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『トイレの……』 前編 by.うずら
『トイレの……』
「えー、ほんとにここでするの?」
「だめ?」
だめっていうか、だって汚くない?、とごにょごにょいう彼女をトイレに連れ込む。男子トイレは個人的に嫌なので、女子トイレだ。男子は飛び散ってるかもしれないし、掃除だって適当だろうけど、女子のならそんなこともないだろう。
「大丈夫だって。この時間、誰も来ないからさ」
特別教室の集まる特別棟。ただでさえ人の少ないその場所の、さらに最奥。テスト直前の放課後ともなると、相当なもの好きでもやってこないだろう。真面目……な気がする科学部の連中なんかはとっとと帰ってお勉強に励んでいるころじゃないだろうか。
テスト中は禁止っていうから、二週間近くも我慢することになるんだ。最後の一日ぐらい、味あわせてもらわないと。
「うー、そういうことじゃなくて」
「普段だったらありえないだろ、こんなの。なんか興奮しない?」
「それは、そうかもしれないけど……」
便器に座ってからも渋る真依子の首筋をなでる。うなじから耳にかけて柔らかく。こうやってると、アレの時以外は大抵受け入れてくれる。反対側にキスをして、耳たぶを甘噛みする。
「ん、もう、しょうがないなぁ、稜ちゃん」
「好きだよ、真依子」
「そう言うの、えっちのときだけだよね?」
「痛っ、つねるなよ、だって普段から言うのって恥ずかしいだろ。その分、今はいくらでも言ってやるよ。愛してる、真依子」
「うるさいなぁ、気持ちよく寝てたのに」
いつものようにじゃれていると、突然声が聞こえた。先生……ではないような気がする。どちらかというと、俺達と同年代っぽい。でも、人がいないのはさっき確認したのに。
もし本当に誰かいるのだとしたら、非常にまずい。学校での不純異性交遊だとか、退学になったりしないだろうか。
「ねぇ、どうかしたの?」
「あ、いや……さっき女の声聞こえなかった?」
「えー、やだ、誰かいるの? 見てきてよー」
「俺が出てったら変態じゃないか……頼むよ、真依子」
軽くキスすると、しょうがないなぁと言いながら見に行ってくれる。我が彼女ながら、ほんとに良い子だ。エッチもうまいし。
「あんたたち、さっさと帰ってよね、もう」
「え?」
すぐ近く、というより耳元で聞こえた。けど、誰もいるわけがない。ぞわっと鳥肌が立った。なんだこれ。
「稜ちゃん、やっぱりだれもいないよ」
「そ、そうか?」
「……大丈夫、なんか顔色悪くない?」
「いや、たぶん気のせいだろ。な、続き、いいだろ?」
おかえりとありがとうの意味を込めて、もう一回キス。今度は舌も入れて、じっくりと。口を離すと細い糸が伸びる。それを指でぬぐって、真依子の口に。さっき舌でやったのと同じような感じで、口の中を愛撫する。
「ん、あふ、ちゅぅ」
開いた手でセーターの上から胸をいじる。ふわふわで、だけどほどよく弾力のある柔らかい胸。年齢や体格を考えると、たぶんデカい方だと思う。
「はぁ、やっぱり真依子のさわり心地最高だ」
「んもう、ばかぁ、んっ」
もう片方の手を今度は下に。スカートをめくり、パンツの上から撫でまわす。
「お尻もやわらかいし」
「それって、ん、デブって言ってる?」
「えぇ、なんで!? ぜんぜん痩せてるし、スタイル良いじゃん!?」
話しながらも真依子の身体を楽しむのはやめない。たまに首や頬、もちろん唇にもキスをする。
