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【依頼小説】「あなにやし! 入れ替わってみたら、憧れの先輩は隠れ喪女だった」

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 1

 才女と呼ぶのは古くさいし、現代ではポリコレで叩かれかねない言葉だ。でもそんなことを言っても、ウチのツンツン部長はそう呼ぶ以外の言葉を知らない。ああ……ウチってのは、一宮学園高校パソコン部のこと。ちなみに一宮は「いっく」と読む。
 何でもイザナギとイザナミノミコトを祀った神社に関係があるみたいで、制服のエンブレムについている『Z』はそのお二人を表すイニシャルらしい。ちなみに校内にあった小さな神社は、去年の台風で倒れた木の下敷きになって全壊したままだったりする。
 普通科高校のパソコン部活動と言ったら、CGを描いたりオリジナルのゲームやロボットの自律行動プログラムを組んだり、そんな活動がほとんどだろうけどウチの部長……あ、名前は澤堂律華(さわどうりつか)で3年生。まあ、ぶっちゃけ俺の憧れている先輩。
 そんなことは脇に置いて。あー。彼女は、『汎用AI』の構築が夢だそうだ。もうどっかの企業のプラットフォームを使わせてもらって、『顔認識登校確認モデル』とかを作っている。
 いま彼女が取り組んでいるのが『メンタル健康診断モデル』で、体の調子から精神的なストレスや鬱の傾向まで読み取ってしまうモデルの開発。
でも学校にあるようなパソコンじゃ能力が全然足りなくて、理想とするモデルの開発は大学か専門学校に入ってからでなくちゃ無理だそうだ。
「涼宮ぁ!」
 俺が期末考査に向けて集中勉強している古文の参考書を読んでいると、澤堂先輩に呼ばれた。今日は全部員のメンタルデータ取りで、大きな銅板のセンサーに手をあてていろいろ読み取る作業が続いている。
「涼宮和人、血液型は?」
「Aです。牡牛座」
「星座なんか聞いてない」
「メンタルだから関係あるんじゃないですか?」
「お空じゃなくて頭の中。星座占いなんか関係ないの。はい、センサーに手を置いて」
 どこから持って来たのか、センサーは幅10センチ以上、長さは50センチくらいある銅の板だ。あちこちサビも出ている。
「澤堂、もう先帰るぞ」
「はーい」
 澤堂先輩にこきつかわれて、作業が終わった部員たちは逃げるように帰ってい行く。気がついたら部室の中には俺と先輩だけだ。
「先輩。これ、どこから持って来たんです?」
「講堂の横」
 澤堂先輩は、モニターをのぞき込んでキーボードを打ちながら言った。俺は何だか嫌な予感がした。
「講堂の横って……もしかして、神社ですか?」
「そうよ」
 壊れた神社はご神体だけ校長室に運ばれて、建物はブルーシートで包まれたままだ。これは大きさと形からして、神社の銘が書いてある看板みたいなアレだ。
「うえ……マズくないですか?」
「いいから早くして! もうあんたで最後なんだから」
 先輩は脚を組んだまま、椅子を回して俺に向いた。スカートがずり上がって、裾から黒ストッキングのランガードまで見えてしまった。無防備と言うか、ぜんぜん気にしていないのだ。俺にとってありがたいことだ。
「はいはい……」
 逆らえるはずもないし、逆らってもいいことは何もない。
「明日からの3連休全部使ってデータ解析やるんだから。リストの方頼むわよ」
 3年生がみんな嫌がって、入力作業は全部俺に回ってきた。
「どっか遊びに行ったりしないんですか?」
「放っといて。ぴったり手を押しつけるのよ」
 まあ、俺としては密かに憧れている澤堂先輩の手伝いができるのは悪くないと思っている。うまくすれば、一人暮らしだと言う先輩のワンルームマンションで作業する可能性もゼロじゃない。
 先輩の代わりに作業をしながら、疲れて眠っている先輩の脚を盗み見て。あわよくば……。
「ちゃんと付けてる?」
 先輩は数秒モニターを見つめて、険しい表情で俺の方を向いた。
「はい」
 俺は夢想から呼び戻された。先輩は何度かマウスとキーボードを操作して、首を傾げている。
「あんた、手のひら乾いてない?」
「普通だと思いますけど」
 先輩は俺の横に来て、銅板に繋いである配線を調べた。それから自分の手を銅板に押しあてた。先輩の髪の匂い、ちょっと胸が苦しくなるほど萌えた。
「あなにやし、えをとめを(ああ、なんていい女)」
 思わず、古事記に出てきた言葉をつぶやいた。
「涼宮くん。ちょっと、見……」
 先輩の声が途切れた。同時に俺はめまいを感じて立っていられなくなった。先輩も膝をついて、ずるずる崩れ落ちている。
「あ……」
 銅板に置いている手が冷たい。痛みを感じるほど冷たい。俺は片手で机の端にしがみついて、倒れかかる先輩を体で支えた。
「誰か……」
 
