FC2ブログ

Latest Entries

「ルームサービス」 作・真城 悠 イラスト・神山響

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com 
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/

 彼はホテルの部屋に落ち着くと、フロントに電話を掛けた。
「あ、もしもし。いつものルームサービスをよろしく。うん。ああたのむよ」
 ネクタイをはずすと上着と共に壁のハンガーに掛ける。

 寛(くつろ)いでベッドに腰を下ろした。
 ビジネスホテルの部屋はそれほど広く無いが、一応明日の朝まで何もしなくてよくなるとなると落ち着いた気分になるのだった。
 ピンポーンと部屋の呼び鈴が鳴った。

「…はい」

『ルームサービスで参りました』

 がちゃりと彼はドアを開ける。
 すると、そこにはくるぶしまで達する長いスカートのメイドが立っていた。

「…?君は?」

 突然の闖入者に驚いてしまう。
「ルームサービスです。では始めさせていただきます」
「何の話だ?」
 だが、その時点で既に何かがおかしかった。
 身体が自由に動かない…まるで意思に反して動いているかのようだ。

 身体が勝手に部屋の奥まですたすたと歩いていく。
「な…なん…だ!?これは…?」

 ベッドの傍らに立つメイドが、大きな荷物を床においていた。

「では始めます。まずは身体から」
 よく接客業で見かける明るい笑顔のメイドではなかった。
 黒一色のワンピースに白一色のエプロン。胸元には赤いリボンも無いのでまるでモノトーンである。
「あ、あんた…な、何を…」
 次の瞬間、全身に違和感を感じたと思うと、胸が膨らみ、腰は縊(くび)れ、臀(でん)部は張り出し、脚線美が内股へと曲がっていく。
「ぐあ…ああっ!」
「はい。いい感じです。そしてこれもいらないっと」
「ああっ!」
 股間の一物が消失した。
 な、何と言うことだろうか。彼は一瞬にしてその肉体を男性から女性へと性転換させられてしまったのだ!

「はい、とてもお綺麗ですよ」
 棒読みでメイドが言い放つ。
「では、脱ぎましょう」
「なっ!」
 その声さえ、彼には自分の耳に甲高く響いた。
 声まで完璧に女のものに変わり果てているのだ。

 ワイシャツが剥ぎ取られ、乳首の点によって押し上げられたTシャツも脱がされると、そこには形のいい乳房があった。
「あ…そ、そんな…」
 目の前にある現実が信じられない。
 だが、無表情のメイドはゆるゆるになったズボンのベルトを引き抜き、ずり下ろした。
「い、いやああっ!!」
 勝手に出る女みたいな…今は女なんだが…出る声。
 ズボンと一緒にガラパンまで引き下ろされた彼は、すぐに剥ぎ取られた靴下を最後に生まれたままの姿となった。
 いや、生まれたときには男だったので、生まれたときとは違う状況ながら全裸になった。

 彼は身体の自由が効かなかった。
「では、まずは汗を洗い流しましょう」
 無表情のメイドに促され、部屋のユニットバスに案内される。

 メイドはそのゾロっとした格好にも関わらず器用にシャワーを操り、彼の全身を洗い流して行く。
「あっ…いやっ…ああっ!…だ、だめぇっ!!」
 洗剤の泡を含んだスポンジが乳首や股間を刺激する。
 メイドにしてみれば、全身を洗い流す際に仕方なく当たってしまっているだけなのだろうが、全身が敏感となった女体に包まれた彼には刺激が強すぎたらしい。

 淡々と作業をこなし、身体をふき取ると、胸から下にタオルを巻きつけた状態で部屋に戻り、ドライヤーで背中の真ん中まである髪を手際よく乾かして行く。

「お…お前は…な、何者…なん…だ!?」
 自由の効かない全身から搾り出すように声を出す美女となった彼。
「ルームサービスです」
 感情の篭らない発声で応えるメイド。
 全身が気持ちよく乾燥した。汗も洗い流され、とても爽やかな気分である。

「では、お着替えの時間です」
「な…なにぃ!?」
 メイドが持ってきた巨大なトランクの留め金を外し、中身を取り出した。
「そ…それはっ…!!」
 メイドは金色のものを持っていた。
 それはレオタードのようにも見えるハイレグ形状のものだった。
 だが、単なるレオタードでないことは付属部品で分かる。
 うさぎの耳のような装飾品と黒い網タイツも一緒に取り出してきたのだ。

 そう、金色で統一された「バニーガール」の衣装だったのだ!