「だって、ぁ、稜ちゃんがいつも見てる写真集とか、ん……」
「真依子だってイケメン俳優好きじゃん。それといっしょだってば。俺背もそんな高くないし、顔だって特に美形ってわけじゃないし、って言っててムカついてきたぞ」
別に真依子が悪いわけじゃないんだけど、なんだかお仕置きしたい気分だ。力の抜けた身体を反転させる。後ろからのしかかるようにして、便器の蓋に手をつかせる。ちょっと狭いけど、まあ、なんとかなるだろう。
「ねえ、後ろからは、あっ」
「顔を見てやりたいってのは知ってるけどさ、なんか、いじめたいかも」
「なにそれ、ちょっとぉ」
抗議は無視。さっさとパンツを脱がせる。指をなめて、まだあまりほぐれていない割れ目をなでる。
「なんで、んっ、今日の稜ちゃん、ぁぅっ、意地悪だよ」
「こんな所だから、興奮してるのかも。今も痛いぐらいだし」
現にズボンの上からでもはっきりとわかるぐらいに勃起している。たぶん学校のトイレっていう場所が原因、なんだろう。だとすれば連れ込んだ甲斐があったというものだ。
「ねぇ、うるさいって言ってるの、聞こえてるんでしょ?」
またあの声だ。いいや、無視。それより、目の前のごちそうをいただこう。直接愛撫したおかげか、だいぶ柔らかくなってきたし。
ベルトを外してモノを取り出す。さっきも真依子に言ったとおり、痛いほど膨れ上がっている。少しでも滑りが良くなるように、湿り始めた割れ目に擦りつける。
「ああもう! 余所でやりなさいよね!」
「うわ!?」
「え、どうしたの、誰か来たとか?」
「いや、なんでもない。ちょっとバランス崩しかけてさ。そろそろ入れるぞー」
適当に誤魔化して、先っぽで真依子を責める。このぐらいで声を上げてくれるっていうのが、実にいい。
それはそれとして、目の前にいきなり顔が出現すれば、驚くに決まっている。しかも、腕組みしたまま宙に浮いているというおまけつきで。これが幽霊というやつなのか。初めて見たけど、少し透けている以外は人間と見分けがつかないな。
おかっぱというには長い、まっすぐに切りそろえられた髪は多少古風な気がするが、けっこうかわいい。服は女子の制服で、一言でいうと、真依子より巨乳なのがわかる。ちょっとふてくされているみたいだけど、それもそれで悪くない。
「稜ちゃん、なんかヘンだよ? 本当に大丈夫?」
「え、あ、大丈夫。行くぞ」
観察をしながらだったせいか、どうも愛撫が疎かになってしまっていたようだ。真依子に機嫌を損ねられるのはいやだし、集中することにする。

挿絵:蒼都利音
ぎゃいぎゃいと怒鳴り続けているが、知らぬ存ぜぬで押し通す。目障りだし、耳障りでもあるけど、よく考えたら他人に見られながらって、そうそうできることじゃない。しかも、絶対に余所に漏れないという保証付き。わずらわしささえ我慢してしまえば、けっこう燃えるシチュエーションかもしれない。
十分に湿った中にモノを突っ込む。途端に真依子が声をあげる。
臨戦時のが他人と比べて大きいかどうかなんてわからないけど、真依子が満足してくれるならそれでいい。そのまま前後運動を繰り返す。ゆっくりと、次第にスピードを上げて、緩急をつけて。たまに真依子の中がきゅっと締まる。そのたびに、絞り取られるような錯覚を覚えてしまう。
「あ、あぁ、稜ちゃん、ああ!」
そうやっているうちに、段々と我慢が出来なくなってきた。自然、腰の動きが速くなる。けど、おかしい。いつもだったらここまで余裕がないなんてことにならない。学校だから、それとも見られているという背徳感から?