 息苦しくて目が覚めた。俺は目を閉じたまま、2度3度とゆっくり呼吸した。息を吸うたびに、先輩の髪の匂いが胸の中に流れ込んでくる。
「うう……」
 呻き声を上げて、体を起こそうとした。声が変だった。
「ああ……」
 目を開けて、手で顔をこすった。
「あれ?」
 気のせいか、手が小さい。指が細い。
「え?」
 顔の上に手を差し上げて見た。何かが変だと思った。制服の袖にカフスが付いている。カフス付きの上着は女子のセーラー服だ。
 俺はうっすら残るめまいを振り払いながらのろのろと体を起こした。髪が顔にかかって邪魔だ。手で払って髪を手で梳いた。なんで急に肩にかかるほど髪が伸びたのか。
「せんぱ……あ?」
 声が変だ。こんな細くて高い声、まるで女だ。思わず手をあてた首は細くて、肌はなめらかだった。
「えっ?」
 視線を下げると、思い切りつき出したセーラー服の胸が視線を塞ぐ。その下に、黒いストッキングをはいた脚。恐る恐る、手を胸にあててみた。手に、布の感触。胸に、軽く圧迫される感触。
「俺は……」
 女の声がそう言った。
「俺は、涼宮……和人だよな?」
 誰も、『そうだ』とは言ってくれなかった。代わりにかすかな呻き声が聞こえた。
「まさか……ね……」
 もの凄く嫌な予感に怯えながら、声が聞こえた背後に視線を向けた。俺がいた。
「マジかよ……」
 女の声がつぶやいた。
「俺が澤堂先輩で……ってことは、俺は……あっちは、いや……」
 何が何だかわからなくなった。あまりの出来事に頭の中がフリーズして、そのうちに俺が起きた。いや。俺の、体の方が。
 たぶん、状況からすると。俺の体の方には澤堂先輩の意識が入っているはずで。そうでなかったらもっとわけのわからないことになる。
「……だれ?」
 目を見開いて、たっぷり1分も見つめ合って。男の声が言った。つまり、俺の体に入っている澤堂先輩だと思う。気の利いた冗談でも言いたいところだったが、脳は麻痺したままで何も思い浮かばなかった。
「体は……あな、た。あ……澤堂律華で。何て言うか、意識? は、涼宮和人です。あの……そっちは、えーと。澤堂先輩、ですよ、ね?」
 澤堂先輩が入った俺の体は、目を見開いてしばらく固まっていた。
「あの……」
 俺はどうしていいのかわからなくて、無意識にスカートの裾から出ている腿を手でさすっていた。ストッキングのザラザラ感が気持ち良かった。
「あの……先輩。大丈夫、ですか?」
 先輩は……俺の体は、目を見開いたまま手で自分の髪や顔を触っていた。それから手のひらを拡げて、じっと見入っていた。
「どう……して?」
 手を見つめたまま、先輩が聞いた。
「俺に……わかるはず、ないでしょ?」
「バグった?」
 ふいに目を上げて先輩が聞いた。『俺』に見つめられて俺はもの凄く心地が悪かった。
「パソコンのプログラムで、こんなになりますか?」
「もう一度、やってみよう」
 先輩は立ち上がって、よろけながらパソコンに取り付いた。
「あ……」
 モニターが青い、ブルースクリーンだ。
「クラッシュ、してる……」
 先輩が絶望の声を上げた。
 先輩と俺は、こそこそと逃げるよう学校から出た。
「もしこのSSDがいかれていても、家にバックアップあるから」
 俺は……先輩の体に入っている俺は。いや俺が入っている先輩の体と言うか。とにかく、例の銅板を持たされていた。適当に紙で包んでいてもやっぱり目立つ。
「鍵、そっちが持ってるのよ。カバンのサイドポケット」
 先輩に言われて、俺はあたふたと鍵を取り出して渡した。
「中で見たこと、誰にも言うなよ」
 先輩が言った。男の声だから完全に男の口調だった。ドアを開けた瞬間、脅された理由がわかった。
