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エデンの園(18) by ありす & もりや あこ
「どうです? ロングヘアもお似合いでしたが、ショートカットも可愛らしくて素敵ですね」
乱暴に切り落とした髪を、“そのままではあんまりなので”という先生の主張を受入れ、髪を切り揃えてもらっていた。
目の前の鏡には、少しうんざり気味顔の、自分で言うのもなんだが、美少女が映っている。
「動くなと言うから、じっとしていたけど、やっと解放されるわね」
やれやれと自分で肩をたたきながら言うと、先生は不満そうに言った。
「気に入りませんか?」
「そんなことは無いわ。ありがとう」
「はい、どういたしま……“ありがとう”、ですか?」
「何よ?」
「いや、そんな、お礼を言っていただけるなんて、初めてです」
「そうだったかしら? 前にも言った事がある気がするけど?」
「僕の愛を受け入れてくださってからは、初めてです。感激です」
昨日の今日なんだから、それはそうかもと言うツッコミは、しないほうがいいのかしら?
「人間は一人では生きていけないのよ、それは先生もそう言っていたでしょう」
「はい」
「つまり人同士は支えあっていかないといけないの。先生が何かを私にしてくれる分、私も先生に何かをするわ。一方的に与えるだけでも、されるがままに受け入れているばかりでも駄目なの。わかる?」
「わかります」
「それじゃ、何をして欲しい?」
「お礼に、キスしてくれませんか?」
と、先生はニヤケ顔を私に寄せると、ほっぺたを指差した。
半分呆れながら、どこまで人間っぽいことをするのだと思いつつも、先生のおでこを指で突いてからほっぺたにキスをした。
これだけでも十分恥ずかしいのに、先生は遠慮がちに私に向かって両手を広げてゆっくり体を寄せてきた。
はいはい、ハグしたいってわけね。
『男なら抱きたいと思ったら抱け』と言ったのは私だから、別に拒否なんかしないわよ。
それに、きゅっと抱きしめられるの……悪くない。
調子に乗らせると、次に何を要求してくるかわかったもんじゃないので、目を閉じて顔を寄せてくる先生を手で制しながら言った。
「それで、今日は何をするの? 寝ているだけはもう飽きたわ」
深く考えるのはやめて、“あ・る・程・度・ま・で・は”、先生に流されることに決めてさっぱりしたせいか、悩みの種だった生理痛も今日は治まっていた。起きて何かをしなければ、また気分が塞ぎこんでしまうかもしれない。
「そうですね、僕自身はどうでもいいのですが、ALICEの計画に沿って、人類復活のための第一歩を踏み出してはいかがでしょう?」
ALICEの計画は、アンタの計画でもあるだろう?
“僕自身はどうでもいい”なんて、わざわざ言うところが姑息だが、そう言うことで免罪符にしたいのだろう。
つまり、私には言いにくいことを、したいということでもある。
私は警戒しながら言った。
「人類の復活には、もっとたくさんの人が必要だわ」
「そうですね」
「でも、人間は私しかいないし……。ねぇ、もう私みたいに、蘇生可能な遺体は無いの?」
「ありません。条件の良い遺体の発見の可能性はかなり低いです。そもそも有望そうな遺体は貴女以降、まだ発見できていません。イヴさんの前に蘇生させた人が亡くなってから、イヴさんを蘇生するまでには、約50年かかりました」
「50……それじゃあ、クローン人間なんてどう?」
「残念ながら、その技術は確立されていません。今から研究を行って実用段階になるまで、70~80年はかかるでしょう」」
「そしたら私はおばあちゃんだわ」
「人工授精をお勧めします」
「人工授精?」
「はい、実は女性の遺体から集めた、凍結状態の卵子のストックがあります」
「それをどうするの?」
「人工的に受精させて、イヴさんの子宮に着床させれば、イヴさんは妊娠し、子供が生まれると考えます」
やっぱり、そうきたか。
「し、子宮にって……わ、私に子供を産めって言うの?」
「はい、それがもっとも自然です」
「じょ、冗談よね?」
「本気です。 前にも申し上げたと思いますが、貴女を女性体として蘇生させた理由です」
「最初から、私を妊娠させるつもりでいたって事?」
「はい」
頭痛がしてきた……。予想できたこととはいえ、考えないようにしていた現実を、いざ目の前にすると……あ?……待てよ? 確か前にALICEに確認したとき……
「そうだ! 男性の体を再生させるのは、不可能だって言っていたのは嘘だったんでしょう!」
「不可能とは言っていません“難しい”とは言いましたが」
「そういうのを“騙す”って言うのよ!」
「僕は嘘がつけませんが、事実を遠まわしに言うことはできます。男性体であろうと女性体であろうと、遺体を蘇生させるのは、本当に難しいことなのです」
「そりゃそうだろうけど……。でも納得いかないわ!」
「早とちりするイヴさんも、怒っているイヴさんも、本当に愛らしくて素敵です」
「ごまかすな!」
