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星の海で(8) 「Natal」   (11)切望

(11)切望-------------------------------------------------------

「このかつら、特別製なんです。なぜなら……いえ、すみません、禁則事項です」
「話せないのなら、話さなくてもいいわ」
「すみません……。私は体の感覚をほとんど無くしてしまいました。けれど代わりに少しですけど、周囲の様子を教えてくれるんです。だから、今いるこの場所が寒いとか、暑いとかはなんとなく判るんですよ。体の抵抗力は、普通の人とあまり変わらないので、外気温の変化で、体調を崩したりしないように。それに……」

 アリシアはかつらをつけ直すと、自分の体を恥じるようにうっすらと顔を赤くして言った。

「私の髪、触ってもらえませんか?」

 フランチェスカは言われるままに、アリシアが差し出したひと房の髪を、そっと両手で握った。

「強さと、同時に暖かさを感じます。きっと、フランチェスカさんはしっかりとした意思を持っていて、でも優しい方なんですね」
「……」

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挿絵:菓子之助 http://pasti.blog81.fc2.com/

 アリシアはそっと目を閉じて、センサーを兼ねているという銀色の髪からの感触を確かめるようにつぶやいた。
 しかしフランチェスカには、掛ける言葉が見つからなかった。

「フランチェスカさん。お願いがあります。あの子、サーティンを守ってください。私のクローンたち、アイシャもツヴィもみんな……。失敗だとわかると、みんな殺されてしまいました。最後に残ったあの子だけでも、せめて生きていて欲しい。何も知らない、何の罪も無い、あの子だけは……」

 アリシアは両手を、自分の銀髪を握っていたフランチェスカの両手の上から、さらに握り締め、訴える様に言った。

「私には他に家族はいません。私は生まれた故郷の星と一緒に全てを失ってしまいました。私が自分以外に、つながりを持っているのは、私自身のクローンであるあの子、サーティンだけなんです。お願いです。サーティンを、あの子を守ってください」
「サーティン……いえ、エルザには……、あの子にも、あなたがさっき言っていた、特殊能力があるの?」
「それは判りません。私は20年前に、再び味方、つまり銀河連合の捕虜となり、軍の秘密部隊へと配属されることになりました。敵のプロジェクト、“Natal”の技術と可能性を明らかにするために。そして18年前、3年を掛けて秘密裏に“Natal”の再現実験が行われました。その時に生まれたのが、私の最後に残った分身、サーティンです」
「……」
「そして、その研究施設は……」
「……トイブルク5に、あったのね?」
「そうです。でもそれが敵の知るところとなり、プロジェクトの要である、サーティンと私の奪還を試みようとしました。けれどそれが困難であることが判ると、敵は思わぬ強攻策に出たのです」
「強攻策?」
「何もかも吹き飛ばしてしまえば、秘密は漏れないと考えたのだと思います。
「……それが、トイブルク5消滅の、真相だったのね?」
「そうです」
「じゃあ、あなたは? あなたはなぜ、トイブルク5と……」

 フランチェスカは、“一緒に消滅してしまわなかったのか?” とまでは、言えなかった。

「敵がトイブルク5に調査のため密かに潜入した頃、私は中央銀河にある極秘の医療施設で、精密検査を受けていました。実験でボロボロにされていた体を交換、……つまり脳移植を受けるために。そしてその帰り道。トイブルク5の衛星軌道に達したときに、敵の攻撃が始まりました。私が中央銀河に留まってさえいれば、敵もあんな強攻策は採らなかったでしょう。でも、私とサーティンが同時に研究施設に存在することで……」
「一気に始末してしまえると、敵は考えたのね」
「私の、……私の、せいなんです」

 アリシアは下を向き、ぐっと何かをこらえるように、両手を握り締めていた。

「連絡艇のトラブルで、予定よりも大幅に遅れて、トイブルク5の衛星軌道に到着した私は見ました。トイブルク5に広がって行く、赤い炎と……、そしていくつもの、輝きを増していく、恐ろしくて、忌まわしい、無数の白い光……、ガリエスタ……、どうして……また……、なぜ……」

