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悪魔を呼んでみよう (10)
目の前の少女、「悪魔」は意地悪そうな笑みを浮かべながらそう言うと、右手の指を弾いた。
まるでそれに合わせるかのように。俺の頭の中に「あの時」の情景がフラッシュバックした。
俺は圧倒されていた。有り得ないのに目の前に出現した「有り得ない」存在に。
全身を包む夜の闇より濃い黒に彩られた体毛。血よりも紅い瞳、そして尾の代わりに生えている七色の大蛇。
小さい頃に動物園で見た狼によく似た「それ」は、まるで睨みつけるかのように俺を凝視している。
「「情けない。久方振り(ひさかたぶり)に呼ばれこの次元に現姿(げんし)してみれば、召喚したのは私の姿を見ただけで腰を抜かす存在だとは。」」
微妙にぶれた全く同じ声、それも深みを帯びた壮年の男性を思わせる渋い声が辺りに響き、俺は思わず辺りを見合わした。
・・・が、部屋の中にはどこにも俺以外の人間は居ない。部屋を抜ける為のドアの向こう側からも誰かが立つ気配は感じられない。そしてこの部屋に俺以外にいるのは1匹(?)の狼みたいな生き物のみ・・・。
俺は辺りを見回してから狼モドキの方に顔の向きを戻した。その意味を汲み取るかのように、狼モドキは頭を縦に振る。
「「そうだ。今の言葉、まさしく私が発したのに相違ない。」」
再び微妙にぶれた声が辺りに響く。その時になってようやく俺は何故声が微妙にぶれているのかに気がついた。
狼モドキが声を出しているのは分かったが、狼の頭の口だけでなく尾の様に生えている蛇の口も同時に開いていた。つまり、獣の物としか思えない二つの口から全く同じ声で同じ内容の言葉を話していたのだ。
再び愕然とする俺。どうやら俺は本当に「悪魔」と呼んでもいい存在を召喚してしまったらしい。尾が蛇で喋る狼など、冷静かつ普通に考えてもあり得ない存在だ。
「「恐らくだが貴殿は私を興味本位で呼び出したのか?全く酔狂な事をする。」」
「な、何だってそんな事が・・・。」
半ば呆然としながらの俺の反論に狼モドキは狼の方の頭の口元をまるで人間のように歪めると、「クックック」と笑った。
「「理由は・・・」」
「おっと。2つの口で話しては聞き取りづらいか。何、簡単な事だ。強い願望を持って私を召喚したのだとしたら、例え異形なモノの現れたとしても今の貴殿の様に腰を抜かすような事はありえんからな。」
蛇の頭の口元が動きを止め、狼の頭の方の口だけが動くのを続けた。その為か微妙にだがぶれていて多少聞き取り難かった言葉のぶれは無くなり、明瞭な言葉が辺りに響いた。
そしてその時点になってようやく俺は自分が床にへたり込んでいる事に気がついた。端から見れば情けないことこの上ない格好であるのではないかな、と頭の中では妙な事だが冷静にツッコミを入れていたりする。
何とか気を奮い立たせて立ち上がると、俺は悪魔を見下ろした。悪魔はの方が悪魔で律儀に俺の行動に合わせて顔を上の方に向けてきた。
「重ねて尋ねるが、私を召喚したのはいいが特に用はないのだな?」
「あ、ああ。悪魔を召喚する方法が書いてある本に興味を持ったので試しにやってみたんだが・・・。」
「なるほど。道理でこの『私』が呼び出されたのかと思ったのだが。近頃お前たちの世界で悪魔を召喚する術として出回っている『あくプロ』を使った方法ではなかったのか。」
「『あくプロ』?何だそれは??」
「知らぬのか?お前たちの世界で近年普及しているWeb上で取得できるフリーソフトの『悪魔召喚プログラム』の事だ。略して『あくプロ』って物らしいな。」
何だそりゃ?俺は頭を思わず傾げていた。
「『あくプロ』というのを使えばマウスボタンをクリックするだけで、望みの目的を叶える事が出来る悪魔を自動的に検索して呼びつける事ができるらしい。私は使った事がないのでよく知らないがな。」
「ほー。」
「もっともあくプロでは『私』を召喚する事は出来ないがな。『あくプロで召喚する私』と同名の悪魔だが『今ここにいる私』とは別次元の存在だ。向こうは4次元の存在だとしたら『私』は20次元の存在になるな。」
「何かよく分からないが、『あくプロ』ってので呼び出される悪魔と今ここにいるお前という悪魔とはどう違うんだ?」
「『あくプロで召喚された私』と比べると『今此処にいる私』はこの世界に対する干渉能力がはるかに上だ。」
「?? 言っている意味がよく分からないが・・・。」
何だか話の内容がかなり突飛になってきた為、俺は困惑し始めてきていた。頭の角度が首を始点にして30度くらいまで傾いた。
そうすると狼モドキはため息をついた。感じからして「物覚えが悪い子供に手を焼く家庭教師」を見ているかのようだ。まあ何となくだが。
「具体的に言うと『あくプロの私』はこの世界に関する理(ことわり)の一部を変更する事しか出来ない。例えば容姿を変えたり記憶を改竄したりするという願いを叶えられる事はできるが、その人物が生まれてきたという概念そのものを変える事ができない。」
「ふむ。」
「対して『私』はこの世界のありとあらゆる理に干渉する事が出来る。対象となる生物が元々生まれてこなかった事にも、そして人間が哺乳類ではなく爬虫類から進化した生物に変える事も、そしてこの世界そのものが実は存在していなかった事にする事も『私』なら可能だ。」
俺は目の前にいる狼モドキ・・・いやさ「悪魔」の台詞を聞いて、あまりの衝撃に絶句していた。
確かにあの本には召喚する存在は「万能なる者」、「この世界におけるありとあらゆる事象を変える存在」と書かれていた。
