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子供の神様 (21) by.アイニス
(21)
水咲と別れて家に帰った伍良は、疲れを覚えてベッドに突っ伏した。自分の部屋に戻って気が抜けたのだ。初めてのことばかりで肉体的にも精神的にも負担が大きかった。
「……充実した一日だったとは思うけど、疲れた。眠い」
(水咲は親切じゃったなぁ。妾もミサンガとやらを作りたくなったぞ)
「しばらくはミシンや針を使わなくても大丈夫なものを教えてくれるらしい。心配だったけど、何とか続けられそうだ」
(妾も手芸部の活動に参加したくなったわ)
「俺自身の腕を鍛えないと意味がないだろ」
(見ているだけというのはつまらん)
眠くてたまらないというのに、瑞穂が「つまらん」を連呼するので伍良はゆっくりと休めない。疲れている時に子供の相手をするのは骨が折れる。
「……俺は少し寝たいから静かにしてくれ。その間なら好きにしていいぞ」
(おおっ、そうか。それなら黙っていよう)
瑞穂の相手をするのが面倒になって、伍良は奥の手を出した。体を貸すことに多少の不安はあるが、限界まで疲れているので休みたい。瑞穂が現代の常識に疎いといっても、そう無茶なことはしないだろう。静かになった途端に伍良は熟睡していた。
目覚めたのは翌朝だった。一時間くらいで起きるつもりが、完全に寝てしまった。またもやネグリジェを着ていた。瑞穂が着替えさせたのだろう。苦笑するだけでさすがに驚かない。
「着心地はそんなに悪くないか」
恥ずかしいビジュアルを容認できるなら、暑くなりつつある季節に着るのはありだろう。誰かに見せる恰好ではないので、意識し過ぎない方がいいかもしれない。
「少し腹がもたれている気がするな」
おそらく瑞穂が伍良の代わりに夕飯を食べたのだろう。一晩経っているというのに、まだ腹が重たかった。瑞穂が体に住み着いてからは空腹感が付きまとっていたのに珍しい状態だ。
「今日は朝食を減らすか」
そんなに食べるつもりはなかったが、母親の用意した朝食は白米と味噌汁だけだった。さすがに質素過ぎると思いながら味噌汁に口をつける。具が全く入ってなかった。
「他におかずはないの?」
「伍良が昨日の夕飯で冷蔵庫のものを全て食べちゃったからね。悪いけどそれだけよ」
「底なしに食べるから心配になったぞ。買い置きのカップラーメンまで食べてしまったからな」
「そ、そうだったね」
どうやら瑞穂は伍良の目がないのをいいことに限界まで食料を胃に詰めたようだ。冷蔵庫を覗いてみると、調味料以外の食材が消えている。目覚めた時に腹が重たいわけだ。
「明日からはまた仕事が始められそうだ。医者が怪我の治りに驚いていた」
「それは安心したよ」
あとでどう瑞穂を叱ろうか考えていると、父親が話しかけてきた。父親の足を見るとギブスが外れている。あと一か月はかかる骨折だったのに、もう完治しているようだ。最後に瑞穂が使った力で怪我の治りが早まったらしい。
「瑞穂を怒るつもりだったのに、出鼻をくじかれたな」
父親が元気になった姿を見ると、あまり瑞穂には強いことを言えない。今日のところは大目に見ておこう。
「今日はちょっと遅くなるかもしれない。バイトをしようと思うんだ」
祐輔が変なバイト先を紹介するとは思わないが、面接で時間を取られるかもしれない。口うるさい両親ではないが、帰りが遅くなったら心配するだろう。
「学業に障りがないならいいぞ。何か欲しいものでもあるのか?」
「手芸部に入ろうと思ってね。必要な材料は自分の小遣いで買いたいんだ」
「伍良が女の子らしいことをしたいなんて、今日は雨かしら」
手芸部に入ると聞いて、両親が目を丸くして驚いている。男勝りの女の子だと思われているからだろう。
「三日坊主に終わらなければいいがなぁ」
「頑張るつもりだよ。それでいらない生地とかあれば譲って欲しいけど」
「確かあったと思うから探してみるわ。でも、伍良がねぇ」
両親が意外そうな目で見ている。感情的にはちょっと面白くないが、伍良も似合わないことをしているという自覚はあるので苦笑していた。
学校二日目になると、多少は気持ちが落ち着いてきた。伍良が女になったことに誰も違和感を持っていない。男の名前で呼ばれなければ、伍良が昔から女だったと思えるほどだ。名前の件で突っ込めば人によっては以前の記憶が蘇るかもしれないが、大きな騒ぎになる可能性もある。下手な手は打てなかった。
「見かけと違って神様の力は恐ろしいな」
伍良が男だった痕跡は残っているが、日常生活では誰も思い出さないレベルになっている。子供のような外見と性格だが、瑞穂の力はかなりのものだった。
「誰も騒がず何事も起こらないと、俺ばかりが空回りしている気分になる。この環境に慣れる前に早く男に戻らないとなぁ」
