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「新入社員にご用心」(2)  作.ありす  挿絵.T

(2)-------------------------------------------------------

 ホテルの広間を借り切ってのパーティー会場。
 テレビドラマの中の様な、こんなイベントに参加するのは初めてのことだった。
 会場のただならぬ状況に不安を感じた俺は、甘井先輩に詰め寄った。
 周囲をはばかるようにあたりを見まわし、先輩の耳元に口を寄せて、なんとかこの場を乗り切るべく、耳打ちした。

「先輩。これ、シャレになりませんよ。社長まで来ているじゃないですか!」
「案ずるな。これは極秘だが、俺達の企画しているイベントは社長の耳にも届いている。万が一の場合は、社長がとりなしてくれることになっている」
「……って、事は???」
「これは社長公認のイベントということだ」

 俺は愕然とした。社長公認ということは、もう後には引けないということだ。

「首尾よくやれば、役員連中の覚えもめでたいぞ? 出世まちがいなし!」
「女装で新人を引っ掛けることで、どんな能力を認めてもらえると言うんです?」
「ま、そうだな……。営業とか秘書かな? 契約たくさん取れるかもしれんぞ、色仕掛けで」
「馬鹿言わないでください!」
「しっ! 大きな地声を出すな! 男だってことがバレるだろう? ちゃんと裏声使え、言葉遣いも気を付けろよ」
「どうせすぐにばれますよ。で、どうするんですか?」
「あそこの新人集団の中に、目立つ奴が居るだろう?」
「どれです?」
「あの白いスーツ着た、キザな野郎だ」

 先輩の指さす方向を見ると、見た目にもフレッシュな新人たちの中にあって、ひときわ背が高く目立つ奴がいた。

「あれですか? ホストみたいな格好していますね」
「そうだ。ああいう勘違いした奴こそ、ターゲットにふさわしい」
「なまじイケメンで似合っているだけに、余計ムカつきますね」
「そうだろう? じゃ、行って来い」
「……先輩?」
「なんだ?」
「いま、こっち見ましたけど?」
「怪しまれるとまずい。美少女と内緒話をしているという構図は、傍目には鼻高々だが、正体を知っている俺としてはちっとも嬉しくない。さっさと行け。ただし、あくまでも自然にな」
「まったく、勝手なことばかり言いますね、先輩は」
「よろしく頼んだぞ。みんなが楽しめるようにな」
「はいはい」

 頼まれれば、頑張ってしまうのが俺のいいところでもあり、悪いところでもあり……。
 なるべく不自然にならないように、俺はターゲットに近づいた。
 既に取り付いてマークしていた、悪巧みの仲間でもある先輩女子がおれに気づくと、手を振って呼び、ごく自然に俺のことを紹介する。

「彼女がさっき話した小鳥遊さん。かわいい娘でしょう? じゃ、後は二人でごゆっくり」

 魔女のような笑みを浮かべて、先輩女子が離れて行った。
 おいおい。何を話していたのか知らんが、この際このイケメン野郎に取り入っておかなくていいんですか?
 これだけのイケメンを彼氏に出来たら、大いばりで自慢できると思うぞ?
 もっとも俺はごめんだがw……と、心の中でだけ言って、こちらはややひきつった笑顔で見送った。

「初めまして。森 カオルです」
「こちらこそ。小鳥遊 圭です」

 この時用とばかりに、先輩に特訓させられた裏声を使った。
 本名で自己紹介だが、問題あるまい。
 現状を見るに不本意だが、俺の名前は男でも女でも通じるからな。

「噂通りの、かわいらしい方ですね」
「お上手ですね。いつもそんな風に女性を口説くんですか?」

 にっこりと笑顔で言った。
 まずは軽いジャブだ。
 しかし近くで見ると、腹が立つぐらいに美形だなコイツ。

「これはキビシイなぁ。こんな外見で軽く見られがちですが、本当は超オクテなんですよ」

 それなら白いスーツにピアスなんかつけてくるな!
 それにその髪型はなんだ? 
 新宿あたりで客引きしていても、全く違和感が無いぞ?!
 ま、こっちも一歩間違えば、水商売のキャバ嬢みたいだがな。

「噂通りって、ワタシの事、誰かに聞いていたんですか?」
「ええ、もちろん。入社する前からね」

 白々しい。俺はこんな完璧すぎる美少女姿になったのは、今夜が初めてだ。
 会ったことも見たことも、ある筈がない。

「ワタシも、どこかでお会いしたような気がいたしますわ」
「それはそれは……。貴女の心の隅にでも覚えておいていただけて、とてもうれしい」

 ウソに決まってんだろw?

