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女装男子はいかがですか?
![]() | 女装男子はいかがですか? (フラワーコミックス) (2011/07/26) 池山田 剛、車谷 晴子 他 商品詳細を見る |
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(22) by.黒い枕
ドアが開いたと思ったら、そこにはスクール水着――しかも、サイズが合っていないかのようにピチピチに肉体に張り付けている――痴女が居たならば、大抵の男は引くだろう。
が、ここにいる水野希光は違かった。
素晴らしいほど眩い笑顔で、褒められる。
「あはは…似合うじゃないか…ん?――楓希」
この場合、褒め言葉ではない。責め言葉である。
だから、きつく唇を閉じ、必死に応えないようにするスクール水着の美女――楓希。
巨大な乳房が代わりに振動する。
そして、彼女が沈黙を保てたのは三秒だけだった。
「あ…はい…あ、ありがとう、ございます…」
「そうそう…でも――まだ覚悟を決めていないんですか?もう諦めちゃいましょうよ…ね」
希光が優しく、けれどもオカマ口調で、さらに問いかけると、またも彼女は口を閉ざした。
どう見ても、屈辱のあまりに固まっている顔だ。
と、同時に、またも水着の布地を切り裂こうとするほど、乳房が蠢く。
「へぇ…反抗するんですか?だったら、現マスターであり、新マスターであるボクが調教しないといけませんね」
「…だ…っ…ん」
「はい?なんですか?」
「だ、だから…結局…調教、するん、だろ…んんっ!あっんん!」
羞恥心に触発されて、楓希はかつての『自分』として発言した。
完全な自爆である。
マスターである希光ですらも変えられない【楓希】として、根幹が彼女を発情させた。
生命としては有り得ない異質な興奮に、楓希は簡単に股間を濡らす。
「んあっ…ああ!」
「あーあ、こうなることが分かっていた筈なのに、イケない子だ…」
「ひぃ…ひんん!」
座り込む暇なく襲う快感に、本物の少女のように無抵抗に喘ぎを洩らす楓希の股間に手を伸ばすのは簡単なことだった。
指で一回、二回と、弄るだけで、びくんびくん!
この頃は、罪悪感を感じる以上に、可愛いと思えるようになり、希光は狂い踊る楓希を微笑んで見下ろした。
「可愛い奴だ…こんなに濡らして…マスターに抱かれたくて…仕方ないんだな?」
ぬとぬと感で分かる。
今、感じて洩らしたにしては粘着質が強く、香りが強い。
恐らく、水着に着替えて、家に着く前までにたっぷりと興奮してしまっていたのだろう。
一層強く、顔を赤らめる楓希の反応が、何よりの証拠である。
「あ…ちが…んん!!」
「違う?じゃあ、先に負けたのは?あの日の夜――ボクに何をしたのか忘れたのかい?」
「だから…あれは…この体の、この体のせいぃ……ですぅ」
根負けした――否、命の危険を感じるほどの体の疼きに、メイドのような口調に戻る楓希。
はっきりと、息遣いすらも、立て直していく。
人間から見れば、異常以外のなにものでもないのだろう。
「だから――違う…です。あれは…私の意思じゃ…」
「だったら、しっかりと説明してくれかな?マスターであるボクに…ああ、勿論、これは命令だ」
「か…畏まりました…マスター…っ」
火照って汗を掻いた乳房に、余計に張り付いてくる水着の恥ずかしさ。
女として興奮した証拠をたくさんこびり付かせた股間の辱め。
全身が羞恥心を刺激する諸悪の根源。
なのに、それでも彼女はマスターの命令に従う。
(おれが…俺が…希光…なのに…俺はフブキじゃ、ない…のにぃ…っ)
付け足し、顔はおろか全身が熱いのに、燃えているのに――と、悲しみながら、楓希はマスターである希光の命令に従い、説明していく。
「あ…あの日、わた、私は…マスターのご厚意を断わって…そして、そ、して…っ」
「うん、それで――なに?」
「あっ、はい…そ、それで…っ」
(この悪魔……っ!!あっくぅ!き、記憶が…ひっいんん!!)
思い出したくないのに、この脳は、使っている者の意思を無視する。
続きを求められれば、それこそ泥酔したみたいに口が滑った。
いや、言葉を発してしまう。
「わた、しは…お、おお、女と、して…マスターを…マスターの童貞を…いっ、頂きぃました…っ」
「違うだろ?強引に――奪ったんだ…今の姿でね…」
「は…はい……」
しゅんと、頭を垂れる楓希。
そう、彼が希望を掛けて、【楓希】の中から『希光』の意識を呼び起こそうとした日。
彼女はマスターを襲った。
それも、今の姿――スクール水着に着替えてから、性行為を強要したのだ。
「でも…でも…それは、その…」
赤く染まった顔もあり、従順なさまが愛らしい楓希。
彼女は、促されていないにも関わらず言葉を続けようとした。
それこそ、子宮がどくんどくんと、勝手な行動の罰で起動しても――。
「この体が、勝手に動いた…からです…」
言わなければいけないことがあると言わんばかりに強く、抗議する。
あの日、確かに楓希はマスターである希光を性的な意味で頂いた。無論、『女』として。
しかも『マスターを男にするのが、私の務めです』――と、宣言して、驚き、硬直し、遂には泣き出してしまうほど恐怖していた彼を絶頂させてしまった。
これが彼女自身の本心からの行いなら、今の状況は、間違いなく自業自得である。
しかし、しかし――だ。
「シークレット…モードか…」
「はい…そうです。そうなんども言っているじゃないですか…」
″シークレット・モード″。
その文字が、メモか何かに書かれているかのように頭の中に出現した瞬間、嫌がる楓希を追い遣り、男を責め立てる【楓希】――でもない、第三の人格と評していいほどの情欲が体を支配した。
つまり、楓希の意思はなかったのだ――が、それでも、それは 水野希光にとっては、六鏡 玲人の意思であることには変わらなかった。
「私でも知らない機能…つまり、そう言うことなんですよね…」
「だ、だから…なんでそう…んんっ…なるん…ですか…っ」
それが、彼の意思ならばと、楓希は兎も角、【楓希】として生まれた希光は、従うことしか考えていなかった。
何度、説明しても、哀願しても彼の思考はそこに戻り、手招きする希光。
それに抗う術を持たない彼女は近づくしかなかった。
「だって…一度交わったら、最後…融合機能が失われるなんて、どう考えても、”元に戻るな”…って言っているようなものじゃないですか」
この肉体が逆レイプして以来、融合と言う能力が――いや、この場合は、二人が元に戻るための力が、と言った方がいいだろう。
兎に角、初めて交わった日、その力が失われた。
希光は責めるつもりで言っているのではないだろうが、スクール水着と言う恥以外の何ものでもない衣装で視姦されている楓希は心が弱く、簡単に泣いてしまう。
「う…うぅ…ひく…っ」
「だから、私は水野希光として、楓希を所有しないといけないことなんですよ――ねぇ楓希」
「は、はぃ……」
苦しめと命令するなら、喜んで――それが、『彼女』たちの生き方なのだ。
楓希には、どうすることも出来ない。
彼女の方は、心が反対しても、体が従うのだから、現実世界では無抵抗も同じである。
「それじゃあ、なんて言うんだい楓希。ボクに、マスターに言ってごらん」
「わ、私は…私は…っ…!」
(ふぐう――ゥ!?んあっああ!…ひぃああん!)
否、精神においても、楓希はどんどんと、従順に興奮していった。
マスターの意思。
巧みに発情を促されてしまう肉体の”機能”。
そして、純粋なる――自分から痛みを求めるマゾ的な悦楽が、彼女を追い詰める。
「私は楓希…水野希光…さまの…奴隷…ですぅ…」
泣きながらも彼女は人形――ではなく、『女』であり、性奴隷であることを宣言しなければならない。
それが希光の嫉妬であり、最後の慈悲だった。
「まぁ、まだ五日目だから、ボクから行くけど…来週辺りからは、ちゃんと自分から誘うように…っ」
「…ひんっ…ん!」
「返事は…?」
「あ――っ、はい…ど、努力、しますう…」
彼に言わせれば、楓希は『人形』として失格らしい。それは楓希本人も理解していた。
心の底から、人形に、希光を愛しているつもりだったが、性行為の前では、そんなもの紙のように破れた。
兎に角、怖い。震えるほど、おぞましい。
だから、彼の指摘は正しい――が、そこからが問題だった。
「ほら…ベッドに横になれ…」
「は、はい…マスター…っ」
続けて言う言葉は『股を開きやすいように蟹股になれ――』である。
恥辱の思いを、胸に――文字通り、両手で胸を押さえ――溜め込みながら、瞳を瞑る楓希。
しかし、それが癪に障ったのか、希光はさらに命令した。
「目を瞑ってどうする!しっかりと、学ばないとだめだろ!?」
「も、申し訳ありませーんっ!!」
元マスターのためだとか、少しでも気を楽にするためだとか、言っている割りにはイラつき、怒鳴り続けている希光。
どうやら、慈悲以上に嫉妬の――【楓希】の体でいることに対しての――気持ちが、強いようである。
益々、息遣いを荒くすると、ズドンっ!!
開かせていた楓希の脚と脚の付根に入り込むと、一気に、その男性器で貫いた。
「ひぎゃああっ!んんっぐっ…うぅ!くうぅん!」
「こら、なに獣みたいな叫びを出しているんだ!?こう言うときこそちゃんと嬌声で、悩ましい女の言葉で誘わないとダメだろ!?ボクの話を聞いているのか――!?」
「ひぁああん!ご…ごしゅ…ああっ!しゅみ…ま、まっせん、んんんっ!!んぎぃぃっ!?」
ギシギシと、倒壊寸前のような建物のような軋みが、悲鳴が、下半身から生じる。
全身が砕かれたような衝撃。
濡れている筈なのに、ここまでの激痛――決まっていた。
楓希を出来る限り『女』にしようと、ワザと希光は強姦のような勢いでペニスを突き刺したのである。
(おれ…おれぇ!あ…あくぅ!ああ…わた、し)
激しい痛みの中、段々と感じる快感に、楓希の中の――『彼』の心が削れてしまう。
もっとも、けして、その意地は無くならない。
そう作られた【楓希】の肉体が、そうさせないのだ。
快と獄に挟まれ、彼女は醜く、喘ぐことしかままならない。
(わたしぃ…わたしいぃ!!はっうん、ん――っ!!)
彼女は、完全には【楓希】ではなかった。
かつて、楓希だった精神が言うには、完全に成り切られると面白くないからと、最初っから肉体の方に組み込まれているシステム――自我保存の力らしい。
その隠された機能によって『彼』は自身を保ったまま女として屈辱を味わっていた。
もう、何度も泣いたことか。
それこそ、女の子みたいにワンワン、と枕を涙で汚した。
しかし、だからと言って、この体から解放される訳でもなく、こうして希光の最後の優しさをもって、調教されていく。
「あぐっ!!ひあぁぁぁ――っ!!」

挿絵:神山 響
人形でなく、悲しみ、もがく心を保たなくてはいけない――【性奴隷<オモチャ>】として楓希は、今日もマスターに抱かれるのだった。
【完】
が、ここにいる水野希光は違かった。
素晴らしいほど眩い笑顔で、褒められる。
「あはは…似合うじゃないか…ん?――楓希」
この場合、褒め言葉ではない。責め言葉である。
だから、きつく唇を閉じ、必死に応えないようにするスクール水着の美女――楓希。
巨大な乳房が代わりに振動する。
そして、彼女が沈黙を保てたのは三秒だけだった。
「あ…はい…あ、ありがとう、ございます…」
「そうそう…でも――まだ覚悟を決めていないんですか?もう諦めちゃいましょうよ…ね」
希光が優しく、けれどもオカマ口調で、さらに問いかけると、またも彼女は口を閉ざした。
どう見ても、屈辱のあまりに固まっている顔だ。
と、同時に、またも水着の布地を切り裂こうとするほど、乳房が蠢く。
「へぇ…反抗するんですか?だったら、現マスターであり、新マスターであるボクが調教しないといけませんね」
「…だ…っ…ん」
「はい?なんですか?」
「だ、だから…結局…調教、するん、だろ…んんっ!あっんん!」
羞恥心に触発されて、楓希はかつての『自分』として発言した。
完全な自爆である。
マスターである希光ですらも変えられない【楓希】として、根幹が彼女を発情させた。
生命としては有り得ない異質な興奮に、楓希は簡単に股間を濡らす。
「んあっ…ああ!」
「あーあ、こうなることが分かっていた筈なのに、イケない子だ…」
「ひぃ…ひんん!」
座り込む暇なく襲う快感に、本物の少女のように無抵抗に喘ぎを洩らす楓希の股間に手を伸ばすのは簡単なことだった。
指で一回、二回と、弄るだけで、びくんびくん!
