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kyousukeさんからのタレコミ情報♪
サイ:テイガー 二人のアルテミス
『フリージング』の原作者、林達永氏の作品、今月から月刊アライブで連載開始……0話を見た感じでは“お約束の展開”です。もう少し続けばアニメ化もあるかも……。
・全年齢対応にしてはギリギリのお色気
・バトルシーンもあり。(『フリージング』を見ると結構グロい描写もあります)
この二つはフリージングと同じですが主人公が女性化しないといけない訳とは……
『フリージング』の原作者、林達永氏の作品、今月から月刊アライブで連載開始……0話を見た感じでは“お約束の展開”です。もう少し続けばアニメ化もあるかも……。
・全年齢対応にしてはギリギリのお色気
・バトルシーンもあり。(『フリージング』を見ると結構グロい描写もあります)
この二つはフリージングと同じですが主人公が女性化しないといけない訳とは……
「魔獣のミルキー」第二話 by.VOLTAGE
魔獣ねぇ・・・
確かに魔獣はかっこよかったり、可愛かったり、強かったり援護してくれる。
立派な存在だと自分は思ったりする。
自分も魔獣は欲しいし初めは魔獣使いになりたいとも思って真面目に勉強していた時期もあった。
だけど魔獣は魔力のある肉体にしかなついてくれない存在だ。
まあ今言った通り俺には魔力を持っていない人なんだ。
魔力は親の遺伝子の影響を受けて所持量が決まっていく。
そして俺はほぼ0。「魔力を持っていない。」
だから俺は魔獣と唯一触れ合える魔獣使いに憧れている。
カンナのような魔獣使いにならなくても魔獣と一緒にいられるような生活が愛おしい。
俺の残念エピソード(自分が魔力を持っていない件)・・・思い出すだけでつらいぜ★
だからこそ魔獣使いと・・・いや・・・魔獣と会える亜鬼との戦いに入り込んだのだと思う。
魔獣は戦いの援護要員として活用されることが多い。(※魔獣使いは魔獣に指示を出して戦う)
他のことに活用される場合もいろいろあるけど。
ちなみに剣を使い始めたのは魔獣を使えないとわかり、挫折したとき、
同じく魔力を持たないS級剣豪士。父は俺に剣技を伝承してくれた。
S級とはその分野においてずば抜けて優秀なこと、優秀な成績を作ったこと、成し遂げたこと。
魔導院の亜鬼対策本部が出す特例及び緊密な任務をもらう。
B級は努力で成し遂げられ、A級(二つ名を魔導院からもらう)は才能を携え、S級はアスリート、プロ、四天王などよりも強く、
天才の域に入る。父の二つ名は「巨剣の暴雨」。
自分はこの父の影響で剣豪士という道を進むことになった。
父は月食の日に起きた第一回亜鬼魔導院大戦で活躍した
大戦中の三つあるS級5PT(パーティ)の一人で、近衛担当の剣豪士だ。
そして、カンナの母も遠衛担当(魔獣使い)の一人だ。
今から行く郵便局は乗り物に乗っていけばすぐにつくような近いところにある。
だからそこまで準備しなくてもいいと思って・・・。
「カズさんは準備したんですか?」
清楚で規則正しい魔獣使いカンナ様はまた同じことを聞いてきた。
カズさ~ン呼んでますよ~なんて心の中でとぼけてみる。
「ム…無視しないでください!怒りますよ!!」
「あ~ごめんごめん。」
(もう怒ってるだろ・・・なんて言えないな)
「いきますよ」
そっけない態度だ・・・もう笑顔で会話できそうにない。
「はいはい・・・」
とりあえず無視しないということで。
「そういえば㊙任務にされるぐらいの荷物ってどんなの?」
㊙ってぐらいだからとっても重要なんだな。
「覚醒石というものらしいです。私もあまり知らされていません」
ふーん。俺も全然分からん。
「何か知っているものとかはあったりしない?調べたとか・・・」
「そのための準備の時間が必要なんです。事前に調べるのは亜鬼と敵対するものとして基本ですよ。それくらい熟知しておいてください」
説教は頼んでないよ・・・
「私が知っているのは覚醒石とは亜鬼強化のための道具です」
「は?なんでそんなのがあるの?」
「調べた範囲までですが、それは月の破片で、いつの間にかあったらしいんですよ。」
「いつの間にかにね・・・」
月の石がなんで亜鬼を強化する物質かというのは、
亜鬼は月から放射される魔力をエネルギーとして使って生きているらしい。(魔導院の研究部が実験した結果)
「ですから、本当は月食になると亜鬼がエネルギーをもらえなくなって死滅する。そう思いません?」
「まあ普通に考えれば・・・」
「亜鬼は人の魂(魔力)を餌にすることもできるんです」
「魂・・・」
「魂を喰われた人間は運動能力が急激に低下し、やがて心臓の動きが止まり、死にます」
「マジか・・・」
「死んだあとの体に亜鬼が卵を産み付けます。」
「え!?卵!?」
亜鬼が卵生なんて初めて聞いた。
「はい。その卵は半日で孵(かえ)り、宿主(死体)の残りわずかな魔力を奪って成長します」
どうやって魔力食べてるんだろうと、素朴な疑問はスルーしようか。
「魂って確か魔力の源だよな?」
「えぇ・・・そうですが?」
「俺・・・無いかも。」
「・・・」
「・・・」
二人の気まずい沈黙が刹那な時間なのに永遠という気分を味わった。
カンナのか細い腕が小刻みに震えている。
そしてカンナは俺の顔をキッと鬼のようないや・・・亜鬼のような鋭い涙目(!?)で睨んできた。
いや・・・怒りながら泣かれても・・・魔力持ってないのは事実だし俺・・・悪くないし・・・
でもそんな目で見ないでほしい・・・俺が悪いみたいじゃないか(悪いことには自覚なし)
「カッ・・・カズさんはじょっ・・・冗談がうまいですね・・・」
信じてるのか疑ってんのかどっちだよ。
証拠もないのに信じちゃダメだろ・・・
「いや~なんでわかった?」
証拠がないだろ?と言おうとしたら・・・
「わ・・・私のセイ---
※どうやらセイとはカンナのフェレットに似ている魔獣の名前らしい※
---いつも人懐っこいのにあなたに近づかない(魔獣は魔力を持つ者に懐く特性を持つ)し、
私の体感魔力(体で判断する相手の魔力の数値)でもあなたの魔力は感じれなかったから…もしかしたらもってないかと思って……」
「別に無くてもよくね?」
「あなたはいいかもしれないけど真っ先に狙われるのは魔力が多い私なんだよ?」
確かに・・・俺には亜鬼が近づいてこない。むしろ俺の太刀でおびえているようにも見える時があった
「ん・・・とりあえず泣かないで・・・」
「泣いてない・・・」
「え?泣いて------
「泣いてなんかないよ!!」
------るじゃん・・・」
セリフの途中に割り込まれた・・・。
カンナは鋭く静粛させるように叫び、
まっすぐな大きな声を出した。
俺の目の前で・・・
「カズさんは私のことを守るから安心して!みたいなこと言ってくれないの?私ばっかり不安要素詰め込んであなたは襲われる心配もないだろうしあったしみたいな不細工な女についてきてほしくねぇ~とか思ってんじゃないの?」
「カンナは不細工じゃねーよ」
思ったことをそのまま言う。
「はぁ?そういう・・・ことを・・・言ってる・・・わけでは・・・な・・・いの…ですが…」
声はだんだん小さくなりつつも、カンナは反論してくる。
「口調っていうか性格が変わってたぞ?」
こんな子供っぽいところも見せてくれるんだな・・・
新しい一面だな・・・
「ごめん…」
「あ…謝んなって、俺のほうもあんまり重荷を持たせ過ぎたと思うし…な?」