「ま、まさか…それを俺に着せようとしてるんじゃあるまいな…」
「着せようとしています」
「じょ、冗談じゃない。誰がそんな…」
 辛(かろ)うじて立ち上がることは出来たが、全身のコントロールをするには至らない。
「では、着せるのは諦めます」
 人形が喋っている様だ。
「そうか…」
 彼は少しその大きな胸をなでおろした。
「自ら着ていただきましょう」
「なっ!」
 次の瞬間、胸から下を覆っていたタオルが落下した。
 再び全裸の女体が露(あらわ)になる。
 そして、バニーガール一式に手を伸ばすと、ひもにしか見えないTバックを手にし、自らその艶(なまめ)かしい脚線美を通して行く。
「あっ…あ…」
 表情は恥ずかしさに振るえ、必死の抵抗をしているのだが逆らうことが出来ない。
 Tバックを装着し終わると、今度は肌色のストッキングである。
 まずは片手を突っ込んで手繰り寄せ、そして足を突っ込む。
「やめ…」
 両脚とも太腿まで肌色のストッキングに通すと、股間に密着する様にずりあげる。
 この間、おっぱいは丸出しのままである。
 そして今度は網タイツに手をやり、同じ要領でその脚に通して行く。
「いや……や…め…」
 着せられているのではなく、自ら着ているのである。説得力が無い。
 かかとからお尻までを「バックシーム」と呼ばれる黒いラインが貫くように位置を調整しながら網タイツをずり上げていく。
「さて、ここからが本番です」
 いらん解説を加えるメイド。
 あちこちに金属部品があるのか、持ち上げるだけでちゃらちゃらと音を立てる金色のバニーコートを白魚のような自らの手が持ち上げる。
「だ…駄目…こ、これだけは…これだけはぁ…」
 泣きそうな顔で抵抗する彼だが、勝手に動く身体は拒否することが出来なかった。
 背中のファスナーを下げ、大きく広げると片足ずつ入れて行く。
「あ…ああ…」
 両足が通った段階で網タイツをこすりながら引っ張り上げられるバニーコート。
 その「ざざざざざっ!」というこすりあう音が耳をくすぐる。
 大きなお尻がウェスト部分を通過する際に大きな引っ掛かりとなるが、すぐにするっ!と通過した。
 やがてそのハイレグの股間部分が「ぎゅっ!」と密着した。
「…っ!!」
 何かの感情に耐える彼。
 そして、背中部分のホックを止める。
 前面の部分は大きく湾曲した形で金属部品で補強されており、大きな乳房を綺麗に半分ほど包み込んだ。
 乳房が大きくて閉めるのに苦労したホックがやっと止まると、今度はいつのまにか背後に回っていたメイドがそのファスナーを一気に引き上げた。
「きゃああああっ!」
 胴回りが一気に締め上げられ、余分な肉が乳房を押し上げ、谷間を強調した。
「あ…ああ…」
 彼は自らの身体を見下ろした。
 大きすぎる胸の谷間が身体を見にくくしているが、水着みたいなバニーコートが強調するハイレグによる下腹部。
 艶(なまめ)かしい脚線美は毒々しい網タイツに覆われてよりセクシーに強調されている。
 バニーコート自体がとても堅く作られており、しかも自らの乳房がストッパーになっているので肩ひもがなくてもずり落ちない最新の構造だった。
 しかもきらびやかな金色が光沢を放ち、目の前の風景を反射で映りこませていた。
「まだまだです」
 お尻の部分に白い飾りを押し付けるメイド。
 また足が勝手に動いて少し上がると、いつの間にか準備された金色のハイヒールにぎゅっ!と押し込まれた。
 よろめいて立ち上がり、反対の足も同じことを繰り返す。
「うわ…」
 まるで高い台に上ったかのような感覚だった。
 前方につんのめりそうになり、つま先の横部分が痛い。
「お座り下さい」
 言われなくても身体は勝手に座っていた。
 そして、目の前にある鏡台に映る自らの艶姿に嘆息する暇もなく、メイドが取り出してきたメイク道具に勝手に手が伸びていた。
 首に蝶ネクタイとカラーを締め、手首にも同様の飾りをする。
 いつの間に覚えたのか、ファンデーションを塗り、頬紅を塗り、付けまつ毛をつけ、マスカラを塗り、そして…口紅を縫っていた。自らの手で。
「そ…そんな…馬鹿な…ことが…」
 そうこう言う間にもイヤリングを嵌め、爪に真っ赤なマニキュアを塗っている。
「ま、こんなもんですね」
 マニキュアが乾く頃合、無表情メイドが遂に言い放った。
 気が付くとホテルの一室には全身鏡が持ち込まれ、彼は自らの艶姿を眺め回すことが出来た。
 うっとりするほど美しい、金色のバニーコートに包まれたバニーガールだった。
「そんな…これが…おれ?」
 鏡の中のバニーガールも同じように喋っているが、とても信じられない。

