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2600万ヒット記念 「恋人たちの時間」(11)  by.ありす

(11)-------------------------------------------------------

 目が覚めた時、奇妙な違和感があった。
 何かとても大切な事を忘れてしまっているような。
 それに、どうして僕は男なんだろう?
 そんな意味不明な違和感があった。
 僕は、誰? 男? それとも女?

「気分はどう?」

 女の人が僕の顔を覗き込んでいる。
 ああ、そうだ、この人は……。

「ハ、ルカ……先生?」
「少しふらふらするかもしれないけれど、ゆっくりと体を起こして……」

 先生の手を借りながら、僕はベッドから起き上がった。

「大丈夫? 頭痛とかは?」
「少し……」

 傍にいた看護婦さんらしき人が差し出した白い錠剤を口に含み、促されるままにコップの水で口の中に流し込んだ。

「あれ? 僕は確か……」
「ごめんねぇ。機械の調子が悪くって、あなたの体験学習は、キャンセルになっちゃったの。でも、単位はあげるから、心配しないで」
「……キャンセル? それじゃ、今は?」
「あなたはずうっと、眠ったままだったの。今日はもう15日よ」

 15日……。帰る予定の日だ。
 まだぼうっとしている頭で、何かとても大切なものを失ってしまったような、そんな感覚が残っていた。

「眠ったまま? それじゃ……、あれ?」

 おかしい。
 何か……、確かに何かあった。
 なにかこう、とても愛おしくて、切ないような……。
 ぱたぱたぱたっと何かが、ひざの上のシーツに落ちて弾けた。

「あれ? なんで、どうして涙が……? こんなに、何で僕、泣いているんだろう?」

 すると先生は、僕のことをぎゅっと抱きしめて言った。

「ごめんなさい。機械が故障したことで、後遺症が出ちゃったのかしら。もう大丈夫だから、泣かないで。落ち着いて。出発まではもう少しあるけど、辛かったら暫くここで寝てても良いから」
「ひっく、ひっく……」

 僕はわけもわからず、深い悲しみだけがこみ上げてきて、泣かずにはいられなかった。

 先生と、他の生徒たちは先にバスで学校に帰っていった。
 僕だけは一人で、迎えに来てもらったタクシーで、直接自分の家に帰宅した。

*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*


 その晩からだった。
 夜寝るたびに、同じ夢を見るようになったのは。
 夢の中で僕は女の子で、男の子に恋していた。
 男の子は自分のよく知っている人の筈だけれども、でもそれが誰かわからなかった。
 
 二人で服を選んだり、食事したり、ベッドでふざけあったり、どこかの山の上の展望台で記念撮影をしたり……。
 どこか遠く感じる、奇妙な感じのする夢だったけれど、決して忘れてはいけないことのような、そんな感じがした。
 そして毎朝、泣きながら目覚めるのだった。

 そんな日が続いて、1週間が過ぎた。
 クラスの中にあった、男子と女子の間の壁は、取り払われていた。
 あの体験学習で、そういったお互いへの遠慮とか異性への抵抗感は解消されていた。
 休み時間には気軽に話しかけあい、係りの仕事も一緒に共同作業が出来るようになった。
 クラスの中に明るい雰囲気が漂い、仲の良いカップルみたいなものも誕生しているようだった。

 ただ一人、体験学習が出来なかった僕を除いて……。
 
 毎晩見るあの夢は、僕を悩ませ、苦しめていた。
 夢の中の自分は、恋焦がれる男の子がいて、その彼も自分に好意を持ってくれていて、だけど現実の自分は男の子で、好きな女子もいない。
 この行き場の無い思いは、一体どこに向ければいいのだろう?

 僕はクラスの雰囲気から、取り残されていた。
 僕に話しかけてくれる女子もいるけれど、夢の中で感じたようなときめきは感じない。
 じゃあ、夢の中と同じように男子と?
 ううん、そんなの普通じゃない。でも……ふっと、胸の中をよぎる、この期待感はなんだ?
 僕は夢の中の自分と同じように、男の子が好きになるとでも言うんだろうか?

