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この魔法少女の主成分は勇気ではありません 2-2 by.inQβ

第2話 『強襲』-2

 「たわけが……。余の片割れたる小童をどうにかしようとしたところで、余が見逃すと思うておったのか? 消えよ……《解呪》!」
 ぬいぐるみがそう言い放つと、自身のすぐ斜め後ろからの声に驚いて振り返った和人の顔面にまばゆい光が激突し、弾けた。
 ガラスが割れたような音がしたと思うと、今まで悠生を辱めていた和人は、ふと力が抜けたように崩れ落ちた。
 一瞬、目がくらんで状況が見えなかった悠生であったが、目の前のぬいぐるみから光が発せられる直前、身体の内側から何かがベアードに吸い上げられたように感じた。
 「ベアード! 助けに来てくれたの? あ、いや、それよりも、和人は大丈夫なの……?」
 まだ力の入らない悠生は、目の前で崩れ落ちた友人を気にしつつも、個室の壁に手をあてて、ずっと座らされていたフタが閉められたままの洋式便器から、ゆっくりと立ち上がる。
 ベアードは、悠生に背を向けてこう言った。
 「心配いらぬ、こやつにかけられた魔法を解除しただけだ。それよりも、余の他にもこの世界に侵入した者がおる。このように《催眠》魔法を使ってけしかけて来ている以上、恐らく貴様ら兄妹に目をつけてきたのだろう。小娘が危険だ。すぐに来い」
 「悠美が危ないの!?」
 悠生は狭い個室に突っ伏してしまった友人を抱き起こそうとするが、ようやく呼吸が落ち着いた程度では到底持ち上げることができないでいた。いや、そもそも、この少女の身体で友人を起こすことができるのかが疑問なのだが。
 ひとまず、今はベアードの言葉を信じ、大丈夫だと仮定して、妹の元へ行くしかなさそうだ。
 悠生はすぐに行動に移る。友人を抱き起こすことができないので、ひとまずそのままにして個室から飛び出し、トイレから出ようとする。
 「左様。大事に至る前に、早く対処せねば──っと、待て! そのままの格好で行くでない! すぐに戦闘様式に変化(へんげ)せんかっ!」
 「え? ……あっ!」
 ベアードが慌てて悠生を引き止めた。
 悠生は今になって改めて気づいた。上半身は制服を破かれて胸元が晒されているし、スカートとショーツは個室の床に置き去りだ。真っ赤になってその場にうずくまる。
 悠生を叱責するベアードの可愛くない顔は、心なしか赤くなっているような気がした。



 「……ということだ。貴様は小娘と違い、どうも魔法の構築センスが乏しい。慣れるまでは、余が魔法の補佐をする。頭に浮かんだ術式を、そのまま具現化させるようにせよ」
 「分かった!」
 悠生は、ベアードに戦闘様式変化(へんげ)の魔法──つまり、変身魔法をかけられて、和人に引き裂かれる前に身につけていた制服をそのままピンク色に染色したような、変身コスチュームとしてはそれほど派手に変わり映えしていない格好で、校舎内の廊下を駆けていた。変わり映えしないと言っても、ぶかぶかだった格好から、体型に合うちょうどいいサイズのものに変更されている。