この頃は、罪悪感を感じる以上に、可愛いと思えるようになり、希光は狂い踊る楓希を微笑んで見下ろした。
「可愛い奴だ…こんなに濡らして…マスターに抱かれたくて…仕方ないんだな?」
ぬとぬと感で分かる。
今、感じて洩らしたにしては粘着質が強く、香りが強い。
恐らく、水着に着替えて、家に着く前までにたっぷりと興奮してしまっていたのだろう。
一層強く、顔を赤らめる楓希の反応が、何よりの証拠である。
「あ…ちが…んん!!」
「違う?じゃあ、先に負けたのは?あの日の夜――ボクに何をしたのか忘れたのかい?」
「だから…あれは…この体の、この体のせいぃ……ですぅ」
根負けした――否、命の危険を感じるほどの体の疼きに、メイドのような口調に戻る楓希。
はっきりと、息遣いすらも、立て直していく。
人間から見れば、異常以外のなにものでもないのだろう。
「だから――違う…です。あれは…私の意思じゃ…」
「だったら、しっかりと説明してくれかな?マスターであるボクに…ああ、勿論、これは命令だ」
「か…畏まりました…マスター…っ」
火照って汗を掻いた乳房に、余計に張り付いてくる水着の恥ずかしさ。
女として興奮した証拠をたくさんこびり付かせた股間の辱め。
全身が羞恥心を刺激する諸悪の根源。
なのに、それでも彼女はマスターの命令に従う。
(おれが…俺が…希光…なのに…俺はフブキじゃ、ない…のにぃ…っ)
付け足し、顔はおろか全身が熱いのに、燃えているのに――と、悲しみながら、楓希はマスターである希光の命令に従い、説明していく。
「あ…あの日、わた、私は…マスターのご厚意を断わって…そして、そ、して…っ」
「うん、それで――なに?」
「あっ、はい…そ、それで…っ」
(この悪魔……っ!!あっくぅ!き、記憶が…ひっいんん!!)
思い出したくないのに、この脳は、使っている者の意思を無視する。
続きを求められれば、それこそ泥酔したみたいに口が滑った。
いや、言葉を発してしまう。
「わた、しは…お、おお、女と、して…マスターを…マスターの童貞を…いっ、頂きぃました…っ」
「違うだろ?強引に――奪ったんだ…今の姿でね…」
「は…はい……」
しゅんと、頭を垂れる楓希。
そう、彼が希望を掛けて、【楓希】の中から『希光』の意識を呼び起こそうとした日。
彼女はマスターを襲った。
それも、今の姿――スクール水着に着替えてから、性行為を強要したのだ。
「でも…でも…それは、その…」
赤く染まった顔もあり、従順なさまが愛らしい楓希。
彼女は、促されていないにも関わらず言葉を続けようとした。
それこそ、子宮がどくんどくんと、勝手な行動の罰で起動しても――。
「この体が、勝手に動いた…からです…」
言わなければいけないことがあると言わんばかりに強く、抗議する。
あの日、確かに楓希はマスターである希光を性的な意味で頂いた。無論、『女』として。
しかも『マスターを男にするのが、私の務めです』――と、宣言して、驚き、硬直し、遂には泣き出してしまうほど恐怖していた彼を絶頂させてしまった。
これが彼女自身の本心からの行いなら、今の状況は、間違いなく自業自得である。
しかし、しかし――だ。
「シークレット…モードか…」
「はい…そうです。そうなんども言っているじゃないですか…」
″シークレット・モード″。
その文字が、メモか何かに書かれているかのように頭の中に出現した瞬間、嫌がる楓希を追い遣り、男を責め立てる【楓希】――でもない、第三の人格と評していいほどの情欲が体を支配した。
つまり、楓希の意思はなかったのだ――が、それでも、それは 水野希光にとっては、六鏡 玲人の意思であることには変わらなかった。
「私でも知らない機能…つまり、そう言うことなんですよね…」
「だ、だから…なんでそう…んんっ…なるん…ですか…っ」
それが、彼の意思ならばと、楓希は兎も角、【楓希】として生まれた希光は、従うことしか考えていなかった。
何度、説明しても、哀願しても彼の思考はそこに戻り、手招きする希光。
それに抗う術を持たない彼女は近づくしかなかった。
「だって…一度交わったら、最後…融合機能が失われるなんて、どう考えても、”元に戻るな”…って言っているようなものじゃないですか」
この肉体が逆レイプして以来、融合と言う能力が――いや、この場合は、二人が元に戻るための力が、と言った方がいいだろう。
兎に角、初めて交わった日、その力が失われた。
希光は責めるつもりで言っているのではないだろうが、スクール水着と言う恥以外の何ものでもない衣装で視姦されている楓希は心が弱く、簡単に泣いてしまう。
「う…うぅ…ひく…っ」
「だから、私は水野希光として、楓希を所有しないといけないことなんですよ――ねぇ楓希」
「は、はぃ……」
苦しめと命令するなら、喜んで――それが、『彼女』たちの生き方なのだ。
楓希には、どうすることも出来ない。
彼女の方は、心が反対しても、体が従うのだから、現実世界では無抵抗も同じである。
「それじゃあ、なんて言うんだい楓希。ボクに、マスターに言ってごらん」
「わ、私は…私は…っ…!」
(ふぐう――ゥ!?んあっああ!…ひぃああん!)
否、精神においても、楓希はどんどんと、従順に興奮していった。
マスターの意思。
巧みに発情を促されてしまう肉体の”機能”。
そして、純粋なる――自分から痛みを求めるマゾ的な悦楽が、彼女を追い詰める。
「私は楓希…水野希光…さまの…奴隷…ですぅ…」
泣きながらも彼女は人形――ではなく、『女』であり、性奴隷であることを宣言しなければならない。
それが希光の嫉妬であり、最後の慈悲だった。
「まぁ、まだ五日目だから、ボクから行くけど…来週辺りからは、ちゃんと自分から誘うように…っ」
「…ひんっ…ん!」
「返事は…?」
「あ――っ、はい…ど、努力、しますう…」
彼に言わせれば、楓希は『人形』として失格らしい。それは楓希本人も理解していた。
心の底から、人形に、希光を愛しているつもりだったが、性行為の前では、そんなもの紙のように破れた。
兎に角、怖い。震えるほど、おぞましい。
だから、彼の指摘は正しい――が、そこからが問題だった。
「ほら…ベッドに横になれ…」
「は、はい…マスター…っ」
続けて言う言葉は『股を開きやすいように蟹股になれ――』である。
恥辱の思いを、胸に――文字通り、両手で胸を押さえ――溜め込みながら、瞳を瞑る楓希。
しかし、それが癪に障ったのか、希光はさらに命令した。
「目を瞑ってどうする!しっかりと、学ばないとだめだろ!?」
「も、申し訳ありませーんっ!!」
元マスターのためだとか、少しでも気を楽にするためだとか、言っている割りにはイラつき、怒鳴り続けている希光。
どうやら、慈悲以上に嫉妬の――【楓希】の体でいることに対しての――気持ちが、強いようである。
益々、息遣いを荒くすると、ズドンっ!!
開かせていた楓希の脚と脚の付根に入り込むと、一気に、その男性器で貫いた。
「ひぎゃああっ!んんっぐっ…うぅ!くうぅん!」
「こら、なに獣みたいな叫びを出しているんだ!?こう言うときこそちゃんと嬌声で、悩ましい女の言葉で誘わないとダメだろ!?ボクの話を聞いているのか――!?」
「ひぁああん!ご…ごしゅ…ああっ!しゅみ…ま、まっせん、んんんっ!!んぎぃぃっ!?」
ギシギシと、倒壊寸前のような建物のような軋みが、悲鳴が、下半身から生じる。
全身が砕かれたような衝撃。
濡れている筈なのに、ここまでの激痛――決まっていた。
楓希を出来る限り『女』にしようと、ワザと希光は強姦のような勢いでペニスを突き刺したのである。
(おれ…おれぇ!あ…あくぅ!ああ…わた、し)
激しい痛みの中、段々と感じる快感に、楓希の中の――『彼』の心が削れてしまう。
もっとも、けして、その意地は無くならない。
そう作られた【楓希】の肉体が、そうさせないのだ。
快と獄に挟まれ、彼女は醜く、喘ぐことしかままならない。
(わたしぃ…わたしいぃ!!はっうん、ん――っ!!)
彼女は、完全には【楓希】ではなかった。
かつて、楓希だった精神が言うには、完全に成り切られると面白くないからと、最初っから肉体の方に組み込まれているシステム――自我保存の力らしい。
その隠された機能によって『彼』は自身を保ったまま女として屈辱を味わっていた。
もう、何度も泣いたことか。
それこそ、女の子みたいにワンワン、と枕を涙で汚した。
しかし、だからと言って、この体から解放される訳でもなく、こうして希光の最後の優しさをもって、調教されていく。
「あぐっ!!ひあぁぁぁ――っ!!」

挿絵:神山 響
人形でなく、悲しみ、もがく心を保たなくてはいけない――【性奴隷<オモチャ>】として楓希は、今日もマスターに抱かれるのだった。
【完】
パラふり~Strange those who cohabit~
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コミックアンリアル 2011年 08月号 Vol.32
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おと★娘 VOL.4
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水曜イラスト企画 絵師:神山さん(9) 仮名:湖根 天晴人(はると)
湖根 天晴人(はると)【変身】
獣医。とても恐ろしそうだが、動物が大の好物で、美形風な容貌に反して熱い先生。動物に噛まれて変身する一人。彼の場合は子猫。変身後【猫耳、猫尻尾、鈴の首輪、猫のコスプレ衣装、幼児体形で、ロリータ系】
絵師:神山

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
獣医。とても恐ろしそうだが、動物が大の好物で、美形風な容貌に反して熱い先生。動物に噛まれて変身する一人。彼の場合は子猫。変身後【猫耳、猫尻尾、鈴の首輪、猫のコスプレ衣装、幼児体形で、ロリータ系】
絵師:神山

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
みここさんの投稿作品
キャライラスト.倉塚りこ

序章
「そんな大役、オレにはとても――」
まさか。
危機は機会とか言うけど、でも、これは間違い無く、
――危機だ。
そんなことも知ってか、知らずかオレの大先輩である御影先輩は爽やかに微笑んで優しく告げる。
「良いよ大丈夫、昇君の監督としての腕を信じてるから僕は彼女から手を引いたんだ。」
「いやでも、妹さんを主演になんて無理です。」
ただ、先輩の妹さんだったら一応引き受けれたかも知れない。
けど、俳優と監督を掛け持つ世界の御影大先輩の双子の妹さんなんて引き受けて失敗なんてしたら……!
さらに、先輩でさえ性別を見間違えそうになるほど綺麗、となると妹さんなんて見とれて集中が……わ、悪かったな思春期でっ!
今でさえ先輩が上品に潜め笑いを浮かべているのに、少し心が揺れる。
「でね、別に僕の手にも負えない怪力破天荒美少女だから押し付け……引き受けさせてる訳ではないから安心して。」
心が激しく動揺していたから、先輩の呟いた言葉はオレには届いていなかった。
そして、先輩は世界の誰もを魅了した天使のようで小悪魔のような笑みを浮かべて囁く。
「ロケハンも衣装合わせも手伝ってあげる。なんなら、俳優として出ても――」
「分かりました。……妹さんを主演女優にさせて下さい。」
無理だ。この人にかなう訳がない。
溜め息を堪えて愛想笑いを見せると彼女――間違えた彼と軽い握手した。
「妹と僕をよろしくね。」
「此方こそ、宜しくお願いします。」
「さて昇君、もうすぐかな。」
「何が、ですか。」
「相変わらずの冷静だね。」
瞬間――扉が吹っ飛ばされた。
「何ですか、今のっ!?」
「流石に、これには冷静陥落だったか。」
そして、その扉は勢い余って窓ガラスを割って外に飛んでいく。
それにつられて沢山の資料が飛ばされ、割れた窓ガラスから漏れ出す冷たい風が身体を色んな意味で震えさせる。
気が付いたら、事務所は災害地となっていた。
そして、扉があったところにいたのは――
「お兄様は馬鹿ですっ!……わたしが、いつ女優になるなんて言いましたか?」
御影先輩にそっくりな、少し華奢で儚げで、しかし、どこか凜とした仁王立ち姿の美少女だった。
「紹介しようか。僕の双子の――」
――世界の身体に机が勢い良く当たる。
そのまま倒れる御影先輩に、もう一人の御影は、そっぽを向いている。
「御影先輩っ!?」
慌てて抱きかかえて、意識を確認する。
しかし、毒リンゴでも口に含んだかのように御影姫――いや、王子は寝息さえ立てていなかった。
脈を見る。すると、正常に動いているようだった。
「案外、冷静なのね。」
割れた窓ガラスから、景色を眺めて少女は言う。
「世の中、ビジネスライクに生きなければ確実に呑まれますから。」
自分が思ったよりも、淡々とした声が自分から漏れた。
なんだかその声が、気持ちが悪かった。
少女は此方を振り向くと、先輩とは違った純粋でストレートに憂いを浮かべた笑顔を見せた。
「わたしね、女優なんて嫌いも嫌い。取り繕うなんて奇妙だから嫌。兄様といる時のわたしなんて言語道断」
その表情と台詞が印象的で、それなのに、それだから、どんな反応が正しいのか分からなかった。
だから、適当な明るい笑みを貼り付けて、「オレなんて、取り繕ってばっかですよ。」
「綺麗に笑うのね。」
「これも営業スマイル、ですけど。」
「面白い、かも。」
すると、御影少女はオレの目の前まで駆け寄ると兄に似た妖艶な微笑みを浮かべた。
「わたしとゲームしない?貴方は、監督作品でわたしに完璧な演技をさせる。わたしは貴方の仮面を剥ぐ。どっちが早いかしら?」
くすくす、と上品に潜め笑う。やはり、御影の血か。
でなければ、有無を言わせないその高貴な威圧感は、どこからくるのか。
だが、仮面ってなんだ?よく、分からない。
「とりあえずお受けしときます。」
その回答に不満なのか――長机が苦しそうな音を立てた。
「とりあえず、なんだね?」
真っ二つに折れた長机を見ながら、請求書は御影持ちにしておこうと考える。
「趣旨が良く分からないので。」
なぜか、彼女は溜め息を漏らした。
「貴方、名前は?」
「赤沢 昇だ。」
「ノンちゃんね、分かったわ。」
「何がノンちゃんですか、一割の分かってないかと。」
少女はわらう。少年はためいきをつく。
「それは、貴方の腕よ。」
「オレは、演技指導に関してだけです。」
「で、演技指導は?」
「貴方に合った脚本来るまで待ってて下さい。」
「はいはい、監督さん。で、これ名刺。」」
――名刺にはトリフィック トリック事務所の御影 音琴(ネコト)と書かれていた。
――御影 音琴
◎
赤沢 昇。
彼の印象は、最低、最悪、鬼、悪魔。以上。
あの人なら大丈夫かなって思ったけど(ちっちゃいし、童顔だし)、撮影入るとビジネスライクな表情から専門家の表情へとすり替わる。
「そこの主演、被ってる」「涙、流せるだろ」「ただの音読なら、餓鬼でも出来る」「もういい、今日は帰れ」
毎日毎日、悪夢に出てきて、早くも二週間。もう我慢の限界の限界。
わたしは、寝たままの体制で拳を振り上げる。
下ろしたらベッドが大破する→兄様が来る→事情話す→仕事の話は無くなる
そうだったらいいけど多分無理。
兄様でさえ、打ち合わせで彼と一緒みたいだし。
うやむやが止まらなくてわたしは、勢い良く
――振り下ろすッ!
