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【ひまわり】(7) by.ダークアリス

(7)-------------------------------------------------------

 2日後、透子の両親を呼んで、葬式を上げた。
 俺は透子と密通していた父親と、透子を虐待していた母親に怒りを隠しながら、葬儀に参列した。

 俺はビデオファイルを送ってきた犯人にも、目星がついていた。
 そしてその相手を、透子が自殺した花畑に呼び出していた。

「あなただったんでしょう? ビデオファイルを送りつけてきていたのは」
「……透子は、この花畑で死んだのね?」
「父親と密通していたから、透子を虐待していたんですか?」
「私は……男の子だったくせに、何も知らない振りをして、実の父親を誘惑した、あの子が許せなかったのよ」

 透子の母親は、喪服に風を受けながら、悟りきったように俺を見つめて言った。

「あなたも、共犯よ」

 ビデオファイルを送りつけた事を責めようと意気込んでいた俺は、透子の母親の言葉に挫かれた。

「透子が自殺したことがか!」
「だって、見せたのでしょう? あの子に」
「そ、それは……確かに俺の不注意だった。だがあんなものを、あんたが送りつけてなんかこなければ!」
「あなたも、透子を抱いたの?」
「そんなことはしていない!」
「あら、残念ね。透子もかわいそうだわ。あんな屑のような連中や、実の父親には何度も犯されたくせに、一番大好きだった人とは、結ばれなかったのね」
「あんなビデオファイルを見せられて、透子が傷つかないとでも、思ったんですか!」
「見せたのは、あなたよ」
「いや、違う! あんただ!」

 俺は自分に送られてきたメモリーカードと、透子の部屋の押入れの奥に隠されていた、うさぎのぬいぐるみを突きつけた。
 うさぎのぬいぐるみには……俺に送られてきた物と同じブランドの、真っ二つに割られたメモリーカードが隠されていた。

「あら、知っていたの? 相変わらず、あの子は隠し事が下手だったのねぇ……」

 俺と透子には、同じ内容のビデオファイルが送られてきていたのだろう。
 透子は中身を見て、必死で隠そうとしたに違いない。
 だからメモリーカードを壊し、それが仕込まれていたうさぎのぬいぐるみと一緒に、部屋の押入れの奥に厳重に隠したのだろう。
 だが、俺にも同じものが送られていたとは、知らなかったはずだ。
 けれどあの時、透子は知ってしまったんだ。
 俺が同じものを持っていたことに。
 たしかに俺は迂闊だった。もっと慎重になるべきだった。
 だが俺は、後悔以上に、怒りを感じていた。

「俺はあんたを許さない!」
「ふん! あなたに私の気持がわかる? 手塩にかけて育てた息子が、同級生のいたずらで女の子にされた上に監禁され、レイプされていたのよ。しかもその子ときたら、頭がおかしくなって、実の父親と寝てたのよ。私の悔しい気持が、あんたなんかに解ってたまるものですかっ!」

 無表情だった透子の母親の顔が般若のような形相に変わり、俺に飛び掛ってきた。
 大人とはいえ、女に力で負けるはずはないと油断した俺の腹に、鋭い痛みが走った。

「かわいそうだけど、あなたには透子の所へ行って貰うわ。だってあの子は、あんなにあなたのことが好きだったんだもの!」

 そして俺の血にまみれた包丁を携えた透子の母親は、笑い出した。

「私の家族はもう駄目。だからリセットするの! あはは、あははははははは!」

 狂ったように笑いながら、透子の母親が立ち去っていくのを、俺は暗い意識の底へ落ち込みながら、見ている事しか出来なかった。



――暗闇の中で、女の子の声が聞こえた。


 『――よ。 ……だよ。 まぁーだだよ』


 何だ?
 何が、まだなんだ?
 俺がその声のする方向に行こうとすると、その声は言った。


 『まぁーだだよ。まだ、こっちにきちゃだめー!』


 はっと目が覚めると、俺は病院のベッドの上だった。
 俺は出血多量で気を失ってはいたが、幸いにも一命は取り留めることができたようだ。

 俺が刺されたあの日の夕方から、透子の両親も行方不明になっていた。


 そして俺が退院するその日、透子の両親が近くの沢にある大きな岩の陰で、死んでいるのが見つかったそうだ。
 警察によると、状況から見て、無理心中だろうとの事だった。

 俺は大学を半年間休学し、留年した。


*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*



 太陽が眩しく輝く、真夏の暑い日。
 死んでも還る家を無くしてしまった、透子の位牌がある仏壇から、真っ白なワンピースを着て微笑んでいる少女の写真を掴むと、俺は強い日差しの中へと向かった。
 
 透子が大好きだった花畑。
 大きな葉っぱと、背の高い茎の上に咲く、大きな黄色い花。
 かくれんぼをするには絶好の場所だ。

 澄み切った夏の青空が、熱風さえも心地よくさせる、何もかもが元気いっぱいの季節。

 だがあんな夏は、二度とやってこない。
 太陽のようにまぶしい笑顔の少女も、今はもういない。

 大きな葉っぱの陰で、白いワンピースが揺れているような気がした。
 俺は大声で叫んだ。

 「もう、いいかーい?」

ひまわり3
イラスト.まさき ねむ http://www.h7.dion.ne.jp/~nemiu/

 答える相手のいない俺の声は、抜けるような青空の中に消えていった。
 俺はもう一度、大声で叫んだ。

 「もう、いいかーいっ!」


 真夏の黄色い花が、誰かを探すように、風にそよいでいた。


<了>

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