わからない。そんなことを考えているうちに、奥の方から突き抜けるような衝動がほとばしった。普段よりも明らかに早い。
「はぁ、はぁ……」
「ん、ぁ……稜ちゃん?」
それには真依子も気が付いたようだった。もうなの、と訝しげな顔でこちらを振り返る。なんだか情けない気がしてもう一発とも思ったけど、不思議とやる気が萎えてしまった。さっきまで燃えるとか考えてたというのに。
「や、わり、なんか……テストべんきょーで疲れてるのかな」
「もう、なによそれ、稜ちゃんがトイレなんかでやりたいって泣いて頼むから、来てあげたのに」
「泣いてねぇし! でも、ごめん、なんかホントに疲れてるのかも知んない」
自分勝手だなんだとぶーぶー言いながらも、気遣ってくれる真依子はやっぱりかわいい。いつも通り、何度もキスをして、見繕いを済ませる。痕跡はなるべくトイレットペーパーでふき取って、文字通り水に流してしまう。
その間もキスしたり、軽くボディタッチしたり。なんか、今さらながらエッチそのものよりこういうじゃれ合いが、好きなのかもしれない、なんて。その間にもふわふわ浮いている幽霊らしき女は、ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てている。そりゃこっちが邪魔しているのかもしれないけど、それにしても煩い。……どうせ何もできないみたいだし、からかってやろう。
「なあ、真依子」
「どうしたの、変な顔して」
「このトイレってさ、昔、女子生徒が一人死んでるんだって」
「え、もう、やだ、やめてよ」
なかなかいいリアクションが帰ってきた。真依子は特番のホラーとかは、必ずと言っていいほど見るくせに極度の怖がりだ。そのたびに電話で泣きついてきたりするので、ついこういう風にビビらせてみたくなる。
「そのころって今みたいに水洗じゃなかったからさ」
「やだってばぁ」
「下に落ちて、出てこれなくなって、そのまま……それから、たまに助けて、助けてって声が」
「もー!」
「いた、痛いって! ちょ、悪い、冗談だよ、冗談!」
目を潤ませながら、ばしばしと殴ってくる。しかもグーで。いくら女とはいっても、コレは痛い。小学生でも怖がらないだろうに、そんなに嫌だったのか。とりあえず場を収めるために、抱きしめてキスをする。
「ん……ばか……」
「悪いって、ほら、機嫌直して帰ろうぜ」
出る間際に、本来の目的だった幽霊を振り返る。その瞬間、寒気が背中を駆け抜けた。人生で一番、ヤバいと思った瞬間だった。
怒った顔とかなら、まだいい。そんなんだったらざまーみろと思うぐらいなものだ。顔の部分と、手や足も、黒い煙に包まれていて、何も見えなくなっていた。それがまるで、掴みかかろうとでもするような形で揺らめいていた。ほんのわずかな時間だったのに、その人間の体をなしていないナニカが脳に刻み込まれて、離れない。目を開けていても、目を閉じても、その像が消えない。
「ねぇ、大丈夫……?」
「え、あ?」
「さっきから聞こえてないみたいだし、顔色悪いし、すごい汗だよ」
「ん……ああ、大丈夫。たぶん寝れば治るって」
とてもそうは思えないけど。安心させるためにそういっておく。
だが、結局それは無駄な努力だった。段々体調は悪くなって、家にたどりつく頃には真依子に支えてもらわないと歩けないほどだった。
「ちゃんと病院に行ってよ、ね?」
「ああ……ごめんな」
「も、もう、変な場所でしようなんていうから、バチがあったんだよ! 反省してよね!」
たぶん、慰めるためだろう。わざとらしく明るい声を出して、帰っていく。何度も振り返りながら去っていく姿が、すごく申し訳なかった。
靴を脱いで、洗面所に直行。わずかに残った胃の中身と胃液を放出する。うがいをして、顔を洗って、鏡を見て驚いた。あれから1時間も経っていないと言うのに、目の下にクマができていた。震える指先でそっと撫でる。