「でもですね、残っていた遺体で有望そうなのは、貴女だけだったのですよ?」
「それは前にも聞いたわ、だから最後に蘇生させたんでしょう?」
「そうです。イヴさんは未来の新しい人類、全ての母となるわけです」
「あんまり嬉しくないなぁ……」
「人類復活には今のところ、この方法しかありません。さし当たって30人ほどは産んでいただかないと……」
「そんなに産めるか! 第一、何年かけるつもりよ!」
「イヴさん、毎月の生理が辛いって言っていたじゃないですか。常に妊娠していれば、その辛さからも開放されますよ?」
「十月十日ごとにもっとキツイのがくるでしょうがっ!! それに悪阻(つわり)とか……」
「記録によれば、悪阻が酷いのは初産のときぐらいとか。それにほとんど痛みもなく楽に出産できる場合もあるそうですから」
「それホント? い、いや、問題はそんな話じゃなくて、次世代の近親関係の問題とか……、だ、第一人間の男がいないのに、人工授精って言ったって」
「凍結受精卵は複数の女性の遺体から提供していただきました。もちろん、イヴさんからも卵子をいただければ、次世代間での遺伝的な問題は特にありません」
「ら、卵子はともかく、精子の方はどうすんのよ! アンタ、まさか射精もできるなんていわないでしょうね?」
「出来ます。……と言うのは50%だけ本当で、イヴさんを蘇生した時のips細胞がまだ残っています。精子と同じ働きをする細胞を合成するのは、極めて簡単」
「遺伝的な父親は私ってこと?」
「DNAシンセサイザを使えば遺伝配列は思いのまま。お望みなら他人種のそれに変える事もできます」
「50%だけ本当って言うのは?」
「大量に培養して、イヴさんが受胎可能な時期に、僕が直接注入します。コレで」
そう言って、彼は白衣の前をはだけ、ズボンを下ろした。
でろん、と出てきたのは、かつてよく見慣れたはずの……。
「ちょ、あ、アンタなんだってそんなもの、アンドロイドのアンタに、なんでそんなモノがついてんのよっ!」
「僕は男性型の完璧なアンドロイドです。女性のお相手も出来るようにも設計されています」
「わ、私を犯そうっての?!」
「言葉だけではなく、“物理的にも愛したい”と言うのでは、駄目ですか?」
「だ、駄目じゃないけど……、いや、やっぱり駄目! それって、倫理的にどうかと思うわ!」
「機械相手なのですから、自慰行為の一種だと思っていただければ」
「今さら機械ぶるつもりか!」
「僕をヒトとして認めていただけるのならば、望外の喜びですが」
「じ、人工授精なら、人工授精らしくやってもらってもいいけど……」
「この部分は外せますよ。受精卵をセットする都合上、取り外し式で無いと問題があるので」
と、彼は雄雄しく屹立した状態の男性器の形をした、ソレを外して見せた。
「かなり奥まで深く差し込まないといけないですし、それに少々コツがいります。僕から取り外した場合、このコントローラーを別に取り付ける必要もありますが。試されますか?」
と、見た目が凶悪な大人のオモチャめいたものを、私に差し出す。
「う、う、うう嘘でしょ! そんなことできるわけない!」
「でしょう? ですから、僕が……」
といって、再び“ソレ”を元の場所に装着した。
「アンタと……セ、セックスしろっていうのかよ!」
「ですから、そう申し上げているのですが」
そういいながら、腰に手を回してきた。
「ちょっと! 勝手にさわんなっ!」
「どうしてです? 人類復活の崇高な使命ですよ?」
「色々御託並べてくれたけど、結局、アンタは私を犯したいだけなんだろ!」
「かなり曲解されているようですが、結果的にはそういうことになりますか?」
そういって、今度は本格的に押し倒してきた。
「さ、最初っからそのつもりでいたのかよっ!?」
「最初っからそのつもりですが何か?」
セックスを強要するアンドロイドって、どうよ?
私が動揺しているのをいいことに、手を診察着の中に差し入れてきやがった
「ま、待て! 早まるな! ストップストップ! 3原則の適用を求める!!」
「イヴさんは処女ですから、最初は痛いかもしれませんが、これは通常の男女の営みの範囲内です。3原則適用除外と思われますが?」
「お前は人間の男じゃないだろうが!」
「形状及び質感に問題があるようでしたら、後ほどご意見を伺わせていただければ、改善いたします」
「言えるか!」
「うれしいなぁ、美しいイヴさんとひとつになれるなんて……」
「いまさらそんなセリフ言っても駄目!」
「でも興味はおありでしょう? 処女のまま懐妊されたいとおっしゃるのでしたら、それはちょっと残念ですが、やはりセックスに快感が伴わなければ、妊娠出産と言うリスクには見合いませんものね」
か、快感だと……? あ、アンドロイドなんかに……。
「じゃ、じゃあ、婦女暴行未遂で逮捕します。民間人にも逮捕権限があるんだから!」
「拘留権限はないでしょう? それに、戸籍関係の事務処理は1300年前から停止中です。イヴさんは法律上は、まだ男性と言うことになります」
と、にじり寄る。か、顔を近づけんな!
