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英雄

作.真城 悠(Mashiro Yuh)
「真城の城」http://kayochan.com 
「真城の居間」blog(http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/)
挿絵:松園


 昔々、今よりずっと昔の大陸でのお話。





 王は膝を突いていた。
 周囲は武装した兵隊が幾重にも取り囲んでおり、王の手は後ろで縛り上げられている。

 目の前には豪華に装飾された金色の椅子にふんぞり返る男がいた。

 そいつこそがその国を侵略してきた蛮族の族長である。

「顔を上げさせろ」

 王は抵抗したが、周囲の兵隊に顎を無理矢理引き起こされた。

「ひどい顔だ」

「…」

 王は心の中で“ほっとけ”と強がりを言った。

 その蛮族は他国には無い機動力の騎兵を武器に連戦連勝を重ね、周囲の国を征服し続けていた。
 噂は地の果てまで轟き、周囲の国は防衛体制を固めるも、征服した国の国民を兵として徴用し、数にあかせて征服を続けるその国に対抗できる国家などどこにもなかった。

 王の国もまた征服の危機にさらされていた。

 受け入れてくれるかの確信も得られぬままに王妃と子供たち及び位の高い家臣の家族は隣国に脱出させ、国民を総動員して防衛に当たった。
 仮に一度や二度退けることに成功したとしても、圧倒的に数で劣るため、攻め滅ぼされるのは時間の問題と思われた。

 唯一可能性があるとしたら、別の国境付近で、既に服属させられた国家内部にくすぶる抵抗勢力による内乱が拡大し、領土拡大に割く人員が減ることくらいだった。
 その可能性に掛けて内乱を幇助し、資金援助までした。

 ここまでやったからにはもしも防衛戦で破れる様なことがあればそれこそタダでは済まないだろう。

 だが、王の目論みは崩れ、先頭に立って戦いながらも惨敗を喫したのだ。

 国軍の主力は総崩れとなり、大半が殺されるか囚われるかとなった。

 王もまた、その戦乱の中で死すべきだった。戦死してもおかしくなかったのだ。
 だが、まだ生き残っている国民が大勢いると言う現実がある以上、もしかしたら多少は温情ある処遇をしてくれるように交渉出来る可能性もある。

 そう考えて自害せずにこうして族長の前に引き出される屈辱に耐えているのだ。

 ひげもじゃの太った族長がふんぞり返って脚を組んでいる。

 この族長の評判は最悪だった。
 最悪の暴君、領民のことなど何も考えない重税に兵役。
 敵対する王を殺してその妻を後宮に入れて愛人とするのを何よりの楽しみとするというサディストであるという。

「本来ならオレに逆らった罪は国王だろうと即、死刑だ。だがオレは今機嫌がいい」

 周囲の兵隊たちはにやにやと笑っている。ゲス野郎どもが…。

「オレの評判をどう聞いてる?」

 どう答えたものか…ここで機嫌を取ってこびへつらうべきか。それともどうせ死んだものと覚悟して強気に出るべきか。

「敵対する将軍を殺し、その妻を愛人にするのが趣味だ…と聞いてるんじゃないのか?」

 デブの族長は少し身を乗り出してきた。

「オヤジが聞いてるんだ!答えろ!!」

 どうやら側近らしい大男が怒鳴った。地が震える様だ。

「…そう聞いている」

 族長がニヤニヤしている。

「そうか…その情報は古いぞ。いくさに勝てん訳だ」

 この辺りで周囲に笑いが起きている。
 戦いに負けた敵方の将軍の扱いなんてこんなものだろう。

「お前のカミさんと子供は全員殺した」

「ええっ!?」

 周囲に大笑いが起きた。

「反対側に逃げようとしたんだろ?そんなものお見通しだ。オレらと戦った国はみんなそうだ」

 もう王の頭の中は真っ白になっていた。
 狙われ、隣国が落ちた時からある程度覚悟はしていたが、遂に現実になってしまったのか、と王は落胆した。

「国境沿いに国軍の主力を回しただろ?女ばかりの兵隊に型落ちの兵隊…しかも逃げながら女たちを守りながらだ。アリを潰すようなものだったそうだ」

 王の脳内に逃げ惑う妻や子供たちが惨殺される場面が浮かぶ。

「護送隊も全員…殺したのか?」

「いや、女は全員殺したが、兵隊の何人かは連れて帰って来ている」

 普通は「男は殺し、女は犯す」ものだが…大方混乱の中で確保することが出来なかったか、或いはこれまでと悟って女たちは皆自害したのだろう。

「この国はオレたちが貰った。これからはオレたちが支配する。いいな」

 周囲に鬨(とき)の声が上がる。

「わかった。だが…」

「もしかしてオレはどうなってもいいから国民には思いやりを…なんて言うつもりじゃあるまいな?」

 見透かされたと悟るが、なるべく顔色を変えずに平静を保とうとする王。

「悪いがその望みは聞けんな。…そろそろ効いて来る頃だ…」

 周囲の兵隊たちが離れる。
 王は誰に言われるとも無く立ち上がった。

 次の瞬間、全身を違和感が襲った。

「…な、…か…からだ…が…」

 鉄製の甲冑がすとんとずり落ちた。
 浅黒く日焼けしていたその肌のキメが細かくなり、無精ひげが一本残らず落下する。
 身体のサイズが高さも太さも縮んで行き、コーカソイド(白人種)系の素肌が露出する。

 周囲に「おお~っ」という声が上がる。

 王は混乱していた。これは…何の魔術だというのか!?

 戦場で汗と泥と血にまみれ、それらがこびりつくように固まった短髪が汚れを消滅させながら光沢を放ち、ぐんぐんと伸びて、金色に波打った。

 頬は子供の様に滑らかになり、いかつかった唇はさくらんぼのように熟れた薄い肌色のそれとなった。
 長いまつげをパチクリさせるその瞳の大きさは、まるで絵画に登場する女神か天使の様だった。

「こ…これは…」

「ふむ…中身はいいが、その色気の無い格好じゃ駄目だ。それ」

 甲冑が見る見る内に柔らかい素材の生地へと変化して行き、細い身体にぴったりと張り付く。
 白魚の様に細く可憐な指先から、小枝のような腕を包む袖が形作られ、なで肩が大袈裟に膨らんだ服飾に覆われる。
 族長の腕くらいの太さになった胴回りに縮んだかつての甲冑が下方向に向かって“ぶわあ”と広がった。

「あああああっ!!」

 その甲高い声に思わず手で口を押さえてしまうかつての王。

 周囲が宴会みたいに盛り上がった。

「ふああはははははああ!!よく似合ってるぜぇ!はははははは!!」

「あ…ああ…」

 そこにはかつての逞(たくま)しい「王」はもういなかった。

 きらびやかなドレスに身を包んだ「お姫様」が可憐にたたずんでいたのである。

真城様 挿絵10

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日本一の偏差値を誇る(たぶん)開成高校。
たぶん、学生さんたちは時間当たりの知識習得量とか理解力が半端なく高いんだと思います。
受験分野では絶対的強者!
だが、野球に関しては相対的な弱者な訳で、そこからいかに勝つかの戦略や努力、あるいは個性のエピソードがなんだか分かんないけど良い味。
『苦手じゃないけど下手なんです』
『長打が出る可能性のあるスイングができてきました』
『超寝てます。毎日9時間は寝てます』←東大受験組w
『僕はほうけいです』
なんか、こいつら好きになったよ。

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(2012/09/28)
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