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クジラの人魚姫5-7
(7)
(なんか――今日の皆は変すぎるねえ?)
いい加減に気付いてもいい頃合――もっとい、外部からの熱烈な求愛である。
しかし、クジラは気が付かない。
きょとん、と再度小動物を連想させる仕草で首を傾げてしまう。――彼にとっては同級生たちの行為は意味不明な物でしかないようである。
「よっ――大丈夫だったか?」
「セラ…クジラっ……く、ん……っ……あ、んっ」
(んひぁっ…!なっ!…いま…お腹…うごいた…?)
平手打ちしようか、馬鹿と大声で叫ぼうか、と悩んでいた筈だった。
けれども、顔を合わせた途端、身体に甘い疼きが巻き上がる。とくんっ、とくんっ、と心臓がざわめく。
妙に喉も渇き、気のせいだと思いたいのだが、子宮がきゅっ、と窄まった感触が下腹に生じた。
まさかと思うが嬉しいのだろうか、安堵しているのだろうか。――『クジラ』にブルマ姿を見られて。
(なん、…っで…どうし…て…っ?)
沙希以外で、しかも男に――中身は女でも――確かな恋慕を向けてしまうなんて。
知らずの内に心まで女の子化したのではないかと怖くなる。
同時にブルマという衣装のせいなのか、込み上げる火照りに意識が夢中になる。
まるで布地が当っている股座部分が勝手に湿っていくようで――。
「んっ…はぅっ…うん、んっ…あん…ん」
自分は女なのだと自覚した途端、熱を帯びた股間の切なさに、はうはうと甘い呼気をこぼしてまう。
途轍もなく吐き出した息が牝臭くて、捉えた嗅覚から電気が突き抜けた。
目尻も熱くなり、衝動的に体を隠すことに力を注ぐ。
「ひゃ…うぅっ!…ちょ…と…な、なによ…っ!…」
(ふぐぅ、ぅううっ!胸が…はじけるっ…あうっあうぅ!におい、ぷんぷん…あぐぅ!は、恥かしいよぉぉ!)
だが、身体が動くたびにたぷんったぷんっ、と胸が大きく布地を押し上げ、淫靡さに拍車がかかる。
脳裏にも、痺れがピリピリと押し寄せた。
深まる濃艶さに、またも反射的に虚勢を張るのだが、顔を含めた全体の弛緩を防げない。
どんな『白方セラス』に見えるのだろうか。
「あれ…?様子が変だな?なにかあったのか?」
眼前の『白方クジラ』が全身を紅潮させている理由を尋ねる。
気付いているのか、気付いていて知らないふりをしているのか。
――後者だと、もう立ち直れそうもなかった。
「~~!? なっなんでもないわよっ!」
反射的に絶叫してしまう。過剰な反応に内心、ドキドキと自分の感情を整理する。
もう怒りは無い。
そして――怒りが無い分、恥じらいが増した。
「ああ、ブルマが恥かしいのか?」
「見ないでよ…っ…ば、馬鹿…こ、こんなの…別に…見ても、つまらないでしょ…っ」
脳内ではカンフー映画のように相手をノックアウトしている自分がいる。
けれども現実では――『クジラ』の前では思うように体が動かない。
底抜けに内気になってしまう。
セシリウスと沙希が強要したライフサイクルは確実にクジラの男意識を奪っていた。

挿絵:倉塚りこ
そして、虚勢すらも張れないことに対する自己嫌悪を塗りつぶすかのように。
「うんうん、ちょっとエロエロだけど可愛いじゃん!似合ってるよ!」
――『クジラ』が褒めてくれた。
途端、家で着せ替えられたときのような、混浴してお互いの体を触りあったときのような、そして時折強制的に一緒のベッドで寝入るときのような堪えようのない恥かしさが脳裏に炸裂する。
許容を超えた居た堪れなさに、それが嬉しいことだと肉体が勘違いをしてしまう。
屈辱極まって涙ぐみ、満面を上気させながら、ビクンと身体ごと浮かれ上がる。
「~~えっ、エロエロっ!?な、なにを!?ひぅっ、へ、変なこと言うなぁ!!」
(ダメぇっ…!んあっ…あ、また…お腹…しきゅうが…反応…んっん、…)
ブルマを褒められて嬉しい。自分が認められ、ついついお尻が弾んでしまう。
羞恥心でも女体は敏感に、しかも気持ちよく反応するのだから手が付けられない。当惑を隠せない。
ぴっちりと張り付いているブルマの感触に、心地いい痺れが下腹に襲った。
危うく女に陥りかけて、とっさに思考を別のことへと向けさせる。
(そうだ…!女子共に弄られてヘンになっているんだ!!催眠術や瞳のこともあるしセシリウスが、何かしてるんだ!!きっと――入れ替わってるから俺っ!女っぽくなってるんだっ!!)
肉体が入れ替わること自体は、確かにとても異常なことだ。
だから、考え方は間違っていないとも言えるが――が、説得力の有無は別である。
「も、もう! 恥かしいこといわないでよっ!!け、けど…けど――」
知らず知らずの内に女に染まっていることを認めたくなくて、いつしか敏感な反応を『クジラ』にしてしまうことを隠したくて、何もかもを否定する。
「あ…ありが、とう……クジラ君」
「いいって、それよりも早く準備しようぜ」
「あっ――うん!」
だが、無条件で体が興奮するほどの喜悦を感じた事実は消せなかった。
妙に活き活きと、体が勝手に――乙女チックな――『セラス』を演じる。
いや、演じてしまう。
(ううぅ――もうヤダァァ!!早く終わってええ!!?)
動きやすい格好には違いないのだが、クジラは不自由な体に、否、複雑に様々な感情に発展させていく自分の心のあり方に苦悩した。
自然と両手が胸の膨らみや、下半身のブルマを隠そうとし、上着がぎゅむぎゅむっ、と軋んだ。
「え…?胸…そんなに谷間つくって…。なに、誘ってる?」
「そ、そんな…わけ…ないわよっ!ば、馬鹿!クジラくんの…イジワル!」
そんな『セラス』とは反対に、喜んで異性に成り切っていると思われるセシリウス。
目の前でへらへら、と笑っていることが、やはり屈辱と悔しさを大きく煽られた。
けれども指摘されたことは事実で、というか、このままでは体操すらもままならない。
(う、うう…俺は男!学校ならセシリウスだって襲わないだろし…は、恥かしがるほうが変…なんだ!恥かしがらなくてもいい、んだっ!!え、いっ!!)
数分の考えの末、クジラは胸を押さえていた手と、ブルマを隠していた手を離す。
太陽の光で濃厚に存在感を輝かせているブルマの上空で、巨大乳房が体操着の布地が切れてしまいそうなほどむにゅったぷっん、とエッチな乱舞を披露していた。
<つづく>
(なんか――今日の皆は変すぎるねえ?)
いい加減に気付いてもいい頃合――もっとい、外部からの熱烈な求愛である。
しかし、クジラは気が付かない。
きょとん、と再度小動物を連想させる仕草で首を傾げてしまう。――彼にとっては同級生たちの行為は意味不明な物でしかないようである。
「よっ――大丈夫だったか?」
「セラ…クジラっ……く、ん……っ……あ、んっ」
(んひぁっ…!なっ!…いま…お腹…うごいた…?)
平手打ちしようか、馬鹿と大声で叫ぼうか、と悩んでいた筈だった。
けれども、顔を合わせた途端、身体に甘い疼きが巻き上がる。とくんっ、とくんっ、と心臓がざわめく。
妙に喉も渇き、気のせいだと思いたいのだが、子宮がきゅっ、と窄まった感触が下腹に生じた。
まさかと思うが嬉しいのだろうか、安堵しているのだろうか。――『クジラ』にブルマ姿を見られて。
(なん、…っで…どうし…て…っ?)
沙希以外で、しかも男に――中身は女でも――確かな恋慕を向けてしまうなんて。
知らずの内に心まで女の子化したのではないかと怖くなる。
同時にブルマという衣装のせいなのか、込み上げる火照りに意識が夢中になる。
まるで布地が当っている股座部分が勝手に湿っていくようで――。
「んっ…はぅっ…うん、んっ…あん…ん」
自分は女なのだと自覚した途端、熱を帯びた股間の切なさに、はうはうと甘い呼気をこぼしてまう。
途轍もなく吐き出した息が牝臭くて、捉えた嗅覚から電気が突き抜けた。
目尻も熱くなり、衝動的に体を隠すことに力を注ぐ。
「ひゃ…うぅっ!…ちょ…と…な、なによ…っ!…」
(ふぐぅ、ぅううっ!胸が…はじけるっ…あうっあうぅ!におい、ぷんぷん…あぐぅ!は、恥かしいよぉぉ!)
だが、身体が動くたびにたぷんったぷんっ、と胸が大きく布地を押し上げ、淫靡さに拍車がかかる。
脳裏にも、痺れがピリピリと押し寄せた。
深まる濃艶さに、またも反射的に虚勢を張るのだが、顔を含めた全体の弛緩を防げない。
どんな『白方セラス』に見えるのだろうか。
「あれ…?様子が変だな?なにかあったのか?」
眼前の『白方クジラ』が全身を紅潮させている理由を尋ねる。
気付いているのか、気付いていて知らないふりをしているのか。
――後者だと、もう立ち直れそうもなかった。
「~~!? なっなんでもないわよっ!」
反射的に絶叫してしまう。過剰な反応に内心、ドキドキと自分の感情を整理する。
もう怒りは無い。
そして――怒りが無い分、恥じらいが増した。
「ああ、ブルマが恥かしいのか?」
「見ないでよ…っ…ば、馬鹿…こ、こんなの…別に…見ても、つまらないでしょ…っ」
脳内ではカンフー映画のように相手をノックアウトしている自分がいる。
けれども現実では――『クジラ』の前では思うように体が動かない。
底抜けに内気になってしまう。
セシリウスと沙希が強要したライフサイクルは確実にクジラの男意識を奪っていた。

挿絵:倉塚りこ
そして、虚勢すらも張れないことに対する自己嫌悪を塗りつぶすかのように。
「うんうん、ちょっとエロエロだけど可愛いじゃん!似合ってるよ!」
――『クジラ』が褒めてくれた。
途端、家で着せ替えられたときのような、混浴してお互いの体を触りあったときのような、そして時折強制的に一緒のベッドで寝入るときのような堪えようのない恥かしさが脳裏に炸裂する。
許容を超えた居た堪れなさに、それが嬉しいことだと肉体が勘違いをしてしまう。
屈辱極まって涙ぐみ、満面を上気させながら、ビクンと身体ごと浮かれ上がる。
「~~えっ、エロエロっ!?な、なにを!?ひぅっ、へ、変なこと言うなぁ!!」
(ダメぇっ…!んあっ…あ、また…お腹…しきゅうが…反応…んっん、…)
ブルマを褒められて嬉しい。自分が認められ、ついついお尻が弾んでしまう。
羞恥心でも女体は敏感に、しかも気持ちよく反応するのだから手が付けられない。当惑を隠せない。
ぴっちりと張り付いているブルマの感触に、心地いい痺れが下腹に襲った。
危うく女に陥りかけて、とっさに思考を別のことへと向けさせる。
(そうだ…!女子共に弄られてヘンになっているんだ!!催眠術や瞳のこともあるしセシリウスが、何かしてるんだ!!きっと――入れ替わってるから俺っ!女っぽくなってるんだっ!!)
肉体が入れ替わること自体は、確かにとても異常なことだ。
だから、考え方は間違っていないとも言えるが――が、説得力の有無は別である。
「も、もう! 恥かしいこといわないでよっ!!け、けど…けど――」
知らず知らずの内に女に染まっていることを認めたくなくて、いつしか敏感な反応を『クジラ』にしてしまうことを隠したくて、何もかもを否定する。
「あ…ありが、とう……クジラ君」
「いいって、それよりも早く準備しようぜ」
「あっ――うん!」
だが、無条件で体が興奮するほどの喜悦を感じた事実は消せなかった。
妙に活き活きと、体が勝手に――乙女チックな――『セラス』を演じる。
いや、演じてしまう。
(ううぅ――もうヤダァァ!!早く終わってええ!!?)
動きやすい格好には違いないのだが、クジラは不自由な体に、否、複雑に様々な感情に発展させていく自分の心のあり方に苦悩した。
自然と両手が胸の膨らみや、下半身のブルマを隠そうとし、上着がぎゅむぎゅむっ、と軋んだ。
「え…?胸…そんなに谷間つくって…。なに、誘ってる?」
「そ、そんな…わけ…ないわよっ!ば、馬鹿!クジラくんの…イジワル!」
そんな『セラス』とは反対に、喜んで異性に成り切っていると思われるセシリウス。
目の前でへらへら、と笑っていることが、やはり屈辱と悔しさを大きく煽られた。
けれども指摘されたことは事実で、というか、このままでは体操すらもままならない。
(う、うう…俺は男!学校ならセシリウスだって襲わないだろし…は、恥かしがるほうが変…なんだ!恥かしがらなくてもいい、んだっ!!え、いっ!!)
数分の考えの末、クジラは胸を押さえていた手と、ブルマを隠していた手を離す。
太陽の光で濃厚に存在感を輝かせているブルマの上空で、巨大乳房が体操着の布地が切れてしまいそうなほどむにゅったぷっん、とエッチな乱舞を披露していた。
<つづく>
クジラの人魚姫5-6
(6)
「幾らなんでも弛んでる!! 授業を何だと思ってるんだァ!!」
怒声で生徒に諭すのは教員生活15年の青木先生。
彼の第一印象は、体育教師の鑑というべき隆起した筋肉。そして、濃い顔つきである。
それこそ普通の先生が大人なら、青木先生は『鬼』のように――おっかない。
(さっきよりは全然マシだけど納得できねえっ!なんで俺まで怒られるんだよ!!)
