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僕の秘密日記(30) <最終回> by A.I.

僕の秘密日記(30)

 正月三が日が終わると、僕は出し忘れていた年賀状を書いていた。先に届いていた年賀状の宛て名は級友からのものだ。「早く体を治せよ」と大半の年賀状には僕の体を心配する短いメッセージが添えられている。
「長く休んじゃったからなぁ」
 友人たちの顔を思い出して、僕も早く会いたくなってくる。もっとも、女の子になってしまった僕にどんな反応を示すか、不安を感じないわけではないけどね。
「多少からかうぐらいはするかもだけど、気のいいヤツが多いし大丈夫かな」
 余計な心配に過ぎないか。ポストに投函してきてしまうと、ほかにやることもない。たつみに振り回されて足腰が痛いし、大人しく静養していたほうが無難かな。少女漫画をベッドで寝転んで読んでいると、日が暮れる頃には疲れも取れてきた。
「ここのところドタバタしていたし、のんびりするのもいいね」
 冬休みの宿題は終わっているし、気楽なもんだ。休みはもう少しだけあるわけだし、明日は外出してもいいかもしれない。休みにぐだぐだしているのも悪くはないけど、少女漫画の新刊は買ってきたいところだ。
「せっかくお年玉も貰えたわけだし」
 親戚に女の子になった姿を見られたのは恥ずかしさと照れくささがあったけど、それも終わってしまえば楽しい思い出を作ることができた。それに気前よくお年玉も貰えたしね。いつもならほとんどを貯金してしまうけど、今回は服の一着でも買おうかなと思っている。まだ手持ちの服は多くないからね。そんなわけで翌日は買い物に出ることにした。

