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いつだって僕らは 2-19  by 猫野 丸太丸

19.
 だけど篠塚の提案は、問題の先延ばしに過ぎなかった。早急に行動しないことでどういう事態になるか、僕は一度体験したのにまだ思い知っていなかったのだ。
 優柔不断さを心配するかのように、その日の夜、僕のところへ和久からメールがあった。
「眠れないと見た。まだ悩んでいるかな?」
 文章まで女っぽくなるなよ。そう思いながら返事を書くと、しばらくして長文が返ってきた。
「人生変わっちゃうんだから大変だよね。変身するしないは自由意志だと思う。けど山下は、本当に生まれ変わる日を待ち望んでいた。いままでいろんなことに耐えたりがんばったりしてやっとつかみとった幸せ。だからあたしは新井に、山下といっしょに女の子になってほしい。山下を支えてあげてほしい。それがあたしの正直な気持ち」
 なにを言うのだろうかと思いながら僕はメールを返した。
「山下を支える役目は和久が適任じゃないか」
 すぐに返事が来た。
「違うでしょ、四人いっしょって約束したじゃない!」
 そりゃそうだけど。変身しないでも山下を支えられるんじゃないかとか、山下もそろそろひとりで女の子になる覚悟がついたろうとか、先週は考えもしなかった逃げ口上が頭のなかに浮かんだ。どう答えるか、と悩んだところで、重ねてメールが来た。題名が「見せるね」?
「こほん。優柔不断な新井にあたしの覚悟を見せるために、死ぬ気でプッシュしようかなと思う。新井が女の子になりたくてしかたがなくなるように。直接は無理だから、写真で、あたしの大事なところを見せるね」
 僕は舌をかみそうになった。なにを言いだすんだ、このもと男女は!
 急いで「やめろ!」と書こうとしたが「見せるね」のメールに、すでにデータが添えられているのに気づいてしまった。ああ、写真だ。
 友人が裸の女の子になっているところを見る、それはあまりに外道過ぎる、でも……。僕の指は携帯の画面をスクロールしてしまった。
 小さい画面に一枚目の写真が映った。顔無しの胸の写真だ。
 胸に、おっぱいがある。グラビアアイドルみたいな大きさではないけれど、わきの下のラインからはみだすほどには広がっていた。肩や腕の感じはたしかに、今日会った和久と同じだ。手首の色の延長で、肌も生まれたてみたいに白くてきれいだ。
 じゃあこれは和久のおっぱいなのか? 和久が手に入れたおっぱいを、僕は見ているのか? 乳首を見せたくないから絆創膏を貼っている? いいや、頭のいい和久のことだ、どこかのエロ画像をコラージュしただけかもしれないじゃないか……。
 でも見れば見るほど本物としか思えない。裸の和久を僕が見つめるなんて冒涜だ、友情を裏切る行為だ。この形がノーブラだとすると、昼間の美しいシルエットはすでにブラジャーを着けていたんじゃないか!
 でも、でも恐ろしいのは写真に二枚目があることだ。胸が一枚目だとしたら、二枚目はまさか。ほんの少しの指の動きで、画面には肌色のよく分からない形が現れた。体の上下から、それがなにかを想像した。
「う、うわぁ」
 和久は股間に携帯をつっこんで撮ったのだ。
 手術の写真とはまったく違うインパクトが全身を襲った。だって和久がこんなになってしまったなんて。おへそから下へずっと視線でたどっても、ない……、ない! そしてその下には女の子の印であるかわいい形が盛り上がっていて、初々しくてあんまりでこぼこしていなくて、穴は閉じていて見えず、そのままお尻へと続いているのだ。
 疑うことなんてなかった、和久は完璧に少女に変貌していた。
 そして僕はぼうっとした目で、メールの末尾に注意書きがあるのを眺めた。
※山下、篠塚をふくめて他の子には絶対見せない、言わないこと! 決心ついたらすぐに捨ててね!※
 そこまで考えが回らないよ、だって僕は和久が変身の副作用で無毛になっていることすら、いま気づいたんだから!
 女の子の和久は変身して二日目にもう、山下を女の子にするために努力したのだ。山下を助けるために肌をさらすことすらいとわなかった。僕はメールを書いた。
「ごめん……、ここまでしてもらって。反省してます。絶対いっしょに女の子になるから。きっと山下を不安がらせたりしない。それより和久は無茶しすぎだ、もう女の子なんだからはずかしい写真を撮ったりしないで」
 送信。受信。
「大丈夫だよ、新井だから見せたんだし。いっしょに女の子になれるの、すごくうれしいんだから! 写真のことは気にしないで。だって新井にも山下にももうすぐ同じものがくっつくんだからね」
 ははは、と乾いた笑いを漏らして、僕は携帯を閉じた。女の子の和久に、女の子になる約束をさせられてしまった。このままじゃ僕は、山下や篠塚といっしょに変身してしまうのだ。
「どうしよう」
 ベッドに寝ころんで、あらためて自分の体のほうを意識してみた。湿っぽい下着に包まれた、男の体。僕の手が自分のお腹から、そうっと下をなでる。突き当たる障害物がある。それがもしもなくなってしまったなら。僕の見た目じゃさえないかなぁとか、あんなかわいいお尻になるんだろうかとか。同じものがくっつく余地なんてあるんだろうか。
 とんでもないことに気づいて僕は携帯を開き直した。和久の最後の文を見る。
「だって新井にも山下にももうすぐ同じものがくっつくんだからね」
 やっぱり僕自身で想像するのは無理があった。山下。山下の体がこんなふうになるということを、僕ははっきりと思いうかべればよかった。