「痛っ!え、何?」
ありえない。痛い。手が心臓みたいにドクドクと音を立てる。
さらに言うと――声が、変。
いきなり低くなって、でも聞き覚えがあるような声で、
ピーンポーン
遠くから、インターホンの音。
でも、今はそんな場合なんかじゃない!
――刹那!破裂音!破壊音!爆音!
それらがわたしの耳の鼓膜を鋭くなぞった。
それは、インターホンの方からの音だった。
慌ててそちらに駆け寄ると、ドアが大破している所には、
「……何がおこってるか説明して戴きたいんだが。」
雨であったにも関わらず、傘をささないで濡れたままの姿の――わたしが鋭く睨んでいた。
「な、何?お兄様ですか?」
「僕は後ろ。」
真後ろから声がして、振り返ると兄様がいた。
「でも、お兄様ってどういうこと?お兄さんは、音琴がお嫁さんになるなんて認めないからね?」
相変わらず似た顔で、わたしには表現できないほどの優しいようで黒い笑みを――わたしではないわたしに向ける。
わたし二人目は溜め息をついて、
「御影先輩、その微笑み――演技ですか。なら、説明して下さい。」
淡々と、でもやや苦しげに頭を抱えて言う。そのことに、晴れやかな笑みを浮かべ兄様は二人目を撫でた。
「流石、昇君。冷静かつ賢いね。」
要するに赤沢君は、わたしの姿にさせられたらしい。
「けど、兄様は赤沢君と一緒じゃ――」
「主演、これは入れ替わりだ。鏡見て来い」
わたしは言葉も告げれず、姿見の方へ走っていった。
◎
御影音琴が、かえって来るのも時間の問題だと赤沢は思った。
オレの部屋に姿見なんて、存在しない。
「で、オレ達を変えた目的は。」
「ふふっ、方法じゃないのが、キミらしいね。妹を抱きしめようとするだけで肋骨折られるのは辛いし。」
「要するに、器は違えど暴力的でない妹さんを可愛がりたいと」
「怒ってるかな?犠牲者にしてしまって」
「いえ、御影先輩は、オレの憧れの御影先輩ですから。」
「手が怒りか何かで震えてるよ?でもね――」
「お兄様たち、何話してるのですか!」
御影は、小さな少年と小さな少女を愛おしそうに抱き締めた。
「可愛い顔の昇君と可愛い性格の音琴、二人の音琴を纏めて愛してるからねっ。」
その少年は、暴れた。
「監督、殴って下さい!一思いに!」
その少女は、淡々と首を横に振った。
「流石に御影先輩に、そんなこと――」
「やれ!やるのよ!」
「やれやれだね」
「「兄様/先輩のせいだ/ですから。」
序章終わり

序章
「そんな大役、オレにはとても――」
まさか。
危機は機会とか言うけど、でも、これは間違い無く、
――危機だ。
そんなことも知ってか、知らずかオレの大先輩である御影先輩は爽やかに微笑んで優しく告げる。
「良いよ大丈夫、昇君の監督としての腕を信じてるから僕は彼女から手を引いたんだ。」
「いやでも、妹さんを主演になんて無理です。」
ただ、先輩の妹さんだったら一応引き受けれたかも知れない。
けど、俳優と監督を掛け持つ世界の御影大先輩の双子の妹さんなんて引き受けて失敗なんてしたら……!
さらに、先輩でさえ性別を見間違えそうになるほど綺麗、となると妹さんなんて見とれて集中が……わ、悪かったな思春期でっ!
今でさえ先輩が上品に潜め笑いを浮かべているのに、少し心が揺れる。
「でね、別に僕の手にも負えない怪力破天荒美少女だから押し付け……引き受けさせてる訳ではないから安心して。」
心が激しく動揺していたから、先輩の呟いた言葉はオレには届いていなかった。
そして、先輩は世界の誰もを魅了した天使のようで小悪魔のような笑みを浮かべて囁く。
「ロケハンも衣装合わせも手伝ってあげる。なんなら、俳優として出ても――」
「分かりました。……妹さんを主演女優にさせて下さい。」
無理だ。この人にかなう訳がない。
溜め息を堪えて愛想笑いを見せると彼女――間違えた彼と軽い握手した。
「妹と僕をよろしくね。」
「此方こそ、宜しくお願いします。」
「さて昇君、もうすぐかな。」
「何が、ですか。」
「相変わらずの冷静だね。」
瞬間――扉が吹っ飛ばされた。
「何ですか、今のっ!?」
「流石に、これには冷静陥落だったか。」
そして、その扉は勢い余って窓ガラスを割って外に飛んでいく。
それにつられて沢山の資料が飛ばされ、割れた窓ガラスから漏れ出す冷たい風が身体を色んな意味で震えさせる。
気が付いたら、事務所は災害地となっていた。
そして、扉があったところにいたのは――
「お兄様は馬鹿ですっ!……わたしが、いつ女優になるなんて言いましたか?」
御影先輩にそっくりな、少し華奢で儚げで、しかし、どこか凜とした仁王立ち姿の美少女だった。
「紹介しようか。僕の双子の――」
――世界の身体に机が勢い良く当たる。
そのまま倒れる御影先輩に、もう一人の御影は、そっぽを向いている。
「御影先輩っ!?」
慌てて抱きかかえて、意識を確認する。
しかし、毒リンゴでも口に含んだかのように御影姫――いや、王子は寝息さえ立てていなかった。
脈を見る。すると、正常に動いているようだった。
「案外、冷静なのね。」
割れた窓ガラスから、景色を眺めて少女は言う。
「世の中、ビジネスライクに生きなければ確実に呑まれますから。」
自分が思ったよりも、淡々とした声が自分から漏れた。
なんだかその声が、気持ちが悪かった。
少女は此方を振り向くと、先輩とは違った純粋でストレートに憂いを浮かべた笑顔を見せた。
「わたしね、女優なんて嫌いも嫌い。取り繕うなんて奇妙だから嫌。兄様といる時のわたしなんて言語道断」
その表情と台詞が印象的で、それなのに、それだから、どんな反応が正しいのか分からなかった。
だから、適当な明るい笑みを貼り付けて、「オレなんて、取り繕ってばっかですよ。」
「綺麗に笑うのね。」
「これも営業スマイル、ですけど。」
「面白い、かも。」
すると、御影少女はオレの目の前まで駆け寄ると兄に似た妖艶な微笑みを浮かべた。
「わたしとゲームしない?貴方は、監督作品でわたしに完璧な演技をさせる。わたしは貴方の仮面を剥ぐ。どっちが早いかしら?」
くすくす、と上品に潜め笑う。やはり、御影の血か。
でなければ、有無を言わせないその高貴な威圧感は、どこからくるのか。
だが、仮面ってなんだ?よく、分からない。
「とりあえずお受けしときます。」
その回答に不満なのか――長机が苦しそうな音を立てた。
「とりあえず、なんだね?」
真っ二つに折れた長机を見ながら、請求書は御影持ちにしておこうと考える。
「趣旨が良く分からないので。」
なぜか、彼女は溜め息を漏らした。
「貴方、名前は?」
「赤沢 昇だ。」
「ノンちゃんね、分かったわ。」
「何がノンちゃんですか、一割の分かってないかと。」
少女はわらう。少年はためいきをつく。
「それは、貴方の腕よ。」
「オレは、演技指導に関してだけです。」
「で、演技指導は?」
「貴方に合った脚本来るまで待ってて下さい。」
「はいはい、監督さん。で、これ名刺。」」
――名刺にはトリフィック トリック事務所の御影 音琴(ネコト)と書かれていた。
――御影 音琴
◎
赤沢 昇。
彼の印象は、最低、最悪、鬼、悪魔。以上。
あの人なら大丈夫かなって思ったけど(ちっちゃいし、童顔だし)、撮影入るとビジネスライクな表情から専門家の表情へとすり替わる。
「そこの主演、被ってる」「涙、流せるだろ」「ただの音読なら、餓鬼でも出来る」「もういい、今日は帰れ」
毎日毎日、悪夢に出てきて、早くも二週間。もう我慢の限界の限界。
わたしは、寝たままの体制で拳を振り上げる。
下ろしたらベッドが大破する→兄様が来る→事情話す→仕事の話は無くなる
そうだったらいいけど多分無理。
兄様でさえ、打ち合わせで彼と一緒みたいだし。
うやむやが止まらなくてわたしは、勢い良く
――振り下ろすッ!
「痛っ!え、何?」
ありえない。痛い。手が心臓みたいにドクドクと音を立てる。
さらに言うと――声が、変。
いきなり低くなって、でも聞き覚えがあるような声で、
ピーンポーン
遠くから、インターホンの音。
でも、今はそんな場合なんかじゃない!
――刹那!破裂音!破壊音!爆音!
それらがわたしの耳の鼓膜を鋭くなぞった。
それは、インターホンの方からの音だった。
慌ててそちらに駆け寄ると、ドアが大破している所には、
「……何がおこってるか説明して戴きたいんだが。」
雨であったにも関わらず、傘をささないで濡れたままの姿の――わたしが鋭く睨んでいた。
「な、何?お兄様ですか?」
「僕は後ろ。」
真後ろから声がして、振り返ると兄様がいた。
「でも、お兄様ってどういうこと?お兄さんは、音琴がお嫁さんになるなんて認めないからね?」
相変わらず似た顔で、わたしには表現できないほどの優しいようで黒い笑みを――わたしではないわたしに向ける。
わたし二人目は溜め息をついて、
「御影先輩、その微笑み――演技ですか。なら、説明して下さい。」
淡々と、でもやや苦しげに頭を抱えて言う。そのことに、晴れやかな笑みを浮かべ兄様は二人目を撫でた。
「流石、昇君。冷静かつ賢いね。」
要するに赤沢君は、わたしの姿にさせられたらしい。
「けど、兄様は赤沢君と一緒じゃ――」
「主演、これは入れ替わりだ。鏡見て来い」
わたしは言葉も告げれず、姿見の方へ走っていった。
◎
御影音琴が、かえって来るのも時間の問題だと赤沢は思った。
オレの部屋に姿見なんて、存在しない。
「で、オレ達を変えた目的は。」
「ふふっ、方法じゃないのが、キミらしいね。妹を抱きしめようとするだけで肋骨折られるのは辛いし。」
「要するに、器は違えど暴力的でない妹さんを可愛がりたいと」
「怒ってるかな?犠牲者にしてしまって」
「いえ、御影先輩は、オレの憧れの御影先輩ですから。」
「手が怒りか何かで震えてるよ?でもね――」
「お兄様たち、何話してるのですか!」
御影は、小さな少年と小さな少女を愛おしそうに抱き締めた。
「可愛い顔の昇君と可愛い性格の音琴、二人の音琴を纏めて愛してるからねっ。」
その少年は、暴れた。
「監督、殴って下さい!一思いに!」
その少女は、淡々と首を横に振った。
「流石に御影先輩に、そんなこと――」
「やれ!やるのよ!」
「やれやれだね」
「「兄様/先輩のせいだ/ですから。」
序章終わり
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(21) by.黒い枕
ここは、名もなきメイド喫茶の一つ。
名前は敢えて、記入しないが、ベタなネーミングだからこそ、愛嬌があると言うコアな客層もいる店でもある。
特に今は――
「いらっしゃいませ。ご主人さま」
通称メロンちゃんと言われる看板メイドのお陰で客足は三倍強にも、成っていた。
むろん、名前でなく、ニックネームだ。
しかし、その名付けは、実に論理的に適うものだった、と認めるしかないだろう。
なぜなら――。
ぶにゅんびゅん。ぱふぱふ――ん!!
