことを思いつく前に野中がのしかかる。
「良かったみたいだね。あとは普通に」
「普通っ、あっ」
友人とのキスへの戸惑とは無関係に入れられた舌を無意識に迎え入れ絡めあう。女の記憶がさせるのか、女の肉体の快感に負けたのか、それとも友人に犯される被虐感に心の闇がこじ開けられたのか……いや、それは自分自身の。
彼が口を離したわずかのすきに早口で願う。
「マスクだけは」
「もちろん素顔は知らないままで」
そのまま彼の言葉を奪うように私の方からその唇をうばった。
薮ケンイチの事情聴取
はい。教授は娘のトモさんを偶然施設の外で見かけて心配されたようで。
もちろんトモさんが実験に参加していることは御存知ありませんでした。それに被験者にも守秘義務がかせられているので……
ですから教授と新原竜子は同じ教室にいても直接会う機会はなかったんです。この施設に来られなければね。
まさか殺人事件と言うわけでは? え? ああ、そうなんですか、心臓麻痺。
でも何か疑いがあるのですか。司法解剖すれば疑念はとけるかと。
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MiX! お姉様と呼ばないで
発売日♪
内容紹介
新入生も無事入部し、ひと安心の女子新体操部。しかし蘭丸は安心なんてしていられない。今度は四六時中女の子と生活を共にする合宿に参加することに! それってずーっと気が抜けないってこと!? 蘭丸大ピンチ!
![]() | MiX! お姉様と呼ばないで (2010/09/30) 岩佐 まもる 商品詳細を見る |
内容紹介
新入生も無事入部し、ひと安心の女子新体操部。しかし蘭丸は安心なんてしていられない。今度は四六時中女の子と生活を共にする合宿に参加することに! それってずーっと気が抜けないってこと!? 蘭丸大ピンチ!
女装漫画 メイのないしょ make miracle1と2と3
3巻発売。
→読みました。たくさんレビューしていますが、性転換・女装モノの中長編で、巻数を重ねて良くなる、と言う例はほとんどありません。巻数を重ねても勢いを失わないのはありますが失速するケースの方が多いです。
でも、珍しく良くなって来ました。(オレ的に)
3巻で登場するレオ君はメイの幼馴染で、ラブフラグが立つかと思わせながらまさかの女装願望。そして、実際に女装したりしちゃいますw
また女の子との入れ替わり(BODY SWAP)展開もあり、見どころ十分。
結構なお勧めです。
「是非買うべし」までは出せないけれども、「女装コメディOKならば買うべし」あたりのレーティングで。
2009年おかし製作所売り上げランキング(アマゾン) 第44位
女装モノ。性自認はかなり女に近い。
読了。
今回もいろいろなコスプレに挑戦するメイですが、実は魔法少女(男だけど)なのです。
割とまわりの女の子にいじられる系ですね。
そんな中で呪いのバニースーツを着せられたメイをご紹介。
他にはナース服とか、ベビードールとかもあるよ♪

質:中の中 量:全編 好み:嫌がってないのがダメw エロ:萌え系です。
女装モノ。魔女の家系の主人公メイは女の子として育てられ、女子校に通うときも自分が女の子と信じていたのだ!!
主人公の造形は良いのですが、恥じらいとかが弱く、当方としては「値段分の価値がある」で評価。
女の子とお風呂に入ったりのエピソードあり。
20080805 一巻コメ
20090820 二巻コメ
20100929 三巻コメ
→読みました。たくさんレビューしていますが、性転換・女装モノの中長編で、巻数を重ねて良くなる、と言う例はほとんどありません。巻数を重ねても勢いを失わないのはありますが失速するケースの方が多いです。
でも、珍しく良くなって来ました。(オレ的に)
3巻で登場するレオ君はメイの幼馴染で、ラブフラグが立つかと思わせながらまさかの女装願望。そして、実際に女装したりしちゃいますw
また女の子との入れ替わり(BODY SWAP)展開もあり、見どころ十分。
結構なお勧めです。
「是非買うべし」までは出せないけれども、「女装コメディOKならば買うべし」あたりのレーティングで。
![]() | メイのないしょ make miracle 3 (ドラゴンコミックスエイジ く 1-1-3) (2010/09/09) 日下 皓 商品詳細を見る |
2009年おかし製作所売り上げランキング(アマゾン) 第44位
女装モノ。性自認はかなり女に近い。
読了。
今回もいろいろなコスプレに挑戦するメイですが、実は魔法少女(男だけど)なのです。
割とまわりの女の子にいじられる系ですね。
そんな中で呪いのバニースーツを着せられたメイをご紹介。
他にはナース服とか、ベビードールとかもあるよ♪

![]() | メイのないしょ make miracle(2) (角川コミックス ドラゴンJr.) (2009/08/08) 日下 皓 商品詳細を見る |
質:中の中 量:全編 好み:嫌がってないのがダメw エロ:萌え系です。
女装モノ。魔女の家系の主人公メイは女の子として育てられ、女子校に通うときも自分が女の子と信じていたのだ!!
主人公の造形は良いのですが、恥じらいとかが弱く、当方としては「値段分の価値がある」で評価。
女の子とお風呂に入ったりのエピソードあり。
![]() | メイのないしょ make miracle1 (角川コミックス ドラゴンJr. 126-1) (2008/06/09) 日下 皓 商品詳細を見る |
20080805 一巻コメ
20090820 二巻コメ
20100929 三巻コメ
水曜イラスト企画 絵師 郁橋むいこさん(6) 薮ケンイチ
薮ケンイチ amahaさんの天国への階段の主人公
絵師:郁橋むいこ

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
このキャラはamahaさんの専用です。
絵師:郁橋むいこ

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
このキャラはamahaさんの専用です。
選ばれしもの(仮)
作.ZERO 挿絵&キャラ.アリ
「次の店主はこの子か。」
ワシは突然崩れ落ちた客の容姿を見てそう呟いた。

この子に注文を聞いた時には間違いなく、男の子だったはず。
にもかかわらず、今は女の子。
そして、稼ぎ時にもかかわらず店内にいるのはワシとこの娘の二人だけ。
ワシは臨時休業の札を表にかけると、気絶している娘を奥の間へと運び込んだ。
----
「ここは?」
「おお、目を覚ましたかね。」
「僕は一体?」
「君はこの店に選ばれてしまったのだよ。」
「店に選ばれた?
どういうことですか?
それに、僕のこの身体って女の子ですよね。
本来ならパニックになっていてもおかしくないのに、なぜかそれを自然だと受け入れられるんです。
身体にも違和感を感じないし。」
「そうじゃな、その辺りから説明しようか。
ワシは寿 司というこの店の店主代理じゃ。
そしてお主が次期店主候補という事になる。」
「店主候補、ですか?」
「正確には候補というより、店主になる条件が揃うのを待っている状態じゃな。
この店は非常に特殊でのぉ。
店が店主を選ぶのじゃ。」
「店が店主を?」
「そうじゃ、ワシが店主代理とゆうたのはワシの連れ合いが店主だったからでのぉ。」
ワシは懐かしさに涙をにじませながら周りを見渡すと、床で寝ている娘にこの店の事を告げた。
この店は店が店主を選ぶ事。
選ばれた店主候補は毎日、この店に通わされる事。
店主候補は店内では毎日性別が変わり、ウエイターとウエイトレスを交互に行う事になる事。
性別が反転している間は現店主、およびその連れ合い、本人以外は本来の性別とは別人だと認識される事。
そのほかいくつかの点を注意して、伝えた。

「最大の問題点は次期店主となる事を拒否できんことじゃろう。
毎日、通わねば性別は反転したままになってしまい、帰るところが無くなる。
一週間、通わなければ性別は反転したままとなってしまうでの。
よっく注意しなければならんぞ。
そうじゃ期限の事を言っておかねばならんの。
ウエイターとウエイトレスをこなす期限はどちらかの姿で伴侶を見つける事じゃ。
いずれかの姿で子をなした時、その変化はとまる。
子供を孕めば生涯女性として。
子供を孕ませれば生涯男性として、この店を伴侶と共に切り回す事になる。」
「もしかして寿さんの奥さんって?」
「そう、ワシの妻が先代の店主でのぉ。
ワシの親友じゃったのだが、この店をわしも手伝っていてそのまま…
ワシらの子供たちは店に選ばれなかったでの。
まぁ、わしの言った事が事実かは自分自身で確かめるが良かろうて。」
「次の店主はこの子か。」
ワシは突然崩れ落ちた客の容姿を見てそう呟いた。

この子に注文を聞いた時には間違いなく、男の子だったはず。
にもかかわらず、今は女の子。
そして、稼ぎ時にもかかわらず店内にいるのはワシとこの娘の二人だけ。
ワシは臨時休業の札を表にかけると、気絶している娘を奥の間へと運び込んだ。
----
「ここは?」
「おお、目を覚ましたかね。」
「僕は一体?」
「君はこの店に選ばれてしまったのだよ。」
「店に選ばれた?
どういうことですか?