「あれ、稜、帰ってたの、ってアンタ、なにそれ、どうしたの!?」
それからはえらい騒ぎだった。まともに反応する間もなく、近所の病院に運び込まれて、血まで抜かれる始末。詳細な結果はまた後日とのことだったが、おそらく疲れが出たのでしょう、という無責任な一言で済まされてしまった。これが現代医療の限界か。ただ、点滴のおかげだろう、少しは身体が楽になったのがせめてもの救いだった。
- ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ -
<後編に続く>
「えー、ほんとにここでするの?」
「だめ?」
だめっていうか、だって汚くない?、とごにょごにょいう彼女をトイレに連れ込む。男子トイレは個人的に嫌なので、女子トイレだ。男子は飛び散ってるかもしれないし、掃除だって適当だろうけど、女子のならそんなこともないだろう。
「大丈夫だって。この時間、誰も来ないからさ」
特別教室の集まる特別棟。ただでさえ人の少ないその場所の、さらに最奥。テスト直前の放課後ともなると、相当なもの好きでもやってこないだろう。真面目……な気がする科学部の連中なんかはとっとと帰ってお勉強に励んでいるころじゃないだろうか。
テスト中は禁止っていうから、二週間近くも我慢することになるんだ。最後の一日ぐらい、味あわせてもらわないと。
「うー、そういうことじゃなくて」
「普段だったらありえないだろ、こんなの。なんか興奮しない?」
「それは、そうかもしれないけど……」
便器に座ってからも渋る真依子の首筋をなでる。うなじから耳にかけて柔らかく。こうやってると、アレの時以外は大抵受け入れてくれる。反対側にキスをして、耳たぶを甘噛みする。
「ん、もう、しょうがないなぁ、稜ちゃん」
「好きだよ、真依子」
「そう言うの、えっちのときだけだよね?」
「痛っ、つねるなよ、だって普段から言うのって恥ずかしいだろ。その分、今はいくらでも言ってやるよ。愛してる、真依子」
「うるさいなぁ、気持ちよく寝てたのに」
いつものようにじゃれていると、突然声が聞こえた。先生……ではないような気がする。どちらかというと、俺達と同年代っぽい。でも、人がいないのはさっき確認したのに。
もし本当に誰かいるのだとしたら、非常にまずい。学校での不純異性交遊だとか、退学になったりしないだろうか。
「ねぇ、どうかしたの?」
「あ、いや……さっき女の声聞こえなかった?」
「えー、やだ、誰かいるの? 見てきてよー」
「俺が出てったら変態じゃないか……頼むよ、真依子」
軽くキスすると、しょうがないなぁと言いながら見に行ってくれる。我が彼女ながら、ほんとに良い子だ。エッチもうまいし。
「あんたたち、さっさと帰ってよね、もう」
「え?」
すぐ近く、というより耳元で聞こえた。けど、誰もいるわけがない。ぞわっと鳥肌が立った。なんだこれ。
「稜ちゃん、やっぱりだれもいないよ」
「そ、そうか?」
「……大丈夫、なんか顔色悪くない?」
「いや、たぶん気のせいだろ。な、続き、いいだろ?」
おかえりとありがとうの意味を込めて、もう一回キス。今度は舌も入れて、じっくりと。口を離すと細い糸が伸びる。それを指でぬぐって、真依子の口に。さっき舌でやったのと同じような感じで、口の中を愛撫する。
「ん、あふ、ちゅぅ」
開いた手でセーターの上から胸をいじる。ふわふわで、だけどほどよく弾力のある柔らかい胸。年齢や体格を考えると、たぶんデカい方だと思う。
「はぁ、やっぱり真依子のさわり心地最高だ」
「んもう、ばかぁ、んっ」
もう片方の手を今度は下に。スカートをめくり、パンツの上から撫でまわす。
「お尻もやわらかいし」