「うん。わかってくれればいいよ」
上から目線で俺にこう言っているが、
俺に向ける本音が出たようで他人行儀の口調が少し柔らかくなったような気がする。
「じゃあ改めて行こうか・・・」
「うん。」
余談だが、魔導院を出た後なのに亜鬼の姿が見えないのは不思議だった。
確かに魔獣はかっこよかったり、可愛かったり、強かったり援護してくれる。
立派な存在だと自分は思ったりする。
自分も魔獣は欲しいし初めは魔獣使いになりたいとも思って真面目に勉強していた時期もあった。
だけど魔獣は魔力のある肉体にしかなついてくれない存在だ。
まあ今言った通り俺には魔力を持っていない人なんだ。
魔力は親の遺伝子の影響を受けて所持量が決まっていく。
そして俺はほぼ0。「魔力を持っていない。」
だから俺は魔獣と唯一触れ合える魔獣使いに憧れている。
カンナのような魔獣使いにならなくても魔獣と一緒にいられるような生活が愛おしい。
俺の残念エピソード(自分が魔力を持っていない件)・・・思い出すだけでつらいぜ★
だからこそ魔獣使いと・・・いや・・・魔獣と会える亜鬼との戦いに入り込んだのだと思う。
魔獣は戦いの援護要員として活用されることが多い。(※魔獣使いは魔獣に指示を出して戦う)
他のことに活用される場合もいろいろあるけど。
ちなみに剣を使い始めたのは魔獣を使えないとわかり、挫折したとき、
同じく魔力を持たないS級剣豪士。父は俺に剣技を伝承してくれた。
S級とはその分野においてずば抜けて優秀なこと、優秀な成績を作ったこと、成し遂げたこと。
魔導院の亜鬼対策本部が出す特例及び緊密な任務をもらう。
B級は努力で成し遂げられ、A級(二つ名を魔導院からもらう)は才能を携え、S級はアスリート、プロ、四天王などよりも強く、
天才の域に入る。父の二つ名は「巨剣の暴雨」。
自分はこの父の影響で剣豪士という道を進むことになった。
父は月食の日に起きた第一回亜鬼魔導院大戦で活躍した
大戦中の三つあるS級5PT(パーティ)の一人で、近衛担当の剣豪士だ。
そして、カンナの母も遠衛担当(魔獣使い)の一人だ。
今から行く郵便局は乗り物に乗っていけばすぐにつくような近いところにある。
だからそこまで準備しなくてもいいと思って・・・。
「カズさんは準備したんですか?」
清楚で規則正しい魔獣使いカンナ様はまた同じことを聞いてきた。
カズさ~ン呼んでますよ~なんて心の中でとぼけてみる。
「ム…無視しないでください!怒りますよ!!」
「あ~ごめんごめん。」
(もう怒ってるだろ・・・なんて言えないな)
「いきますよ」
そっけない態度だ・・・もう笑顔で会話できそうにない。
「はいはい・・・」
とりあえず無視しないということで。
「そういえば㊙任務にされるぐらいの荷物ってどんなの?」
㊙ってぐらいだからとっても重要なんだな。
「覚醒石というものらしいです。私もあまり知らされていません」
ふーん。俺も全然分からん。
「何か知っているものとかはあったりしない?調べたとか・・・」
「そのための準備の時間が必要なんです。事前に調べるのは亜鬼と敵対するものとして基本ですよ。それくらい熟知しておいてください」
説教は頼んでないよ・・・
「私が知っているのは覚醒石とは亜鬼強化のための道具です」
「は?なんでそんなのがあるの?」
「調べた範囲までですが、それは月の破片で、いつの間にかあったらしいんですよ。」
「いつの間にかにね・・・」
月の石がなんで亜鬼を強化する物質かというのは、
亜鬼は月から放射される魔力をエネルギーとして使って生きているらしい。(魔導院の研究部が実験した結果)
「ですから、本当は月食になると亜鬼がエネルギーをもらえなくなって死滅する。そう思いません?」
「まあ普通に考えれば・・・」
「亜鬼は人の魂(魔力)を餌にすることもできるんです」
「魂・・・」
「魂を喰われた人間は運動能力が急激に低下し、やがて心臓の動きが止まり、死にます」
「マジか・・・」
「死んだあとの体に亜鬼が卵を産み付けます。」
「え!?卵!?」
亜鬼が卵生なんて初めて聞いた。
「はい。その卵は半日で孵(かえ)り、宿主(死体)の残りわずかな魔力を奪って成長します」
どうやって魔力食べてるんだろうと、素朴な疑問はスルーしようか。
「魂って確か魔力の源だよな?」
「えぇ・・・そうですが?」
「俺・・・無いかも。」
「・・・」
「・・・」
二人の気まずい沈黙が刹那な時間なのに永遠という気分を味わった。
カンナのか細い腕が小刻みに震えている。
そしてカンナは俺の顔をキッと鬼のようないや・・・亜鬼のような鋭い涙目(!?)で睨んできた。
いや・・・怒りながら泣かれても・・・魔力持ってないのは事実だし俺・・・悪くないし・・・
でもそんな目で見ないでほしい・・・俺が悪いみたいじゃないか(悪いことには自覚なし)
「カッ・・・カズさんはじょっ・・・冗談がうまいですね・・・」
信じてるのか疑ってんのかどっちだよ。
証拠もないのに信じちゃダメだろ・・・
「いや~なんでわかった?」
証拠がないだろ?と言おうとしたら・・・
「わ・・・私のセイ---
※どうやらセイとはカンナのフェレットに似ている魔獣の名前らしい※
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私の体感魔力(体で判断する相手の魔力の数値)でもあなたの魔力は感じれなかったから…もしかしたらもってないかと思って……」
「別に無くてもよくね?」
「あなたはいいかもしれないけど真っ先に狙われるのは魔力が多い私なんだよ?」
確かに・・・俺には亜鬼が近づいてこない。むしろ俺の太刀でおびえているようにも見える時があった
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「泣いてない・・・」
「え?泣いて------
「泣いてなんかないよ!!」
------るじゃん・・・」
セリフの途中に割り込まれた・・・。
カンナは鋭く静粛させるように叫び、
まっすぐな大きな声を出した。
俺の目の前で・・・
「カズさんは私のことを守るから安心して!みたいなこと言ってくれないの?私ばっかり不安要素詰め込んであなたは襲われる心配もないだろうしあったしみたいな不細工な女についてきてほしくねぇ~とか思ってんじゃないの?」
「カンナは不細工じゃねーよ」
思ったことをそのまま言う。
「はぁ?そういう・・・ことを・・・言ってる・・・わけでは・・・な・・・いの…ですが…」
声はだんだん小さくなりつつも、カンナは反論してくる。
「口調っていうか性格が変わってたぞ?」
こんな子供っぽいところも見せてくれるんだな・・・
新しい一面だな・・・
「ごめん…」
「あ…謝んなって、俺のほうもあんまり重荷を持たせ過ぎたと思うし…な?」
「うん。わかってくれればいいよ」
上から目線で俺にこう言っているが、
俺に向ける本音が出たようで他人行儀の口調が少し柔らかくなったような気がする。
「じゃあ改めて行こうか・・・」
「うん。」
余談だが、魔導院を出た後なのに亜鬼の姿が見えないのは不思議だった。
「デキるつもり」が会社を潰す - 「絶対黒字感覚」のある人、ない人
読了。テスト対策の一環。まぁ、結構この手の本は趣味で読みますが。
会社の損益と自分の行動を結び付けて考えよう、みたいな若手向きの本ですね。
口語体でわかりよくって敷居を低めに設定できているのがGOODです。ビジネス本マニアにはちょい食い足りないかも。
