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アウターゾーン リ:ビジテッド 1 2
表紙に惚れ購入。
久々のミザリィさんを堪能しました。
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代理出産!? (4)
(4)-------------------------------------------------------
できれば個室を空けて欲しいという、看護師の提案を受け入れ、おれたちは4人部屋へと移された。
正確に言えば、出産経験のある一条氏と神代氏の部屋に、おれが引越しした。
初産(悲)ということになるおれは、気の置ける経験者が傍にいたほうがいいだろうという、看護師のアドバイスにも従った形だ。
普通はおれのような被験者は、24時間完全看護の個室に専属の助産師がついて、数日は様子を見ながらの入院生活となる。
生物学的な常識ではありえない、初めての経験となると、精神的にも肉体的にも大変なストレスで病気になってしまう例も多いとのことだった。
市橋さんは元々女性ということで入院はせず、通院でやってきて、講習や検査の時とかだけ、一緒ということだった。
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
身の回りの荷物といっても、数着の下着の替えと、洗面用具などの入ったかばん一つだけ。
体を入れ替えられたばかりの妊夫は転びやすいからということで、移動は一条氏が車椅子を押してくれ、荷物は神代氏が運んでくれた。
だが、昨日、体を入れ替えられた妻は、平気な顔をしてすたすたと歩いて帰っていってしまった。そのことを看護師に言うと、男が女になるのとその逆とでは、体に馴染むのに差があるのだという。本当に不公平な話だ。
部屋に着き、同室となる、お二人にあらためて挨拶をした。
「いいか? オレのことは『神代さん』じゃなくて、『高明』って、下の名で呼べよ? オレは心まで女になったわけじゃねぇからな」
「私は別に、苗字でも名前でもどちらで呼んでくださっても……“瞳さん”と呼ばれるのにも慣れてしまいましたから」
神……高明氏は腰に両手を当ててふんぞり返りながら。
一条氏は、はにかむような品のいい笑顔でそう言った。
「お二人ともやっぱり最初の出産のときは、大変だったんでしょう?」
「オレはそうでもなかったな。悪阻も治まってた頃に体を入れ替えられたんで、そっちはマシだった。だが体の違和感がとんでもなくてよく転んでたよ。あの看護師の奴に何度も怒られた。『流産したらどうするんですか! 今度転んだら、退院するまで車椅子ですよ!』ってな」
異文化圏の妻を娶っただけあって、言葉と同時に身振り手振りも大げさに、神代氏が言う。
口調こそは男性的だけど、その愛らしい容姿では、小動物的な可愛らしさを強調しているだけに見えますよ?
「私は、妊娠初期に交代しましたので、悪阻がひどくて大変でした。週に2度は点滴でしたね。さすがに今回は2度目なので、だいぶ耐えられるようになりましたけど」
と、こちらはややおっとりとした話し方の、一条氏。
この人、ホントに元は男性なのかな?
妊夫同士のたわいない会話をしていると、病室のドアをノックしながら、二人の男性が入ってきた。
「失礼するよ」
「お、オトウサマ」
オトウサマ? って誰の?
「具合はどうだい? “ソフィ”」
“ソフィ”って誰!
「ええ、順調よ。あなた」
誰の声だ? まるで妖精が囁くような可憐な……ってこの流れからすると、高明氏……正確には高明氏の体の本来の持ち主で、つまり奥方の名前か?
急に声音が変わったから、一瞬誰だかわからなかった。
あっけにととられていると、一瞬、高明氏がこちらを振り向き、ギロッとおれのことを睨みつけながら人差し指を口に当てた。
余計なことは言うなと言うことらしい。
隣のベッドを見ると、一条さんはシーツをぐっと掴んでうつむいたまま何かをこらえている様子だった。
<たぶん、つづく> 応援メッセよろしく!
できれば個室を空けて欲しいという、看護師の提案を受け入れ、おれたちは4人部屋へと移された。
正確に言えば、出産経験のある一条氏と神代氏の部屋に、おれが引越しした。
初産(悲)ということになるおれは、気の置ける経験者が傍にいたほうがいいだろうという、看護師のアドバイスにも従った形だ。
普通はおれのような被験者は、24時間完全看護の個室に専属の助産師がついて、数日は様子を見ながらの入院生活となる。
生物学的な常識ではありえない、初めての経験となると、精神的にも肉体的にも大変なストレスで病気になってしまう例も多いとのことだった。
市橋さんは元々女性ということで入院はせず、通院でやってきて、講習や検査の時とかだけ、一緒ということだった。
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
身の回りの荷物といっても、数着の下着の替えと、洗面用具などの入ったかばん一つだけ。
体を入れ替えられたばかりの妊夫は転びやすいからということで、移動は一条氏が車椅子を押してくれ、荷物は神代氏が運んでくれた。
だが、昨日、体を入れ替えられた妻は、平気な顔をしてすたすたと歩いて帰っていってしまった。そのことを看護師に言うと、男が女になるのとその逆とでは、体に馴染むのに差があるのだという。本当に不公平な話だ。
部屋に着き、同室となる、お二人にあらためて挨拶をした。
「いいか? オレのことは『神代さん』じゃなくて、『高明』って、下の名で呼べよ? オレは心まで女になったわけじゃねぇからな」
「私は別に、苗字でも名前でもどちらで呼んでくださっても……“瞳さん”と呼ばれるのにも慣れてしまいましたから」
神……高明氏は腰に両手を当ててふんぞり返りながら。
一条氏は、はにかむような品のいい笑顔でそう言った。
「お二人ともやっぱり最初の出産のときは、大変だったんでしょう?」
「オレはそうでもなかったな。悪阻も治まってた頃に体を入れ替えられたんで、そっちはマシだった。だが体の違和感がとんでもなくてよく転んでたよ。あの看護師の奴に何度も怒られた。『流産したらどうするんですか! 今度転んだら、退院するまで車椅子ですよ!』ってな」
異文化圏の妻を娶っただけあって、言葉と同時に身振り手振りも大げさに、神代氏が言う。
口調こそは男性的だけど、その愛らしい容姿では、小動物的な可愛らしさを強調しているだけに見えますよ?
「私は、妊娠初期に交代しましたので、悪阻がひどくて大変でした。週に2度は点滴でしたね。さすがに今回は2度目なので、だいぶ耐えられるようになりましたけど」
と、こちらはややおっとりとした話し方の、一条氏。
この人、ホントに元は男性なのかな?
妊夫同士のたわいない会話をしていると、病室のドアをノックしながら、二人の男性が入ってきた。
「失礼するよ」
「お、オトウサマ」
オトウサマ? って誰の?
「具合はどうだい? “ソフィ”」
“ソフィ”って誰!
「ええ、順調よ。あなた」
誰の声だ? まるで妖精が囁くような可憐な……ってこの流れからすると、高明氏……正確には高明氏の体の本来の持ち主で、つまり奥方の名前か?
急に声音が変わったから、一瞬誰だかわからなかった。
あっけにととられていると、一瞬、高明氏がこちらを振り向き、ギロッとおれのことを睨みつけながら人差し指を口に当てた。
余計なことは言うなと言うことらしい。
隣のベッドを見ると、一条さんはシーツをぐっと掴んでうつむいたまま何かをこらえている様子だった。
<たぶん、つづく> 応援メッセよろしく!