そんな凶悪的な面に怯えることなく白方玖史羅は――今は『白方セラス』である少年はやるせなさで震える体を必死に押さえていた。
どう考えても、どう思考方向を変えても、合点がいかない。
無論、先生が悪いわけでもない――むしろ、感謝しているぐらいだ。
この傍若無人な者たちに罰をお与え下さるのだから。そう思いながら、クジラは半眼で。
「えへへ――あれぇ、なんでだろ?」
「青木先生が、怖くないや」
「――ダメぇ、あの感触が忘れられないィ」
女子たちを見たのだが――どうやら"あの"青木先生の怒号ですらも彼女たちを正気に戻せなかったようである。
何時もは涙目になる女子すら出ている。
それが今日に至ってはほぼ全ての女子が、ニタニタと白昼夢に浸っているではないか。
ひそひそ話が皆無な代わりに独り言が聞こえ、何故か見事に会話のようにシンクロしている。
学校一怖い青木先生も、流石に気持ちが悪そうに、心なしか姿勢が後ろ向きだ。
(こいつ等――罪悪感ってものがないのか……?)
『時間に遅れるから、着替えを手伝った』。
そんな大義名分<いいわけ>すらも護らず文字通り自分の肉体を堪能した女子たち。
追求すれば、女子全員で自分が『セラス』が可愛いから――"こうなった"と述べてくる始末。
敢えて分かりやすく言うなら、クジラはやさぐれた気分になりつつ――。
(…でも…仕返しするのも…無理だもんなあぁ…)
込み上げる怒りをどうにか納得させ、黙って『セラス』を演じていた。
誰も味方に成ってくれない以上、どんな屈辱でも甘んじて受けるしかないのだ。
入れ替わってから学び続けている忍ぶ心で、ひたすらに堪える。
例えば、ブルマ姿を複数人にお披露目している事実<いま>とか――を。
(くうぅんんっ!?この頼りなさや、恥かしさはなんなんだっ!?っていうか、どっから出してきたんだ!!こんなものおぉぉ!!)
ピッタリと臀部と股に癒着するブルマ。
なんという破壊力だろうか。時間が経つに連れ、羞恥心が肉体に込み上がった。
唯一ブルマを着ている屈辱か、あるいは装着側へとなってしまったことへの恥ずかしさか。
または、そんな姿を沙希やセシリウスどころか、クラスメイトにさえ見られている情けなさか
ぴくん、ぴくん、と腰を中心に肉体が軽い痙攣を続ける。
(あっ…お腹…疼くぅ…!い、いや…なのにぃ…っ)
ぬちゅり、ぬくっん…。
理屈ではない――ピッタリ張り付く布地の締め付けに後押しされ、気恥ずかしさに子宮が震える。
思わず感じて、愛汁をこぼさないかと不安がり、『白方セラス』は無我夢中で、身を縮めた。
(ああ――っ、もう!!早く終わって――!!)
『体育』の時間が一刻も早く終了して欲しい。
ストレスと緊張に嫌でも尿意を気にしてしまう。
そして巨乳故に布地のほとんどが上部へと集まり、すべらかなお臍が外界に溢れていた。
冷気がひゅうひゅうっ、と下腹を撫で回すたびに、本気で尿意が心配になる。
(ふぇ…こ、こんな…あっ!まだ大丈夫…な、筈ぅ…!それよりも、この視線、なんとか…しないと…)
無駄の足掻きと知りつつ、上部の布で股間を隠そうとするも、逆にただでさえ溢れ返っている巨乳を強調することになり、むちんっと、肉房が蠢いた。
クラスメイトは勿論、青木すらも頬を赤く染め上げる。
「ああ――こほっン!!と、兎に角だ!!もう時間もほとんどなくなってしまったので男子共々、基礎運動にする!!まずはペアを組んでの体操だ。……あーそこの――白方セラス!!」
「はっ――はい!?」
まさかの特別点呼。感謝しているとはいえ、怖い者は怖く、身体にほんの少し別の恐怖が加わる。
おまけに――。
(なんでもいいけど……早くしろ~~っ!!)
注目されている。いや、これは見るなど、生易しいものではない。
視姦そのものだ。
少なくとも彼自身には、そうとしか思えなかった。体が恥ずかしさで、さらに紅潮する。
しかし、先生からの指示は未だにない。
「……?……あ、あの――っ」
「ん、ああっ!?すまん!!」
「……?」
中々、こない言葉もさる事ながら、その態度はもっと謎めいていた。
声をかけるまで、ボーと顔を赤らめ、何かに見惚れているように抜け切っていた。
一体――何に魅了されていたのだろうか。
訳も分からず、『セラス』はブルマ姿で先生を見上げる。
「――っ!!取りあえず、だ!!ブルマのことはいいとして女子だけだと人数が合わん!!偶然にも海風の奴も休んでいるからお前は男子と……親戚の白方と組んで準備体操してくれ……」
「はっはぁ――『ちょっと待ったああ!!?』――ひぁあッ!?」
能天気に青木先生の仕草を考えていたクジラはもうどうでもいいや、と指示に従おうとした。――親戚の『クジラ』に文句を一つも言ってやるつもりで。
それに数が合わないから男子と女子が入り混じるなどけっこうある。
だが、なぜかその場にいる多くの人物が絶叫する。そして、反発へと加速した。
「なんで白方!?俺っ!!俺っの方がいいです!!」
「先生!!俺にィ、…チャンスをおお!!」
「白方君よりも僕の方が彼女に相応しい……っ!」
「ああ、ブルマ――ぶる…まぁ…」
全体的に歪んだ興奮を催す男子諸君。そこに『白方 玖史羅』が――。
「当然だろ?"当然"――」
勝ち誇った笑みで自慢する。胸まで張り出し、極めて傲岸不遜だ。
これには男子も、そして女子にも嫉妬と怒りを煽られた。
「野蛮な男子にセラスさんを譲るなら私が男子と組みますぅ!!」
「そうよ――セラスちゃんの体はあたしたちのモノなんだからっ!!」
「男子に渡したらヤバすぎます!!」
「先生!!教員生活を終わりにしてもいいんですか!!」
やたら密接な関係のような口ぶりで、先生に講義をする女子諸君。
どうやら更衣室の淫らな行いは、本当に友情でしかなかったらしい。
異性の精神構造の違い――だと思い込みたい彼は、ひっそりと涙を流した。
そんな仕草に気付いたかは知らないが、論争がさらに過激になる。
「黙れ女子!!白方さんのブルマ姿でどんなエロいことしたんだ!!あの疲れとテレぐあいは尋常じゃないぞっ!?」
「ふン!!卑猥な妄想しないでくれる?あんた達みたいのと一緒にしないでっ!!――つうか、妄想でも私たちのセラスちゃんをけがすなァァァ!」
「お前たちが独占するから妄想するしかないんだろうがああ!!俺たちだってお知り合いになりたいんじゃああ!!こら!ナス!!」
そうだそうだ、と、そうよそうよ――の、ぶつかり合い。非常に迷惑だ。
その場で唯一皆と気持ちに共鳴できない『セラス』は頭を抱え込む。
そして自然的には収まりつかない状況に、ありったけの思いを込めて青木先生を見やる。
うるっ、と涙を滲ませた瞳で、頬を赤らめて、様子を伺う。
(青木先生――何とかしてくれ)
目線だけで鼻血を噴出してしまうほど牝々しい魅惑の瞳。
少なくとも青木――そして、その視線に気が付いた幾人かが、劣情の余りに硬直する。
「~~っ!?ええィっ!!ウルサイ、ぞっ!女子よりも早かったとはいえ、白方以外十分も遅れで来た男子が我が侭いうなっ!!白方と白方セラスは後ろに行けっ!!」
ああ、この世には残酷な人がいる――彼らと彼女らは、そう思った。
外見は、無様ではあるが、そこには一種の絆が生まれる。
男子も女子も地面にしな垂れて、落ち込んでいた。
<つづく>
「幾らなんでも弛んでる!! 授業を何だと思ってるんだァ!!」
怒声で生徒に諭すのは教員生活15年の青木先生。
彼の第一印象は、体育教師の鑑というべき隆起した筋肉。そして、濃い顔つきである。
それこそ普通の先生が大人なら、青木先生は『鬼』のように――おっかない。
(さっきよりは全然マシだけど納得できねえっ!なんで俺まで怒られるんだよ!!)
そんな凶悪的な面に怯えることなく白方玖史羅は――今は『白方セラス』である少年はやるせなさで震える体を必死に押さえていた。
どう考えても、どう思考方向を変えても、合点がいかない。
無論、先生が悪いわけでもない――むしろ、感謝しているぐらいだ。
この傍若無人な者たちに罰をお与え下さるのだから。そう思いながら、クジラは半眼で。
「えへへ――あれぇ、なんでだろ?」
「青木先生が、怖くないや」
「――ダメぇ、あの感触が忘れられないィ」
女子たちを見たのだが――どうやら"あの"青木先生の怒号ですらも彼女たちを正気に戻せなかったようである。
何時もは涙目になる女子すら出ている。
それが今日に至ってはほぼ全ての女子が、ニタニタと白昼夢に浸っているではないか。
ひそひそ話が皆無な代わりに独り言が聞こえ、何故か見事に会話のようにシンクロしている。
学校一怖い青木先生も、流石に気持ちが悪そうに、心なしか姿勢が後ろ向きだ。
(こいつ等――罪悪感ってものがないのか……?)
『時間に遅れるから、着替えを手伝った』。
そんな大義名分<いいわけ>すらも護らず文字通り自分の肉体を堪能した女子たち。
追求すれば、女子全員で自分が『セラス』が可愛いから――"こうなった"と述べてくる始末。
敢えて分かりやすく言うなら、クジラはやさぐれた気分になりつつ――。
(…でも…仕返しするのも…無理だもんなあぁ…)
込み上げる怒りをどうにか納得させ、黙って『セラス』を演じていた。
誰も味方に成ってくれない以上、どんな屈辱でも甘んじて受けるしかないのだ。
入れ替わってから学び続けている忍ぶ心で、ひたすらに堪える。
例えば、ブルマ姿を複数人にお披露目している事実<いま>とか――を。
(くうぅんんっ!?この頼りなさや、恥かしさはなんなんだっ!?っていうか、どっから出してきたんだ!!こんなものおぉぉ!!)
ピッタリと臀部と股に癒着するブルマ。
なんという破壊力だろうか。時間が経つに連れ、羞恥心が肉体に込み上がった。
唯一ブルマを着ている屈辱か、あるいは装着側へとなってしまったことへの恥ずかしさか。
または、そんな姿を沙希やセシリウスどころか、クラスメイトにさえ見られている情けなさか
ぴくん、ぴくん、と腰を中心に肉体が軽い痙攣を続ける。
(あっ…お腹…疼くぅ…!い、いや…なのにぃ…っ)
ぬちゅり、ぬくっん…。
理屈ではない――ピッタリ張り付く布地の締め付けに後押しされ、気恥ずかしさに子宮が震える。
思わず感じて、愛汁をこぼさないかと不安がり、『白方セラス』は無我夢中で、身を縮めた。
(ああ――っ、もう!!早く終わって――!!)
『体育』の時間が一刻も早く終了して欲しい。
ストレスと緊張に嫌でも尿意を気にしてしまう。
そして巨乳故に布地のほとんどが上部へと集まり、すべらかなお臍が外界に溢れていた。
冷気がひゅうひゅうっ、と下腹を撫で回すたびに、本気で尿意が心配になる。
(ふぇ…こ、こんな…あっ!まだ大丈夫…な、筈ぅ…!それよりも、この視線、なんとか…しないと…)
無駄の足掻きと知りつつ、上部の布で股間を隠そうとするも、逆にただでさえ溢れ返っている巨乳を強調することになり、むちんっと、肉房が蠢いた。
クラスメイトは勿論、青木すらも頬を赤く染め上げる。
「ああ――こほっン!!と、兎に角だ!!もう時間もほとんどなくなってしまったので男子共々、基礎運動にする!!まずはペアを組んでの体操だ。……あーそこの――白方セラス!!」
「はっ――はい!?」
まさかの特別点呼。感謝しているとはいえ、怖い者は怖く、身体にほんの少し別の恐怖が加わる。
おまけに――。
(なんでもいいけど……早くしろ~~っ!!)