それに、僕のこの身体って女の子ですよね。
本来ならパニックになっていてもおかしくないのに、なぜかそれを自然だと受け入れられるんです。
身体にも違和感を感じないし。」
「そうじゃな、その辺りから説明しようか。
ワシは寿 司というこの店の店主代理じゃ。
そしてお主が次期店主候補という事になる。」
「店主候補、ですか?」
「正確には候補というより、店主になる条件が揃うのを待っている状態じゃな。
この店は非常に特殊でのぉ。
店が店主を選ぶのじゃ。」
「店が店主を?」
「そうじゃ、ワシが店主代理とゆうたのはワシの連れ合いが店主だったからでのぉ。」
ワシは懐かしさに涙をにじませながら周りを見渡すと、床で寝ている娘にこの店の事を告げた。
この店は店が店主を選ぶ事。
選ばれた店主候補は毎日、この店に通わされる事。
店主候補は店内では毎日性別が変わり、ウエイターとウエイトレスを交互に行う事になる事。
性別が反転している間は現店主、およびその連れ合い、本人以外は本来の性別とは別人だと認識される事。
そのほかいくつかの点を注意して、伝えた。

「最大の問題点は次期店主となる事を拒否できんことじゃろう。
毎日、通わねば性別は反転したままになってしまい、帰るところが無くなる。
一週間、通わなければ性別は反転したままとなってしまうでの。
よっく注意しなければならんぞ。
そうじゃ期限の事を言っておかねばならんの。
ウエイターとウエイトレスをこなす期限はどちらかの姿で伴侶を見つける事じゃ。
いずれかの姿で子をなした時、その変化はとまる。
子供を孕めば生涯女性として。
子供を孕ませれば生涯男性として、この店を伴侶と共に切り回す事になる。」
「もしかして寿さんの奥さんって?」
「そう、ワシの妻が先代の店主でのぉ。
ワシの親友じゃったのだが、この店をわしも手伝っていてそのまま…
ワシらの子供たちは店に選ばれなかったでの。
まぁ、わしの言った事が事実かは自分自身で確かめるが良かろうて。」
10月のチェックリスト
10/1出版社 作品タイトル 作者
クロエ出版 (成)あああん女神様 堀 博昭
10/5出版社 作品タイトル 作者
海王社 (成)Mっ娘倶楽部 さだ こーじ
10/6出版社 作品タイトル 作者
講談社 賭博堕天録カイジ 和也編 4 福本 伸行
10/7出版社 作品タイトル 作者
少年画報社 エクセル・サーガ 25 六道 神士
少年画報社 デスレス 1 六道 神士
10/8出版社 作品タイトル 作者
秋田書店 侵略!イカ娘 7 安部 真弘
ティーアイネット (成)にょう☆どう? 高城 ごーや
10/9出版社 作品タイトル 作者
オークス (成)もっとEROVEる アンソロジー
オークス (成)エッチなオトしモノ アンソロジー
オークス (成)触獣淫舞 アンソロジー
10/13出版社 作品タイトル 作者
徳間書店 ダーティペアの大冒険 1 たまき ひさお
10/15出版社 作品タイトル 作者
少年画報社 チェンジH 甘詰 留太 他
10/18出版社 作品タイトル 作者
一迅社 絶対少女アストライア 東雲 水生
小学館 絶対可憐チルドレン 23 椎名 高志
小学館 國崎出雲の事情 3 ひらかわ あや
10/19出版社 作品タイトル 作者
集英社 僕らはみんな死んでいる 1 きら
集英社 カイチュー! 3 林 佑樹
10/20出版社 作品タイトル 作者
秋田書店 シグルイ 15(完) 山口 貴由
10/23出版社 作品タイトル 作者
メディアファクトリー まりあ†ほりっく 7 遠藤 海成
10/25出版社 作品タイトル 作者
一迅社 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー コミックアンソロジー アンソロジー
オークス (成)男娘宴 アンソロジー
オークス (成)催眠術で彼女を淫らにする方法 香月 りお
メディアックス (成)禁断×純愛×男の子 アンソロジー
10/26出版社 作品タイトル 作者
角川書店発行/角川グループパブリッシング発売 新装版 JUDAS 1 水無月 すう
角川書店発行/角川グループパブリッシング発売 新装版 JUDAS 2 水無月 すう
小学館 メイドちっく ラブリープレイ 綺条 有都
10/27出版社 作品タイトル 作者
一迅社 女装少年アンソロジーコミック 姫組 絶叫 他
ウェッジホールディングス発行/文苑堂発売 バニーBOY 一華 もる
芳文社 PONG PONG PONG! 2 リサリサ
10/29出版社 作品タイトル 作者
三和出版 (成)アナルエンジェル 上連雀 三平
10/30出版社 作品タイトル 作者
ジュネット ネコ耳×彼氏 みささぎ 楓李
クロエ出版 (成)あああん女神様 堀 博昭
10/5出版社 作品タイトル 作者
海王社 (成)Mっ娘倶楽部 さだ こーじ
10/6出版社 作品タイトル 作者
講談社 賭博堕天録カイジ 和也編 4 福本 伸行
10/7出版社 作品タイトル 作者
少年画報社 エクセル・サーガ 25 六道 神士
少年画報社 デスレス 1 六道 神士
10/8出版社 作品タイトル 作者
秋田書店 侵略!イカ娘 7 安部 真弘
ティーアイネット (成)にょう☆どう? 高城 ごーや
10/9出版社 作品タイトル 作者
オークス (成)もっとEROVEる アンソロジー
オークス (成)エッチなオトしモノ アンソロジー
オークス (成)触獣淫舞 アンソロジー
10/13出版社 作品タイトル 作者
徳間書店 ダーティペアの大冒険 1 たまき ひさお
10/15出版社 作品タイトル 作者
少年画報社 チェンジH 甘詰 留太 他
10/18出版社 作品タイトル 作者
一迅社 絶対少女アストライア 東雲 水生
小学館 絶対可憐チルドレン 23 椎名 高志
小学館 國崎出雲の事情 3 ひらかわ あや
10/19出版社 作品タイトル 作者
集英社 僕らはみんな死んでいる 1 きら
集英社 カイチュー! 3 林 佑樹
10/20出版社 作品タイトル 作者
秋田書店 シグルイ 15(完) 山口 貴由
10/23出版社 作品タイトル 作者
メディアファクトリー まりあ†ほりっく 7 遠藤 海成
10/25出版社 作品タイトル 作者
一迅社 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー コミックアンソロジー アンソロジー
オークス (成)男娘宴 アンソロジー
オークス (成)催眠術で彼女を淫らにする方法 香月 りお
メディアックス (成)禁断×純愛×男の子 アンソロジー
10/26出版社 作品タイトル 作者
角川書店発行/角川グループパブリッシング発売 新装版 JUDAS 1 水無月 すう
角川書店発行/角川グループパブリッシング発売 新装版 JUDAS 2 水無月 すう
小学館 メイドちっく ラブリープレイ 綺条 有都
10/27出版社 作品タイトル 作者
一迅社 女装少年アンソロジーコミック 姫組 絶叫 他
ウェッジホールディングス発行/文苑堂発売 バニーBOY 一華 もる
芳文社 PONG PONG PONG! 2 リサリサ
10/29出版社 作品タイトル 作者
三和出版 (成)アナルエンジェル 上連雀 三平
10/30出版社 作品タイトル 作者
ジュネット ネコ耳×彼氏 みささぎ 楓李
まず、お風呂を用意する。
50リットルの水を入れる。
次に、かわいい女の子を3人用意する。
女の子にお風呂に入ってもらう。
3時間ばかり入ってもらった水をまず100倍に薄める。
さらに100倍に薄める。
さらに100倍。
こうして20回ばかり薄めたものを砂糖に染み込ませれば女の子になる薬の完成だ!
次に、かわいい女の子を3人用意する。
女の子にお風呂に入ってもらう。
3時間ばかり入ってもらった水をまず100倍に薄める。
さらに100倍に薄める。
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こうして20回ばかり薄めたものを砂糖に染み込ませれば女の子になる薬の完成だ!
TS売れ線速報!(9/20~26)
先週の順位
1位 男女入れ替わりエロス TSF全5話4時間
えんとらんす! 1巻
3位 性転換アンソロジーコミックス (二次元ドリームコミックス 221)
さてさて、強豪並み居る中、今週の1位は!
男女入れ替わりエロス TSF全5話4時間が残って、えんとらんす!1が先に息切れだ!
2位は!性転換アンソロジーコミックスが僅差で巻き返しだ!
3位は!前回1位のえんとらんす! 1巻 (TSコミックス)がほんの少しの差で苦杯をなめた!
1位 男女入れ替わりエロス TSF全5話4時間
えんとらんす! 1巻
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男女入れ替わりエロス TSF全5話4時間が残って、えんとらんす!1が先に息切れだ!
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2位は!性転換アンソロジーコミックスが僅差で巻き返しだ!
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3位は!前回1位のえんとらんす! 1巻 (TSコミックス)がほんの少しの差で苦杯をなめた!
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水曜イラスト企画 絵師 アリさん (2) 仮名:土谷 武
☆初出20091223 挿絵追加20100927
ある方から投稿するという話で挿絵を作成していたのですが、連絡が取れなくなってしまいました。
挿絵をお蔵入りさせるのももったいないですし、アリさんにも失礼ですので本日の更新で使ってしまいますね。
この際、他の方からの投稿も受付いたします。
一行キャラ設定 土谷 武 少年ウエイターがウエイトレスになると言うオーソドックスな設定
絵師:アリ


水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
ある方から投稿するという話で挿絵を作成していたのですが、連絡が取れなくなってしまいました。
挿絵をお蔵入りさせるのももったいないですし、アリさんにも失礼ですので本日の更新で使ってしまいますね。
この際、他の方からの投稿も受付いたします。
一行キャラ設定 土谷 武 少年ウエイターがウエイトレスになると言うオーソドックスな設定
絵師:アリ


水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
このままでは
このままでは、もって半年。早ければ3か月であなたは完全に女の子になってしまいます。
IDEA HACKS!
読了。
アイデアの発想法とか仕事の仕方とか。
To DOリスト、マンダラート、二項対立、トライアングルハック。
創作にも、もちろん本業にも使えそうです。
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創作にも、もちろん本業にも使えそうです。
![]() | IDEA HACKS! 今日スグ役立つ仕事のコツと習慣 (2006/07/14) 原尻 淳一小山 龍介 商品詳細を見る |
僕の秘密日記(22) by A.I.