「デパートに行ってから本屋に寄った方がいいか。どっちから行くべきか迷うなぁ」
 荷物を持ちながら歩き回りたくはないし、買う本はだいたい決まっているから本屋を後回しにした方がいいかもしれない。立ち読みしたい雑誌はあるんだけどね。
「とおるからか。なんだろ?」
 そろそろ出かけようと思っていたら、携帯電話の着信音が鳴った。
「はぁはぁはぁ……」
 通話ボタンを押したら男の荒い呼吸音が聞こえたので、即座に切った。え、なに? 凄く怖いんですけど。
「な、なんだったんだ、今のは?」
 冷や汗が出てきた。心臓の鼓動が乱れている。携帯電話を持ったまま、どうしようかと僕は固まっていた。ビクッとする。再び携帯の着信音。僕は恐る恐る通話ボタンを押した。
「あ、あきら……今日は会えないか?」
 今度は人の声になっていた。ただ切れ切れで息が乱れている。
「風邪でも引いたの?」
 体調を崩しそうもないヤツだけどなぁ。
「病……には違いない……三日もあきらと……会ってないからな。そろそろ……きつくなってきた……」
「お前なぁ。たかだか僕と三日会えなかった程度で死にそうな声出すなよ」
 呆れ果てた声を出しながらも、僕は迷っていた。ここでとおるを見捨てるのは簡単だが、あとで部屋に忍びこまれても困る。うちの両親はとおるには甘いからね。あっさり部屋に通しかねない。
「このまま……あきらに会わないと……おかしくなりそうだ……」
「元からお前はおかしいだろ!」
 携帯から聞こえる息づかいが激しさを増した気がする。このままとおるに暴走されたら厄介だ。
「わかったよ。これから出かけるつもりだったから、一緒に行く?」
「荷物持ちなら任せろ」
 途端に元気になるとおる。調子のいいヤツだ。さっきまで病人のような呼吸だったのが嘘だったと思いたくなる。
「デパートから行くかな」
「服でも買うのか?」
「そのつもりだよ」
 とおると合流すると、いつもの感情の乏しそうな顔だった。電話での苦しそうな口調が作り話だったように、平然としている。
「元気そうだよね?」
「さっきまで胸が苦しくてならなかったぞ。あきらは俺の清涼剤だからな」
 とおるの戯れ言を軽く聞き流して、デパートへと向かう。僕の格好は無地のシャツにセーター、スキニーデニムと比較的ラフな格好だ。一人で出かけるつもりだったからね。気合いの入った服装するつもりなかったし。
「俺はもうちょっと可愛い服の方が好みだぞ」
 僕の格好を見て、とおるが口出ししてくる。
「着飾るのは好きだけど、自分の体にすらまだ慣れてないからね。いつも可愛い格好をしていたら気疲れしちゃいそうだよ」
 完全な女の子になってから、まだ一ヶ月も経っていない。あまりに華やかな格好をするには、戸惑いや照れ、恥ずかしさが残っている。普段着として着るならば、地味とは言わないけど控えめな衣服を選んでしまう。
「俺が金を出すから、もう一枚くらい華やかな服を買ってかないか?」
「奢られる理由がないね。それにとおるの親父さんからお年玉を貰っているし、お金ならそれなりに持ってきたよ」
「奢る、というか。俺が金を出さなければならない理由はあるぞ」
 借りを作るのは気に入らないし、とおるの趣味を押しつけられるのも好まない。僕は素っ気なく断ったが、こいつは引き下がらなかった。何か理由なんてあったかなぁ。
「俺のコレクションが増えたからな」
 とおるが何気なく差し出した薄いフォトアルバムを受け取って、ぱらぱらと中身を見る。破り捨てたくなった。
「……僕の下着姿や浴衣姿か……そういえば一枚につき千円とか約束した気がするね」
 温泉旅行の写真だった。湯気でぼやけているけど、上半身の裸の写真まである。地面に叩きつけて踏み潰そうと思ったが、また現像されるだけだろう。心なしか爽やかな顔をしているとおるを、僕は苦々しく睨みつけた。
「こっちの写真はあきら用だから、持っていってくれ」
 もう一つ差し出されたフォトアルバムには、僕が無邪気に雪遊びをしてはしゃぐ姿が映っていた。子供みたいな笑顔の僕が写っている。仏頂面をしているのがバカらしくなる可愛らしい笑顔だった。僕ってこんなあどけない顔で笑うんだな。
「それじゃあと一枚ぐらい服を買ってもらうかね」
 気の抜けた笑みで僕はとおるにそう言った。怒っているより笑っている方がいい。そう思わせるに充分な写真だった。
「まずは長袖のワンピースにしようかな」
 黒い生地に銀の刺繍が施されたものを手に取る。可愛らしい系統の服を買うことが多かったけど、大人びたものも欲しくなる。
「大人になりたいお年頃か」
「うっさい。試着してみるから感想を聞かせてよ」
 試着室で着替えてみたけど、どうもしっくりこない。
「背伸びしている感じが否めないな」
「……僕もそう思うよ」
 悪くはないけど、つり合いが取れていない。僕って顔立ちが子供っぽいのかな。胸なんかほとんどないしね。成長を待つしかないかなと思って、諦めて他の服を選ぶことにした。
「明るい色のシフォンチュニックにしようかな」
 今穿いているデニムと合わせられる長袖のチュニックを選んでみた。これなら身ごなしは軽いけれども、女性的な雰囲気も醸し出せる。組み合わせるボトムスによって、男性的にも、女性的にもなるだろう。
「灰色や茶色のワンピースだとおとなしいかな」
 あと一枚はワンピースにしようと悩んでいるのだけど、気に入った色が見つからない。冬といっても装いまで地味にすることもないしね。
「これがいいかな。雪模様というのもお洒落かも」
「あきらに似合っている」
 僕が選んだのは青い生地に雪柄模様が施されたワンピースだった。さっき見た写真の印象が残っていたのかもしれない。可愛らしさはあるけど、派手というわけではない。
 デパートでの買い物を済ませてしまうと、僕の奢りでとおると一緒に昼食を取った。服を買ってもらったわけだから、軽くお返しぐらいはしないとね。
「もうそろそろ新学期だね。緊張するな」
「何かあったら俺が何とかするさ」
「……お前は騒ぎを大きくしそうだけどね。頼むから学校で僕のことを変な風に言うのは止してくれよ」
 とおるに学校で恋人なんて呼ばれたら、僕の平穏な学生生活に終止符が打たれそうだ。ただでさえ女になって騒がれるだろうし、下手な勘ぐりをされるのは避けたい。
「あとは本屋に寄っていくよ」
「俺も学術書を探してみるか」
 昼食を食べ終えると、帰り道にある本屋に寄っていった。荷物は全てとおるに持たせてある。少女漫画の新刊だけ買っていくつもりだったけど、ファッション誌を読んでいこうと雑誌コーナーに立ち寄った。
「誰の気兼ねなく読めるというのはいいね」
 男だった時は近くにいる人の視線が気になってゆっくり読めなかったものだ。女性用のファッション誌を読むのは、やっぱり変だったとは思うし。じっくりと中身を確認できなかったから、買ったあとに内容を見て後悔したこともある。
「悪くはないけど、買っていくほどでもないかな」
 心ゆくまで立ち読みしてから、そう決断を下す。とおるは気に入った本を見つけたのか、本屋の袋を小脇に抱えて僕の隣に立っていた。近くにいたけどまるで気配を感じさせない。
「雑誌でも立ち読みしていれば良かったんじゃないの?」
「俺はあきらが顔を緩めているところを見られただけで充分だ」
 あれこれ色んな服を着た自分の姿を想像していたから、無意識的に笑みがこぼれていたかもしれない。
 気づかなかったけど、外に出ると真っ暗闇だった。そういや足の裏が痺れている。かなり長い時間を本屋で過ごしていたようだ。こんな休みの過ごし方もたまにはいいけどね。

