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六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(12) by.黒い枕

(ふあああぁんっ、こんな…こと…んっ…んあ!)

ずっぱん!
鈍い音と共に、ナニかが顔に当たるが、気にしなかった。
最も重大な真実を置き去りにし、最も大きな快感を彼女は求めたのである。

「むっ!むんんっ!!」
(おねがいだぁぁ、邪魔をするなああ――っ!)

腕が動かせないので、楓希は舌先で障害物を取り除こうとした。
舌をレロレロ、と上下に動かす。

「むぐぅう!んんっ…ろんんっ!むぐう!んあっんんっ!」

それは分厚い布と、チャックの壁だった。ならばと、あるべきフックを入念に探す。
手探りならず、舌探りで。
布地にたっぷりと唾液がかかり、彼女自身の鼻先にも間接的に塗りたくられる。
だが、そんなことはお構いなしに、歯でフックを捕まえ、顔ごと下にズラす。
すると、ムワンっと、素敵な臭いが――。

「む…っ!んふゥゥゥゥ――っ!!」

鼻腔を越えて脳天を直撃した。
桁違いの喜悦に、楓希はチャックのフックを噛んだまま嬌声を張り上げる。

「も、もう…あう!あぐうゥゥ!!あ…はんんっ…!」

視界を占めるのは、チャックがだらしなく開いているジーンズと、見え隠れする男のトランクスである――が、それがどうしたことだろうか?
楓希は躊躇することなく、そこに顔を突っ込む。
文字通りに、眼中にないのだ。臭い以外のこと、全てが。

(ふぐっふぅぅ…もっと嗅ぎたい!嗅がせてよおぉっ!)

生憎と更なる障害物――先程とは比べることもなく薄い布地――が、あったが、それでも蒸せて強烈になった激臭を吸い込めことには成功した。
むさい汚臭だ。
だが、それでも求める心は高まった。
もう限界だったのだろう。
今度は、その薄い布すらも噛み切ろうと、狭い空間ながら精一杯に楓希は頭部を動かした。

「ふごっ…!むごおぉ!!んむぅ――!!」
「《――はい、そこでストップですよ》」
「むぐうう?!!」

再び動かなくなる肉体。
その瞬間でも身体は内部から燃え上がり、外皮に汗という形で零れ落ちていく。
快感の勢いに付き上げてしまう臀部を、むしろ誇らしいモノであると彼女は感じてしまっていた。

「むぐぅ――ほ、ほしいぃぃ、欲しいいいぃ」
「ふふ、欲しいんですね?でも、今はあげません。フェアじゃないからです」
「あ、…ああっ!ひょんなぁ!ああうぅ~~っ!」

引き離される愛しき激臭の懐。
そして自分が抜け出したところを、改めて見る。
考えれば考えるほど羞恥心が刃物のように彼女の心を傷つけ、その体は大きく振動した。

「あううぅ!あぐっ!あううっ…っくうぅんんっ…んん!!」
(あっああ…!か、嗅がせてくれっ!お、おかしくなるうぅ…!!)

だが、またも甘い雰囲気に理性を無くしてしまい、気がつけば、舌先を限界まで伸ばしている。
勿論、届かないが、それでも楓希は、あぐあぐと、口と舌を動かした。

「おっと、いけない。 愛欲メーター下げてなかったっ」
「――?ふぇ~~っ!?」

突如として、愛らしいというか、可憐というか――兎に角、可憐さをイメージさせる愛らしい悲鳴を上げた楓希。
彼女はよろけながら後ざると、顔を真っ赤にして、眉を極限まで下げる。
そうそれこそ――今までの行いを、心の底から恥じているかのように見えた。

「ふふ、つれないですね。『ココ』に、あんなにも可愛らしく顔を突っ込んでくれたのに…」
「うっ――あううぅぅ!ちがっ…うっ!あうっ…ぐう…っ」

彼が指先で示すのは限界一杯に引っ張られた紺地のトランクス。
だらしなく濡れている。
精液ではなく――唾液でびちゃびちゃ、だ。
決定的である。
自分は、楓希は、よりにもよって、男性器の臭いと、『そのもの』を飲み込もうとしたのだ。

「ふふ、不思議に思いますよね。あんなにも、発情しちゃうなんて?今から説明して上げますから、ちゃんと黙って聞いてて下さいね?」
「……――っ」

コクコクと、従順に首を縦に振り、同意した。
己の行為から話題がそれるなら、そっちの方が好都合だったのだ。
――もっとも、それ以上に従わなくてはいけないとさえ感じてしまうほどの義務感が、彼女の体中に反響していたからでもあった。

「まぁ、もう分かると思うけど、今までマスター…元マスターが味わった高揚感は、その体、つまりは【楓希】の体に最初ッから組み込まれている感情によって引き起こされたんです」
「……っ、…!」
「はは、そう。今だって喋りたいのにそれが出来ないのも――俺の邪魔をしたくないって気持ちが膨れ上がるのも、その【楓希】のオプションの一つなんだ」

