Latest Entries
【ひまわり】(1) by.ダークアリス
(1)-------------------------------------------------------

イラスト.まさき ねむ http://www.h7.dion.ne.jp/~nemiu/
放課後のことだ。俺が帰り支度をしていると、暗い表情の男子生徒が俺に話しかけてきた。
「ねぇ、広志。その……相談があるんだけど……」
「なんだ、透。 また、奴らにいじめられたのか?」
「……うん」
透は、俺の家の隣に住んでいて、生まれたときからの付き合いだ。
だからと言って親友と言えるほど、仲が良いわけではなかった。
俺は体も平均よりもずっと大きく、スポーツが得意で友人も多かったが、透の方はと言うと、体も小さく内気な性格で、さらさらの黒髪に女顔という、俺とは正反対の人間だったからだ。
透はいかにもいじめの対象になりそうな少年だった。
小さい時は一緒によく遊んだものだが、成長するに従ってまるで正反対に育っていった俺たちは、次第に付き合いが浅くなっていった。
ただ今でも、時々こうして俺を頼って相談事を持ちかけてくる。
「たまには奴らに対抗するぐらいの気概を持てよ。もう高校生だぞ」
「だって、あいつら……強いし」
透をいじめている奴らは、学校でも落ちこぼれの連中だ。
生徒からも教師からも評判が悪く、非公認のクラブのようなものを作って、学校の裏の廃墟をアジトにして、良く判らない活動をしている。
噂によると、喫煙や飲酒はもとより、気の弱そうな生徒を見つけては、みかじめ料と称して金品を強要しているらしい。だが、やり方が狡猾なのか、捕まったことはないそうだ。
入学早々、透は早速そいつらに目をつけられたらしく、それは3年生になったいまでも続いているようだった。 時々その不良グループに呼び出され、いじめを受けているらしかった。
俺はクラスは違うが、その連中を知っていたし、連中も俺のことを知っていた。
しかし連中は姑息にも俺や教師の目の届かないところで、透をいじめているらしいのだ。
俺は何度も教師や警察にでも言ったほうがいいんじゃないかと言ったが、透は聞き入れなかった。そんな事をしたら、もっと酷いことをされるかもしれないと言って。
だが連中の誰よりも体が大きく、スポーツの得意な俺が出て行って一発かませば、奴らはビビって、しばらくは透にちょっかいを出したりはしないだろう。
そう考えた俺は、直接現場に踏み込んでやろうとしたが、奴らはいつも巧妙に俺を避け、その考えは空振りに終わっていた。
そんな事を繰り返しているうちに、俺自身も透のことを少し疎ましく感じるようになっていた。
それと言うのも、連中のいじめは陰湿かつ狡猾だが、それが表沙汰になるようなことは決して無かったからだ。
それに、透自身の口から俺ははっきりと“いじめを受けている”とは聞いたが、どんなことをされているのかを、透が口にしたことは一度も無かった。
物的証拠も無く、怪我をしている様子も無く、どんなことをされているのかも判らないときては、俺も手の出しようが無かった。
「お前だって、男なんだろう? だったら反撃してみろ。なんなら俺が加勢してやろうか?」
「広志は……、僕が女の子だったら、助けてくれるの?」
「さぁな、美人だったら考えなくも無い」
俺は椅子の背もたれに寄りかかり、頭の後ろで腕を組んで、ぶっきらぼうに言った。
透はと言うと、俺のとったそっけない態度を恨む様に、上目遣いでじっと見つめた。
大きな瞳に長い睫毛。そしてカラスの濡れ羽色とでも言うんだろうか? 漆黒でさらさらの髪は、透のおふくろさんが切らせてくれないとかで、校則違反ギリギリの長さだった。
確かに透は、そのまま女子の制服でも着ていれば女の子に見えるだろう。
それもクラスでも上位に入るほどの。
だが、透はれっきとした男だ。
確かにこんな外見で、性格も引っ込み思案で、陽気と言うほどでもない。
反撃したり、誰かに言いつけたりしなさそうな透の性格は、いじめの対象としてはうってつけだった。
<つづく>

イラスト.まさき ねむ http://www.h7.dion.ne.jp/~nemiu/
放課後のことだ。俺が帰り支度をしていると、暗い表情の男子生徒が俺に話しかけてきた。