勿論目の前の「悪魔」が嘘八百を言っているだけかもしれない。だがこの時の俺は何故か悪魔が言っている内容が事実だと信じていた。後で思った事なのだが、もしかすると俺は「奴の言っている言葉は全て真実である」といつの間にか考え方を目の前の悪魔によって歪められていたのではないのだろうか。そう考えるのが妥当と思えるほど、荒唐無稽な話だったからだ。
「で、どうするのだ。貴殿は。」
「へ?」
「折角、この世のそのものを改変できる能力を持つ者を召喚したんだ。どんな願いでも叶えれるぞ。言ってみるがいい。」
「どんな・・・って例えばどんな?」
「そうだな。その気があればだが、俗に言う中世ファンタジーの世界の概念を現実の世界にそのまま反映する事だって可能だ。」
「・・・・・。」
言葉を失って絶句する俺。いま悪魔が言った事はその様な事を願う人がいるだろうが、絶対に出来っこない事だ。しかし目の前の悪魔はその様な事を実現する事が出来ると言っているのだ。
魔法やファンタジーが現実に存在する世界。興味がないと言えば嘘になるだろう。だが強く興味を持つかと言うと、俺自身あまり興味は強くは持っていないのは確かだ。
と、言うよりも俺は今の人生そのものに興味を持てないでいた。何もかもがくだらない、興味が持てない、楽しめない。起きて飯を食って、学校行ってつまらない授業を受けて、帰って飯を食ってそして寝る。悲しいと思えない位にいつも通りの毎日。女をひっかっけ(勿論合意の上で)一緒に寝ても大して面白いと思わない。全てが灰色に彩られた、そんな俺の日常。
親友と言える1人の男が居なかったら、今頃俺は絶望して自ら死を選んでいるかも知れない、感情の起伏が上がりも下がりもしない、つまらない日常。それが今の俺の人生感だ。
そこまで考えて虚しさのあまり心の中でため息をついた時、頭の中で我ながら嫌らしい考えが唐突に浮かんだ。
そうだ、「何でも叶えてくれる」と言うのならば、俺に刺激的な新しい人生を渡してもらおうじゃないか。この際だ、敢えて具体的に内容を言わずに悪魔さん本人に俺が納得する人生を考えてもらおうじゃないか。「何でも叶えてくれる」ならそこまで融通してくれる筈だろう。
「それじゃあだ、俺に新しい人生を寄越せ。」
我ながら捨て鉢な言い方だが、「何でも叶えてくれる」んだ、これで充分だろう。まあ本音を言えば悪魔を困らせるのが目的な発言だし。
俺の言葉を聞いて悪魔は困った顔をする・・・かと思えば特に表情を変える事なく、ただ単に頭を少し傾けた状態にするだけであった。
「まあいいが。一応は聞いておくが、どんな人生にしたいんだい?」
「あ?ああ、まあ今のとは違う人生にしたいんだ。」
どうって事ないよっ、て感じで返してきた悪魔の問いかけに、何故か俺は慌てて答えた。
その俺の答えに「フム」と一言つくと、悪魔は俺の顔を値踏みするかの様にじっと見つめてきた。その行為に俺は思わず喉の奥で唾を飲み込んでいた。もしかすると、こいつは俺の考えなんて完全に見通しているのでは無いのだろうか。
「何故か・・・は敢えて聞かない。つまり今の生き方とは全く違う、刺激的な生活をしたいと言うのだね?」
「ああ、そうだ。いや俺としてはさ、いま現在の状況に・・・」
再びかけられた悪魔の問いに何気なく答えると、まるで言い訳を造ろうように俺は思いつくまま不平不満を垂れ流した。
悪魔を困らせるためという目的で言った、本音を言うと叶えてもらえなくてもいいと考えて言った願い事ではあったが、心の中のどこかで今の俺の生き方を変えて欲しいと考えているのも確かだ。
だからこそだろうか。俺の口からは不平不満の内容を意味する言葉が延々と流れ続けていた。
そんな俺の様子を見ていた悪魔は唐突に表情を変えた。顔文字で表すと「(´∀`)」な感じの顔だ。狼の顔でまあよくそんな表情が浮かべたものだと思うが、実際に浮かべたのだから間違いはない。その表情の珍妙さは、驚いて思わず俺は言葉を止めてしまった位だ。
「いいだろう。与えてやろうじゃないか。今とは全く異なる、新しい人生をな。」
悪魔がそう言った直後に急に眠気が襲ってきた。急に、そしてあまりに強すぎる眠気に俺の意識は瞬く間に暗闇に落ちていった。
その間にも悪魔は何かを言っている気がする。
「ま、具体案もなかった事だし。手っ取り早く性別を変えてやろう。ああ、あとおまけに容姿もかなり変えてみようかな、大半の男に好まれそうな。ついでにその状況になっても周りが驚かない環境に世界を作り変えてやるよ。そうすれば、貴殿自身も気がついていない『本当に叶えたい願い』も叶えられるかもしれないしな・・・。」

キャライラスト.神山 響
<つづく>
女の子になる薬、1000円から
訳ありだから、こんなに安い
11月文庫 チェックリスト
11/10 アスキー・メディアワークス発行/角川グループパブリッシング発売 電撃文庫 なないろリバーシブル 麻宮楓 \578
11/10 アスキー・メディアワークス発行/角川グループパブリッシング発売 電撃文庫 クロノ×セクス×コンプレックス(3) 壁井ユカコ \578
11/18 講談社 講談社+α文庫 低リスク「熟年起業」のすすめ 津田倫男 \
11/22 フランス書院 フランス書院文庫 操られて… 四人の女教師(仮) 御堂乱 \730
11/25 アスキー・メディアワークス発行/角川グループパブリッシング発売 メディアワークス文庫 めたもる。 日比生典成 \578
11/25 メディアファクトリー MF文庫J Xの魔王(3) 伊都工平 \609
11/25 メディアファクトリー MF文庫J ツイてない!(2) 三門鉄狼 \609
11/下 キルタイムコミュニケーション 二次元ゲーム文庫 処女はお姉さまに恋してる~2人のエルダー~騎士の君のラブロマンス 舞麗辞 \662
悪魔を呼んでみよう (9)
人間、慣れとは恐ろしい物で、 「絶対にみにつく事はない」と思っていた『女物下着の装着』という行為が実にスムーズに出きる様になってしまった。