 俺は玄関で立ちすくんだ。ワンルームの部屋、ゴミやマンガ本やらで床がぜんぜん見えない。ゴミの大半はポテトチップの空き袋らしい。
「早く入って! ドア閉めて!」
 怒られた。一歩ごとに、脚の下を確かめて気を配りながら部屋に入った。ベッドの上とパソコンデスクの椅子以外には座る場所もない。
「ラッキー。これは、生きてる」
 パソコンに、学校から持ち帰ってきたSSDを繋いで先輩が声を上げた。
「これ……どこ置きますか?」
「てきとーに、立てかけておいて」
 そんな場所すら見当たらないので、俺は銅板を抱えたままベッドに腰を下ろした。ふと気がつくと、また先輩がフリーズしている。
「どう……しました?」
「忘れて……る……」
「何を?」
「パスとか」
「え?」
 先輩は両手で頭を抱えて、椅子の上でかがみ込んだ。
「あ……」
 体を起こして俺を見つめた。
「そっちだ」
「何が?」
「メモリー、きっとそっちにあるんだわ」
「メモリーって……あ……」
 先輩が何を言っているのかわかった。二人の意識が入れ替わっても。メモリー、つまり脳の記憶はそのまま体の方に残っているかも知れない。
俺は先輩と代わった。パス、指が勝手に動いた。プログラムが起動した。
「学校で取ったデーター、読み込んでみて」
「はい。これ?」
 指示を受けながら操作していると、机の上にある写真立てが目に入った。幼い女の子と、その両親らしい男女。
『先輩の……小さいころかな?』
 突然『ずきん』と胸に痛みが走って、キーボードを打つ俺の手が停まった。思わず俺は両手で胸を押さえて、もの凄いボリュームを持った違和感に戸惑った。
「どうしたの?」
「先……輩……」
 声が震えて、涙が止まらなくなった。俺は震える手で写真立てを取り上げて、胸に抱いた。
「やめて! やめて! やめてー! あたしの記憶、読まないで!」
 先輩が写真をひったくった。
「だっ……て……」
 お父さんが事故で亡くなり、残されたお母さんは再婚したけどガンで亡くなった。継父さんはまた再婚。先輩は、ご両親はいるけど血は繋がっていない。そして新しいお母さんに子供ができて、先輩は家に居場所がなくなった。
 気まずい雰囲気の中で復旧作業は進んで、認証システムは正常に立ち上がった。らしい。正常かどうか、実際に使ってみないとわからない。
 そして、確かに作動はした。俺の、澤堂律華のメンタルデータを読み込むことはできた。でも二人並んで銅板に手を置いても、何も起こらなかった。虚脱して、二人でベッドに座り込んだ。
「腹、へってませんか?」
「うん……」
 先輩の……この体の記憶によれば、冷蔵庫にはコーラとソースとマヨネーズとしなびたレタスしか入っていなくて。部屋にある食糧はカップ麺が1個だった。棚にバターロールがあるけど手つかずのまま賞味期限が切れて2週間は経っている。それに、明らかにカビている。
「うち……来ませんか?」
 コンビニで何か買っても、この部屋で食事をするのは気が進まなかった。
「迷惑って言うか、まずいでしょ。女連れ込んだら」
「両親と姉は旅行です。誰もいません」
「あんた行かなかったんだ」
 おれは首かしげて小さく振った。
「何か、誰かに土日の作業手伝えって言われたような気がするんですよね」
 先輩が嫌な顔をした。
「最初から行きたくなかったんで、言い訳ができて良かったんですけど」
 着替えを出すためにクローゼットを開けると、服とマンガ本と結んだパンストとレジ袋のなだれが起きた。携帯の充電器を探すと3つも4つも出てくる。
「先輩……そのうち、掃除しに来てもいいですか?」
 俺がドアに鍵をかけながら聞くと、先輩は怒った顔で恥ずかしそうにそっぽを向いた。


