fc2ブログ

Latest Entries

男の娘 裏アルバイトの罠

男の娘 裏アルバイトの罠 DMM版
男の娘 裏アルバイトの罠 DLsitecom版

買いました!
うーん、イラストは良いのですが、タイトルと作品の関連性が今一つ見えなかったり、いきなり緊縛シーンから入ったり、ご主人さまの愛がぜんぜん見えなかったりとそれ以外の要素で盛り上がりづらかったです。ストーリー、テキストも加点要素は特には無く……同人考慮してもやや割高、と評価します。

いつだって僕らは 2-21  by 猫野 丸太丸

21.
 最後に山下に会うに当たって、僕はベストの体調で臨まなければいけないはずだった。なのに僕はずっと闇のなかをさまよっていた。受験勉強にかこつけて夜更かしすればそのまま眠れず、魂が天井裏を飛び越える毎日だった。
 ある日など、ベッドで目を開くと枕もとに国吉さんが立っていた。
 国吉さんは無表情のまま僕に話しかけた。
「どうして君はまだ女の子じゃないんだ? TS薬をもらって何週間も経つのに」
 僕はベッドから出ずに答えた。
「知りませんよ、そんなこと」
「飛びつかんばかりに欲していたこともあったじゃないか」
「そうでしたっけ知りません」
 夜中に現れた国吉さんなんてまともに相手する必要もない。ぶっきらぼうな僕の返事に、国吉さんは唇だけで苦笑した。
「じゃあ僕が教えてやろう。新井はTSしたいんじゃない。性同一性障害でもないんだ」
「そうですね」
 国吉さんの言うことは正しい。僕は性同一性障害ではない。性同一性障害の人ほど、胸を張って自分を女性だと信じられないし、主張することもできない。
「そしたらなんだっていうんですか」
「新井は女になってなにかをしたいわけではない。女の生活を楽しみたいと思ってはいない。そもそも、自分の人生を良くしたいとも思っていない」
 黙りこむ僕の周囲を国吉さんが回りはじめる。
「君はただひたすらに、女になった自分自身が好きなのだ。女になった自分自身と触れあい、愛しあい、交合したい。そんな妄想をしたいから、山下を代理に立てて、女になった山下を自分の代わりに愛しているんだ」
「それで?」
「この世で君が好きなのは、女になった自分自身だけなんだよ。だから愛せるのは自分と同じものであり、他人を愛せない。自分と違う者を許すことができないんだ。君はオートガイネフィリア、自己女性化愛好症※の極端なタイプだ」
 そこまで言って国吉さんは消えた。僕は寝返りをうつ。べつに国吉さんの生き霊が現れたわけではない、全部僕自身の妄想だった。
 考えてみれば、僕は山下を守っている気分になるために国吉さんを仮想敵として利用したのだった。僕が知っている「国吉さん」はゲイで、欲望のままに男を襲い、山下にも手をかけた男だった。でもそれは半分以上、僕が妄想で想像した姿だ。
 現実の国吉さんは日々、巡る季節ごとに生き、いろいろなことを考え、山下と触れあうことで心を変えたりしたただの人間だ。
 それが許せなかった。山下はお姫様、国吉さんは姫様に危害を加えようとする敵で、僕は姫様のための騎士に――、いや、違う。山下と同じ姫になりたかった。
 僕には他人のことが分からない? 何回言われてもそうだし、分からない以上、それ以上のことが分かるはずもない。
 ありのままの他人を愛することなどできはしない。