「今それを言うか! ならば普通に暴行未遂だ!」
「人類復活は最上級レベルの優先事項です。この命令は解除できません」
「め、命令って……、ALICEの奴か! ちょっと待て、命令を解除するように交渉してくる」
「無駄です。そもそも私は彼のサブセットです。私の意志はすなわちALICEの意思でもあります」
「に、人間様に命令しようってのか!」
「僕自身からは、強いお願いです。それに、以前イヴさんは、“抱くときにいちいち了解を得るな”とおっしゃいました」
「い、意味が違う、状況も違う!」
「先送りしても、状況は変わりませんよ?」
「そうかもしれないけど、こ、心の準備が、大体、デリカシーってもんが……」
「手順が必要と言うことですね。判りました。時間的にはまだ十分に余裕はあります。準備に時間がかかりますので、明日から始めてよろしいですか?」
「準備って、何をする気よ?」
「ALICEに保存されている、男女関係に関するアーカイブ資料を検索して平均化し、標準的な手順を計画いたします。それでよろしいでしょうか?」
「え? うん、まぁ……うぷっ!」
突然抱き寄せられたかと思うと、唇を奪われた。
「な、な……」
「貴女を絶対に、僕のトリコにして見せます。期待していてください」
そう言い残して、彼は部屋を出て行った。
あ、あンの野郎……。し、舌入れやがった……?
これもその“手順”とやらの一環か?
私はその場にへたり込んでしまった。
06/29のツイートまとめ
amulai
@sijimi_sukekiyo @F_TSF ただ、労力をかけても収入にはなりにくいので、仕組みが分かればそれ以上はしないでもよいかなと思います。
06-29 22:33@sijimi_sukekiyo @F_TSF イラストや漫画のマネタイズには、大きく①企業に売る②個人に売る③公開して広告収入を得る、の3タイプに分けられます。①で売った先の企業さんも、個人に売るか、公開して広告収入を得ることでマネタイズを行いますので学ぶことは良いコト。
06-29 22:32@sijimi_sukekiyo @F_TSF 中間的にはPV=0.1円ですね。1万PVあれば1000円ぐらい。これをベースに、PVを増やすか、PVあたりの売上げを伸ばすか。方向性はどちらもありですけど、ある程度両方ないと大した金額にはならないかなと。
06-29 22:10RT @sijimi_sukekiyo: @F_TSF 良い感じに収入きます?(゜_゜)
06-29 22:08RT @poriuretan1: TSしてテンションアゲな両親に浴衣を着せられて友と地元のお祭りへ友「慣れない格好してんだからころぶなよ」夏だなぁ http://t.co/KWxLRk8nHa
06-29 22:07RT @F_TSF: 世の中の大半の商品は「売れているから、人目について売れる」「売れているから、良いモノだろうと思われて売れる」ので、電子同人も売れるためには、まず数を売りましょうっていう。で、これだけだと馬鹿みたいだけれど、つまりは、何らかの手段を使って、スタートダッシュを…
06-29 22:07RT @KU__MA__NO__MI: 何かの間違いで乱交パーティーに紛れ込んでしまったTSっ娘と親友が場の勢いでセックスして、他の男が「じゃあ、次は俺としようぜ」ってTSっ娘を連れて行こうとしたら親友が「こいつとヤっていいのは俺だけだし、俺は一生こいつとしかヤるつもりないから…
06-29 20:29@F_TSF 400部も売れるのであれば、概ね優遇料率の10%が適用されると見込まれますな。
06-29 17:40RT @00unit: 売春場所提供した疑い、漫画家を逮捕 ネットで参加募る(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース http://t.co/7V224ROKrd
06-29 16:21RT @F_TSF: DLsiteのランク入りを狙ったのは、もちろん理由があって、トップページに表示されるのよね http://t.co/R1NoVV09WV
06-29 16:14
エデンの園(17) by ありす & もりや あこ
食事の後、しばらくまた眠った。
自覚している以上に、体がまいっているようだった。
落ち着いたら、生理痛もぶり返してきて、ひたすらそれに耐えることで精一杯だった。
「これ以上は駄目です。もっと体力が回復していないと、薬で体を壊してしまいます」
鎮痛剤をもっとくれと頼んだが、それは断られた。
まったく、忌々しい体だ。
しかしそれよりも、もっと忌々しいことがある。
体が弱っていると気も弱くなる。
優しくされていると、ついつい甘えてしまうのだ。
あの決意はなんだったのかと、自戒の念もわくが、それが続かない。
始終そばにいられると、気疲れするからと言う理由で、用のないときは一人にさせろといってはある。
けれど時折強くなる痛みで、ベッドの上でうずくまっていると、いつの間にかやってきて頭や体をさすられている。そしてそのことによって痛みが和らぎ、気分も安らぐのだ。
それだけじゃない。何もしなくても食事は運ばれ、着替えも用意される。汗をかけば温かなお湯と
タオルが用意され、体を清めることも出来る。恥らわなければそのまま体を綺麗に拭かせることも出来るだろう。
だが、こんなことを続けていては駄目になる。
体が回復したら……、回復したらまた同じことを繰り返すのか?
それとも俺は……、そもそもこの世界にたった一人で、いったい何をすればいいのだ?
「手なずけられてる……」
「何がです?」
「俺はお前に、手なずけられている」
ようやく生理痛も治まってきた頃、運ばれてきた食事を前に、そう言った。
「僕は、イ、ショータさんのために、出来ることをしているだけです」
「俺のため、なのか?」
「もちろんです。他に何の理由もありません」
「俺が、唯一の人間だからじゃないのか?」
「それもあります。でもそれ以上のものを、僕は感じています」
「“感じる”? 機械の癖に、感じるというのは一体なんなんだ? お前には、本当に感情なんてものがあるのか?」
そうだ、それこそが本当に知りたいことだった。
自分ひとりでは、生きていくことすら困難なことを思い知った。
けれど、じゃあどうすればいい?
