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退けよ退魔の体 第三話 by.サケフレ
ここで、今の僕の状態を確認する。焦ってはいけないから、こういうことは大切だと思っている。
まず、僕は父の仇である淫魔を倒した。そこで、淫魔は消えるときに僕と融合した。それで僕は半分人間、半分淫魔のサキュバスになってしまったと…
「うわぁぁぁぁぁぁ」
つまり僕は、あの嫌いな淫魔と融合してサキュバスになり、男を、誑かす存在になってしまったということかぁぁ。これで騒がない人間がいるだろうか?あ、サキュバスだった。
早く元に戻らないと……
僕も負の対象になってしまう。男なんかの精気を吸って生きていかなきゃいけないようになってしまう!
まず、今は服を着ないと。肌寒いし、何よりも裸はまずいと思う。まだ朝だから参拝しに来る人なんていないと思うけど、念の為だ。
今の格好は、おしりの少し上からしっぽがある小学生くらいの女の子(サキュバスだけど…)が胸のところ以外全部露出させているような状況。僕は高校に入らないで自分の家の手伝いに専念していた16歳だけど、ふつうの高校生ならこういう状況は絶対に襲ってくる。小学生の男子でも、僕が出したくもないサキュバスのフェロモンを嗅ぎつけ、襲ってくるはずだ。
そんなことしたら、あの淫魔と同じだ。もうなんでもいいから服を着よう。
それで、服を探すことにした。すると、簡単に見つけた。階段に、ちょうどいい大きさの服が何故か落ちていた。
他の衣類が落ちていなかった為渋々それを身につけようとした。
したのだが、まず腕につける服(僕が元々着ていたような服)と黒いハイソックスのかかとにヒールがついたようなものまではいい。問題なのがパンツだ。もちろん女物の。今は女なのだから女物を着けて当たり前だと思う。
しかし、元は男である僕がそんなことをするのは、あまりにも狂気の沙汰に思えてくる。
そんなとき、タイミング悪くおじいちゃんの声が聞こえ、それはどんどんと近づいてくる。電話しているようだが、おそらく外で話すのだろう。
もう声がすぐそこまで聞こえる。
僕は何の躊躇もなく女物のパンツを履いた。これがふつうなのかもしれないが、なんかきつくてフィット感がある。そして、分かってはいたが、男のものがないのを余計に感じさせられる。そこでギリギリておじいちゃんが登場した。
背が縮んだせいだろう、大きく見えている。
「でな、タナカさん。そこに淫魔が現れたのじゃ。それをウチの孫が退治しに行って、それを今から見に……また後でかけるからの」
いきなり、電話を切ったようだ。目の前に淫魔がいるともなれば。
「淫魔様ぁ、すいませんでした、どうかお助けを〜」
と、弱々しい声が聞こえる。
「ちがうよ、おじいちゃん。僕だよ。星七だよ」
「え、いや、そんなことあるわけないだろう。どう見たって淫魔じゃないかぁ」
「だから、ちがうんだって。淫魔の呪いにかかって僕も淫魔になっちゃったんだ」
「そうだったのか。それならいいけど。まぁ中に入りなさい。そんな格好じゃ寒いだろう?」
そう言っておじいちゃんはおどおどしながらも、今の姿の僕を受け入れてくれた。
しかし、今の僕がサキュバスという魔の存在であるせいか、神社という神聖な場所に入るとどうにも息苦しかった。その裏にある家に行っても同じだった。
さらに、元々自分が着ていた服に着替えようとして、触れるとそれが全部女物の服に変わってしまうのだ。例えば、僕の神主用の服が子どもサイズの巫女服になったり、トランクスが女物のパンツになったり、と最悪だった。よりにもよって、普段着は全部今着ている服と同じものになってしまった。
しかし、自分以外のものには変化なしで、気軽に他の物には触ることができた。
着替えようとした後、洗面所に行って今の自分がどうなっているかを確認しょうとした。服や体は確認できたが、顔だけは確認できないし、家のどこに手鏡があるかも分からないからがんばって洗面所まで来た。できるだけ時間は取りたくない。息苦しいのは好きじゃない。走って洗面所まで来て、すぐに鏡を覗きこんだ。すると、写っていたのは昨日までの自分だった。背の大きさは今のままだが…
今着ている服ではなく、破けたはずの昨日のものであった。
僕が口を動かすと昨日の自分も動かし、その写っているものは本当にみえているものであることを確認できた。
しかし、ぼんやりと今の自分の影も重なって見えている。ぼんやりしている自分の顔をよく見ると、頭からツノが生えている。
自分の頭を触れてみると、手で触れた感覚はあったが、触れられているという感覚はなかった。
ここには神経が通っていないようだ。
そこで、完全に忘れ去られていたしっぽの存在を思い出した。
しかし、息苦しいし別にここでやる必要もないと思い、外に出ることにした。
外でしっぽも確認したが、結局はツノと同じだった。
おじいちゃんはやさしかった。単に、どうとも思っていないだけかもしれないが。
近くにあった4LDKのアパートを僕の為に借りてくれたし、引っ越しの作業も引き受けてくれた。
アパートの家賃の払い方は、一括10万円で上がりも下がりもしないのだという。いくら電気やガスを使ったとしても変わらないという特殊な払い方である。
それと、生活必需品と生活費をもらった。
なぜそんなにお金があるのかと聞いたら、淫魔を倒したときの報酬額と僕が呪われたからその保険金だそうだ。世の中はよく出来てると思う。
<つづく>
まず、僕は父の仇である淫魔を倒した。そこで、淫魔は消えるときに僕と融合した。それで僕は半分人間、半分淫魔のサキュバスになってしまったと…
「うわぁぁぁぁぁぁ」
つまり僕は、あの嫌いな淫魔と融合してサキュバスになり、男を、誑かす存在になってしまったということかぁぁ。これで騒がない人間がいるだろうか?あ、サキュバスだった。
早く元に戻らないと……
僕も負の対象になってしまう。男なんかの精気を吸って生きていかなきゃいけないようになってしまう!