「少し、お話してもいいかしら?」
「大歓迎だな。実は先ほどからずっと、あなたの事が気になっていたんですよ」

 へー。そりゃこっちも好都合だ。
 そっちが興味を持ってくれているなら、尚更のこと引っ掛けやすいというものだ。

「座りませんか?」

 と、壁際に並べられている椅子に、エスコートされる。
 って、当たり前のように腰に手を回すな、気色悪い。
 それに並んで歩くと自分の背の小ささを感じさせられて、ますます気に食わない。
 しかもにこやかな笑顔の合間にちらちらと視線が……って、どこ見てんだコイツ。
 明らかに俺の作り物の胸の谷間を見ている。
 でも、まぁ判らないでもない。男はみんなおっぱいにはコダワリがあるからなw 
 でもその顔は何だ? 鼻の下を伸ばすならまだしも、不思議そうな顔ってのは何だよ?
 俺が巨乳じゃ悪いってのか? 
 俺自身は困るけどさ。
 
「何か?」
「いえ……なんでもありません」
 
 俺はごく自然に体を寄せて、わざとらしくヤツの腕に胸を押し付けた。
 ほれ、ちょっとした感触は本物みたいだろう?
 俺もさっき、自分で確かめてみたからなw

「ねぇ、私の事どう思います?」
「素敵な人だと思います。でもちょっと意外だったな」
「意外? どんな風にですか?」

 俺は膝を寄せて更に密着度を増した。
 ほれほれ、手を出すならさっさとしろ!
 こっちもいつまでもこんなこと、やってられんからな。

「もしかして、僕のこと誘ってます?」
「さぁ? どうかしら? 確かめて見たら?」

 俺は意味ありげな笑みを浮かべて、ヤツの目を見つめながら手を重ねた。
 すると事もあろうに、ヤツは俺の背中に手を回してぐっと抱き寄せると、あごの下に指を添えて上を向かせ、キスをしようとした。

「い、嫌ですわ。いきなりこんなところで」

 あわてて、ヤツの口元に手を当てて制した。
 会場の衆目を集めているのは、これはあくまでイベントだからであって、冗談なんだからな。

「どうしてです?」
「みんなこっちを見ているじゃないですか。こんなところで、堂々とキスなんてしていたら、お互いにまずいでしょう?」
「どうして? 僕はかまいませんよ」

 こっちはかまうっての!
 だがヤツは俺の手を取り上げて、押し倒すようにして無理やりのキスをしようとした。

「ま、待った! 降参する! 俺はホントは男なんだっー!」

 貞操?の危機再びを感じた俺は、そう叫んだ。
 ちょっと早いが、ここでタネ明かしだ。
 一瞬の静寂の後、事情を知っている連中からは喝采と拍手が。
 事情を知らなかった者たちからは、驚愕の声が上がった。

 俺は身の危険がまだ去っていないのにもにもかかわらず、少々引きつった勝利の笑みを浮かべた。
 だが奴は少しの動揺も見せなかった。
 俺は背中に回された奴の腕と、握り締められた両手に挟まれ、半ば押し倒される体勢のまま、逃れる術を失っていた。
 そして奴は余裕の笑みを浮かべ、余裕を無くしかけている俺を見下ろしていた。
 ヤバい、目がマジだ。
 俺達は会場中の注目を集めていた。
 動きのない二人に、会場が静まり返っていた。
 ただならぬ緊張状態に、不測の事態も予想された。
 俺は彼に抱き抱えられたまま、一刻も早く先輩か、恐れ多くも社長の助け舟を期待して固まっていた。

「もちろん、知っていますよ。僕は貴女がいるから、この会社に入ったのです」
「へ?」
「貴女から誘っていただけるなんて、本当に嬉しい」

 予想外の言葉に、一瞬気を取られた俺の隙を突いて顔を近づけ、そのまま俺の唇をふさいだ。

(☆◆!」@’%$Θqっっ――――!!!!)

「「「「キャあーーーーっっ!!!!!!」」」」

 俺は抵抗できないほど強い力でぎゅっと抱きしめられ、キスで口を塞がれていた。
 声にならない俺の叫び声の代わりに、女子社員たちの黄色い歓声が上がった。
 
「な……なななななな!!」

 俺はようやっとの思いで、彼の腕の中から抜けだすと、口を腕で拭った。
 何たる不覚! なんたる失敗! 昨年に続いてまたもや男に無理やりキスされるとは!!

「僕の恋人になってくれますね?」
「お、おおお、俺は男なんだぞっ! 騙して悪かったとは思うが、お、俺にはそんな気は……」
「僕は、本当は女性なんですよ。だからそんなに慌てなくてもいいじゃないですか」
「だから俺は男だって……、へ? 女性?」
「そうです。今はまだ体は女性なんですが。気が付きませんでしたか?」

 これには俺だけじゃなくて、会場全体が驚いた。

「「「「「「えええええっ~!!!!!!??????」」」」」」 


 このとき、俺は気がつかなかったのだが、この場で驚かなかった人間が他に2人いた。

<つづく>

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