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キャライラスト.もりや あこ

 この姿なら、筋力や体力までは上がらないものの、物理的にも魔法的にも耐久力が上がるらしい。それゆえの戦闘様式というわけか。
 初めこそ魔法少女のようだと思ったものの、空へ飛び出して空中浮遊するでもなく、魔法のステッキを持っているわけでもないため、圧倒的に“これじゃない”感に見舞われていた。
 「本命が悠美の方に行っていたとしたら、僕はどうすれば!?」
 「この世界へやってこれるだけの使い手ならば、並みの攻撃は通用せぬ。相手の動向が分からねば、戦術の立てようもない。まず、貴様は余が組み上げる《魔弾》の魔法でもって、相手をけん制することに尽力せよ」
 先程、悠生がトイレで感じたもの──身体の内側から何かが吸い上げられたような感じ──の正体は、ベアードが発動した魔法だった。
 ベアード自身は、この世界へと《転移》してきた際に、それと他に同時にかけた魔法の代償として肉体を失ってしまっている。
 そのため、魔法を使うための源たる魔力を蓄積させることができなくなってしまっており、精神のみをぬいぐるみに宿した状態では、魔法の術式を組み上げることしかできないのだそうだ。
 しかし、自身の魔法によって身体を作り変えた悠生に眠る膨大な量の魔力を媒体とすることで、間接的に魔法の発動が可能なのだという。
 そして、当の悠生も自身に適正のあるものであれば、自在に魔法を使うことができるはずなのだが、魔法を使ったことのない悠生が“魔術式の構築”などという芸当などできるはずがなかった。
 知識や当人のセンスを元に、物理法則を無視した現象を具現化させるのために、これは必要なのだという。しかし、自身で使えるようになるまでは、しばらくの時間を要するらしい。
 そこで、ベアードが悠生の精神へと構築された魔法の術式を投影するという手法を取ることにした。それを強く現実へとイメージすることで、素人でも魔力さえあれば魔法の発動が可能らしく、そうして悠生が発動する魔法と、ベアードが悠生を介して間接的に発動する魔法とで、来る襲撃者を迎え討つという算段なのだ。
 先日、悠美が簡単に発動してみせた魔法は、通常では考えられないほどのセンスがあってのことだったそうだ。
 魔力はあっても、妹と比べて素質がまるでないと宣告されたも同然の悠生は、少々悔しい気もしたのだが、今はそんなことにしょげている場合ではなかった。
 「ここだな……。うむ、どうやら既に襲撃を受けている。相手はどんな手で来るか分からん。慎重にいくぞ」
 ベアードに導かれるままに付いてくると、そこは悠美が普段学んでいる教室の前だった。
 どういう訳か、妙に静まり返っている。まだ授業中の時間だというのに、教師の声も生徒の声も、椅子を動かす音や紙がめくれる音もしない。
 悠生は不安に押しつぶされそうになる気持ちを奮い立たせるも、焦る思いは抑えきれず、ベアードの合図も待たずに教室の中へ突入した。
 「悠美ーっ! 大丈……あら?」
 何者かの襲撃によって滅茶苦茶に荒れ、凄惨な光景になっている教室内を想像していたというのに、いざ中へ入ってみると、そこはまるで荒れた様子はなかった。というより、体育の授業か何かで出払っているのか、人がいなかった。
 「ユウ……君? 何その格好? こんなとこで何してるの?」
 悠生が呆気に取られていると、背後から声がした。驚いて振り返ると、そこには妹の悠美の姿があった。体育着を着ていないところを見ると、体育の授業から戻ってきたわけではなさそうだ。
 まだ悠美には何者かの手が回っていないのだろうか。そう思って、悠生はほっと息をついた。
 「待て、小童……! そいつから離れろ!」「なんだ、無事だったんだね悠美……え?」
 ベアードと悠生が声を発したのはほぼ同時だった。声が重なってしまいよく聞き取れなかった悠生は、聞きなおそうとベアードの方へ向き直る。
 「そのぬいぐるみが、嫌な気配を察知してここに来たんでしょ? ダメだよユウ君、もっと用心しなくちゃ……ね」
 途中から声のトーンが低くなり、様子の変化を敏感に捉えた悠生はすぐに悠美の方へ振り返る。すると、目の前には悠美の顔があり……そして、気づいたときには唇が触れ合っていた。
 「むぶっ!?」
 まただ。またこの展開だ。
 悠生は、先程男子トイレであった出来事を思い出し、瞬時に察した。この悠美も普通ではない。
 ここに来るまでにベアードから聞かされた話によると、あのときの和人は、言ってしまえば何者かの操り人形状態になっていたのだという。
 乱暴なことをして悠生の心に恐怖などで隙を作り、それを見計らって魔力を吸収する。あわよくば篭絡せしめようとしていたらしかった。
 この件の襲撃者が、和人の性癖が今の悠生の姿にストライクにヒットすることを知っていたのかは定かではないが、和人をうまく利用したものであったのは間違いないらしい。そして、今度は悠美がそのようになってしまっているようだ。