注目されている。いや、これは見るなど、生易しいものではない。
視姦そのものだ。
少なくとも彼自身には、そうとしか思えなかった。体が恥ずかしさで、さらに紅潮する。
しかし、先生からの指示は未だにない。
「……?……あ、あの――っ」
「ん、ああっ!?すまん!!」
「……?」
中々、こない言葉もさる事ながら、その態度はもっと謎めいていた。
声をかけるまで、ボーと顔を赤らめ、何かに見惚れているように抜け切っていた。
一体――何に魅了されていたのだろうか。
訳も分からず、『セラス』はブルマ姿で先生を見上げる。
「――っ!!取りあえず、だ!!ブルマのことはいいとして女子だけだと人数が合わん!!偶然にも海風の奴も休んでいるからお前は男子と……親戚の白方と組んで準備体操してくれ……」
「はっはぁ――『ちょっと待ったああ!!?』――ひぁあッ!?」
能天気に青木先生の仕草を考えていたクジラはもうどうでもいいや、と指示に従おうとした。――親戚の『クジラ』に文句を一つも言ってやるつもりで。
それに数が合わないから男子と女子が入り混じるなどけっこうある。
だが、なぜかその場にいる多くの人物が絶叫する。そして、反発へと加速した。
「なんで白方!?俺っ!!俺っの方がいいです!!」
「先生!!俺にィ、…チャンスをおお!!」
「白方君よりも僕の方が彼女に相応しい……っ!」
「ああ、ブルマ――ぶる…まぁ…」
全体的に歪んだ興奮を催す男子諸君。そこに『白方 玖史羅』が――。
「当然だろ?"当然"――」
勝ち誇った笑みで自慢する。胸まで張り出し、極めて傲岸不遜だ。
これには男子も、そして女子にも嫉妬と怒りを煽られた。
「野蛮な男子にセラスさんを譲るなら私が男子と組みますぅ!!」
「そうよ――セラスちゃんの体はあたしたちのモノなんだからっ!!」
「男子に渡したらヤバすぎます!!」
「先生!!教員生活を終わりにしてもいいんですか!!」
やたら密接な関係のような口ぶりで、先生に講義をする女子諸君。
どうやら更衣室の淫らな行いは、本当に友情でしかなかったらしい。
異性の精神構造の違い――だと思い込みたい彼は、ひっそりと涙を流した。
そんな仕草に気付いたかは知らないが、論争がさらに過激になる。
「黙れ女子!!白方さんのブルマ姿でどんなエロいことしたんだ!!あの疲れとテレぐあいは尋常じゃないぞっ!?」
「ふン!!卑猥な妄想しないでくれる?あんた達みたいのと一緒にしないでっ!!――つうか、妄想でも私たちのセラスちゃんをけがすなァァァ!」
「お前たちが独占するから妄想するしかないんだろうがああ!!俺たちだってお知り合いになりたいんじゃああ!!こら!ナス!!」
そうだそうだ、と、そうよそうよ――の、ぶつかり合い。非常に迷惑だ。
その場で唯一皆と気持ちに共鳴できない『セラス』は頭を抱え込む。
そして自然的には収まりつかない状況に、ありったけの思いを込めて青木先生を見やる。
うるっ、と涙を滲ませた瞳で、頬を赤らめて、様子を伺う。
(青木先生――何とかしてくれ)
目線だけで鼻血を噴出してしまうほど牝々しい魅惑の瞳。
少なくとも青木――そして、その視線に気が付いた幾人かが、劣情の余りに硬直する。
「~~っ!?ええィっ!!ウルサイ、ぞっ!女子よりも早かったとはいえ、白方以外十分も遅れで来た男子が我が侭いうなっ!!白方と白方セラスは後ろに行けっ!!」
ああ、この世には残酷な人がいる――彼らと彼女らは、そう思った。
外見は、無様ではあるが、そこには一種の絆が生まれる。
男子も女子も地面にしな垂れて、落ち込んでいた。
<つづく>
水曜イラスト企画 絵師:蒼都利音さん① 仮名:草薙 天海(そら)
草薙 天海(そら)【入れ替わり】 ある不思議なアイテムで、学校の支配者になった高校生。容姿容貌はアイドル並で、能力も上。何一つ不自由も不満も、なかったのだが権力に溺れてしまい、今では犯罪も平気でしてしまう性格に。
学校の暴君となった主人公だったが、後になってから、アイテムで犯罪をした場合、罰が待っていると言われ、気絶させられてしまう。そして、目覚めたら、苛めていた女子の中でもお気に入りの女の子(金髪碧眼、活発的、グラマーで、常識はずれの巨乳)と体を入れ替えられていた。以後は立場を入れ替えられた上に、今まで陵辱していた女子にいい様に調教されてしまう。
絵師:蒼都利音

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
学校の暴君となった主人公だったが、後になってから、アイテムで犯罪をした場合、罰が待っていると言われ、気絶させられてしまう。そして、目覚めたら、苛めていた女子の中でもお気に入りの女の子(金髪碧眼、活発的、グラマーで、常識はずれの巨乳)と体を入れ替えられていた。以後は立場を入れ替えられた上に、今まで陵辱していた女子にいい様に調教されてしまう。
絵師:蒼都利音

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クジラの人魚姫5-5
(5)
「やン、ろろひィ、ろ!!(やめろおお!!)」
沙希が作り出した雰囲気に呑まれて――女子たちは仕方なく『セラス』に襲っていると思っていた。
だから真剣に訴え、哀願すれば一人や二人ほど助けてくれるかもと縋る上目遣いをした。
けれども、実際には甘い牝臭を放つ『セラス』の濃艶さに、彼女たちは再び魅了されただけである。
真剣な命乞いは、彼女たちにとってはただの可愛らしい表情でしかなかった。
「めろろ、ん!!んんっぐもょン!!(やめ…ん!! このぉ…っああ!!)」
ビンっ、とほぼ同時に別々の指がクジラの二つの乳首を跳ね除けた。
先程の肉体弄くりの余韻で、肌が余計に敏感だ。
重点的に胸部を触ってくる、揉んでくる、抓ってくる。余りにも大きいおっぱいは、格好の的だ。
やばいぐらいジリジリ痛み出し――甘美が脳に詰め掛ける。
(ひぃあいぃいぃぃ!やめ…!お前らいい加減にぃぃ!!)
むにゅっ、にゅぶりっ、むににぃぃっ、むっにん!
セシリウスや沙希ほどではないが、無邪気な分、手が多い分だけ嫌な疼きが乳房に満ちる。
火照った肺によって、吐息が淫靡に蒸し上がる。
惨めさと屈辱――クジラは本気で、なにもかも嫌になった。
おまけに――。
「んぎぉろゥ!? (ひゃあ!?)」
今までの中で、格段に厭らしい撫で方が股間に生じる。
嫌悪感が極まって、涙が滲んでしまう。そして涎と共に、肌を伝い始めた。
「みぉごぉンンンっ!!んひあろメぇ!?(沙希ィィ!!これッ、ああッ!!?)」
もはやセクハラを超えた行為にクジラは崩れた嬌声で沙希に訴えた。
無論、幼馴染は助けない。
巧みに彼の舌先の動きを指で操り、けして言動を許してくれなかった。
(んあっ!?幾ら、なんでもこれは……いけないだろう!!――ひぁああ!!?)
今までの屈辱は認めてやろう。
納得など出来ないが、それでもクジラは寛大にも沙希や女子たちを許した。
けれども、現在進行形で進む一つの手だけは許せるものではない。
恥骨をを擽りつつ、なんとショーツの上から女陰をピンポイントに摩るのだ。
最早、否――ますます着替えではない。
「さばァ、ろひィ!! んばァっ!!んめェ!!んあ、ダ、メひょ、ロロ!?(沙希イィ!!気がっ!!付いてぇぇ!!あひぃ…ダ、メえええぇ!?)」
一瞬だけ――入った。
誰かの指が、シューツに隠された恥部に侵入する。
首一つ、満足に動かせないまま恐怖と嫌な予感に、身を屈めて下半身を観察しようとした。
しかし、そこに見えるのは、セクシーランジュリーをはち切れんばかりに上下左右に押し広げている
二つの球体。
自前の巨乳が、目先の光景を遮り、とても股座など見えなかった。
(んあっ!! しよぉ――あああ?!!)
無理な捻りで骨格が悲鳴を上げて、本当に痛い。
その上――微かでも、ほんの微かでも――股を覆う下着がぬちょっ、と湿っていた感触までする。
誰かに気付かれてしまったかと、嘆くしかない。――いや、違う。
「もひぉっ!?ああもょ!?(誰!?誰だ!?)」
秘部の内部が湿っていた事実を知るものが、この中に一人だけ居る。今度は逆にクジラが血走った瞳で周囲を見やった。
けれども何十人といる中、犯人を見つけ出すのは容易でなく、しかも全員が発情しているかのような昂ぶりをしているので、ますます検討が付けられない。
(うぁっ!はぐぅっ!!へ、変態ぃ…女っていわるぅ!きっといわれちゃって、…沙希にも!さ、沙希!ひぁやんっ!ひぃ…いや、だそんなの…っ)
痴態を暴露されるかも、と被虐的に考えている最中でも、女子たちは『セラス』の肉体に殺到する。
どうやら下着の牝臭い湿気もそこまで――外見的には――目立つものではないらしい。
騒ぎは無かった。
もっとも、それでも体は女子たちの玩具のままである。
(うわ、ぁっ!!誰……なんだああ!?ひゃぅうんっ!だからおっぱいそんな強くぅ!揉むなっ!!)
激しい女同士のじゃれ付きに、弱気の余りに理性が弛んだ。
この場で一番豊満な美女は、この場で一番稚拙な精神だった。
だから、気付かない。
自分の背後からぬちゃ、れろ、ぬちゃり、と響く舌舐めずり音を。
「ふふ、セラスちゃん――ったら、厭らしいィ――」
ペロペロと一本の指ををしゃぶる少女。沙希。
彼女こそが、クジラの――『セラス』の女性性器を弄った張本人だった。
周辺の女子たちを遥かに圧倒する淫行を達成したその指を愛おしげに舐める。
女王様――と呼ぶに相応しい空気を纏う彼女は妖艶さと言う点では、クジラをも凌駕していた。
「むむン!!あむひぉろ、ろっ!?んんっ――あひィ!!?(ヤダ!!ヤダあああ!? やめ…んっあ!?)」
十分弱ほどは経過しただろう集団セクハラ。
しかし、目的のブルマはメインの下どころか、上の普通着すらも装着しておらず――無数の手による陵辱が続いていた。
「んひぅんんっ…むぅ!んぶぅぃっ…くんっん!(さき…助け…!んあっ…ひゃう!」
もはやブルマを穿いてもいいから助けてくれっ、と彼は観念して助けを心で呼んだ。
その相手が首謀者であることを重々知りつつ、どうしても信じたくなり、念を送る。
「あっ、髪が邪魔になっちゃうからリボンを付けようかァ――私の袋から誰か、とってっ」
だが、しかし――やはり、助けてはくれずに、逆に追い討ちを仕掛けてきた。
沙希の声に操られ、クジラの体を弄れない幾人かが競争する。
そして勝ち取った一人が、可愛らしいリボンを携え、近寄ってきた。
「じゅあ私がヤルねっ!ああ!!もう!!髪も超イイ!!なにこれ!!」
「うふわぁーん!!さみィろ!!んむゥゥっ!!(うわーん!!沙希の!!バッカぁぁ!!)」
蕩けた体で抗おうとするのだが、朦朧とし始めた脳では拙い癇癪しか出来ない。
女陰の肉穴に指を入れたのが沙希であることに気付かない上――沙希がリボンを持っている不自然さにも、まったく気が付けない。
彼女が髪をまとめるのは、何時も紐タイプの髪止めである事実を、彼は忘れていたのだ。
恥ずかしさやら、火照った体の快感で頭が回らず中身が子供な、いい証拠である。
(ふぇぇ~~!ひぃぃんん――っ!!)
そして、ブルマ姿に可愛らしいリボンまで加わって、『白方セラス』は可愛らしく改造されてしまう。
結局――早く準備した筈の女子たちは二十分以上も遅刻してしまい、教師のお怒りを受けることに。
けれども女子生徒たちは甘んじて、怒号を受けていた。
ただ一人を除いて。
「…は…恥かしい…な、んで…おれ…ぶるまっ…。うっ、…うぅ…っ!」
一人だけブルマで、一人だけ抜き出たグラマーな体を持つ――『白方セラス』その人だった。
<つづく>
「やン、ろろひィ、ろ!!(やめろおお!!)」
沙希が作り出した雰囲気に呑まれて――女子たちは仕方なく『セラス』に襲っていると思っていた。
だから真剣に訴え、哀願すれば一人や二人ほど助けてくれるかもと縋る上目遣いをした。
けれども、実際には甘い牝臭を放つ『セラス』の濃艶さに、彼女たちは再び魅了されただけである。
真剣な命乞いは、彼女たちにとってはただの可愛らしい表情でしかなかった。
「めろろ、ん!!んんっぐもょン!!(やめ…ん!! このぉ…っああ!!)」
ビンっ、とほぼ同時に別々の指がクジラの二つの乳首を跳ね除けた。
先程の肉体弄くりの余韻で、肌が余計に敏感だ。
重点的に胸部を触ってくる、揉んでくる、抓ってくる。余りにも大きいおっぱいは、格好の的だ。
やばいぐらいジリジリ痛み出し――甘美が脳に詰め掛ける。
(ひぃあいぃいぃぃ!やめ…!お前らいい加減にぃぃ!!)
むにゅっ、にゅぶりっ、むににぃぃっ、むっにん!
セシリウスや沙希ほどではないが、無邪気な分、手が多い分だけ嫌な疼きが乳房に満ちる。
火照った肺によって、吐息が淫靡に蒸し上がる。
惨めさと屈辱――クジラは本気で、なにもかも嫌になった。
おまけに――。
「んぎぉろゥ!? (ひゃあ!?)」
今までの中で、格段に厭らしい撫で方が股間に生じる。
嫌悪感が極まって、涙が滲んでしまう。そして涎と共に、肌を伝い始めた。
「みぉごぉンンンっ!!んひあろメぇ!?(沙希ィィ!!これッ、ああッ!!?)」
もはやセクハラを超えた行為にクジラは崩れた嬌声で沙希に訴えた。
無論、幼馴染は助けない。
巧みに彼の舌先の動きを指で操り、けして言動を許してくれなかった。
(んあっ!?幾ら、なんでもこれは……いけないだろう!!――ひぁああ!!?)
今までの屈辱は認めてやろう。
納得など出来ないが、それでもクジラは寛大にも沙希や女子たちを許した。
けれども、現在進行形で進む一つの手だけは許せるものではない。
恥骨をを擽りつつ、なんとショーツの上から女陰をピンポイントに摩るのだ。
最早、否――ますます着替えではない。
「さばァ、ろひィ!! んばァっ!!んめェ!!んあ、ダ、メひょ、ロロ!?(沙希イィ!!気がっ!!付いてぇぇ!!あひぃ…ダ、メえええぇ!?)」
一瞬だけ――入った。
誰かの指が、シューツに隠された恥部に侵入する。
首一つ、満足に動かせないまま恐怖と嫌な予感に、身を屈めて下半身を観察しようとした。
しかし、そこに見えるのは、セクシーランジュリーをはち切れんばかりに上下左右に押し広げている
二つの球体。
自前の巨乳が、目先の光景を遮り、とても股座など見えなかった。
(んあっ!! しよぉ――あああ?!!)