僕の秘密日記(22)
薄明かりの中、目覚めた僕は一瞬どこにいるのかわからなかった。見知らぬ天井が見える。まだ夢にいるのかなと思った。
「僕が女の子の部屋にいて、女になっているなんてどんな夢だよ」
願望が夢に表れたのかなと僕は夢うつつで寝返りを打った。そこではっと目を覚ます。明かりをつけると僕の部屋に間違いなかった。ただしピンクを基調とした女の子の部屋だ。
「夢の続きってことはないよね」
思わず股間を触ってみたが、何かの手応えが返ってくるということはない。僕がとおるによって女になったというのは夢ではなかった。現実の僕も女の子だ。
「変な夢を見たね。今年最後の日ということで心に思うところがあったのかな」
今日は大晦日。今年を振り返ってみると大きな転機が訪れたといえる。人生そのものが変わってしまうような出来事が起こるとは、秋になるまで思いもしてなかった。
「夜になるまでこれといってすることもないか」
昨日とおるが帰ったあとに、おせち料理はほとんど重箱に詰めて冷蔵庫に入れてある。朝食を食べたあとに仕上げをするだけだ。
「温泉旅行に行ってしまって、宿題の進みが遅くなったからね。今日のうちに終わらせてしまうか」
朝食後に時間を置いて味を染みこませる必要があった黒豆などを重箱に入れると、僕は夕方までに残っていた冬休みの宿題を終わらせた。これで気兼ねなく正月を迎えられる。
「親戚が集まる新年会は明後日の二日か。泊りがけだからなぁ」
夏休みと冬休みぐらいしか集まる機会はないのだから、誰もが都合をつけて顔を出す。割り切れればいとこと会えるのは楽しみなのだけどね。
「夕飯までもう少し時間があるね。漫画でも読んでいようかな」
少女漫画を取り出して読み始める。そういえばそろそろ集めている漫画の新刊が出ていたかな。ファッション誌も立ち読みしたいし、新年会が終わったら本屋に行くのもいいかもしれない。
「あきら、そろそろお蕎麦を茹でるから、来てもらえないかしら?」
階段から母親の声がした。夕飯は年越し蕎麦を食べることになっている。エビ天の入った天ぷら蕎麦だ。
「すぐ行くよ」
返事を返してすぐにリビングに向かった。殻を剥いたエビに衣をたっぷりとつけ、高温の油でカラッと揚げる。ほうれん草を茹でて、ネギを小口切りして緑の彩りも忘れない。
「お蕎麦を茹でるときはなるべく大きな鍋でたっぷりのお湯で泳がすようにするのよ」
最初に父親の分を茹でて母親が手本を見せてくれる。それを見習いながら、僕も蕎麦を茹で上げた。
「大晦日にはやっぱり蕎麦がいいね」
年の瀬という気がするよ。年越し蕎麦を食べてしまうと、家族で年末番組を楽しんだ。両親は明日神社に詣でるつもりだから、寺院に行くのは僕だけだ。
「午後十時になるから、とおるの家に行ってくるね」
「夜道には気をつけるんだぞ」
「相沢先生によろしく言っておいてね」
おせち料理が入っている三段重ねの重箱を持つと僕は玄関を出た。玄関灯に照らされて人影が立っている。
「過保護も善し悪しじゃないの」
僕は軽く笑いながらとおるに声をかけた。お節介なヤツめ。気遣ってくれているんだろうけどね。
「羽目を外した酔っ払いがいるかもしれないだろう。荷物があるなら俺が持つぞ」
「これは親父さんに直接渡したいからね。僕が持っていくよ」
夜道を二人で歩く。僅かな距離だけど、一人より二人のほうがやっぱり心強い。とおるの家にあがると、さっそく親父さんのところに顔を出した。
「これおせち料理ですが、よろしければ食べてください。母さんと僕で作ったので、お口に合えばいいですけど」
「あきらちゃん、ありがとう。とおると一緒によく味わわせてもらうよ。本格的なおせち料理なんて何年ぶりだろう」
親父さんに重箱を手渡すと、目頭を押さえて感激していた。そんなに喜ばれると照れてしまうね。
あと一時間ほどしてから出発するということで、それまで居間でこたつに入りながらテレビを見ていた。
「あきらは明日神社にも参拝するのか?」
とおるが年末番組を見ながら明日の予定を聞いてきた。
「そのつもりだよ」
「俺も初詣に行くかな」
さりげなく言ったつもりだろうけど、とおるの目がそれを裏切っているよ。ついていく気満々だ。
「近くの神社に行くだけだし、すぐに帰ってくるよ。とおるは神様なんて信じてないように見えるけどね」
「願いをかなえてくれる神様なら熱烈な信者になるがな」
「不心得者だなぁ」
とおるは神頼みを何度もするぐらいなら、手段を問わずに物事を押しすすめる性格だ。必要とあらば悪魔にも魂を売り飛ばしそうだよ。
「あきらちゃん、とおる、そろそろ行くとするかね」
親父さんに声をかけられ、僕らは立ち上がった。
「市名を冠した神社に大半の人が行くだろうから、寺院には参拝客は多くないかもしれないな」
そんなことをとおるが言っていたから、寺院にある無料駐車場には車を楽に止められると思っていた。親父さんの車に乗って山の麓まで行ってみると、駐車できそうな場所には車が無理にでも置かれている。
「参拝客は多そうだよ?」
参道には苔むした羅漢像や馬頭観音、様々な石仏が立ち並んでいる。荘厳な雰囲気を漂わせており、歴史を感じさせた。山の中ということで立派な木々も立ち並び、大晦日ということもあって厳かな気持ちになる。
「氏子や檀家さんが思ったよりも多いのかもしれないな」
どうにか車を止めると、僕らは参道を登り始める。途中に木造瓦葺の小さな建物があり、僕はそれが何かとおるに聞いてみた。
「経蔵だな。昔は経典を納めていた蔵で、回転させることができる本棚のようなものだ。文化財に指定されている」
「やっぱりとおるは物知りだね」
「回転させると知恵がつくと云われていて、忍びこんで回したことがあるからな」
呆れればいいのか感心すればいいのか微妙なところだ。
「知識を得るためなら手段を選ばないのはとおるらしいというべきかね」
「経典なんて一冊も入ってなかったから、効果のほどは疑わしいけどな」
とおるの話を聞きながら寺院の正面まで行くと、人の話し声が聞こえてきた。正門の周りには松が植えられており、規模は大きくないがひなびた寺院があった。
正門をくぐって境内に入るとかがり火が焚かれていて、大勢の参拝客の姿が見られる。
「あきらちゃん、お参りを済ませてこようか」
親父さんに先導されて寺の前に置かれている賽銭箱に近づくと、参拝客が真摯な面持ちで手を合わせて祈りを捧げている。
僕も財布から五円玉を探し出し、賽銭箱に投げ入れた。家族の無病息災を心のなかで唱える。今のところは薬の副作用はないけど、今後もないとは限らない。願わくは無事に過ごしたいものだ。
(あと、もうちょっと胸が膨らんでくれますように)
熱が入ってしまったようで、僕が目を開くと親父さんもとおるも祈りを終えていた。
「あちらで甘酒を配ってくれているようだから、もらいにいこうか」
甘酒の炊き出しを行っている存家信者さんたちのほうへ歩き出した親父さんに僕らも続いた。
「とおる、甘酒で酔っ払ったりしないでくれよ」
「それはないはずだが……」
「覚えてないだろうけど、とおるは酒癖が悪いんだよ」
大量に飲まなければ大丈夫だろうけどね。
紙コップで配られていた熱い甘酒は、冷えた体に染み渡る。ショウガを擦って入れてあるようで、体がぽかぽかと温まってきた。僕が惜しみながらちびちび甘酒を飲んでいると、
ゴォォォン!
腹のうちにずしんとくる鐘の音が響き渡った。新年だ!
「あけましておめでとうございます!」
という声があちらこちらで聞こえる。
「あきらちゃん、あけましておめでとう」
「あきら、あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「あけましておめでとうございます」
僕らもそれにあわせるようにして、三人揃って頭を下げて新年の挨拶を交わしていた。
「あきらちゃん、とおる、はいお年玉」
招き猫が描かれたお年玉袋を僕らに手渡そうとする親父さん。親父さんの弾けるような笑顔を見ると遠慮するのが悪い気がして、
「ありがとうございます」
僕は礼を言って受け取った。親戚を除けば親父さんからは毎年お年玉を受け取っている。最初はとおるの数少ない友人として目をかけてくれたのだろう。初めからとおるの嫁候補として狙われていたわけではない……はずだ。
「また服でも買っておいで」
「そうさせてもらいますね」
お年玉袋は札束で膨れていた。千円札ということはないだろうから、相当な金額を包んでくれたようだ。
「とおる、親父さんが喜びそうなことって何だろうね?」
「親父が喜びそうなことか。神社に行くときまでに考えておく」
「頼むね」
あまりに大金をもらうと恐縮してしまうよ。もらいっぱなしというのは僕の性分にあわない。
「あきらちゃんととおるで除夜の鐘をついてきたらどうかな?」
「え? そんなこともできるんですか?」
「ほら、鐘楼にみんな並んでいるだろう」
参拝客は鐘楼の周りにずらっと列を作って並んでいた。釣鐘を見てみると、撞木を振りかぶっているのはお坊さんではなく、一般の参拝客である。どうやら誰でもついてよいらしい。
「なかなか鐘をつくことはできないからね。行ってきなさい」
「とおる、行ってみようよ」
「そうしてみるか」
僕らは列の最後尾についた。気持ちを昂ぶらせながら順番を待つ。僕らの番が近づくにつれて、鐘の音も大きく聞こえた。
鐘楼の二階部分に釣鐘が設置されていて、一階部分は袴のような形で板を巡らせている。袴腰付き鐘楼と呼ばれて、法隆寺にあるものが最古だ、とはとおるの弁だ。
「いよいよ僕らの番だね」
小さな木造の階段を上って、今にも鐘をつこうとしている参拝客の邪魔にならないよう隅のほうで待つ。間近で鐘を鳴らされて僕は顔をしかめた。耳が痛くなりそうだ。
「よし、行こう」
撞木に吊り下げられている撞き紐をとおると二人でしっかりと握る。軽く後ろに引っ張ってどんな具合か確かめてから、僕らは体を後ろに反らして撞木を振りかざした。
ゴォォォン!