 いよいよ明日は新学期。今日はずっとそわそわしてしまっている。朝食の準備で、指を包丁で傷つけそうになったし。落ち着け、落ち着けと思うとかえって焦ってしまう。
「あ、明日はいよいよこれを着て登校するのかぁ」
 セーラー服を握る手が震えてきて、我ながらおかしくなった。冬休みに入る前は男子の制服だったからね。ピンクを織り交ぜたセーラー服は結構人気があって、それを目当てに受験する女の子もいるらしい。
「これを着ていったらみんな驚くだろうなぁ」
 髪型をツインテールにしていったら、僕だとわからないかもしれない。転校生だと思われるかな。色んな意味でドキドキしてくるね。不安も大きいけど、女の子としての学生生活が楽しみでもある。
「一度着てみるかな。明日困ってもいけないしね」
 下着姿になると、姿見鏡に自分の姿を映してみる。飾り気のないタンクトップとショーツの女の子が立っていた。うん、女の子にしか見えない。そりゃ発育は足りないけど、それは時間が解決してくれるはず。してくれるといいなぁ……はぁ……。
「まずはスカートを穿いてと」
 ちょっとくすぐったい気分。そんなに着方に困ることはないけど、スカーフを巻くのは手間取った。
「僕もまだまだ経験が足りないね」
 毎日やっているうちに慣れるだろうけど、スカーフをどの程度折り畳めばいいのか迷った。胸の辺りでスカーフを結ぶ時も、左右対象で見栄えを良くしようとして何回もやり直したしね。
「コツでもあるか同じクラスの女子に聞いてみるかな」
 常識的なことを聞いてくると思われるかもしれないが、僕にとってはまだまだ未知の世界だ。何しろ明日が僕にとっての女子高生一日目だしね。
「こんな感じかな。これが僕の制服姿か……」
 納得のいく形にスカーフを結びと、僕は鏡で全身を見回した。髪を左右に垂らした女子高生が照れくさそうに僕を見返している。口に軽く笑みを浮かべて、その女の子は嬉しそうだった。

 翌朝は目が早く覚めてしまった。空気が張り詰めていて冷たい。寝つけなくて睡眠不足だ。興奮気味で寝汗をかいてしまっている。二度寝はできそうもないし、シャワーを浴びて心身を覚醒させるか。
「ふぅ、すっきりしてきた」
 ぬるめのシャワーを浴びると、寝ぼけた頭が晴れ渡っていく。体を洗おうと下を向くと、見慣れないものが目に入った。
「……これで僕も一歩大人の女に、ということかな」
 白い歯をこぼして笑みが漏れる。幸先がいいようだ。他人が聞いたらたわいがなくて笑ってしまうだろうけど、僕の大事な場所に短いけど毛が一本生えていた。つるつるのままだったから、気にはしていたんですよ。
「ちゃんと成長しているんだなぁ」
 感慨深げに呟いて、風呂場から出る。男の子から女の子になった僕は、いつか大人の女性になるんだろうか。
「母さん、おはよう」
「おはよう。早いわね」
 制服に着替えてリビングに入ると、母親が朝食の準備をしているところだった。家事の手伝いをするのは冬休み中だけという話だったけど、今日はまだ時間がある。母さんと一緒に僕は朝食の支度と、お昼のお弁当の用意をしていたのだけど。
「どうして弁当箱が二つあるの?」
 父親は外食か社員食堂で済ませていたはずだ。小柄な弁当箱と、冬休みに入るまで僕が使っていた弁当箱の二つがあるのは解せない。女の子になってからはやや小食になってしまったから、小さな弁当箱でお腹は満たせるだろう。
「とおる君の分よ。せっかく使わなくなったお弁当箱があることだしね」
 母親の声には微かな笑いが含まれていた。余計なお世話を焼きたがるんだから。
「……あいつは単なる友人だからね」
「わかってますよ」
 とおるは昼食を抜くことが多いから、共犯者に倒れられても困る。なにしろ僕の学生生活はこれからなんだからね。わざわざ反対することもないか。
「あきら、セーラー服がよく似合っているよ」
「そう言ってもらえて安心したかな」
 朝食中に、父親は目を細めて僕の制服姿を褒めてくれた。首筋が少しだけ熱くなる。
「それじゃいってくるね」
「気をつけていってらっしゃい」
 空気は透き通っていて冷たいけれど、気分が高揚しているのか寒さを感じなかった。カーディガンを小脇に抱えたまま、僕は学校への道を歩き始める。
 相沢医院の前では見慣れた影が僕を待っていた。興奮で浮き立っている僕は溢れんばかりの笑顔で、とおるに向かって大きく手を振った。

<おわり>

虚構世界のアンドロギュノス

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ちょっとだけMCっぽい。

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