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この魔法少女の主成分は勇気ではありません 3-1 by.inQβ

第3話「想いの在り処」-1

 「で? 他に言い訳はないの、ユウ君?」
 「あ、ありません……」
 体育着姿で、白いシーツのかかったベッドの上で逃げることができない程度に自身の身体を少女に馬乗りされながら、新井悠生(あらいゆうき)は詰問されていた。
 「ベア吉は何してたの? ユウ君が大変なことになってたっぽいのに」
 「いや、だから小娘よ──」
 「ゆ・み!!」
 赤いスカーフを首に巻いた、傷跡があしらってあるあまり可愛くないぬいぐるみ姿で悠生の脇に正座し、ベアードも詰問されていた。
 「こ、こむ……むむ……ゆ、ゆみ……」
 ベアードは何かに耐え忍ぶようにして身体を震わせつつ、かすかな声を絞り出すようにして、目の前の少女の名前を発する。
 「もう……ホント、心臓止まるかと思ったよ……」
 兄を尻に敷きつつ、新井悠美(あらいゆみ)は仏頂面で2人を問いただしていた。
 「ねえ、何があったか教えてよ。だって、おかしいでしょ普通に考えて。ボロボロになった制服がそばに落ちてて、その脇には裸の女の子……の姿の兄が倒れてるって」
 事の発端は、20分ほど前に遡る。
 1時限目が体育の授業だった悠美は、その授業に出ようとした。しかし、急に眩暈を感じたので、ひとまず保健室に赴いた。養護教諭がたまたま席を空けていたのか、部屋にいなかったため、どうしようかと考えていたところ……そこで意識を失った。
 その後、気づいたら悠美はなぜか教室で倒れていた。しかも、その傍らに兄──今は妹としか言いようのないほど小柄で可愛らしい少女の姿だが──が一糸纏わぬ姿で倒れていたのだ。すぐ傍には無惨な状態になった悠美の予備の制服まであった。
 (だって、あの状況じゃ、どう考えたって……)
 悠美はその先を考えないようにした。
 幸いあのときは既に体育の授業のために教室に残っている生徒は一人もおらず、そこにいたのは悠美と悠生だけだった。とはいえ、一歩間違えれば、あの状況を誰かに目撃されていたかもしれなかったのだ。
 今日、まさに、学園創設以来(だと思われる)奇特な理由で男から女になってやってきた悠生。その悠生の身にさっそく問題が起きたとなると、悪い意味で注目を集める。下手をすれば何らかの処分まで下されるかもしれなかった。
 悠美は驚き慌てたものの、ひとまず体育の授業で着るはずだった自分の体育着を悠生に着せ、背中に背負って急いで保健室に駆け込んだ。そのときには養護教諭がいたので、兄が倒れたとだけ説明して、ベッドを借りた。
 養護教諭は「兄」という言葉を聞いて一瞬驚いたようだったが、職員に一通り話が行き渡っているのか、すぐに納得してくれたようだった。細かいことは尋ねず、空いているベッドへと通してくれたのだった。
 「えっと、その……僕もよく分からないんだ」
 だが、当の悠生からの返事は要領を得ないものだった。
 ベッドに運び込んでしばらくはピクリとも動かなかった悠生が目を開けるや否や、悠美は返事も聞かずに逃がすまいと馬乗りになって拘束した。が、よく考えてみると、そうしたからといって素直に事情を喋ってくれる保障など全くなかったのだ。適当にはぐらかせばよいのだから。
 悠美の身は気づいたら保健室から教室にいた、ということを除けば何事も無かったが、あのときの悠生の状態は何者かに襲われたようにしか見えなかった。
 「そんなに言いたくないことされたの……? ねえベア吉、どうなの? あんたは知ってるんじゃないの? ユウ君の身に何があったの? 私達に悪さした責任取って、ちゃんと答えなさいよ!」
 「……知らぬ」
 今は保健室にいる。養護教諭もいれば、他のベッドに生徒が寝ている可能性もある。あまり騒ぎ立てる訳にもいかないため声を抑えて、しかし怒気はこめて問う。
 悠美の心は穏やかではなかった。昨日といい今日といい、悠生の脇で小さい身体を更に縮こまらせているベアードのせいで、日常が散々なことになっている。うんざりきていた。
 そのまま2人を睨んでいたが、悠生は視線を合わせようとせずに黙秘を続け、ベアードは悠美に対抗するように口をヘの字に曲げて睨み返してきている。
 悠生のあの状況にベアードが無関係だったとは思えないのだが、2人の態度を見ている限り、口を割る気がなさそうに見える。
 (まあ、時間を置いたほうがいいってこともあるのかな……)
 兄のことは信頼している。きっと、なにか訳があって話さないに違いない。そう思った悠美は、今はこれ以上の追及を諦めるしかなかった。
 「……わかった、今はもうこれ以上あーだこーだ言わないよ。でもね、私だってユウ君の力になりたいんだよ? ホント、何かあったら、無理せず何でも言ってね」
 悠美にとって納得のいく始末とはいかなかったが……
 「あ、でもベアード、あんたは今日帰ったらみっちりしごくから、そのつもりでね」
 それだけ言い残すと、悠美はベッドの上から降り、養護教諭に会釈をしてから静かに保健室を後にした。



