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子供の神様 (10) by.アイニス

(10)

「あとは瑞穂ちゃんの髪を整えれば完璧だね。毛先を整えるだけでかなり違ってくるよ」
「しばらく髪は切っておらんからな」
「家に道具はあるから、瑞穂ちゃんさえ良ければあたしが切ろうか?」
「それなら頼めるか」
「うん、任せておいて。伍良君の髪も伸びているからあたしが整えるね。あまり髪型は気にしてないようだからもったいないよ」
「えっ、俺もか!」
 自分に矛先が向くとは思わなかったので、伍良は驚いて声が大きくなった。長くなった髪が邪魔だとは思ったが、男に戻るまでの辛抱だと思っていた。
「うんうん、あたしの家にはリボンとかの小物もあるからね。色んな髪型を試すのも楽しいよ」
「……参ったなぁ」
 純粋な好意で言ってくれたのだから、ここで断るのは気まずい。それに親身になってくれる水咲の気分を損ねるのは得策ではなかった。
「ミサキチには部活の用事もあっただろ。瑞穂を優先して、俺は時間が余ったらでいいよ。迷惑になると悪いからな」
「あたしも楽しいから迷惑なんてことはないよ。伍良君と瑞穂ちゃんは可愛いから、気合が入るなぁ」
 どうにか水咲を押し留めようとしたが、無駄な努力だったようだ。むしろ遠慮したことで逆効果になっている。水咲の情熱に火をつける結果になっていた。
「はぁ、頂上の見えない山を登るようだ」
 まだ女物の服すら試着していない。試練の山が多すぎて、伍良は眩暈がしていた。
「失敗したかなぁ。逃げ帰りたい」
 先にレジで瑞穂の浴衣とサンダルを買った。銭湯で借りた浴衣は、紙袋に入れている。これでもう時間は稼げない。瑞穂の足取りは軽かったが、伍良の足は鉛のように重かった。
「まずは下着コーナーからだね」
「ぐぅ」
 口の中で呻きながら、水咲のあとについていく。色彩豊かな下着が視界に入ると、回れ右したくなった。将来的に恋人ができた時には大人の下着を穿かせようと夢想したことはあるが、伍良自身が女性用の下着を穿く羽目になるとは思わなかった。
「冴えない顔をしておるな。元男としては女用の下着に興奮するものではないのか」
「下着姿の女性を見るのは好きだけどさ。自分自身が着るかと思うとぞっとする」
 女性用の下着を着て喜ぶような変態的な趣味はない。下着コーナーに到着した伍良は、鮮やかな色の洪水に圧倒されていた。直視しているだけで気力が削がれる。
「伍良君はどんな色が好き?」
「色は何でもいいよ。なるべく飾り気がないので頼む」
「えーっ、折角買うのだから、色々と試さないと損だよ。せめて好きな色くらい教えて欲しいなぁ」
 手っ取り早く済ませようと素っ気なく言ったのだが、水咲はそれで納得しなかった。面倒臭い話だが、下着にも気を配らないといけないらしい。男は下着の種類が限られていて選ぶのが楽なのに、女は選択肢が多くて大変そうだ。
「うーん、空の色かな。あ、それに白も好きだぞ」
「青系の色だね。わかったよ」
 サッカーをしていた関係上、青空を見るのが好きだった。方向性が定まったことで、水咲が下着を物色し始める。伍良は虚ろな顔で水咲の様子を眺めていた。
「これなら値段も手頃だし、可愛いデザインかな」
 レースで彩られたブラを水咲が手に取ったので、青ざめた伍良は卒倒しそうだった。派手ではないが敷居が高い。
「お、俺は初心者だからな。シンプルでいい」
「どれにしようか悩むなぁ」
 顔を引きつらせて頼んだが、下着選びに没頭している水咲に声は届かない。水咲の両手にはどっさりと下着の山が抱えられていた。
「これくらいでいいかな」
「それを全部買うのか」
 数え切れない下着の枚数に財布の中身が足りるか心配になった。
「あはは、そんなわけないよ。これから伍良君に試着をしてもらって、いいのを選ぼう」
「……うぁ、マジか」
「微妙にサイズが違うこともあるから、試着しないと着心地はわからないからね。色が良くてもサイズが合わないと辛いよ」
「うぅ、女は大変だな」
「もっとお洒落に前向きになろうよ。色々と試しているうちにきっと楽しくなるから」
 水咲は励ましてくれたが、女の服に喜ぶようになったら末期的な状況だ。男としてはまずい。下着を見ているだけで疲れて、早く男に戻りたいと痛切に思った。
「ふぅ、わかったよ。俺はブラの装着なんてわからないから、一から教えてくれ」
 憂鬱な気分になるが、なかなかできない体験だと思って諦めた。水咲の親切には立ち向かえそうにない。
「うん、任せて。これから必要になることだからきちっと教えるよ」
 試着室で水咲は説明をしながら、青いブラジャーを伍良に着せてくれた。だが、頭が理解を拒んでいる。伍良が正面を向くと、空虚な笑みを浮かべる少女がいた。胸にぴったりと布地が貼り付く感覚は慣れないものだ。
「うわぁ、俺には似合わないなぁ」
 乳房を持ち上げて固定してくれるので楽にはなるが、ブラジャーをした姿を脳が否定していた。
「やっぱりもうちょっと可愛いのがいいよね」
「え、いや」
 伍良の言葉を水咲は勘違いしていた。装飾のない青いブラでも受け入れられないのに、水咲が手に持ったのはリボンで飾られた光沢のあるブラだ。戸惑った声で断ろうとしたが遅かった。
「うわぁ、いいね。抱き締めたくなる可愛さだよ」
「も、もうちょっと大人しいので」
 鏡をちらりと見て伍良はすぐに下を向いた。自分とは思えない可愛い姿に脳が沸騰している。顔が一気に赤く染まって、頭から白い蒸気が出そうだ。