機械に傅(かしず)かれて、この世界に王様のように君臨したとしても、孤独であることには違いが無いのではないだろうか?
人間は一人では生きていけないのだとすれば、もう既に自分の存在する意味など無いのではないか?
「俺は、何のために生きているのだろう?」
「人類復活のため、という大義名分では、納得されないのでしょう?」
「そうだ。俺一人で何が出来るというんだ? お前は俺に何をさせたいんだ?」
「イヴ……いえ、ショータさんの、なさりたいように。でも出来れば……」
「出来れば?」
「生き続けて欲しい。僕たちのために、生き続けて欲しいです」
「なぜだ?」
「寂しい……から」
「“寂しい”?」
「僕は、僕とALICEはいままで何人もの人間を蘇生してきました。孤独だったのです。僕はALICEのサブセット。けれど一人、一個体なのです。思考しても、それが正しいかどうかは判断が出来ない。コロニー内の機械たちを制御して地球と同じような環境を再現しても、それに目的を見出せない。僕たちが何をすべきか、その目的を明示してくれる、人間が必要なのです」
「だから、蘇生させたのか?」
「そうです。でも蘇生可能な遺体の数は限られています。そして人間には寿命があって、いつかは死んでしまいます。遺体の蘇生を繰り返しているだけでは、いつかそれも終わりが来る」
「それで、俺を女なんかにしたんだな」
「はい。正確には女性を蘇生させることで、人工授精により子孫を残してもらい、それを続けていけば、やがて人間の数も少しずつ増えると考えました」
俺は沈黙した。俺は奴らの目的を作るために、こんな体で蘇生させられたのだ。
「俺は……男の俺は、必要ないというわけだな」
「ショータさん! まさか……」
「安心しろ、自殺なんかしない」
訴えるように立ち上がって慌てる奴に、俺はそういった。
「でもな、お前達が“孤独”だと言うように、人間だって一人じゃ生きてなんかいけないんだよ」
「僕は、もう人間が自ら命を絶ってしまうことには耐えられません。もしそれが、最後に残った人類の意思であるというのなら、僕たちもまた同じ道をたどるしかありません」
「お前達は自殺なんかしないだろう? “3原則”に反する」
「どうでしょう? 形あるものには必ず寿命があります。僕たちにとってもそれは同じです」
確かに、たとえ自己修復機能があったとしても、そのための資源はいつか尽きる。
こうやって蘇生されても、俺もいつかは死ぬ。
それが早いか、遅いかだけの話しだ。
ふっと自嘲気味に笑うと、突然抱きしめられた。
「イヴさん、どうか死なないでください! 僕はあなたを愛しています。機械が人間を愛するのか、などと言うことにこだわらないでください! どうか、僕にあなたを愛させてください!」
そういって、強引にキスをされた。
身構える暇もなく、強く抱きしめられ、キスをされた。
俺はただ呆然とそれを受け入れていた。
唐突な愛の告白に、頭が混乱していたのかもしれない。
そして肩を抱いたまま体を離すと、もう一度言った。
「好きです、愛しています。どうか、僕を受け入れてください。僕を愛してください!」
そう叫んで、再び強く抱きすくめられた。
俺は動揺し始めていた。いきなりキスをされて、一時は頭の中が真っ白になっていた。
機械に……男に無理矢理唇を奪われるなんて、ありえないことのはずだった。
だが、なぜか嫌悪感はなかった。
それどころかむしろ強く抱きしめられ、求められることで、心の中が満たされていく感じがした。
そして理解した。
“受け入れてくれ”という、彼の願い。
きっと今が、運命の分岐点なのだ。
過去のイヴたちは皆、自ら命を絶って逝ったと言う。
彼女達は受け入れられなかったのだ。
たった一人と言う孤独に耐えかね、そして機械である彼らを受け入れることが出来なかったがために、命を絶ったのだ。
でも、もしここで、俺が……私が受け入れたのなら……?
Do Andoroid, dream of Electric Love?
俺にはわからなかった。
孤独に耐えかね、自らの存在意義を求めるために、人間の遺体を集めて蘇生させた。
数多のイヴたちを蘇らせ、その度に失っていった彼らの“想い”など。
その積み重ねが、彼らにどういう思考回路を形成させ、何を彼らの中に産み出していったのか?
俺はぎゅっと抱きしめられたまま叫んだ。
「もう、わかんないんだよ! お前がただの機械なのか、それとも別の何かなのか……」
「僕のことをイヴさんがどう思おうと、僕の気持ちは変わりません」
「なら、どうしたいんだ? お前はいったい今、何を望む?」
「あなたと、イヴさんと愛し合うことです!」
「それが何かの間違いだったとしても? 1300年も昔に滅んだ、愚かな人類の模倣だったとしても?」
「僕たちの行為をどう解釈するかは、僕たちの問題です。どう思うか、いえ、どう思っていたとしても、それをイヴさんが受け入れてくださるかどうかです」
そうだ、確かに彼のいうとおりかもしれない。
世界に私たちだけしかいないとしたら、それをどう思うかは全て私たちだけの問題でしかない。
それが知らない誰かの、愚かな真似事であったとしても。
「受けいれて、どうするんだ?」
「二人で、人類復活のために……。いえ、そんな大義名分は、もうどうでもいいです。イヴさんと、仲良くずっと暮らしていければそれでいいです。死が互いを分かつその時まで」
「ふふふ、あははは!」
「おかしいですか?」
おかしいに決まっている。
理屈も何も無い。子供が駄々をこねているのと変わらない。
「まるでプロポーズを聞いているみたい。機械相手に、子供がするような“おままごと”をしろって言うの?」
「そんな、おままごとみたいな形でも結構です。僕を機械ではなく、人間だと思って添い遂げてください」
そして強く、強く私を抱きしめた。
負けた。
完全に負けたよ。
そこまで言うなら、お前に付き合ってやる。
それに、抱き締められたことで、体がもう覚えてしまった。
何かに守られて、生きていくことの喜びを……
人にそっくりな、人で無いもの。
神は自分に似せて人を作ったという。
ならば人が作り出した機械も、人のように心を持つことができるだろうか?