大声を上げたり、襲い掛かって組み付いたり、楓希は様々な暴力を思いついた。
だが、やはり体が行為を禁止してしまう。
屈辱を感じていても、彼に従うように、この体には絶対服従の『ルール』が組み込まれているのだ。
だから、その命令のままに目の前の男を、彼女は愛してしまう。

(こんなの……どうすれば……)

希光の姿をした『楓希』に怒りを保てるのは精々数秒、後は明らかな恋慕が血を熱くさせる。
またも淫猥な妄想と行為に支配されたくなかった楓希は思わず顔を逸らした。

「だから、さっきのは、そのパラメータの嗅覚の部分だけを元よりも強くしたんだ。…とまぁ、説明はここまでで、他に質問は?」
「あ、あの――なんで、こんなことを……」

楓希の心はかなり衰弱していたが、それでも、一つだけ知りたいことがあった。
自分が人形になり、『楓希』が、自分に成り代わる。
よく物語である、人間に憧れた人形による策略だったのか――それとも。

「――違いますよ。元マスターが考えているようなことはありません」
「えっ」
「だから――『私は人間に成りたいなんて思ったことはありません』ってことです。…ついでにいえば、最後の最後までマスターでなく【楓希】のまま元マスターのお傍に居たかったんですよ?」

心を読まれたかのような希光の説明。
正直、有り難かったが、内容を聞けば聞くほど、疑問が浮かぶ。
じゃあ何故――と、やはり聞かずには居られなかった。

「じゃあ、なんで――」
「これは【ゲーム】――なんです」
「げぇ…むう?」
「そう、【ゲーム】なんです――私を、お作りになった六鏡 玲人様――というお方が、望んだ遊戯なんです」
「むぅ――六鏡……れい…じぃ…だと……」
「あっ、やっぱり知ってましたか。元マスターの趣向なら多分知っていますもんね?」
「――うあっ!?」
(顔が近い!! 近い!! 離れろおぉぉ!!)

急接近した希光の顔に楓希は心を奪われた。
心拍数は劇薬を投下されたように急上昇し、熱で体を苦しめる。
ドキドキ。
乙女の愛欲に体の火照り、疼きすらも催した。

(う…うあ!心臓が蒸発する!あっ…でも!む、むきょう…玲人…だと?)

六鏡 玲人【むきょう れいじ】――今、日本どころか世界中で名が売れているフィギュア師だ。
大会や公式の場、そればかりか店でも、あまり顔を見た人はいないと言うが、その能力は本物で、大富豪とかが、人形一体を数千万で購入しようとしたとか、しないとか。
そんな逸話が出来るほど、そのフィギュアたちは生きているようだと噂され――。

「って、まさか!!」
「ふふ…そうですよ。あの非売品シリーズは私の兄弟や姉妹――そして元マスターみたいに人形に変えられた人間たちなんですよ。ただ勘違いしないで下さいね、六鏡様の腕は本物ですから」

見たことはないが、もしそのシリーズが全て【楓希】と同じくらい精密で、美しかったなら、確かに誰もが心奪われるだろう。
もっとも、その六鏡 玲人の目的は単なる人形作りではなかったらしい。

「六鏡様が、どのようなお考えをして居られるのか、定かではありませんが――六鏡様がお決めになられたから、マスターには楓希になって貰ったんですよ?」
「なっ、なんだそりゃあ!!六鏡って変たィィィィ?!」

例えるなら、乳房をぶにゅんぶにゅんと、小一時間ぐらい圧搾され、揉まれ、最終的には噛み砕かれたように、痛みすらも伴う快感なのだろうか――。

「ひぃ!ひゃ!ひゅあんんっ!くうっ、んん!くぅぅ――っ!!」

そのような人外的な高揚感に楓希は侵されてしまった。
恥を考える心すらも吹き飛んでしまい、意地一つ示せず、その場に座り込んだ。
そして激しい欲情で壊れそうな体を必死に押さえた彼女は、恐る恐る希光の様子を伺った。
変化のない笑み――は、見せ掛けだけで、瞳は明らかに笑っていない。

「ふふ、流石に温厚な私――俺でも六鏡様の悪口は見逃せないなぁ~」
「ふあぁぁンっ!!止めてええっ!!止めてくれええぇぇえええ――っ!!」
「じゃあ、謝るか?六鏡様に謝るか?」
「は、ひぃぃ。あっ、謝りますぅぅ!!謝るうぅぅ!!だからっ、元に……んくううぅぅ!!!」
「――まったく、躾がなってないな。それにしても、まだ”中”だっていうのに凄い乱れよう」
「う…ぐぅっ…」

嘘のようである。
見えない何かによる無理矢理な火照りが、苦もなく消え去った。
乳首も反り立っていないし、お尻も簡単には動かない。子宮も実に冷静、いや、清純さを守り、興奮を抑制しているではないか。

「……っ」

腕を見れば、むしろ健康すぎる肌色である――が、それが本当に、自分が人間ではない別の物にされてしまったかのようで、不気味な以上に、悲しかった。

<つづく>

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