この女性物の下着という代物。意地でも身につけたくないと思っていたのだが、わずか2日にして女性の身体にとっては不可欠な物だという事に嫌というほど身を持って知ってしまう事になるとは。
女性物の下着と言われたら殆どの人がまず頭に浮かぶであろう品物であろうと思われるブラジャー。俗に言う『つるぺた』ならいらないのかも知れないが、未だによく分からないCカップとかいう大きさまで膨らんだ俺の胸にはないと大変困る事になってしまう。
まず始めに揺れる。これがもうブインブインと音を立てるんではないかと思うくらい、おもいっきり揺れる。しかも激しく揺れると何故か全身の方がそっちの揺れに釣られてしまう位、激しいのだ。
そしてその揺れによる一番の弊害は他人の視線だ。特に男からの。男だった俺からすれば気持ちは分からなくない。しかしあのへばりつくとも形容して言いと思う、ねっとりとした気持ち悪い視線は耐えられる物じゃないぞ?
しかし最も困るのが・・・擦れるんだ。その、首が?しかもちょっと走るとかといった行為をすると・・・硬くなるんだ。その、く、首が??
んでもってしばらく擦れ続けると、何だか気持ちよくなってきて、そんでもって気が付くと腰に力が入らなくなって、そんでもっていつの間にか・・・。ゴメン、それ以上は言いたくない。
そんでもって次点としてあげられるんじゃないかなーと思っているのがパンツことショーツ。昔の人いわくパンティーらしいが。親父はそう言ってたし。
今まで俺が履いていたのは俗に言うパンツ系はトランクスとかビガーパンツとかだ。ところがこのパンツを履くといまの俺にはこれまた擦れる。しかもこっちはヒリヒリと痛いだけできもちよ・・・ゴホンゴホン。
そんな訳で今の俺は女性用の下着を仕方が無いから使用している。こればかりはどうしようもない。しかしいくらアンダーが女性物になったからといって俺の心の中では未だに自分は『男』だと考えている。その為、俺の部屋の内装は女変症にかかる前と同じままだし、着ている部屋着も以前と同じままだ。外に出る時もズボンを履いている様にしている。
え?学校ではブレザーを着ているじゃないかだって?しょ、しょうがないだろ。学校に行く時の制服は女性用じゃないと保護対象にしてもらえないだからさっ!
保護対象制度についての説明は省く。 まあ性別が強制的に変わってしまった元男性に対する生活保護とか精神ケアとかそういった物を国が保証するって事らしい。実際な話、俺も完全には理解していない。
話の流れを修正しよう。
俺の身体は確かに女性に変わったが、俺の心の中では自分はまだ男だと思っている。生まれてこの方16年、男として生きてきた。それがいきなり女として生きろと言われても納得がいくものではない。
つうか此処まで姿が変わると自分の意識だけが別人の身体に潜り込んだのではないかと疑いたくなる。そう考えてしまう位、元の俺の身体と今の俺の身体の共通点が無い。
とは言え、この身体の所有権は俺にある。よってこの身体をどの様にするかは俺の判断で決まる事になる。
そんな訳で現在俺は身体を男に戻す手段を深夜遅くまでネットで調べるのが日課になっていた。英語の資料とかもしっかりと目を通している。もっとも簡単な英文なら読めるが専門用語満載のは何を書いてあるのか全く理解できないでいるのだが。
そしてここ数日の調査の結果分かった事は、現状では『元の身体に戻る』事はほぼ不可能だという事だった。まあ女変症による変態が終わった時点で受けたレクチャーでもそう言われていたのだが。そういった意味では収穫は特にないとも言ってもいい。
もっとも『男になる』事は出来なくはないらしい。整形手術やホルモン注射などといった性転換手術による手段を講じればだが。それをしても女性の身体を男性のように見せかける程度の効果しかなく、女変症を患う前の元の肉体になる事は無理らしい。
実を言うと、女変症にかかった患者が完全に変態を終えた後も戸籍の性別は男性のままであったりする。理由は上記にあげた様に手術を受けて肉体の男性化をする事が許可されているからだ。ちなみにこの手術の負担金も国がもってもらえる事になっているらしい。
しかし女変症を患った元男性の9割は戸籍の性別を女性に変えてしまう。理由は原型を留めないほど肉体が変貌してしまった為、男性化手術を受けても元の姿に戻れない事に絶望し、いっその事とばかりに女性である事を『受け入れてしまう』からだ。
だが俺には元に戻る事を諦めていなかった。自分の元の姿に執着があったし、何より自分が『女』である事が受け入れられないからだ。
それに・・・実はここまで元の姿にに戻るのに拘るのはもう1つ理由がある。それは女変症という病気そのものの存在を俺は認めていない為だ。
確かに3年ほど前から女変症という病気が出現した事を知識として俺の頭の中では存在している。
だが、俺には何故かつい先日までこのような病気が無かったと思えてしょうがないのだ。いや、ほぼ確信していると言ってもいい。このような病気など存在していなかったと。
今の俺の姿は間違いなく女性の身体だ。股間の棒はないし、胸だって膨らんでいる。実際には見てないが医者からは体内に子宮が出来ている事も告げられている。
しかし俺には自分がこの姿になっているにも関わらず現実味が全く沸いてこない。まるでどこかで異様に精巧に作られたヴァーチャルゲームでもやっている様な気がしてならないのだ。
現実に女変症という病気が世界の至る所で発症している。その事は皆が認めている事実なのだが、俺だけが「このような病気は存在しない」という考えをどうしても拭いきれないでいるのだ。
俺が妙な妄想に犯されているのか?それとも両親や義一を含めた俺以外の人全員が騙されているのだろうか?