無理な捻りで骨格が悲鳴を上げて、本当に痛い。
その上――微かでも、ほんの微かでも――股を覆う下着がぬちょっ、と湿っていた感触までする。
誰かに気付かれてしまったかと、嘆くしかない。――いや、違う。
「もひぉっ!?ああもょ!?(誰!?誰だ!?)」
秘部の内部が湿っていた事実を知るものが、この中に一人だけ居る。今度は逆にクジラが血走った瞳で周囲を見やった。
けれども何十人といる中、犯人を見つけ出すのは容易でなく、しかも全員が発情しているかのような昂ぶりをしているので、ますます検討が付けられない。
(うぁっ!はぐぅっ!!へ、変態ぃ…女っていわるぅ!きっといわれちゃって、…沙希にも!さ、沙希!ひぁやんっ!ひぃ…いや、だそんなの…っ)
痴態を暴露されるかも、と被虐的に考えている最中でも、女子たちは『セラス』の肉体に殺到する。
どうやら下着の牝臭い湿気もそこまで――外見的には――目立つものではないらしい。
騒ぎは無かった。
もっとも、それでも体は女子たちの玩具のままである。
(うわ、ぁっ!!誰……なんだああ!?ひゃぅうんっ!だからおっぱいそんな強くぅ!揉むなっ!!)
激しい女同士のじゃれ付きに、弱気の余りに理性が弛んだ。
この場で一番豊満な美女は、この場で一番稚拙な精神だった。
だから、気付かない。
自分の背後からぬちゃ、れろ、ぬちゃり、と響く舌舐めずり音を。
「ふふ、セラスちゃん――ったら、厭らしいィ――」
ペロペロと一本の指ををしゃぶる少女。沙希。
彼女こそが、クジラの――『セラス』の女性性器を弄った張本人だった。
周辺の女子たちを遥かに圧倒する淫行を達成したその指を愛おしげに舐める。
女王様――と呼ぶに相応しい空気を纏う彼女は妖艶さと言う点では、クジラをも凌駕していた。
「むむン!!あむひぉろ、ろっ!?んんっ――あひィ!!?(ヤダ!!ヤダあああ!? やめ…んっあ!?)」
十分弱ほどは経過しただろう集団セクハラ。
しかし、目的のブルマはメインの下どころか、上の普通着すらも装着しておらず――無数の手による陵辱が続いていた。
「んひぅんんっ…むぅ!んぶぅぃっ…くんっん!(さき…助け…!んあっ…ひゃう!」
もはやブルマを穿いてもいいから助けてくれっ、と彼は観念して助けを心で呼んだ。
その相手が首謀者であることを重々知りつつ、どうしても信じたくなり、念を送る。
「あっ、髪が邪魔になっちゃうからリボンを付けようかァ――私の袋から誰か、とってっ」
だが、しかし――やはり、助けてはくれずに、逆に追い討ちを仕掛けてきた。
沙希の声に操られ、クジラの体を弄れない幾人かが競争する。
そして勝ち取った一人が、可愛らしいリボンを携え、近寄ってきた。
「じゅあ私がヤルねっ!ああ!!もう!!髪も超イイ!!なにこれ!!」
「うふわぁーん!!さみィろ!!んむゥゥっ!!(うわーん!!沙希の!!バッカぁぁ!!)」
蕩けた体で抗おうとするのだが、朦朧とし始めた脳では拙い癇癪しか出来ない。
女陰の肉穴に指を入れたのが沙希であることに気付かない上――沙希がリボンを持っている不自然さにも、まったく気が付けない。
彼女が髪をまとめるのは、何時も紐タイプの髪止めである事実を、彼は忘れていたのだ。
恥ずかしさやら、火照った体の快感で頭が回らず中身が子供な、いい証拠である。
(ふぇぇ~~!ひぃぃんん――っ!!)
そして、ブルマ姿に可愛らしいリボンまで加わって、『白方セラス』は可愛らしく改造されてしまう。
結局――早く準備した筈の女子たちは二十分以上も遅刻してしまい、教師のお怒りを受けることに。
けれども女子生徒たちは甘んじて、怒号を受けていた。
ただ一人を除いて。
「…は…恥かしい…な、んで…おれ…ぶるまっ…。うっ、…うぅ…っ!」
一人だけブルマで、一人だけ抜き出たグラマーな体を持つ――『白方セラス』その人だった。
<つづく>
クジラの人魚姫5-4
(4)
彼女たちの勢いに負けたのか、それとも同情で譲ったのか。
沙希の両腕の感触は何時の間にか消えていた。
だが、逆に複数の手がクジラの怪物おっぱいをしゃぶるように攻め立て始める。
数人――少なくとも4,5人が囲い、指を突っ込んできた。
「うはァ――っ!!欲しい!!この腰周りィィ!!欲しい!!」
「お尻も、美味しそうゥゥ。――ふっくらパンみたいっ!」
「ちょっと、あたしたちにも回しなさいよ!!」
「ダメ……早い者勝ち」
勝ち気な子に弱気な子に真面目な学級委員風の女子まで群がって、肉体を苛めている。
彼女たちは気付いていないのか、気付いてやっているのか、分からない。
だが、クジラの魅力に当てられた彼女たちは知らず内に自身の行為をエスカレートしていく。
「きゃン!?ちょ、ちょっと!!これ、着替え違ァ――う!?」
セクハラ――だ。
これは、セクハラそのものだ。
幾つモノ女子の手が、クジラを捏ね繰り回す。
キュンと子宮が疼きだし、膨大な恥かしさに絶望が圧し掛かる。
「やめっ…ひやっ…すかーと……シャツも…もうないよぉぉ!!」
(なんで、シャツとスカートを外したのに――まだ体を弄るんだァァ!?)
臀部の頼りない柔肌を抓り、ウエストを難癖を付けるように何回も摩る。
巨乳に至っては乳首すらも摘んで遊んでいた。
ティッシュを取るかのように軽い動作だが、敏感な性感帯にそれはないだろう、と声なく絶叫する。

挿絵.倉塚りこ
「ひゃっ…みんなっ…おちゅつっ…んっ!」
「無理ィィ!柔らかいよぉ!すべすべだよぉ!」
「ご利益あるかも!これならきっと私もグラマーに!」
「そんなわけ…くっ、ひぃぃっ、ん、ん!ちょ…乳首…誰え、ぇっ…!?」
ブラジャーとショーツ姿にも関わらず、女子どもは未だに『セラス』の肉体に遊び耽っていた。
巨乳を、腰を、お尻を、否。
女体のスリーポイントだけでなく、髪も肌もうなじも背筋も――耳裏にまで手が這い寄ってくる。
舐めるかのごとき苛烈な愛撫に、脱力的な痺れが全身に突き抜けた。
「くぅ、きゃうぅ…っ!」
直後、糸が切れたように座り込むと、足の付け根に地面がむちっ、と密着する。
悩ましい吐息をこぼし、身じろいだ。
「ハァハァ、――え?まだ、体操服に着替えて無いじゃん!?」
「早くしないと、遅れちゃうよ?なんで着替えていないの…?」
「なに座ってんのよ。ほら――立った! 立った!」
下着姿で息切れを起こしているクジラに、心配や罪悪感をまったく感じない集団。
彼女たちは、ただただ可愛く綺麗なセシリウスの姿をしたクジラを――『弄りたいのだ』。
「ヒィィ――ひぁっ?!きゃぅ、っああぁぁ!!」
それこそ本物の少女のような悲鳴を張り上げ、クジラは無数の魔の手から逃げようとした。
だが、数も力も敵が上で、赤子のように身体を持ち上げられ、無理矢理に立たされてしまう。
「アレ、これ――ぶ、ブルマ!?」
刹那、異常な熱気の篭る女子更衣室に絶叫が響いた。
クジラから奪った袋を物色していた女の子が、突如として狼狽している。 一時的に注目はクジラから、その少女に移る。
「ぶ…ルマ…? はへ、え!? ぶるうぅまああッ!?」
深々とした紺色が妙に艶やかで、小さな布地の物体。
男の精神を宿している『セラス』は否応なく、邪な気分を煽られる。皆の注目を集める少女の手には確かに――ブルマが存った。
(――なんでブルマがあァ!?)
渡されただけで、中身は知らなかった。
何度も酷い目に合わされた彼だったが、心地いい時間に気が緩んでしまったのだろう。
中身のチェックを怠り、謀られた――。
と、思うも、ずるずると彼の周りに『囲い』が出来上がっていく。
「えっ、うそォ――っ。なんでブルマがっ!?」
「ブルマっ!?」
「まさか――しゅ、趣味ィ!?」
今まで自分たちの行いを差し置いてクジラを、『セラス』を危険人物として見やる女子たち。
ブルマの出現に一番驚愕し、戸惑っているのは彼なのだが、生憎と彼女たちには関係ない。
最悪の展開である。
もっとも、一部始終を知り、尚且つ嬉々した衝動を押さえられない人物がいた。
クジラの幼馴染である――麻倉 沙希だ。
「ああ、セラスちゃんの前の学校ではブルマだったらしいよぉ~」
抜け抜けと真顔を幼馴染が呟く。
「え、本当っ」
「――って、いうかなんで沙希が知ってんの?なんだか仲も良いし、もしかして前から、知り合い?」
「うん、そうだよ」
「へぇ~~、にしてもブルマ採用している所って在ったんだ……」
変態扱いされずに済む流れなのだが、なぜか未だ危機感に胃がキリキリと痛み出す。
そこで不意に首を傾け、きょとんと『セラス』は考え込む。
(アレ――なに?この…流、れ…?へっ?じゃあ俺が……)
――ブルマ着るってことじゃん。
血の気がサァァ、と引いた。
ブルマ姿をしている『セラス』を想像し、未来の戦慄が先取りされて、全身が鳥肌立つ。
(落ち着け!落ち着け!そっ、そうだ――気分が悪くなった、といえば……)
『セラス』という仮面を強く顔に癒着し、クジラは覚悟を決めた。
嘘でも押し通すしかない――と、男のプライドを守る為に、減退した気力を振り絞る。
「あ、あのォ――あたし!!」
幸い、まだ女子たちはブルマというマニアックな異物の対応に困っている。
今までとは違い、隙だらけ。
「あ、あたし…気分が悪くなちゃった。だ、誰か保健室まで――んきォろ!?」
これならと大丈夫かと思われた――が、敵は残っていた。
むぐにゅんっ、と胸を持ち上げるように拉げ、喚こうとした口を指の根元ほど突っ込んで塞ぐ。
「ホラ、もう時間がないよ。 早く着替えさせて上げないといけないよ?みんな!」
幼馴染――と言う、難攻不落の敵が、クジラの行動を予測し、逃走を妨げる。
胸を弄られる衝動的な快感に声が狂った。
いや、それ以前に口腔に侵入した二本の指が舌の動きを束縛し、情け容赦なく言葉を破壊する。
「んびぃひょろろ!?んっ!?んぶぅ!!(なにするんだ!?あっ!?だ、め!!)」
沙希の片手が、双乳の片方を圧迫し――もう片方が、クジラの口唇にぬじゅるっ、と注がれた。
乳を揉んでいる方は巨乳を蹂躙し、二本の指が小さな紅唇に涎を強要する。
見事に舌をコントロールされて、絶叫すらも吐き出せない。
「むごっ!ンンっ!?(やめ…ンひィ!?)」
「ふふ、さぁ――皆も手伝って!」
「ん、ろひぉぉ!?(うそぉぉ!?)」
またも沙希が指揮し、女子たちに闘志が戻った。
迫ってくる。ギン、ギランッ、と昂ぶる目付きで。
「ひぁ…んあ!んむぅ!ん、むひぃぃ!!(やだ!やだぁ!やだよぉ!!)」
両腕を駆使しても沙希は離れない。
そして、その間に女子たちが雪崩れ込むように突進して来る。
ぎゅうぎゅうと圧迫される状態に、肢体は強張りを弱め始めていた。
「演技を忘れた罰よ。覚悟を決めてお仕置きされちゃいなさい。クジラちゃん」
「むぼ、ろひよぉぉ!?んきゃぁああ――っ!(そ、そんなああ!?ひぁああ!揉まないでぇぇ!)』
愛撫するのは沙希だけではない。またもや数人の女子たちが輪を作り、手を突き出した。
腰をむにんと撓める者もいれば、マニアックと言うべきか、暴れる手を捕まえてその指の狭間をぷにぷに突っついてくる。
痛みはない。快感も腰を下から撫でられるこそばゆい喜悦に比べたら、皆無に均しい。
だが、無力な自分を知らしめられるには十分で、なぜか――心臓が轟音を立てて興奮する。
<つづく>
彼女たちの勢いに負けたのか、それとも同情で譲ったのか。
沙希の両腕の感触は何時の間にか消えていた。
だが、逆に複数の手がクジラの怪物おっぱいをしゃぶるように攻め立て始める。
数人――少なくとも4,5人が囲い、指を突っ込んできた。
「うはァ――っ!!欲しい!!この腰周りィィ!!欲しい!!」
「お尻も、美味しそうゥゥ。――ふっくらパンみたいっ!」
「ちょっと、あたしたちにも回しなさいよ!!」
「ダメ……早い者勝ち」
勝ち気な子に弱気な子に真面目な学級委員風の女子まで群がって、肉体を苛めている。
彼女たちは気付いていないのか、気付いてやっているのか、分からない。
だが、クジラの魅力に当てられた彼女たちは知らず内に自身の行為をエスカレートしていく。
「きゃン!?ちょ、ちょっと!!これ、着替え違ァ――う!?」
セクハラ――だ。
これは、セクハラそのものだ。
幾つモノ女子の手が、クジラを捏ね繰り回す。
キュンと子宮が疼きだし、膨大な恥かしさに絶望が圧し掛かる。
「やめっ…ひやっ…すかーと……シャツも…もうないよぉぉ!!」
(なんで、シャツとスカートを外したのに――まだ体を弄るんだァァ!?)
