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代理出産!? -その3-
おお、無茶ぶりでここまでちゃんと作品にするとは、流石はありす。
こうなったらもうキャライラストも作っちゃいましょう。
松園さんが先日漫画を完成させてくれたので頼んじゃおうかな~。
こうなったらもうキャライラストも作っちゃいましょう。
松園さんが先日漫画を完成させてくれたので頼んじゃおうかな~。
(2) -------------------------------------------------------
「なっ……ど、どうなってんだ! これ!!!」
目が覚めたとき、体に妙な違和感を感じ、起き上がって自分の体を確かめた。
「目、覚めた?」
聞き覚えのあるような、しかし記憶の薄い声のほうをみると、そこには自分がいて、こちらを見てにっこりと笑っていた。
「お、おまえは誰だ!? オレは一体どうなって……こ、声が?!」
「落ち着いて、お腹の子に障るわ。あなたとわたし、体を入れ替えたのよ。そう説明を受けたでしょ?」
「い、入れ替えたって……? それじゃ俺は……」
「はい、鏡」
差し出されるままに受け取った手鏡を見ると、そこには見慣れた妻の顔があった。
驚いて、空いている手で顔をぺたぺたと触ってみると、鏡に映ったとおりに、触った手の感覚と、触られた顔の感触があった。
「い、いったいどうやって、何でこんな……」
「説明聞いていなかったの? 私達は、妊婦体験プログラムに応募して、健康診断も問題なかったから、体を入れ替えたのよ。私も説明したし、先生にも説明してもらったでしょ?」
「い、いや、俺は何かの装置でそういうのを疑似体験するプログラムか何かだと思っていたんだが……」
「説明よく聞いていなかったのね。でもいいわ。どの道、しばらくは元には戻せないんだから」
「元には戻せないって、まさか俺たち、ずっとこのまま……?」
「赤ちゃんを産んだら、元に戻れるわよ。それまでは駄目」
「それって、つまり……」
「そう、出産の痛みを擬似的に体験するんじゃなくって、本当にあなたに産んで貰うの」
混乱する頭が、自分の顔と声でそう告げる妻の言葉をまだ理解……、いや信じたくないと脳が拒否していた。
「産むって、何を……」
「赤ちゃん」
「誰が……」
「あなた」
自分にそう指をさされたとたん、不覚にもまた人事不省に陥ってしまった。
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
ぺちぺちと頬を叩かれて、俺は正気を取り戻した。
「しっかりしてよ。そうたびたび貧血で倒れていたんじゃ、本番の時どうするの?」
「本番……って、やっぱり俺が産むのか?」
「応援するわ。がんばってね」
にっこりと笑顔の妻(顔は俺)を、ジト目で睨む。
「お前、俺の事騙したんだな」
「騙してなんかいないわ。あなたがちゃんと聞いていなかったんでしょ?」
「だってそんな、体を入れ替えるだなんて、そんなこと思いもしなかったぞ!」
「まだ実用化段階になったばかりみたいよ。私も今回はじめて知ったわ」
「そこまでして……、お前そんなに俺の子を産むのが嫌だったのか?」
「そんなわけないじゃない? 子供は欲しいわ。でも今ちょっと大事なプロジェクトを抱えていてね」
「そうだ、仕事! お前、仕事どうするんだ」
「だからあなたの体を借りて、私の会社のほうへ行くわ。もちろん既に上司の了承済み」
「俺のほうは?」
「電話で話したら、『そういう事情ならいくらでも休んでください』って。どうせ派遣でしょ?あなたのほうは」
「ばかいえ! 俺だってそれなりに重要な……『いくらでも休んで良い』……って、まさか」
今度こそ血の気がゆっくりと引いていくのが、自分でも判った。
そんな妻(体は俺)は、俺を哀れんでか、目をそらしていった。
「暗に、『クビ』って言うことかしらね……」
「そ、そんな……。だってやっと見つけた職なのに……、クビ?……」
「あー落ち着いて! 大丈夫だから。ちゃんと養ってあげるから。子供だって生まれるんだもん。大丈夫。家計のほうはなんとかなるから大丈夫!!」
「大丈夫って、それじゃ俺は…………」
体を入れ替えられたことへの驚きと戸惑い、妊娠に続く出産への不安、失職と言う男の人生にとって最大級かつ、本当ならばあり得ない不幸に、俺は打ちのめされ声もでなくなった。
ぎゅっとシーツを掴んだ俺の手が、震え始めたのを見て心配した妻が、なだめる様に、ゆっくりと背中をさすった。
