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【投稿小説】全てを俺にください<1> 作 Haseyan 挿絵 名取そじ

名取そじ20210420

 世の中には目に見えないものが多くある。輝かしい人生だと思っても、必ずどこかで苦労がある。だから軽々しく羨ましいなんてのたまうと、言われるのだ。彼らだって苦労しているのだと。
 だが、それは間違っていると思う。だって羨ましい部分と苦労している部分は別の話だ。羨ましいと指しているのは、彼女らの栄光の部分だけなのだから。
 
「さーて、本日お招きしたのは! 話題の美少女! 若き天才マジシャン! 鳴宮 璃奈だぁ!!」

 多くの観客が見つめるステージの中央、煙と共に現れる小柄な影。幼ささえ残る年齢だが、化粧とエンターテイナーとしての煌びやかな正装に身を包んだ姿には、大人の女性としての魅力も内包していた。
 
「皆さん、本日は私の舞台にお越しいただきありがとうございます! 今宵見せるのは手品師の神秘。目を疑うような不可思議な時間をお楽しみくださいっ!」

 そんな彼女が怖気付く様子もなく、観客の前でパフォーマンスを繰り返す。
 さほど大きな舞台ではない。けれど決して小さくもない空間を、彼女は確かに支配していた。自身と──男子高校生の羽山 孝一と同い年の少女が、だ。
 平凡な高校生では掴み取れない輝きを目の当たりにして、孝一は初めて憧れという感情を抱いていた。
 
 大人のマジシャンと遜色のない、下手したらそれ以上の手品を次々と繰り出す天才少女の姿に、目が釘付けになる。
 ──そんな孝一を、少女が見つめているとも知らずに。




「いやぁ凄かったな! あれで同い年かよ」

「それに可愛かったよな。ああいう子と付き合ってみてえ」

「お前じゃ無理だよ!」

 男子高校生らしい少々、下品な会話が耳を右から左へ通り抜けていく。友人集団と共に歩きながらも、孝一の心は先ほどの光景に支配されたままだった。
 大型ショッピングモールのステージで繰り広げられた手品の数々。まるで本当の魔法のようで、それを操る少女は別世界の人間のようで。思春期らしい好意だとか、汚い嫉妬なんかでもない、純粋な羨望を覚えた。
 インターネットを通じて話題となり、徐々に人気を増していく鳴宮 璃奈は近いうちにテレビ出演もするらしい。それもゴールデンタイムに特番を組まれて。
 特別な人間とは、きっと彼女のような存在を指す言葉なのだろう。

「おーい、孝一」

「あ、なに?」

「なにじゃねえよ。どこで飯食うかって話だろ」

「そ、そうだっけ? えっと俺は……」

 どうやら話を完全に無視してしまっていたらしい。愛想笑いで誤魔化し、レストラン街に目を向ける。パッと眺めた限り、心惹かれる料理は見当たらず──

「……ぁ」

 彷徨わせていた視線が、通行人の一人に吸い寄せられた。怪しい人物だった。何故なら、顔が全く見えない。深いフードで目元まで隠し、マスクまでしている。
 唯一得られる情報は、小柄で恐らくは女性、それも成人していない女性であることだけだ。妙な格好だと不思議に思いはしても、それで興味を失う程度の存在。なのに視線が釘付けになる。

「──きて」

 人混みの中、聞こえるはずのない囁き声が耳を打った。従わなくてはならない。あの声は、特別な人間のもので、絶対なのだから。

「ごめん……ちょっとトイレ行ってくる」

「あー了解。こっちで店は決めちまうぞ?」

「うん、連絡くれれば合流するよ」

 頭がフワフワする。現実感が薄れていく。ただただ、あの声に従ってフードの少女についていくのだと、本能的な願いだけが身体を動かしていた。
 ゆっくりと追っていた背中が、トイレに消えていく。順当に考えるのならば、女子トイレか。あの人影は恐らく少女なのだから。
 だが、孝一はそうではない。男が女子トイレに侵入するのは犯罪だ。至極、常識的な判断に理性が僅かに戻ってきて、