臀部の頼りない柔肌を抓り、ウエストを難癖を付けるように何回も摩る。
巨乳に至っては乳首すらも摘んで遊んでいた。
ティッシュを取るかのように軽い動作だが、敏感な性感帯にそれはないだろう、と声なく絶叫する。

挿絵.倉塚りこ
「ひゃっ…みんなっ…おちゅつっ…んっ!」
「無理ィィ!柔らかいよぉ!すべすべだよぉ!」
「ご利益あるかも!これならきっと私もグラマーに!」
「そんなわけ…くっ、ひぃぃっ、ん、ん!ちょ…乳首…誰え、ぇっ…!?」
ブラジャーとショーツ姿にも関わらず、女子どもは未だに『セラス』の肉体に遊び耽っていた。
巨乳を、腰を、お尻を、否。
女体のスリーポイントだけでなく、髪も肌もうなじも背筋も――耳裏にまで手が這い寄ってくる。
舐めるかのごとき苛烈な愛撫に、脱力的な痺れが全身に突き抜けた。
「くぅ、きゃうぅ…っ!」
直後、糸が切れたように座り込むと、足の付け根に地面がむちっ、と密着する。
悩ましい吐息をこぼし、身じろいだ。
「ハァハァ、――え?まだ、体操服に着替えて無いじゃん!?」
「早くしないと、遅れちゃうよ?なんで着替えていないの…?」
「なに座ってんのよ。ほら――立った! 立った!」
下着姿で息切れを起こしているクジラに、心配や罪悪感をまったく感じない集団。
彼女たちは、ただただ可愛く綺麗なセシリウスの姿をしたクジラを――『弄りたいのだ』。
「ヒィィ――ひぁっ?!きゃぅ、っああぁぁ!!」
それこそ本物の少女のような悲鳴を張り上げ、クジラは無数の魔の手から逃げようとした。
だが、数も力も敵が上で、赤子のように身体を持ち上げられ、無理矢理に立たされてしまう。
「アレ、これ――ぶ、ブルマ!?」
刹那、異常な熱気の篭る女子更衣室に絶叫が響いた。
クジラから奪った袋を物色していた女の子が、突如として狼狽している。 一時的に注目はクジラから、その少女に移る。
「ぶ…ルマ…? はへ、え!? ぶるうぅまああッ!?」
深々とした紺色が妙に艶やかで、小さな布地の物体。
男の精神を宿している『セラス』は否応なく、邪な気分を煽られる。皆の注目を集める少女の手には確かに――ブルマが存った。
(――なんでブルマがあァ!?)
渡されただけで、中身は知らなかった。
何度も酷い目に合わされた彼だったが、心地いい時間に気が緩んでしまったのだろう。
中身のチェックを怠り、謀られた――。
と、思うも、ずるずると彼の周りに『囲い』が出来上がっていく。
「えっ、うそォ――っ。なんでブルマがっ!?」
「ブルマっ!?」
「まさか――しゅ、趣味ィ!?」
今まで自分たちの行いを差し置いてクジラを、『セラス』を危険人物として見やる女子たち。
ブルマの出現に一番驚愕し、戸惑っているのは彼なのだが、生憎と彼女たちには関係ない。
最悪の展開である。
もっとも、一部始終を知り、尚且つ嬉々した衝動を押さえられない人物がいた。
クジラの幼馴染である――麻倉 沙希だ。
「ああ、セラスちゃんの前の学校ではブルマだったらしいよぉ~」
抜け抜けと真顔を幼馴染が呟く。
「え、本当っ」
「――って、いうかなんで沙希が知ってんの?なんだか仲も良いし、もしかして前から、知り合い?」
「うん、そうだよ」
「へぇ~~、にしてもブルマ採用している所って在ったんだ……」
変態扱いされずに済む流れなのだが、なぜか未だ危機感に胃がキリキリと痛み出す。
そこで不意に首を傾け、きょとんと『セラス』は考え込む。
(アレ――なに?この…流、れ…?へっ?じゃあ俺が……)
――ブルマ着るってことじゃん。
血の気がサァァ、と引いた。
ブルマ姿をしている『セラス』を想像し、未来の戦慄が先取りされて、全身が鳥肌立つ。
(落ち着け!落ち着け!そっ、そうだ――気分が悪くなった、といえば……)
『セラス』という仮面を強く顔に癒着し、クジラは覚悟を決めた。
嘘でも押し通すしかない――と、男のプライドを守る為に、減退した気力を振り絞る。
「あ、あのォ――あたし!!」
幸い、まだ女子たちはブルマというマニアックな異物の対応に困っている。
今までとは違い、隙だらけ。
「あ、あたし…気分が悪くなちゃった。だ、誰か保健室まで――んきォろ!?」
これならと大丈夫かと思われた――が、敵は残っていた。
むぐにゅんっ、と胸を持ち上げるように拉げ、喚こうとした口を指の根元ほど突っ込んで塞ぐ。
「ホラ、もう時間がないよ。 早く着替えさせて上げないといけないよ?みんな!」
幼馴染――と言う、難攻不落の敵が、クジラの行動を予測し、逃走を妨げる。
胸を弄られる衝動的な快感に声が狂った。
いや、それ以前に口腔に侵入した二本の指が舌の動きを束縛し、情け容赦なく言葉を破壊する。
「んびぃひょろろ!?んっ!?んぶぅ!!(なにするんだ!?あっ!?だ、め!!)」
沙希の片手が、双乳の片方を圧迫し――もう片方が、クジラの口唇にぬじゅるっ、と注がれた。
乳を揉んでいる方は巨乳を蹂躙し、二本の指が小さな紅唇に涎を強要する。
見事に舌をコントロールされて、絶叫すらも吐き出せない。
「むごっ!ンンっ!?(やめ…ンひィ!?)」
「ふふ、さぁ――皆も手伝って!」
「ん、ろひぉぉ!?(うそぉぉ!?)」
またも沙希が指揮し、女子たちに闘志が戻った。
迫ってくる。ギン、ギランッ、と昂ぶる目付きで。
「ひぁ…んあ!んむぅ!ん、むひぃぃ!!(やだ!やだぁ!やだよぉ!!)」
両腕を駆使しても沙希は離れない。
そして、その間に女子たちが雪崩れ込むように突進して来る。
ぎゅうぎゅうと圧迫される状態に、肢体は強張りを弱め始めていた。
「演技を忘れた罰よ。覚悟を決めてお仕置きされちゃいなさい。クジラちゃん」
「むぼ、ろひよぉぉ!?んきゃぁああ――っ!(そ、そんなああ!?ひぁああ!揉まないでぇぇ!)』
愛撫するのは沙希だけではない。またもや数人の女子たちが輪を作り、手を突き出した。
腰をむにんと撓める者もいれば、マニアックと言うべきか、暴れる手を捕まえてその指の狭間をぷにぷに突っついてくる。
痛みはない。快感も腰を下から撫でられるこそばゆい喜悦に比べたら、皆無に均しい。
だが、無力な自分を知らしめられるには十分で、なぜか――心臓が轟音を立てて興奮する。
<つづく>
クジラの人魚姫5-3
(3)
チャイムの音が鳴る頃にはコスプレお姉さんであるクジラは、舞い上がっていた。
優しく扱われることだけでも涙を流すほど嬉しいのに、一時とはいえ、沙希と密着した時間を過ごせて、興奮を隠しきれないのだ。
放置していれば、鼻歌で踊り出してしまうだろう。
(次はなにかなぁ…?)
今度も沙希に教科書を貸して貰おう――などと私欲に燃える。
入れ替わってからずっと受身だった為に、どんな小さなことでも『攻める』ことに貪欲になっていた。
皮肉にも男――元の体――の時よりも、積極的に沙希に関わろうとする。
「じゃあ、行こうか。セラスちゃん」
「うん――って、行くぅ?な、何に?…い、行く?」
が――嫌な予感に幸福感が急激に下がった。
彼の問いに反応したのは、左にいた人物。クジラの姿をしたセシリウスだ。
「おいおい、次は――『体育』だろぉ、ほらっ、時間割にも書いてある」
「なぁーんだ……『体育』かァ。もう脅かさないでよ沙希ちゃん、あたしびっ――って
体育ゥゥ!?」
普通で、平凡で、当たり前な授業。
驚くことはない――と、判断したのは彼の明らかな過失だろう。
そして絶叫したのも間違いだった。
クラスの皆――特に女子たち――が、好奇心で輝いた瞳で近づいてきた。
『セラス』はさらに慄き、沙希と『クジラ』はアイ・コンタクトをする。そして――。
「じゃあ行こうか。 セラスちゃん」
「あっ、ちょ――まぁッ」
問答無用に沙希は困惑していたクジラを、否『白方セラス』を引っ張っていく。
その後を、女子が慌てて追う。
『待って、私たちもクジラさんの体見たいっ』――と異口同音で、口走って。
男子は男子で、悲しみを露にし、中には本当に泣いている者までいた。
余程、女子たちに蹴散らされて『セラス』と仲良くなれなかったのが、悲しいらしい。
「ふぅ、まあ、いいかっ…俺も早く着替えよっ」
戦意喪失する男共を慰めるかどうか迷うも、セシリウスにはそんな義理も義務もなかった。
本心では悲しみに打ちひしがれている男子と同じ心境なのは間違いはない。
(後は――任せたわよ。沙希ちゃん。 メッチャクッチャにしてやってよ!!)
しかし、それでも十分に楽しめると踏んだので、欲望を抑えたのだ。
自分には頼れる共犯者がいる。
だから、ことの顛末を聞けば良いし、魔法で記憶を読取ることも可能である。
彼女の、いや彼女たちの作戦に死角はない。
死角などあってはいけないし、失敗は許されない。
その証拠のように同時刻、『セラス』は既に沙希と多くのクラスメイトに洗礼を受けていた。
――女子特有の裸の付き合い。
クジラにとって地獄でも、セシリウスと沙希、そして女子にとって至福の始まりだった。
~~
漫画などの架空の物語で度々見かける女子同士の裸の弄り合い。
男だった彼は、そんなもの男の勝手な妄想だと思っていた。が――それは間違いだった。
完全なる自分の思い込みだったのである。
にじり寄る興奮した女子の軍勢に、クジラはそう悟った。
「はぁはぁ――イイ体してるじゃねえか!」
「ハァ…ハァ……やる?やっちゃう?…あうっ!かわ…可愛いぃいいい!!」
「じゅるる、ハッ!?無意識に涎がッ!!」
戸惑う彼よりも先に、と音速で着替えた女子たち。
その様子は明らかに常軌を逸していたが、――誰も心配しない。誰も止まらない。
クジラ以外のこの場にいる全員が発情してしまったらしい。
それぞれが熱い吐息をこぼす。
「ちょ――っ!!あ、あのさぁぁ!!落ち着いてよ。 こ、こんなの変だよォ!?」
女子が獣臭い雰囲気を醸し出し、近寄ってくる。
沙希やセシリウスのお仕置みたいに、いや彼女たちの揉み方を真似しているかのような指の蠢き。
過剰な好意に反応したのか、『セラス』の背筋にビクンと電気が走った。
肌に恐怖を擦り込められ、神経が上手に動かない。
「タッタンマ、本当にィィ――」
物理的には指一本すら触れられていないのに、この悪寒。
体から冷汗がこぼれる。
(ヤバイよぉぉ!なんだか分からないけど、ヤバイぃ!ひぃいい!)
