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悪魔を呼んでみよう (24)
「いやあ、全く。いらない手間をかけされてくれたなぁ、紗枝ちゃん。」
呆然としているわたしに向けてでしょうか、飯塚先輩はどこか粘っこい感触を耳に与える声で喋り始めました。
いつもは爽やかな感じを与える声なのですが、恐らくこっちの方が本当の声質なのでしょう。正直な話、耳障りと言ってもいい声です。通常なら嫌悪感を感じるのでしょうか、今のわたしには恐怖感を煽る方にしか働きかけない。
飯塚先輩はゆっくりと立ち上がると、わたしの方にこれまたゆっくりと歩み寄ってきます。その顔にはいつもとは違う、実に嫌らしい雰囲気を湛えた笑みが浮かんでいます。
周りには屈強で不良のレッテルが貼られた男子達が取り囲み、そして彼等を従え、自分の「物」になれと日頃から迫ってくる人物が卑しい笑みを湛えて歩いてくる。
この様な状況になったら人の行動は、開き直って食ってかかるか、泣き叫び許しを請うか、怯えて身を縮ませるのが主な行動ではないでしょうか。
わたしの場合は、3番目の行動を取ってしまいました。ある意味もっとも最悪な行動を、わたしの周りの男達の気持ちを更に高ぶらせてしまう可能性が一番高い行動を、です。
何せもう殆ど痕跡が無いと言われていますけれど、ほんの一年前までは「男」でしたから彼等が何を考えているのか、を容易に想像出来てしまうわけでして。
あああああ、ヤダヤダヤダッ!何がアレしてこうなってアアなってとか、予想できちゃう自分が憎い!
飯塚先輩は怯えるわたしの手を掴んで強引に立ち上がらせると、わたしの顔のすぐ前まで顔を近づける。「にやけた」と表現するのが相応しい笑みを浮かべているその姿は、恐怖以外何物でもなく、おぞましいとしか言い様がありません。
「あまりにもお前が強情だからさぁ。僕はついつい強引な手を使った訳だよ。分かるだろう?」
わたしの耳に口を近づけると、囁くような、それでいてはっきりと聞き取れる声でわたしに語りかけると、
べろりっ
「ヒィッ!」
いきなりわたしの顔の側面を舐める飯塚先輩。そのおぞましい感触にわたしは思わず悲鳴をあげてしまう。
何これ、凄い気持ち悪い!わたしも男だった時に、一緒に寝る事になった女性に対してふざけてやった事あったけど、全然気持ちよくない!気色悪いを通り越して、吐き気すら感じる!
そんなわたしの気持ちを感づいてか、飯塚先輩は不意に顔をしかめると、わたしの頬を平手で思いっきり叩く。悲鳴をあげる暇もなく、私は再び床に這い蹲りました。
「いい加減にしろよな、この雌豚が。最初から俺の物になっていれば、こんな思いをしなかったのに気がつかないのか?」
あまりの身勝手な飯塚先輩の言い分にわたしは怒りを感じましたが、それ以上の勢いで恐怖が心の内から沸き起こり、わたしの身体を萎縮させてしまう。
わたしを尻目に飯塚先輩が周囲に目配せをすると、周りの取り巻きの一人がわたしの背後に廻りこんで腕を掴みました。そして強引にわたしを立ち上がらせると、羽交い絞めにしてきました。
この様な状態になって、わたしにとって事態が好転する事が可能性は全く無い事くらい、容易に想像が付きます。振りほどこうと身じろぎしますが、羽交い絞めの状態から抜け出す事は出来ません。
昔の、男の時のわたしでしたら飯塚先輩を含む彼等6名を強引にねじ伏せる事が出来たでしょう。
ですが今のわたし、他の同性の生徒達と比べても小柄な女のわたしでは、卑らしい目でわたしを見つめる彼等に対して対抗する術は・・・・
無い。
「嫌あぁぁぁあああ!!」
勝手に目から涙が溢れ、わたしの口から悲鳴が迸る。何を考えているのか自分でも分からないのに、「嫌だ、嫌だ」と言う言葉が頭の中で幾度となくリフレインする。
そんなわたしの様子、恐怖で錯乱しているわたしを見て、飯塚先輩はゆっくりとわたしの制服に手をかけると、力いっぱい引っ張りました。
それなりにしっかりとした作りになっている筈の、夏服仕様のブレザーとシャツはあっさりと横に裂け、わたしの下着と肌が露になる。
その瞬間、ショックでわたしの口から悲鳴は止まりましたが、逆に心の内は更に恐怖の色合いが深くなり、目から零れる涙は更に勢いを増しました。
そして飯塚先輩は口の片隅を器用に吊り上げると、わたしの下着に手をかけ・・・
わたしは恐怖と屈辱で目を閉じた・・・
その時。
ガタン!