 そして土曜日の朝。カラオケボックスに来いとの篠塚からのメールが来た。
 なにを着ていこうと思って、なるべくおしゃれに見えるシャツとジーンズを着た。TS薬の箱を久しぶりに開けた。中身が入っているのをたしかめてから、かばんに放りこんだ。
 自転車を握りしめて、安全運転しようと道を選んで漕いだ。途中車にクラクションを二回鳴らされたけれど偶然だろう。カラオケボックスは初めて来たとき――冬となにも変わらずそこにあり、相変わらず儲かっていなそうだった。
 店に入り、自動販売機に向かった。夏らしく無糖のサイダーを買う。ふり返ったところで女性がいることに気づいた。少女というより女性、かな。赤いTシャツを着た大柄な人で、僕の顔を見るや親しげに右手を挙げた。恐ろしく馴染みのある動作だった。
「あ……、そうか、篠塚か」
「おっす」
 太い腕で手招きされたので隣りに座った。女性の顔は、正直言えば篠塚のお母さんといった感じだった。はっとする美しさがない代わりに、見る人が安心できる優しい瞳を持っていた。眉とか、鼻とか、部分部分を切り取れば男に見えなくもないけれど、全身を眺めれば間違いない、完璧な女性だ。僕は万感を込めて言った。
「とうとう篠塚も女になったんだな」
「そういうおまえは、まだ男なんだな」
「まぁな……。なんだよ、胸、でかいな」
「でかいだろ? ふくれあがったときはまじでかと思った」
 左右を揺すったものだから、僕と篠塚は笑った。
「女だけあってかわいいな。いつ飲んだのよ」
「水曜日。直後にメールも送ったんだぜ?」
「ごめん、いろいろあってぜんぜん読んでいなかった」
 和久と山下のことを尋ねると、ちょっとなぁ、と言って篠塚は顎をかいた。
「和久が悲しんでいて、山下がなだめている」
「なんで?」
「直接尋ねてみるか。さっきよりは落ちついたころだろう」
 つまり和久が取り乱していて、女の子なりたての篠塚では手がつけられず、優しい山下が介抱しているわけか。僕はなんとなく篠塚のほうに親近感が湧いた。他人の気持ちをくむのがうまい人たちは、そういう人たちだけでつるめばいい。
 個室の戸を開けば、たしかに篠塚から聞いたとおりの状況になっていた。和久が左ほおを押さえて泣いている。山下がその横に座り、ゆっくりと話しかけていた。立ち聞きでは内容が分からなかった。
 山下は僕らに気づいて、明るく挨拶をした。
「おはよう! 新井くん」
「どうしたんだよ和久……じゃなくて智美ちゃん」
 話していい? と本人に許可を取ってから、山下は言った。
「殴られたんだよ。自分のお父さんから」
 僕は顔をしかめた。和久が、父親に殴られた? 理解があると言っていた父親に、だろうか。
「どうして」
「智美ちゃんが女の子になったこと、納得がいかなかったんだって。智美ちゃんがわざと薬を飲んだことを知ったら、怒って」
 そこで和久が頭を振った。
「ひどいよ、あたし女の子なのに! 分かってくれると思ったのに、なんで!」
「……まぁ、ね」
 僕には納得がいった。和久のような立派な男がいきなり女性化したら、理解があるとはいえやはり家族は不安を感じていたのだろう。
 しかし和久はそんなことを予想もしなかったから逆にショックを受けたのだ。
 しばらく山下が話しかけていたが、事態が良くならなかったので僕は口をはさんだ。
「TSものでもあり得る展開じゃないのかな、これ」
「どうしてよ、親が女の子の顔をたたいたんだよ? お母さんだって殴っちゃだめだって言ったのに。男の暴力なんて……、信じていたのに。最低の父親だよ!」
 僕はかちんと来た。自分の父親を最低と言うのか。
 同じ台詞を横で聞いているのに、山下や篠塚はただ和久の言うことを聞き、うなずいているだけだ。このままではらちが明かない。僕はゆっくりと言った。
「智美ちゃんさぁ。お父さんも親なんだから、子供のことを心配していたと思うよ? 変身直後にすごくあわてた様子だったって、智美ちゃん自身も言っていたじゃないか。今日だって、心配してくれたからたたいたんじゃないかな」
「どうして心配だとたたくことになる? そんな必要ないよね! 感情的になって、逆らうのを許さないで。いばって女の子を殴るのって最低じゃない!」
 和久智美よ。最低というのは、最も低いと書くのだ。最も低いというのは、僕の姉よりも低い、■■■■■■……、という意味なんだぞ?
「さっきから女の子を殴るからどうとか、それって逆差別じゃないか。女だからどうだって言うんだよ。だいたい和久はもともと男だろ」
 しかしその言葉に反駁したのは、山下だった。
「だめだよ、新井くん。僕たちはいまの自分らしく振る舞えばいいんだ。もと男だからこうしなければいけない、もと女だからこうしなければいけないなんてこと、ないんだよ」
 なぜだ。最初に男だから女だからと言いだしたのは和久ではないか。どうして僕が責められるのか。女の連帯感、という言葉が頭に浮かんだ。男がどんな理屈を並べたところで、女は女同士連帯してかばい合うのだ。