「うおおお!! メロンちゃん、最高!」
「巨乳メイド……万歳!」
「チクショウ!!また、アイツに…負けた!」
胸元を卑猥に強調するメイド服から零れてしまいそうなほど揺れる乳房。
その大きさは、正しくメロン級だ。
むしろ、スイカちゃん――と、呼びたくなるほどのサイズだ。
「あ…あはは…また今度、お願いしますね…っ」
そう思うほど、形もよく、重量感が溢れ出る乳房を携え、メロンちゃんと、呼ばれた女性――楓希は早歩きで仕事場に向かう。
「またかよ!」
「フブキちゃ~ん!! 俺を見捨てないでくれ!!」
「チクショウ!チクショウ!!巨乳メイドの夢がああぁ!!」
楓希のメイド仕事は特殊だった。
なんせ、制服であるメイド服から、異質なのである。
他のみんなは安全と倫理観を考慮に入れた許容範囲のデザインだが、彼女は違った。根本的に。
色合いは文字通りメロンを思わせる緑色を基調とし、淫靡な谷間の強調。
あたかもギャルゲーに出てくるようなメイド服だ。
よく見れば彼女の首には、首輪のようなモノがあるではないか。
胸が、巨乳が服に合わなかった、と言えばそれまでであるが、それにしても、エロい。
エロ、過ぎる。
(くっ……見るんじゃねえェェ……)
煌びやかなピンクの毛。
突起し、簡単に擦れてしまう胸部と臀部の膨らみ。
腰周りの触りたくなるほど、急なカーブ。
そして、例の恥かしいメイド服。これで目立つな、と命令するほうが、おかしいだろう。
注目される羞恥心と、視線で犯される屈辱は、どうにも成らなかった。
そして――。
「お帰り…なっ、なさいませ…。…ご主人さま」
少々、ぎこちないものの、メイドとして礼をする楓希。
必然にメロン級以上の乳が蠢き、背後から喝采が沸き立つ。
(くそぉお!なんで俺がこんなことをォォ!!)
若干、女性の声が混じっていた賞賛や叫び、そして自分に対する会話。
鼓膜からの甘酸っぱいとも、辛いとも言える仕打ちに楓希は、堪えた。
本当なら、メイド喫茶で働くことはおろか、メイド服を着込むことすら嫌なのだ。
まざまざと自分が『女装させられていること』を自覚されるから――と、微かに瞳を潤ませ、彼女は、ご主人さまである男性の横に座った。
「なんだよ……そんな畏まらなくても、いいじゃないか」
そしてご主人さま――水野希光は、平然と、砕けた口調で会話を開始した。
その意味が、何を意味するのか、よく知っている筈なのに。
彼女の心境を察しながら、メイドの楓希でなく、自身の恋人としての楓希を望むマスター。
非道な仕打ちである――が。
「だっ、ダメだよ。ショウくん……」
マスターに望まれれば、逆らえない体と心で楓希は恋人として対応する。
じゅん…ぴちゃりと、音を立ててしまいほど、女性器が湿った。
「いいじゃないか。俺たち恋人なんだし…それとも、他に困ることでもあるのか?」
大有りだ。
叫びたいほど、感情が爆発し、彼女はこめかみを歪ませる。
ただ、やはり肉感的且つ可愛らしい存在には、威圧感と言うものは、まるで無かった。
(ん…あっ…ひどい…んんっ!)
【楓希】の内部には様々なギミックが、隠されていた。
本来、楓希だった希光にも知らされていない機能の数々。
例えば、マスターたる存在に対する相応しい言動と態度をしなければ、発情してしまう――と、言ったように。
「…………っ」
かつて、自分だった体に、存在に、メイドのように平伏し、服従する。
それは自分に実った乳房への愛撫以上に屈辱だった。
汚辱と言ってもいい。
しかも、同時にマスターの命令は聞かなくてはならない。
矛盾した生き地獄だった。
「しょうがないなあ。じゃあ、今日はBコースでお願いするね。メロンちゃん」
その様子が哀れに思ったのだろう。彼は優しく、メイドの望みを承諾した。
囁かれるマスターの甘美なお言葉。
楓希は胸の重みが取れた開放感と爽快さに、笑みを零す。
「ありがとう御座います。――フブキ、Bコース入ります」
注文されたコースを他のメイドに伝え、再びマスターに向き合う。
その乙女な笑顔に、ご主人さまである希光は勿論のこと、その場に居た誰もが心を奪われる。
――メロンちゃんと呼ばれるメイドが、ここまで人気な理由。
それは、ここでの楓希は特殊だったからに他ならない。
官能的すぎる体や弾けんばかりの胸元もそうだが、何よりも彼女の、彼女だけのサービスが特殊であり、また店の売りになっていたのだ。
その名も、メロンちゃんのパフパフサービス。
内容は語らずとも分かるように、楓希の、その豊満すぎる乳房を揉める権利を得るのだ。
この場合は、水野希光が。
「くくっ……凄い。マシュマロみたいだ」
「んんっ…あんっ!…んっ」
マユとは違い、本当に触れているか否か――のような優しいタッチである。
当然だが、正常なメイド喫茶のサービスではない。
【楓希】の能力で、この行為を常識なのだと世界に誤認させているに過ぎないのだ。
故に、水野希光以外には、このサービスを受けたことはなかった。
――つまり、注目を集めるだけ集めて、楓希を苦しめるだけのイベントなのである。

挿絵:神山 響
(くそっ…んっ…気持ち、いい…)
子供の遊戯のような指使い。
そんな行為に、彼女の肉体は無情にも、喜びはしゃいだ。
「ど、どうでしたご主人さま?フブキのおっぱいは気持ち良かったですかぁ?」
「うん……本当のメロンのような甘い香りがしたよ」
自然とメイドとして――正確には従順な人形として――笑みを振り撒く。
胸の疼きが収まるにつれ、理性が戻り、自己嫌悪に心が押しつぶされた。
(くそ…この変態が…)
暴力を振いたくなるほど--『男』としての--気力を取り戻した楓希。
だが、それはさらなる悪夢に彼女を追いやる副産物でしかなかった。
「どうぞ。ご主人さま――オムライスです」
タイミングよく、運ばれるオムライス。
既に衣服の乱れを直した楓希は、ふーふーと熱い玉子とライスを冷ましていく。
「…ご主人さま。熱いのでお気をつけ下さい」
あ~ん、と言う恥かしい言葉すらも忘れない。
今の彼女に出来ることはただひとつ――目の前の、かつて自分だった存在に尽くすことしか、許されていないのだ。
「ん、美味しいけど…まだ慣れてないんだな--元マスターはいけない子ですね?」
「ひぃあっ!あっ…す、すみま…せん!」
「ダメですよ?許しません…仕事が終わったら…例の服装で帰って来て下さいね…」
「はい…っ…お、仰せのままに…っ」
故に、どんな屈辱でも――コクコクと、首を縦に揺らして、受け止めるしかなかった。首にある首輪のせいか、今の楓希はメイドと言うよりは、『奴隷』のようである。
<つづく>
名前は敢えて、記入しないが、ベタなネーミングだからこそ、愛嬌があると言うコアな客層もいる店でもある。
特に今は――
「いらっしゃいませ。ご主人さま」
通称メロンちゃんと言われる看板メイドのお陰で客足は三倍強にも、成っていた。
むろん、名前でなく、ニックネームだ。
しかし、その名付けは、実に論理的に適うものだった、と認めるしかないだろう。
なぜなら――。
ぶにゅんびゅん。ぱふぱふ――ん!!
「うおおお!! メロンちゃん、最高!」
「巨乳メイド……万歳!」
「チクショウ!!また、アイツに…負けた!」
胸元を卑猥に強調するメイド服から零れてしまいそうなほど揺れる乳房。
その大きさは、正しくメロン級だ。
むしろ、スイカちゃん――と、呼びたくなるほどのサイズだ。
「あ…あはは…また今度、お願いしますね…っ」
そう思うほど、形もよく、重量感が溢れ出る乳房を携え、メロンちゃんと、呼ばれた女性――楓希は早歩きで仕事場に向かう。
「またかよ!」
「フブキちゃ~ん!! 俺を見捨てないでくれ!!」
「チクショウ!チクショウ!!巨乳メイドの夢がああぁ!!」
楓希のメイド仕事は特殊だった。
なんせ、制服であるメイド服から、異質なのである。
他のみんなは安全と倫理観を考慮に入れた許容範囲のデザインだが、彼女は違った。根本的に。
色合いは文字通りメロンを思わせる緑色を基調とし、淫靡な谷間の強調。
あたかもギャルゲーに出てくるようなメイド服だ。
よく見れば彼女の首には、首輪のようなモノがあるではないか。
胸が、巨乳が服に合わなかった、と言えばそれまでであるが、それにしても、エロい。
エロ、過ぎる。
(くっ……見るんじゃねえェェ……)
煌びやかなピンクの毛。
突起し、簡単に擦れてしまう胸部と臀部の膨らみ。
腰周りの触りたくなるほど、急なカーブ。
そして、例の恥かしいメイド服。これで目立つな、と命令するほうが、おかしいだろう。
注目される羞恥心と、視線で犯される屈辱は、どうにも成らなかった。
そして――。
「お帰り…なっ、なさいませ…。…ご主人さま」
少々、ぎこちないものの、メイドとして礼をする楓希。
必然にメロン級以上の乳が蠢き、背後から喝采が沸き立つ。
(くそぉお!なんで俺がこんなことをォォ!!)
若干、女性の声が混じっていた賞賛や叫び、そして自分に対する会話。
鼓膜からの甘酸っぱいとも、辛いとも言える仕打ちに楓希は、堪えた。
本当なら、メイド喫茶で働くことはおろか、メイド服を着込むことすら嫌なのだ。
まざまざと自分が『女装させられていること』を自覚されるから――と、微かに瞳を潤ませ、彼女は、ご主人さまである男性の横に座った。
「なんだよ……そんな畏まらなくても、いいじゃないか」
そしてご主人さま――水野希光は、平然と、砕けた口調で会話を開始した。
その意味が、何を意味するのか、よく知っている筈なのに。
彼女の心境を察しながら、メイドの楓希でなく、自身の恋人としての楓希を望むマスター。
非道な仕打ちである――が。
「だっ、ダメだよ。ショウくん……」
マスターに望まれれば、逆らえない体と心で楓希は恋人として対応する。
じゅん…ぴちゃりと、音を立ててしまいほど、女性器が湿った。
「いいじゃないか。俺たち恋人なんだし…それとも、他に困ることでもあるのか?」
大有りだ。
叫びたいほど、感情が爆発し、彼女はこめかみを歪ませる。
ただ、やはり肉感的且つ可愛らしい存在には、威圧感と言うものは、まるで無かった。
(ん…あっ…ひどい…んんっ!)