「ふわぁぁっ、お腹がビリビリするよ」
重く余韻のある鐘の響きは、ズンッと子宮にまで届くかのようだ。僕は半分目を回しながらとおるの手を借りて楼閣から離れた。
「あきらちゃん、大丈夫?」
「……いい経験になりました」
ヤジロベエのように左右にふらつきながら、待ってくれていた親父さんと合流した。まだ鐘の音が耳の中で渦巻いているようだよ。でも、気持ちを新たにする意味ではいいかもしれない。至近距離で除夜の鐘を聞いたのだから、とおるの煩悩の一つぐらいは吹き飛んで欲しいものだ。
「相沢医院で降ろしてくれれば大丈夫ですよ」
「とおる、ちゃんとあきらちゃんを送っていくんだよ」
「もちろんだ」
寺院からの帰り道、僕はそう言ったのだけど、とおるは相沢医院からうちまで付き添った。
「明日は午前九時ごろに神社に行こうか」
僕の家の玄関前でとおると一緒にいると、土ぼこりを巻き上げながら猛スピードで近づいてくる物体がある。とおるが僕をかばうようにして前に立つと、その物体は問答無用でとおるを弾き飛ばした。
「こんばんは!」
岡持ちを持ったゆうきが僕の前で靴の裏を焦がしながら緊急停止をした。ゴムの焼ける臭いが漂う。
「ゆうき、あけ……むぐぅ」
新年の挨拶をしようとした僕の口をゆうきの手が塞いだ。
「さぁ、あきら。蕎麦を食べるわよ!」
「え、だって年越し蕎麦なら……」
笑みを深くしたゆうきは手の力を強めてきた。うう、顎が痛い。
「今は二十五時、つまり三十一日よ。あたしがせっかく蕎麦を打ったのよ。もちろん食べるわよね?」
「……そろそろ眠いよ」
僕が目を瞬かせると、ゆうきは僕の顎にさらに力を入れてきた。強引に開いた僕の口に彼女は何かを放りこむ。
「むぅ、んんんっ!」
鼻の奥にツーンと抜ける辛さが襲ってきた。涙腺を刺激されて、涙がこぼれそうになる。
「わ、わさび?」
「天然物なのよ。これで目が覚めたでしょ」
愉快そうにゆうきは大口を開けて笑っている。
「あきら、年越し蕎麦よ。これを食べなくちゃ年を越えたとはいえないわ」
ここで首を横に振ったら、何をされるかわからない。僕はこくこくと首を上下に振った。本当はゆうきの作ったものなんて食べたくない。死刑執行が少しばかり長くなっただけの気がする。
「そうこなくっちゃ。どんどん食べてよっ」
岡持ちから出した大きなお椀にどばどばっと麺つゆを注ぐと、彼女はざる蕎麦一皿を一気に放りこんだ。不ぞろいな太さの蕎麦を僕は覚悟を決めてすする。
「蕎麦の腰が僕にはちょっと強いけど、美味しいんじゃないかな」
「そうでしょ! スキーの帰りに美味しいお蕎麦屋さんがあってね。習ってきたのよ!」
恐る恐る食べてみると、蕎麦の香りが漂ってきて喉ごしも悪くない。
「でも、なんだって冷たい蕎麦なの?」
「温かい蕎麦をここまで持ってきたら伸びちゃうじゃないの!」
僕が一杯目をどうにか片づけると、ゆうきはわんこそばのように次を投入してきた。
「まだまだあるわ。遠慮しないで食べてね」
「いやもうお腹いっぱいだよ」
「そんなにうまい蕎麦なら俺も食ってみるか」
僕が持っていたお椀をとおるが横からかっさらった。ずるずると麺つゆごと一気に蕎麦をかきこむ。
「ごちそうさん」
とおるはつゆがなくなればもはや蕎麦をよそうまいと思ったのだろうが、
「ふーん、とおるもいたんだ」
ゆうきは口の端を曲げて目を挑発的に光らせると、お椀に再び麺つゆを注いだ。さらに十本分はありそうな擦ったわさびをつゆに落とす。
「これでさらに美味しくなったわよ!」
お椀にドポンッと蕎麦を投入して、刻みネギを入れるとゆうきは胸を張った。いかにもわさびの辛味が効いてそうだ。
「辛味が効いていてうまいな」
とおるは蕎麦をすするとほとんど噛まずに飲みこんでいる。ゆうきにはわからないだろうが、とおるはかすかに鼻を鳴らした。口では平気なように言っているが、わさびの辛味がきついらしい。
「鼻にツーンとこない? あの刺激をあたしは好きなのよ!」
「まだあるならもらうぞ」
こうなると意地の張り合いだ。ゆうきが放りこむ蕎麦をとおるは必死にすすっている。僕が食べずに済むのはありがたいけど、寒夜にざる蕎麦を食べることになったとおるが哀れだ。
「ゆうきはもう少し早い時間に来れなかったの?」
「そばは寝かさないと美味しくならないのよ! 時間がかかるのはしょうがないじゃない!」
それだけが理由なのかな? よく見るとゆうきの手は絆創膏だらけだ。慣れないそば切りで手を傷だらけにしたのだろう。それを見るともう少し食べないと悪い気がした。
「とおる、僕もあとちょっとだけもらうよ」
最後に残った一口だけを僕はすすった。うわ、脳を直接揺さぶられるような辛味が襲ってくる。よくこんなものをとおるは食べられるなぁ。
「あきら、除夜の鐘が聞こえてきたわね。あけましてめでとう!」
「……あけましておめでとう」
さっきから除夜の鐘は聞こえまくっているじゃないかとは言えなかった。とおるは何も言わずに突っ立っている。
「それじゃね、あきら。おやすみなさい」
ゆうきはぶんぶんと手を振ると、来たときと同じように駆け足で去っていく。
「ぶふぅっ! ごふっ!」
暴風竜巻が立ち去ると、無言だったとおるは口と鼻から蕎麦と麺つゆを吹き出した。硬直したまま横に倒れる。辛くないわけがないか。今までやせ我慢していたらしい。
「身代わりになって蕎麦を食べてくれて悪いね」
「こ、これくらい平気だ」
とおるは立とうとしているが、膝がかくかくと震えている。
「……途中からは蕎麦にもわさびを練りこんであったな。蕎麦が緑色をしていた」
「ゆうきは変なところで一手間加えようとするからね」
彼女の料理は前と変わらずやはり危険だ。今回はこれくらいの被害で済んでよかったと思うべきかもしれない。
<つづく>
薄明かりの中、目覚めた僕は一瞬どこにいるのかわからなかった。見知らぬ天井が見える。まだ夢にいるのかなと思った。
「僕が女の子の部屋にいて、女になっているなんてどんな夢だよ」
願望が夢に表れたのかなと僕は夢うつつで寝返りを打った。そこではっと目を覚ます。明かりをつけると僕の部屋に間違いなかった。ただしピンクを基調とした女の子の部屋だ。
「夢の続きってことはないよね」
思わず股間を触ってみたが、何かの手応えが返ってくるということはない。僕がとおるによって女になったというのは夢ではなかった。現実の僕も女の子だ。
「変な夢を見たね。今年最後の日ということで心に思うところがあったのかな」
今日は大晦日。今年を振り返ってみると大きな転機が訪れたといえる。人生そのものが変わってしまうような出来事が起こるとは、秋になるまで思いもしてなかった。
「夜になるまでこれといってすることもないか」
昨日とおるが帰ったあとに、おせち料理はほとんど重箱に詰めて冷蔵庫に入れてある。朝食を食べたあとに仕上げをするだけだ。
「温泉旅行に行ってしまって、宿題の進みが遅くなったからね。今日のうちに終わらせてしまうか」
朝食後に時間を置いて味を染みこませる必要があった黒豆などを重箱に入れると、僕は夕方までに残っていた冬休みの宿題を終わらせた。これで気兼ねなく正月を迎えられる。
「親戚が集まる新年会は明後日の二日か。泊りがけだからなぁ」
夏休みと冬休みぐらいしか集まる機会はないのだから、誰もが都合をつけて顔を出す。割り切れればいとこと会えるのは楽しみなのだけどね。
「夕飯までもう少し時間があるね。漫画でも読んでいようかな」
少女漫画を取り出して読み始める。そういえばそろそろ集めている漫画の新刊が出ていたかな。ファッション誌も立ち読みしたいし、新年会が終わったら本屋に行くのもいいかもしれない。
「あきら、そろそろお蕎麦を茹でるから、来てもらえないかしら?」
階段から母親の声がした。夕飯は年越し蕎麦を食べることになっている。エビ天の入った天ぷら蕎麦だ。
「すぐ行くよ」
返事を返してすぐにリビングに向かった。殻を剥いたエビに衣をたっぷりとつけ、高温の油でカラッと揚げる。ほうれん草を茹でて、ネギを小口切りして緑の彩りも忘れない。
「お蕎麦を茹でるときはなるべく大きな鍋でたっぷりのお湯で泳がすようにするのよ」
最初に父親の分を茹でて母親が手本を見せてくれる。それを見習いながら、僕も蕎麦を茹で上げた。
「大晦日にはやっぱり蕎麦がいいね」
年の瀬という気がするよ。年越し蕎麦を食べてしまうと、家族で年末番組を楽しんだ。両親は明日神社に詣でるつもりだから、寺院に行くのは僕だけだ。
「午後十時になるから、とおるの家に行ってくるね」
「夜道には気をつけるんだぞ」
「相沢先生によろしく言っておいてね」
おせち料理が入っている三段重ねの重箱を持つと僕は玄関を出た。玄関灯に照らされて人影が立っている。
「過保護も善し悪しじゃないの」
僕は軽く笑いながらとおるに声をかけた。お節介なヤツめ。気遣ってくれているんだろうけどね。
「羽目を外した酔っ払いがいるかもしれないだろう。荷物があるなら俺が持つぞ」
「これは親父さんに直接渡したいからね。僕が持っていくよ」
夜道を二人で歩く。僅かな距離だけど、一人より二人のほうがやっぱり心強い。とおるの家にあがると、さっそく親父さんのところに顔を出した。
「これおせち料理ですが、よろしければ食べてください。母さんと僕で作ったので、お口に合えばいいですけど」
「あきらちゃん、ありがとう。とおると一緒によく味わわせてもらうよ。本格的なおせち料理なんて何年ぶりだろう」
親父さんに重箱を手渡すと、目頭を押さえて感激していた。そんなに喜ばれると照れてしまうね。
あと一時間ほどしてから出発するということで、それまで居間でこたつに入りながらテレビを見ていた。
「あきらは明日神社にも参拝するのか?」
とおるが年末番組を見ながら明日の予定を聞いてきた。
「そのつもりだよ」
「俺も初詣に行くかな」
さりげなく言ったつもりだろうけど、とおるの目がそれを裏切っているよ。ついていく気満々だ。
「近くの神社に行くだけだし、すぐに帰ってくるよ。とおるは神様なんて信じてないように見えるけどね」
「願いをかなえてくれる神様なら熱烈な信者になるがな」
「不心得者だなぁ」
とおるは神頼みを何度もするぐらいなら、手段を問わずに物事を押しすすめる性格だ。必要とあらば悪魔にも魂を売り飛ばしそうだよ。
「あきらちゃん、とおる、そろそろ行くとするかね」
親父さんに声をかけられ、僕らは立ち上がった。
「市名を冠した神社に大半の人が行くだろうから、寺院には参拝客は多くないかもしれないな」
そんなことをとおるが言っていたから、寺院にある無料駐車場には車を楽に止められると思っていた。親父さんの車に乗って山の麓まで行ってみると、駐車できそうな場所には車が無理にでも置かれている。
「参拝客は多そうだよ?」
参道には苔むした羅漢像や馬頭観音、様々な石仏が立ち並んでいる。荘厳な雰囲気を漂わせており、歴史を感じさせた。山の中ということで立派な木々も立ち並び、大晦日ということもあって厳かな気持ちになる。
「氏子や檀家さんが思ったよりも多いのかもしれないな」
どうにか車を止めると、僕らは参道を登り始める。途中に木造瓦葺の小さな建物があり、僕はそれが何かとおるに聞いてみた。