潤んだ瞳と微かに染まるピンクの頬、そして美しい紅唇。
――現実を処理できずに小刻みに打ち震えながら、『セラス』は肉体から牝の魅惑をぷんぷん、と匂わせていた。
「セラスさんも早く着替えなよ! ほら、貸して――っ」
「あっ、じ、自分で出来る、…から!!」
「なにいってるの。もう時間ないよ!…ないったらないの!!だから…女の友情を受けなさい…!」
「きゃっ!あっ…ぃ、いいよ!じ、自分で、できるよおぉ…っ!」
セシリウスから渡された薄茶色の布袋を簡単に奪われる。
完全に体が萎縮してしまい体どころか、口も上手く動けない。言い訳すらも半端になる。
「さぁ…さ、沙希…た、助け…てぇ…っ!」
恥も外聞も、そして演技も忘れて幼馴染に助けを求めた
その姿が、さらに少女たちの異常な愛欲を増加させるとも気が付かずに。
幼女の可愛さと、卑猥な体のアンバランスさから生まれる甘美な魅惑に、誰もが抗えない。
『誰も』――が。
彼の幼馴染である沙希も論外ではない。むしろ――。
「ひァんン!!? えっ!? ちょ――ひぃン、?!!」
突如、制服とブラに包まれた乳房に痛みが走る。無視できない快感も炸裂する。
にゅぐっにゅぐっ、とゼリーを彷彿させる変形特有の響きが、脳をジリジリと焦らせた。
「ふ、ぁあン!? やめ、やめ、て……」
乳房を揉まれている。何人もの人の指が、柔房を上手に解していく。
男のモノとは違う細く力のない指が、乳を嬲っていた。
自分よりも弱い柔らかな肉を見下すように。
(やめ…、このォ…ン、……ここは家じゃないん……あっ)
皆が、クラスメイトが見ている中で痴態を晒している自分。胸を弄られ、悶々としている様を『セラス』として見られてしまっている。
恥かしさと妙な快感に体が否応なく、高揚する。
無慈悲に火照るセシリウスの肉体が、どこまでも憎い。
(やめォ!? くそぉぉ!! ひゃあ!!? っさ――)
クジラには、分かっていた。見なくても、誰が自身の胸を揉み解しているのかを。
慣れてしまった特有の揉み方に、確信を持って名を叫ぶ。
「さぁ――沙希ぃぃ!! じょっ冗談、はぁ……んっ……だめぇ…!」
クジラの悲鳴に、沙希は顔を出す。
罪悪感の一つも感じていない惚れ惚れするほどの小悪魔的な笑み。
むしろ、彼女は快感で酔い痴れた声で、皆に命令を下した。
「ほら、みんな。今のうちセラスちゃんを楽しんじゃえ!!」
『おおー!!』
――、といくつもの声をクジラが認識した次の瞬間には、様々な部分が摘まれていた。
沙希の指の上から、またはまだ刺激されていない腰やお尻、太ももまでもが、易々と弄られる。
全身が遊ばれてしまう。
擦って、捻って、揉んで――と。
「んァ!!ダメェェ!!ひぃ!?」
叫ぶ声は届かず、靴と靴下を奪われた。
一気に股の下のほとんどが、外界に晒される。
ストッキングさえも脱がされ下半身に外気が降り掛かる。妙にゾクゾクする疼きに、腰が浮かぶ。
「沙希さんばっかりズルぃ!私にも胸揉ませて――うわっ、何この弾力――癖になりそう~~!?」
「あたしも――エイ!!きゃっ!?すご~ぃ!」
沙希の掴みの隙間を縫って、指がにゅぶっり、と差し込まれる。
痛くはない。けれども房を窪ませる力と衝撃に、痺れが脳裏に走り抜ける。
お尻がむちっ、と弾み上がり、一緒になって胸部がむにょんと上下に踊った。
(うわっ!!そこ…は!?あっダメええ!?ひゃン!?ちょ、ちょとどこにィ!?)
<つづく>
チャイムの音が鳴る頃にはコスプレお姉さんであるクジラは、舞い上がっていた。
優しく扱われることだけでも涙を流すほど嬉しいのに、一時とはいえ、沙希と密着した時間を過ごせて、興奮を隠しきれないのだ。
放置していれば、鼻歌で踊り出してしまうだろう。
(次はなにかなぁ…?)
今度も沙希に教科書を貸して貰おう――などと私欲に燃える。
入れ替わってからずっと受身だった為に、どんな小さなことでも『攻める』ことに貪欲になっていた。
皮肉にも男――元の体――の時よりも、積極的に沙希に関わろうとする。
「じゃあ、行こうか。セラスちゃん」
「うん――って、行くぅ?な、何に?…い、行く?」
が――嫌な予感に幸福感が急激に下がった。
彼の問いに反応したのは、左にいた人物。クジラの姿をしたセシリウスだ。
「おいおい、次は――『体育』だろぉ、ほらっ、時間割にも書いてある」
「なぁーんだ……『体育』かァ。もう脅かさないでよ沙希ちゃん、あたしびっ――って
体育ゥゥ!?」
普通で、平凡で、当たり前な授業。
驚くことはない――と、判断したのは彼の明らかな過失だろう。
そして絶叫したのも間違いだった。
クラスの皆――特に女子たち――が、好奇心で輝いた瞳で近づいてきた。
『セラス』はさらに慄き、沙希と『クジラ』はアイ・コンタクトをする。そして――。
「じゃあ行こうか。 セラスちゃん」
「あっ、ちょ――まぁッ」
問答無用に沙希は困惑していたクジラを、否『白方セラス』を引っ張っていく。
その後を、女子が慌てて追う。
『待って、私たちもクジラさんの体見たいっ』――と異口同音で、口走って。
男子は男子で、悲しみを露にし、中には本当に泣いている者までいた。
余程、女子たちに蹴散らされて『セラス』と仲良くなれなかったのが、悲しいらしい。
「ふぅ、まあ、いいかっ…俺も早く着替えよっ」
戦意喪失する男共を慰めるかどうか迷うも、セシリウスにはそんな義理も義務もなかった。
本心では悲しみに打ちひしがれている男子と同じ心境なのは間違いはない。
(後は――任せたわよ。沙希ちゃん。 メッチャクッチャにしてやってよ!!)
しかし、それでも十分に楽しめると踏んだので、欲望を抑えたのだ。
自分には頼れる共犯者がいる。
だから、ことの顛末を聞けば良いし、魔法で記憶を読取ることも可能である。
彼女の、いや彼女たちの作戦に死角はない。
死角などあってはいけないし、失敗は許されない。
その証拠のように同時刻、『セラス』は既に沙希と多くのクラスメイトに洗礼を受けていた。
――女子特有の裸の付き合い。
クジラにとって地獄でも、セシリウスと沙希、そして女子にとって至福の始まりだった。
~~
漫画などの架空の物語で度々見かける女子同士の裸の弄り合い。
男だった彼は、そんなもの男の勝手な妄想だと思っていた。が――それは間違いだった。
完全なる自分の思い込みだったのである。
にじり寄る興奮した女子の軍勢に、クジラはそう悟った。
「はぁはぁ――イイ体してるじゃねえか!」
「ハァ…ハァ……やる?やっちゃう?…あうっ!かわ…可愛いぃいいい!!」
「じゅるる、ハッ!?無意識に涎がッ!!」
戸惑う彼よりも先に、と音速で着替えた女子たち。
その様子は明らかに常軌を逸していたが、――誰も心配しない。誰も止まらない。
クジラ以外のこの場にいる全員が発情してしまったらしい。
それぞれが熱い吐息をこぼす。
「ちょ――っ!!あ、あのさぁぁ!!落ち着いてよ。 こ、こんなの変だよォ!?」
女子が獣臭い雰囲気を醸し出し、近寄ってくる。
沙希やセシリウスのお仕置みたいに、いや彼女たちの揉み方を真似しているかのような指の蠢き。
過剰な好意に反応したのか、『セラス』の背筋にビクンと電気が走った。
肌に恐怖を擦り込められ、神経が上手に動かない。
「タッタンマ、本当にィィ――」
物理的には指一本すら触れられていないのに、この悪寒。
体から冷汗がこぼれる。
(ヤバイよぉぉ!なんだか分からないけど、ヤバイぃ!ひぃいい!)
潤んだ瞳と微かに染まるピンクの頬、そして美しい紅唇。
――現実を処理できずに小刻みに打ち震えながら、『セラス』は肉体から牝の魅惑をぷんぷん、と匂わせていた。
「セラスさんも早く着替えなよ! ほら、貸して――っ」
「あっ、じ、自分で出来る、…から!!」
「なにいってるの。もう時間ないよ!…ないったらないの!!だから…女の友情を受けなさい…!」
「きゃっ!あっ…ぃ、いいよ!じ、自分で、できるよおぉ…っ!」
セシリウスから渡された薄茶色の布袋を簡単に奪われる。
完全に体が萎縮してしまい体どころか、口も上手く動けない。言い訳すらも半端になる。
「さぁ…さ、沙希…た、助け…てぇ…っ!」
恥も外聞も、そして演技も忘れて幼馴染に助けを求めた
その姿が、さらに少女たちの異常な愛欲を増加させるとも気が付かずに。
幼女の可愛さと、卑猥な体のアンバランスさから生まれる甘美な魅惑に、誰もが抗えない。
『誰も』――が。
彼の幼馴染である沙希も論外ではない。むしろ――。
「ひァんン!!? えっ!? ちょ――ひぃン、?!!」
突如、制服とブラに包まれた乳房に痛みが走る。無視できない快感も炸裂する。
にゅぐっにゅぐっ、とゼリーを彷彿させる変形特有の響きが、脳をジリジリと焦らせた。
「ふ、ぁあン!? やめ、やめ、て……」
乳房を揉まれている。何人もの人の指が、柔房を上手に解していく。
男のモノとは違う細く力のない指が、乳を嬲っていた。
自分よりも弱い柔らかな肉を見下すように。
(やめ…、このォ…ン、……ここは家じゃないん……あっ)
皆が、クラスメイトが見ている中で痴態を晒している自分。胸を弄られ、悶々としている様を『セラス』として見られてしまっている。
恥かしさと妙な快感に体が否応なく、高揚する。
無慈悲に火照るセシリウスの肉体が、どこまでも憎い。
(やめォ!? くそぉぉ!! ひゃあ!!? っさ――)
クジラには、分かっていた。見なくても、誰が自身の胸を揉み解しているのかを。
慣れてしまった特有の揉み方に、確信を持って名を叫ぶ。
「さぁ――沙希ぃぃ!! じょっ冗談、はぁ……んっ……だめぇ…!」
クジラの悲鳴に、沙希は顔を出す。
罪悪感の一つも感じていない惚れ惚れするほどの小悪魔的な笑み。
むしろ、彼女は快感で酔い痴れた声で、皆に命令を下した。
「ほら、みんな。今のうちセラスちゃんを楽しんじゃえ!!」
『おおー!!』
――、といくつもの声をクジラが認識した次の瞬間には、様々な部分が摘まれていた。
沙希の指の上から、またはまだ刺激されていない腰やお尻、太ももまでもが、易々と弄られる。
全身が遊ばれてしまう。
擦って、捻って、揉んで――と。
「んァ!!ダメェェ!!ひぃ!?」
叫ぶ声は届かず、靴と靴下を奪われた。
一気に股の下のほとんどが、外界に晒される。
ストッキングさえも脱がされ下半身に外気が降り掛かる。妙にゾクゾクする疼きに、腰が浮かぶ。
「沙希さんばっかりズルぃ!私にも胸揉ませて――うわっ、何この弾力――癖になりそう~~!?」
「あたしも――エイ!!きゃっ!?すご~ぃ!」
沙希の掴みの隙間を縫って、指がにゅぶっり、と差し込まれる。
痛くはない。けれども房を窪ませる力と衝撃に、痺れが脳裏に走り抜ける。
お尻がむちっ、と弾み上がり、一緒になって胸部がむにょんと上下に踊った。
(うわっ!!そこ…は!?あっダメええ!?ひゃン!?ちょ、ちょとどこにィ!?)
<つづく>
10月 文庫のチェックリスト
10/06 小学館 小学館文庫 変身 嶽本野ばら \670
10/08 新書館 ウィングス文庫 身代わり花嫁と公爵の事情 奥山鏡 \756
10/12 幻冬舎 幻冬舎文庫 完全男子抹殺ゲーム 佐藤シエラ \
10/12 幻冬舎 幻冬舎文庫 完全女子抹殺ゲーム 佐藤シエラ \
10/15 ソフトバンククリエイティブ GA文庫 這いよれ!ニャル子さん(8) 逢空万太 \630
10/15 ソフトバンククリエイティブ GA文庫 魔法世界は女ばかりで、俺がパパ!? 鯨晴久 \630
10/17 メディアックス さらさ文庫 ある朝キャロット・ハニーバニーが何か気がかりな夢から目を覚ますと 村樫押諸 \580
10/18 小学館 ガガガ文庫 きぜんと撤収!! 邪神大沼(8) 川岸殴魚 \600
10/18 小学館 ガガガ文庫 魔王っぽいの 原田源五郎 \600
10/中 キルタイムコミュニケーション あとみっく文庫 目覚めると従姉妹を護る美少女剣士になっていた(3) 狩野景 \690
10/中 コスミック出版 コスミック文庫 まんがでわかる法律の裏ワザ 不況サバイバル編(仮) 飯野たから \680
10/29 エンターブレイン発行/角川グループパブリッシング発売 KCG文庫 バイト先は「悪の組織」!? ケルビム \630
10/29 エンターブレイン発行/角川グループパブリッシング発売 ファミ通文庫 ココロコネクト ニセランダム 庵田定夏 \630
10/下 パラダイム ぷちぱら文庫 催眠、好きですよね? ディーゼルマイン \670
10/08 新書館 ウィングス文庫 身代わり花嫁と公爵の事情 奥山鏡 \756
10/12 幻冬舎 幻冬舎文庫 完全男子抹殺ゲーム 佐藤シエラ \
10/12 幻冬舎 幻冬舎文庫 完全女子抹殺ゲーム 佐藤シエラ \
10/15 ソフトバンククリエイティブ GA文庫 這いよれ!ニャル子さん(8) 逢空万太 \630
10/15 ソフトバンククリエイティブ GA文庫 魔法世界は女ばかりで、俺がパパ!? 鯨晴久 \630
10/17 メディアックス さらさ文庫 ある朝キャロット・ハニーバニーが何か気がかりな夢から目を覚ますと 村樫押諸 \580
10/18 小学館 ガガガ文庫 きぜんと撤収!! 邪神大沼(8) 川岸殴魚 \600
10/18 小学館 ガガガ文庫 魔王っぽいの 原田源五郎 \600
10/中 キルタイムコミュニケーション あとみっく文庫 目覚めると従姉妹を護る美少女剣士になっていた(3) 狩野景 \690
10/中 コスミック出版 コスミック文庫 まんがでわかる法律の裏ワザ 不況サバイバル編(仮) 飯野たから \680
10/29 エンターブレイン発行/角川グループパブリッシング発売 KCG文庫 バイト先は「悪の組織」!? ケルビム \630
10/29 エンターブレイン発行/角川グループパブリッシング発売 ファミ通文庫 ココロコネクト ニセランダム 庵田定夏 \630
10/下 パラダイム ぷちぱら文庫 催眠、好きですよね? ディーゼルマイン \670
クジラの人魚姫5-2
(2)
彼の可愛らしい応答は席に戻る者、そしてクラスから出て行く者の両者がいなくなるまで続いた。
どうやら他クラスの女子も潜入してきていたらしい。
(……道理で顔の知らない奴もいると思った…)
そこまでの魅力が自分に――あくまでもセシリウスの体に――ある、と思い悩むクジラ。
的外れである。
赤面をしながら能天気に首を傾げている様は、危険なほどプリティーだ。
「うふふ、可愛いねクジラくん」
「……うん、そうだね。可愛いねっ」
ある意味天然な彼を見守るのは、彼の本来の肉体を手にしているセシリウス。
それとクジラの幼馴染の沙希である。
異様に楽しくてしょうがない、と言った込み上げ笑いを二人揃ってしていた。
しかも、クジラに見えないように、死角で思う存分に笑っているのだから、始末が悪い。
「何時ものように演じていればいいんだから……そんなに緊張するなよ、セラス」
――と言うか、悪質である。
観察するのに満足した途端、セシリウスが余裕ぶった笑顔でクジラに近づいた。
「…わっ…分かっているけど…、勢いに呑まれちゃうんだから……しかたないじゃないっ!」
二人の悪巧みを知らないまま、彼は『セラス』として上がった声で応えた。
女性であることに慣れたのか、癖になったのか、雰囲気的もほとんど女の子である。
恥かしさなどの些細なことを克服すれば、本物の女子高校生として生活できる日が来るだろう。
「でも…クジラが――セラスちゃんが、まさかねぇ」
そんな弄られっぱなしの可愛い女子の顔がぴきりっ、と凍ったかのように強張った。
今までとは別種の恐怖が心を縛り上げる。
「……っ」
まさか学校に来た理由を、"そのまま"説明されたのか。『クジラ』に視線を向ける。
『あたしはバラしてないわよ』――と、頭を振るっているが、信用はできない。
信じたばかりに辱めを受けている身としては、不信を抱かないほうがおかしかった。
「なっ、なに…が?」
取り合えず、思い人が気になった彼は、セシリウスへの睨みを中断し、問い返した。
沙希が至極まともな顔付きで、見詰めてくる。
グビリと唾を飲み込み沈黙を続けた――ものの、結局は彼の方が先に口を開いていた。
「いや、実は……」
「そこまで勤勉家だとは知らなかったわ…」
「あ…え?…えっ!?」
「えっ、違うの?クジラに聞いたら授業に追いつけなくなるからっていってたけど……」
(聞いてないぞ!?聞いてないぞっ!?おい、こら!セシリウス…っ!)