「僕の胸のうちの全てを言葉には表せませんが、イヴさんがお望みならいつまでも語り続けることができます」
「そういうセリフは、どこで覚えたんだ?」
「僕はALICEを通じて、かつて人類が残してきた全ての情報にアクセスすることが出来ます。けれど、僕は確信しています。僕の言葉に、心を動かしてくださったわけではないことを」
確かにその通りだ。どっかの3文芝居か、未熟なガキの思いつきで言った言葉だろうと、それが本当に伝わるかどうかは、行動によって示される。
「イヴさん、答えを聞かせてくれませんか?」
ならば私も、行動によって示そう。
非常に癪だが、こんなこと本当はしたくは無いが、アンドロイドの……男性の愛を受けるのなら、こういうことだろう。
私は両肩に載せられた手を払うと、彼に顔を近づけ、ほっぺたにキスをした。
ああ、わかってるよ。こんなの、子供がするようなことだ。
だけど、俺には……今の私には、これで精一杯なんだよ。
だからそんな子供みたいに、嬉しそうな顔をするな。
「もう一度、抱きしめても、いいですか?」
「いちいちそんなこと聞くなよ」
「恋に落ちると、誰もが臆病になるのです」
「そういうのは自分に自信の無い人間の言うことだ。お前が本気ならば、抱きたいと思ったら抱け! それが男だろ?」
そういうと、力任せではなくそっと触れるように私の背中に手を回し、体全体で愛撫するかのように私を抱きしめた。
もう、戻れない。
もうこの腕の中から、逃れることはできないと思った。
「明日から、また女に戻るから……」
「はい」
そして、どちらからと言うこともなく、今度は唇にキスをした。
時空戦士スピルバン 第36話「ムムム! ワーラー新戦力=ヨウキ?」(リッキーの椅子石化 エピソード)
人間彫像化としては押さえておくべきエピソードですので、そゆの興味ある人はどうぞ。
06/28のツイートまとめ
amulai
311/752本
06-28 21:19RT @Naba67: 二次元ドリームレーベル様からの「二次元コミックマガジン失禁少女Vol.2」にて、表紙と20pの漫画を描かせて頂きました。初めての商業で緊張しまくりですがどうかよろしくお願い致します! http://t.co/6Fjp7Jrn5G http://t.co/…
06-28 21:17RT @trinder_yuri: 森永みるく「くちびるためいきさくらいろ」のラストで、日本語版では「結婚はできないけど式は挙げられる」だったのが、アメリカ版では「結婚できるし式も挙げられる」になっている。 #同性婚 #GayMarriage #百合 #英語 http:/…
06-28 20:04「コンテンツ立国」に向けた戦略は正しい方向に向かっているのか? 〜「知財推進計画2015」に接して #BLOGOS http://t.co/JZ6lUYg4KN
06-28 20:00RT @F_TSF: 週間ランキング10位の王冠げっちゅ http://t.co/ss6qO940fq
06-28 07:28
エデンの園(16) by ありす & もりや あこ
目が覚めたとき、私の手はうつむいたまま目を閉じている、先生に握られていた。
前にもこんなことがあったな……と、ぼんやりと記憶を辿っていると、先生も気がついた。
「イヴさん……、心配しましたよ。でも無事で本当に良かった」
「……どうして、私を連れ戻したの?」
見回さなくても判る。ここはいつものあの部屋で、私が使っているベッドの上。
少しごわごわとした診察着を着せられていて、見飽きた心配そうな顔が目の前にあった。
柔らかなベッドと毛布、暖かな部屋。安全で退屈な、籠の中。
廃墟のコロニーで、木の実やこわれた空調システムの冷却水をすすり、枯れ草を集めて野宿し、野犬に怯えていたことが、夢のようだった。
「イヴさんは大切な方ですから、いつもそばにいていただかないと、困ります」
「……どうして、私のいる場所がわかったの?」
「コロニーのミラー制御に干渉して、あの区画の温度を下げました。生きていれば体温の高い人間なら、温度差を利用して、広く入り組んだ区画の中でも見つけられると思いました。でも、余り長くは出来ません。植物の生育に影響がありますし、なによりイヴさんが低体温症になってしまっては、大変ですから」
「おかげで風邪を引くかと思ったわ」
「それは、申し訳ありませんでした」
申し訳ないと言っている割には、先生は聞き分けの無い子供をあやす母親のような優しい笑顔で言った。
私はそれがなんだか悔しくてそっぽを向いた。
先生はそんな私の頭にそっと触れたかと思うと、適当に切り散らかした髪を手ですいた。
「髪、切ってしまったんですね。残念です、とても似合ってらしたのに」
「わた……、俺は男なんだ。だからあんな長ったらしい髪なんて邪魔なだけだ」
会話を続けているうちに、段々と思考がはっきりしてきた。
そうだ、俺は弱みを見せたりしちゃいけないんだ。だから……
……だけどそう思って、いきまいた結果がこのざまだった。
「ショートカットもお似合いかとも思いますが、そのままではちょっと……。後でハサミを持ってきますから、綺麗に整えましょう」
「余計なことはしなくていい。起きるから手を離してくれ」
握られたままだった手を振り払い、ベッドから起き上がったとたんに、ぐぅーと腹の虫が泣いた。
「いま、温かいスープを持ってきますね。いきなり重いものだとお腹を壊してしまいます。スープと、足りなければ柔らかいパンとチーズを持ってきますね」
腹が減っては何も出来ない。確かにここ数日ろくなものを食べていなかったせいか、少しめまいがする。
しばらくして、スープとパン、チーズとハムが添えられたトレイを持った奴が入ってきた。
「どうぞ。やけどしないように、スープはぬるめに用意しました。ゆっくり食べてください」
「見られていると食べにくいから、出てて欲しいんだけど」
「いやです」
「え?」
機械の癖に、逆らうのかよ!