「それって、ん、デブって言ってる?」
「えぇ、なんで!? ぜんぜん痩せてるし、スタイル良いじゃん!?」
話しながらも真依子の身体を楽しむのはやめない。たまに首や頬、もちろん唇にもキスをする。
「だって、ぁ、稜ちゃんがいつも見てる写真集とか、ん……」
「真依子だってイケメン俳優好きじゃん。それといっしょだってば。俺背もそんな高くないし、顔だって特に美形ってわけじゃないし、って言っててムカついてきたぞ」
別に真依子が悪いわけじゃないんだけど、なんだかお仕置きしたい気分だ。力の抜けた身体を反転させる。後ろからのしかかるようにして、便器の蓋に手をつかせる。ちょっと狭いけど、まあ、なんとかなるだろう。
「ねえ、後ろからは、あっ」
「顔を見てやりたいってのは知ってるけどさ、なんか、いじめたいかも」
「なにそれ、ちょっとぉ」
抗議は無視。さっさとパンツを脱がせる。指をなめて、まだあまりほぐれていない割れ目をなでる。
「なんで、んっ、今日の稜ちゃん、ぁぅっ、意地悪だよ」
「こんな所だから、興奮してるのかも。今も痛いぐらいだし」
現にズボンの上からでもはっきりとわかるぐらいに勃起している。たぶん学校のトイレっていう場所が原因、なんだろう。だとすれば連れ込んだ甲斐があったというものだ。
「ねぇ、うるさいって言ってるの、聞こえてるんでしょ?」
またあの声だ。いいや、無視。それより、目の前のごちそうをいただこう。直接愛撫したおかげか、だいぶ柔らかくなってきたし。
ベルトを外してモノを取り出す。さっきも真依子に言ったとおり、痛いほど膨れ上がっている。少しでも滑りが良くなるように、湿り始めた割れ目に擦りつける。
「ああもう! 余所でやりなさいよね!」
「うわ!?」
「え、どうしたの、誰か来たとか?」
「いや、なんでもない。ちょっとバランス崩しかけてさ。そろそろ入れるぞー」
適当に誤魔化して、先っぽで真依子を責める。このぐらいで声を上げてくれるっていうのが、実にいい。
それはそれとして、目の前にいきなり顔が出現すれば、驚くに決まっている。しかも、腕組みしたまま宙に浮いているというおまけつきで。これが幽霊というやつなのか。初めて見たけど、少し透けている以外は人間と見分けがつかないな。
おかっぱというには長い、まっすぐに切りそろえられた髪は多少古風な気がするが、けっこうかわいい。服は女子の制服で、一言でいうと、真依子より巨乳なのがわかる。ちょっとふてくされているみたいだけど、それもそれで悪くない。
「稜ちゃん、なんかヘンだよ? 本当に大丈夫?」
「え、あ、大丈夫。行くぞ」
観察をしながらだったせいか、どうも愛撫が疎かになってしまっていたようだ。真依子に機嫌を損ねられるのはいやだし、集中することにする。

挿絵:蒼都利音
ぎゃいぎゃいと怒鳴り続けているが、知らぬ存ぜぬで押し通す。目障りだし、耳障りでもあるけど、よく考えたら他人に見られながらって、そうそうできることじゃない。しかも、絶対に余所に漏れないという保証付き。わずらわしささえ我慢してしまえば、けっこう燃えるシチュエーションかもしれない。
十分に湿った中にモノを突っ込む。途端に真依子が声をあげる。
臨戦時のが他人と比べて大きいかどうかなんてわからないけど、真依子が満足してくれるならそれでいい。そのまま前後運動を繰り返す。ゆっくりと、次第にスピードを上げて、緩急をつけて。たまに真依子の中がきゅっと締まる。そのたびに、絞り取られるような錯覚を覚えてしまう。
「あ、あぁ、稜ちゃん、ああ!」
そうやっているうちに、段々と我慢が出来なくなってきた。自然、腰の動きが速くなる。けど、おかしい。いつもだったらここまで余裕がないなんてことにならない。学校だから、それとも見られているという背徳感から?