「──多目的トイレよ。だから大丈夫」

「そっか、なら平気だ」

 再び囁き声が聞こえる。鈴が鳴るような聞くだけで心地の良い少女の声。思考がまた深いところに沈む。その言葉を絶対として疑わず、孝一は多目的トイレの中に踏み込んだ。

「ようこそ。名前は?」

「羽山……孝一」

 やはりと言うべきか、先客としてフードの少女が待っていた。彼女の背中を追っていたのだから当然だ。多目的トイレの中で、顔を見えない異性と二人きり。でも、彼女に呼ばれてきただけなのだから、何も悪いことはない。
 朧げな視界で少女を見つめていると、名を尋ねてきた。もちろん、素直に答える。

「年齢と家族構成。あと……面倒ね。簡単に自己紹介して」

「十六歳……妹が、いる。バレー部に所属してるけど、運動は嫌いでも好きでもない。特別仲の良い友達はいないけど、頻繁に遊びに行く程度には交友関係がある」

「なにそれ。当たり障りのない人間って感じかな。うーん、つまらないけど……」

 少女が軽く背伸びして、孝一の瞳を覗き込んできた。フードの隙間から、瑠璃色の大きな瞳が姿を露わにして。吸い込まれる、そんな錯覚を起こした。

「顔は、中の上。オシャレに気を使えば悪くない。良くも悪くも、変な人間関係はなし、と。何より……気が弱そう、押しに弱そうなのがいい」

 理解できない。少女が孝一の何を値踏みしているのか。
 けど、理解する必要はない。だって、そう命令されていないのだから。
 ぐるぐると思考が巡る。この状況に異常を感じた理性が、即座に本能と暗示に叩き潰され、消えていく。ただただ少女の言葉が正しいのだと妄信する。

「決めたっ──君、合格ね」

 嬉しげに声を上げ、少女がフードとマスクを外す。果たして、その下から現れたのは、孝一が羨望を抱いたあの天才マジシャン。日本人とドイツ人のハーフらしい長い金髪。大きくはっきりとした瑠璃色の瞳は、挑戦的に孝一を見つめている。
 小さな顔は、驚くほどに均衡がとれており、十人に聞けば十人が美人だと答えるだろう。
 ステージではツインテールに結んでいた髪を降ろしていること以外、目の前にいるのは今を生きる伝説。鳴宮 璃奈そのものだった。

 そんな憧れを抱いていた雲の上の存在が──

「ねえ、私が欲しくない?」

「──っ!?」

 腕に抱きついてくる。これ見よがしに成長途中の胸を密着させてくる。理性をぐちゃぐちゃに溶かされている今の孝一にとって、それは劇物に等しい効果があった。

「欲しい、ってどういう……」

「文字通りよ。私の身体の全部。君の好きにしてよくなるの」

「好きに……ッ」

 誘惑するような言葉が、むき出しになった男の本能を煽る。耐えられるわけがない。欲望のままに小さな身体を抱きしめて、

「あ、話の途中よ。待ちなさい」

「う、うぅ……っ!」

 璃奈の言葉に身体が動かなくなる。本人が提案してきたようにその身体を弄り回してやりたい、そんな下衆な願いが寸前のところで抑え込まれた。
 けれど限界だ。理性は更に遠のき、孝一はこれ以上に持ちこたえられる気がしない。
 
 そんな孝一に対して、初対面の男に襲われる寸前、だというのに璃奈は落ち着き切った声色を保っている。むしろこの場を支配しているのは自分なのだと、確信しているようで。悪戯っぽく耳元で囁いてくる。

「こんな綺麗な女の子を自由にできるんだから、タダなわけないでしょ……?」

「金……なんて、あまり……」

「違う違う。お金なんて別にたくさんあるし。私それよりも、お金じゃ買えないものが欲しいの」

 なんだ。早く教えてくれ。どんな貴重品であろうと、それが孝一の所有物なら喜んで差し出そう。だから、早く璃奈が欲しい。彼女を感じたくては仕方がない。
 早く、早く、はやくはやくはやくはやく──