【楓希】の内部には様々なギミックが、隠されていた。
本来、楓希だった希光にも知らされていない機能の数々。
例えば、マスターたる存在に対する相応しい言動と態度をしなければ、発情してしまう――と、言ったように。
「…………っ」
かつて、自分だった体に、存在に、メイドのように平伏し、服従する。
それは自分に実った乳房への愛撫以上に屈辱だった。
汚辱と言ってもいい。
しかも、同時にマスターの命令は聞かなくてはならない。
矛盾した生き地獄だった。
「しょうがないなあ。じゃあ、今日はBコースでお願いするね。メロンちゃん」
その様子が哀れに思ったのだろう。彼は優しく、メイドの望みを承諾した。
囁かれるマスターの甘美なお言葉。
楓希は胸の重みが取れた開放感と爽快さに、笑みを零す。
「ありがとう御座います。――フブキ、Bコース入ります」
注文されたコースを他のメイドに伝え、再びマスターに向き合う。
その乙女な笑顔に、ご主人さまである希光は勿論のこと、その場に居た誰もが心を奪われる。
――メロンちゃんと呼ばれるメイドが、ここまで人気な理由。
それは、ここでの楓希は特殊だったからに他ならない。
官能的すぎる体や弾けんばかりの胸元もそうだが、何よりも彼女の、彼女だけのサービスが特殊であり、また店の売りになっていたのだ。
その名も、メロンちゃんのパフパフサービス。
内容は語らずとも分かるように、楓希の、その豊満すぎる乳房を揉める権利を得るのだ。
この場合は、水野希光が。
「くくっ……凄い。マシュマロみたいだ」
「んんっ…あんっ!…んっ」
マユとは違い、本当に触れているか否か――のような優しいタッチである。
当然だが、正常なメイド喫茶のサービスではない。
【楓希】の能力で、この行為を常識なのだと世界に誤認させているに過ぎないのだ。
故に、水野希光以外には、このサービスを受けたことはなかった。
――つまり、注目を集めるだけ集めて、楓希を苦しめるだけのイベントなのである。

挿絵:神山 響
(くそっ…んっ…気持ち、いい…)
子供の遊戯のような指使い。
そんな行為に、彼女の肉体は無情にも、喜びはしゃいだ。
「ど、どうでしたご主人さま?フブキのおっぱいは気持ち良かったですかぁ?」
「うん……本当のメロンのような甘い香りがしたよ」
自然とメイドとして――正確には従順な人形として――笑みを振り撒く。
胸の疼きが収まるにつれ、理性が戻り、自己嫌悪に心が押しつぶされた。
(くそ…この変態が…)
暴力を振いたくなるほど--『男』としての--気力を取り戻した楓希。
だが、それはさらなる悪夢に彼女を追いやる副産物でしかなかった。
「どうぞ。ご主人さま――オムライスです」
タイミングよく、運ばれるオムライス。
既に衣服の乱れを直した楓希は、ふーふーと熱い玉子とライスを冷ましていく。
「…ご主人さま。熱いのでお気をつけ下さい」
あ~ん、と言う恥かしい言葉すらも忘れない。
今の彼女に出来ることはただひとつ――目の前の、かつて自分だった存在に尽くすことしか、許されていないのだ。
「ん、美味しいけど…まだ慣れてないんだな--元マスターはいけない子ですね?」
「ひぃあっ!あっ…す、すみま…せん!」
「ダメですよ?許しません…仕事が終わったら…例の服装で帰って来て下さいね…」
「はい…っ…お、仰せのままに…っ」
故に、どんな屈辱でも――コクコクと、首を縦に揺らして、受け止めるしかなかった。首にある首輪のせいか、今の楓希はメイドと言うよりは、『奴隷』のようである。
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(20) by.黒い枕
ずらりと並んだ大きなロッカーと、十個以上はある女の子らしいヌイグルミが置かれた机では、そこが何処であるのかは分からない。
だが、そこにメイド服を着た女の子や女性が居たら、どうだろうか。
さらに日本の都心部の七十坪以上、八十坪未満の土地と言う限定があれば、さらに絞られる。
――と言うか、もう分かるだろう。
ここは、数人のアルバイトが、メイドごっこをする場所。
メイド喫茶の更衣室だ。
「ひゃああ!!こら……マユ!」
「うわ…これが噂のIカップ――ごっさんですぅ!」
そして――そこでは一人の先輩が、にゅぐにゅぐと、後輩に後ろから胸を揉まれていた。
許可していないのに胸を触られれば、揉まれれば例え同性でも許せるものではない。
楓希は弄ばれつつも、そこはしっかりと叱った。
しかし、怒られた筈の後輩であるマユ――十八歳未満ぐらいの女の子――は、楓希の胸を揉み解すのを止めない。
むしろ体重ごと傾けて、背中に密着。
守るのがブラだけなので、マユが述べるようにIカップの乳房に布地と指が、深々と食い込んだ。
「こっ、こらああ!! ああっ……ちょっと!!」
「うわああっ!! 凄い!凄い!」
マユは、体格差のある楓希の体に負けないように、ハァハァしながら熱烈な愛撫を続けた。
性行為が目的だったのかは分からないが、責められている彼女の乳に薄っすらと血が集まっていく。
(いい加減に……!)
「――こらっ! なにやってんの!」
「あだっ!?」
容赦なく背後から、節操なしにセクハラを噛ましてくる後輩を振る払おうとしたら、別の誰かが止めてくれた。
天は人を見放さないものだと、乳房とブラを両手で庇いながら、楓希は感謝――しない。
(いや……運がないから…)
自分は不幸だから、運がないから、後輩に巨乳を弄られ、『女』を強いられているのだ。
彼女には、マスターを愛し、マスターの恋人役を演じ、――可愛らしいメイド衣装に着替えて、働かなくてはならなかった。
自分は、そう言う存在なのだから。
「ほら……楓希も早く着替えなさい――彼、待っているわよ?」
(その話題に触れるなああぁ!!)
やはり、自分は幸運に見放された、つくづく不幸な存在らしい。
助けてくれた先輩――メイド姿のユイに愚痴交じりの叫びを、ぶつけた。無論、脳内で。
(くそぉおお!!言いたくないのにィィ!!)
話を振り直したいが、行き成り彼氏の話しから遠ざかるのは不自然だった。
そもそも、『設定』違反になってしまう――と言うこともあり、楓希は愛想よく且つ、恥じらいながら、返した。
「もう!…ショウくんったら……」
我ながら上手くぶりっ子を、純情な女の子を演じられたと、楓希は誇る。
だが、瞬時に精神は陽気から陰気に変わった。
悲しみと切なさが急激に襲い掛かる。
おまけに――。
(はっ、ううぅ!! 来たよお――ォ!!)
背筋に無視できない電気が流された。
溜まらず、楓希は背筋を仰け反らせ、子宮を奮わす。
「まあまあ。彼氏として心配なんでしょ?許してあげなよっ」
「そうですよ。って言うか、どこであんな美形を捕まえたんですか?」
二人には知られないように――発情を隠した――最小限の動作と仕草。
故に、ユイもマユも罪悪感なしに会話を続けてきた。
「えへへ。羨ましいでしょ。マユ」
ゾクゾク……じゅっくうぅ。
またも、神経をむず痒くさせる痺れが襲いかかり、子宮が覚醒へと鼓動を開始する。
ダメだと思いつつも、停止できないむらむらの――欲情。
『設定』されているシステムであるため、抑制することすらも不可能。
楓希は思わず、その誇る巨乳に抱きついて、広がっていく衝動を宥めつかせる。
当たり前だが、気休め程度。
だが、その気休め程度が、彼女にとってはなによりも助かった。
「ん?どうしたの?ここ…寒いの?」
反射的に刺激してしまった乳房に感覚に悶絶している楓希に、ユイの声が掛かる。
どうやら、冷気によって乳に抱き付いたのだと勘違いしているらしい。
チャンス、とばかりに今ある羞恥心、不快感、そして性欲を押し殺し、彼女は話題を一転させた。
「大丈夫だよ。あっそれよりも急がないと!時間!時間!」
「えっ、あ本当だ!!」
「ふええ!フブキ先輩の胸に夢中になっていたら時間がっ!?」
一人、今すぐ叱りたいが、時間がないのは事実である。
――自分は特に時間は掛かるので、急がなくてはならなかった。
(はぁ…なんで俺がこんなことを…うぅ)
特注の、とっても凝っているメイド服だからである。
けっして、マスターを待たせているからでは――ない。多分。
(って――俺はなんで、アイツのことを考えているんだあぁぁ!?)
忙しく着替える最中、瞬間的でも自分の彼氏――水野希光のことを思ってしまい、メイド服を抱きしめたまま、頭を大きく振るう楓希だった。
<つづく>
だが、そこにメイド服を着た女の子や女性が居たら、どうだろうか。
さらに日本の都心部の七十坪以上、八十坪未満の土地と言う限定があれば、さらに絞られる。
――と言うか、もう分かるだろう。
ここは、数人のアルバイトが、メイドごっこをする場所。
メイド喫茶の更衣室だ。
「ひゃああ!!こら……マユ!」
「うわ…これが噂のIカップ――ごっさんですぅ!」
そして――そこでは一人の先輩が、にゅぐにゅぐと、後輩に後ろから胸を揉まれていた。
許可していないのに胸を触られれば、揉まれれば例え同性でも許せるものではない。
楓希は弄ばれつつも、そこはしっかりと叱った。
しかし、怒られた筈の後輩であるマユ――十八歳未満ぐらいの女の子――は、楓希の胸を揉み解すのを止めない。
むしろ体重ごと傾けて、背中に密着。
守るのがブラだけなので、マユが述べるようにIカップの乳房に布地と指が、深々と食い込んだ。
「こっ、こらああ!! ああっ……ちょっと!!」
「うわああっ!! 凄い!凄い!」
マユは、体格差のある楓希の体に負けないように、ハァハァしながら熱烈な愛撫を続けた。
性行為が目的だったのかは分からないが、責められている彼女の乳に薄っすらと血が集まっていく。
(いい加減に……!)
「――こらっ! なにやってんの!」
「あだっ!?」
容赦なく背後から、節操なしにセクハラを噛ましてくる後輩を振る払おうとしたら、別の誰かが止めてくれた。
天は人を見放さないものだと、乳房とブラを両手で庇いながら、楓希は感謝――しない。
(いや……運がないから…)
自分は不幸だから、運がないから、後輩に巨乳を弄られ、『女』を強いられているのだ。
彼女には、マスターを愛し、マスターの恋人役を演じ、――可愛らしいメイド衣装に着替えて、働かなくてはならなかった。
自分は、そう言う存在なのだから。
「ほら……楓希も早く着替えなさい――彼、待っているわよ?」
(その話題に触れるなああぁ!!)
やはり、自分は幸運に見放された、つくづく不幸な存在らしい。
助けてくれた先輩――メイド姿のユイに愚痴交じりの叫びを、ぶつけた。無論、脳内で。
(くそぉおお!!言いたくないのにィィ!!)
話を振り直したいが、行き成り彼氏の話しから遠ざかるのは不自然だった。
そもそも、『設定』違反になってしまう――と言うこともあり、楓希は愛想よく且つ、恥じらいながら、返した。
「もう!…ショウくんったら……」
我ながら上手くぶりっ子を、純情な女の子を演じられたと、楓希は誇る。
だが、瞬時に精神は陽気から陰気に変わった。
悲しみと切なさが急激に襲い掛かる。
おまけに――。
(はっ、ううぅ!! 来たよお――ォ!!)
背筋に無視できない電気が流された。
溜まらず、楓希は背筋を仰け反らせ、子宮を奮わす。
「まあまあ。彼氏として心配なんでしょ?許してあげなよっ」
「そうですよ。って言うか、どこであんな美形を捕まえたんですか?」
二人には知られないように――発情を隠した――最小限の動作と仕草。
故に、ユイもマユも罪悪感なしに会話を続けてきた。
「えへへ。羨ましいでしょ。マユ」
ゾクゾク……じゅっくうぅ。
またも、神経をむず痒くさせる痺れが襲いかかり、子宮が覚醒へと鼓動を開始する。
ダメだと思いつつも、停止できないむらむらの――欲情。
『設定』されているシステムであるため、抑制することすらも不可能。
楓希は思わず、その誇る巨乳に抱きついて、広がっていく衝動を宥めつかせる。
当たり前だが、気休め程度。
だが、その気休め程度が、彼女にとってはなによりも助かった。
「ん?どうしたの?ここ…寒いの?」
反射的に刺激してしまった乳房に感覚に悶絶している楓希に、ユイの声が掛かる。
どうやら、冷気によって乳に抱き付いたのだと勘違いしているらしい。
チャンス、とばかりに今ある羞恥心、不快感、そして性欲を押し殺し、彼女は話題を一転させた。
「大丈夫だよ。あっそれよりも急がないと!時間!時間!」
「えっ、あ本当だ!!」
「ふええ!フブキ先輩の胸に夢中になっていたら時間がっ!?」
一人、今すぐ叱りたいが、時間がないのは事実である。
――自分は特に時間は掛かるので、急がなくてはならなかった。
(はぁ…なんで俺がこんなことを…うぅ)
特注の、とっても凝っているメイド服だからである。
けっして、マスターを待たせているからでは――ない。多分。
(って――俺はなんで、アイツのことを考えているんだあぁぁ!?)
忙しく着替える最中、瞬間的でも自分の彼氏――水野希光のことを思ってしまい、メイド服を抱きしめたまま、頭を大きく振るう楓希だった。
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(19) by.黒い枕
命じられれば、しっかりと従うものの、やはり恥じ入り、眼前まで来たら瞳すらもぎゅっと閉じてしまう楓希――これでは従順な奴隷ではないか。
人形とは違い、確かな自我があり、個性が彼女にはあった。
(そこは、はいっ…でしょ!なんで顔を赤くするんですか!?)
とてもじゃないが、見ていられない。
人形なら、本当の【人形】なら、そうするべきだと憤慨する希光。
彼女自身の価値観は――作り主から作られたものだが、その精神構造は――少なくとも【楓希】そのものなのだ。
そして、その精神が、魂が叫ぶ。
(…私なら…臭いも気にしないのにィィー!)
彼女には、かつてマスターだった楓希には、恥があり、後悔があり、切なさまで備わっていた。
人形にはいらない感情である。
人形には――『愛』さえ、あればいいのだ。それが、希光の中にいる精神の結論である。
同時に――。
(やっぱり…無理が有りますよ…)
お互いに、【人形】にも、【人間】にも成りきれない、とも考え至った。
幾ら、あの方の、六鏡 玲人の命令とは言え――辛い。
辛すぎた。
【楓希】の心は、そう言う風に作られていないのだから……。
(私だって、文句の一つも言いたくなりますよぉぉ――六鏡さまぁぁぁ!!)