 耐え切れなくなった僕は、放課後の進路相談室で、ハルカ先生に悩みを打ち明けた。
 原因は、たぶんあの山の上の施設での体験学習だと思った。
 だから、ハルカ先生に聞けば何かわかるのではないかと思ったのだ。
 確か先生から頼まれて……、でもどんなことを頼まれたのかも、記憶が曖昧だった。

 僕はハルカ先生に、毎晩のように見る夢の話をした。
 そして、今の体に感じている違和感について、どうすればいいのか相談した。

「そう、やっぱり、本当は思い出しかけているのね」
「……」
「あなたには記憶が消える処置がしてあったはずだから、大丈夫かなと思ったんだけど」
「教えてください。僕はどうしてあんな夢を見るんですか?」

 ハルカ先生は、あの山の上の体験施設で何があったのかを、説明してくれた。
 
「それじゃ、僕が毎晩見るあの夢は、本当に体験したことなんですか?」
「全部そうかは、先生にはわからないわ。でも、あの時のあなたは本当に楽しそうだった」

 あれは、きっと本当に体験したことだったんだ……。
 仮初めの体で、仮初めの恋をして……本当に失恋してしまった。

「専門の先生に、相談してみる?」
「専門の先生?」
「あなたがそうなってしまったのは私の責任。だからできる限りのことはするわ」
「……」
「性同一障害という病気があってね。自分の性別に違和感を持ってしまう、心の病よ」
「心の、病?」
「そういう子は、よく本人と相談の上で、治療を受けることになるわ」
「治療? やっぱり病気なんですね。だって……おかしいですもんね、こんなの」
「先天的なものとも後天的なものとも言われているけど、とにかく、その病気に罹った人はとても苦しんで一生を過ごすことが、当たり前だったの。でも、それは昔の話」
「どうすれば治るんですか?」
「心の病は簡単には治せない。無理をすれば人格が崩壊しかねないわ。でも、あなたの場合は、後天的なもので、原因ははっきりしているだから必ず、完治するわ」
「本当に、治っちゃうんですか?」

 先生は少し考え込んでから、言った。

「少し時間がかかるけど、ゆっくりやらないとね。大丈夫、最後まで付き合うから。あなたをちゃんと男の子に戻してあげるから」
「……」
「どうしたの? 心配しなくても、きっと大丈夫よ」
「そうじゃないんです、先生」
「そうじゃ、ない?」
「……僕が、苦しいのは、本当は女の子だったら良かったのにって、ことなんです」
「広樹君……」

 先生は驚いたような顔をした。
 もちろん、僕自身も驚いた。
 感情に任せていってしまったけれど、そのことが逆に自分でもうまく整理が付かなかった感情だったのだ。

「あのね、広樹君。あなたはその……、一時的にそんな思いに囚われてしまっているだけなの。あなたは本当は健康な普通の男の子なのよ。今はちょっと病気に罹っているだけ。それはもちろん先生のせい。本当にごめんなさい」
「でも、でも僕は、そんなの嫌です! この気持ちが病気のせいだからだなんて!」
「広樹君……」
 
 先生は困ったような顔をして下を向いてしまった。
 ぼくも何と言って言いか判らず、黙ったままだった。
 暫く沈黙が続いて、やがて暫くして顔を上げていった。

「本当に女の子になる方法もあるけど、どうする?」
「え? そんなこと、で、でも……」
「性転換処置を受けるのよ。それで性別が変わった子は、そのあとは、新しい自分を受け入れて、とても幸せに暮らしていることも多いわ」
「性転換?」

 担任のハルカ先生は、意外なことを言った。

「今は診断も進んでいるし、社会的にも法律的にもコンセンサスが得られているわ。確かに珍しい病気ではあるけれど……、ううん病気なんていっちゃいけないかもしれない。あなたの本当の気持ちを大切にしなきゃね。でも、先生にはあなたをそんな風にしてしまった責任がある。だから、あなたの意思を尊重するわ。よく考えて、答えを出しなさい。どんなことになっても、先生はあなたの味方になるから」

 先生は辛そうな顔をして言ったけど、僕は今のこの行き場のない気持ちを解決するにはそれしかないと思い始めていた。

「先生、もうひとつ聞いていいですか?」
「何?」
「僕の相手……、あの施設で、僕の相手が誰だったのか、教えてくれませんか?」
「それは駄目。あなただけじゃなくてもう一人、相手の生徒も巻き込んでしまうことになるから、それだけは言えないわ」
「それじゃ、相手の生徒は僕の事は、知っているんですか?」