 もとからあまりに女らしかったから、山下が女体化したらどうなるかをいままで想像できていなかったのかもしれない。
 日当たりの良い喫茶店の二階、あの隠れ部屋で、山下がシャツを脱いでいる。上を脱いだだけでとんでもないことになる、体の小ささも相まって大きなトランジスター・グラマーの胸がふっくらとした白い双丘を浮かびあがらせている。そして山下は僕の方に微笑んで、乳房の下で腕を組む。ためらいながら、ふんどしの紐をほどく。赤い布が木の床に落ちた。僕は目をおおったけれど危険な物は飛び出してこない。そっとうかがい見れば、つるんとしていて、危ない窪みがそこにふっつりとある。
「僕、女の子だよ」
 山下が女の子になっている。願い通りの、女の子に。

「……」
 僕はベッドを汚さないように立ちあがり、事後処理のためトイレに入った。なくなってしまえばいいのに、高校生の雑念の証拠はいつも元気だ。汚れをふいて水で流す。いつもと同様、情けなくなる感情が胸のなかに広がった。和久や山下が本気でがんばっているのに僕はなにをやっているのか。ああ、でも変身してしまえばこの気持ちとも一生おさらばできるのか、TSのちょっとしたオマケ特典かもしれない。
 しかし……。僕は携帯をもう一度開こうとした。そのときトイレの外で足音がした。
「……!?」
「なんだ、おまえ入っているのか」
 最悪のタイミングで父さんが来たから熱がいっぺんに冷めた。僕はうつむいてはずかしさと、秘密がばれかねない恐怖感に身を縮こまらせた。
「いや、べつに」
「マスかきか? 気にすることはない、男として当然のことだ」
 あっさりバレていることを口にされた。返事もできず当惑していると、父さんは続けた。
「そうとう入れあげているみたいだな。毎週逢っているのか? どんな娘だ?」
「べつに、そういうわけでも」
「勉学に響かない程度に、な。そうすることが男の責任でもある」
 父さんは去っていった。僕はため息をついた。いま思い浮かべた人が、父さんがすでに会ったことのある人で、しかも現在まだ男だと知ったら父さんはどう反応するだろうか。僕はもういちどお尻をぬぐうと、あとは風呂で流すことにして立ちあがった。