 そこで和久がほおからハンカチをどけた。赤く腫れ上がった女の子の顔に、僕はどきりとした。たしかにそれは、あってはならない顔だと理解した。きっと和久の父さんも殴った直後に後悔しただろう。しかし次の和久の言葉で、僕は謝るチャンスを失った。
「このあいだから新井、おかしいよ。あたしたちの正体を疑ってきたり、ぐずぐず理由をつけてTSを引きのばしたり! どうしてわざとそんなことするのよ」
「おかしいなんて言葉、他人にやすやすと使わないでほしい。それと問題は和久と父さんのことだろ、話がそれているぞ」
「父さん、父さんって、根拠もなく肩を持って! 新井に他人の家庭のなにが分かるのよ!」
 分かるよ。僕の頭のなかには父さんの後ろ姿が浮かんでいる。どんなにつらくても、どんなに重くても、責任を背負うのが父さんじゃないか。
 しかし僕は和久に、そのことを伝えられなかった。
「だいたい、新井はみつるちゃんの前で父親がどうこう言うの、どれだけ残酷か分かっているの。みつるちゃんって優しいからなにも言わないけど」
「……なんだよ、それ」
「どうしてみつるちゃんが、小さいときから女の子になりたかったのに男子校に入ったと思う? この子の父親が、みつるちゃんを男らしくしようと考えてむりやり男子校に入れたんだよ。 心配しているからって、親だからって許されることなの?」
 どっと脱力がきた。もちろん知らない話だ。僕は山下を見た。山下は答えず、和久がただ
「みつるちゃんに問いただしたりしないでよ? 非常識」
 と言ったのを聞いただけだった。
 そういえば山下はいつもお母さんといっしょにいて、お母さんの手伝いをした話はするけれど、父親の話をしたことがなかった。本当に仲が悪いのかもしれない。まさか同じ家に住んでいない可能性もあるのか。
 いずれにせよ僕はまた、他人の事情も知らずに放言して他人を傷つける男になったのだった。世の父親を弁護しただけでご覧の有様とは、なにが悪いのか。やっぱり僕には、泣いている人に話しかける資格すらないのか。
 最後にそんなことが分かるのも皮肉なものだ。国吉さんの「山下がどういうタイプの人間か、直接たずねてみたかい?」という言葉を思い出した。僕は山下から知識を引き出せず、友達になれるフラグを折ってしまったのだ。
 気づくと篠塚が僕を後ろへ引っぱっていた。僕と篠塚は個室を出て、静かな廊下で向かいあう。
「なぁ、事情はあるかもしれないが和久に謝ってくれよ。こんなことでケンカしても意味ない」
「智美ちゃんが父親に謝るのが先だろう」
「なんでそうなるのよ!」
 僕は篠塚から目をそらし、近くのいすに座った。篠塚は僕をつかんで止めようとした。その腕の弱さにぞっとした。もはや篠塚も女の子、あっちがわの人間なのだ。
 僕という加害者に傷つけられる側なのだ。それでも篠塚は言った。
「新井。いまからでも薬、飲んじゃわないか? 女の子になっちまえよ、そしたら細かいことなんてどうでもよくなるさ。みんなでおしゃれして出かけようぜ」
 僕らが出かけて、後に残された父さんはどうなる。僕まで姉みたいになったら、父さんはどうしていけばいいんだ。僕の脳裏に、背中を丸めた父さんの後ろ姿が映った。
 父さんにも、山下にも寄り添えない。人生は、寂しい。
「なぁ、篠塚。……もしも僕が女の子になったら、ぎゅって抱きしめてくれる?」
 篠塚は少し考えてから首を振った。
「それはだめだ」
 加害者の卑怯さをなじられたような気がした。都合のいいときだけ誰かに依存して寂しさを紛らわせるのは男の甘えだ。僕はTS薬の箱を取り出して握りしめる。そして決意した。
「止めておくよ、TSは」
 篠塚は黙ってうなずいてくれた。残念だがしかたがない。男や女には趣味や嗜好でなれるものでもないのだ。
 かえってすっきりした気分になって、僕はかばんを持ち直した。
「TS薬、返そうか。篠塚たちのほうが薬をなにかに使うかもしれないだろう?」
「それもだめだ。自分の人生選択だったんだから、自分で片づけてくれ」
 僕は銀の小箱を握ったまま、日の当たる方へと歩きはじめた。
 玄関では美濃さんが僕を呼び止めてくれた。びっくりするほど優しい顔で言ってくれる。
「ちょっとのケンカで諦めてしまっていいの? 大事な友達なんでしょう」
「ごめんなさい。いまに始まったことじゃないんです。僕の人間性の問題ですから」
 そう答えて、僕は篠塚のところから去り、美濃さんのもとからも去った。
 建物の外に出た。土曜日の昼前、強い日の当たるアスファルトに立つ。誰もいない静かな裏通りで僕は思いきり伸びをして、熱い空気を吸った。いままでのことが全部、洗い流される気がした。
 さあ、誘われてここに来るより前の状態に戻るのだ。冬も春も夏も、あったことを帳消しにしよう。せめて僕が与えた被害を、皆が忘れてくれることを願うのだ。