矛盾した命令に設定。
六鏡の絶対さと、人形としての穢れない恋慕の板ばさみ。
――現に、希光は脳内とは言え、絶対なる主に”不満”を抱いてしまったことすらも、気付かない。
「あ、あの…マスター?」
「もーう!マスターじゃなくて、ショウくんでしょ…あっ!だろ…!?」
「は、はい…スミマセン。あっでも…考え事をしていた…みたいだったから……うぅ!」
激情のまま思わず素を出してしまう希光だったが、もう一人の異端者は、もっと酷い。
敬語を使わないで良いと命令しているのに、屈服することしか頭に無いのである。
屈服することと、愛することは、ほんの少し違う。
誇りを持っているか、どうかの違いで――ぶっちゃけ言えば、目の前の『女』は、快感に酔っているだけなのだ。
なので、ますます腹が立つ。こんなにも自分が悩んでいるのに、と。
「少し様子を見ようと思ったけど…止めだ…」
もう少し、様子を見てから、『最後のチャンス』に掛けようとしたが、時間の無駄だった。いや、もう手遅れかもしれない。
「ショウくん……?」
(だから…その、ああこのような言い方をして大丈夫かしらーな顔は止めろォォ!!お願いだから…)
うじうじと、恋人を演じていることを快く思っていない楓希。
ただ肉体から来る高揚感に現を抜かしているだけで、マスターを、自分を愛しているわけではない。
【楓希】として、誇りを持って、働いてきただけに――彼には、果てしなく、ムカついた。
「……んはぁぁ!もういいから…こっちこい…」
もっとも、ただイライラしているだけでは事態の好転は望めない。
兎に角――自分に課せられた『設定』を守りつつ――行動あるのみである。
希光はベッドに腰を掛けると、楓希を手招きした。
「ほら…座れ…」
「は…え?あ、あの」
「ああもう!いいから…俺の上に座れって言っているんだ…」
優柔不断で迷っている彼女。
支配力を働かせて従わせた方が良かったかもしれない――が、それでは意味がない。
仕方なく、力任せに体を引き寄せると、彼女は可愛らしい叫びを発した。
「ひゃあ!?あ…そんな!ダメ…です!」
聞く気はない。いや、聞きたくもなかった。
馴染み深い声が、恥かしがり、命令に背こうとする口調。
体も、もがいている。
さながら、腕の中で暴れる子猫のように。
(まっ…メッキを剥がしたら…こんなものでしょう)
「どうした?んん?これも、マスターの命令なんけど…」
内心、元マスターとは言え、”マスター”を苦しめていることに罪悪感が生まれる。
マスターとして義務を全うするように作られたが――マスターとして定めた人物を愛するように、尽くすようにとも作られているためである。
だから――尚更、止めることは出来なかった。
「あ…済みません。あの…これから何を…?」
「何を…って…そのナニだよ」
一瞬、キョトンと呆ける楓希。
だが、流石は元男なのか――二秒と掛からずに、絶叫する。
「え――?あ、ちょ――!?」
声を張り上げると共に、起き上がろうとしたため、体ごと捕まえ、ぐぐっと、押さえ込む。
丁度、胡坐を組んでいる自分の上に収まるように。
神経を支配されてはいないとは言え、力尽くで体を圧迫されれば似たようなものである。
案の定、楓希は、その瞳をウルウルさせて、哀願してきた。
「離して下さい!…嘘ですよね?マスター…っ…そうですよね…」
無論、本気だ。
無言のまま、力で彼女を支配するとベッドの奥へと運ぶ。
「嘘じゃないぞ…お前はなんだ?俺に仕える人形の【楓希】じゃないのか?」
そして、彼が口を開いたのは、楓希が『下』になり、希光が『上』となった瞬間だった。
準備万端である。
「そうです…ですが…でも、こんな行き成り…」
「だってお前は、マスターに戻るのが嫌なんだろ?」
なんて言い表せばいいのか分らないが、兎に角、快楽のままに楓希は【楓希】を受け入れている。
いや、受け入れた気になっているのだ。
少なくとも、性行為のことを視野に入れていなかったのだから、余計に【楓希】として、失格である。
「は、はい…そうです。わ、私はマスターにぃ…でも…でもまだ――」
「なら、早いも遅いも関係ない。違うか…?」
「違、い…ません」
正論で攻めているだけに、見る見るうちに楓希は消沈していく。
もはや、その顔には恋慕で頬を染めておらず、ただただ恐怖に引き摺っていた。
それでも従おうとしているのだから、そこは評価してあげよう。
あくまでも、『人間』としての話だが……。
「なら…お前はどうするべきだ?」
「ま、マスターが望むがまま、だっ…抱かれますぅ…っ」
合意するものの、瞳をきつく閉じ、肉体を大きく揺らす彼女。
ぷるぷると、巨乳が淫靡に異性を誘うが、それでも、乗り気ではないのは確かであり――同時に、彼女が、まだ『彼』に戻れることを示していた。
(ああ…良かった。私はこれで……)
一種の賭けだが、希光の企みは成功したと言える。
【人形】としての矛盾を指摘して自我の復活を促すだけではダメだった。
そこで彼は、「彼女に、自分が『女』であることの自覚することに重みを置き、その異性との性行為の迫力を持って、正気に戻らせようとしたのである。
そして、今、完全に恐怖に支配されている――眼前の”少女”が、その答えだ。
「…さあ!どうする!?今ならまだ間に合うかも――しれませんよ!?」
「も、元に…」
「なに!?聞こえないぞ…?」
「私は…元にっ…」
「元にい?」
「――戻りたくなどありません!!」
希光の問いかけに、震える少女から突如、積極的な女性に変わる。
叫びと同時に、彼女は希光に抱きつく。
ぎゅううぅ――と。
「……ア、レ…?え、ええ――と?」
希光の誤算であり、敗因。
それは、六鏡玲人の思惑と、『彼女』の本当のあり方を誤解していたことである。
『水野希光』の体と、『楓希』の体を入れ替えたことがゲームなのではない。
「んんっ!」
「んちゅ…あむぅ!んんっ…」
【楓希】の精神と肉体も含めてこそ――【ゲーム】だったのだ。
「はぁはぁ…うふふ、マスター。フブキが、気持ちよくして、差し上げますね…?」
積極的にキスを仕掛けてきた楓希の妖艶な笑みに当てられた希光は、なす術もなく『男』としての初夜を――強いられてしまうのだった。
<つづく>
人形とは違い、確かな自我があり、個性が彼女にはあった。
(そこは、はいっ…でしょ!なんで顔を赤くするんですか!?)
とてもじゃないが、見ていられない。
人形なら、本当の【人形】なら、そうするべきだと憤慨する希光。
彼女自身の価値観は――作り主から作られたものだが、その精神構造は――少なくとも【楓希】そのものなのだ。
そして、その精神が、魂が叫ぶ。
(…私なら…臭いも気にしないのにィィー!)
彼女には、かつてマスターだった楓希には、恥があり、後悔があり、切なさまで備わっていた。
人形にはいらない感情である。
人形には――『愛』さえ、あればいいのだ。それが、希光の中にいる精神の結論である。
同時に――。
(やっぱり…無理が有りますよ…)
お互いに、【人形】にも、【人間】にも成りきれない、とも考え至った。
幾ら、あの方の、六鏡 玲人の命令とは言え――辛い。
辛すぎた。
【楓希】の心は、そう言う風に作られていないのだから……。
(私だって、文句の一つも言いたくなりますよぉぉ――六鏡さまぁぁぁ!!)
矛盾した命令に設定。
六鏡の絶対さと、人形としての穢れない恋慕の板ばさみ。
――現に、希光は脳内とは言え、絶対なる主に”不満”を抱いてしまったことすらも、気付かない。
「あ、あの…マスター?」
「もーう!マスターじゃなくて、ショウくんでしょ…あっ!だろ…!?」
「は、はい…スミマセン。あっでも…考え事をしていた…みたいだったから……うぅ!」
激情のまま思わず素を出してしまう希光だったが、もう一人の異端者は、もっと酷い。
敬語を使わないで良いと命令しているのに、屈服することしか頭に無いのである。
屈服することと、愛することは、ほんの少し違う。
誇りを持っているか、どうかの違いで――ぶっちゃけ言えば、目の前の『女』は、快感に酔っているだけなのだ。
なので、ますます腹が立つ。こんなにも自分が悩んでいるのに、と。
「少し様子を見ようと思ったけど…止めだ…」
もう少し、様子を見てから、『最後のチャンス』に掛けようとしたが、時間の無駄だった。いや、もう手遅れかもしれない。
「ショウくん……?」
(だから…その、ああこのような言い方をして大丈夫かしらーな顔は止めろォォ!!お願いだから…)
うじうじと、恋人を演じていることを快く思っていない楓希。
ただ肉体から来る高揚感に現を抜かしているだけで、マスターを、自分を愛しているわけではない。
【楓希】として、誇りを持って、働いてきただけに――彼には、果てしなく、ムカついた。
「……んはぁぁ!もういいから…こっちこい…」
もっとも、ただイライラしているだけでは事態の好転は望めない。
兎に角――自分に課せられた『設定』を守りつつ――行動あるのみである。
希光はベッドに腰を掛けると、楓希を手招きした。
「ほら…座れ…」
「は…え?あ、あの」
「ああもう!いいから…俺の上に座れって言っているんだ…」
優柔不断で迷っている彼女。
支配力を働かせて従わせた方が良かったかもしれない――が、それでは意味がない。
仕方なく、力任せに体を引き寄せると、彼女は可愛らしい叫びを発した。
「ひゃあ!?あ…そんな!ダメ…です!」
聞く気はない。いや、聞きたくもなかった。
馴染み深い声が、恥かしがり、命令に背こうとする口調。
体も、もがいている。
さながら、腕の中で暴れる子猫のように。
(まっ…メッキを剥がしたら…こんなものでしょう)
「どうした?んん?これも、マスターの命令なんけど…」
内心、元マスターとは言え、”マスター”を苦しめていることに罪悪感が生まれる。
マスターとして義務を全うするように作られたが――マスターとして定めた人物を愛するように、尽くすようにとも作られているためである。
だから――尚更、止めることは出来なかった。
「あ…済みません。あの…これから何を…?」
「何を…って…そのナニだよ」
一瞬、キョトンと呆ける楓希。
だが、流石は元男なのか――二秒と掛からずに、絶叫する。
「え――?あ、ちょ――!?」
声を張り上げると共に、起き上がろうとしたため、体ごと捕まえ、ぐぐっと、押さえ込む。
丁度、胡坐を組んでいる自分の上に収まるように。
神経を支配されてはいないとは言え、力尽くで体を圧迫されれば似たようなものである。
案の定、楓希は、その瞳をウルウルさせて、哀願してきた。
「離して下さい!…嘘ですよね?マスター…っ…そうですよね…」
無論、本気だ。
無言のまま、力で彼女を支配するとベッドの奥へと運ぶ。
「嘘じゃないぞ…お前はなんだ?俺に仕える人形の【楓希】じゃないのか?」
そして、彼が口を開いたのは、楓希が『下』になり、希光が『上』となった瞬間だった。
準備万端である。
「そうです…ですが…でも、こんな行き成り…」
「だってお前は、マスターに戻るのが嫌なんだろ?」
なんて言い表せばいいのか分らないが、兎に角、快楽のままに楓希は【楓希】を受け入れている。
いや、受け入れた気になっているのだ。
少なくとも、性行為のことを視野に入れていなかったのだから、余計に【楓希】として、失格である。
「は、はい…そうです。わ、私はマスターにぃ…でも…でもまだ――」
「なら、早いも遅いも関係ない。違うか…?」
「違、い…ません」
正論で攻めているだけに、見る見るうちに楓希は消沈していく。
もはや、その顔には恋慕で頬を染めておらず、ただただ恐怖に引き摺っていた。
それでも従おうとしているのだから、そこは評価してあげよう。
あくまでも、『人間』としての話だが……。
「なら…お前はどうするべきだ?」
「ま、マスターが望むがまま、だっ…抱かれますぅ…っ」
合意するものの、瞳をきつく閉じ、肉体を大きく揺らす彼女。
ぷるぷると、巨乳が淫靡に異性を誘うが、それでも、乗り気ではないのは確かであり――同時に、彼女が、まだ『彼』に戻れることを示していた。
(ああ…良かった。私はこれで……)
一種の賭けだが、希光の企みは成功したと言える。
【人形】としての矛盾を指摘して自我の復活を促すだけではダメだった。
そこで彼は、「彼女に、自分が『女』であることの自覚することに重みを置き、その異性との性行為の迫力を持って、正気に戻らせようとしたのである。
そして、今、完全に恐怖に支配されている――眼前の”少女”が、その答えだ。
「…さあ!どうする!?今ならまだ間に合うかも――しれませんよ!?」
「も、元に…」
「なに!?聞こえないぞ…?」
「私は…元にっ…」
「元にい?」
「――戻りたくなどありません!!」
希光の問いかけに、震える少女から突如、積極的な女性に変わる。
叫びと同時に、彼女は希光に抱きつく。
ぎゅううぅ――と。
「……ア、レ…?え、ええ――と?」
希光の誤算であり、敗因。
それは、六鏡玲人の思惑と、『彼女』の本当のあり方を誤解していたことである。
『水野希光』の体と、『楓希』の体を入れ替えたことがゲームなのではない。
「んんっ!」
「んちゅ…あむぅ!んんっ…」
【楓希】の精神と肉体も含めてこそ――【ゲーム】だったのだ。
「はぁはぁ…うふふ、マスター。フブキが、気持ちよくして、差し上げますね…?」
積極的にキスを仕掛けてきた楓希の妖艶な笑みに当てられた希光は、なす術もなく『男』としての初夜を――強いられてしまうのだった。
<つづく>
水曜イラスト企画 絵師:キリセさん(6) 名前:大凪 貴志
大凪 貴志【オオナギ タカシ】(精神同居)
退魔師の一族の次期宗主。双子の妹を持っており、ある日、強力な妖怪に体を奪われ、妹の体(主人公を女の子にしたようなそっくりな容姿、健康的な体)と代々、女性限定で伝授されてきた女神型の式(顔は美麗でとてつもなくグラマー、顔よりも大きな爆乳、着物に羽衣)の二つの体に憑依して生きながらえることに。だが、実は妹はレズの上、Sで所有者の影響を受けた式も同じような性格に成っていた。ここぞとばかりに二人は、立場の弱くなった主人公を苛めてしまう。特に妹は双子なのに主人公が『兄』であることへの不満から、苛めが段々とエスカレートしていき……。
絵師:キリセ

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
退魔師の一族の次期宗主。双子の妹を持っており、ある日、強力な妖怪に体を奪われ、妹の体(主人公を女の子にしたようなそっくりな容姿、健康的な体)と代々、女性限定で伝授されてきた女神型の式(顔は美麗でとてつもなくグラマー、顔よりも大きな爆乳、着物に羽衣)の二つの体に憑依して生きながらえることに。だが、実は妹はレズの上、Sで所有者の影響を受けた式も同じような性格に成っていた。ここぞとばかりに二人は、立場の弱くなった主人公を苛めてしまう。特に妹は双子なのに主人公が『兄』であることへの不満から、苛めが段々とエスカレートしていき……。
絵師:キリセ

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(18) by.黒い枕
「ただいまあ」
「たっ――ただいま戻りました」
同じ意味、内容の言葉。
しかし、それに込められた感情は相反し、水野 希光と楓希は自宅の戸を潜った。
アレから――自ら突発的且つ無自覚にキスしてから――楓希は『人間』に戻れないでいた。
(なんでこんなにドキドキするのよおお~~~っ!!?)