俺は自分自身の考えの所為で悶々とした日々を過ごさなくてはならないのであった。
夜の12時を跨ごうとする時間になり、俺はパソコンの電源を落とした。つい先日までネットで見ていたのは基本的にファッションやら今の流行について語るホームページだったのが、今では病気に関する論文をまとめたサイト(ただし女変症に関する物だけだが)を見ることになるとは、人生何があるのかよく分からない。
男だった時は夜更かしを簡単に出来たのだが、この姿になったら低血圧の所為か目が覚めても30分以上は起き上がれないので0時前には寝るようにしている。何が不満なのか、この身体だと充分な睡眠を取らないと体調が悪くなってしょうがないし。
椅子から立ち上がり、頭を掻きつつベットに向かう。その僅かな道中、ふと下に目線が落ちた。
するとベットの下から何か黒い物が僅かに顔を覗かせている事に気がついた。今までは下に目線がいくと胸に生えている二つばかり存在しているでかい球体が目の中に飛び込んでくるので、極力下を見ないようにしていた為に気がつかなかったようだ・・・と思うんだが。何故今まで気がつかなかったのかは自分でも不思議だ。
屈みこんでその黒い物を拾ってみると、それは真っ黒な表紙の一冊の本だった。表紙には「A SuMMonS」と灰色で書かれているだけで後は取り立てて特徴をあげるものがない、実にシンプルな装丁の本だ。
何だっけこの本・・・と思い返してみると、徐々にだがこの本について思い出してきた。
そうだ。この本は2週間ほど前に義一に古本屋に付き添いをしたお礼だと言う理由で買って貰った本だ。第一印象の時点で妙に気になっていた本だったので、安い事もあり「折角だし」と思って購入してもらったんだ。
この本の内容は確か・・・。「悪魔」、特に「悪魔の召喚儀式」についてやたらと詳しく書かれていた、気がする。悪魔とはどんな存在で、その悪魔をどうすれば召喚できるか、その為に必要な条件となる資材や時間や環境などetc、etc。それこそもう、ここまで書くかと思うくらい異様に詳しく。
そうそう。胡散臭い事この上ない内容だったのが妙に説得力があったので、試しにやってみたんだっけ。深夜0時丁度に儀式をそしたら確か・・・
そうだ、あの時。俺の目の前に「悪魔」が現れたんだ。
そう思った瞬間。
「あーあ。貴殿、思い出しちゃったか。」
まさしく不意打ちと言わざる得ないタイミングで。俺の背後から聞いたことがない「女の子」の声が流れてきた。
慌てて振り向くとさっきまで俺がネットを閲覧する為に使用していたノートPCが置いてある机の上に、1人の少女が腰掛けていた。
年齢は15歳前後・・・くらいだろうか?身長の割にはどことなく「ペッタンコ」という表現をしたくなるくらい身体に凹凸が見ることが出来ない。
そんな事が分かるくらい目の前の少女の身体が描く曲線ははっきりと分かる姿だった。いや、この少女は服を着ていないのだ。
胸元に申し訳程度の、股間にはショーツが、そして足はストッキングの様に真っ黒な物が覆っている。それ以外は少女は惜しげもなく肌色を晒していた。必要最低限な下着を着けただけのほとんど裸体と言ってもいい格好だ。
・・・違う。真っ黒な物は布ではない。それは真っ黒な、いや漆黒な色をした体毛だ。絵の具の黒色よりも更に濃い黒い毛が、少女の秘部をまるで下着を身に着けるているかの如く身体から生えている。
10歳の幼女を思わせる幼い顔立ちをした目の前の少女は、意地悪そうな笑みを浮かべながら血の色よりも紅い目で俺を面白そうに見つめている。そしておかっぱを思わせる髪型を形作っている髪の毛の色も漆黒の黒。そして髪の上は2箇所。鬼のように少し尖っている。
いや、違う。あれは・・・犬の耳?そうだ。少女の頭から犬の様な耳が生えている!
そして何よりも少女の異様性を際出しているのは全身に巻きつく大蛇。美しくも淫靡に濡れた色を放つ七色の蛇は、全身で舐め回す様に尾は少女の尻に絡みつき、そして胴体を上半身を絡みつけ、頭を少女の横に並べるかのように俺の方を向けると少女と同じ色をした瞳で俺の方を見ている。
しかし、ここでも俺は勘違いしている事に気がついた。蛇の尾は少女の尻に絡みついているのではない。少女の尻からまるで犬の尾っぽの様に蛇が生えているんだ!!