会社の損益と自分の行動を結び付けて考えよう、みたいな若手向きの本ですね。
口語体でわかりよくって敷居を低めに設定できているのがGOODです。ビジネス本マニアにはちょい食い足りないかも。
![]() | 「デキるつもり」が会社を潰す - 「絶対黒字感覚」のある人、ない人 (中公新書ラクレ) (2011/10/07) 香川 晋平 商品詳細を見る |
秘密のバスツアー~僕のバスガイド日誌
![]() | 秘密のバスツアー~僕のバスガイド日誌 (いずみコミックス) (2012/01/27) 命わずか 商品詳細を見る |
本日新年会~
帰ってから意識があれば更新しますw
なにかタレコミあればよろしくお願いします。
なにかタレコミあればよろしくお願いします。
水曜イラスト企画 絵師 倉塚りこさん(10) 仮名:小田桐 一哉
小田桐 一哉(かずや)【変身】
初の恋人とデートに出かけた高校生。しかし、それは罠で彼女に出されたデザートを食べ終わると、女性と化していた(小柄で、やや幼女よりな美少女、可愛いサイドアップ)。レズな彼女はあれやこれやと主人公を女の子として調教していき――。
絵師:倉塚りこ スルーブレイカー

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
初の恋人とデートに出かけた高校生。しかし、それは罠で彼女に出されたデザートを食べ終わると、女性と化していた(小柄で、やや幼女よりな美少女、可愛いサイドアップ)。レズな彼女はあれやこれやと主人公を女の子として調教していき――。
絵師:倉塚りこ スルーブレイカー

水曜イラスト企画の説明はこちら。毎週1枚キャライラストをUPします。
本キャラを主人公/脇役にしたSSを募集しています。コメント欄に書き込んでください。(事故を防ぐため別途ローカル保存推奨)追加イラストを希望する場合は希望シーンに<イラスト希望>と書き込んでください。私が了承し、絵師さんも乗った場合はイラストの作成を開始します。
そりゃあ…かまわない
おまえらの質問に答えること
それ自体は容易い 簡単だ
女の子になった時の処遇はこれこれこう
こういう容姿 スリーサイズは…?性感は? そんな話は いくらでもできる
しかし 今 オレが そんな話を 仮にしたとしても その真偽はどうする…?
それ自体は容易い 簡単だ
女の子になった時の処遇はこれこれこう
こういう容姿 スリーサイズは…?性感は? そんな話は いくらでもできる
しかし 今 オレが そんな話を 仮にしたとしても その真偽はどうする…?
奈落の穴のお姫様 第一幕 by.抹茶レモン

キャライラスト:胡蝶
時は放課後。
運動部の活気ある声をBGMに、昔の青春漫画よろしく、歳若き二人の男女が県立盟正高等学校の体育館裏にいた。
夕焼けの赤い光が二人の姿を照らし出す。
お互い話すことなくただ向かい合う、青年と少女。
「ッ!」
少女は何か思いつめた様子で青年を見つめ、
「…………?」
対する青年は、まるで状況を理解し得ないといった顔である。
「なんだよ、こんなところに連れてきて」
やがて、青年が少女に聞いた。
体格にあわせるようにスラっと伸びた手足、一目見ただけでは女に間違われてしまいそうなくらい、綺麗な顔立ちをしている青年。
「…………ッ!」
少し小柄だが、活発そうな印象を与える顔に、肩にかからない程度の髪を持つ少女。
少女の身長は青年より頭一つ分ほど低い。
(じれったいな)
聞こえてないのか? 青年がもう一度同じことを聞こうとした瞬間だった。
「実はわたし、朝からずっと伝えたかった――」
深刻そうな顔をした少女が口を開いた……。
「一生に一度のお願い!」
「はぁ?」
両手を合わせ、俺を拝む。
「お願い!」もう一度手を合わせる。
「いや、お願いって言われても……」
俺こと夜鈴雷司(らいじ)は、昔からの幼馴染である片倉要(かなめ)に必要以上に迫られていた。
「一度だけ、今だけでいいから!」
「何の用かまだ聞いてないのに了承できるか」
パン、と要の頭から小気味良い音が出る。
我ながらいい音が出せた。
「うぅ、それは急いでいたから――」
頭を片手で撫でつつ、俺を見上げる。
(そう言うと思った……)
それはその日最後の授業が終わったときだった。
「では、これで授業を終わります」
「起立、礼」日直の声が教室に響く。
『ありがとうございました~』
「ふう~……」
(やっと終わった)
「ねぇ、雷司」
視線を上げると、目の前に要が。
「なんだ?」
「ちょっと顔貸して!」ぎゅっと俺の片手をつかむ。
「は!? どういうつもり――あぁ!」
俺は引きずられるように教室を出た。
というやりとりの末、俺たちはここに今いる。
(全くだ……)
こいつは小さいころからそうだった。
人の話をろくに聞こうとせず、常に俺を引っ張りまわした。
それも、今みたいに急いでいたとか、重要なことだったとか、そりゃもう適当な言い訳をして。
今ではもう慣れたが。
「で、何をお願いしたいんだ?」
ようやく本題に入ろうとする。
いくら幼馴染でも、「お願い!」「任せとけ!」なんて流れになるわけがない。
「あ、あのね!」もじもじ、と少しだけ躊躇いを見せる。
「…………?」
「雷司に女装して欲しいの!」
「まさか、それだけ言うためにここに?」
「だって、クラスのみんなの前で、『女装して!』なんて言えるはずないじゃん」
「その割には本人にはっきりと言えるな」
「へへっ……」
(なにがへへっ、だ)
「で、なんで正真正銘男の俺が、女の格好をしないといけないんだ?」
そこが一番重要だ。
俺は、理由も聞かずに女装するほどお人好しじゃない。
それに、男の癖に女装にする趣味も無い。
「えっと、来月の学校祭で演劇やるんだけど」
「あぁ、確かにそうだったな」
完全に忘れていた。
「それでね、その劇でヒロイン役の先輩が」
「はいはい」
「先週、足の骨を折っちゃって」
「なるほど」
「代わりの人探さなくちゃいけなくなって。ほら、一応わたしマネージャーだし?」
「それで?」
えっと、と言いよどむ要。
「もう時間ないし、他に頼む人いなくて……」
(そういうことだったか……)
つまり、来月の演劇で必要なヒロイン役を俺がやらされるというわけか。
(答えは一つしかないな……)
「よし、わかった!」
「え? やってくれるの?!」
「じゃあな、帰るわ」
すっと踵を返し、その場から立ち去ろうとする。
「ま、まって!」
だが、要に腕をガッシリとつかまれ、足が止まる。
「離せ!」
「雷司、お願いだから!」
無理やり前に進もうとするが、要の引っ張る力が強く、思うようにならない。
(くそ、こんなときばかり力が強くなりやがって!)
「なんで俺はそんなことのために、恥ずかしい思いをしなくちゃいけないんだ!」
「だって、雷司中学生のとき何回も主役だった!」
あぁ、確かにそんなころもあった。
中学生の頃の俺は馬鹿だったから、本気で役者になろうとしていた。そのために自ら難しい役を買って出た。
でも、あとで役者というのは面倒くさい職業だと知り、夢を捨てた。完全にな。
「俺は帰る!」
「だってだって、部員の人に『大丈夫、わたしがすごく立派な代役連れてくるから!』って言っちゃたし!」
「そんなの知らない!」
そんなぁ、と半ばあきらめつつも全く力を緩めようとしない要。
「じゃ、じゃあバイトだと思って! お金も出すから!」
(なに? バイトだって?)
