FC2ブログ

Latest Entries

『性転換ペンダント』(18禁)第1話

文:さささ キャラ・イラスト:シガハナコ

(一)ペンダント

 リリリリリ リリリリリ
 目覚まし時計が鳴り響く。
「何だ、夢か。随分生々しかったな。あれ、でもどんな夢だったっけ?」
 身体が重く、目も開かない。汗でぐっしょりと濡れた寝巻きを脱いで、ふらふらとシャワーを浴びに行く。眠気眼をこすりながら髪を洗っていると、何かが指に引っかかる。冷たい金属製の糸に似た何かだ。首の後ろから順に追っていくと、胸の中央で石のようなものにたどり着く。それは鮮やかに光るブルー・サファイアの宝石だった。
 吸い込まれるような美しい輝きに、思わず見とれてしまう。が、すぐに我に返る。
「いつの間に、こんなものを着けたんだろう」
 何が何だか分からなかった。これまでネックレスの類など身につけたことがない。それなのに、なぜか一度も触ったことも見たこともないペンダントが、自分の首にかかっている。清楚な少女が着けるような、気品溢れる装飾まで施されている。
「とにかく外さないと」
 ペンダントを何度も回しながら懸命につなぎ目を探すが、どうしても見つからない。無理やり外そうと引っぱったり、軽く叩いたりしてみたものの、首まわりにうっすらあとが残るだけだった。工具でぶった切ることも考えたが、人様のものを無下に扱ってしまうのも気が引けた。
「しょうがないか」
 外す方法が見つかるまで、我慢するとしよう。

 一限から授業があるので無駄に時間は過ごせない。シャワー室をさっさと出て、洗面台の前で髪を乾かし体を拭いていると、鏡に反射した自分の姿が目に入る。
「驚いた。思ったよりも大きな宝石だ」
 実を言うと、「アクセサリーなんて男は着けないほうがいい」と思っていた。もちろん自分が着けているところなんて、思い浮かべたことすらない。
 だけど鏡の中を見ていると、ふんわりとした気持ちが溢れてきて、これまでの考え方など、どうでもよくなってしまう。体に力が入らなくなり、頭がぼやけてくる。あれ、何でオレはただ突っ立っているんだろう。

 胸元の光は、だんだん輝きを増しているように見える。オレはそこから目を離せない。森のせせらぎを感じさせるその透き通った結晶は、オレの心を新緑の奥地へといざなう。さわやかな風の匂いを感じ、息を大きく吸う。涼しげな空気が、体の隅々まで広がっていく。息を吸って、ゆっくり吐く。また大きく吸って、大きく吐く。これを何度も繰り返しているうちに、だんだん気持ちが落ち着いてくる。気がつくとオレは、見たこともない清らかな場所にいた。
 そこは美しい音色が溢れる世界。どこまでも続く森の四方から、小鳥のさえずりが聞こえてくる。澄んだ水たまりに、やわらかな葉っぱから大きめの露がぽつり、ぽつりと落ちていく。
「ポトッ ポトッ」
 静かな水に波紋が広がる。そしてささやきが、波間をゆっくり伝いながら胸の中に入ってくる。伸びやかな少女の声が、少しずつ、少しずつ大きくなる。


「また会ったね、お兄ちゃん。そのペンダント、すごくよく似合ってるよ。そういえば今日は何の日か知ってる? 教えてほしい?
 今日は、あなたが生まれた日。お兄ちゃん、ううん、お姉ちゃんの誕生日だよ。
 何をそんなに驚いてるの? あなたは今から、女の子の仲間入りをするの。可憐な一輪の花に生まれ変わるの。もう二度と男には戻れないからね。でも、心配しなくても大丈夫。身も心も全て変えてあげるから。恋する乙女にしてあげるから。覚悟はできた? じゃあ始めようか。