「経蔵だな。昔は経典を納めていた蔵で、回転させることができる本棚のようなものだ。文化財に指定されている」
「やっぱりとおるは物知りだね」
「回転させると知恵がつくと云われていて、忍びこんで回したことがあるからな」
呆れればいいのか感心すればいいのか微妙なところだ。
「知識を得るためなら手段を選ばないのはとおるらしいというべきかね」
「経典なんて一冊も入ってなかったから、効果のほどは疑わしいけどな」
とおるの話を聞きながら寺院の正面まで行くと、人の話し声が聞こえてきた。正門の周りには松が植えられており、規模は大きくないがひなびた寺院があった。
正門をくぐって境内に入るとかがり火が焚かれていて、大勢の参拝客の姿が見られる。
「あきらちゃん、お参りを済ませてこようか」
親父さんに先導されて寺の前に置かれている賽銭箱に近づくと、参拝客が真摯な面持ちで手を合わせて祈りを捧げている。
僕も財布から五円玉を探し出し、賽銭箱に投げ入れた。家族の無病息災を心のなかで唱える。今のところは薬の副作用はないけど、今後もないとは限らない。願わくは無事に過ごしたいものだ。
(あと、もうちょっと胸が膨らんでくれますように)
熱が入ってしまったようで、僕が目を開くと親父さんもとおるも祈りを終えていた。
「あちらで甘酒を配ってくれているようだから、もらいにいこうか」
甘酒の炊き出しを行っている存家信者さんたちのほうへ歩き出した親父さんに僕らも続いた。
「とおる、甘酒で酔っ払ったりしないでくれよ」
「それはないはずだが……」
「覚えてないだろうけど、とおるは酒癖が悪いんだよ」
大量に飲まなければ大丈夫だろうけどね。
紙コップで配られていた熱い甘酒は、冷えた体に染み渡る。ショウガを擦って入れてあるようで、体がぽかぽかと温まってきた。僕が惜しみながらちびちび甘酒を飲んでいると、
ゴォォォン!
腹のうちにずしんとくる鐘の音が響き渡った。新年だ!
「あけましておめでとうございます!」
という声があちらこちらで聞こえる。
「あきらちゃん、あけましておめでとう」
「あきら、あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「あけましておめでとうございます」
僕らもそれにあわせるようにして、三人揃って頭を下げて新年の挨拶を交わしていた。
「あきらちゃん、とおる、はいお年玉」
招き猫が描かれたお年玉袋を僕らに手渡そうとする親父さん。親父さんの弾けるような笑顔を見ると遠慮するのが悪い気がして、
「ありがとうございます」
僕は礼を言って受け取った。親戚を除けば親父さんからは毎年お年玉を受け取っている。最初はとおるの数少ない友人として目をかけてくれたのだろう。初めからとおるの嫁候補として狙われていたわけではない……はずだ。
「また服でも買っておいで」
「そうさせてもらいますね」
お年玉袋は札束で膨れていた。千円札ということはないだろうから、相当な金額を包んでくれたようだ。
「とおる、親父さんが喜びそうなことって何だろうね?」
「親父が喜びそうなことか。神社に行くときまでに考えておく」
「頼むね」
あまりに大金をもらうと恐縮してしまうよ。もらいっぱなしというのは僕の性分にあわない。
「あきらちゃんととおるで除夜の鐘をついてきたらどうかな?」
「え? そんなこともできるんですか?」
「ほら、鐘楼にみんな並んでいるだろう」
参拝客は鐘楼の周りにずらっと列を作って並んでいた。釣鐘を見てみると、撞木を振りかぶっているのはお坊さんではなく、一般の参拝客である。どうやら誰でもついてよいらしい。
「なかなか鐘をつくことはできないからね。行ってきなさい」
「とおる、行ってみようよ」
「そうしてみるか」
僕らは列の最後尾についた。気持ちを昂ぶらせながら順番を待つ。僕らの番が近づくにつれて、鐘の音も大きく聞こえた。
鐘楼の二階部分に釣鐘が設置されていて、一階部分は袴のような形で板を巡らせている。袴腰付き鐘楼と呼ばれて、法隆寺にあるものが最古だ、とはとおるの弁だ。
「いよいよ僕らの番だね」
小さな木造の階段を上って、今にも鐘をつこうとしている参拝客の邪魔にならないよう隅のほうで待つ。間近で鐘を鳴らされて僕は顔をしかめた。耳が痛くなりそうだ。
「よし、行こう」
撞木に吊り下げられている撞き紐をとおると二人でしっかりと握る。軽く後ろに引っ張ってどんな具合か確かめてから、僕らは体を後ろに反らして撞木を振りかざした。
ゴォォォン!
「ふわぁぁっ、お腹がビリビリするよ」
重く余韻のある鐘の響きは、ズンッと子宮にまで届くかのようだ。僕は半分目を回しながらとおるの手を借りて楼閣から離れた。
「あきらちゃん、大丈夫?」
「……いい経験になりました」
ヤジロベエのように左右にふらつきながら、待ってくれていた親父さんと合流した。まだ鐘の音が耳の中で渦巻いているようだよ。でも、気持ちを新たにする意味ではいいかもしれない。至近距離で除夜の鐘を聞いたのだから、とおるの煩悩の一つぐらいは吹き飛んで欲しいものだ。
「相沢医院で降ろしてくれれば大丈夫ですよ」
「とおる、ちゃんとあきらちゃんを送っていくんだよ」
「もちろんだ」
寺院からの帰り道、僕はそう言ったのだけど、とおるは相沢医院からうちまで付き添った。
「明日は午前九時ごろに神社に行こうか」
僕の家の玄関前でとおると一緒にいると、土ぼこりを巻き上げながら猛スピードで近づいてくる物体がある。とおるが僕をかばうようにして前に立つと、その物体は問答無用でとおるを弾き飛ばした。
「こんばんは!」
岡持ちを持ったゆうきが僕の前で靴の裏を焦がしながら緊急停止をした。ゴムの焼ける臭いが漂う。
「ゆうき、あけ……むぐぅ」
新年の挨拶をしようとした僕の口をゆうきの手が塞いだ。
「さぁ、あきら。蕎麦を食べるわよ!」
「え、だって年越し蕎麦なら……」
笑みを深くしたゆうきは手の力を強めてきた。うう、顎が痛い。
「今は二十五時、つまり三十一日よ。あたしがせっかく蕎麦を打ったのよ。もちろん食べるわよね?」
「……そろそろ眠いよ」
僕が目を瞬かせると、ゆうきは僕の顎にさらに力を入れてきた。強引に開いた僕の口に彼女は何かを放りこむ。
「むぅ、んんんっ!」
鼻の奥にツーンと抜ける辛さが襲ってきた。涙腺を刺激されて、涙がこぼれそうになる。
「わ、わさび?」
「天然物なのよ。これで目が覚めたでしょ」
愉快そうにゆうきは大口を開けて笑っている。
「あきら、年越し蕎麦よ。これを食べなくちゃ年を越えたとはいえないわ」
ここで首を横に振ったら、何をされるかわからない。僕はこくこくと首を上下に振った。本当はゆうきの作ったものなんて食べたくない。死刑執行が少しばかり長くなっただけの気がする。
「そうこなくっちゃ。どんどん食べてよっ」
岡持ちから出した大きなお椀にどばどばっと麺つゆを注ぐと、彼女はざる蕎麦一皿を一気に放りこんだ。不ぞろいな太さの蕎麦を僕は覚悟を決めてすする。
「蕎麦の腰が僕にはちょっと強いけど、美味しいんじゃないかな」
「そうでしょ! スキーの帰りに美味しいお蕎麦屋さんがあってね。習ってきたのよ!」
恐る恐る食べてみると、蕎麦の香りが漂ってきて喉ごしも悪くない。
「でも、なんだって冷たい蕎麦なの?」
「温かい蕎麦をここまで持ってきたら伸びちゃうじゃないの!」
僕が一杯目をどうにか片づけると、ゆうきはわんこそばのように次を投入してきた。
「まだまだあるわ。遠慮しないで食べてね」
「いやもうお腹いっぱいだよ」
「そんなにうまい蕎麦なら俺も食ってみるか」
僕が持っていたお椀をとおるが横からかっさらった。ずるずると麺つゆごと一気に蕎麦をかきこむ。
「ごちそうさん」
とおるはつゆがなくなればもはや蕎麦をよそうまいと思ったのだろうが、
「ふーん、とおるもいたんだ」
ゆうきは口の端を曲げて目を挑発的に光らせると、お椀に再び麺つゆを注いだ。さらに十本分はありそうな擦ったわさびをつゆに落とす。
「これでさらに美味しくなったわよ!」
お椀にドポンッと蕎麦を投入して、刻みネギを入れるとゆうきは胸を張った。いかにもわさびの辛味が効いてそうだ。
「辛味が効いていてうまいな」
とおるは蕎麦をすするとほとんど噛まずに飲みこんでいる。ゆうきにはわからないだろうが、とおるはかすかに鼻を鳴らした。口では平気なように言っているが、わさびの辛味がきついらしい。
「鼻にツーンとこない? あの刺激をあたしは好きなのよ!」
「まだあるならもらうぞ」
こうなると意地の張り合いだ。ゆうきが放りこむ蕎麦をとおるは必死にすすっている。僕が食べずに済むのはありがたいけど、寒夜にざる蕎麦を食べることになったとおるが哀れだ。
「ゆうきはもう少し早い時間に来れなかったの?」
「そばは寝かさないと美味しくならないのよ! 時間がかかるのはしょうがないじゃない!」
それだけが理由なのかな? よく見るとゆうきの手は絆創膏だらけだ。慣れないそば切りで手を傷だらけにしたのだろう。それを見るともう少し食べないと悪い気がした。
「とおる、僕もあとちょっとだけもらうよ」
最後に残った一口だけを僕はすすった。うわ、脳を直接揺さぶられるような辛味が襲ってくる。よくこんなものをとおるは食べられるなぁ。
「あきら、除夜の鐘が聞こえてきたわね。あけましてめでとう!」
「……あけましておめでとう」
さっきから除夜の鐘は聞こえまくっているじゃないかとは言えなかった。とおるは何も言わずに突っ立っている。
「それじゃね、あきら。おやすみなさい」
ゆうきはぶんぶんと手を振ると、来たときと同じように駆け足で去っていく。
「ぶふぅっ! ごふっ!」
暴風竜巻が立ち去ると、無言だったとおるは口と鼻から蕎麦と麺つゆを吹き出した。硬直したまま横に倒れる。辛くないわけがないか。今までやせ我慢していたらしい。
「身代わりになって蕎麦を食べてくれて悪いね」
「こ、これくらい平気だ」
とおるは立とうとしているが、膝がかくかくと震えている。
「……途中からは蕎麦にもわさびを練りこんであったな。蕎麦が緑色をしていた」
「ゆうきは変なところで一手間加えようとするからね」
彼女の料理は前と変わらずやはり危険だ。今回はこれくらいの被害で済んでよかったと思うべきかもしれない。
<つづく>
部下の哲学
読了。
正論だ。
そして時に正論は心地よい。
伝説の人パナソニックの松下さんのエピソードも良いですな。上司の哲学も買っちゃおうかな。
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Raiders ケインが無法者に惚れられるてん末 by.amaha
(1)
互いの技の伝授を7日で全てできるわけではないけれど、ある程度の域には達した。
俺たちが入れ替わった宝箱は、かなり高レベルマップだったので、そう簡単に手に入らない。入手に手間取る可能性もあった。だから後はマップを探しながら修行しようってわけさ。
そういえば、俺とリリシアの仲は以前より、俺が男であいつが女だった頃より、ある意味親密かもしれない。何しろクールで冷たく……ん? 同じ意味か。とにかく取り付く島もないような、何と言うか、
つーんとおすまし、それは誰?