「いくらだ」下を向いたまま一応聞いてみる。
決してお金が欲しいわけではない。こいつの本気度を確かめたいだけだ。
「え? え~っと――」
一度だけ空を見上げてから要は言った。
「野口さんが一人?」
「ッ!」
全身に力を入れ、再び前進。
(動け俺の足!)
「あああ! 樋口、樋口さんが一人!」
ピタリ、と動きを止める。
「本当か?」一字一句ゆっくり、確認するように喋る。
「う、うん。本当!」
「そうか、それなら別に……」
樋口さんが一人ということは、野口さんが五人だから。
「やって、くれる?」
「仕方ないな、幼馴染のお前の頼みだ」
しぶしぶ俺は了解した。
お金が手に入るからじゃない、要の熱意に負けたんだ。
「よし!」ガッツポーズをとる要。
「練習は明日からでいいからね!」
「じゃあ、俺は帰るぞ」
まった明日~、といいながら楽しげに手を振る要。
そしてようやく、俺はその場を後にした。
(五千円でヒロインか…………いいバイトだ)
こうして俺の一ヶ月のバイトが始まった。
〈続く〉
管理会計がうまくいかない本当の理由―顧客志向で売上を伸ばす新アプローチ
読了。
おかし製作所は利益を目的とはしてないので一般的な会計は税務対応を除けば、特に必要ありません。
リソースの使い方を判断する際に、どの辺の数字を気にすればいいのかとか考えつつ・・・答えは書籍と実務の間に。
最近アクセス数が若干低めなのは気になるなぁ。
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究極の判断力を身につけるインバスケット思考
なんか、こんな感じの試験があるとの事で購入&読了。
日々おかし製作所のCEOとして、経営をしているのですがw
分かりやすい事例で物語性もあって良い!
あと、WEBと連動して金を稼ぐビジネス戦略も参考になるなぁ。
WEBで15000円ほど貢いできました。
いやいや、出世できるかどうかで生涯年収が大きく変わりますし、出世できないときでもおかし製作所の経営に役立てれば無駄にはなりませんよね。
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小さな会社・個人事業者のための「通帳1冊」経理術
おかし製作所は個人事業なので12月締めで、確定申告を行います。
お蔭様で昨年度も黒字決算のようです。有難い事です。
そこで年末から1月に掛けてこの手の本を読みたくなるのです。
一部参考になる記述があって、レシート保存などに使おうと思ってます。
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煙が目にしみる Smoke Gets in Your Eyes (2)(3) by.amaha
(2)
部屋には私とステラ、それに母上の三人がいる。
あのあと慌ててステラとわが家に駆け込んだ。 使用人や妹の雅(みやび)の好奇の目からやっと逃れたところだ。
「七星、お勤めはしばらくおやすみしたほうがいいでしょうね」
「はい、母上」
返事をしたのはステラである。カチンと来てしまった。
「何を言っているんですか、母上。七星は私です。ステラも」
「結界をはってはいますが、雅の好奇心を甘く見てはいけません。事情を説明するなら別ですけれど」
「父上はともかく、雅はダメです」
からかわれるのは目に見えている。
「それなら呼びかけは見た目で統一しておいたほうが良いでしょう。万一にも疑われたら精神走査で本人ではないと見抜かれるのは時間の問題です」
「雅がまさかそこまで」
「陛下がご即位されてからわが家を見る大貴族たちの目は厳しいのはご存知ですね」
「それはもう」
「雅には説明すればすみますが」
私は情けない顔をしたに違いない。
「少なくともお家の一大事にはなりません。しかし最近雇った使用人には当然密偵が混じっていると考えるべきです」
確かに跡継ぎと認められねばお家断絶の可能性もあった。
「わかりました。それにしても穴が罠だったのでしょうか」
「精神を入れ替えることが罠になるとは思えませんよ。七星には考えが?」
母はステラに向かっていっている。
「あの空間が精神と肉体を別々に運ぶとすれば、より安定するように入れ替わったのではないでしょうか。二つの心も一つの体なら、二つの体も一つの心なら、分離しますまい。今、私たちの一体感は深まっています」
「ステラさんはどう?」
これは私にだ。
「それなら三人に分かれて出現したのでは」
「精神はともかく、肉体はほぼ安定していましたから」
くそ! そんなことはどうでもいい。
「それより元に戻る算段はどうなんです?」
母上の力は最高魔導師に匹敵する。
「換魂術は使えません。これは、あくまでも一対一で入れ替えるものですから」
「申し上げ難いのですが、私どもが一つになるのを待っていただければ」
「あの穴にもう一度入ってみれば?」
「あの屋敷に二人で入るのは無理でしょうね」
母上の言うとおりだ。そう思ってうなだれているうちに母上の結界が目に見えるくらい強くなり、ほとんどの光を遮断した。
「では、七星」
私に向かって言っている。
「なんですか?」
「一番肝心なことの説明をしていませんよ。なぜステラさんを連れだそうとしたのですか?」
「そう言われても」
「私たちを哀れに思し召してではないのですか」
いくら恥ずかしくてもこの誤解はといておきたい。
「好きです。一目惚れと思ってください」
ステラの俺の顔が真っ赤になった。あまり可愛くないが、俺の顔では仕方あるまい。俺は可愛いと言うより美形なのだ。
「分かりました。それならそれで話は早い。あなたたち、結婚しなさい」
(3)
驚いたことに父まで賛成したので、霧島北斗と海岸に流れ着いた異国の女、ステラ・マリスの婚約はすぐに発表された。
正直なところ俺にも異存はない。ただし結婚は元の体に戻ってからのことだ。
北斗は三ヶ月休職して、人見知りな婚約者のためにつきっきりで教育をほどこしたと世間は思っている。実際には父から剣術、母から宮廷の仕来りの特訓を受けたのは北斗であるステラだった。
竜族アジュアの闘志とトゥーレの巫女の知識をもつステラは全てを覚えて魔法騎士団に復帰した。
私もステラとして立派に生活している。まあ、悩みもあった。
例えば小姑になる雅だ。彼女なりに一生懸命なのだが、いちいち癇に障る。
「ステラさんなら兄よりずっといい男と結婚できるのになあ」
「セブンさまは姫君たちの間でも評判とお聞きしました」
「兄が言ったの?」
「ご母堂様です」
「まあ、母上の言葉に嘘はないけどさ」
私ならあるような言い方である。
「でしたら」
「わが家は成り上がりだからね」
「……」
「別に卑下するわけじゃない。でも苦労するかもよ、ステラさん」
余計なお世話である。
「ここでの私は漂着した難民。古い家柄の家庭でうまくいくとも思えません」
「ふ~ん、本気なんだ」
雅がじっと見つめるので困ってしまった。成人してからこれほど長く話をしたことはない気がする。
「もちろんです」
「じゃあ、陛下のお召だから明日一緒に登城してね」
「まさか。恐れ多い」
「だめだめ、家は乳母の家庭なんだから陛下にとっては兄も兄弟同然なの。本来ならもっと早く会うべきだったんだけどね。大臣たちがうるさくってさ。でも私があなたの決心を確認したら陛下は謁見をゆるすっておっしゃったの」
雅が宮殿で受ける嫉妬は私の想像を絶するのかもしれないと初めて考えた。
「分かりました」