いつの間にか俺の目の前にいる異常性と異様性、そして異形性を含んだ少女に俺は圧倒され声をかける事が出来なかった。
混乱する俺の頭の中で、何故か1つだけ冷静な思考が流れていた。「俺はこいつを知っている。」という考えが。
そうだ。俺は知っている。こいつの漆黒の体毛。深紅の瞳。尾のように生えている七色の大蛇。そして何もしていないにも関わらず圧倒されるこいつの威圧感・・・・!!
・・・・!!思い出した。そうだ、姿形は違うけど、こいつは・・・こいつは・・・!!
「お前は、あの時、俺が呼び出した!」
「そう。私はあの時にお前が召喚した存在、悪魔だよ。」
俺の叫びに、目の前の少女、「悪魔」は不適に笑った。
童顔と言えるその顔には全く似合わない筈の表情にも関わらず、その笑みは少女に実に似合っていた・・・。
<つづく>
日本経済 このままでは預金封鎖になってしまう
処方箋も小宮先生にしては意外と過激で面白かったです。
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11月コミック チェックリスト
講談社 蹴球少女 3 若宮 弘明
白泉社 パタリロ! 85 魔夜 峰央
11/9
講談社 セレスティアルクローズ 1 塩野 干支郎次
少年画報社 ブロッケンブラッド VI 塩野 干支郎次
新潮社 Unな彼女 3(完) 楠 桂
11/12
講談社 ねこしつじ 1 桑田 乃梨子
11/17
講談社 秘身譚 1 伊藤 真美
竹書房 ムダヅモ無き改革 5 大和田 秀樹
11/19
コアマガジン (成)あねかん おかの はじめ
11/22
講談社 少年式少女 2 和田 依子
少年画報社 マンガで分かる心療内科 2 ソウ
スクウェア・エニックス プラナス・ガール 3 松本 トモキ
スクウェア・エニックス フダンシズム-腐男子主義- 7(完) もりしげ
11/25
一迅社 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー コミックアンソロジー 2 アンソロジー
エンターブレイン発行/角川グループパブリッシング発売 血まみれスケバンチェーンソー 2 三家 本礼
コアマガジン モンスターマスター 高城 リョウ
スクウェア・エニックス ニコイチ 8 金田一 蓮十郎
富士美出版 (成)家族の値段 猫玄
11/26
角川書店発行/角川グループパブリッシング発売 乙女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 1 ういらあくる
11/27
アスキー・メディアワークス発行/角川グループパブリッシング発売 よつばと! 10 あずま きよひこ
アスキー・メディアワークス発行/角川グループパブリッシング発売 グリード・パケット∞ 4 榎宮 祐
光彩書房 オトコノ娘スカート 宮下 キツネ 他
11/30
小学館 闇金ウシジマくん 20 真鍋 昌平
小学館 ゆうきまさみ年代記 ゆうき まさみ
小学館 鉄腕バーディー EVOLUTION 6 ゆうき まさみ
11/上
サニー出版 放課後男子。 家鴨
11/中
東京漫画社 女装男子アンソロジー Berry アンソロジー
11/下
キルタイムコミュニケーション (成)なりきりツンドレイ(仮) どわるこふ
キルタイムコミュニケーション 絶対不発アトミックガール 1 中山 ユキジ
久保書店 (成)精霊特捜フェアリィセイバーW痴女志願 上藤 政樹
悪魔を呼んでみよう (8)
「いつも通りにしてくれて。」
「・・・どういう意味だ?」
その時、私には『石塚』が何を言いたいのかまるで分からなかった。
「いつも通りに、お前だけがいつも通りに接してくれた。」
「そうなのか?」
私にしては珍しく、『相手に問いかける会話』が続く。
「親父もお袋も、家に帰ってきた俺をまるで腫れ物みたいに大事に扱うんだ。『けんちゃん、大丈夫?』とか『さとる、辛い事があったらいつでも言えよ』とかさ。いつも会話なんて飯の時くらいしかしないのに。」
「そうか。」
「学校の皆も、俺を珍しいモノを見るみたいな目で見てさ。」
私はその時、僅かに腕が震えている事に気がついた。『石塚』は微かに、だが確かに全身を震わせている所為であった。そんな『彼女』を私は黙って見つめ続けた。
「今まで俺の事を目の仇のように見ていた男が『可愛くなった石塚。どうだ、俺とつき合わない?』とか慣れ慣れしく言ってきたり、つい先日までつき合ってた女は『やだー、池ちゃんカワイー。こんなになるなんて、信じられないー』ってからかってくるし。」
「・・・そうか。」
「そういったの見ちゃうとさ、俺、変わっちまったんだなって。嫌でも意識しちまってさ。」
「・・・そうか・・・。」
「実は俺、人生面白くねえとか思ってた。いつも何かすげえ変化とか起きねえかなとか思ってたよ。」
不意に『石塚』の顔が上を向いた。私に向き合ったその目には『石塚』が男の時には見た事がなかった物が、『涙』が浮かんでいた
「でも、こんな全く別の姿に変わりたくなかった!女になんか、『女』になんかなりたくなかった!!」
「いけ・・・『さとる』。」
「おっぱいはある!チンチンはない!!身体は小さいし、少し走ると胸は揺れるしすぐに息があがる!声なんかキンキンに高いし、髪は長い!顔は、顔は全然『俺』のじゃなくなっている!」
「おい、『さとる』。」
「それに、それに!昔喧嘩して出来た古傷が全て綺麗さっぱり無くなっているんだ。それどころか、気になっていた場所にあった黒子とかそういったのも全て無くなって、それとは別の場所に黒子とか出来ているんだ!!」