それは氷、氷のリリシアちゃん
だったわけさ。以前はね。
彼女に言わせれば知り合いにあったとき困るから俺の振りをしているってことなんだが……。まあ、ある程度必要なことは認める。万一入れ替わりを疑われたりしたら恥ずかしくって街道を歩けないってもんだ。しかし女のふりして旅をするのはなんだか恥ずかしい
「ちょっと!」
というリリシアの声で立ち止まり振り向く。
俺たちは青い街道を――この地方特産の青い石が敷き詰められているので文字通り青い――北へ向かっている。問題の宝箱があった古代都市モリアは、かつてドワーフが住んでいた。だからおそらくドワーフ族の作った罠、もしくは賢者のじいさまの考察が正しければ宝なんだろう。ではドワーフのところで探せばいいかと言うとそうはいかない。
よそ者の俺たちが、ドワーフの家のドアをノックして『ごめんください。地図をください』『これです』『ありがとう』とはね。
俺たちが向かっているのは草原の宝石と呼ばれるレムノスの町だ。隊商が集まる商いの町にはもう1つの顔があった。それは盗品を扱う故買屋の町でもあることだ。三王国から離れているので官憲の追求はなく、独立を保つために必要な貢物を北方の蛮族に送っても十分採算の合う商売である。
実のところ最初の地図を買ったのもこの町なのだ。
「なに?」
「いつものように後ろを歩いて」
「いつもはリリシア……俺か」
「そういうこと」
「でも危険が」
「立場は入れ替わっているの」
「わかったよ」
「それから、あまり大股で歩かないように」
「ちぇっ」
「なにか言いましたか」
「別に」
町は相変わらず賑わっていた。
俺たちは前回もよった居酒屋に入った。食事と部屋が空いていれば予約するためだ。
町に入ってからずっと荒くれどもの視線が妙に気になる。リリシアも俺の困惑に気づいた。
「どうした?」
「男どもから、いやらしい視線を浴びていたのか、いつも」
「あなたが無防備だから、よけいじゃない」
「蓮っ葉な行動はしていないぞ」
「それなら、このあたりの男は見慣れてるわ。あなたは初(うぶ)なのよ」
「俺、いや私が?」
「女としてはと言えば良いかな」
「お前なら、ちがうのか?」
「あなたは生まれたばかりの女、真の処女ってわけ」
「それって、それって」
「ばかね。例えよ。ほら亭主がきたわ。合わせて」
「う、うん」
「お二人さん、ようこそ。最初のビールは俺のおごりだよ」
「ありがたくもらうよ」
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
「おお! 兄さん、とうとうリリシアちゃんをモノにしたのかね」
「お、おじさん、変なこと言わないでください」
「もう一押しのところまで来てるんだから、混ぜ返さないでくれよ」
「こりゃ悪かったな」
亭主はリリシアの肩をどつき、俺にウィンクすると戻って行った。気持ち悪い――。
(2)
リリシアの解説によれば居酒屋の亭主が、俺とリリシアの関係に、変化があったと勘違いしたのは俺の態度が妙に従順だったからだそうだ。氷のリリシアは理由があっての芝居だったってことかなあ。
とにかく、休憩後リリシアは故買屋めぐりに出かけ、俺は旅に必要な補充品を買いに市場へ向かった。いつもと逆の役目なのはやむを得ないところだ。
買い物なんて好みじゃないが、いつもは冷淡な店の主人も妙に愛想が良いのに呆れる。
「お嬢さん、ドライフルーツが安いよ。このカシスなんざぁ長旅のお肌の健康には一番だ。どうだい?」
「苦くないかしら」
「苦いのが苦手なら、シロップもあるぜ。何なら味見してみな」
匙にたっぷり盛られたシロップは近づけただけで甘い香りがする。なめてみると甘さに引かれた。
「その小さな壺でいただけるかしら。おいくら」
「15Gでさぁ」
「うーん」
「え~い、今回に限り同じ値段でもう1壺おまけだ!」
「いただくわ」
「もってけドロボー」
そう言いながらもおやじは笑っていた。奥で怖い顔をしている上様(かみさん)にまだ気がついていないらしい。主人の無事を祈りながら店を出た。
トレハン用品の店も見ておこうと市場を北に移動していると声をかけられた。
「なにか探しものか」
振り返ると腰に長剣をさげた若造だ。黒い長髪を後ろでくくり、革製の上着に大きな青いマントを羽織っている。訛りと踵のすり減った埃まみれの長靴から見て、俺たちと同じ旅人なのだろう。身長は俺、もとの俺より少し低いが、筋肉質で体重はおそらく同じくらいだ。顔は美男子とは言えないまでも整っている。
「なんの御用でしょう。見知らぬお方」
「見知らぬお方ときたか――姫君さま」
「急いでいるのですけれど」
振り切るように歩きはじめたが、男はついて来た。
「それなんだけどさ。このレムノスの町は初めてってわけじゃないんだよな、姫」
「心配していただくとも、案内は不用です」
「まあ、そうあからさまに警戒されると忠告するのもバカバカしいんだが」
気になるので立ち止まると男はぶつかりそうになった。汗と男の匂いがする。
「なんでしょう」
「この先は採掘師どもの集まる区画だぜ」
「知っています」
「こりゃ驚きだ。知っていて女1人で行こうというのかい」
「だめですか」
そういえばアリシアも後で2人一緒に行こうと言っていたっけ。俺は大丈夫と言って無視したけど。
「例えて言うなら、狼の群れの真ん中にまるまると太ったウサギちゃんが入っていくようなものさ」
ここはアリシアの名誉のために言っておかなくてはいかない。
「太ってはいません!」
男はあわてて言い直した。
「美味しそうなって意味さ」
それほど悪い男ではないのかもしれない。
「護身の心得もあります」
「なるほど、多少魔法の心得はあるらしいな」
男の視線は腰のベルトのスペルブック辺りをさまよっていて、なんだが恥ずかしい。
「それに名前も知らない無頼漢の方が女には危険だと思いますけれど?」
「失礼、俺はヴァイク、ヴァイク・エステルゴム、傭兵さ。今は浪人中だがな」
主を持ってこその傭兵であり、今の状態では強盗盗賊と言っているのに等しいことに気がつかないのだろうか。まあトレジャーハンターも一般人にそう尊敬はされはしないけど、犯罪者ではない。
「その無職の傭兵さんが、か弱い女になんの御用でしょう」
男も矛盾に気づいたらしい。
「腕におぼえありってことだよ。あっちへ行くなら俺を護衛に雇いなよ」
それほど危険とは思えなかった。大体、これまではアリシア1人でやっていたことなのだ。
「いりませんよ」
「予定外の出費というなら、無料オタメシ期間にしておくよ」
男は笑っているが、目は真剣だった。
「じゃあ、お願いしようかしら」
「では」
そう言うと男は腕を出した。
「これは?」
「腕をどうぞ」
「番犬なら少し離れて歩く方がいいのでは」
男は肩をすくめてこういった。
「仰せのとおりに、姫さま」
ヴァイクの指摘がある意味正しいのは認めざるを得なかった。これまでも男たちの視線にはずいぶん悩まされていたが、ここですれ違うのは一筋縄でいかぬゴロツキ共ばかりで、俺を見る目はネズミを前にした蛇って所だ。ヴァイクの腰の大剣がかろうじて彼らの暴力を封じていた。
「どうしたんだい。ここは初めてじゃないんだろう?」
「うっさいわね」
「おやおや、とんだ跳ねっ返りだ」
「ここでお上品にしているのもまずいでしょう!」
「まあ、そりゃそうだが」
男とかけあいをしているうちにリリシア行きつけのショップに着いた。俺自身が来るのは久しぶりだ。
「おや、リリシアさん。お久しぶりで」
おやじは妙な表情で俺を見た。バレたわけじゃないんだろうが。
「こんにちは、おじさん。このリストの品を揃えてくださる?」
リストはリリシアに書いてもらった。
リストを店主が確認しているとき、外で待っているように言っておいたヴァイクが入ってきた。睨みつけると肩をすくめて後ろを見る。髭面の大男が3人店内に入ってきていた。どうやら本気で俺を守る気らしい。慣れないリリシアの体でもたいていの奴に引けをとることはない自信はあるのだが。
「おや、お連れかい? なるほどね」
「姫の護衛のヴァイク・エステルゴムだよ」
「そこで知り合った人です。ケインとのコンビは続いてますよ」
「いやいや、変装してこなかった理由がわかったと思っただけさ」
「変装って」
「客のいるとこじゃ、少なくとも目深にフードを被っているだろういつも」
そういう事か、リリシアが何度も念を押した外套はあまりに暑いので宿においてきてしまった。リリシアが日焼けは嫌だからと言ったので俺は日焼け止めクリームで代用してしまった。リリシアはこんな危険なエリアにたいてい1人で……
店主は品物を選ぶと丁寧に梱包してくれた。値段も交渉する必要もないほど良心的だ。礼を言って受け取ろうとするとヴァイクが手を出す。
「それは」
「姫に持たせるわけにはいくまい」
「じゃあ、お願いするわ」