 初め、ベアードは自分たち2人に目をつけて何者かがやってきたのだろうと言っていた。そのうちの片方の悠美が、こうしてまだ見ぬ何者かの手にかかってしまっている。
 妹と口付けをしているという傍から見ると背徳的な事象と、再び危機的状況に陥ってしまいつつある状況にあることに、悠生は動揺を隠せなくなる。
 (悠美、正気に戻って! くっ……悠美はかなり魔法のセンスがあるらしいけど、なんでこうも簡単に……!! う……あっ……!)
 まず口で言って悠美の目を醒まさせようとするが、悠美が悠生の身体に強く抱きついて唇を離さず、舌を割り込ませてきているため、もごもごと言葉にならない声しか出せない。
 初見でベアードの身体に魔法で火を放ってみせた悠美の能力とは関係なしに、不意打ちでもされて堕とされてしまったのだろうか。ゲームなどでは、魔法が使えるキャラというのは、決まって魔法抵抗力も高いはずなのに。現実では、そううまくいかないということだろうか。
 「ちっ、手間をかけさせてくれる! 小童、まず小娘をどうにかせよ! 殴り倒してでも引き離せ!」
 「ふぇ、ふぇきるわへあいよほんあこほ……っ!」
 ベアードが空中に浮いた状態で、悠生のすぐ隣に駆けつける。
 そのベアードに対し、できるわけないよそんなこと、と言いたかったのだが、言葉にならない。何者かに操られているとはいえ、仲の良い大好きな妹を殴るなど、悠生にはできなかった。悠美は何も悪いことなどしていないはずだからだ。どうにか傷つけずに打開したい。
 見事に不意打ちをもらった上に抵抗もままならない悠生を見て、苛立ちと焦りを募らせているのか、ベアードはその場で右往左往している。確か、ベアードは悠生を媒体に魔法を発動できるはずだ。しかし、なぜかベアードは一向に魔法を使おうとしない。
 「ふふっ……こんなに密着して、ユウ君の精神がこんな無防備になってて……いつでも『ドレイン』できる状態でいられちゃ、あんたも手出しできないよね? 邪魔しなければほっといてあげるから、大人しくそこで見ててね……」
 強く抱きしめた手は緩めずに一度悠生から唇を離すと、普段の悠美からは想像もつかない邪気に満ちた表情で、傍らで手をこまねいているベアードをあざ笑った。
 唇が離れたそのときを見計らって、悠生はさきほど言葉にできなかった説得を試みようとしている悠生を、悠美が容赦なく床へ押し倒す。そのままのしかかられた小さな身体は、細い声で呻いた。
 床に組み伏せられて息が止まるかと思うほどの衝撃を受けたが、かろうじて頭部を打たないように受身を取れたため、悠生は肺から声を絞り出すようにして叫んだ。
 「悠美、正気に戻って! 悠美は操られてるんだよ! 誰かは分からないけど、このままじゃそいつの思う壺だよ!!」
 口元を悠美の唾液で濡らし、組み伏せられたときの痛みと、見えぬ襲撃者への恐怖と、妹との行為の背徳感で涙目になり、組み伏せた下で叫んでいる悠生を、悠美は愛おしそうに見下ろした。
 「なーに言ってるのユウ君。私、操られてなんかないよ……。だって、ずっとユウ君とこういうことしたかったのを我慢するの、やめただけだもん……」
 「!?」
 悠生の真上にいる悠美は、今まで一度も見たことのないような扇情的な表情をしていた。
 このとき、悠美の瞳に常人のものとは違う力──すなわち、魔力が宿っていることに悠生は気づいたのだが、そのときにはもう、“どうしようもなく”なっていた。
 「小童、耳を貸すな! 聞くでない!!」
 悠生の視界に入らないところで、ベアードが叫んでいた。
 悠生は先の悠美の言葉の意味がすぐには分からなかったが、悠美が傍らで浮遊していたベアードに“光る弾のようなもの”を飛ばしてから悠生に向き直り、悠生ににっこりと笑いかけたとき、その意味を悟った。
 それっきり、ベアードの声は聞こえなくなった。
 (ずっと……ずっとキスしたかったってこと? 悠美が? 兄妹なのに? そんな、ことって……)
 今まで恐怖などが主に支配していた胸の高まりが、いつのまにか別のものにすり替わっていた。
 「男の子のときのユウ君も大好きだったけど、女の子になったユウ君の方がもっと可愛くて魅力的なんだもん、しょうがないよね……。あれ、ユウ君、顔真っ赤だよ? ……私とキスするの、嫌……じゃ、なかった?」
 もちろん、大好きな妹なのだ、決して嫌ではない。しかし、倫理性を考えると、それは否定されなければならないはずだった。
 胸の鼓動が、悠美に聞こえてしまうのではないかとも思うほど早く、大きくなっていた。
 悠生は悠美の言葉に抗おうとしたが、気づいたときには、首は縦に振られていた。
 「あはっ……嬉しいな……。ねえユウ君、こんな教室の入り口で寝転がっててもしょうがないから、もっとイイトコに行こう?」
 その言葉に声で返事をすることはなく、悠生は虚ろな目でゆっくりと頷いた。

<つづく>

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