 ふと見ると、メイドが方々から写真を取り捲っている。
 自らの身体をくねらせ、胸の谷間を強調し、悩ましい表情をする。全て勝手に身体が動いているのである。
「では、お買い物をしてきてください」
「なっ!何を言ってるんだ!この格好で表に出ろってのか!?」
「はい」
 また荷物をごそごそ探っている。
「その衣装にはポケットが無いのでお財布はもてません」
 そりゃそうだろう。ポケットのあるバニーガール衣装なんて聞いたことが無い。あ、あの上着にはもしかしたら付いているのかも知れないが、今は上着を着ていない。
「なのでここに入れますね」
 メイドは丸めた一万円札を胸の谷間に突っ込んだ。
「きゃあっ!」
 嬌声を上げてしまうバニー。
 身をくねらせて嫌がる彼を尻目に、簡単には出せないほど丸まったお札を胸の谷間に押し込む。これで外見上は妙なものが飛び出す形にはなっていない。
「それから、その態度では怪しまれるので、口調と仕草を女に変換します」
「な、なにぃ!?」
「変換できました」
 あくまでも淡々と話すメイド。
「どうぞおしゃべり下さい」
「な、何よ…っ!?」
 自らの口を押さえるバニー。可愛い。
「な、何なのよこれぇっ!あ、あたしは普通にしゃべってるのに、勝手に女言葉に変換されちゃうなんて…ひどい…」
 そういう挙動も実に女性らしいものとなっていた。
「ご心配なく、記憶も思考も全て男性のものを残してありますので」
 却(かえ)って残酷なんじゃないかいう解釈も成り立ちそうだ。
「では、牛丼でも食べてきてください」
「えええっ!?」
「このホテルから歩いて数分のところにあります」
「何言ってるのよあんた!」
「別にバニーガールが牛丼を食べてはいけないという法律はありません」
「そ、そりゃそうだけどぉ!」
「お金もあります」
 ふと胸元に視線を落とすと、そこには丸めた一万円札が入っている。確かにお金ならある
「そんな無茶よ…」
「私が部屋番をしていますので、お食事が終わったら戻ってきてノックしてください」
「あんた人の話を聴いて…ってか、身体が勝手に…いやああっ!」
 バニーガールとなった彼は、マリリン・モンローもかくやという腰振り歩きで悠々と部屋を出た。

 予想通り、ホテルのフロントの前を通りかかると、フロント係の男が、目を飛び出さんばかりに驚いている。
 すると、身体が勝手に色気たっぷりのウィンクと共に投げキッスをした。
 フロント係も、過激なコスプレすなわち違法とも言えないため、ひきつった様な表情で見送るしかない。
 そして…その場を動かなかったのも理由があるはずだ。
 そう、股間が膨張してその場で動けなくなったに違いない。

 夜の繁華街に出ると、周囲の視線が一斉に彼に集まってきた。
 重いハイヒールをゴツゴツ鳴らしつつ、颯爽(さっそう)と歩くバニーガールはすれ違う人々を釘付けにするのに十分だった。
 全身にささる視線に、彼の心の中は恥ずかしさに悲鳴をあげていた。

『ああ…み…みんなに見られてる……こんな…こんな恥ずかしい格好を…。み、見ないで!みないでくれえええっ!』

 通りの向こうの男はもう目を見開いて「ガン見」している。
 すれ違った男も、もう相手にどう思われるのかも気にせずに視線がこちらに固定された。
 そりゃごく普通の繁華街を金色のバニーガールが歩いていれば「何事か」と思うのは当たり前だ。
 カップルの男が思わずこっちをみてニヤついてしまい、彼女に怒られている。
 あそこの女子高生風の女二人組みはこっちを見てキャッキャと楽しそうにしている。
 こっちのOL風女二人組みは「何よあの露出狂女は!」という冷たい視線を向けている。

『ち、違う!…違うんだ!……俺は何も好きでこんな格好で外を歩いているんじゃない!身体が…身体が勝手に…動いて…あああっ!!』

 男子高生風の男ふたりが興奮して何か叫びながらこっちに注目している。
 壮年の渋いサラリーマン風の男性がすれ違いざま股間をおさえてうずくまった。
 な、なんて分かりやすい…。

 ヤンキー風のたくましく日に焼けた男二人組みがにやにやしながらこちらを眺めている。
 そ、そんな…俺は…この俺は…男なのに…男の性の…対象に…され…て…。

 おぞましさに身をよじりたくなるが、身体は勝手に動かない。
 背中の露出部分に長い髪がするすると触れ、それ以外の部分が肌寒い。

 ふと気付くと目の前に牛丼屋があった。
 ボタンを押してドアを開ける。

「いらっしゃいま…」

 突如入ってきた金色のバニーガールというシュールな光景に店員の声が止まった。

「い、いらっしゃいませ!」

 彼は一番店の奥のほうのカウンター席に座った。
 そこの部分にはお客がいなかった。
 網タイツに包まれた尻を下ろし、ゆっくりと回転して店内を見渡す。
 店中の人間がぽかんとしてこちらを見ている。

「ルームサービス」挿絵
イラスト・神山響

全文を表示 »

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2011-04