「かしこまりました。それにしても」
俺達は店主に見送られて店をでた。
「それにしても、なに?」
「ケインとか言うお前の相棒は、こんな危険な地区での買い物に女1人でさせるのかい」
「彼には彼の仕事があるし、身を守るくらいなら自分でできるもの」
「ふーん、そうかい。でも俺ならそうはしないぜ」
俺は持っていたスカーフを被り、無言で歩き続けた。
故買屋めぐりが危険なのは確かだ。しかしリリシアが1人で行く買い物にも女だけでは危険が伴うことに俺は気づいていなかった。
「姫」
悩んでいる最中、ヴァイクが声をかけてきた。
「なんなのよ」
「ご思案中、申し訳ありませんが、身を守れるってのは確かか?」
「もちろんよ。でも、なぜ今」
「待ち人来たるってね」
ヴァイクが顎をしゃくった先には店で見た三人組が薄ら笑いを浮かべて待っている。危険を察知した通行人はすでに身を隠していた。
「なにが狙いなのかしら」
「なにがって……あんたが店で出してみせたたんまり金貨の入った財布とその持ち主だろう、普通」
「ちっ!」
「おいおい、俺の夢を壊すなよ、姫」
「ごめんあそばせ」
「そうでなきゃな」
そう言いながらヴァイクは左手で鯉口を切り右手をこれ見よがしに柄にかけた。
それを見て三人組のリーダーらしい大男があざ笑うように言った。
「おい兄さん。お前は確かに色男かもしれないが、俺達にその気(け)はねえ。ねえちゃんを置いてさっさと行っちまいな」
確かに三人組と比べると華奢で勝てそうには見えない。それにしてもそんなに良い男なのかなあ。
「減らず口を叩くなら命の保証はしないぜ」
「なんだと!」
三人は口々に罵りながら剣を引っこ抜いた。俺も慌てて魔法攻撃の準備のため詠唱を始める。
ヴァイクは笑いながら大剣を抜いた。俺も相当場数を踏んではいるが、三対一は冗談ごとではない。たとえ相手が剣を習い始めたばかりのひよっこでも相当不利である。奴は相当腕が立つか、身の程知らずのバカってことだ。
結果はすぐに判明した。ヴァイクの剣は鞘を出るとすぐリーダーの太ももから出血させ戦意を奪い、直ぐ後ろにいた男の剣をはじき飛ばした。その時やっと詠唱を終えた俺の電撃が三人目を襲い、立っているのは俺とヴァイクの二人だけになる。
「見事な魔法だな、姫」
「あなたも」
「これはどうも」
ヴァイクは膝をつき止めるまもなく俺の手を取ると手背にキスをする。俺のうなじは総毛立った。
(3)
困り顔のリリシアに俺はただひたすら低姿勢のままだ。勝手な服装で出かけ、無頼漢に絡まれ、でしゃばり男に救われ、おまけにそいつが宿までついてきたのだ。
「助けていただいて本当に感謝します。ヴァイク殿」
「別にお前さんに礼を言ってもらう必要はないさ、ケイン・トレバース」
ヴァイクの後ろで俺はひたすらリリシアに頭をさげた。
「姫にはキスの許可を頂いたから俺にはそれで充分なんだ」
不審げに眉をひそめたリリシアに手の甲を指さして唇じゃないとアピールする。
リリシアの機嫌は良くない。その証拠に礼にと差し出していた金貨を引っ込めて言った。
「では無理にとは申しますまい」
「それで結構。それにあなた達2人が将来を誓っていることも了解しました」
ヴァイクに言い寄られて俺がそう告白した。俺がリリシアを好きなのは本当だし、今俺はリリシアなんだから要するに相思相愛なわけだし……何か変かも。まあいいや。とにかく当のリリシアも否定しなかったんだから。
「それは上々。旅の空でも私たち2人の幸せを祈っていただければ幸いです」
「ところが、そうはいかないんだなあ」
「どういう事です」
とリリシア。
「あんたの姫に対する扱いはなっちゃいねえ。あんな場所に女1人でやるなんざぁ、男の風上にも置けない奴だ」
俺は身を小さくした。何しろこれまでリリシアの言葉に甘えて面倒な買出しをすべて任せてきたのは俺なのだ。
「だとすれば、あなたはどうされると」
「惚れたリリシアちゃんのために一肌脱ごうってのさ」
「ですから私たち2人は」
「妙な下心なく姫を守るナイト(騎士)になってやろうってんだ。このヴァイク様が」
「なんですって!」
と、これは俺。妙に女が板についてきた。
(おしまい)
互いの技の伝授を7日で全てできるわけではないけれど、ある程度の域には達した。
俺たちが入れ替わった宝箱は、かなり高レベルマップだったので、そう簡単に手に入らない。入手に手間取る可能性もあった。だから後はマップを探しながら修行しようってわけさ。
そういえば、俺とリリシアの仲は以前より、俺が男であいつが女だった頃より、ある意味親密かもしれない。何しろクールで冷たく……ん? 同じ意味か。とにかく取り付く島もないような、何と言うか、
つーんとおすまし、それは誰?
それは氷、氷のリリシアちゃん
だったわけさ。以前はね。
彼女に言わせれば知り合いにあったとき困るから俺の振りをしているってことなんだが……。まあ、ある程度必要なことは認める。万一入れ替わりを疑われたりしたら恥ずかしくって街道を歩けないってもんだ。しかし女のふりして旅をするのはなんだか恥ずかしい
「ちょっと!」
というリリシアの声で立ち止まり振り向く。
俺たちは青い街道を――この地方特産の青い石が敷き詰められているので文字通り青い――北へ向かっている。問題の宝箱があった古代都市モリアは、かつてドワーフが住んでいた。だからおそらくドワーフ族の作った罠、もしくは賢者のじいさまの考察が正しければ宝なんだろう。ではドワーフのところで探せばいいかと言うとそうはいかない。
よそ者の俺たちが、ドワーフの家のドアをノックして『ごめんください。地図をください』『これです』『ありがとう』とはね。
俺たちが向かっているのは草原の宝石と呼ばれるレムノスの町だ。隊商が集まる商いの町にはもう1つの顔があった。それは盗品を扱う故買屋の町でもあることだ。三王国から離れているので官憲の追求はなく、独立を保つために必要な貢物を北方の蛮族に送っても十分採算の合う商売である。
実のところ最初の地図を買ったのもこの町なのだ。
「なに?」
「いつものように後ろを歩いて」
「いつもはリリシア……俺か」
「そういうこと」
「でも危険が」
「立場は入れ替わっているの」
「わかったよ」
「それから、あまり大股で歩かないように」
「ちぇっ」
「なにか言いましたか」
「別に」
町は相変わらず賑わっていた。
俺たちは前回もよった居酒屋に入った。食事と部屋が空いていれば予約するためだ。
町に入ってからずっと荒くれどもの視線が妙に気になる。リリシアも俺の困惑に気づいた。
「どうした?」
「男どもから、いやらしい視線を浴びていたのか、いつも」
「あなたが無防備だから、よけいじゃない」
「蓮っ葉な行動はしていないぞ」
「それなら、このあたりの男は見慣れてるわ。あなたは初(うぶ)なのよ」
「俺、いや私が?」
「女としてはと言えば良いかな」
「お前なら、ちがうのか?」
「あなたは生まれたばかりの女、真の処女ってわけ」
「それって、それって」
「ばかね。例えよ。ほら亭主がきたわ。合わせて」
「う、うん」
「お二人さん、ようこそ。最初のビールは俺のおごりだよ」
「ありがたくもらうよ」
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
「おお! 兄さん、とうとうリリシアちゃんをモノにしたのかね」
「お、おじさん、変なこと言わないでください」
「もう一押しのところまで来てるんだから、混ぜ返さないでくれよ」
「こりゃ悪かったな」
亭主はリリシアの肩をどつき、俺にウィンクすると戻って行った。気持ち悪い――。
(2)
リリシアの解説によれば居酒屋の亭主が、俺とリリシアの関係に、変化があったと勘違いしたのは俺の態度が妙に従順だったからだそうだ。氷のリリシアは理由があっての芝居だったってことかなあ。
とにかく、休憩後リリシアは故買屋めぐりに出かけ、俺は旅に必要な補充品を買いに市場へ向かった。いつもと逆の役目なのはやむを得ないところだ。
買い物なんて好みじゃないが、いつもは冷淡な店の主人も妙に愛想が良いのに呆れる。
「お嬢さん、ドライフルーツが安いよ。このカシスなんざぁ長旅のお肌の健康には一番だ。どうだい?」
「苦くないかしら」
「苦いのが苦手なら、シロップもあるぜ。何なら味見してみな」
匙にたっぷり盛られたシロップは近づけただけで甘い香りがする。なめてみると甘さに引かれた。
「その小さな壺でいただけるかしら。おいくら」
「15Gでさぁ」
「うーん」
「え~い、今回に限り同じ値段でもう1壺おまけだ!」
「いただくわ」
「もってけドロボー」
そう言いながらもおやじは笑っていた。奥で怖い顔をしている上様(かみさん)にまだ気がついていないらしい。主人の無事を祈りながら店を出た。
トレハン用品の店も見ておこうと市場を北に移動していると声をかけられた。