『マスター』の邪魔にならないか。
『マスター』にご迷惑をかけていないだろうか。
『マスター』のご家族に不審に思われないだろうか。
元に戻れるのだろうか――などとは露ほど考えない。 あるのは主への敬愛。
内から湧き上がる『モノ』としてのプライドや意地、そして愛に楓希は溺れていた。
(うわああ!! お姉さまと合うよおお!!)
記憶は消えず、人格もそのまま。
なのに、感情の大半を肉体に支配された彼女には『女』となっていた。
――というか、自分が『男』である意識が限りなく薄くなる。
(ううぅ)
不安を隠すように、不遜などではないかと思いつつも、彼女は希光に抱きついた。
疼く心にじゅっ、と安堵が染み渡る。
(あ――待ってくださいィィ)
楓希が心の天秤に振り回されていくうちに、彼がリビングのドアを開ける。
「お帰えりぃ――相変わらず、見せ付けてくれるわね、アンタたち」
モソモソ、と口を動かす水野 芙美奈。ポテトチップスを、雄々しく、食していた。
外見的に中々の美女なのだが、この情景を見たら、男どもは求愛を躊躇するだろう。
要は、どんな人にでも欠点があり、隙がある好例なのだ。
「からかわないで下さい!おね――芙美奈…さん」
頬を染めながら勢い良く文句を言おうとして止めた楓希。
危うくお姉さま、もしくは芙美奈様――と、呼びそうだったからだ。
自分は楓希。
人形――としてではなく、水野 希光の恋人。
さらに言えば水野家容認の同居人。
それが『自分』なのだと記憶と『設定』を読み上げ、彼女は照れ惑う。
(わ――私が、マスターの恋人……)
「おー、おー、 照れちゃって可愛いのぉー」
「ちゃ、茶化さないでください!!」
それは何時も通りの光景、展開。
記憶と言う名の『設定』通りに自分は、楓希は受け入れられている。
「じゃあ――俺、先に風呂は入っているわ」
「じゃあ、楓希ちゃんは夕食よろしくねえぇ」
「はい! すぐに作ります」
希光は風呂場に向かう前に二階に、自室に向かい、芙美奈はそのままテレビと間食を楽しむ。
これまた、問題ない――日常。
体験することは初めてなのに、違和感なく楓希自身も受け入れられ、彼女は台所に向かった。
「え…っと…あった…あった…」
――これまた、覚えのない思い出、自分の可愛いエプロン
彼女の着物とは似合わなそうであるが、意外なことにマッチする。
具体的に言うなら――。
「よし…ふぶき、張り切って作ります!」
奥様、もしくはメイド、召使――と言う名の雰囲気が醸し出された。
(今日は……煮魚がいいかな?)
元・水野希光は料理をしたことはなかった。
しかし、今はもう違う。
まるで糸に操られるように、それでいて明確な意思で、体は料理に取り掛かる。
(ふふ……マスター喜んでくれるかな?)
彼女は嫌悪のひとつも見せずに嬉々して魚を捌き、副菜の下ごしらえを終える。
そして、それらを鍋に加えた後、醤油やみりんなどで味を調えていく。
人形としての喜び。
人間には不自由な、枷でしかないのかもしれない。しかし、人形にはそれが歓喜なのだ。
(あっ、そうだ。 マスターの後は私が入らせて貰おう…)
【楓希】の肉体は、その内装された精神、否―― 魂そのものを楓希に変えた。
入れ物の中に入れられた水のように。
何時から、と言う認識すらも脱げ落ち、彼女は純粋な敬愛の念を抱きながら、愛しき人のために仕事をこなしていく。
恋人でありマスターである人のために――祈るように食材に愛情を奮った。
~~~
「あ…っ、あのマスター…じゃなくて…ショウくん…私もお風呂に入りたいのです…入りたいんだけど……」
食事が終わり、そのままお風呂場に向かおうとした彼女を、希光は自室に待機させていた。
――つまり、自分こと水野 希光の部屋に。
そして待っていたのは幼妻なのか、初々しい恋人なのか、よく分らない存在だった。
(…はぁ…全然ダメじゃないですか…これ…)
ハッキリ言って、自分から見たら、彼女は『人形』ではない。
体に縛られ、『設定』に引き摺られ、【楓希】に成り切っているつもりなのだろう――が、元楓希としては、全然”ダメ”である。
「これはマスターとしての命令だ」
「あ…申し訳ありません……っ」
どこがと言えば、不安定に喜怒哀楽にぶれ動いているところだ。
実際に、胸を張って服従しているかと思えば、モジモジと顔を赤くし、手を弄っている。
まるで汗臭い体を愛しい人に嗅がれたくない、と言った感じに。
そして、それは当っているのだろう。
「…ん、どうしたんだ?楓希…」
希光が近寄り、髪を流して上げただけで、さらに赤く燃え上がり恥じ入る楓希。
「あ…ま、マスター…ダメ…っ」
そして、嫌々とばかりに後ろに下がる。
これのどこが、人形なのだろう。
「いいから…俺の近くに…来なさい」
「は…はい」
<つづく>
「たっ――ただいま戻りました」
同じ意味、内容の言葉。
しかし、それに込められた感情は相反し、水野 希光と楓希は自宅の戸を潜った。
アレから――自ら突発的且つ無自覚にキスしてから――楓希は『人間』に戻れないでいた。
(なんでこんなにドキドキするのよおお~~~っ!!?)
『マスター』の邪魔にならないか。
『マスター』にご迷惑をかけていないだろうか。
『マスター』のご家族に不審に思われないだろうか。
元に戻れるのだろうか――などとは露ほど考えない。 あるのは主への敬愛。
内から湧き上がる『モノ』としてのプライドや意地、そして愛に楓希は溺れていた。
(うわああ!! お姉さまと合うよおお!!)
記憶は消えず、人格もそのまま。
なのに、感情の大半を肉体に支配された彼女には『女』となっていた。
――というか、自分が『男』である意識が限りなく薄くなる。
(ううぅ)
不安を隠すように、不遜などではないかと思いつつも、彼女は希光に抱きついた。
疼く心にじゅっ、と安堵が染み渡る。
(あ――待ってくださいィィ)
楓希が心の天秤に振り回されていくうちに、彼がリビングのドアを開ける。
「お帰えりぃ――相変わらず、見せ付けてくれるわね、アンタたち」
モソモソ、と口を動かす水野 芙美奈。ポテトチップスを、雄々しく、食していた。
外見的に中々の美女なのだが、この情景を見たら、男どもは求愛を躊躇するだろう。
要は、どんな人にでも欠点があり、隙がある好例なのだ。
「からかわないで下さい!おね――芙美奈…さん」
頬を染めながら勢い良く文句を言おうとして止めた楓希。
危うくお姉さま、もしくは芙美奈様――と、呼びそうだったからだ。
自分は楓希。
人形――としてではなく、水野 希光の恋人。
さらに言えば水野家容認の同居人。
それが『自分』なのだと記憶と『設定』を読み上げ、彼女は照れ惑う。
(わ――私が、マスターの恋人……)
「おー、おー、 照れちゃって可愛いのぉー」
「ちゃ、茶化さないでください!!」
それは何時も通りの光景、展開。
記憶と言う名の『設定』通りに自分は、楓希は受け入れられている。
「じゃあ――俺、先に風呂は入っているわ」
「じゃあ、楓希ちゃんは夕食よろしくねえぇ」
「はい! すぐに作ります」
希光は風呂場に向かう前に二階に、自室に向かい、芙美奈はそのままテレビと間食を楽しむ。
これまた、問題ない――日常。
体験することは初めてなのに、違和感なく楓希自身も受け入れられ、彼女は台所に向かった。
「え…っと…あった…あった…」
――これまた、覚えのない思い出、自分の可愛いエプロン
彼女の着物とは似合わなそうであるが、意外なことにマッチする。
具体的に言うなら――。
「よし…ふぶき、張り切って作ります!」
奥様、もしくはメイド、召使――と言う名の雰囲気が醸し出された。
(今日は……煮魚がいいかな?)
元・水野希光は料理をしたことはなかった。
しかし、今はもう違う。
まるで糸に操られるように、それでいて明確な意思で、体は料理に取り掛かる。
(ふふ……マスター喜んでくれるかな?)
彼女は嫌悪のひとつも見せずに嬉々して魚を捌き、副菜の下ごしらえを終える。
そして、それらを鍋に加えた後、醤油やみりんなどで味を調えていく。
人形としての喜び。
人間には不自由な、枷でしかないのかもしれない。しかし、人形にはそれが歓喜なのだ。
(あっ、そうだ。 マスターの後は私が入らせて貰おう…)
【楓希】の肉体は、その内装された精神、否―― 魂そのものを楓希に変えた。
入れ物の中に入れられた水のように。
何時から、と言う認識すらも脱げ落ち、彼女は純粋な敬愛の念を抱きながら、愛しき人のために仕事をこなしていく。
恋人でありマスターである人のために――祈るように食材に愛情を奮った。
~~~
「あ…っ、あのマスター…じゃなくて…ショウくん…私もお風呂に入りたいのです…入りたいんだけど……」
食事が終わり、そのままお風呂場に向かおうとした彼女を、希光は自室に待機させていた。
――つまり、自分こと水野 希光の部屋に。
そして待っていたのは幼妻なのか、初々しい恋人なのか、よく分らない存在だった。
(…はぁ…全然ダメじゃないですか…これ…)
ハッキリ言って、自分から見たら、彼女は『人形』ではない。
体に縛られ、『設定』に引き摺られ、【楓希】に成り切っているつもりなのだろう――が、元楓希としては、全然”ダメ”である。
「これはマスターとしての命令だ」
「あ…申し訳ありません……っ」
どこがと言えば、不安定に喜怒哀楽にぶれ動いているところだ。
実際に、胸を張って服従しているかと思えば、モジモジと顔を赤くし、手を弄っている。
まるで汗臭い体を愛しい人に嗅がれたくない、と言った感じに。
そして、それは当っているのだろう。
「…ん、どうしたんだ?楓希…」
希光が近寄り、髪を流して上げただけで、さらに赤く燃え上がり恥じ入る楓希。
「あ…ま、マスター…ダメ…っ」
そして、嫌々とばかりに後ろに下がる。
これのどこが、人形なのだろう。
「いいから…俺の近くに…来なさい」
「は…はい」
<つづく>
六鏡 玲人の暗躍――水野 希光の場合 ――(17) by.黒い枕
(あっあっ、あああ――ァア!!?知らない!知らない!知らないよ~~ぉ!!私はこんなこと覚えていないよお…っ!!)