バージニア陛下と雅は私より四歳年下になる。私が元服するまでは三人で泥んこになって遊んだものだ。あの頃が懐かしい気もするが、決して戻ることはできない。今の陛下の周りは女官ばかりだし、私には夫君になる資格も意志もなかった。
謁見当日の朝、私は母と鏡台に向かった。
「ご母堂様」
そう言うと強力な結界で辺りが暗くなった。
「今日はいいのよ」
「何か特別なことが?」
「陛下に認められれば、あなた達の婚姻になんの障害もないの」
「エトナとアジュアの心が一つにならないと」
「確かにそうじゃなきゃ換魂術は無理だわね」
「あとどのくらいかかるのですか?」
「もう少し、なにかきっかけがあればすぐね」
これは本人達からも聞いたことがある。なら陛下の許可を得ておくのも意味があるだろう。
「陛下のお気に入られるよう頑張ります」
「頼みます」
私と雅が訪れたのは通常の謁見の間ではなく、奥の鏡の間であった。
「ここは?」
戸惑いながら雅に聞いた。
「陛下は女性だから、当然仕来りが以前とは違うのよ。ここまで入れる男はいないわ」
「それは分かりますが」
さらに問いただす前に女官のリリーがやってきた。私とは顔見知り、というより七星初めての女性である。
「陛下は大浴場でお待ちです」
「うかがいます」と雅。
「浴室で?」
「帝国の伝統もあり、この地では大浴場が一般的なのです」
「それはお聞きしていますが」
「女同士なんの遠慮がありましょう」
まいったなあ。ステラとの入れ替わりの秘密は墓の中まで持っていかねばならないらしい。
リリーの後について脱衣室に入ると大勢の侍女が待っていた。顔見知りもいるが、ステラとしては初めてだ。
「よ、よろしくお願いします」
侍女たちは笑いながら私を素っ裸にした。ステラと違い精神が一つなので私は肉体をかなり自由に変えることができる。今はなるべく人に近づけていた。違うのは角の何本かと猫のような瞳孔の金色の瞳だけである。
大股で先を行く雅の後を床を見つめたままついて行く。浴室に響く女の声の中には聞き覚えのある陛下のものも混じっていた。
「陛下、ステラを連れて参りました」
「ご苦労、クラリス。人払いじゃ。皆は遠慮せい」
クラリスは雅の通称だ。そして陛下の命令で大浴場は私たち三人だけになった。
「ステラ、大儀」
「お初にお目もじします。ステラ・マリスと申し、陛下の忠実な家臣ホクト・キリシマの許嫁でございます」
私は膝まずき平伏した。
「しかとさようか?」
「キリシマの忠誠心をお疑いなら」
「そうではない。キリシマとの婚姻の約束は?」
入れ替わりさえ済めば私に異存はない。
「約を違えることはありませぬ」
「ならばよし。お前には女王の護衛隊創設を命じる」
「陛下には近衛軍が」
「男どもでは入れぬ所がある。ホクトなら入れてもかまわぬのだが、そうもいくまい」
狙いはわかる。しかしステラには迷惑だろう。
「ご信頼はありがたきことなれど、軍や護衛のことは分からぬゆえ」
「ステラならそうだろうが、お前なら問題あるまい」
意外な言葉に私はうっかり顔を上げてしまった。目の前には全裸の陛下が……
「あっ、あ~」
「やはり、お主はホクトか」
陛下がしゃがんだので私の目の前には言うも恐ろしいものが御開帳していた。
「ひぇ~」
「喜んでいないで予の体を洗え」
(おしまい……)
部屋には私とステラ、それに母上の三人がいる。
あのあと慌ててステラとわが家に駆け込んだ。 使用人や妹の雅(みやび)の好奇の目からやっと逃れたところだ。
「七星、お勤めはしばらくおやすみしたほうがいいでしょうね」
「はい、母上」
返事をしたのはステラである。カチンと来てしまった。
「何を言っているんですか、母上。七星は私です。ステラも」
「結界をはってはいますが、雅の好奇心を甘く見てはいけません。事情を説明するなら別ですけれど」
「父上はともかく、雅はダメです」
からかわれるのは目に見えている。
「それなら呼びかけは見た目で統一しておいたほうが良いでしょう。万一にも疑われたら精神走査で本人ではないと見抜かれるのは時間の問題です」
「雅がまさかそこまで」
「陛下がご即位されてからわが家を見る大貴族たちの目は厳しいのはご存知ですね」
「それはもう」
「雅には説明すればすみますが」
私は情けない顔をしたに違いない。
「少なくともお家の一大事にはなりません。しかし最近雇った使用人には当然密偵が混じっていると考えるべきです」
確かに跡継ぎと認められねばお家断絶の可能性もあった。
「わかりました。それにしても穴が罠だったのでしょうか」
「精神を入れ替えることが罠になるとは思えませんよ。七星には考えが?」
母はステラに向かっていっている。
「あの空間が精神と肉体を別々に運ぶとすれば、より安定するように入れ替わったのではないでしょうか。二つの心も一つの体なら、二つの体も一つの心なら、分離しますまい。今、私たちの一体感は深まっています」
「ステラさんはどう?」
これは私にだ。
「それなら三人に分かれて出現したのでは」
「精神はともかく、肉体はほぼ安定していましたから」
くそ! そんなことはどうでもいい。
「それより元に戻る算段はどうなんです?」
母上の力は最高魔導師に匹敵する。
「換魂術は使えません。これは、あくまでも一対一で入れ替えるものですから」
「申し上げ難いのですが、私どもが一つになるのを待っていただければ」
「あの穴にもう一度入ってみれば?」
「あの屋敷に二人で入るのは無理でしょうね」
母上の言うとおりだ。そう思ってうなだれているうちに母上の結界が目に見えるくらい強くなり、ほとんどの光を遮断した。
「では、七星」
私に向かって言っている。
「なんですか?」
「一番肝心なことの説明をしていませんよ。なぜステラさんを連れだそうとしたのですか?」
「そう言われても」
「私たちを哀れに思し召してではないのですか」
いくら恥ずかしくてもこの誤解はといておきたい。
「好きです。一目惚れと思ってください」
ステラの俺の顔が真っ赤になった。あまり可愛くないが、俺の顔では仕方あるまい。俺は可愛いと言うより美形なのだ。
「分かりました。それならそれで話は早い。あなたたち、結婚しなさい」
(3)
驚いたことに父まで賛成したので、霧島北斗と海岸に流れ着いた異国の女、ステラ・マリスの婚約はすぐに発表された。
正直なところ俺にも異存はない。ただし結婚は元の体に戻ってからのことだ。
北斗は三ヶ月休職して、人見知りな婚約者のためにつきっきりで教育をほどこしたと世間は思っている。実際には父から剣術、母から宮廷の仕来りの特訓を受けたのは北斗であるステラだった。
竜族アジュアの闘志とトゥーレの巫女の知識をもつステラは全てを覚えて魔法騎士団に復帰した。
私もステラとして立派に生活している。まあ、悩みもあった。
例えば小姑になる雅だ。彼女なりに一生懸命なのだが、いちいち癇に障る。
「ステラさんなら兄よりずっといい男と結婚できるのになあ」
「セブンさまは姫君たちの間でも評判とお聞きしました」
「兄が言ったの?」
「ご母堂様です」
「まあ、母上の言葉に嘘はないけどさ」
私ならあるような言い方である。
「でしたら」
「わが家は成り上がりだからね」
「……」
「別に卑下するわけじゃない。でも苦労するかもよ、ステラさん」
余計なお世話である。
「ここでの私は漂着した難民。古い家柄の家庭でうまくいくとも思えません」
「ふ~ん、本気なんだ」
雅がじっと見つめるので困ってしまった。成人してからこれほど長く話をしたことはない気がする。
「もちろんです」
「じゃあ、陛下のお召だから明日一緒に登城してね」
「まさか。恐れ多い」