 正直、この時間に山下本人がなにをしていたか考えれば、僕は反省してもし過ぎることはない。和久にいくら励まされたとしても、僕の浮ついた気分は先週とたいして変わっていなかったのだ。だから次の事態を招いた。
 新しく来た七月の土曜日、夏っぽい日の朝。僕はカラオケボックスに向かった。そこで四人、会う約束をしていた。きっと今日、僕たちは全員女の子になる決心をするだろう。もしかしたらその場でTS薬を飲むかもしれない。そう思って銀色の箱は持参していた。薬。本当に女の子になる薬。
 父さんには結局TSのことを白状できなかった。分かってもらえると思わなかったし、こんなことで面倒をかけたくなかった。同じカミング・アウトするなら、変身してから自分の体を見せたほうが分かりやすいとすら思った。
 いずれにせよ女の子になったら、定番のお着がえから始まるのだろうか。そういえば僕の場合、下着選びも山下にお願いすることになるのではないか。夏服って下着が透けるのもあるよなぁ。……けっこうはずかしい。
 そんなことを考えながらカラオケボックスのうす暗い入り口に入ろうとすると、ひんやりと冷房の効いた玄関受付に篠塚が立っていた。苦笑いと暗い表情に、僕はあれ? と思う。
「どうした、入らないのか」
「いや、それがさぁ……」
 篠塚が廊下の奥を指さした。
「山下がもう変身していた」
「もうって、……女の子?」
「そうだ」
 驚愕して走り出そうとする僕を、篠塚がつかんで止めた。
「だからいまお着がえ中なんだって。しばらく待てよ」
 僕の心臓が揺れた。なんで山下がもう変身しているんだ。反射的に篠塚に尋ねようとしたけれど、質問の言葉を僕は飲みこんだ。だって脳が自分で答えを思いついたからだ。
 そんなの決まっている、先週の和久と同じく山下は待たされるのに耐えられなかったのだ。
 出遅れた、なんで気づかなかった、取り残された。頭痛を感じるほどだった。手近な待合いのいすに座って呼吸を落ち着けた。驚きが去ると、感じたのは不思議なことに怒りだった。今朝は和久からのメールで舞いあがって、いっしょに女の子になろうという焦りでいっぱいだったのだ。出鼻をくじかれたのがショックで、やり場のない怒りを感じたのかもしれない。
 山下、なにを勝手にTSしているんだよ……。
「和久は?」
「着がえにつきあっている」
 やっぱり女の子の先輩である和久が助けに入れば、山下は安心して変身できたんじゃないか! 僕があたふたしたのも無駄だった。
 急に篠塚がふり向いたのにあわせて見ると、奥から和久が出てくるところだった。僕たちに向かって、和久は優しい声で報告した。
「だいじょうぶ。ちゃんと女の子になっていたよ」
 それを聞いた篠塚は急に笑顔になって、よっしゃ、と聞こえる声で言った。
「TS薬、まじでよく効いているじゃねぇか! 晴れて山下も女の子だな! くぅっ、俺はうれしいぜ!」
 そうだ、篠塚みたいなのが正しい反応だ。なのに僕の頭に思い浮かぶのは違う感想だ。和久は山下の局所をたしかめたんだな。山下がTSした最初の反応を堪能したのも女同士で、か。先に女になったからって役得だな……。
 僕がいつまでも座っていると、篠塚と和久は不思議そうに僕を見た。
「どうした? 会ってみようぜ。山下が女の子だぜ」
 僕はしかたなく立ちあがった。気分を切りかえないといけないようだ。たしかに山下が女の子になったのではないか。クライマックスだ。「これが最後」というくらい盛りあがらないといけないはずだ。
 固い動きで、僕は個室の扉をくぐった。なかには山下がいた。いつものソファに座っていて、カラオケボックスの机には着がえ用のかばんが置いてある。良かったと思ったのもつかの間、僕はわずかな異変に気づいてしまった。長い髪がかつらっぽくない。まさか地毛に生えかわったのか?
 余計なことに、和久がすばやく駆けよって山下の横に座った。
「ほら、上を向いて。みんな来たよ」
 山下はゆっくりと上を向いた。篠塚の顔を、それから僕を見た。
「こんにちは」