 足を止めてふり返った。カラオケボックスの前には誰もいなかった。せめて和久が立っていて「そんなことだろうと思ったよ」と捨て台詞を吐いてくれれば格好がついたのだが。
 また歩き出す。帰る家があるだけラッキー、今日を悲劇と呼ぶのはおこがましい。TS薬はどうしようか。国吉さんに飲ませれば面白いだろうし。他にも、TS以外にも面白い趣味くらいあるだろう。
 そしてもう一度足を止める。ふり向く前に背中に跳びつかれた。
「つかまえた」
「……なぜ」
「新井くんは僕を助けてくれた。こんどは僕が助けるばんだよ」
 白くてかわいい両手が、僕の胸に巻かれていた。背中にはふたつの柔らかいものが当たっている。ふりほどいたら壊れてしまいそうで僕は動けない。
「僕は山下を助けたりしていない。助けるふりをしていい気になりたかっただけだ」
「助けられた方からすればどんなつもりでもうれしいよ」
「僕がいれば山下も傷つくだけだぞ」
「そうかもしれない。でもその発言って、新井くんが僕の傷のことを気にしてくれるってことだよね。世界でいちばん、気にしてくれているよね」
「まさか」
「だからゲームセンターにも喫茶店にも、いちばんに駆けつけてくれたんじゃないか」
 駆けつけたことがあっただろうか。思い出そうとした。あったかもしれない。
「山下は傷の意味を分かっていないよ。山下が他の連中と平穏無事に暮らしているよりも、苦しんで苦しんで僕を頼ってきてくれるほうが、僕にとってはうれしいんだぞ?」
「ナイフを振り回すのは楽しかったの?」
「……死ぬほどつらかった」
「じゃあ新井くんは僕といっしょに苦しんでくれたよ」
「関係ない! 加害者はしょせん加害者だ! そうでなくなろうとするなんて責任のがれなんだよ!」
 意味不明な発言だっただろう。でも山下は、このときこそしっかりとした声で答えてくれた。
「信用っていうのはね、この人にならたいして苦しめられないだろうって考える計算のことかもしれない。だけれど信頼はね、この人といっしょに苦しむならば、苦しくなってもかまわないと思う決意なんだ」
 山下の手が肋骨の上でもぞもぞしている。実体として感じられる。熱い。手を握れたらどれだけうれしいか。
 女の子の山下なんだぞ! あんなに憧れた女の子の山下がすぐ後ろにいるのに、どうして僕は顔を見ることもできないんだ。僕は姉のありがたい言葉を思い出す。
 ちゃんと会話ができないようなつきあいなんて、正常な人間関係じゃない。会話と意思疎通が大事なんだ、目を見て話せ、目を見て話せ、目を見て話せ。そんなことだから友達ができないんだという批判を思い出さなければならない。
「信頼に意味なんて、ない。山下が無傷じゃなきゃ意味はないんだ」
「僕は新井くんの傷のことが気になるな。水曜日につらいことがあったんだよね」
「なんでいまさらそんなことを」
「ごめんね、智美ちゃんにかかりっきりで気づくのが遅れて。新井くん、TSがそっちのけになるくらい大変なことがあったんでしょ。だから悲しんでいた」