 2

 俺の家では母が2日分くらいの飯を炊いていてくれて、鶏の照り焼きも冷蔵庫に入っていた。それを二人分に切り分けて、冷蔵庫にあったキャベツを細く切ってオリーブ油で炒めて塩とビネガーで味付け。あとは冷凍のシューマイとフリーズドライのみそ汁。
「なんか……すごい手慣れて、それに似合ってるわ」
 先輩が心地悪そうに箸を取り上げながら言った。箸がうまく持てないのか、何度か持ち直している。
「両親とも仕事持ちで、よく自分と姉の飯作ってたんです」
「ああ……そうだったわね……」
 俺と同じく、先輩も俺の記憶を読み始めてじまっているようだ。俺も箸を取り上げたが、『握り箸』になっていたので焦った。
「あの……先輩。いつも、こーやって箸持ってます?」
 聞くと、恥ずかしそうに頷いた。
 『俺が入っている間に直せるかな』ぎこちない箸使いになっている手、自分の手ではないように感じる。事実、俺の手じゃない。
「お湯……入れてますから、先にフロ入ってください。着替えとか出しておきます」
「うん……」
 自分自身と対面しながらの食事は心地が悪かった。たぶん先輩もそうなのだろう。
「やばい……」
 着替えを取りに部屋に入って、俺はうめいた。自分の部屋だった、はずだ。それなのに、違和感が半端なかった。
 無印の半透明ボックスだから、どこに何が入っているかは見ただけでわかる。でも、自分の下着を取り出すのにもの凄く抵抗感があった。
「あ……え?」
 何で自分のパンツを取り上げるのにドキドキするのか。慣れてないからなのだろうか。
「替えの下着とスウェット、ここに置きますね」
「はい……」
 何だか、ど新婚のカップルみたいだった。
先輩が風呂を使っている間、俺はスマホで調べ物をした。先輩がセンサーに使った銅板の表には『多賀神社』と書いてあった。きっとどこかに大元の神社があるに違いない。もし明日の朝になってもこのままなら、後は神様に謝って何とかするしかない。
「多賀大社」
 イザナギノミコトとイザナミノミコトを奉っているから、ここが大元に違いない。
「う……滋賀県、かよ……」
 新幹線で米原まで行って、そこからローカル私鉄に乗り換え。片道だいたい3時間かかる。
「ご祈祷……毎日やってくれるんだ」
 ご祈祷のコースは、5千円、1万円、2万円だ。そして、お願いできることは決まっているらしい。
「家内安全、延命長寿、商売繁盛、病気平癒……これかな?」
 『元の健康な体に戻れますように』が該当する感じだ。
「神社の表札に失礼なコトしたってお詫びして、祈願か」
 往復3万に、本殿特別祈祷が良さそうな気がするので2万円。交通費は二人分だから何だかんだで9万円近くかかる。痛い出費だが、それくらいの貯金はある。体の記憶を探ってみると、こっちの預金残高は1万円を切っていた。ため息が出た。
しばらくして、先輩は完全にキョドった様子で出てきた。
「先……ごめんね」
「いえ」
 先輩と入れ替わりで脱衣所に入った。これからどうしたらいいのか、俺の頭の中ではそんなことが頭の中で渦巻いている。
 カフスのボタンを外して、胸当てのボタンを外して、脇のファスナーを上げてセーラーの上着を脱ぐ。適当に畳んで、置く場所がないので洗濯機の上に置いた。
 スカートをずるずる回して、ホックとファスナーを体の前に持ってきて、それからホックを外してファスナーを下ろす。
 Vネック長袖のインナーは、かなり着込んでいてへろへろだった。それを脱いで、ふとドレッサーの鏡を見た。ブラジャーからはみ出している胸を持ち上げた。明らかに、ブラのカップサイズと合っていない。
 縁ゴムに両手をそえて、黒いパンストをずり下げた。脱いで、丸まったのを引っ張って伸ばす。そうしていて俺は急に寒気を感じた。よろけて、ドレッサーの縁によりかかった。
「俺……セーラー服の脱ぎ方なんて、知らないぞ」
 自分でセーラー服を着て脱ぐか、女の子を脱がせる以外に知る方法はない。そじて残念なことに、俺はどっちも経験がなかった。なのに俺は、戸惑うことなくパンストまで脱いでしまった。
「記憶。先輩の……記憶に、マジでリンクしてるのか?」
 パソコンが、接続されたデバイスを自動的に認識するように。俺の意識と先輩の記憶がリンクを始めているのだろうか。それぐらいしか考えつかない。
「脱ぐの……全然、興奮しないし……」
 メシを食っている間は、『合法的に先輩を脱がす』この瞬間に期待していたのだ。俺はすでに、澤堂律華になりはじめているのだろうか。
 ブラの肩ひもを外して、ブラをぐるんと回して後ろ前にする。前に来た3段ホックを外す。やはり俺はそれを手際よくやってのけた。
感じたのは興奮ではなく、絶望感だった。暗澹たる気持ちで、両手で胸を持ち上げた。俺の気持ちとどっちが重いだろう。
「それにしても……この胸、大きすぎる!」
 