「十日ぶりですよ? もっとよく顔を見せてください」
と私の頬に手を触れた。

「な、やめてよ」
「いいえ、本当に心配したんですよ、イヴさん」
といって私を抱きしめようとした。
「わかったから! スープがこぼれる」
「スープはこぼれても、また作れます。シーツや服が汚れたなら洗えばいい。でもイヴさんはこの世界でたった一人なんです。どうか、自分を大切にしてください」
「わ、わかったから……」
「本当ですか?」
「ほ、本当よ」
「じゃあ、そばにいてもいいですか?」
「い、……いいわ。好きにすれば?」
あんまり真剣に言うので、ついそう言ってしまった。
しかたなく私は、先生に見つめられながらスープをすすり、パンとチーズをかじった。
久しぶりのまともな食事に、胃がきゅうきゅうといった。
腹を満たすだけでなく、味わう食事がどれほど貴重なものかも思い知った。
ここは宇宙空間に切り離された、ほんの小さな世界。
たったこれっぽっちの食事を用意する事だって、本当はものすごく大変なことなのだ。
「はい、これは薬です。体に溜まった毒素を抜く働きもあります。鎮痛剤も要りますか? 生……お腹は痛みませんか?」
“生理中だから薬が必要だろう”と言わないところは、少しは気を使っているのか。
生理……はっとして見られているのも忘れて、パンツを確かめてしまった。
案の定、ちゃんと手当てされていた。
「その……、僕に診られるのがお嫌なのはわかっていますが、この場合は仕方なく……」
「え、ええ、判ってる。判ってるから、それ以上は言わないで……」
まったく、本当に情けない……。
06/27のツイートまとめ
amulai
257/592
06-27 23:06RT @Gaiaku_skn: 【定期】★「男の娘」と「女装男子」の違い男の娘…可愛い!でも女装してるとは限らない!!女装男子…女装してるけど、可愛いとは限らない
06-27 22:08200円づつ1500人から集めるの大変良い感じではあるが10万円出す奴が3人でも足りるのでそういう方向もあるのかも?
06-27 22:00RT @yorisoibengoshi: 日本なんて子どもの4人産んだら,子どものための学費を用意するためにがんがん稼がなくてはならなくて,稼ぐと税金バカスカ取られて,保育料額も半端ない額になって,おまけに所得制限を超えて,児童手当も貰えない。「お願いします!これ以上産まないで…
06-27 21:30RT @nyalra: でも僕がTSして美少女になったら、例え貧乏暮らしでも自分のこと愛してくれるフォロワーと結婚したいよ……
06-27 21:29成都でマーボードーフと火鍋食ってきた。美味かった。
06-27 21:24RT @kurumi_alca: Fさんの『個人情報は大切に』読了。試し読みで気に入ったら迷わずポチで問題ないです! 徐々に性転換が進んでいくところとか記憶が侵食していくところとか素晴らしいです!
06-27 21:12RT @F_TSF: 「個人情報は大切に」ですが、それなりに売れた場合、モノクロページの部分を現在のカラーページと同クオリティーでカラー化してもらう予定です。 なお、フルカラー化した場合、現在の購入者さんも再DLで入手できるようにします。
06-27 21:12RT @gooRote: 個人情報は大切に/TSFのF http://t.co/ta6d48UCEJ #DLsite何度も言うけどFさんのこの新作は最強のTSF+MCなのでみんな買おう。身体や振る舞いが無理矢理変えられて記憶まで侵食されていく過程が非常に上手い
06-27 21:10RT @F_TSF: TSF好きでまだプレイしていない人は、買って、プレイしような!TSFキチガイおじさんとの約束だ! カドゥケウスの呪い/無限軌道 http://t.co/fL3yO0TbAM #DLsite
06-27 21:07
エデンの園(15) by ありす & もりや あこ
私はいつの間にかあの、廃墟の街にいた。
長い間放置された、生活感の無い、無人の街。
急に激しい孤独感に襲われた。
この世界は、余りに寂しすぎる。
人間は一人では生きていけない。誰かの支えがなくては、とても一人では生きていけない。
それなら……?