 誰の声だ。山下の声は、そりゃ男子高校生の範囲に入っていたけれど、高くてかわいらしい声をしていた。いま聞こえた声は、女子の声ではあるが聞き慣れない。
 自分で顔をしかめてしまっているのが感じられた。だめだ、篠塚のようにうれしがらないといけないのに。薄ら笑いをうかべようと努力しながら、僕はテーブルの離れた席についた。
 篠塚ははしゃいで質問している。
「どうなんだよ。胸は? それ、本物か」
「え、えへへ」
 山下が身をよじっている。ブラウスを押し上げる胸は、そんなに大きくなかった、パッドと同程度だ。手の太さも前と変わらないか……。いちるの望みをかけて僕は言った。
「あんまり変わらないな」
 僕の発言を和久がとがめた。
「ちょっと、それって問題発言だよ? すごくかわいくなったじゃない」
「え」
 和久の言い方のほうが問題だと思う。なぜなら「かわいくなった」のなら、以前の山下がかわいくないということになるからだ。
 篠塚は僕の発する違和感に気づいたか気づいていないのか、さらにはしゃぎ声をアップさせた。
「スカートはどうしたんだ?」
「えっと、こんなの」
 山下が立ちあがり、フレアスカートの下にひざこぞうが見えた。毛もない、かわいらしい生足でくるぶしまでの靴下を履いている。ふくらはぎの脂肪のつき方が男とは違うだろうか。いつまでも見つめていたくなる足だ。
「うん。山下はもともといい服を持っていたからな、女になってもさすが似合うな」
「ありがとう! 体のサイズ、ほとんど変わらなかったね、意外だよね」
「意外すぎるぞ、それ!」
 なぜだろう。三人は楽しく話しあっている。山下が激変したとは感じないのだろうか? 僕は歯を食いしばって山下を見た。発せられる匂いをたしかめた。ひじがソファを打つ音、靴が床をこする音を聞いた。そうやって僕は「山下」の痕跡を探し続けた。
 目の前に山下がいるのか、僕には分からなくなっていた。
 カラオケボックスの天井、うす暗い辺りに僕の意識がただよい、現実感のない会合を見下ろしている。山下が言う。
「……新井くん、下を向いていて大丈夫?」
 あらいって誰だ。和久がとりなすように言った。
「新井ってば、みつるちゃんがいきなりかわいくなったから照れているのよ」
 僕は、他人の考えを見当違いに代弁して場を納得させようとする人間を侮蔑することにしている。そんな僕を天井裏の僕自身が見て、
(ほぅら、新井のせいでさっそく人間関係が気まずくなったぞ)
 と、指をさして笑っている。
 石のような僕に構わずに、山下が立ちあがって宣言した。
「智美ちゃんのことは智美ちゃんって呼んだけれど、僕のことはやっぱり山下みつるって呼んでほしいな」
「みつる? みつことかみつえじゃなくていいのか」
「うん! 僕は僕だからみつるでいいんだよ。お母さんにもそうお願いしたからね」
 ボーイッシュで健気な女の子が言っているのを、僕はただじっと聞いているしかなかった。
「おっけー、みつるちゃん!」
「うん! ……それじゃ、つぎは篠塚くんと新井くんのばんだね」
 いきなり話を振られて、僕は意識を目の前に戻した。
「つぎって?」
 その返答がますます気まずかったのか、山下が寂しそうな顔をして、和久が僕の袖を激しく引っぱり、篠塚が引きつった大声で笑った。
「つぎってそりゃTSだろうよ! 俺たちに、女になってみるかと聞いてくれているんだよ」
 僕にはその話が、なにをいまさらというふうに聞こえた。

 しかし事態は予想以上の展開を迎えた。僕の携帯が呼び出し音を発したのだ。家族からだった。僕は電話なんて無視して山下にはっきり謝るべきだった。良かったね、山下はかわいいよ、僕も山下みたいになりたいと。
 しかし僕は電話に出た。この時刻にかけてくることの意味を知っていたから。
 父さんが、電話の向こうで言った。
「なぁ、そろそろ時期なんだが。来週の水曜日はどうだ」

<つづく>

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