そこまで聞いて私は内心驚愕していた。まさかそんな処まで変わっているとは思わなかったからだ。それでは本当の意味で『別人の身体』ではないか。
「俺、俺・・・!『誰』なんだよ?顔も手も足も胸も股も傷も黒子も、全部『俺』じゃない!『石塚さとる』じゃない!!」
「『さとる』!!」
文字通り気持ちが乱れた少女のように取り乱す『石塚』・・・いや『さとる』に私は珍しく語気を強めて声をかけた。
すると『さとる』はビクリと形容するのが当てはまるかのように動きを止めた。その反動か、目にたまっていた涙が一筋、頬を流れていく。
少しの間、私と『さとる』は動く事を止めていた。否、『さとる』は声を殺してはいるが幼子の様に涙を流し泣いていた。
私と『さとる』はあまり長いとは言えないがそこそこの期間の馴れ合いのある仲だ。そんな私ではあるが、『さとる』が悲しくて涙を流して泣いている姿を見るのは始めてであった。
『やはり、無理をしていたのだな。』
男だった時は見たこともないあまりにも儚げな『さとる』の姿を見ていて、私は口には出さずにそう思った。
考えてみれば帰路に着く間、『さとる』は自分の身の上の話ばかりしていた。それは私にかまってもらいたいという内情が表れていた為ではないだろうか。
友人のそういった心情をを汲み取れないとは、やはり私は「壊れている」のだろう、な。
しばらく泣き続けた『さとる』であったが、ようやく泣き止むと私の顔を見上げてきた。私の腕を掴む少し強くなる。
「でも。義一だけがいつも通りに俺に接してくれたんだ。いつも通りに俺が話しかけたら、いつも通りに答えてくれて。」
「そうか。」
「そうしていると、俺は『石塚さとる』何だなって思えてきて。そんな事なのに凄く嬉しくて、さ。」
そして『さとる』は私に笑いかけてきた。帰路に着いていた時よりもずっと嬉しそうな、ずっと晴れやかな笑顔で。
「そう、か。」
私は内心の照れを隠すのに全力を注がなくてはならなかった。思わず顔を逸らしたくもなったが、それも必死で我慢した。
「なあ、義一。お願いがあるんだ。」
「何だ?」
「これからも俺の友達でいてくれないか?そしていつも通りに、昔の俺と時と同じように接してくれないか?」
『さとる』は真剣な表情で私を見つめている。縋る(すがる)ような、懇願するような目で私をじっと見つめている。まるで私しか頼る者がないかのような目で。
『やめてくれ。』
私は内心そう叫んでいた。そんな頼りきるような、哀願するような、私に依存するような目で見られると
オ前 ヲ ● ● ● ● ナル
思わず出てきてしまった『本性』に、私は反射的に頭を横に振っていた。何ておぞましい考えを。私は自己嫌悪を感じていた。
「駄目、なのか?」
悲痛な少女の声にハッとなり、目の前の『少女』の方を見た。『少女』の顔には深い絶望が色濃く浮かんでいた。今の私の行動を拒否と受け取ってしまったようだ。違うのだが、頭を横に振るという行動を見たらそうとしか取りようがないのも確かだ。
「違うよ。少しを気持ちを落ち着かせていただけさ。」
「そう、なのか・・・?」
「大丈夫だ。私はこれからもお前の・・・『さとる』の友人だ。」
「本当に?」
再び『さとる』は私を哀願するような目で見つめてきた。先ほどと違うのは怯えとも取れる恐怖心が見える事だろうか。
私はここで苦笑いでもすればいいのだろうかと考えたが、『私のキャラクター』にそぐわないので敢えて無表情のまま言葉を続けた。少なくとも『さとる』にとっては私の『地』はそちらだろうと推測して、だ。
「本当だ。何だったら誓約書でも書こうか?」
「いや、そこまでしなくてもいいよ・・・。」
私の言葉に一瞬顔を曇らせたが、次の瞬間には『さとる』は満面に笑みを浮かべていた。
「うん・・・うん!ありがとう!!」
「どういたしまして。」
笑みを浮かべながら私の腕をブンブン振り回す『さとる』。とても嬉しそうな、眩しすぎる程の笑顔を私に向ける『さとる』。
今までのニヒルでナルシストで、そしてどこかいつも何事に関しても楽しそうではなかった男の時の『さとる』からは想像できない光景だ。
これではまるで・・・。
「それじゃあ、家に戻るね。」
「ああ、じゃあな。」
しばらく私の腕を振り続けた後。『さとる』は腕を離すと踵(きびす)を返して自宅に向かった。私も家路につく為に歩み始めた。
「あのさ。」
数メートルほど歩くと背後から『さとる』が声をかけてきた。振り返ると玄関の前で『さとる』は私の方を向いていた。その顔には不安げな、否、怯えているような表情が浮かんでいる。
気が向いた者ならば「どうした」位は声をかけるべきかもしれないが、私からは声を敢えてかけず『さとる』の言葉を待った。『私のキャラクター』に沿った行動を私は演じ続けた。
「明日も、一緒に帰ってくれるかな?できれば登校も一緒に。」
私は無表情を装ったまま、内心でため息をついた。何をわざわざ当たり前の事を。
「分かった。明日も登下校時も一緒に歩こう。」
私の返答に『さとる』は笑みを再び浮かべると、「絶対だよ!」と言いながら家の中に入っていった。
『さとる』の姿が視界から完全に消えた事を確認してから、私は家路につく為に振り返り。
そして始めて、ため息をついていた。私としては珍しい行為だ。
ふと気になり『さとる』がしがみついていた腕を見る。
いつもと変わらない制服を着た腕。だがその腕に僅かに私の体温とは異なる温もりを感じるのは気のせいだろうか?