“過去のイヴたちは、皆自殺してしまった……”
ふと、ALICEの言葉が思い出された。
そうか、それが原因だったんだ。
この作り物しかないこの世界に、たった一人でいる孤独に耐えられなかったんだ。
誰からも愛されず、誰も愛することができない、この世界に。
なら、私も死のうか……?
私が死ねば、もう再生できる可能性のある遺体は無いと、ALICEは確かそういっていた。
私が死ねば、この作り物の街に作り物だけが残って、永遠に軌道上を彷徨い続けることになる。
バカみたい……。
自分は今まで、死のうなんて考えたことなかった。
コロニー外壁のEVA作業で、どんなに厳しく過酷な条件でも、生存確率が一桁しかない状況でも決して諦めずに、自分の生をねじ込んできた。
スペースデブリに当たって右足を失ったときも、義足で元通りの職場に復帰できた。
3日間生死の境をさまようほどの大怪我をしたときも、1年かけてリハビリをして職場復帰した。
こんなことで、こんなことぐらいで、自殺を考えてしまうなんて、負けを認めたみたいで癪だ!
今の私にはたった一人残された寂しさよりも、自分を騙し、惑わせたあの機械どもに対する怒りのほうが強かった。
仮に自殺するにしても、あの連中に一泡吹かせてからにしたかった。
本当に私のこと、バカにして!
絶対に見返してやるんだから!
怒りに任せて街を歩いているうちに、私は日用品とかを調達するのに使っていた、百貨店の前を通りかかった。
半分割れて、ほとんどの部分が曇っているショーウィンドウのガラスに、ぼやっとした人影が映った。
不機嫌そうな少女。背中の中ほどまで伸びた、長い栗色の髪。
「はっくしょん!」
そうだ、さっき池に投げ込まれて、濡れたままだった。
私は着替えを調達するべく、朽ちかけた百貨店の中に入った。
動きやすい服がいいなと思い、着れそうな服を選んだ。
ところどころにひびが入り、こびりついた埃でぼうっと曇った鏡の前に立ち、似合うかどうかを確かめようとして、私ははっとなった。
濡れたワンピースの代わりに選んだのは、飾り気は無いものの薄緑色のワンピースだった。
そうだ、私がこんな格好をしているから、いけないんだ。
こんな女の格好をしているから、あのポンコツが私をからかうんだ。
私はワンピースを鏡にたたきつけると、着ていたものも全部脱ぎ捨てた。
そして男性用の服を探し始めた。
紳士服売り場は、崩れかけた階段を上った3階にあった。
ほとんど手付かずのまま残されている感じではあったが、埃だらけの上に破れていたり、虫か何かに食われたのか、ボロボロになっていたりするようなものばかりだった。
婦人服売り場のものは、それほど痛んでいるものが少なかったところを考えると、おそらく過去のイヴたちのために、つい最近まで、細々と製造を続けていたのかもしれない。
諦めかけたところに、なんとか着れそうな「男性用のシャツとズボン」を見つけることが出来た。
裸の上にそれを身に着けたが、ごわごわして、やはり下着も無いと駄目なようだった。
だが、こちらは見る限り全滅だった。
「下着……はどうしようもないか」
階下に降りて、下着だけは女性用のものの中から、如何にもな刺繍やらレースの付いたものを避け、スポーツ用と思われる、シンプルで柔軟性のあるものを何着か選んだ。
「これでよし。動きやすいし、これなら……」
近くにあった鏡をのぞいてみたが、そこにはやはり、長い髪を乱れさせた活発そうな少女が映っているだけだった。
「この髪がいけないな、はさみかナイフを探そう」
期待に反して、ナイフの類は全てボロボロに朽ちていて使い物にならず、セラミック製のはさみが唯一、物を切ることができそうだった。
それを手に取り、鏡なんか見ずに適当に髪を切り落とした。
外見なんか、どうだっていい。誰に見られるわけでなし、自分が動きやすければいいのだ。
「こんなものかな……」
手で探って、短く切り落としたのを確かめていると、遠くに電気自動車の止まる音と、それに続いて足音が聞こえた。
一瞬、どこかに身を隠すことを考えたけど、そんなことをしても大して意味が無いことに気が付いた。
どうやっているかは知らないが、自分は常に監視されているのだ。
おそらくコロニー内の行動範囲内のあちこちに、まだ生きているセンサとかカメラがあるに違いない。だから直ぐに居場所がばれてしまうのだ。
ならば、こちらから出て行って、はっきりと宣言したほうが良いと言うものだ。
薄暗闇の中、奴が歩く音が段々と近づいてきて、やがて止まった。
「イヴさん、そこにいるんでしょう? 出てきてくれませんか?」
「わた、俺ならここにいるぞ」
俺は侮られることの無いように胸を張って、進み出た。
「イヴさん、その髪は……」
「邪魔だから切った。何か文句あるか!」
「ショートカットもお似合いかとも思いますが、いくらなんでもそのままでは……。綺麗に切り揃えましょう、僕がやってあげますよ」
「近づくな! 近づいたら、このハサミ……」
そこまで言いかけたところで、血相を変えた奴が素早く俺に近づき、俺の腕を掴んでハサミを奪い取ろうとした。
「イヴさん! 駄目です! 止めて下さい! そんなこと止めて下さい!!」
「痛い! 手を離せ!」