 男女の下着を洗濯機に放り込んだ。俺は頭にタオルをかけて、スウェットの上下に着替えてリビングに戻った。途中で冷蔵庫から缶のレモンサワーを取り出して。
 リビングでは、俺がソファの上で膝を抱えてぼんやりとテレビを眺めている。
「姉のコンディショナー使ったから、匂い違うかも知れません」
 先輩は気だるそうに視線を向けた。
「コンディショナーなんか使ってない」
 俺はグラスをふたつテーブルに置いて、レモンサワーを注いだ。
「お酒?」
「シラフじゃいられないです」
 俺はそう言って、グラス半分ぐらいを一気に飲んだ。
「ぶふっ!」
時々飲んでも何でもなかったのが、今日はアルコールの刺激でむせそうになった。
「私、お酒飲んだことないよ」
「忘れて……ました……」
 この体はアルコールに不慣れなのだ。俺は床にぺたんと座り込んだ。どんな場面でどっちの記憶が働くのかぜんぜんわからないけど、体の機能は元のままなのだ。
 先輩はソファから体を乗り出して、腕を伸ばしてグラスを取り上げた。慎重に、舐めるように一口。それから少し飲んだ。
「服……脱ぐとき。興奮とか、しました?」
 俺が聞くと、先輩はグラスの泡を見つめたままかすかに首を振った。体は俺だけど、その仕草はなんとなく女だ。
「興奮じゃなくて、恐かった」
「脱ぎ方知らないはずなのに、自然に脱いじゃいました。セーラー服」
「ブラ外すの、どうやったの?」
「こう……」
 自分がやった手順を、手真似で再現した。
「うん……ずっとそうやってる」
 俺はもう一度、そっとレモンサワーを口にした。やっぱりアルコールを強く感じる。
「毎日……無意識にやってることは、できちゃうらしいですね」
「ごめん」
「へ?」
 何かを謝ったが、先輩はそっぽを向いていた。
「あんたの……あそこ、思いっきり触った」
「あ……ああ。仕方、ないですよね」
「普段、どう……して、おくの? あれ」
「はい?」
「何て言うか……先っぽの……」
 先輩が、赤くなった顔を少しだけこっちに向けた。何を聞かれたかわかった。
「剥いて、出しておきます」
 俺のあそこは仮性包茎で、時々被るのだ。
「触って……固くなるかと思ったけど、ならないね」
 不慣れな酒のせいか、俺まで顔が熱くなった。もしいま、体が入れ替わっていない状態だったら。俺はたぶん勃起しているだろう。
「あの……明日の朝、このままだったら。神社、お参りしませんか?」
 話が変な方に行ったし、もう酔いが回り始めたので。俺は切り出した。
「神社?」
 先輩が、不審そうにこっちを見た。
「学校にあったあの神社、元は滋賀県にある多賀大社ってところです。神社の……何て呼ぶのか、表札に失礼なことしたってお詫びして。ご祈祷受けるくらいしか、もうやりようがないと思うんです」
「滋賀……県?」
「そうです」
「九州?」
「それ、佐賀です。滋賀は琵琶湖のあるところ」
 先輩は、テレビの画面を睨んで少し考えていた。
「お金……ない」
「二人で行って、ご祈祷受けるくらいのお金ならあります」
「元に戻らなかったら?」
「そうなってから考えましょう」
「お金、すぐ返せない」
「いいです」
 『体で返して』と言いそうになって、俺はあわててレモンサワーに口をつけた。戻れたら良いが、そうでなかったら俺がやられてしまう。それに澤堂律華という女性に対する様々な想いは、俺の中で急速に醒めていた。
「ちょっと……考えさせて」
 先輩はそう言って、レモンサワーを半分くらい飲んだ。やはりあっちの体は酒に慣れているらしい。
「その恰好、もう少し何とかならないの?」
「はい?」
 俺は、いつの間にか横座りになっていた脚を正座にした。
「いや、あの。座り方じゃなく……」
「あ……スウェット、嫌いですか?」
 男性用なので、この体ではダボダボだった。
「いつも、下パンツだけだから」