「君だよ」

「お、れ?」

「うん、そう。君が全部ほしい。私の身体を上げるから──君の人生を全部、私にちょうだい?」

 気が付けば、周囲から音が消え失せていた。まるで多目的トイレの小さな空間の中だけが世界から切り離されたようだ。固唾を呑みながら、ほんの少しだけ理性が戻る。
 何か重大な決断を迫らされているような気がした。下手に頷いてしまったら、取り返しのつかないことになりそうな予感。それが瀬戸際で孝一を繋ぎ止める。

「取引に、乗ってくれる?」

 怪しく璃奈の瞳が瞬いた。彼女はいつの間にかステージの上でも握っていた小道具の杖を取り出して、それを孝一に突き付けている。先端が不可思議に輝く紅い杖を、だ。

「……ごめん。そういうのは良くないことだからさ」

「…………」

 思考が冷める。あり得ないほどに熱く滾っていた欲望が徐々に鎮まる。一度、冷静さが舞い戻って来れば、何もかもがおかしいと気づけた。
 視界の端で、杖の輝きが落ち着いていく。
 
 すぐに逃げ出そう。そして、この出来事は忘れるべきだ。

「ねえ」

「…………」

「本当にいいの?」

 短い単純な問いかけ。少女に上目遣いで見つめられ、足が動かない。金縛りにあったかのように全身の感覚が消失する。璃奈を見て、聞いて、触って、感じるためだけに機能を始める。
 再び、杖が輝き始めた。

「こんなチャンスは二度とない。これを逃したらきっと後悔する」

「で、も……」

「何が不満? こんな可愛くて……ちょっと背は低いけどスタイルも悪くない。君が憧れた私が、君のものになる」

「ふ、ぅ……っ! ぅぅ……」

 欲しい。璃奈が欲しい。ステージの上で輝いていて、羨望を抱いた少女が、孝一のものになる。
 ダメだ。これは悪魔の取引だ。絶対に後悔する。

「逃げた方が後悔する」

 違う。逃げて元の──

「──つまらない人生に戻るの?」

「────」

 誰かに嫌われないように立ち回り、親の文句を言われないように勉強し、趣味は特になく将来の夢だって乏しい、そんな──

「つまらない人生でしょ?」

「────」

「そんな人生、私が代わり貰ってあげる。だから、さ」

 ゾッとした。でも、同時に興奮した。耳元に迫った小さな口が動いて。

「──私の身体を、貰ってよ」

「璃奈が欲しいッ!」

「はぁ……っ!? ふ、んぅ……っ」

 我慢できるはずがなかった。どうしてそんなことをしたのか、孝一自身も理解できないままに、璃奈の唇を奪う。一度決壊した理性は二度と、戻ることはない。
 ──孝一が孝一として、正気を保つことは、二度とない。

「ちゅ……ぁっ、んぁ……っ!」

 昼間のショッピングモール。その多目的トイレの中で、若い男女が抱きしめ合い、お互いの唇を貪る。キス、だなんて可愛らしいものではない。経験なんてない二人には正しい接吻の方法などわからず、自重する理性だって飛んでいるのだから。

「ぷ、はぁっ! いいよ、もっと私を求めて……そしたら、君は私になれ……っ、んっ」

 璃奈の手から転がり落ちた杖が、床を転がり更に輝きを増していく。紅く紅く二人の世界を染めていく。
 二人の行為は最早、捕食だった。口を通じて璃奈を喰らう。舌を突っ込み彼女の全てを蹂躙して、見えない何かを引きちぎり孝一のものにする。逆に璃奈もまた孝一を求め、孝一の全てを奪っていく。
 頭が真っ白になる。もう璃奈のことしか考えられない。彼女の何もかもが欲しくて、ただひたすらに貪りあう。お互いがお互いを喰らい、二人の境界線が消えていく。
 小さな身体を抱きしめ。大きな腕に痛いほど抱きしめられ。
 足の間のものが痛いほどに硬くなり。お腹の奥が切なく収縮して。

「──!?」
 
 心臓の音が、共鳴した。二人が一つになる。同時に孝一の世界は崩壊した。
 理性の残り香が悲鳴を上げる。けれど、本能は儀式を順調に進めていく。
 まず手足の感覚が消失した。続いて腰から下が、お腹が、胸が、肩が、腕が、孝一の世界から消えていく。残った頭だけは自由でも、それは璃奈を求めるのに必死で、他には何の機能も有していない。

