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【ひまわり】(4) by.ダークアリス

(4)-----------------------------------------------------------

 事件から1ヶ月後。
 透は意外にも一週間ほどで退院し、医者からも肉体的には健康であるとの診断を受け、自宅で療養していた。
 だが透の体は依然として女の体で――心も壊されたままだった。
 意識を回復した透は、しばらくの間誰とも口を利かず、鏡ばかりを見ていたそうだが、3日もすると自分が誰だったかも忘れて、最初から自分が女の子でいたかのように振舞い始めたのだそうだ。
 俺が見舞いに行ったときも、言動もおよそ男子高校生のものとも思えない、甘えん坊で泣き虫で、おどおどした、まるで幼い少女のようだった。
 それは完全に少女の体になってしまった透の、儚げで愛らしい外見にはむしろ見合ったものだったが、それゆえにいっそう透の痛ましい身上が、心に突き刺さるようだった。
 もしかしたら透自身が、破壊されてしまった過去の自分の代わりに、新しい自分の体に合わせて、心を再生しようとしたのかもしれない……。
 そう俺は思った。
 もしそうならば、過去のことなんか忘れて、新しい体でもう一度人生をやり直してくれるならば、それがいいと思った。
 俺が透にしてやれることは、何も無いのだから……。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 やがて俺は、合格した北海道の大学へ通うために、この町を離れる時が来た。
 3日後には住み慣れたこの街から、離れることになっていた。
 引越しの準備に追われる俺を訪ねて、透が父親に連れられてやってきた。

「ひろしちゃん、とおくの町へ行っちゃうの?」
「ああ、北海道へ行くんだ。大学へ通うんだよ」
「だいがくって、がっこうのこと?」
「そうだよ」
「“とおこ”もね、はるからがっこうへ行くんだよ。 ひろしちゃんも、とおことおなじがっこうに、かよえばいいのに……」
「うーん、そうしてあげたいけど。一緒の学校に通うわけには行かないなぁ……」

 “透子”という新しい名前を与えられた透は、この春から隣町の養護学校へ通うことになっていた。
 どうあれ、透にはこれからの人生を生きていくための、知識を学ばなければならない。
 “透”が過去の自分を失ってしまったのだとしても、生まれ変わった”透子”にはそれが必要だった。

「実は突然お邪魔したのは、折り入ってお願いしたいことがありまして。」

 それまで、ずっと黙って娘のやり取りを見守っていた、透子の父親が口を開いた。

「なんでしょうか? あらたまって」
「実は、この子を……透子を預かってもらえないかと……」
「え、ウチにですか? それなら俺、いや、僕ではなくて、ウチの親に相談しないと……」
「いえ広志君、貴方に預かっていただきたいのです」
「なんですって?」
「わーい! とおこ、ひろしちゃんといっしょにすむの?」

 それまでじっと座っていた透子は、目を輝かせてはしゃいだ。

「透子、これは大事なお話だから、黙って聞いていてね」
「……はーい」

 咎められた子供のように口を尖らせた透子は、ソファに座りなおすとつまらなそうに足をぶらぶらさせた。

「失礼しました。実は君が、いえ、広志君が北海道の大学へ行くと聞いて、出来ればその……、そんな筋合いではないことも重々承知の上なんですが、透子も一緒に連れて行ってもらえないかと、思いまして……」
「ええっ? なんだってそんなことを! 透……いえ、透子ちゃんはあなた方の大事な息、娘さんじゃないんですか。それに今が一番大切な時でしょう。透子ちゃんが新しい人生を始める大切な……」
「わかっています。それはわかっているんです。ですが……」

 透の父親は、何かをこらえるようにうつむいた。
 そして暫くして顔を上げ、苦渋の表情を浮かべながら続けた。

「……ですが、私達には、透子を育てていく自信が……」
「どうしてなんです? 変わってしまったとはいえ、家族なんでしょう? 若造の僕が言えたことじゃ、ないかもしれませんが」
「……これを見てください」