もはや手遅れなほど脳みそがショートしていた楓希は取りあえず心の中で、言い訳を吐き散らした。
ミヤコに追求されていく内に心に浮かぶのは、恋人との甘いひと時。
(…ないっ!ない…っ!…そんなことないからっ…心臓のバクバクを止めてくれえぇ…)
余計なお節介どころでないミヤコの言葉に、ジュンワリと、心が蕩けていく。
気付かされてしまった。
彼が好きで好きでしょうがない――と。
「まっ…まぁ…落ち着きなさいって、多分希光くん禁断症状よ。本人に会えば直ぐにでも元に戻るわ」
しかも、またも高揚を刺激する言葉を言うミヤコ。
そんなに彼女は、自分を――【楓希】に、させたいのか。体温の膨張に意識が暴走しかけていく。
(そうだ――トイレ……!!)
個室にでも篭って、ぐつぐつ煮える血を冷却しよう。
そう――思い立つのに、時間は掛からなかった。
「…あの…み、みや、こ…っ!ごめん…ショウくんに謝ってくるよぉ…っ!」
無論、逃げるための嘘である、が――どうやら、先に騙されていたのは、楓希の方だった。
「ここに居たのか――楓希」
「へ…へふう…っ?」
彼女は、名前を呼ばれるままに、後ろを見やった。
最初はよく見えない。
ごしごしと、涙で霞んだ目を擦り、漸く分る、相手の人相。
長くすらりとした銀髪の、美青年。
思い出すだけで情熱に胸焼けを起こしてしまう彼女の、楓希の愛しい人だった。
「まったく、ミヤコさんが知らせてくれるまで、大変だったんだぞ」
「ふふ、やはり恋人同士は恋人同士で話し合うのが一番でしょ…」
素敵な笑顔を向ける女海賊。
よく見れば、格好とミスマッチな携帯を右手に持っていた。
彼女が彼を呼んだことは明白である。
「……あっ」
しかし、楓希には何もかもが――関係なかった。
もう限界である。
体中のあっちこっちで持て余した性欲が疼いてしまう。
様々な邪な感情が、文字通りに爆発し――楓希は、糸が切れたかのように気絶する。
「おっと――大丈夫か?」
優しく支える水野 希光。
もはや、この時点で絵に描いたようなカップル――で、そんな二人を女海賊に扮したミヤコが、ヒューヒューと、祝福していた。
~~
「ん――あ、れ、ぇ」
「目が覚めたか――?」
どっきゅんんっ…!
胸が締め付けられた。
顔を見れば、好き過ぎて、脳みそが蕩けてしまいそうな相手――の顔。
意識を取り戻したばかりだというのに楓希は暴れ出す。
「わっわっ、あっ……そ、その!」
「まずは落ち着けよ。 ほら――起き上がってっ」
「――ひゃん!!」
仕草は純情な色香が豊富だったが、叫び声は、情けなさの方が強い。
だが、当の本人である楓希――にされている『希光』――は、それどころではない。
彼に、飛びっきり素敵なことをされていたのだから。
(うわわ――膝枕……されていたの?私…あ、いや…う…っ)
心臓が発作を起こしたような激痛を発する。
彼女は生きているのに、意識があるのに、天にいるような感覚だった。
(心臓が――凄いぃ)
否、心臓だけでなく体の全ての器官が、熱く火照って、命令する。
今を受け入れろ。
【楓希】を受け入れろ――と、 体から愛欲が沸き立ち、手遅れなほど、彼にときめいてしまう。
「あんまり、無理するなよ」
「うん…ごめん、なさい。……ショウくん」
吐き出す息は生暖かい雌の臭いがする。
甘くも淫靡な風味。
鼻を熱く焦がし、楓希は勿論、希光すらも巻き込んで、二人の心臓を高鳴らせた。
「あの…ショウくん。あの…さぁ…この記憶…」
麻薬のごとく自身を狂わしてしまう記憶――楓希としての時間――について、問いただそうとした。
もっとも、原因は分っている。いや、予想が付いている。
まず間違いなく、この『体』のせいだ。
「ん…?ああ、そのことを言い出す前に、お前が逃げるもんだから…」
「あ、ごめんなさい……」
「謝る必要はないよ、俺とお前は恋人同士なんだから…」
「うん……」
「他人の認識を変える力はあくまでもその体で行使するから、そのために形成された記憶と経験は、当たり前だけど、その体で管理されている…その影響だよ」
不公平すぎた。
【楓希】であるのは楓希なのに、その機能や能力の使えるの権限を、ほとんど持っているのは、目の前の希光でしかない。
(ふくぅ…んん!ず、ずるいよ、ぉ…!!)
むしろ、その機能や能力が、彼女を追い詰める。
今だって、近くにいるだけで幸せなのに、思い出だけで気分が良くなった。
それこそ記憶だけで、心が『女』になってしまう。
「ショウ…くん…私…」
心を洗脳される恐怖からか、湧き上がる恋慕の念からか、強く抱きしめてしまう彼の腕。
ダメだ、ダメだと、心が言うが、離れられない。
いや――それどころか。
(ああ、ダメ――ショウくん、ん)
心情は恋する女の子そのもので、無意識に体が動いた。
彼の口へと――そして。
ぷちゅっ…り。
(あっ、私……しちゃた…っ…)
彼にキスをしてしまっていた。
強烈でなく、むしろ軽やかと呼べるほどの弱く優しい唇同士の触れ合い。
それが彼女の心を果てしなくピンク色に染めた。
「はぁ…はあ…わ、わたし、ィ…はんんっ…!」
自分自身でも制御できない『大好き』と言う感情。
口を離した途端、不安になった。
――だから、さらに体をくっ付いてしまう。
「あ、ありがとう…なっ…楓希…」
「あっ…あう…ぅ!」
(だめ――もう)
希光はお礼を述べた。
それが大胆なプレゼントへの感謝なのか。
なんにしても、その言葉が、笑顔が、楓希の本能を大いに刺激し、心を狂わせた。
(しょ…っうくん……好きぃ…好きいっ)
従順な人形の――と言うよりは、恋人の気持ちに溺死してしまった楓希。
もう、戻れないところまで、彼への愛が彼女を支配していたのである。
<つづく>
もはや手遅れなほど脳みそがショートしていた楓希は取りあえず心の中で、言い訳を吐き散らした。
ミヤコに追求されていく内に心に浮かぶのは、恋人との甘いひと時。
(…ないっ!ない…っ!…そんなことないからっ…心臓のバクバクを止めてくれえぇ…)
余計なお節介どころでないミヤコの言葉に、ジュンワリと、心が蕩けていく。
気付かされてしまった。
彼が好きで好きでしょうがない――と。
「まっ…まぁ…落ち着きなさいって、多分希光くん禁断症状よ。本人に会えば直ぐにでも元に戻るわ」
しかも、またも高揚を刺激する言葉を言うミヤコ。
そんなに彼女は、自分を――【楓希】に、させたいのか。体温の膨張に意識が暴走しかけていく。
(そうだ――トイレ……!!)
個室にでも篭って、ぐつぐつ煮える血を冷却しよう。
そう――思い立つのに、時間は掛からなかった。
「…あの…み、みや、こ…っ!ごめん…ショウくんに謝ってくるよぉ…っ!」
無論、逃げるための嘘である、が――どうやら、先に騙されていたのは、楓希の方だった。
「ここに居たのか――楓希」
「へ…へふう…っ?」
彼女は、名前を呼ばれるままに、後ろを見やった。
最初はよく見えない。
ごしごしと、涙で霞んだ目を擦り、漸く分る、相手の人相。
長くすらりとした銀髪の、美青年。
思い出すだけで情熱に胸焼けを起こしてしまう彼女の、楓希の愛しい人だった。
「まったく、ミヤコさんが知らせてくれるまで、大変だったんだぞ」
「ふふ、やはり恋人同士は恋人同士で話し合うのが一番でしょ…」
素敵な笑顔を向ける女海賊。
よく見れば、格好とミスマッチな携帯を右手に持っていた。
彼女が彼を呼んだことは明白である。
「……あっ」
しかし、楓希には何もかもが――関係なかった。
もう限界である。
体中のあっちこっちで持て余した性欲が疼いてしまう。
様々な邪な感情が、文字通りに爆発し――楓希は、糸が切れたかのように気絶する。
「おっと――大丈夫か?」
優しく支える水野 希光。
もはや、この時点で絵に描いたようなカップル――で、そんな二人を女海賊に扮したミヤコが、ヒューヒューと、祝福していた。
~~
「ん――あ、れ、ぇ」
「目が覚めたか――?」
どっきゅんんっ…!
胸が締め付けられた。
顔を見れば、好き過ぎて、脳みそが蕩けてしまいそうな相手――の顔。
意識を取り戻したばかりだというのに楓希は暴れ出す。
「わっわっ、あっ……そ、その!」
「まずは落ち着けよ。 ほら――起き上がってっ」
「――ひゃん!!」
仕草は純情な色香が豊富だったが、叫び声は、情けなさの方が強い。
だが、当の本人である楓希――にされている『希光』――は、それどころではない。
彼に、飛びっきり素敵なことをされていたのだから。
(うわわ――膝枕……されていたの?私…あ、いや…う…っ)
心臓が発作を起こしたような激痛を発する。
彼女は生きているのに、意識があるのに、天にいるような感覚だった。
(心臓が――凄いぃ)
否、心臓だけでなく体の全ての器官が、熱く火照って、命令する。
今を受け入れろ。
【楓希】を受け入れろ――と、 体から愛欲が沸き立ち、手遅れなほど、彼にときめいてしまう。
「あんまり、無理するなよ」
「うん…ごめん、なさい。……ショウくん」
吐き出す息は生暖かい雌の臭いがする。
甘くも淫靡な風味。
鼻を熱く焦がし、楓希は勿論、希光すらも巻き込んで、二人の心臓を高鳴らせた。
「あの…ショウくん。あの…さぁ…この記憶…」
麻薬のごとく自身を狂わしてしまう記憶――楓希としての時間――について、問いただそうとした。
もっとも、原因は分っている。いや、予想が付いている。
まず間違いなく、この『体』のせいだ。
「ん…?ああ、そのことを言い出す前に、お前が逃げるもんだから…」
「あ、ごめんなさい……」
「謝る必要はないよ、俺とお前は恋人同士なんだから…」
「うん……」
「他人の認識を変える力はあくまでもその体で行使するから、そのために形成された記憶と経験は、当たり前だけど、その体で管理されている…その影響だよ」
不公平すぎた。
【楓希】であるのは楓希なのに、その機能や能力の使えるの権限を、ほとんど持っているのは、目の前の希光でしかない。
(ふくぅ…んん!ず、ずるいよ、ぉ…!!)
むしろ、その機能や能力が、彼女を追い詰める。
今だって、近くにいるだけで幸せなのに、思い出だけで気分が良くなった。
それこそ記憶だけで、心が『女』になってしまう。
「ショウ…くん…私…」
心を洗脳される恐怖からか、湧き上がる恋慕の念からか、強く抱きしめてしまう彼の腕。
ダメだ、ダメだと、心が言うが、離れられない。
いや――それどころか。
(ああ、ダメ――ショウくん、ん)
心情は恋する女の子そのもので、無意識に体が動いた。
彼の口へと――そして。
ぷちゅっ…り。
(あっ、私……しちゃた…っ…)
彼にキスをしてしまっていた。
強烈でなく、むしろ軽やかと呼べるほどの弱く優しい唇同士の触れ合い。
それが彼女の心を果てしなくピンク色に染めた。
「はぁ…はあ…わ、わたし、ィ…はんんっ…!」
自分自身でも制御できない『大好き』と言う感情。
口を離した途端、不安になった。
――だから、さらに体をくっ付いてしまう。
「あ、ありがとう…なっ…楓希…」
「あっ…あう…ぅ!」
(だめ――もう)
希光はお礼を述べた。
それが大胆なプレゼントへの感謝なのか。
なんにしても、その言葉が、笑顔が、楓希の本能を大いに刺激し、心を狂わせた。
(しょ…っうくん……好きぃ…好きいっ)
従順な人形の――と言うよりは、恋人の気持ちに溺死してしまった楓希。
もう、戻れないところまで、彼への愛が彼女を支配していたのである。
<つづく>
生意気少年の弱みを握って×××
生意気少年の弱みを握って×××
キモい男教師が少年の弱みを握り、
薬を使って性的な悪戯をやりたい放題する話。
最初は生意気だった少年は徐々に従順になり、
最後には身も心も雌奴隷化して・・・
・キモ男教師×生意気少年
・強制女体化
・女体化後、好きだった女の子に言葉責めされる
…等のシチュエーションを含みます。
キモい男教師が少年の弱みを握り、
薬を使って性的な悪戯をやりたい放題する話。
最初は生意気だった少年は徐々に従順になり、
最後には身も心も雌奴隷化して・・・
・キモ男教師×生意気少年
・強制女体化
・女体化後、好きだった女の子に言葉責めされる
…等のシチュエーションを含みます。