 気は進まなかったが、俺はスウェットの下を脱いだ。真っ白い、なめらかな肌の脚。男の俺だったらこれだけで大興奮している。
「パンスト持ってきたでしょ?」
「はい」
「はいて見せて」
「この、ままですか?」
「そう」
 ゴミ部屋から持って来たバッグを開けて、結んである黒いパンストをほどいた。恥ずかしくて、先輩に背を向けてパンストをはいた。やっぱり、手は自然に動く。
「これで……いいですか?」
 思いっきりエロい恰好になったことが恥ずかしくて、先輩に視線を向けることができない。
「うん……」
 こんな恥ずかしい恰好を思いっきり見られている。心臓がバクバク脈打って、膝が小刻みに震えていた。
「悪くないよね、私」
 先輩が、うっすら震える声で言った。
「俺、も……先輩の……こんな、恰好……見たいって、思ってました」
 俺の声が完全に震えていた。
「オカズに、した?」
「……はい」
 部室で、机の下から盗撮した黒パンストをはいた先輩の脚。俺はそれで、何十回も抜いていた。そのとき気がついた、心臓がバクバクしているのは恥ずかしいだけじゃなかった。
『涼宮和人と……俺と、二人っきりで……興奮、してる……』
 俺の中の、澤堂律華の感情がそう言っていた。
「あたし……いま、自分見て。感じてる……」
 急に先輩がそう言った。
「え?」
 俺は恐る恐る先輩に視線を向けた。先輩は変に前屈みの姿勢で、両手で脚の間を押さえている。
「もし、か、して……勃っ……ちゃい、ました?」
 俺は、喉が締めつけられたように息が詰まった。
「うん……あそこ、痛い」
 パニックだった。何をどうしたらいいのかわからない。それに、どれが自分の感情なのかもわからない。
「つっ立ってないで、ここ座りなさいよ」
「はい……」
 ソファに腰を下ろした瞬間、俺は押し倒された。
「ああっ! んぐ……」
 もの凄い力で押さえつけられて抱かれて、唇を押しつけられた。
「んぐぅ……」
 食いつくような勢いで唇を吸われて、俺は全身が硬直してガタガタ震えていた。先輩の、押しつけた唇も体も震えている。
『そう言えば……キスも初めてだった』
 俺は震える腕を先輩の体に回して、強く抱いた。
「すみません、先輩……」
「なに?」
 荒い息をつきながら、先輩が聞いた。
「先輩の……こっちの、頭の、中……たぶん、抱かれたがって、ます……」
「あんた、は?」
「俺は、もう……先輩と、やりたかった。です」
 先輩は俺の胸に顔を埋めて、また息ができなくなるくらい強く抱きしめた。
「あたしも……あんた、オカズに。した……」
「え?」
「縛られたり……学校で、押さえつけられて、レ×プされたり……想像して……してた」
「あの……ひとり、エッチ? あう!」
 先輩がスウェットの上から俺の胸を噛んだ。
「もう、ガマンできない。やっていい? 涼宮?」
 息を切らせ、ギラギラした目で先輩が言った。
「ちょ、ちょっと。待って。これ、先輩の、体……」
「そうよ。だから自分をどうしようが勝手でしょ」
「お……俺の、立場……」
「気持ち良くさせてあげるから、観念しなさい!」
「お……俺、初めてですよ!」
「あたしだって初めてだから、いいでしょ!」 
 いきなり脚の間に手が入ってきて、ヤバい部分に指先がめりこんだ。
「いや! いや! いや! だめ! だめぇ!」
 本気で女の子の悲鳴が出た。
「おねがい……」
「往生際悪いよ」
「そうじゃなくて……ヤったら。明日、一緒に、滋賀県行ってくれますか?」
「本気で、神社……信じてるの?」
「もう、それしかありませんよ」
 先輩はもう一度、俺の胸に顔を埋めて息をついた。片手でもう片方をゆっくり揉む。
「ああん……」
 自分でも引くような、女のあえぎ声が出た。
「行ってあげる」
 熱い手が、俺の腿を這いまわって脚の間に入ってきた。ぞくぞくする快感が下半身から背中を伝って這い上ってきた。
「あの……俺の部屋、行きましょう」