「心配しないで、ね? 大丈夫だから」
「……ぐすっ、……だって、……うわーん!」
けれど、それがかえって呼び水になってしまったのか、おれは自分の姿をした妻に取りすがって大声で泣き始めてしまった。
一度声を出して泣いてしまうと、もう自分でも感情を制御することが出来ず、後から思い出しても恥ずかしいぐらいに、わんわん泣いてしまった。
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
「どう? 落ち着いた?」
「……」
俺は大声で泣き続けてしまった恥ずかしさもあって、不貞腐れたまま下を向いていた。
ずっと黙ったままでいると、妻もどうして良いのか分からなかったらしく、ばつが悪そうに 困惑した笑みを浮かべたまま、何も言わなかった。
沈黙を破るように、院内放送で看護婦を呼ぶ放送が流れたのを、きっかけにするかのように立ち上がって言った。
「そろそろ帰らなきゃ」
「ちょっと待て! 元に戻してくれよ。このままだなんて俺は」
「それは無理。このプログラム、予約ですごく埋まっていて、申し込んでも直ぐにはやってもらえないのよ」
「じゃ、どのくらい待てばいいんだ?」
「そうねぇ、半年ぐらいかしら。今回もそれぐらい待たされたわ」
「半年……ってことは」
確か今は妊娠6ヶ月だった筈。後半年といったら、産み月はもう過ぎている。
……待てよ? 今回も半年待ちだった……、ってことは!
「お前、『今回も半年待ち』って、あの時、子供作ることに賛成したとき……、最初っから入れ替わるつもりでいたんだな!」
「あ……」
一瞬妻はしまったというように口を押さえたが、直ぐに真剣な顔つきになって、俺の両肩に手を添えていった。
「騙したようになってしまったのは、謝るわ。ごめんなさい。でもこうするのが一番良いと思ったの。わたしのその体、安全に元気な赤ちゃんを産むには、年齢的にそろそろ厳しいわ。でも、子供が生まれるなら、正直今の二人の収入ではちょっと苦しい。将来のために貯金もしなきゃならないし。でも半年前、わたしは重要な開発プログラムのチームリーダーにならないかって打診されたの。昇進と昇給、開発が成功すれば、ボーナスも約束された。だから、あなたに代わりに赤ちゃんを産んでもらって、私が仕事をすれば、収入の問題は解決する。そう踏んだのよ。だってその……、あなたの給料は……」
そこまで言って顔を伏せる妻に、俺は何も言い返せなかった。
俺の給料がかなり安いのは事実だった。派遣の仕事といっても、週に3、4日もあればいいほうで、はっきり言って妻の半分ほどしか稼げていなかった。
理詰めで説得されては、何も言い返せない。
「ちょっと……、いえ、かなり不安かもしれないけれど、大丈夫。二人でがんばって、元気な赤ちゃんを産みましょう」
妻は俺の肩をがしっと掴んだ。
「いや、あの……」
「2、3日、ここに入院して、検診を受けたり、妊娠中と出産に当たっての必要なことを学んで、それから退院できるわ。週明けには家に帰れるから」
「そんな…….、置いていくのか? おれを……、このまま?」
たぶん、相当に悲しそうな顔をしていたんではないかと思う。
この時のおれは、不安で押しつぶされそうなほどになっていたから。
妻はそんなおれをぎゅっと抱きしめた後、キスをしてから言った。
「明日も必ず来るから。愛しているよ、ダーリン」
予想だにしなかった妻の行動に、しばらく呆然としてしまっていた。
気がついたときには、病室に一人残されていた。
「な……、あ、あいつ! キ、キスなんかしていきやがって!」
そう怒鳴って、枕を入口のドアに向かって叩きつけた。
カーっと頭に血が上って衝動的にそんなことをしてしまったが、ぜえぜえと肩で息を切らしてしばらくすると、少しだけ落ち着いてきた。
どうもこの体では、感情のコントロールがうまくいかないらしい。未だに心臓のドキドキが収まらない。
キ、キスなんかしやがって、キスなんかしやがって、キスなんかしやがって……。
本当に怒るべきはそこではない事に気がついたのは、次の日の朝目覚めてからだった。
-------------------------------------------------------
あ~、設定消化だけで話がぜんぜん進んでいないわ……┐('~`;)┌
明日早いので、もう寝ますm(_ _)m 続きは、また来週に。
やっぱり、妊娠中のキャッキャウフフとか、他の妊夫さんとのおトボケ奇行とかが読みたいよね?