 最後のほうはかすれ声になって、良く聞き取れなかった。
 嗚咽をこらえながら、握り締めたアリシアの手の甲には、涙がぽたぽたと落ち始めた。

「ごめんなさい、もう良いわ」

 フランチェスカはぎゅっと握られたアリシアの拳に、そっと手を重ねた。
 アリシアはトイブルク5の消滅に、深く罪の意識を感じていた。
 それはアリシア自信の責ではない筈だと、フランチェスカは思ったが、アリシアがそう考えている以上、ありきたりの言葉が彼女の心を慰めることができるとも、思わなかった。
 トイブルク5消滅は15年も前の出来事であり、彼女はその15年もの長い間、その罪の意識に胸を痛め続けていたのだ。
 彼女は要因の一つではあったかもしれないが、傍観者でしか無かった。
 ひとつの悲劇の。

「……私たちは何とか脱出に成功し、同乗して来た医療スタッフやパイロットと共に、星系外縁までひそかに護衛してきた中央艦隊に、再び保護されました。その時に名前も、所属も変えて、中央へと帰されたのです。そして、今の部隊に所属するようになりました」
「今の部隊?」

 アリシアは、フランチェスカの目をじっと見つめてから視線をそらし、その問いには答えなかった。

「……これで終わりだと、私たちも思っていました。研究施設とともに、資料も失われたのですから。プロジェクト”Natal”は単に不完全なクローン人間を作る、禁断の技術を追試するだけにとどまり、本来目的とした成果は得られなかったのです。けれどクローン人間を作って、密かに研究をしていたなどという醜聞は、封印されることになったのです」

 軍による封印。それはアリシアの身に対しても行われたのではないかと、フランチェスカは思った。軍の秘密保持は極めて慎重かつ確実に行われる。
 唯一の物的証拠という、アリシアも人目を避ける様に、半ば幽閉されていたに違いない。或いはある程度の自由があったとしても常に監視つきの、窮屈な生活に違いなかった。

「でも先月、全ての痕跡を消去し、解散したはずのプロジェクトチームの一部が、集められました」
「もしかして、エミリアたちのことが?」
「はい、トイブルク5の生存者発見というニュースは、私達にとっての危機を意味していました。事実関係を直ちに確認せよとの直接命令が下されました。生存者を確認し、もし“対象”であるならば、中央へ移送する手続きがなされる筈でした。けれど……」
「エミリアの軍事裁判の件ね」
「はい、民間人ならば、運用中の艦隊に留まることはできない筈ということで、軍事裁判に干渉してこの艦隊から別の場所に移し、その後何らかの手段を用いて、接触を試みるはずでした。けれど……」
「エミリアはラヴァーズとして艦隊に残ることになった」
「はい。私とロ……ヒースレー監察官には、“生存者である女性と子供を確認し、報告せよ”と言う命令しか、与えられませんでした。だから軍事裁判で有罪になったのならば、少なくとも近くの軍管区司令部のあるところに護送されると考えていましたし、裁判にかけられていた人物ならば、当時の関係者の生き残りだと、思っていました」
「だから、歓迎会であなたは、あんなに驚いたのね」
「ええ、まさかサーティンが冷凍睡眠で、あのときの姿のまま、15年も眠り続けていたとは……」

 アリシアはそれが癖なのか、髪を手に複雑に絡ませては解きながら、話を続けた。

「とにかく事実を確かめるため、私たちに直接あなたがたの艦隊に出向き、接触して場合によっては確保するようにとの、極秘命令が出されました」
「そうだったの。じゃあ、あなたたちは、監察局の所属ではないのね?」
「はい。でも……すみません。所属部隊については明かせません」
「あなたを逮捕して、尋問することもできるけど?」
「いまさら命を永らえようとは思いません。自殺してでも、秘密は守ります」

 フランチェスカは何かを言おうとしたが、アリシアの目には確固たる意思がこめられていて、説得や脅迫に応じるとは思えなかった。
 アリシアはふっと表情を緩め、顔を伏せた。

「本当は、私はとっくの昔に死んでいるはずの人間なんです。暑さも寒さも感じない。何を食べても味もわからない。やさしく触れられても、人のぬくもりに安らぐこともできない。今の私は、死体と同じなんです」