再び、クジラは自分自身に、自分の姿をしたセシリウスに怒気を送る。
彼女は人を食ったような笑みを崩さず――『フォローして上げたんだから、いいじゃないのよ』
とウィンクで説明した。
確かに助かる。
しかし――それでも事前連絡があってもいいのではないかと思うのは、間違いではあるまい。
「そ、そう…よ。…あたし…だって…向上心くらいあるんだから…っ」
(もう――どうにでも、なれぇ、っ……)
可能なら今すぐにでも逃げ出したい気分なのだが、それでは本末転倒である。
折角、ここまで恥ずかしさを押し殺して『白方セラス』になったのだ。
ならばっ、と熱意半分やるせなさ半分で、彼は目的である沙希をこっそりと観察した。
惚れた弱みか――やはり綺麗で、可愛い。
(まぁ――無駄足だったかもしれないけど……これは、これで…)
久しぶりの沙希との学園生活。
未だに最大の問題――肉体の入れ替わり――は解決していないが、漸く訪れた小さな幸福に心が緩み、笑みがこぼれた。
そんなクジラの幸せそうな表情に沙希が気付く。
「ん? ――どうしたのセラスちゃん」
不思議そうに首を傾げる彼女。それだけで心が躍った。
だから、ついついと本音を暴露してしまう。
「あっ、そのっ!……沙希!沙希ちゃんと一緒に授業が、…受けれるのが嬉しくて…っ」
直後、言葉の意味を悟り、手をバタバタ動かして、真っ赤に恥じらう。
(わっ!?わあっ!?わあっ!?俺は何をッ!!口走ってるんだぁぁ!?)
無意識に出た言葉は、それほど恥かしかった。
どうすることも出来ずに――それこそ目を瞑ることも出来ずに――幼馴染を見つめるしかない。
すると熱く火照らせた顔に、凛とした笑顔が突き刺さる。
「ふふ――私も嬉しいなァ。セラスちゃんと一緒に勉強できて…」
そして、そして――まさかの惚気とも思える返答。
心が打ち抜かれるほどの歓喜に体が浮かれ上がった。
「ほっ、本当…っ!?」
「うん…本当だよ」
パアア、と世界が明るんだ。
胸を揉まれたり、着せ替え人形にされたりした記憶すらも霞んでしまう。
ただ今の両想い――とも取れる言葉にクジラは酔い痴れた。
「なぁ俺は――どう?」
「えっ?ああ……クジラ君は…」
不意の声に振り向けば、自分の顔が――セシリウスがいた。
微妙に体をさらに近づけ、いつもとは違い心配そうな表情で見てくる。
そんな表情と仕草に沙希が好きな筈なのに、脈が早まってしまう。
甘い毒を盛られたかのように、頬が熱い。
(どうしよう――、一応、セシリウスのお陰だし)
沙希からの苛めは許せてもセシリウスの意地悪は容認できない――筈だった。
(うっ、…うぅ!わ、わかったから、そんな顔するなよ!へ、変な気分になる!)
けれども湧き上がる熱い衝動に根負けして、これはお礼なのだと言い訳がましく考えながら、微笑み返した。
そして、好意を伝える。
「勿論!クジラ君とも勉強できて…あ、あたし……――嬉しいわ」
『本音じゃない』と内心で呟きながら、はしゃぐ『白方 セラス』。
沙希の場合より二倍ほど恥辱色に染まった顔が、魅力たっぷりに色気づく。
女でも、男でも抗えない愛らしさ。
男である『クジラ』は過剰に反応し、吐息がかかるほどに詰め寄ってきた。
「おおっ、さすが親戚。俺たち気が合うな。俺もセラスと勉強出来て嬉しいよ!」
勝手なことを言うなっ、と怒りが浮かぶよりも、しょうがないという気持ちの方が強かった。
クジラは諦め、苦笑する。
「もうっ。お、大げさなんだから…っ、…恥かし、いじゃないのよ!」
(はぁ…でもこれぐらいで、喜ぶんなら…良かったかな?…なんて…ねっ)
沙希と一緒に事業を受けられるのも彼女のお陰だし、これぐらいはいいかな、と思えてしまう。
どうせ本気ではない、お遊び感覚なのだし――と、勝手にセシリウスの心境を決めつけて。
「それじゃあ、国語の事業を始めます。 転校生の白方――あぁ二人いるのか……えっとセラスさんは隣の白方君か麻倉さんに教科書を借りて下さい」
騒がしいが、思ったよりも障害なく進むかつての日常光景。
体は未だに、悩めしい艶美な女体ではあるが、少しだけ『自分』に戻れた気がする。
そんな穏やかな時間。
おまけに……。
「んー、さっきはクジラが貸したから私が貸してあげる――机寄せて、セラスちゃん」
「う、うん――ありがとう、沙希ちゃん」
ボーナスは一杯だった。
鼻を擦るのは女性用のシャンプーの優雅な臭いと、沙希の甘い体臭。
なんとも高揚を促す香りである。
間近まで迫る沙希の横顔も相俟ってとくんっ、と心臓が音を誇張して動き回った。
(うぐっ…!か、かなり…良かったかもしれない……っ)
次々と変わる学園生活への感想。だが、それは仕方のないことだった。
何気に優しいセシリウスや、同じくサービスがいい沙希の存在が幸福に感じられるのだ。
昨日までの二人と、現在の二人を比べると涙が出てしまうほど『今』が優しい。心地いい。
学校に戻ってこれたのは正解だった――とクジラは思った。が……しかし。
(ふふ、可愛いなクジラ――うんん、セラスちゃん)
自分が抱いている感情とは、ちょっと違う好意を幼馴染に注がれていることにも気付かず――
『白方セラス』は幸福感で弛んだ表情を、クラス中に観察されるのだった。
<つづく>
彼の可愛らしい応答は席に戻る者、そしてクラスから出て行く者の両者がいなくなるまで続いた。
どうやら他クラスの女子も潜入してきていたらしい。
(……道理で顔の知らない奴もいると思った…)
そこまでの魅力が自分に――あくまでもセシリウスの体に――ある、と思い悩むクジラ。
的外れである。
赤面をしながら能天気に首を傾げている様は、危険なほどプリティーだ。
「うふふ、可愛いねクジラくん」
「……うん、そうだね。可愛いねっ」
ある意味天然な彼を見守るのは、彼の本来の肉体を手にしているセシリウス。
それとクジラの幼馴染の沙希である。
異様に楽しくてしょうがない、と言った込み上げ笑いを二人揃ってしていた。
しかも、クジラに見えないように、死角で思う存分に笑っているのだから、始末が悪い。
「何時ものように演じていればいいんだから……そんなに緊張するなよ、セラス」
――と言うか、悪質である。
観察するのに満足した途端、セシリウスが余裕ぶった笑顔でクジラに近づいた。
「…わっ…分かっているけど…、勢いに呑まれちゃうんだから……しかたないじゃないっ!」
二人の悪巧みを知らないまま、彼は『セラス』として上がった声で応えた。
女性であることに慣れたのか、癖になったのか、雰囲気的もほとんど女の子である。
恥かしさなどの些細なことを克服すれば、本物の女子高校生として生活できる日が来るだろう。
「でも…クジラが――セラスちゃんが、まさかねぇ」
そんな弄られっぱなしの可愛い女子の顔がぴきりっ、と凍ったかのように強張った。
今までとは別種の恐怖が心を縛り上げる。
「……っ」
まさか学校に来た理由を、"そのまま"説明されたのか。『クジラ』に視線を向ける。
『あたしはバラしてないわよ』――と、頭を振るっているが、信用はできない。
信じたばかりに辱めを受けている身としては、不信を抱かないほうがおかしかった。
「なっ、なに…が?」
取り合えず、思い人が気になった彼は、セシリウスへの睨みを中断し、問い返した。
沙希が至極まともな顔付きで、見詰めてくる。
グビリと唾を飲み込み沈黙を続けた――ものの、結局は彼の方が先に口を開いていた。
「いや、実は……」
「そこまで勤勉家だとは知らなかったわ…」
「あ…え?…えっ!?」
「えっ、違うの?クジラに聞いたら授業に追いつけなくなるからっていってたけど……」
(聞いてないぞ!?聞いてないぞっ!?おい、こら!セシリウス…っ!)
再び、クジラは自分自身に、自分の姿をしたセシリウスに怒気を送る。
彼女は人を食ったような笑みを崩さず――『フォローして上げたんだから、いいじゃないのよ』
とウィンクで説明した。
確かに助かる。
しかし――それでも事前連絡があってもいいのではないかと思うのは、間違いではあるまい。
「そ、そう…よ。…あたし…だって…向上心くらいあるんだから…っ」
(もう――どうにでも、なれぇ、っ……)
可能なら今すぐにでも逃げ出したい気分なのだが、それでは本末転倒である。
折角、ここまで恥ずかしさを押し殺して『白方セラス』になったのだ。
ならばっ、と熱意半分やるせなさ半分で、彼は目的である沙希をこっそりと観察した。
惚れた弱みか――やはり綺麗で、可愛い。
(まぁ――無駄足だったかもしれないけど……これは、これで…)
久しぶりの沙希との学園生活。
未だに最大の問題――肉体の入れ替わり――は解決していないが、漸く訪れた小さな幸福に心が緩み、笑みがこぼれた。
そんなクジラの幸せそうな表情に沙希が気付く。
「ん? ――どうしたのセラスちゃん」
不思議そうに首を傾げる彼女。それだけで心が躍った。
だから、ついついと本音を暴露してしまう。
「あっ、そのっ!……沙希!沙希ちゃんと一緒に授業が、…受けれるのが嬉しくて…っ」
直後、言葉の意味を悟り、手をバタバタ動かして、真っ赤に恥じらう。
(わっ!?わあっ!?わあっ!?俺は何をッ!!口走ってるんだぁぁ!?)
無意識に出た言葉は、それほど恥かしかった。
どうすることも出来ずに――それこそ目を瞑ることも出来ずに――幼馴染を見つめるしかない。
すると熱く火照らせた顔に、凛とした笑顔が突き刺さる。
「ふふ――私も嬉しいなァ。セラスちゃんと一緒に勉強できて…」
そして、そして――まさかの惚気とも思える返答。
心が打ち抜かれるほどの歓喜に体が浮かれ上がった。
「ほっ、本当…っ!?」
「うん…本当だよ」
パアア、と世界が明るんだ。
胸を揉まれたり、着せ替え人形にされたりした記憶すらも霞んでしまう。
ただ今の両想い――とも取れる言葉にクジラは酔い痴れた。
「なぁ俺は――どう?」
「えっ?ああ……クジラ君は…」
不意の声に振り向けば、自分の顔が――セシリウスがいた。
微妙に体をさらに近づけ、いつもとは違い心配そうな表情で見てくる。
そんな表情と仕草に沙希が好きな筈なのに、脈が早まってしまう。
甘い毒を盛られたかのように、頬が熱い。
(どうしよう――、一応、セシリウスのお陰だし)
沙希からの苛めは許せてもセシリウスの意地悪は容認できない――筈だった。
(うっ、…うぅ!わ、わかったから、そんな顔するなよ!へ、変な気分になる!)