「ねぇ、広志。その……相談があるんだけど……」
「なんだ、透。 また、奴らにいじめられたのか?」
「……うん」
透は、俺の家の隣に住んでいて、生まれたときからの付き合いだ。
だからと言って親友と言えるほど、仲が良いわけではなかった。
俺は体も平均よりもずっと大きく、スポーツが得意で友人も多かったが、透の方はと言うと、体も小さく内気な性格で、さらさらの黒髪に女顔という、俺とは正反対の人間だったからだ。
透はいかにもいじめの対象になりそうな少年だった。
小さい時は一緒によく遊んだものだが、成長するに従ってまるで正反対に育っていった俺たちは、次第に付き合いが浅くなっていった。
ただ今でも、時々こうして俺を頼って相談事を持ちかけてくる。
「たまには奴らに対抗するぐらいの気概を持てよ。もう高校生だぞ」
「だって、あいつら……強いし」
透をいじめている奴らは、学校でも落ちこぼれの連中だ。
生徒からも教師からも評判が悪く、非公認のクラブのようなものを作って、学校の裏の廃墟をアジトにして、良く判らない活動をしている。
噂によると、喫煙や飲酒はもとより、気の弱そうな生徒を見つけては、みかじめ料と称して金品を強要しているらしい。だが、やり方が狡猾なのか、捕まったことはないそうだ。
入学早々、透は早速そいつらに目をつけられたらしく、それは3年生になったいまでも続いているようだった。 時々その不良グループに呼び出され、いじめを受けているらしかった。
俺はクラスは違うが、その連中を知っていたし、連中も俺のことを知っていた。
しかし連中は姑息にも俺や教師の目の届かないところで、透をいじめているらしいのだ。
俺は何度も教師や警察にでも言ったほうがいいんじゃないかと言ったが、透は聞き入れなかった。そんな事をしたら、もっと酷いことをされるかもしれないと言って。
だが連中の誰よりも体が大きく、スポーツの得意な俺が出て行って一発かませば、奴らはビビって、しばらくは透にちょっかいを出したりはしないだろう。
そう考えた俺は、直接現場に踏み込んでやろうとしたが、奴らはいつも巧妙に俺を避け、その考えは空振りに終わっていた。
そんな事を繰り返しているうちに、俺自身も透のことを少し疎ましく感じるようになっていた。
それと言うのも、連中のいじめは陰湿かつ狡猾だが、それが表沙汰になるようなことは決して無かったからだ。
それに、透自身の口から俺ははっきりと“いじめを受けている”とは聞いたが、どんなことをされているのかを、透が口にしたことは一度も無かった。
物的証拠も無く、怪我をしている様子も無く、どんなことをされているのかも判らないときては、俺も手の出しようが無かった。
「お前だって、男なんだろう? だったら反撃してみろ。なんなら俺が加勢してやろうか?」
「広志は……、僕が女の子だったら、助けてくれるの?」
「さぁな、美人だったら考えなくも無い」
俺は椅子の背もたれに寄りかかり、頭の後ろで腕を組んで、ぶっきらぼうに言った。
透はと言うと、俺のとったそっけない態度を恨む様に、上目遣いでじっと見つめた。
大きな瞳に長い睫毛。そしてカラスの濡れ羽色とでも言うんだろうか? 漆黒でさらさらの髪は、透のおふくろさんが切らせてくれないとかで、校則違反ギリギリの長さだった。
確かに透は、そのまま女子の制服でも着ていれば女の子に見えるだろう。
それもクラスでも上位に入るほどの。
だが、透はれっきとした男だ。
確かにこんな外見で、性格も引っ込み思案で、陽気と言うほどでもない。
反撃したり、誰かに言いつけたりしなさそうな透の性格は、いじめの対象としてはうってつけだった。
<つづく>
コメント
久しぶりのダークアリス名でのお話。
イノセンスなまさきねむさんのイラストとは裏腹に、梅雨の空のように鬱になりそなお話ですが、よろしくお付き合いくださいませ。
イノセンスなまさきねむさんのイラストとは裏腹に、梅雨の空のように鬱になりそなお話ですが、よろしくお付き合いくださいませ。
コメントの投稿
トラックバック
http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/10233-4dc65234
ともあれ、頑張ってください。