 今にも消え入りそうな声に、フランチェスカはアリシアの深い悲しみを感じた。

「でも! あの子は違います、サーティンは、あの子には何の罪もありません。お願いです。サーティンを、サーティンとエミリアさんを守ってください。私にできることは何でもしますから!」
「エルザにとって、あなたはお母さんなのね。だからエルザはあなたのこと、“まま”って呼んだのね」
「ええ、まだ培養槽から出たばかりの小さかったあの子は、私の顔を見るといつもにっこりと笑って、そう言ってました……」
「エルザの紅い瞳は、あなた譲りなのね。でも髪は金色なのね。あなたも本当は?」
「サーティンはまだ……、いえ、不完全なクローンでしたから、髪の色までは……」

 本人のクローンならば、髪の色も同じだと思っていたフランチェスカは、人工の髪を持つ、今のアリシアではなく、エルザの髪の色が本来の色ではないかと思ったが、そういうこともあるのかと、その時は特に気にしなかった。

「判ったわ。でも、ヒースレー監察官の出方が判らない。あの人は敵なの?」

 “敵なの”という言葉に、アリシアは一瞬戸惑ったが、はっきりと答えた。

「サーティンを害しようとするものは、私にとって敵です」
「わかったわ。私もできる限りの努力をする。でももう一つ約束するわ」
「はい。でも何を?」
「私はあなたも守る」
「私、も?」
「エルザにはあなたも必要だわ。母親が居なくなったら、子供は悲しむものよ」

 フランチェスカが笑顔で言うと、アリシアも少しだけ緊張した表情を和らげた。

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02/09のツイートまとめ

amulai

RT @wadatikururu: 描きかけの島風くん漫画台詞もいれてないけどなぜか1Pで展開がわかるね! http://t.co/IjyUGTkmwJ
02-09 23:39

RT @yonnnana: 精射飲・・・・
02-09 23:38

RT @mikaduki_neko: 魔理沙「右と左とは反対の意味だ。それゆえよく対になっていることがあるよな。右手と左手みたいに。では、この漢字の「右」がつくけど「左」がつけられない言葉、もしくは逆の関係になる言葉を知っているか?調べずに答えられたらすごいゼ」#東方頭体操
02-09 22:59

サトシフジイ ドットコム 権力による言論封殺には屈しません 藤井聡 http://t.co/mz7wSi7a91都構想は全然理解してないけど、この記事の部分だけ読むと藤井先生のお話は御尤もだなぁ。折角だし、都構想を勉強してみるか・・・あ、でもメリット無いか・・・
02-09 22:40

RT @ayanoayanosuke: 衣装チェンジした南条と千佳ちゃん。 http://t.co/yld34rNOLt
02-09 22:16

RT @mabo151: コミケ申し込み、あやうく旧住所を書き込んで送信しそうになって、会社の寮にサークル名が記載された封筒が届き、それを見た後輩たちから触手孕ませ変態野郎のあだ名を付けられ、職場のいじめに耐えられずに自殺するところだった。
02-09 22:15

RT @RUENROUGA: 良いと思った物は良い物。値切るなとは言わないけど、ケチをつけるのはお門違い。要らないなら買わない。欲しいなら他を切り詰めてでも買う。それだけだと思います>価値観
02-09 21:56

RT @youmouichigoya: んー。リツイートしないけど、「作ったもので暴利を貪るのはよくない」みたいなの見たけど、材料費ギリでやるのが美徳みたいな言い方ってどうかと思う。買うか買わないかは消費者側が決めるし、無理矢理買わせてるわけじゃないんだから、他人か人の作ったも…
02-09 19:09

RT @higashinokinmoc: エリート上司バーン「鍛えあげて身につけた学歴で弱者を思うようにあしらう時気持ちよくはないのか? 優越感を感じないのか?」
02-09 19:01

RT @ts_riru: 催眠術や洗脳で自分の意思に関わらず街の男に股開いて街を歩くだけで男に、今日もよろしく!って言われ始めた頃に洗脳解除させられて、わけもわからず犯される日々が送りたい。
02-09 17:56

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