けれども湧き上がる熱い衝動に根負けして、これはお礼なのだと言い訳がましく考えながら、微笑み返した。
そして、好意を伝える。
「勿論!クジラ君とも勉強できて…あ、あたし……――嬉しいわ」
『本音じゃない』と内心で呟きながら、はしゃぐ『白方 セラス』。
沙希の場合より二倍ほど恥辱色に染まった顔が、魅力たっぷりに色気づく。
女でも、男でも抗えない愛らしさ。
男である『クジラ』は過剰に反応し、吐息がかかるほどに詰め寄ってきた。
「おおっ、さすが親戚。俺たち気が合うな。俺もセラスと勉強出来て嬉しいよ!」
勝手なことを言うなっ、と怒りが浮かぶよりも、しょうがないという気持ちの方が強かった。
クジラは諦め、苦笑する。
「もうっ。お、大げさなんだから…っ、…恥かし、いじゃないのよ!」
(はぁ…でもこれぐらいで、喜ぶんなら…良かったかな?…なんて…ねっ)
沙希と一緒に事業を受けられるのも彼女のお陰だし、これぐらいはいいかな、と思えてしまう。
どうせ本気ではない、お遊び感覚なのだし――と、勝手にセシリウスの心境を決めつけて。
「それじゃあ、国語の事業を始めます。 転校生の白方――あぁ二人いるのか……えっとセラスさんは隣の白方君か麻倉さんに教科書を借りて下さい」
騒がしいが、思ったよりも障害なく進むかつての日常光景。
体は未だに、悩めしい艶美な女体ではあるが、少しだけ『自分』に戻れた気がする。
そんな穏やかな時間。
おまけに……。
「んー、さっきはクジラが貸したから私が貸してあげる――机寄せて、セラスちゃん」
「う、うん――ありがとう、沙希ちゃん」
ボーナスは一杯だった。
鼻を擦るのは女性用のシャンプーの優雅な臭いと、沙希の甘い体臭。
なんとも高揚を促す香りである。
間近まで迫る沙希の横顔も相俟ってとくんっ、と心臓が音を誇張して動き回った。
(うぐっ…!か、かなり…良かったかもしれない……っ)
次々と変わる学園生活への感想。だが、それは仕方のないことだった。
何気に優しいセシリウスや、同じくサービスがいい沙希の存在が幸福に感じられるのだ。
昨日までの二人と、現在の二人を比べると涙が出てしまうほど『今』が優しい。心地いい。
学校に戻ってこれたのは正解だった――とクジラは思った。が……しかし。
(ふふ、可愛いなクジラ――うんん、セラスちゃん)
自分が抱いている感情とは、ちょっと違う好意を幼馴染に注がれていることにも気付かず――
『白方セラス』は幸福感で弛んだ表情を、クラス中に観察されるのだった。
<つづく>
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クジラの人魚姫5-1
(1)
「ねぇ?セラスさんってハーフなの?」
「ちょっと!!この胸、何カップなのよ!?」
「ずるィなあ。高校二年でこんなグラマーなんて…彼氏ぐらいいるんでしょ!」
群がる、女、女、――女子高校生。
転校してきた美少女に興味津々なのだろう。
引っ切り無しに押し寄せる彼女たちに話題の人物である豊満な肉付きの『少女』は、眉根を寄せて、困惑する。
「あ、あの…ちょっと…み、みなさん!そ、そんな詰め寄らないで……ふっ、ぇ」
転校初日で好意的に接してくれたら、それは幸福なのだろう。
だが、しかし、『彼女』は満面を恥じらいの赤に染め上げ、小刻みに震え上がった。
何故なら――体は女でも中身は――心は『男』であるからだ。
(どおっ、どうしろっていうんだよおぉ!この状況!俺…男なのに…っ!こ、こんなに女子に囲まれてっ~~!?)
ボンと突き出た美巨乳とむちと張り出ている臀部、細面のクールな美貌。
そんな艶美な女体であるが、中身は白方 玖史羅と言う少年に過ぎない。
正直、彼は自分のことを『セラス』として扱う女子たちが、怖くて仕方ないのだ。
エッチなお店のコスプレのような女子高校生姿を晒していることもあり、身震いするしかない。
「あっ、あの…その彼氏は…いないし…胸も、そんなに…ィ…」
沙希や、肉体本来の持ち主のセシリウス――おまけに悪友や父も含んだ関係者――たちとは違い、本当に女の子だと疑っていない様子が、あまりにも惨めに思えた。
たぷたぷとした胸が、追い討ちを掛けるようにして弾む。
(そ、そんなに…俺は…女に見えるのかよ…っ)
日常生活でも十分女扱い、いや『セラス』扱いだが、やはり違うのだなと、心の底からクジラは悟る。
彼女たちにその気がなくても、その問題なく接してくる態度そのものに居た堪れなくなる。
恥が密度を増して、脳裏に積み重なり、不覚にも目元が潤んでしまう。
「かっ可愛い……」
「うわっ、ヤバい……やばいッ」
その恥じらい不安がっている仕草が余計に女子たちの『何か』を刺激したらしい。
同性であることは――もう関係なかった。
「う…ぅぅ」
ギャップ萌え、と言う物だった。
律儀に返答していながら――しかも、バリバリのグラマーなお姉様な美貌で――ウルウルと、視線をさ迷わせている『白方 セラス』は可憐以外の何でもない。
余りにも儚く、恐ろしいほど弱弱しい雰囲気に、少女たちは言及することすら忘れて息を呑む。
健気な哀れさを持つ一方で、演劇のクライマックスのような美しさも漂わせるのだから、魅了されずにはいられない。特に、その撓わに育ちすぎた胸に。
(みんな胸…見てるんだ!こっ…こんなに大きい、んっだもんなぁ…)
僅か、数分で女子たちを"よこしまな道"に引き込み掛けているのを、本人だけは気付かなかった。
足元どころか、下にある机を半分も隠しながら波打つおっぱいの怪物。
シャツとブラジャーに捕縛されていながらも抑えきれない様子は、圧倒的と言うしかない。
そんな一般からかけ離れた巨大な美房は自分のモノなのだ。
果てしない恥辱と悲しさに、体が打ち震えた。涙がこぼれそうである。
「はぅ~っ!」
「お姉さま?…いやい、妹!わたしの妹よ!」
「か、かわいい…」
眉毛を下げている顔も実に色っぽく――周りを、さらに燃え上がらせてしまう。
同性でも構わないとばかりに引き付ける彼の魅惑。
セシリウスを――『セラス』を演じるクジラは、過激にエロすぎた。
「お~い、どうでもいいけどもう直ぐ二時限目だろ。 早く用意した方がいいぞっ」
「もう、白方君はセラスさんのこと独占していたんだから、もう少し良いじゃない」
そうよ、そうよ、と一致団結する女子軍団。
別に独占された覚えはないが、親戚であり前からセラスを知っていた設定のセシリウス――もとい『白方 玖史羅』は彼女たちの中では敵らしい。
もっとも、ほぼ全女子の敵意を、むしろ飄々と 『クジラ』は受け流した。
「なにいってるんだ。お前たちが騒いでセラスが注意されたら、困るだろ?特にコイツは昔から奥ゆかしいっていうか、奥手っていうか……照れ屋で本音がいえない性質なんだよ」
「あ――っ、納得」
「うんうん――納得」
「そうか、そうだよね――ごめんね、白方くん…納得したわ」
「それなら――納得するしかないわぁー」
(――なんで全員一致で、納得するんだァァ!!?)
またしても催眠術か何かではないか、と疑うクジラだが、生憎と違う。
純然たる事実として彼女たちを説得できるほど、セシリウスの言葉は的を得ていた。
朝の自己紹介から頬は桜色に上気したまま、消えたためしがない。
会話も碌に出来ない上、時折ぴくんっぴくんっ、と身悶えしている。
女子たちが『セラス』を極度の恥かしがり屋なのだと確信するに十分だった。
「じゃね、セラスちゃん!またね!」
「あ…う…うん!」
「じゃあね、白方さん!」
「うん、あ、ありがとう…」
自分の純情少女説を否定したかったが、先手を突くように女子たちが離れていく。
理性が上手く働いていないせいか、つい女性として――『セラス』として振舞ってしまう。
(うっ、ちぃ…くしょう!…なんでお礼なんていってるんだろう、俺…っ)
<つづく>
「ねぇ?セラスさんってハーフなの?」
「ちょっと!!この胸、何カップなのよ!?」
「ずるィなあ。高校二年でこんなグラマーなんて…彼氏ぐらいいるんでしょ!」
群がる、女、女、――女子高校生。
転校してきた美少女に興味津々なのだろう。
引っ切り無しに押し寄せる彼女たちに話題の人物である豊満な肉付きの『少女』は、眉根を寄せて、困惑する。
「あ、あの…ちょっと…み、みなさん!そ、そんな詰め寄らないで……ふっ、ぇ」
転校初日で好意的に接してくれたら、それは幸福なのだろう。
だが、しかし、『彼女』は満面を恥じらいの赤に染め上げ、小刻みに震え上がった。
何故なら――体は女でも中身は――心は『男』であるからだ。
(どおっ、どうしろっていうんだよおぉ!この状況!俺…男なのに…っ!こ、こんなに女子に囲まれてっ~~!?)
ボンと突き出た美巨乳とむちと張り出ている臀部、細面のクールな美貌。
そんな艶美な女体であるが、中身は白方 玖史羅と言う少年に過ぎない。
正直、彼は自分のことを『セラス』として扱う女子たちが、怖くて仕方ないのだ。
エッチなお店のコスプレのような女子高校生姿を晒していることもあり、身震いするしかない。
「あっ、あの…その彼氏は…いないし…胸も、そんなに…ィ…」
沙希や、肉体本来の持ち主のセシリウス――おまけに悪友や父も含んだ関係者――たちとは違い、本当に女の子だと疑っていない様子が、あまりにも惨めに思えた。
たぷたぷとした胸が、追い討ちを掛けるようにして弾む。
(そ、そんなに…俺は…女に見えるのかよ…っ)
日常生活でも十分女扱い、いや『セラス』扱いだが、やはり違うのだなと、心の底からクジラは悟る。
彼女たちにその気がなくても、その問題なく接してくる態度そのものに居た堪れなくなる。
恥が密度を増して、脳裏に積み重なり、不覚にも目元が潤んでしまう。
「かっ可愛い……」
「うわっ、ヤバい……やばいッ」
その恥じらい不安がっている仕草が余計に女子たちの『何か』を刺激したらしい。
同性であることは――もう関係なかった。
「う…ぅぅ」
ギャップ萌え、と言う物だった。
律儀に返答していながら――しかも、バリバリのグラマーなお姉様な美貌で――ウルウルと、視線をさ迷わせている『白方 セラス』は可憐以外の何でもない。
余りにも儚く、恐ろしいほど弱弱しい雰囲気に、少女たちは言及することすら忘れて息を呑む。
健気な哀れさを持つ一方で、演劇のクライマックスのような美しさも漂わせるのだから、魅了されずにはいられない。特に、その撓わに育ちすぎた胸に。
(みんな胸…見てるんだ!こっ…こんなに大きい、んっだもんなぁ…)
僅か、数分で女子たちを"よこしまな道"に引き込み掛けているのを、本人だけは気付かなかった。
足元どころか、下にある机を半分も隠しながら波打つおっぱいの怪物。
シャツとブラジャーに捕縛されていながらも抑えきれない様子は、圧倒的と言うしかない。
そんな一般からかけ離れた巨大な美房は自分のモノなのだ。
果てしない恥辱と悲しさに、体が打ち震えた。涙がこぼれそうである。
「はぅ~っ!」
「お姉さま?…いやい、妹!わたしの妹よ!」
「か、かわいい…」
眉毛を下げている顔も実に色っぽく――周りを、さらに燃え上がらせてしまう。
同性でも構わないとばかりに引き付ける彼の魅惑。
セシリウスを――『セラス』を演じるクジラは、過激にエロすぎた。
「お~い、どうでもいいけどもう直ぐ二時限目だろ。 早く用意した方がいいぞっ」
「もう、白方君はセラスさんのこと独占していたんだから、もう少し良いじゃない」
そうよ、そうよ、と一致団結する女子軍団。
別に独占された覚えはないが、親戚であり前からセラスを知っていた設定のセシリウス――もとい『白方 玖史羅』は彼女たちの中では敵らしい。
もっとも、ほぼ全女子の敵意を、むしろ飄々と 『クジラ』は受け流した。
「なにいってるんだ。お前たちが騒いでセラスが注意されたら、困るだろ?特にコイツは昔から奥ゆかしいっていうか、奥手っていうか……照れ屋で本音がいえない性質なんだよ」
「あ――っ、納得」
「うんうん――納得」
「そうか、そうだよね――ごめんね、白方くん…納得したわ」
「それなら――納得するしかないわぁー」
(――なんで全員一致で、納得するんだァァ!!?)
またしても催眠術か何かではないか、と疑うクジラだが、生憎と違う。
純然たる事実として彼女たちを説得できるほど、セシリウスの言葉は的を得ていた。
朝の自己紹介から頬は桜色に上気したまま、消えたためしがない。
会話も碌に出来ない上、時折ぴくんっぴくんっ、と身悶えしている。
女子たちが『セラス』を極度の恥かしがり屋なのだと確信するに十分だった。
「じゃね、セラスちゃん!またね!」
「あ…う…うん!」
「じゃあね、白方さん!」
「うん、あ、ありがとう…」
自分の純情少女説を否定したかったが、先手を突くように女子たちが離れていく。
理性が上手く働いていないせいか、つい女性として――『セラス』として振舞ってしまう。
(うっ、ちぃ…くしょう!…なんでお礼なんていってるんだろう、俺…っ)
<つづく>