 ハルカ先生はちょっと考えてから言った。

「誰が相手だったかは知らない筈よ。もちろん後になって聞かれたけれど。VR体にリンクしていた女の子の記憶は残っていないから、捜しても無駄だとは言っておいたわ」
「そうですか……」
「でも、この学校の生徒だということは否定できなかった。あの時あの学校で研修を受けていたのは、うちの学校だけだったから」
「……」
「それより、あなたはどうだったの? あの施設で、あなたがあなたであることを気づかせるようなことを、何か言わなかった?」
「……覚えていません」
「それは、そうよね。でももし思い出したら、その相手の男の子よりも先に、先生に教えて頂戴。これだけは絶対に約束して」
「どうして?」
「さっきも言ったでしょう? もし相手の男の子が、本当のことを知ってしまったら、どう思うか、考えてごらんなさい」
「でも、それじゃ、僕の気持ちは?」
「お願いだから約束して。もし思い出したら、どうすればいいのか、先生も一緒に考えるから。相手の男の子だって、いきなり本当の事を言われたら、きっと困ってしまうと思うの。だから、ね?」
「判り、ました……」

 先生には、そう言われたけれど、僕には自信がなかった。
 夢で見た記憶は、もうかなり鮮明になっていて、あの時感じていた気持ちが昂ぶっていた。
 もし、思い出してしまったら、あの時の衝動を抑えきれるか、自信がなかった。

<つづく>

サイボーグ・L

サイボーグ・L

70年代風?

サイボーグ・L

11月の文庫チェック

11/07 講談社
星海社文庫 2013年のゲーム・キッズ 渡辺浩弐 未定
11/中 キルタイムコミュニケーション
二次元ドリーム文庫 「勘違いしないでよね!アンタの事なんか大好きなんだから!」呪いで本音しか言えなくなったツンデレお嬢様(仮) 上田ながの 662
11/中 フランス書院
美少女文庫 暗殺メイドはヌルヌルです(仮) 青橋由高 未定
11/20 三笠書房
知的生きかた文庫 世界一受けたいお金の授業 和仁達也 600
11/25 オークス
ヴァージン文庫 魔法少女マジカルまりか(仮) まいはまれん 690
11/25 オーバーラップ
オーバーラップ文庫 あやかしちぇんじ!(1)~魔法少女は今日も魔法が使えない~ 栗栖ティナ
11/29 パラダイム
まるち文庫 処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー アンソロジー(12)(仮) キャラメルBOX 730

10/16のツイートまとめ

amulai

RT @iranakatta: 娘が「イチゴジャムをご飯にかけて食べてみたい」というので「好きにすれば」と言ったらかけて食べてた。無言で首を振ったあと、「これで諦めずにいろんなことにチャレンジしたい」と意味不明なほどに前向きなコメント。
10-16 22:26

RT @jgdjgdjgd: 「H・K(変態仮面)」の映画を私の映画師匠にツイッターで勧められて見に行って本当に楽しんで帰ってきたはいいものの後遺症が発症。今までカッコイイと思ってたロボのポーズが変態技に見えて困っているのである。みんなも是非困って欲しい。 http://t.c
10-16 21:15

RT @protokonai: 先日、ヒトカラにて女声を練習していたところ、父親から掛かってきた電話に女声のまま出てしまうという事案が発生。彼女のふりをしてその場は凌いだが、それから両親が彼女の紹介を迫ってくるようになってとても心が痛い。
10-16 19:47

RT @maki_ichi_cat: 女装したらフォロワーが増えた。
10-16 19:31

@mizyukurify 創作を行いその複製物を直接販売し対価を得る。あるいはその創作物によりサイトに読者を誘引した上で販売などを行い対価を得る。自称クリエイターですけどパトロン大募集w
10-16 18:29

@mizyukurify むむ。ではやはり、自分スポンサーで企画検討してみるるー。
10-16 12:30

RT @_cannedbread: 大学時代に「就職活動で重宝される人材は、真面目に授業に参加しノートやレポートをきちんと提出する学生ではなく、ノートを見せてもらう友人の多い要領のいい学生の方です」みたいなプリントを配布されて絶望感に浸った思い出が。所詮コミュ力あるリア充が「社…
10-16 08:00

@mizyukurify @amulai よし、作画に30万、俺の原作はサービスで70万でいっか。100万用意して待っとけ!売上は俺の総取でいいよな!
10-16 07:56

RT @seitekitousaku: オートガイネフィリア(女性化自己暗示性愛)男性であれば「自分は女性だ」と空想(妄想)する性的嗜好。オートアンドロフィリアとも言う。英語:Autogynephilia または Autoandrophilia
10-16 00:47

@mizyukurify 具体化してきたねー。魔法少女を罠にはめようと考えた悪の組織が力を封じるために何の取り柄もない主人公男と取り換え(BODY SWAP)ちゃう。そして、主人公はヒロインピンチな目に会うのだが、魔法少女は主人公の体を女体化して……続きは漫画化かなw
10-16 00:46

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  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
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