 (ごめんね、悠美……)
 悠美が部屋を後にしたのを確認して、ようやく悠生は息をつくことができた。しかし、胸を締め付けるような罪悪感は収まりがつかなかった。
 悠美が、異界の者の手によって実の兄にあれやこれやと恥ずかしい真似をいくつも働いていたなど、本人には言わないほうがいいに違いない。胸のうちに秘めたる想いを本人の意図せぬ間に暴露されていたなど、本人が聞いて快いものではないはずだ。知らないのなら、そのままのほうがいい。
 悠生はそのように考え、怒っている風を装いつつも、不安で揺れる瞳を隠しきれていなかった悠美に心の中で謝った。
 気を失っていて状況が把握しきれていないはずだというのに、瞬時に悟って、話を合わせてくれたベアードの心遣いも有難かった。
 「ふぅ……すまなかったな、小童。この身体では、あのときは成す術もなかった。結果、貴様にはロクに手助けもできず仕舞い……」
 ベアードの方も、珍しく高飛車な態度は身を潜め、頭(こうべ)を垂らしていた。当人も歯がゆかったのだろうか。
 「いいんだ。僕の実力不足が招いた結果でも──」

 そのときだった。

 「失礼します! 新井君が倒れたと聞いて飛んできました! 容態はどうですか?」
 入り口の方から、聞き覚えのある声がした。友人の河部和人(かわべかずと)だ。
 そのときになって、悠生は改めて和人のことを思い出した。あのとき──ベアードの魔法によって呪術を解かれて意識を失って倒れたとき──は悠生の力ではどうしようもなかったため仕方が無かったのだが、トイレに放置されたままだったはずだ。
 「ああ、大丈夫みたい。妹さんが運び込んできて、さっき本人と何か話してたようだったから、もう気がついているんじゃないかな」
 カーテンの向こうで養護教諭が答えるのが聞こえた。
 ここまで走ってきたのだろうか。和人は若干息を切らしているようだった。恐らくこの後すぐにカーテンを開けてこちらを窺いに来るだろう。しかし、悠生はどんな顔で迎えればいいのか分からない。狸寝入りしてやり過ごしてもよいのだが、それは悠生の心情的に憚られた。
 そのような葛藤を頭の中で繰り広げているうちに、金属性のレールがシャーっという音を立て、カーテンが勢いよく開かれた。
 心の準備ができぬまま開けられた方を振り返る。すると、ちょうどベッドを覗き込もうとしていた和人と目が合ってしまった。
 「あ、和人……その──」
 適当に口から出るがままに言い訳をしようと悠生が口を開くと、
 「うおおおおお悠生! よかった、何ともないのか!? 元気そうでなによりだ!!」
 「え……ぶっ!」
 応対しようと半身を起こしていた悠生の身体に和人は無遠慮に抱きついてきて、そのままベッドに倒された。
 「和人……! 保健室だから、静かに! 落ち着いて……!」
 悠美と違い何ら遠慮せずに騒ぐものだから、心配されている側の悠生が逆に他に横になっているかもしれない生徒の心配をしなければならなかった。
 「お、おう……すまん。いや、な? お前が悠生だと分かって驚きと喜びで満ち溢れたかと思ったら、いつの間にか気を失っていたようで、ずっと個室の壁にもたれかかって気絶してたみたいでな……。まったく、我ながら気絶するほどに興奮するとは」
 どうやらその後のことは記憶に無いようだ。悠生はひとまず胸を撫で下ろした。
 「ホントだよもう。急に倒れるから慌てたよ? 今の僕の身体じゃ担ぎ出せないし、どうしようかと思ったよ」
 「おお……さすが親友! 俺の身を案じ、助けを呼ぼうと必死に駆け回っているうちに、疲れて倒れてしまったのだな!? なんと健気な奴よ……。全俺が泣いた!!」
 悠生は決して嘘は言っていないが、肝心なことは何も言わないでいたら、当人が勝手に納得してしまった。相変わらず独特な思考をしている。
 その迷いのない決め付けっぷりは、本心からそう思って言っているのか、それとも“そういうことにしておく”ためにでっち上げてくれたものなのか判断がつかない。
 「うん、まあ……そんなとこかな?」
 「そうか。俺のせいで悠生が倒れてしまったのなら、その詫びをしなくてはいかんな。よし、悠生、とりあえず今度の休みにどっか出かけよう!」
 ずいぶんと話が飛躍した。悠生はさきほどの考えのうち、前者で間違いないのではないかと思えてきた。
 「え!? い、いいよ別にそこまでしなくて。ほら、和人は攻略中のゲームがあるじゃない。僕のことはいいから、それやりなよ」
 「何を言っている? さすがの俺でも、親友とゲームを天秤にかけたりはしないぞ。しっかり穴埋めするから、楽しみにしてくれ! な!?」
 和人が普段、部活動をせず、そして寄り道もせずに一直線に家路に就いては自宅で趣味などに勤しんでいるのを悠生は知っていた。よほど重要なことでもない限り、基本的にはそれが最優先で、他を一蹴するほどだったというのに。 
 「なんか普段と違くない? 和人の口から『埋め合わせ』とか聞くなんて、思ったこともなかったよ。……僕がこんな姿だから一緒に遊びたいだけ?」
 人肌の温度を持つ人間なのだから、そんな和人とて一切の付き合いをしないほど内向的というわけではない。故に悠生と友人関係を築けているわけであるのだが、今回ばかりは“裏”を勘繰らないというのは難しい。
 「ん、んん~……ま、まあ、細かいことは気にするな! たまのしっかりとした友達づきあいをするいい機会と思ったまでだ!」

 結局そのまま約束を半ば無理矢理取り付けられた悠生は、体調が優れないということもなかったため、妹の体育着姿でその後の授業をこなし、一日を終えたのだった。
 衝撃的な登場と退場でクラスを沸かせた悠生が、体育着姿という身体を動かすとき以外の用途としては薄着すぎる格好で、1人、黒ずくしの教室に白の点を添えていただけに、その存在は浮きに浮いていた。

<つづく>

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