「ん……ぁっ、ああっ……!!」

 璃奈が艶めかしく喘いだ。それを合図に彼女の全てが流れ込んでくる。白く細い手足が。女性らしく大きく開いた骨盤が。男性を受け入れる女性の大切な場所が。ムダ毛一つないすべすべのお腹が。成長途中の胸が。小さくてすらりとした肩が。
 彼女の身体が孝一のものになる。約束通りに。いや違う。だってこれでは──

「抵抗しないのっ。もう、頭でお終いなんだから」

 最後の力で突き放そうとしたのに、相手はビクともしない。当たり前だ。少女の細腕で部活動に勤しむ男子を突き飛ばせるわけがない。
 意味がわからない。確かに孝一は璃奈の唇を奪っている。でも、孝一の首から下の感覚がない。あるのは、誰かに力強く抱きしめられる小さな誰かの感覚だけで。

 無理やり舌を突っ込んできた璃奈に、孝一が吸い込まれる。抵抗なんてできない。もうとっくに手遅れだ。辛うじて残っていた孝一を孝一足らしめるそれが、消えていき。

「あっ……」

 視界がぶれる。見える景色が、聞こえる音が、何もかもが切り替わる。同時に激しい眠気に襲われた。意識が遠のく。わからない。何もわからない。ただ、決定的な何かが起きてしまったことだけは、理解していて。

「これから頑張ってね。孝一……いや、璃奈ちゃん?」

 酷薄に笑う、自分自身の顔が見えた気がした。


つづきはこちら

真退魔士カグヤ8

真退魔士カグヤ8 FANZA版

真退魔士カグヤ8

05/28のツイートまとめ

amulai

RT @unri_cyan: 「メタドール」が九重 慧先生提唱のシェアワールドということは存じているのですが…https://t.co/RH9kamJVgTメタドールになるために 猛練習を積んでいた少年が トベデレバルサの失敗で~(チャコポコチャカポコ) というフレーズが浮…
05-28 23:20

23時。残り1時間で1つ上がって8位の478本で500本にリーチ!現7位の「上級精子着床義務化2~僕をイジメてた奴らの彼女を寝取って種付け!~ 」は579本相当なのでちと厳しそう。
05-28 23:03

RT @sukoyakamuimui: 燃え上がれ 燃え上がれ燃え上がれ ボトムズ君よ さだめまだ戦いに飽きる 心があるなら炎の 匂いに むせろ むせろ むせろ地獄を 見れば 心が ボトムズ装甲騎兵 ボトムズ ボトムズ
05-28 23:01

RT @utenameka: 後天性TS体質ではらんまと同級生のやり取りみたいなのを延々と描きたいんだよな〜〜〜こっちはCG集になるかもしれないです https://t.co/OVWNaTzOXi
05-28 22:35

RT @kokonoekei: 内容を立ち読みするにはあむぁいさんのとこ...ひぎゃあ!TSF支援所掲示板での連載がエタったのばらされてるぅ!お楽しみください! https://t.co/8VtCgPVFa4
05-28 22:10

RT @atsuji_yamamoto: @zerodiverK2 「え?商品(原稿)を渡してすぐに報酬がもらえないんですか?」って昔税理士さんが驚いてました。こっちが知りたいです。
05-28 21:37

21時。2つ上がってベスト10入りの9位、400DL突破の422本!
05-28 21:02

RT @yomasaru: 誰も明言しないので定かではないが、インボイスになっても簡易課税は残るのではないかな。インボイス制度導入後も簡易課税は適用できるのか|インボイスのダメージを軽減する救済策?https://t.co/uDLcd5hRkT
05-28 21:00

RT @kouji_r18: DLsiteの予告ページできました 今回はwebマンガ広告風紹介画像を作ってみたよ 変身ヒロインチームの頭脳派で真面目で貧乳のブルー/ホークビット https://t.co/mHN0V4Axwd #DLsite https://t.co/GSoo
05-28 20:33

20時。4つ上がって11位の397本!あと1つでベスト10入り!!
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【販売1周年】トランスGスター ※レビュー追加

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同人としては値段分の価値がある、と評価しつつプッシュ。

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