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【2700DL突破】魂移しの魔術 ⑧~⑮

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11/07のツイートまとめ

amulai

RT @amulai: 【依頼小説】「あなにやし! 入れ替わってみたら、憧れの先輩は隠れ喪女だった」https://t.co/QHlZ8TcLhcYumさんに描いて頂いたイラストをベースにくろのすさんにSSを書いて頂きました♪ https://t.co/BlzZCvB6n0
11-07 23:58

RT @valuefp: 記事で書いたけど、収入が多いなら給付が少なくて当たり前、というのは勘違い。負担の段階で所得税が累進課税なのに、給付の段階でも所得の多さを理由に減らされるなら、「二重の累進課税」状態で制度設計がおかしい。手間がかかる上に意味不明。これならまだ税率上げて給…
11-07 23:04

RT @akihiro_koyama: コロナで痛感したのは、医者は経済を理解できないってことだと思うのよな。医師免許持ってりゃ富裕生活が保証される貴族階級には、一度仕事を失えばもう取り返しがつかないということがわからない。だからクソみたいな自粛論を振り回せる。 https:/…
11-07 21:10

RT @hitonounti: 今日社長に「お前はクビもう来なくていい」っていわれたけど、その言葉を待ってたんだよ俺は😈
11-07 21:10

あんぎゃらすさん、いたよね。
11-07 20:00

RT @hidetomitanaka: このアカウントもそうだが、総理に提言するだけで実現すると思い込んでいる幼稚な人たちが多くいて、その安易さに本当に驚く。社会性が微塵もなく、甘え切ったレベルである。匿名で他人を誹謗中傷する程度がお似合いだ。 https://t.co/ay3
11-07 16:42

【依頼小説】「あなにやし! 入れ替わってみたら、憧れの先輩は隠れ喪女だった」https://t.co/QHlZ8TcLhcYumさんに描いて頂いたイラストをベースにくろのすさんにSSを書いて頂きました♪ https://t.co/BlzZCvB6n0
11-07 15:56

RT @sasanerineri: 最近TSネタの方が多く思い浮かぶな。そういう時期か。
11-07 12:14

RT @tk_takamura: 朝日新聞の記事にコメントが載った合同会社フォルクローレから公式声明が出た。朝日新聞のは同社のコメントを、自分達の主張に沿うように歪曲したと。しか.. https://t.co/jJi9Zzs5Qq「【悲報】朝日新聞の記者、背景を碌に調べす記…
11-07 10:43

RT @yamaokashige: 「サブカルチャーの心理学」なんて本を仲間と作ったけど、ROCKも含めて、サブカルチャーって、社会にとってのアルタネイティブ、別回路なんだろうね。いろんな別回路を用意しておけば、社会が行き詰まったときの脱出口になる可能性もあるし、社会に適応でき…
11-07 10:35

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  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

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