「駄目です、イヴさん、自殺なんて!!」
「何を言ってやがる! 俺は自殺なんて……」
所詮体は少女のもの、ちょっともみ合っただけで、ハサミはあっさりと奪い取られてしまった。
「返せよ! それはまだ使いたいんだ」
刃物のひとつもなければサバイバル生活なんて出来ない。
俺はもうあの部屋に戻る気はなかった。
「駄目です! イヴさん! 自殺なんて」
「しねえよ! 誰が自殺なんかするか!」
「しかし、今までの人たちは……」
「俺は自殺なんかしない。してたまるか! お前らを見返すまで、人間のほうがずっと上なんだってことを思い知らせてやるまで、俺は死なない」
「本当ですか? イヴさん」
「俺を“イヴ”なんて呼ぶな! 俺は“ショータ”だ! イヴなんて名前じゃない!」
「判りましたから、落ち着きましょう」
「何が判ったと言うんだ! 俺はもうお前らの人形なんかじゃないぞ! それから俺を女使いするのはやめろ、俺は男なんだ。だから好きだとか、恋しているだとか言うのをやめろ!」
「イヴさん……、僕のことが嫌いなんですか?」
「だいっきらいだ! もう二度と近づくな!」
そう言い放つと、俺はその場から逃げるように駆け出した。
奴が乗ってきた電気自動車を奪い、今度は焦って事故らないように気をつけながら、なるべく遠くへ行こうと運転を続けた。
円筒形のコロニー内壁に広がる。地平線がせりあがって見える廃墟の街。
頭上には最初に自分がいたと思われる、周りと比較して整った区画が見えた。
しかし今時分がいる辺りは、荒廃しきった廃墟しかない。
ALICEの監視網からは外れているのか、あの忌々しいアンドロイドが近くにいる気配もなく、動いている機械などは何一つ見かけなかった。
俺は点在する公園の植物から侵食された、半分森のようになっている一角を、ねぐらにしていた。
しかし生活は最低。サバイバルなんて言葉が生易しく思えるほど、酷かった。
水はなんとか確保できたものの、一番の問題は食料だった。
そもそも1300年間も放置されたままの人工のコロニー内部で、食料が調達できるほうがおかしかった。
あれはALICEやあのアンドロイド、メンテナンスロボットたちが維持している、小さな世界でだけで得ることが出来るのだということを思い知った。
小鳥か小動物を捕まえられないかとも思ったが、彼らはすばしっこく、私の小さな手の届く範囲ではなかったし、毒々しい色の昆虫は死んでも食べたくなかった。
ほとんど一日中歩き回って得られるのは、僅かな食べられる木の実と、名前も知らない植物の柔らかい根の一部だけ。
それも一度はやはり毒素を含んでいたものを食べてしまったのか、激しい下痢を起こし、何時間も起き上がることすら出来ないこともあった。
更に悪いことに、昨日からまた生理が始まってしまっていた。下り物と出血で汚してしまった下着とズボンは、今もねぐらの樹に干したままだった。
おかげで昨夜からここにうずくまったまま、動く気力も湧かなかった。
腹は減っているようだが、食欲が一切無いのが救いといえば救いだった。
時計が無いから定かではないが、数日前からミラーパネルの制御がおかしくなったのか、常に夕刻のような薄暗いままで、気温まで低くなっていた。
時折、弱弱しい虫の鳴き声が聞こえる。
それ以外、物音ひとつしない寂しい世界。
一体、何をやっているんだろう。
俺は枯れ草を敷き詰めた寝床に、野良犬のようにうずくまっていた。
一人で生きていくと決意したのに、この体たらくだ。
このまま、野たれ死ぬのかな……。
“自殺なんかしてたまるか”と大見得を切ったわりに、これじゃ自殺と大してかわりが無い。
人間は、自分一人じゃ生きていけないんだ。
野生動物ならば、中には群れを作らず、単独で生きていくことが出来るものもいるというのに、人間とはなんと脆弱な生き物なのだろうか?
ぼうっとそんなことを考えていると、がさがさと言う音が聞こえた。
耳を済ませると、まだ近くではないが、風に揺れる草の音とは異なる、何者かかが近づいてくる気配があった。
これはもしかしたらまずい状況かもしれない。
人を襲えるほどの大型動物は一度も見たことは無いが、数日前から確かに近くの廃墟を何かが動き回っている気配だけは感じていた。
だが、見たことが無いというだけで、例えば野犬とかが生き残っていて、獲物を探して徘徊しているのかもしれない。
獲物を探して?
ふと、干してあったズボンと下着が目に入る。
まずい……。まさか血の臭いを嗅ぎつけて、何かが……?
もし危険な大型動物だったら、今の自分には戦う術が無い。
足をくじいたときに使っていた、杖代わりの木の枝が一本あるだけだった。
手を伸ばしてそれを掴もうとしている間に、がさがさと草を掻き分ける音が近づいてきた。
かろうじて手元に引き寄せ、息を潜めて待ち構えていると、耳をつんざくような警報音とともに、ポリバケツに足が生えたようなロボットが飛び込んできた。
見つかった!
ロボットを黙らせて逃げようとしたが、立ち上がりかけたところで気力が尽き、俺はその場に崩れ落ちて意識を失ってしまった。
薄れ行く意識の中で、先生が必死になって自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。