「なにか探しものか」
振り返ると腰に長剣をさげた若造だ。黒い長髪を後ろでくくり、革製の上着に大きな青いマントを羽織っている。訛りと踵のすり減った埃まみれの長靴から見て、俺たちと同じ旅人なのだろう。身長は俺、もとの俺より少し低いが、筋肉質で体重はおそらく同じくらいだ。顔は美男子とは言えないまでも整っている。
「なんの御用でしょう。見知らぬお方」
「見知らぬお方ときたか――姫君さま」
「急いでいるのですけれど」
振り切るように歩きはじめたが、男はついて来た。
「それなんだけどさ。このレムノスの町は初めてってわけじゃないんだよな、姫」
「心配していただくとも、案内は不用です」
「まあ、そうあからさまに警戒されると忠告するのもバカバカしいんだが」
気になるので立ち止まると男はぶつかりそうになった。汗と男の匂いがする。
「なんでしょう」
「この先は採掘師どもの集まる区画だぜ」
「知っています」
「こりゃ驚きだ。知っていて女1人で行こうというのかい」
「だめですか」
そういえばアリシアも後で2人一緒に行こうと言っていたっけ。俺は大丈夫と言って無視したけど。
「例えて言うなら、狼の群れの真ん中にまるまると太ったウサギちゃんが入っていくようなものさ」
ここはアリシアの名誉のために言っておかなくてはいかない。
「太ってはいません!」
男はあわてて言い直した。
「美味しそうなって意味さ」
それほど悪い男ではないのかもしれない。
「護身の心得もあります」
「なるほど、多少魔法の心得はあるらしいな」
男の視線は腰のベルトのスペルブック辺りをさまよっていて、なんだが恥ずかしい。
「それに名前も知らない無頼漢の方が女には危険だと思いますけれど?」
「失礼、俺はヴァイク、ヴァイク・エステルゴム、傭兵さ。今は浪人中だがな」
主を持ってこその傭兵であり、今の状態では強盗盗賊と言っているのに等しいことに気がつかないのだろうか。まあトレジャーハンターも一般人にそう尊敬はされはしないけど、犯罪者ではない。
「その無職の傭兵さんが、か弱い女になんの御用でしょう」
男も矛盾に気づいたらしい。
「腕におぼえありってことだよ。あっちへ行くなら俺を護衛に雇いなよ」
それほど危険とは思えなかった。大体、これまではアリシア1人でやっていたことなのだ。
「いりませんよ」
「予定外の出費というなら、無料オタメシ期間にしておくよ」
男は笑っているが、目は真剣だった。
「じゃあ、お願いしようかしら」
「では」
そう言うと男は腕を出した。
「これは?」
「腕をどうぞ」
「番犬なら少し離れて歩く方がいいのでは」
男は肩をすくめてこういった。
「仰せのとおりに、姫さま」
ヴァイクの指摘がある意味正しいのは認めざるを得なかった。これまでも男たちの視線にはずいぶん悩まされていたが、ここですれ違うのは一筋縄でいかぬゴロツキ共ばかりで、俺を見る目はネズミを前にした蛇って所だ。ヴァイクの腰の大剣がかろうじて彼らの暴力を封じていた。
「どうしたんだい。ここは初めてじゃないんだろう?」
「うっさいわね」
「おやおや、とんだ跳ねっ返りだ」
「ここでお上品にしているのもまずいでしょう!」
「まあ、そりゃそうだが」
男とかけあいをしているうちにリリシア行きつけのショップに着いた。俺自身が来るのは久しぶりだ。
「おや、リリシアさん。お久しぶりで」
おやじは妙な表情で俺を見た。バレたわけじゃないんだろうが。
「こんにちは、おじさん。このリストの品を揃えてくださる?」
リストはリリシアに書いてもらった。
リストを店主が確認しているとき、外で待っているように言っておいたヴァイクが入ってきた。睨みつけると肩をすくめて後ろを見る。髭面の大男が3人店内に入ってきていた。どうやら本気で俺を守る気らしい。慣れないリリシアの体でもたいていの奴に引けをとることはない自信はあるのだが。
「おや、お連れかい? なるほどね」
「姫の護衛のヴァイク・エステルゴムだよ」
「そこで知り合った人です。ケインとのコンビは続いてますよ」
「いやいや、変装してこなかった理由がわかったと思っただけさ」
「変装って」
「客のいるとこじゃ、少なくとも目深にフードを被っているだろういつも」
そういう事か、リリシアが何度も念を押した外套はあまりに暑いので宿においてきてしまった。リリシアが日焼けは嫌だからと言ったので俺は日焼け止めクリームで代用してしまった。リリシアはこんな危険なエリアにたいてい1人で……
店主は品物を選ぶと丁寧に梱包してくれた。値段も交渉する必要もないほど良心的だ。礼を言って受け取ろうとするとヴァイクが手を出す。
「それは」
「姫に持たせるわけにはいくまい」
「じゃあ、お願いするわ」
「かしこまりました。それにしても」
俺達は店主に見送られて店をでた。
「それにしても、なに?」
「ケインとか言うお前の相棒は、こんな危険な地区での買い物に女1人でさせるのかい」
「彼には彼の仕事があるし、身を守るくらいなら自分でできるもの」
「ふーん、そうかい。でも俺ならそうはしないぜ」
俺は持っていたスカーフを被り、無言で歩き続けた。
故買屋めぐりが危険なのは確かだ。しかしリリシアが1人で行く買い物にも女だけでは危険が伴うことに俺は気づいていなかった。
「姫」
悩んでいる最中、ヴァイクが声をかけてきた。
「なんなのよ」
「ご思案中、申し訳ありませんが、身を守れるってのは確かか?」
「もちろんよ。でも、なぜ今」
「待ち人来たるってね」
ヴァイクが顎をしゃくった先には店で見た三人組が薄ら笑いを浮かべて待っている。危険を察知した通行人はすでに身を隠していた。
「なにが狙いなのかしら」
「なにがって……あんたが店で出してみせたたんまり金貨の入った財布とその持ち主だろう、普通」
「ちっ!」
「おいおい、俺の夢を壊すなよ、姫」
「ごめんあそばせ」
「そうでなきゃな」
そう言いながらヴァイクは左手で鯉口を切り右手をこれ見よがしに柄にかけた。
それを見て三人組のリーダーらしい大男があざ笑うように言った。
「おい兄さん。お前は確かに色男かもしれないが、俺達にその気(け)はねえ。ねえちゃんを置いてさっさと行っちまいな」
確かに三人組と比べると華奢で勝てそうには見えない。それにしてもそんなに良い男なのかなあ。
「減らず口を叩くなら命の保証はしないぜ」
「なんだと!」
三人は口々に罵りながら剣を引っこ抜いた。俺も慌てて魔法攻撃の準備のため詠唱を始める。
ヴァイクは笑いながら大剣を抜いた。俺も相当場数を踏んではいるが、三対一は冗談ごとではない。たとえ相手が剣を習い始めたばかりのひよっこでも相当不利である。奴は相当腕が立つか、身の程知らずのバカってことだ。
結果はすぐに判明した。ヴァイクの剣は鞘を出るとすぐリーダーの太ももから出血させ戦意を奪い、直ぐ後ろにいた男の剣をはじき飛ばした。その時やっと詠唱を終えた俺の電撃が三人目を襲い、立っているのは俺とヴァイクの二人だけになる。
「見事な魔法だな、姫」
「あなたも」
「これはどうも」
ヴァイクは膝をつき止めるまもなく俺の手を取ると手背にキスをする。俺のうなじは総毛立った。
(3)
困り顔のリリシアに俺はただひたすら低姿勢のままだ。勝手な服装で出かけ、無頼漢に絡まれ、でしゃばり男に救われ、おまけにそいつが宿までついてきたのだ。
「助けていただいて本当に感謝します。ヴァイク殿」
「別にお前さんに礼を言ってもらう必要はないさ、ケイン・トレバース」
ヴァイクの後ろで俺はひたすらリリシアに頭をさげた。
「姫にはキスの許可を頂いたから俺にはそれで充分なんだ」
不審げに眉をひそめたリリシアに手の甲を指さして唇じゃないとアピールする。
リリシアの機嫌は良くない。その証拠に礼にと差し出していた金貨を引っ込めて言った。
「では無理にとは申しますまい」
「それで結構。それにあなた達2人が将来を誓っていることも了解しました」
ヴァイクに言い寄られて俺がそう告白した。俺がリリシアを好きなのは本当だし、今俺はリリシアなんだから要するに相思相愛なわけだし……何か変かも。まあいいや。とにかく当のリリシアも否定しなかったんだから。
「それは上々。旅の空でも私たち2人の幸せを祈っていただければ幸いです」
「ところが、そうはいかないんだなあ」
「どういう事です」
とリリシア。
「あんたの姫に対する扱いはなっちゃいねえ。あんな場所に女1人でやるなんざぁ、男の風上にも置けない奴だ」
俺は身を小さくした。何しろこれまでリリシアの言葉に甘えて面倒な買出しをすべて任せてきたのは俺なのだ。
「だとすれば、あなたはどうされると」
「惚れたリリシアちゃんのために一肌脱ごうってのさ」
「ですから私たち2人は」
「妙な下心なく姫を守るナイト(騎士)になってやろうってんだ。このヴァイク様が」
「なんですって!」
と、これは俺。妙に女が板についてきた。
(おしまい)