伍良だけが困っていて、誰も気にしないのだ。孤軍奮闘しているようで気が滅入る。あまり考えないようにしているが、頑張っても元に戻れる可能性は低いのだ。仮に元に戻れたとしてもいつになるかわからない。
「いけないな。一つ一つ終わらせていこう」
伍良は首を振って暗い考えを振り払った。まずは目先の目標である奉納物の修理を目指そう。それには技術と金が必要だ。いざという時の為にも金は用意しておいた方がいいだろう。
「手間を取らせて悪いな」
「ちょうどバイトを探している店があったから、タイミングとしては良かったよ」
放課後になって、祐輔と一緒に下校する。バイト先には話がついているらしい。
「どんな店なんだ?」
「喫茶店だね」
「在庫の整理でもすればいいのか。それとも皿洗いとか。肉体労働なら任せておけって」
「し、仕事の内容はマスターから聞いてよ」
体力には自信があるのでどんな仕事でもするつもりだったが、伍良の言葉に祐輔は挙動不審になって目を泳がせていた。
「それにしても伍良が手芸部に入るなんて意外だったよ。部活に入るなら運動部だと思っていた」
「俺には似合わないか」
腕を磨く必要がなければ、手芸部という選択肢はなかったとは思う。祐輔の言い分はもっともなので、伍良はほろ苦い笑いを浮かべた。
「そんなことないけどさ。それは伍良が作ったミサンガ?」
「ミサキチに教わって作ってみたよ。まだまだ編み方が甘いけどな」
「よ、よければ俺にも作ってもらえないかな? そ、その、勝てるように、とか、願いを込めて」
伍良に口ごもりながら頼みごとをした祐輔は、大汗をかいて赤い顔をしていた。
「おいおい、その程度の頼みで緊張し過ぎだ。別に構わないぞ。ただ俺が作るよりミサキチが作る方が上手いけどなぁ」
「伍良に作って欲しいんだ!」
祐輔がいきなり大声を出したので、伍良は驚いて仰け反りそうになった。親友の態度が不可解だが、強く頼まれるのは悪い気がしなかった。
「大声を出して悪かったな。伍良ならサッカーに詳しいからさ」
「それもそうだな。サッカーの勝利を祈るなら、俺が作った方がいいか」
「頼むよ」
「わかった。技術はないから複雑なのは無理だけど、どんな色にしたらいい?」
バイトを紹介してもらうのだ。これくらいのことなら容易い。それに誰かの為に作るというのは練習の励みになるだろう。
「伍良と同じ色でいいよ」
「ミサキチに技術を習えば、少しは工夫できると思うぞ」
「いや、本当に同じでいいから」
「まっ、いいけどさ」
模様とかを入れて少しは凝ったものを作ろうと思ったのに、祐輔は頑なに伍良がしているミサンガと同じデザインを求めていた。シンプルな方が祐輔の好みだろうか。気合を入れて作ろうと思ったので、伍良はちょっと残念だった。
08/22のツイートまとめ
- amulai
RT @with_kagyo: 何をしてもパクリ疑惑になるんじゃないかと怯えるデザイナーに勇気を!!!!! http://t.co/SuJ231edso
08-22 23:53ふるさと納税、肉を召喚することが多いのだが、納豆を召喚したところ15パック来て、賞味期限が8日なのでちょっと焦ってる。
08-22 23:53プレミアム付き商品券、12万円使い切ったった。
08-22 23:46@fukami_otoha 買いました!良かったすよ~。こうでなくては!
08-22 23:42RT @rannmakoto: 女体化体験ができる人生ゲームが大人気、着替えから出産まで女の子を体験1人から5人までプレイ可能制限時間は開始から24時間(過ぎると戻れない)とか
08-22 23:40奥さんを広報にしたりするの、節税的にすごく分かるけど、ピンチの時にはまったくの逆効果だから危険というのが今回の教訓ですね。
08-22 22:17RT @gujira4: バニーの日だったみたいですね(過去形)バニー好きなので日遅れだけど口の悪いバニー少年の恋rkgk。 http://t.co/PDpfPF1eQg
08-22 19:57RT @KamedaKeisuke: 人間を強制的にサナギへと変える特殊な薬物を用いて美少女を化け物に変えてしまう、そんな秘密結社を求めています。サナギってクソしこれるだろ、サナギの殻の中でいっかいどろどろに溶かされるんだぞ、クッソしこれるだろ。(セミの話じゃなくなってる
08-22 19:44RT @joposato: ネーム送った・たまには1P丸ごと。先日のこれに繋がるんです。https://t.co/G6SyGXli4x 月末まで作業。 http://t.co/q9KO13mN3X
08-22 17:37RT @johdan21: 戦国時代。家督をつぐはずだった嫡男が弟の陰謀で女体化。家督を奪われたばかりか政略結婚に使われ隣国の殿の正室に。ところがこの殿さまが好人物でいつのまにかすっかり妻になった主人公。家督を奪った弟は戦で城を落とされ腹を切る羽目に……#TSFの卵僕が書く…
08-22 16:26