 そういって、透子の父親は、彼女の腕をまくった。彼女の白くて細い腕には……、最近付けられたと思しい痣と、赤いミミズ腫れのようなものがあった。

「これはいったい……。あなたがやったのですか?」

 俺は心の底から怒りがこみ上げてきて手が震えた。
 気配を感じ取ったのか、透子が俺の隣に座り、手を握った。

「パパはねぇ、とおこをいじめたりしないよ。パパはねぇ、とってもやさしいの。でもね、ママはね、とおことパパがなかよしなの、イヤみたい。パパはとおこがかわいいから、ママはヤキモチやいてるのかも……」

 透子の父親は少しあわてたように言った。

「つ、妻は……、最初は『娘ができたみたいだ』と、明るく透子の面倒を見ていたんですが……。一人息子でしたから、妻なりに思い悩むところがあったんだと思います。だからなのかも知れません。最近は透子のことを……。透子、スカーフを外しなさい」

 透子は自分の首に巻かれたスカーフを取った。
 白く細い首筋には、赤い手の痕がくっきりとついていた。

「……ママね、『あんたなんか、わたしのこどもじゃない!』っておこるの。わたし、きらわれてるのかなぁ?」

 透子が悲しげな顔をしながら、俺の顔を見上げた。
 俺はなんと透子に言ってやればいいのか、わからなかった。
 透子の父親は、だらしなく啜り泣きを始めていた。
 俺は、怒りにも似た哀れみを感じていた。
 透子自身の罪では決して無いのに。
 無理やりに少女の体に変えられた上に陵辱の限りを尽くされ、薬物で自我すら崩壊させられた、忌まわしい傷を負った透子。
 そして、唯一の味方であるはずの、家族からも見捨てられかけていた。
 俺はその事に怒りを感じると共に、どうしようもない無力感がこみ上げてきた。
 この街に彼女の居場所は、もうどこにも無いのかもしれないと、俺は思った。
 泣いている父親につられるように、悲しげな顔で俺を見つめる透子。
 俺に何ができるだろうか? もし出来るとしたら……。
 俺は意を決して言った。

「……僕と一緒に来るかい? 北海道へ」

 透子は少し考えるような仕草をしたが、直ぐに表情を明るくして言った。

「ホント? とおこ、ひろしちゃんと、いく! ねぇ、ほっかいどおってとおいの? おとまり?」
「北海道は、まだ寒いからね。服とか毛布とかたくさん持っていかなきゃね。荷物をたくさん持っていかなきゃいけないから、行っても直ぐには帰ってこれないけど、それでも行くかい?」

 透子は一瞬、戸惑うような様子を見せたが、すぐに納得したかのような顔になり、父親に甘えるように言った。

「パパ、いってもいい?」
「……ああ、行っておいで。広志お兄ちゃんの言うことを、よーく聞いて、いい子でいなさい。そしたら……ぐすっ、そうしたら、いつかパパとママが、透子に会いたいってお手紙を出すから……。うっ、必ずだすから……、そうしたら帰っておいで……」
「うん! ありがとうパパ! ひろしちゃん、ふつつかものですが、よろしくおねがいします!」
 透子の表情とは逆に、すすり泣きを続ける父親の言葉に、まるで嫁入りでもするような透子の挨拶だった。

 この時、俺と一緒に北海道へ行くと決めた時の透子の顔は、何かを決断するときのような、しっかりとした意思を感じた。
 だがそれはほんの一瞬のことで、その時の俺には、透子の見せた一瞬の表情が意味することに、何かを感じ取ることは出来なかった。


 透子はその日の晩から、北海道へ旅立つ日まで、うちに泊まることになった。そしてそのまま俺と、北海道へと旅立つことになった。

 『いつか帰っておいで』という父親のささやかな願いも叶う事はなく、透子が自分の生まれた隣の家に、二度と帰ることはなかった。

<つづく>

とにかく俺は男の娘エルフとエッチがしたいんだ!!

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