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悪魔を呼んでみよう (20)

自分の事を「わたし」と自覚してからの「石塚さとる」の生活は、今までと全く違う物になった。

にわか女性とも言えるわたしの行動は細かな処がまだ女性らしくないらしく、女性としての大先輩であるお母さんに女性としての身だしなみについてよく言われている。その事をわたしは素直に受け入れていた。
まるで生まれ変わったかのように変貌したわたしを、お母さんもお父さんもわたしを自分の子供として親身に世話を焼いてくれている。その事に関して感謝の言葉をいい表す事すら出来ない。
・・・まあ時折、山になる位の(文字通りの意味での)服を買ってきて頻繁にわたしのファッションショーをするのは、ちと辟易してしまうのも確かだけどね。

自宅でファッションショーをする事が出来る様になった為か、先日までは拒否反応すら起こしていた女性用の服を今では当たり前の様に着る事ができた。勿論、今まで嫌々な気持ちで着ていた学校用のブレザーも平気で着れている。
そうなると現金な物で、わたしはお洒落や身だしなみについても真剣に取り組むようになった。勿論、女性としての。
今どきの流行のお化粧やファッションについて調べてみたりしたけど、お母さんはわたしの年代の流行には少し疎い様だしインターネットを見てもイマイチ実感が沸かない。
そんな訳で月曜日になると年頃の女性の先輩であるクラスメートに積極的に接触してみた。
そんな訳で月曜日になると年頃の女性の先輩であるクラスメートに積極的に接触してみた。
「わたし」の変わり様に女子のクラスメートは当初驚いていたけど、実際の処は放課後には仲良く談笑する事が出来るようになっていた。話を聞くと、いつわたしが「現実を受け入れるのか」を心配していてくれたみたいだった。
わたしは流行物についてはクラスの皆に聞いて積極的に取り入れるようにした。特に女性陣の中でもリーダー格とも言える山本若菜ちゃんは今のわたしの事を甚く気にいってくれたらしく、お節介クラスなまでにわたしに対して世話を焼いてくれてた。

お母さんと若菜ちゃんを中心としたクラスメートのお蔭で、2学期に入った時点でとわたしの感性は女性そのものに変わった・・・らしいです。こればかりはちょっと、実感はあまり沸かないので。クラスメートから「元から女として生まれたより女らしくなっている」らしい、です。
今では休みの日には若菜ちゃん達と一緒に街に出かけて、買い物をしたりを遊んだり(健全な意味での!)したりしている。
ただ、迂闊にブティックに入るとほぼ確実にわたしのファッションショーになるのがちょっと辛いけどね。友達になった芳美ちゃん曰く「最初のうちは嫌がっているのに、いつの間にかモデル気取りになってノリまくっている、貴女の流されやすさを見ているのが楽しくてしょうがない」だそうでして。趣味悪いよ?
新しい友達が出来たし、凍てついていた両親との関係も良好。友達と遊んだり、両親と些細な事を会話を楽しくてしょうがない。現時点において、わたしは今の生活に充実感を得ている。

でも。そんな状況にも関わらず、わたしには懸念事項が2つあるのです。
1つはわたしに対して男子および男性からのアプローチが日々絶えずに来ている事。
わたしは自覚が足りないとよく言われているのだけど、容姿がかなり綺麗な方らしい。若菜ちゃん曰く、「背が低いのに巨乳で美人で流されやすい性格なんて、どこのエロ小説の被害者ですか貴女は」とか。・・・正直、悪い意味での批評な気がします、特に後半。
その所為かわたしが学校に行くと、下駄箱を開けるとほぼ確実に一通以上のラブレターが入っているし、街で下手に1人で行動すると分単位でナンパされる。凄いのになると、どこから持ってきたのか不思議に思ってしょうがない量のバラの花束と共に現れた御人も居る始末。
特にわたしに自分と付き合えと声をかけてくるのが、飯塚重治という2年生の人。この飯塚という人は容姿が美形と言ってもいい位なのですが、男時代のわたしと同じく女を食い物としか考えていないと言う悪い噂が絶えない人。わたしは手を出した女性を無下に扱わない様にしてましたが、この人は泣かせた女性の数は数知れずとか。
更に言うと、祖父が名の知られた国会議員、更に父親は県の議員でこの学校の理事長をしていて、その親の権力の嵩を借りて学校内では暴君の様に振舞っているそうです。
そんな人と付き合う気なんて一切ないので、交際に付いては頑なまでに断わり続けています。


そしてもう1つの懸念事項は・・・、多分予想がついていると思いますが、義一君の事。
6月にわたしが「わたし」になった次の日から、義一君はわたしをあからさまに避ける様になってしまったのです。
一緒に帰ろうとすると、稽古事があると言って直ぐにわたしの前から去ってしまいますし、通学時も一緒に行く事が全く無くなってしまいました。土日に彼が住むアパートを訪れても、深夜遅くまで待っても留守にしているのです。
あの日。壊れてしまいかけたわたしを抱きしめて救ってくれた義一君。でもあの日の後から、わたしを避ける様になったのも確かな事実。
思い出してみると、あの日、わたしは始めて彼が叫ぶのを聞いた日でもありました。「黙れ!」と叫んでいたと思いますが、一体誰に対して叫んでいたんだろう?
そしてあの時、確かに彼の顔には表情と言える物が浮かべてました。義一君が始めて見せた激しい表情。でもその顔に浮かんでいた表情は辛くて苦しくて堪らない、としか言い様がない悲壮な表情。
何故あんな風に叫んだのだろう、あの苦悶の表情は一体なにを意味していたのだろう。
・・・もしかしたら、女性である事を認めたわたしに対して嫌悪感を持ってしまった為なのでしょうか。そうだとしたら、わたしを避け続ける理由も分かります。
でも、それだけでは無いのです。なんと言うかこの頃の義一君はどこか「感情」らしき物を表に出し始めている気がしてならないのです。わたしと一緒に行動するのを避ける時は、ほんの少しだけどどこか申し訳ないと思わせる表情を浮かべたり、ほんの僅かな会話しかしてませんが、その口調も以前と比べて波とも言える起伏を感じる事があります。
勿論、他の人と比べたら感情も口調も淡々としているのですが、数年以上の付き合いがあるわたしに今までの彼との違う点が見つけれてしまうのです。
わたしが変わった様に、義一君も何かが変わろうとしていのではないか・・・と思えてしょうがありません。

そんな疑念を持ちつつも月日は過ぎ去っていき、わたしは高校2年生になりました。若菜ちゃんや芳美ちゃんと同じクラスになり、皆と一緒に喜びあいました。
でも。今まで腐れ縁とばかりに転校してきた時からずっと同じクラスだった義一君とは、始めて別々のクラスになってしまいました。

2年生になった後もわたしは何度か義一君に接触しようとしましたが、彼は依然としてわたしを避け続けました。
別々のクラスに移ってしまった事もあり、わたしも彼の態度にこれ以上は追及しない様になり、少しずつ疎遠になっていきました。
もっとも、彼が一番の親友だという気持ちはわたしの中では変わらなかったのですが。




しかし。
一学期が終わりが近づいてきた6月のある日、わたしはある事件に襲われてしまいます。
そこでわたしは、義一君の「もう1つの顔」を見てしまったのです。

<つづく>

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12/20  一迅社  一迅社文庫  もしも名門校の女子生徒会長がアブドゥル=アルハザードのネクロノミコンを読んだら(仮)  早矢塚かつや  \650  
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