 まず服装をちゃんとしようね。もう学ランなんて着ちゃダメだよ。おしとやかなあなたは、目の前のショーツをいつものようにはいて……そうだよ、よく似合ってる。まだ胸は膨らみ始めたばかりだけど、ブラもちゃんと着けようね。服がこすれて感じちゃうから。次にタンクトップとスカート、上着を着て、スカーフをかわいく巻けば完成だよ。
 えっ、うまく巻けない? 大丈夫。時間をかけてゆっくりやれば。ねっ、きれいに仕上がったね。
 これからの姿があなた本来の姿。本当の純真な姿。元々はとても素敵な美人さんに、なるはずだったんだよ。それが私の手違いで、こんな男の子になっちゃって……。ごめんね、私の大事なお人形さん。でも大丈夫だよ、まだまだ間に合うから。
 それにしても、少し髪が伸びただけなのに、もう制服も様になってるね。こんなかわいらしい子、自分でも見たことないでしょ? やっぱり、そうなるべくしてできた魂だけのことはあるね。かわいいって自覚も出てきたかな? って、答えられるはずないか。ぼけーっとして、体の力が抜けてるもんね。目が据わっちゃってるよ。でも、心臓はドキドキしているみたいだね。何かを期待しているのかな?
 後は何をすればいいかって? 特にないかな。後一時間くらい、ずっとその石を見つめていればいいと思うよ。ぼーっと、ただ、ぼーっと見つめているうちに、男の子の心も消えていくはずだから。消えてなくなっちゃうのに、気づいてないのかな? ふふっ、目がとろーんとなっちゃって。きっと夢だと思っているんだよね。
 そういえば、学校は九時からだっけ。ここからは走って五分だから……あっごめん、急がないと間に合わないかも。まぁいっか。私、どうなっても知らないよ」

「う、うーん。あれ? あれれ? 僕、何をしてるんだろう」
 ぼーっとした頭をぶんぶん振る。何かがおかしい。いや、何もかもがおかしい。
 鏡の中の少女が戸惑っている。顔立ちは僕を女性的にした感じなのだが、なぜか自分が映っているはずの場所にいる。だけど、もしこれが自分だとすると、無意識のうちに女装したということになる。
 そんなことは、もちろんありえない。
 僕が首を傾げると、少女も同じ側に首を傾げる。目を閉じてからもう一度開ける。すると鏡の中の少女も、同じように目をぱちくりさせる。僕がどんなに動こうが、彼女も全く同時に動く。
 鏡に異状はなさそうだから、納得はいかないけど、やっぱりこれは僕なんだろう。うーん、似合っているのかな……って何を考えているんだ。そんな趣味、僕にはないよ。

 不思議なペンダントは、相変わらず首にかかったままだ。時計はいつものじゃなくて、女物になっている。でも今はそれ以上に時間のほうが気になる。一瞬ありえない時刻が見えた気がするから、余計にね。
 腕をさっと曲げつつ、手首を返す。
 えっ! もしかして本当に九時? いや、おかしいな。シャワーを浴び始めたのは確かに七時だし、こんな時間なはずはない。そうだ、テレビの時計は、きっとまだ八時くらいのはずだ。
 急いでリモコンのボタンを押す。
「びっくりモーニングの時間です!」
 見たことのない番組がやっている。時刻はやはり九時を示していた。これまで無遅刻・無欠席を貫いてきて、みんなから「バカは風邪を引かなくていいよなぁ」とからかわれてきた。たとえ何を言われても、時間は必ず守ってきた。そんな僕が遅れるなんてありえない。絶対にありえないけど……。
「やばい、急がないと!」と大声をあげながら、僕は走って学校へ向かった。

================
前回(プロローグ)のあらすじ
 主人公は夢で少女に助けを求められる。青い人形を染め直したいのだという。少女は助言のお礼にペンダントを主人公の首掛け、「あなたは女の子になる」と変なことを言う。そして彼を奇妙な力で現実世界へと転送した。

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

 

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2015-11