大きな音が鳴り響く。
その音にわたしは驚いて目を開け、音のした方を反射的に見ました。
わたしが向いた方向には、体育倉庫の扉がありました。そして2枚の鉄板で構成されていた体育倉庫の扉は内側に倒れ伏し。その向こう側には、
「義一君・・・。」
わたしの親友、笹田義一君が立っていた。
その顔には、わたしが今まで見た事もない物がありありと浮かんでました。
表情が。
それも凄まじいまでの「怒り」とも言うべき、激しい物が。
<つづく>
呆然としているわたしに向けてでしょうか、飯塚先輩はどこか粘っこい感触を耳に与える声で喋り始めました。
いつもは爽やかな感じを与える声なのですが、恐らくこっちの方が本当の声質なのでしょう。正直な話、耳障りと言ってもいい声です。通常なら嫌悪感を感じるのでしょうか、今のわたしには恐怖感を煽る方にしか働きかけない。
飯塚先輩はゆっくりと立ち上がると、わたしの方にこれまたゆっくりと歩み寄ってきます。その顔にはいつもとは違う、実に嫌らしい雰囲気を湛えた笑みが浮かんでいます。
周りには屈強で不良のレッテルが貼られた男子達が取り囲み、そして彼等を従え、自分の「物」になれと日頃から迫ってくる人物が卑しい笑みを湛えて歩いてくる。
この様な状況になったら人の行動は、開き直って食ってかかるか、泣き叫び許しを請うか、怯えて身を縮ませるのが主な行動ではないでしょうか。
わたしの場合は、3番目の行動を取ってしまいました。ある意味もっとも最悪な行動を、わたしの周りの男達の気持ちを更に高ぶらせてしまう可能性が一番高い行動を、です。
何せもう殆ど痕跡が無いと言われていますけれど、ほんの一年前までは「男」でしたから彼等が何を考えているのか、を容易に想像出来てしまうわけでして。
あああああ、ヤダヤダヤダッ!何がアレしてこうなってアアなってとか、予想できちゃう自分が憎い!
飯塚先輩は怯えるわたしの手を掴んで強引に立ち上がらせると、わたしの顔のすぐ前まで顔を近づける。「にやけた」と表現するのが相応しい笑みを浮かべているその姿は、恐怖以外何物でもなく、おぞましいとしか言い様がありません。
「あまりにもお前が強情だからさぁ。僕はついつい強引な手を使った訳だよ。分かるだろう?」
わたしの耳に口を近づけると、囁くような、それでいてはっきりと聞き取れる声でわたしに語りかけると、
べろりっ
「ヒィッ!」
いきなりわたしの顔の側面を舐める飯塚先輩。そのおぞましい感触にわたしは思わず悲鳴をあげてしまう。
何これ、凄い気持ち悪い!わたしも男だった時に、一緒に寝る事になった女性に対してふざけてやった事あったけど、全然気持ちよくない!気色悪いを通り越して、吐き気すら感じる!
そんなわたしの気持ちを感づいてか、飯塚先輩は不意に顔をしかめると、わたしの頬を平手で思いっきり叩く。悲鳴をあげる暇もなく、私は再び床に這い蹲りました。
「いい加減にしろよな、この雌豚が。最初から俺の物になっていれば、こんな思いをしなかったのに気がつかないのか?」
あまりの身勝手な飯塚先輩の言い分にわたしは怒りを感じましたが、それ以上の勢いで恐怖が心の内から沸き起こり、わたしの身体を萎縮させてしまう。
わたしを尻目に飯塚先輩が周囲に目配せをすると、周りの取り巻きの一人がわたしの背後に廻りこんで腕を掴みました。そして強引にわたしを立ち上がらせると、羽交い絞めにしてきました。
この様な状態になって、わたしにとって事態が好転する事が可能性は全く無い事くらい、容易に想像が付きます。振りほどこうと身じろぎしますが、羽交い絞めの状態から抜け出す事は出来ません。
昔の、男の時のわたしでしたら飯塚先輩を含む彼等6名を強引にねじ伏せる事が出来たでしょう。
ですが今のわたし、他の同性の生徒達と比べても小柄な女のわたしでは、卑らしい目でわたしを見つめる彼等に対して対抗する術は・・・・
無い。
「嫌あぁぁぁあああ!!」
勝手に目から涙が溢れ、わたしの口から悲鳴が迸る。何を考えているのか自分でも分からないのに、「嫌だ、嫌だ」と言う言葉が頭の中で幾度となくリフレインする。
そんなわたしの様子、恐怖で錯乱しているわたしを見て、飯塚先輩はゆっくりとわたしの制服に手をかけると、力いっぱい引っ張りました。
それなりにしっかりとした作りになっている筈の、夏服仕様のブレザーとシャツはあっさりと横に裂け、わたしの下着と肌が露になる。
その瞬間、ショックでわたしの口から悲鳴は止まりましたが、逆に心の内は更に恐怖の色合いが深くなり、目から零れる涙は更に勢いを増しました。
そして飯塚先輩は口の片隅を器用に吊り上げると、わたしの下着に手をかけ・・・
わたしは恐怖と屈辱で目を閉じた・・・
その時。
ガタン!
大きな音が鳴り響く。
その音にわたしは驚いて目を開け、音のした方を反射的に見ました。
わたしが向いた方向には、体育倉庫の扉がありました。そして2枚の鉄板で構成されていた体育倉庫の扉は内側に倒れ伏し。その向こう側には、
「義一君・・・。」
わたしの親友、笹田義一君が立っていた。
その顔には、わたしが今まで見た事もない物がありありと浮かんでました。
表情が。
それも凄まじいまでの「怒り」とも言うべき、激しい物が。
<つづく>