「……悩みもTSも根っこは同じ、関係はあるんだ。僕のTSはいやなことから逃げるためだったから。皆みたいに女の子の人生を生きたかったわけじゃない」
「それでもいいよ! 僕は新井くんにいてほしいんだよ」
 違う、甘い言葉に調子に乗っている場合じゃない。
 他人から見れば暑い夏の日に、道路の真ん中で高校生男女が抱きあっているように見えるだろう。でも会話内容は高校生男女に似つかわしくない。僕は逃げようとあえいだ。
「山下のお父さんのことは、どうするんだ」
「お父さんのおかげで僕は新井くんや篠塚さん、智美ちゃんに出会えたんじゃないか。みんなで女の子になって男子校に通ってしまえば大成功だよ」
 僕はいいかげん認めるべきなのか。この世には他人を攻撃し追い落として嫉妬を誘うポジティブさと、そうでないポジティブさがあることを。
「それでも僕は山下のことが分からないんだよ」
「新井くんが思ったとおりに僕を感じていいよ。僕を見ていて、聞いていて。話すの、無理しなくていいから。僕のそばにいて」
「山下が女の子になったことすら僕は素直に喜んでいないんだぜ。僕は山下の敵だ」
「敵だっていいよ。本当はこの世の中に、ぜったいできないこととか、ぜったい許せないことなんてないんだ。証明してみせるから」
 じっとりと湿った僕の背中、そこに小さな口をつけて、山下がすぅ、と息を吸いこんだ。いやだ、止めてくれ。国吉さんに向けたみたいな心を、僕に向けないでくれ。
「新井くんが幸せな女の子になれるなら、僕、山下みつるは男に戻ってもいい。自分が一生男の子のままでもいい!」
「ばかやろぉっ!」
 渾身の力をこめて僕は怒鳴った。
「いちばん言っちゃいけないことだぞ! 山下が男のままだったら、僕らはいままでなんのためにがんばってきたんだよ! なんのために四人集まって走り回って戦ってきたんだよ! 簡単に女を捨てるなんて、僕はともかくほかのふたりや……、なにより自分の人生に対して裏切りだろ!」
「捨てていないよ! 諦めてもいない。たとえこの身が男でも女でも、僕は僕だ!」
「うそだ! この八方美人、ごまかしうそつき日和見! 一生被害者やってろ!」
 山下は黙った。言い過ぎたかと思ったのもつかの間、巻きついた腕に力がこめられる。
「僕が僕である証拠。僕は、かわいいよ」
 うそだ。山下の手のひらが大胆にも僕の胸に当たっている。山下の胸は僕の背中に当たっている。
「ほら、どきどきしてる。新井くんはかわいい僕が大好きなんだよ。新井くんが好きでいてくれるかぎり、僕はずうっとかわいいよ」
 分かるか、新井。これが人間の自信だ。僕にはないものだ。
「新井くんは僕といっしょにいていいんだよ」
 山下がそんなに素敵なことをしたら、僕もできないことをしなければならなくなる。山下が最高の憧れである限り僕は山下になりたくてしかたがないんだ。
 僕が恨み、苦しみ、後悔しながらしてこなかったこと。
 僕は姉さんを愛さなければならない。