「だめだめ、家は乳母の家庭なんだから陛下にとっては兄も兄弟同然なの。本来ならもっと早く会うべきだったんだけどね。大臣たちがうるさくってさ。でも私があなたの決心を確認したら陛下は謁見をゆるすっておっしゃったの」
雅が宮殿で受ける嫉妬は私の想像を絶するのかもしれないと初めて考えた。
「分かりました」
バージニア陛下と雅は私より四歳年下になる。私が元服するまでは三人で泥んこになって遊んだものだ。あの頃が懐かしい気もするが、決して戻ることはできない。今の陛下の周りは女官ばかりだし、私には夫君になる資格も意志もなかった。
謁見当日の朝、私は母と鏡台に向かった。
「ご母堂様」
そう言うと強力な結界で辺りが暗くなった。
「今日はいいのよ」
「何か特別なことが?」
「陛下に認められれば、あなた達の婚姻になんの障害もないの」
「エトナとアジュアの心が一つにならないと」
「確かにそうじゃなきゃ換魂術は無理だわね」
「あとどのくらいかかるのですか?」
「もう少し、なにかきっかけがあればすぐね」
これは本人達からも聞いたことがある。なら陛下の許可を得ておくのも意味があるだろう。
「陛下のお気に入られるよう頑張ります」
「頼みます」
私と雅が訪れたのは通常の謁見の間ではなく、奥の鏡の間であった。
「ここは?」
戸惑いながら雅に聞いた。
「陛下は女性だから、当然仕来りが以前とは違うのよ。ここまで入れる男はいないわ」
「それは分かりますが」
さらに問いただす前に女官のリリーがやってきた。私とは顔見知り、というより七星初めての女性である。
「陛下は大浴場でお待ちです」
「うかがいます」と雅。
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「帝国の伝統もあり、この地では大浴場が一般的なのです」
「それはお聞きしていますが」
「女同士なんの遠慮がありましょう」
まいったなあ。ステラとの入れ替わりの秘密は墓の中まで持っていかねばならないらしい。
リリーの後について脱衣室に入ると大勢の侍女が待っていた。顔見知りもいるが、ステラとしては初めてだ。
「よ、よろしくお願いします」
侍女たちは笑いながら私を素っ裸にした。ステラと違い精神が一つなので私は肉体をかなり自由に変えることができる。今はなるべく人に近づけていた。違うのは角の何本かと猫のような瞳孔の金色の瞳だけである。
大股で先を行く雅の後を床を見つめたままついて行く。浴室に響く女の声の中には聞き覚えのある陛下のものも混じっていた。
「陛下、ステラを連れて参りました」
「ご苦労、クラリス。人払いじゃ。皆は遠慮せい」
クラリスは雅の通称だ。そして陛下の命令で大浴場は私たち三人だけになった。
「ステラ、大儀」
「お初にお目もじします。ステラ・マリスと申し、陛下の忠実な家臣ホクト・キリシマの許嫁でございます」
私は膝まずき平伏した。
「しかとさようか?」
「キリシマの忠誠心をお疑いなら」
「そうではない。キリシマとの婚姻の約束は?」
入れ替わりさえ済めば私に異存はない。
「約を違えることはありませぬ」
「ならばよし。お前には女王の護衛隊創設を命じる」
「陛下には近衛軍が」
「男どもでは入れぬ所がある。ホクトなら入れてもかまわぬのだが、そうもいくまい」
狙いはわかる。しかしステラには迷惑だろう。
「ご信頼はありがたきことなれど、軍や護衛のことは分からぬゆえ」
「ステラならそうだろうが、お前なら問題あるまい」
意外な言葉に私はうっかり顔を上げてしまった。目の前には全裸の陛下が……
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「やはり、お主はホクトか」
陛下がしゃがんだので私の目の前には言うも恐ろしいものが御開帳していた。
「ひぇ~」
「喜んでいないで予の体を洗え」
(おしまい……)
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パンドラ ボクだよ エピソード0 ローション付
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強制女性化小説第82番 OUT or SAFE !? (前編) 1.1% 2
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煙が目にしみる Smoke Gets in Your Eyes (1) by.amaha
(1)
私の本名は霧島北斗、字(あざな)は七星、大陸の東の果ての出身だ。と言っても故国の記憶があるわけではない。生まれたのは旅の途中で、物心ついたときには、ここ七王国(ヘプターキー)の一つであるベヴェルにいた。
そんな流れ者の私が、若くして近衛魔法騎士団の副隊長に抜擢されたのは、もちろん戴冠された処女王バージニア陛下の恩寵もあるが、父から受け継いだ剣術と母から受け継いた魔術の賜(たまもの)である。
副隊長になっても私の精勤に変りはなかった。
今の地位に満足せず上を目指すつもりではない。父が王国武術師範で、母が新国王の乳母(めのと)、そして妹が乳姉妹の私を妬むものは多かった。もう充分だ。しかし怠けていては陛下の顔に泥を塗る事になる。
近衛軍は三つの組織からなっている。私の所属する魔法騎士団、剣を得意とする牙騎士団、そして馬上の戦を得意とする竜騎士団である。三軍は当番制で、王宮警備、都の治安維持、休暇を週ごとに繰り返していた。
その週の魔法騎士団は治安維持が任務であり、私は12人の部下と共に違法で魔法実験をしているとタレコミのあった施設に向かっていた。表向きはヘプターキーの強国ケント王国の交易館と登録されているので通常の警察組織は動けない。近衛軍の出番であった。
「セブンさま、どう思われます?」
そう聞いてきたのは班長のロッド、北部出身の勇敢な若者だ。いい忘れたが私は普通セブンスターズと呼ばれていた。この地の言葉で七星の意味だ。
「さて、タレコミというのに違和感があるな」
ケントが絡んでいて隠そうとしているなら、平民のみならず貴族でもそう安々と覗けるものではない。
「では、罠だと?」
「それもないだろう……とは思うが油断しないように。全員だ」
頼もしい返事がおこり私は満足した。
目的の施設は都の城壁近くにある石造りの大きな建物で、南北50ヤード、東西60ヤード程もあった。庭は比較的狭く、門から玄関までは近い。門衛はいないので、そのまま呼び鈴を鳴らした。
「我は近衛軍魔法騎士団副隊長ホクト・キリシマなり。捜索令状を持参した正規のお改めである。尋常に開門いたせ!」
ドアの隙間から目にも留まらぬ速さで飛び出てきた男は私の曲刀の餌食になった。
「突入せよ! 油断するな」
封魔の札でもある捜索令状をドアに貼り付け、呪文を唱えてから私も部下たちに続いた。
事前の捜査で出入りが確認されているのは約30名、その内帯刀するものは10人ほどなので、制圧は容易い。近衛軍は精鋭揃いである。
30分ほど後には私は大広間でロッドの報告を聞いていた。
「当方はけが人一人、軽傷です。敵は死亡5名、24名を逮捕しました。逃亡した2名の行方は不明です」
「逃亡者の風貌は?」
「女らしいということしか。仲間の前でも頭巾を取らなかったようなので」
「そうか」
「最深部の施錠された部屋はそのままにしてありますが……」
「私が改める」
「部下は?」
「私一人だ。外で待機していてくれ」
「しかし」
「隊長殿の命令なのだ」
「大丈夫でしょうか」
「うかつなことを言うでない」
「申し訳ありませんでした」