『さとる』と一緒に学校から出てから会話しながら歩いている間、私は目線こそ違うがその行動に私の知っている『石塚さとる』を感じる事ができた。
だが、ほんの数分前からの『さとる』は、私が知っている『石塚さとる』ではなかった。全く見も知らぬ1人の少女が私の目の前に立っていた。
あの『さとる』の行動は女性化した事による精神的不安定さが生み出したものだったのだろうか?それとも周りの見る目が変わってしまったことによる情緒不安が生み出したものなのだろうか?
それとも、女性化した事によって『さとる』の内面そのものが変化し始めている・・・?
「別人、か。」
思わず口に出た独り言。それが私の本音であった。
恐らく『さとる』は内面も変わっていくだろう。男から女へと。自分が望む、望まない関係なく。
彼は・・・いや『彼女』はいつも通りに接する私を望んでいた。
しかし変わった『さとる』は、果たしていつも通りの私の行動をどう思うだろうか?
今は私は今までの通りの私を『演じる』としよう。
しかし、それでいいのだろうか。『さとる』はこれから変わっていく。今までの私が知っている『さとる』ではなく、私の知らない『さとる』へと。
その時が来ても、私はそのままで良いのだろうか?
もしかすると私も変わるのが必要な時期が来るのかもしれない。漠然とだが、私は内心でそんな事を考えていた。
<つづく>
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悪魔を呼んでみよう (7)
私は学校のホームルームが終ったのを確認すると、鞄の中に教材と文房具をしまい込み始めた。
机の中を空っぽにして帰るのは全校生徒の中でもおそらく私だけだろうが、これはまあ性分だから仕方が無い。それにその日の復習をする為には教材は家あった方が良いからでもある。さとる曰く「家で復習などするなんて、絶滅危惧種だなお前は」らしい。
「本当に珍しいよね、お前って。マジで絶滅危惧種に認定されるよ?」
前の席に座る人物は振り向きざまにそのような事を言うと「にやり」という表現があいそうな表情を浮かべた顔で私に笑いかける。
「まあ習慣だからな。」
事も無げに私は目の前の人物に話しかけると立ち上がった。それにつられた様に前の席に座っていた人物も立ち上がる。そして私は目の前の人物を『見下ろした』。
「ははっ、まさかお前に見下ろされる事になろうとはな。」
私を『見上げ』ているその『少女』は自嘲気味に苦笑を浮かべた。
この少女こそ、女変症によって変貌してしまった『石塚さとる』その人なのであった。
『少女』の身長は160cmを少し下回っているくらいか。髪は腰に届くほど長く、癖毛の気があるのか軽くカールがかかっている。色は男の時と同じ、少しくすんだ黄緑色であり、そこだけが彼女が「石塚さとるであった」事を主張していた。
運動部の助っ人をしていた為に少々日焼けしていた肌の色は、いまや白人に匹敵するのではないかと思えるくらいに白くなっている。
比較的筋肉質でありまっ平らだった胸は、自己主張しているかのように盛り上がっていた。「巨」の頭文字は付かないかもしれないが、今までの短い人生において出合った同年代の女性の中では大きめの方に位置するだろう。まあ男の時に比べて胸囲は同じくらいの大きさだろうか。
顔の変化は劇的であった。細目の部類に入っていたはずの瞳を含めた目はかなり大きくなり、鋭く高く尖っていた鼻は低く、鋭角な顎の筋は丸くなっている。にこやかな笑みを湛えるその顔は「りりしい男子の顔」ではなく「愛らしい少女の顔」であった。それも、そんじょそこらのアイドルなら裸足で逃げ出すのではないかと私でも思ってしまうほどの『美少女』の顔だ。
そしてワザと着崩した男子用の制服ではなく紺色のブレザー、すなわち女子用の制服に身に着けていた。
結論から言うと。
毛髪の色と赤みがかった目の色以外の身長体重服装体型そして「性別」といった見た目という要素が、目の前の『少女』と『石塚さとる』という男性とが一致する物を見いだす事が私には出来なかった。
「いや、本当に困ったもんだ。入院した次の日から、身体中が痛いの何の。しかも凄い勢いで力が抜けていくし。」
「ふむ。」
「それに全身がすぐ垢だらけになってたよ。汚いったらありゃしない。」
「なるほど。」
「まあもっとも麻酔でずっと寝てたしな。意識が完全に戻ったときは、ベットの上に文字通り積もるほど垢がたまってたし、汗でベットがぐしょぐしょになってたよ。」
「そうなのか。」
私と『石塚』はいつも通りに連れ立って帰宅途についていた。
いつも通りに『石塚』が私に話しかけ、私はいつも通りに端的な言葉のみで返答する。
やり取りは「いつも通り」だ。だがいつもは上から発せられる少し渋めが混じっていた声が、少し高めで柔らかい感覚が混じる声が下から発せられている点が大きく異なっていた。
その点に関してのみ言えば、私は違和感を感じられずには居られなかった。私の横を歩いているのが『友人:石塚さとるという男子』ではなく『向こうが友人だと認識してくれている:石塚さとるという名の女子』だとどうしても思えてしょうがないのだ。
話が少し変わるが、実は女変症は『死病』でもある。
発症してから2日目までは「何となく外見が変化したかな?」程度の外見上の変化は見られず、負担も少ない。この時期を『潜伏期間』と呼ばれているらしい。
ところが3日目から外見および内面が本格的かつ劇的に変化しだす。肉体の縮小、髪の毛の増加、体毛の消失、肌の質の変化、骨盤などの骨格の女性化、男性器が体内取り込まれる事による膣の形成、卵性器と胎盤の成形およびそれによる内臓の配置位置の変更、そして人にもよるが若返り現象などといった内容だ。