わからない。そんなことを考えているうちに、奥の方から突き抜けるような衝動がほとばしった。普段よりも明らかに早い。
「はぁ、はぁ……」
「ん、ぁ……稜ちゃん?」
それには真依子も気が付いたようだった。もうなの、と訝しげな顔でこちらを振り返る。なんだか情けない気がしてもう一発とも思ったけど、不思議とやる気が萎えてしまった。さっきまで燃えるとか考えてたというのに。
「や、わり、なんか……テストべんきょーで疲れてるのかな」
「もう、なによそれ、稜ちゃんがトイレなんかでやりたいって泣いて頼むから、来てあげたのに」
「泣いてねぇし! でも、ごめん、なんかホントに疲れてるのかも知んない」
自分勝手だなんだとぶーぶー言いながらも、気遣ってくれる真依子はやっぱりかわいい。いつも通り、何度もキスをして、見繕いを済ませる。痕跡はなるべくトイレットペーパーでふき取って、文字通り水に流してしまう。
その間もキスしたり、軽くボディタッチしたり。なんか、今さらながらエッチそのものよりこういうじゃれ合いが、好きなのかもしれない、なんて。その間にもふわふわ浮いている幽霊らしき女は、ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てている。そりゃこっちが邪魔しているのかもしれないけど、それにしても煩い。……どうせ何もできないみたいだし、からかってやろう。
「なあ、真依子」
「どうしたの、変な顔して」
「このトイレってさ、昔、女子生徒が一人死んでるんだって」
「え、もう、やだ、やめてよ」
なかなかいいリアクションが帰ってきた。真依子は特番のホラーとかは、必ずと言っていいほど見るくせに極度の怖がりだ。そのたびに電話で泣きついてきたりするので、ついこういう風にビビらせてみたくなる。
「そのころって今みたいに水洗じゃなかったからさ」
「やだってばぁ」
「下に落ちて、出てこれなくなって、そのまま……それから、たまに助けて、助けてって声が」
「もー!」
「いた、痛いって! ちょ、悪い、冗談だよ、冗談!」
目を潤ませながら、ばしばしと殴ってくる。しかもグーで。いくら女とはいっても、コレは痛い。小学生でも怖がらないだろうに、そんなに嫌だったのか。とりあえず場を収めるために、抱きしめてキスをする。
「ん……ばか……」
「悪いって、ほら、機嫌直して帰ろうぜ」
出る間際に、本来の目的だった幽霊を振り返る。その瞬間、寒気が背中を駆け抜けた。人生で一番、ヤバいと思った瞬間だった。
怒った顔とかなら、まだいい。そんなんだったらざまーみろと思うぐらいなものだ。顔の部分と、手や足も、黒い煙に包まれていて、何も見えなくなっていた。それがまるで、掴みかかろうとでもするような形で揺らめいていた。ほんのわずかな時間だったのに、その人間の体をなしていないナニカが脳に刻み込まれて、離れない。目を開けていても、目を閉じても、その像が消えない。
「ねぇ、大丈夫……?」
「え、あ?」
「さっきから聞こえてないみたいだし、顔色悪いし、すごい汗だよ」
「ん……ああ、大丈夫。たぶん寝れば治るって」
とてもそうは思えないけど。安心させるためにそういっておく。
だが、結局それは無駄な努力だった。段々体調は悪くなって、家にたどりつく頃には真依子に支えてもらわないと歩けないほどだった。
「ちゃんと病院に行ってよ、ね?」
「ああ……ごめんな」
「も、もう、変な場所でしようなんていうから、バチがあったんだよ! 反省してよね!」
たぶん、慰めるためだろう。わざとらしく明るい声を出して、帰っていく。何度も振り返りながら去っていく姿が、すごく申し訳なかった。
靴を脱いで、洗面所に直行。わずかに残った胃の中身と胃液を放出する。うがいをして、顔を洗って、鏡を見て驚いた。あれから1時間も経っていないと言うのに、目の下にクマができていた。震える指先でそっと撫でる。
「あれ、稜、帰ってたの、ってアンタ、なにそれ、どうしたの!?」
それからはえらい騒ぎだった。まともに反応する間もなく、近所の病院に運び込まれて、血まで抜かれる始末。詳細な結果はまた後日とのことだったが、おそらく疲れが出たのでしょう、という無責任な一言で済まされてしまった。これが現代医療の限界か。ただ、点滴のおかげだろう、少しは身体が楽になったのがせめてもの救いだった。
- ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ - ☆ -
<後編に続く>
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後編につづく←後編に繋がってるんですか?まだ作られてないんですか?
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