入口のドアを閉めずに待機している部下たちに軽く会釈して踵を返す。
部下たちとは上手くやっている。私の出世を妬んだり邪魔者扱いするのは、古くからの貴族の家系に多い。厄介なことに魔法騎士団隊長のカドフェルは名門ウェスター公爵家の一門であり、私を煙ったく思っていた。といって別に嫌がらせを受けているわけではない。カドフェルは優秀な人物であり、私の使い所を心得ている。
一人で調べろというのにも意味が無いわけではなかった。魔法典範を犯すような実験ならば少しでも人目に触れぬほうが良い。私は身分も階級も王国の秘密を知って良い立場にあった。
奥へ進んでいくとロッドの説明した部屋はすぐに分かった。受け取っていた鍵を使いドアを開ける。
大きな部屋は魔法の光球で照らさており、中心に8ヤード四方の檻が置かれていた。
入っていたのは奇妙な衣装を着た美しい女性……
その口が開くと
「誰ですか、あなたは?」
『そなたは何者じゃ?』
二つのうるわしい声が響いた。我を忘れて立ち尽くす。

キャラデザイン:うつき滄人 http://utukiaoto.fc2web.com/
また同じ問が繰り返され、見とれていた私はやっと動くことができた。
「私はベヴェル王国近衛軍魔法騎士団副隊長でキリシマという。この建物は我々が掌握したので、もう心配入りません。檻から開放します」
「待ってください」
『止まるのじゃ』
戸惑って立ち止まり、手で体を隠そうとする女を改めて見てから私は事実に気づいた。奇妙な衣装と思ったうろこ状のものは、生地ではなく、どうやら彼女自身の一部らしい。
「あなたは?」
一目惚れした相手が魔物なのかと少し恐れながらたずねた。
「私はトゥーレの巫女エトナ」
『妾(わらわ)は西の大陸の竜族、青竜アジュア。エトナ、説明するが良い』
私が脱いで投げ入れたマントを身につけて女は話し始めた。
「私たちは今でこそ一つの身になっていますが、それは魔術によるものなのです」
女の髪は火のように赤く、目は金色(こんじき)に輝いていた。宝飾かと思った冠もどうやら身体の一部である。
人を使ってキメラの実験をしたとなれば犯罪行為だ。ケントがわざわざこの国で行ったのは、魔法の研究がはるかに進んでいるせいだろう。そうなれば国内に協力者がいることになる。カドフェル隊長の指示は正しかった。
「とにかく檻を開けましょう。それにまだ精神は完全に融合していないようですから私の施術でも呪いは解けると思います」
本来なら証拠であり証人であるこのキメラは、見つけた状態で連行する必要がある。しかし、この気の毒な女性にそれを強いる気はさらさらなかった。
『慌てるでない。人間よ。我々は分離を望まぬ』
同じ口から出るがアジュアの声はエトナより成熟した感じだ。
「しかし強制的に」
『そうだ。囚われ薬物で麻痺させられ望まぬ変身を強いられた』
「だったら」
『だが今や我らの精神は求め合っているのだ』
「わかりました。では、そのままお連れしましょう」
どうやら暗示にかけられいるらしい。ここは無理はせず、王室魔導師か母上に任せたほうが良い。
「ありがとうございます。でも、あなたにここの鍵が開けられまして?」
私は近寄って調べ始めた。
『複雑な魔法トラップだぞ、これは』
キメラの二人は魔法の心得があるようだ。なら話は早い。
「確かに複雑です。しかし内側からも手伝っていただければ魔導師を呼ぶまでもないでしょう」
私は方法を伝え、キメラは役割を充分に果たした。
檻から出た女はやれやれと伸びをする。
「エトナさんにアジュアさん」
『ステラというのが一人になった時の名だ。それから妾はお前以外の人間に直接話しかけるのは止めておこう。混乱の元だからな』
「ではステラさん。部下を本部に返してから我が家にお連れしようと思うのですが。この建物に外へ出る裏口はありますか」
「魔術師が使っていた地下道があるはずです」
「場所は?」
「大体の位置なら。竜族の耳は鋭いのです。でも、あなたにご迷惑では?」
「あなたを好奇の目に晒すようなことすれば母と妹に軽蔑されるでしょう。信じてください」
「わかりました」
玄関に戻ってロッドに奥には何もなかったと伝え、本部に捕虜を連行するよう命じた。
「私はここを封印してから戻る」
十分な魔力を持つのは私だけなので疑われることはない。
部下の帰還を見送り、中にはいってから建物を封印した。
奥の部屋の前には、どこから見付け出したのか、青いドレスを着たステラが待っていた。
「マントをお返しします」
「ありがとう」
少し格好をつけてまとう。
「ところで地下道というのは?」
「こちらですわ」
ステラに案内されたのは一見行き止まりになっている廊下だった。大きなユニコーンの像が台座に乗っている。
「それで」
「音からすると台座が動くのだと思われます」
よく床を見ると左右で絨毯の傷み方が違う。
「なるほど」
何度か試すうち荷重をかけて左に押すと軽々と台座は動いた。だが、そこに現れたのは地下道ではなく、直径1ヤードほどの黒い円盤である。コインを投げると音もなく飲み込んでしまう。
「異世界の門なのだろうか。それほどの魔力は感じないいが」
『これは空間移動の術であろう』
「それは?」
『近くの別の地点に瞬時に移動するだけのものだ。お前の言うようにさほどの力は感じぬ。おそらく4から5マイル北西だ』
「宮殿の辺りだ。くぐろう」
『手をつないだほうがよい。さもないと出現場所がずれるやもしれん』
近づいてみると同時に安全にくぐるには抱きあうようにする必要があった。
『もう少し強く、抱くのじゃ』
私としては望むところである。
「このくらい?」
「あら」
「なにか」
「いえ」
『行くぞえ』
出たのは宮殿の東、我が家に近い空き地である。近くに子供の頃遊んだ覚えのある廃屋があった。
周りを見回し、連れを見上げ、少し遅れて異常事態に気づいた。
私が見ている美形の青年は私だったのだ。
「どうしたことだ」
『入れ替わってしまったらしいな』
<つづく>
私の本名は霧島北斗、字(あざな)は七星、大陸の東の果ての出身だ。と言っても故国の記憶があるわけではない。生まれたのは旅の途中で、物心ついたときには、ここ七王国(ヘプターキー)の一つであるベヴェルにいた。
そんな流れ者の私が、若くして近衛魔法騎士団の副隊長に抜擢されたのは、もちろん戴冠された処女王バージニア陛下の恩寵もあるが、父から受け継いだ剣術と母から受け継いた魔術の賜(たまもの)である。
副隊長になっても私の精勤に変りはなかった。
今の地位に満足せず上を目指すつもりではない。父が王国武術師範で、母が新国王の乳母(めのと)、そして妹が乳姉妹の私を妬むものは多かった。もう充分だ。しかし怠けていては陛下の顔に泥を塗る事になる。
近衛軍は三つの組織からなっている。私の所属する魔法騎士団、剣を得意とする牙騎士団、そして馬上の戦を得意とする竜騎士団である。三軍は当番制で、王宮警備、都の治安維持、休暇を週ごとに繰り返していた。
その週の魔法騎士団は治安維持が任務であり、私は12人の部下と共に違法で魔法実験をしているとタレコミのあった施設に向かっていた。表向きはヘプターキーの強国ケント王国の交易館と登録されているので通常の警察組織は動けない。近衛軍の出番であった。
「セブンさま、どう思われます?」
そう聞いてきたのは班長のロッド、北部出身の勇敢な若者だ。いい忘れたが私は普通セブンスターズと呼ばれていた。この地の言葉で七星の意味だ。
「さて、タレコミというのに違和感があるな」
ケントが絡んでいて隠そうとしているなら、平民のみならず貴族でもそう安々と覗けるものではない。