この男性から女性への『変態行為』がわずか2日で行われる。その間患者は凄まじい痛みが全身に走り続け、あまりの激痛の為にショック死を起こした症例があるらしい。更に急激な肉体の変化によって極度の栄養失調な状態に陥り、女変症が確認された初期の頃は衰弱死を起こす人が跡をたたなかったようである。
現在は全身麻酔を行う事による痛みの緩和と点滴による栄養補助で『変態行為』による死亡者はいないらしい。
しかし、男性から女性に変わってしまう事柄は、ある意味『男であった自分が死んでしまった』事を意味しているのも確かなのだ。もっとも世間ではその考えはよく無いと考えられているらしく、『女に生まれ変わった』という表現が好まれているのだが。
しばらく会話と呼んでいいのかどうかが分からないやり取りは帰路を歩いている間、ずっと続いていた。
その間、ここ数日の間に起こった自分の事について、ずっと私に話しかけていた。
5日目に目が覚めたけど身体に全く力が入らなくて次の日まで自分が出した垢と汗で酷い状態になっているベットで過ごす事になったとか、『変態』してから始めてトイレに行っていつも通りに男子トイレに入ったら「キャー痴女よー!」と叫ばれてその時始めて自分が「女の姿」になっている事に気がついたとか、鏡にタブタブのパジャマを着ている少女が写っていて「これが自分なんだ」と気がつくのに3分はかかったとか、トイレに『しゃがみ込んで』用を足した時は何故か涙がでたとか。
その他にも女性化した事による後々の精神的な影響や女変症患者に対する生活保護制度の説明を受けた事や、下着の付け方についてレクチャーを受けて四苦八苦した事などといった事まで、それこそ矢継ぎ早に、である。
そんな自分に起こった体験談を『目の前の少女』は顔に笑みを湛えながら楽しそうに私に話しかけてきた。
その様子に私は表情にこそ出さないが心にわずかにだが安堵感を得ていた。身体が全く別の、しかも異性のものに変わったにも関わらず『目の前の少女』はそれほどに苦にもせず受け入れている様だ。ただ単に開き直っているだけなのかもしれないが、それでも落ち込んでいるよりは数倍マシだ。
帰路につく間ずっと『少女』は私に話しかけ、そして私は『少女』に連れ立って歩き続けるのであった。
学校を出てからおよそ25分が経過し、『石塚』の自宅のすぐ側に着いた。学校からの帰路において、よほど捻くれた道順を通らない限り私が1人暮らしをしているアパートに着く前に『石塚』の家の前を通る。それ故に連れ立って歩くと『石塚』の家の前で私達は別れる事になっている。
そこから少し歩き、家の門の前に着く直前で『石塚』は足を止めた。私も釣られて足を止める。
ふと気がつくと、『石塚』は私の顔をじっと見つめているのに気がついた。『石塚』の表情はさっきまで華やいでいた物から一転して真剣な、それでいて不安げな物に変わっていた。
しばらくその様子を見ていたが『石塚』は何も語ろうとしない。この状況は本来ならば私から話しかければいいのかもしれないが、『私のキャラクター』にはそぐわない。
そこで、いつも通りに「じゃあな」と何気ないような態度で軽く挨拶を送ると、さっさと歩いて去ろうとした。
すると後ろから私の歩みを押し留める力が私の腕に生じた。振り返ると半ば予想は出来ていたが、『石塚』が私の腕を掴んでいる光景が目に入ってきた。
『石塚』の顔は下を向いている。想像だがその顔に浮かぶ表情は暗く沈んでいるのではないだろうか。こういう状況では少女に浮かぶ表情は大体がその様な物なのだろうという程度の事くらいは、私でも思いつく。
『石塚』は私の腕を掴んで何も言わない。口を噛み締めている訳ではないから心情には「辛い」とか「苦しい」とか「悔しい」とかといった感情は浮かんではいない・・・と思う。
この状況も私から話しかけるべきなのだろうが、私は敢えてそれをしなかった。これは『私のキャラクター』に合わせた行動ではなく、『石塚』から喋らせた方が良いだろうと判断した為だ。何故かというと説明が出来ないが、『直感』と言ってもいいそんな曖昧な理由だ。
現在の状態になってから193回目の心臓の鼓動を確認した時、『石塚』の口が開いた。
「ありがとう。」
それは私が想定していた14の内容と全く一致しない言葉であった。
<つづく>
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期待の続編♪

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聞いてみました!
タイトルに男の娘とあるので、すぐに女装展開かなと思っていましたら非常に丁寧な作りで、ノーマルっぽいプレイから徐々に羞恥心を麻痺させていき快楽で絡め取っていく様がじっくりと描かれていました♪
初手から女装にノリノリですと、オレの方がノリきれないので、こういったジックリ、じわじわ型の方が良いですね。
後半、女装展開後も、乳首や御尻を中心に開発されていって楽しめます。
声優さんも熱演&良い演技でGJです。
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これは楽しそうな内容ですね♪
ビッグボリュームな男の娘調教編をエンドレスで聞いたりしたら、夢の世界へトリップできるかも。

20100430 男の娘調教編のレビュー
水曜イラスト企画 絵師:松園さん(2) 仮名: 涌島 義博
絵師:松園

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
彼女が選んだ報復方法。
M属性(女→男)趣向の方に特にお奨めです。
シチュエーションは足コキ、パイズリの他、一部男性器破壊や異物挿入もあります。
メイド、ナース、チェック柄制服少女などの衣装や男の娘キャラクターも登場します。

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