03(2)_2014122913454871c.jpg
挿絵:菓子之助

「いいと思うけどなぁ」
 残念そうに呟いて水咲はブラを外す。精神的に消耗して、伍良は息を切らせていた。
「青系の色以外も選んでみたから。もしかしたら気に入るのがあるかもしれないよ」
「そ、そうだな」
 水咲がブラジャーを十枚近く試着させてくれたが、伍良はまともに正面を見られない。頭が過熱するばかりで、思考が回らなかった。
「これで伍良君もブラの装着は覚えられたかなぁ。そろそろ一人でやってみてよ」
「わ、わかった」
 床に積まれたブラから目を逸らしながら適当な布切れを拾い上げた。手から伝わる布地の感触が艶めかしい。
「うわぁ、伍良君ってそういうのが好きなの?」
「ち、違う。たまたま拾っただけだよ」
 胸にブラを当てようとしたところで、黒くて扇情的なデザインだと気づいた。かなり布地が少なくて薄い。あわあわと手を振って慌てながら、伍良は急いでブラから手を放した。
「やっぱり最初に着たのと似たのがいいな」
 下手なことをして変なブラジャーを買う羽目になってもまずい。伍良は覚悟を決めて、カラフルな山から無難なブラを選びだした。水色で飾り気もない。
「確か、これをこうやって」
 水咲の真似をしてブラを装着しようとしたが、意識が散漫でまるで覚えていなかった。焦るばかりでブラを着られない。
「伍良君、全然違うよ」
「わ、悪いな。また手本を見せてくれよ」
「別に謝ることはないよ。あたしが着るところを見せた方がわかりやすいかな」
 水咲は服のボタンを外し始めた。脱ぐつもりだとわかって、伍良の鼓動が高くなる。緊張と興奮で手に汗が滲んでいた。水咲は躊躇なく服を脱ぎ捨てて、上半身は黄色いブラ姿になる。
「ごくっ」
 健康的な肌を晒した下着姿が眩しく見えて、伍良は思わず喉を鳴らしていた。瞬きもせずに胸を見詰めている。水咲が手を背中に回すと、おっぱいからブラが外れた。
「ちゃんと見ていてね」
「も、もちろん」
 言われなくても、水咲の胸に熱い視線を送ってしまう。白い双丘を彩る桜の花が、若々しい色気を発散していた。股間が熱い。もし男のままなら、確実に勃起していた。
「熱心なのはいいけど、視線が何だか怖いなぁ。危ない気配を感じるよ」
 目を見開いている伍良を見て、水咲は軽く苦笑していた。伍良は鼻息を荒くさせながら、水咲の一挙一動に注目している。同年代の女子の半裸姿を脳に焼きつけていた。
「うぅん、変に緊張するなぁ。まるで男の子に裸を見られている気分だよ」
 水咲は恥ずかしそうな顔をしながら、伍良にわかりやすいようブラジャーをゆっくりと装着していた。
「これでわかりそう?」
「もう一度頼むよ」
 理解はしたが、女の子の着替えは何度でも見たい。
「ううっ、仕方ないなぁ」
 危ない目をした伍良に身震いしていたが、面倒見のいい水咲はもう一度手本を見せてくれた。
「うん、完璧だぜ」
「清々しい笑顔だけど、あたしは悪寒がしているよぅ」
 伍良の脳には今の映像が細部まで記録されていた。これで何度でも繰り返し脳内で上映できる。お世話になることも多そうだった。

神様は突然やってくる - 天然タラシ系神様現る &神様は突然やってくる2 - 少女の願いと記憶の欠片

内容(「BOOK」データベースより)
憧れの子のハートをゲットすべく、彼女好みのマッショマンを目指していた高校生の青葉。だけど、日々プロテインを飲み筋トレに励む彼の理想は、ある朝、脆くも崩れ去る。突然、身体が女体化したのだ!更に、“神様”だと名乗る不審な男、縹が現れ、今回のことは「お葉」という、むかし病で死んだ女が青葉に取り憑いたせいだと説明する。元に戻るには、「お葉」の記憶の欠片を集めればいいらしいのだが、彼女にベタ惚れで、性格天然の縹は全く役に立たなくて…。



内容(「BOOK」データベースより)
若くして病気で死んだ「お葉」の封印を解いてしまった高校生の青葉は、六つに分散した彼女の記憶を集めるハメに。お葉のことを好きだという縹に、萌葱と名乗る胡散臭いイケメン神様も加わり、一緒に記憶を集めはじめた。だけど、記憶を集めるたびにかいま見える「お葉」の姿と、縹が覚えているという彼女の姿に、青葉はどこか違和感を覚えはじめ―!?少女が、死の間際に縹と交わした、本当の願いとは?そして青葉は無事、男の身体に戻れるのか!?





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