「では、罠だと?」
「それもないだろう……とは思うが油断しないように。全員だ」
頼もしい返事がおこり私は満足した。
目的の施設は都の城壁近くにある石造りの大きな建物で、南北50ヤード、東西60ヤード程もあった。庭は比較的狭く、門から玄関までは近い。門衛はいないので、そのまま呼び鈴を鳴らした。
「我は近衛軍魔法騎士団副隊長ホクト・キリシマなり。捜索令状を持参した正規のお改めである。尋常に開門いたせ!」
ドアの隙間から目にも留まらぬ速さで飛び出てきた男は私の曲刀の餌食になった。
「突入せよ! 油断するな」
封魔の札でもある捜索令状をドアに貼り付け、呪文を唱えてから私も部下たちに続いた。
事前の捜査で出入りが確認されているのは約30名、その内帯刀するものは10人ほどなので、制圧は容易い。近衛軍は精鋭揃いである。
30分ほど後には私は大広間でロッドの報告を聞いていた。
「当方はけが人一人、軽傷です。敵は死亡5名、24名を逮捕しました。逃亡した2名の行方は不明です」
「逃亡者の風貌は?」
「女らしいということしか。仲間の前でも頭巾を取らなかったようなので」
「そうか」
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「部下は?」
「私一人だ。外で待機していてくれ」
「しかし」
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「大丈夫でしょうか」
「うかつなことを言うでない」
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部下たちとは上手くやっている。私の出世を妬んだり邪魔者扱いするのは、古くからの貴族の家系に多い。厄介なことに魔法騎士団隊長のカドフェルは名門ウェスター公爵家の一門であり、私を煙ったく思っていた。といって別に嫌がらせを受けているわけではない。カドフェルは優秀な人物であり、私の使い所を心得ている。
一人で調べろというのにも意味が無いわけではなかった。魔法典範を犯すような実験ならば少しでも人目に触れぬほうが良い。私は身分も階級も王国の秘密を知って良い立場にあった。
奥へ進んでいくとロッドの説明した部屋はすぐに分かった。受け取っていた鍵を使いドアを開ける。
大きな部屋は魔法の光球で照らさており、中心に8ヤード四方の檻が置かれていた。
入っていたのは奇妙な衣装を着た美しい女性……
その口が開くと
「誰ですか、あなたは?」
『そなたは何者じゃ?』
二つのうるわしい声が響いた。我を忘れて立ち尽くす。

キャラデザイン:うつき滄人 http://utukiaoto.fc2web.com/
また同じ問が繰り返され、見とれていた私はやっと動くことができた。
「私はベヴェル王国近衛軍魔法騎士団副隊長でキリシマという。この建物は我々が掌握したので、もう心配入りません。檻から開放します」
「待ってください」
『止まるのじゃ』
戸惑って立ち止まり、手で体を隠そうとする女を改めて見てから私は事実に気づいた。奇妙な衣装と思ったうろこ状のものは、生地ではなく、どうやら彼女自身の一部らしい。
「あなたは?」
一目惚れした相手が魔物なのかと少し恐れながらたずねた。
「私はトゥーレの巫女エトナ」
『妾(わらわ)は西の大陸の竜族、青竜アジュア。エトナ、説明するが良い』
私が脱いで投げ入れたマントを身につけて女は話し始めた。
「私たちは今でこそ一つの身になっていますが、それは魔術によるものなのです」
女の髪は火のように赤く、目は金色(こんじき)に輝いていた。宝飾かと思った冠もどうやら身体の一部である。
人を使ってキメラの実験をしたとなれば犯罪行為だ。ケントがわざわざこの国で行ったのは、魔法の研究がはるかに進んでいるせいだろう。そうなれば国内に協力者がいることになる。カドフェル隊長の指示は正しかった。
「とにかく檻を開けましょう。それにまだ精神は完全に融合していないようですから私の施術でも呪いは解けると思います」
本来なら証拠であり証人であるこのキメラは、見つけた状態で連行する必要がある。しかし、この気の毒な女性にそれを強いる気はさらさらなかった。
『慌てるでない。人間よ。我々は分離を望まぬ』
同じ口から出るがアジュアの声はエトナより成熟した感じだ。
「しかし強制的に」
『そうだ。囚われ薬物で麻痺させられ望まぬ変身を強いられた』
「だったら」
『だが今や我らの精神は求め合っているのだ』
「わかりました。では、そのままお連れしましょう」
どうやら暗示にかけられいるらしい。ここは無理はせず、王室魔導師か母上に任せたほうが良い。
「ありがとうございます。でも、あなたにここの鍵が開けられまして?」
私は近寄って調べ始めた。
『複雑な魔法トラップだぞ、これは』
キメラの二人は魔法の心得があるようだ。なら話は早い。
「確かに複雑です。しかし内側からも手伝っていただければ魔導師を呼ぶまでもないでしょう」
私は方法を伝え、キメラは役割を充分に果たした。
檻から出た女はやれやれと伸びをする。
「エトナさんにアジュアさん」
『ステラというのが一人になった時の名だ。それから妾はお前以外の人間に直接話しかけるのは止めておこう。混乱の元だからな』
「ではステラさん。部下を本部に返してから我が家にお連れしようと思うのですが。この建物に外へ出る裏口はありますか」
「魔術師が使っていた地下道があるはずです」
「場所は?」
「大体の位置なら。竜族の耳は鋭いのです。でも、あなたにご迷惑では?」
「あなたを好奇の目に晒すようなことすれば母と妹に軽蔑されるでしょう。信じてください」
「わかりました」
玄関に戻ってロッドに奥には何もなかったと伝え、本部に捕虜を連行するよう命じた。
「私はここを封印してから戻る」
十分な魔力を持つのは私だけなので疑われることはない。
部下の帰還を見送り、中にはいってから建物を封印した。
奥の部屋の前には、どこから見付け出したのか、青いドレスを着たステラが待っていた。
「マントをお返しします」
「ありがとう」
少し格好をつけてまとう。
「ところで地下道というのは?」
「こちらですわ」
ステラに案内されたのは一見行き止まりになっている廊下だった。大きなユニコーンの像が台座に乗っている。
「それで」
「音からすると台座が動くのだと思われます」
よく床を見ると左右で絨毯の傷み方が違う。
「なるほど」
何度か試すうち荷重をかけて左に押すと軽々と台座は動いた。だが、そこに現れたのは地下道ではなく、直径1ヤードほどの黒い円盤である。コインを投げると音もなく飲み込んでしまう。
「異世界の門なのだろうか。それほどの魔力は感じないいが」
『これは空間移動の術であろう』
「それは?」
『近くの別の地点に瞬時に移動するだけのものだ。お前の言うようにさほどの力は感じぬ。おそらく4から5マイル北西だ』
「宮殿の辺りだ。くぐろう」
『手をつないだほうがよい。さもないと出現場所がずれるやもしれん』
近づいてみると同時に安全にくぐるには抱きあうようにする必要があった。
『もう少し強く、抱くのじゃ』
私としては望むところである。
「このくらい?」
「あら」
「なにか」
「いえ」
『行くぞえ』
出たのは宮殿の東、我が家に近い空き地である。近くに子供の頃遊んだ覚えのある廃屋があった。
周りを見回し、連れを見上げ、少し遅れて異常事態に気づいた。
私が見ている美形の青年は私だったのだ。
「どうしたことだ」
『入れ替わってしまったらしいな』
<つづく>