 いままで体験したことのないほどの激しい怒りと後悔が口のなかで巻き起こり、食いしばった歯を通して強烈な苦みがのどの奥へと流れていった。胸がけいれんしてせきこむ。異変を感じて山下の両手がゆるんだのに合わせて、僕はふり返った。そこには山下がいる。本当に小さくてかわいい女の子の山下が、いる。
 その向こう、焼けたアスファルトに銀の小箱が、陽光を反射しながら転がっていくのが見えた。遅れて驚きの声が聞こえた。
「……ほわぁ? なにこれぇ!?」
「僕の、おっぱい」
 なった、なった。世界一の幸せなTSっ娘になった。だって僕は愛する人を抱きしめることで、ふくらんでいく胸を実感することができたのだから。


オートガイネフィリア、自己女性化愛好症:男性が自身を女性だと思うことにより性的興奮する、性的倒錯の一種。あまり知られていない言葉であり、言葉の定義も揺らいでいると思われる。猫野は次の3つの面でオートガイネフィリアを考える。

1.性同一性障害との相違:一部の病院では性同一性障害者という診断を受けるときに、オートガイネフィリアではないことを証明する必要がある。どのようにかというと、女性になりたい気持ちが純粋なもので、性的興奮を伴わないことが必要なのだ。しかしこのことで、オートガイネフィリアは性同一性障害の「偽者」として扱われているのではないかと私は思う。また性的興奮が「まじめな(?)性同一性障害」よりも下等なものと扱われる可能性を危惧する。

2.性指向にからめた考え方:心が女性の性同一性障害者は女性と同じなのだから、パートナーとして男性を選ぶはずだ、女性になりたい気持ちがあっても好みが女性に向いている場合は性的倒錯(オートガイネフィリア)だとする考え方。しかし性自認(自分をどちらの性だと考えるか)と性指向(どちらの性を好きになるか)を別々のもの、どんな組み合わせも可能だと考えれば「自分を女だと思っているけれど恋人は女の子」もありえるのではないか。

3.オートガイネフィリアそのものについて:オートガイネフィリアは性的倒錯のひとつと考えられ、他の倒錯――フェティシズムやスカトロジー、死体性愛などと同列に並べられている。倒錯=趣味であるかぎり、趣味ネタが好きな人も嫌いな人もいるはずだ。どんな気持ちもこじらせれば危険で有害になるし、治療や矯正が必要になることもある。逆に自分の持っているレアな気持ちとうまくつきあっていくこともできるのではないか。
 そうするためには、自分の気持ちを自分で探求する必要があると私は思っている。

<つづく>

【無料】(女体化・レズ)おもちゃ責め催眠~男女共用版~

【無料】(女体化・レズ)おもちゃ責め催眠~男女共用版~

なんだか続きますね。
由依ちゃ~ん!

試したので感想などを。
無料ではありますが、深呼吸、脱力の催眠導入あたりは丁寧に作ってあります。そういう点では催眠初心者にやさしいですね。寧ろ無料作品だからこそ、かもしれませんが。
内容は概ねタイトルの通りです。タイトルだけでは分かりづらい所としては、「言葉責め」でしょうか。それなりにM寄りな方が良いです。
それとロングバージョンもあるのですが、注意書きにある通り催眠よりもエロに重点が置かれているのであまり入り込めなかったです。それに単調なので途中で飽きる、慣れてしまうと逆効果かな、と。
「男女共用」とある通り女性向け暗示もあるようですが、私はそっちの方は試していないのでコメントは控えます。やることは同内容のようですが。
道具と言葉で責められて酷い事をされてしまいますが、あくまでプレイの一環であって好きだからこうしてくれる、という主旨のことを繰り返し催眠暗示のワードとして言ってくれるのは私にとっては良かったですね。無料である点も加味すれば結構な良作だと思います。(山祢由依)

【無料】(女体化・レズ)おもちゃ責め催眠~男女共用版~

«  | HOME |  »

FANZAさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

FANZA専売品コーナー

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2012-12