まず、今は服を着ないと。肌寒いし、何よりも裸はまずいと思う。まだ朝だから参拝しに来る人なんていないと思うけど、念の為だ。
今の格好は、おしりの少し上からしっぽがある小学生くらいの女の子(サキュバスだけど…)が胸のところ以外全部露出させているような状況。僕は高校に入らないで自分の家の手伝いに専念していた16歳だけど、ふつうの高校生ならこういう状況は絶対に襲ってくる。小学生の男子でも、僕が出したくもないサキュバスのフェロモンを嗅ぎつけ、襲ってくるはずだ。
そんなことしたら、あの淫魔と同じだ。もうなんでもいいから服を着よう。
それで、服を探すことにした。すると、簡単に見つけた。階段に、ちょうどいい大きさの服が何故か落ちていた。
他の衣類が落ちていなかった為渋々それを身につけようとした。
したのだが、まず腕につける服(僕が元々着ていたような服)と黒いハイソックスのかかとにヒールがついたようなものまではいい。問題なのがパンツだ。もちろん女物の。今は女なのだから女物を着けて当たり前だと思う。
しかし、元は男である僕がそんなことをするのは、あまりにも狂気の沙汰に思えてくる。
そんなとき、タイミング悪くおじいちゃんの声が聞こえ、それはどんどんと近づいてくる。電話しているようだが、おそらく外で話すのだろう。
もう声がすぐそこまで聞こえる。
僕は何の躊躇もなく女物のパンツを履いた。これがふつうなのかもしれないが、なんかきつくてフィット感がある。そして、分かってはいたが、男のものがないのを余計に感じさせられる。そこでギリギリておじいちゃんが登場した。
背が縮んだせいだろう、大きく見えている。
「でな、タナカさん。そこに淫魔が現れたのじゃ。それをウチの孫が退治しに行って、それを今から見に……また後でかけるからの」
いきなり、電話を切ったようだ。目の前に淫魔がいるともなれば。
「淫魔様ぁ、すいませんでした、どうかお助けを〜」
と、弱々しい声が聞こえる。
「ちがうよ、おじいちゃん。僕だよ。星七だよ」
「え、いや、そんなことあるわけないだろう。どう見たって淫魔じゃないかぁ」
「だから、ちがうんだって。淫魔の呪いにかかって僕も淫魔になっちゃったんだ」
「そうだったのか。それならいいけど。まぁ中に入りなさい。そんな格好じゃ寒いだろう?」
そう言っておじいちゃんはおどおどしながらも、今の姿の僕を受け入れてくれた。
しかし、今の僕がサキュバスという魔の存在であるせいか、神社という神聖な場所に入るとどうにも息苦しかった。その裏にある家に行っても同じだった。
さらに、元々自分が着ていた服に着替えようとして、触れるとそれが全部女物の服に変わってしまうのだ。例えば、僕の神主用の服が子どもサイズの巫女服になったり、トランクスが女物のパンツになったり、と最悪だった。よりにもよって、普段着は全部今着ている服と同じものになってしまった。
しかし、自分以外のものには変化なしで、気軽に他の物には触ることができた。
着替えようとした後、洗面所に行って今の自分がどうなっているかを確認しょうとした。服や体は確認できたが、顔だけは確認できないし、家のどこに手鏡があるかも分からないからがんばって洗面所まで来た。できるだけ時間は取りたくない。息苦しいのは好きじゃない。走って洗面所まで来て、すぐに鏡を覗きこんだ。すると、写っていたのは昨日までの自分だった。背の大きさは今のままだが…
今着ている服ではなく、破けたはずの昨日のものであった。
僕が口を動かすと昨日の自分も動かし、その写っているものは本当にみえているものであることを確認できた。
しかし、ぼんやりと今の自分の影も重なって見えている。ぼんやりしている自分の顔をよく見ると、頭からツノが生えている。
自分の頭を触れてみると、手で触れた感覚はあったが、触れられているという感覚はなかった。
ここには神経が通っていないようだ。
そこで、完全に忘れ去られていたしっぽの存在を思い出した。
しかし、息苦しいし別にここでやる必要もないと思い、外に出ることにした。
外でしっぽも確認したが、結局はツノと同じだった。
おじいちゃんはやさしかった。単に、どうとも思っていないだけかもしれないが。
近くにあった4LDKのアパートを僕の為に借りてくれたし、引っ越しの作業も引き受けてくれた。
アパートの家賃の払い方は、一括10万円で上がりも下がりもしないのだという。いくら電気やガスを使ったとしても変わらないという特殊な払い方である。
それと、生活必需品と生活費をもらった。
なぜそんなにお金があるのかと聞いたら、淫魔を倒したときの報酬額と僕が呪われたからその保険金だそうだ。世の中はよく出来てると思う。
<つづく>