読みたいよね?
「なっ……ど、どうなってんだ! これ!!!」
目が覚めたとき、体に妙な違和感を感じ、起き上がって自分の体を確かめた。
「目、覚めた?」
聞き覚えのあるような、しかし記憶の薄い声のほうをみると、そこには自分がいて、こちらを見てにっこりと笑っていた。
「お、おまえは誰だ!? オレは一体どうなって……こ、声が?!」
「落ち着いて、お腹の子に障るわ。あなたとわたし、体を入れ替えたのよ。そう説明を受けたでしょ?」
「い、入れ替えたって……? それじゃ俺は……」
「はい、鏡」
差し出されるままに受け取った手鏡を見ると、そこには見慣れた妻の顔があった。
驚いて、空いている手で顔をぺたぺたと触ってみると、鏡に映ったとおりに、触った手の感覚と、触られた顔の感触があった。
「い、いったいどうやって、何でこんな……」
「説明聞いていなかったの? 私達は、妊婦体験プログラムに応募して、健康診断も問題なかったから、体を入れ替えたのよ。私も説明したし、先生にも説明してもらったでしょ?」
「い、いや、俺は何かの装置でそういうのを疑似体験するプログラムか何かだと思っていたんだが……」
「説明よく聞いていなかったのね。でもいいわ。どの道、しばらくは元には戻せないんだから」
「元には戻せないって、まさか俺たち、ずっとこのまま……?」
「赤ちゃんを産んだら、元に戻れるわよ。それまでは駄目」
「それって、つまり……」
「そう、出産の痛みを擬似的に体験するんじゃなくって、本当にあなたに産んで貰うの」
混乱する頭が、自分の顔と声でそう告げる妻の言葉をまだ理解……、いや信じたくないと脳が拒否していた。
「産むって、何を……」
「赤ちゃん」
「誰が……」
「あなた」
自分にそう指をさされたとたん、不覚にもまた人事不省に陥ってしまった。
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ぺちぺちと頬を叩かれて、俺は正気を取り戻した。
「しっかりしてよ。そうたびたび貧血で倒れていたんじゃ、本番の時どうするの?」
「本番……って、やっぱり俺が産むのか?」
「応援するわ。がんばってね」
にっこりと笑顔の妻(顔は俺)を、ジト目で睨む。
「お前、俺の事騙したんだな」
「騙してなんかいないわ。あなたがちゃんと聞いていなかったんでしょ?」
「だってそんな、体を入れ替えるだなんて、そんなこと思いもしなかったぞ!」
「まだ実用化段階になったばかりみたいよ。私も今回はじめて知ったわ」
「そこまでして……、お前そんなに俺の子を産むのが嫌だったのか?」
「そんなわけないじゃない? 子供は欲しいわ。でも今ちょっと大事なプロジェクトを抱えていてね」
「そうだ、仕事! お前、仕事どうするんだ」
「だからあなたの体を借りて、私の会社のほうへ行くわ。もちろん既に上司の了承済み」
「俺のほうは?」
「電話で話したら、『そういう事情ならいくらでも休んでください』って。どうせ派遣でしょ?あなたのほうは」
「ばかいえ! 俺だってそれなりに重要な……『いくらでも休んで良い』……って、まさか」
今度こそ血の気がゆっくりと引いていくのが、自分でも判った。
そんな妻(体は俺)は、俺を哀れんでか、目をそらしていった。
「暗に、『クビ』って言うことかしらね……」
「そ、そんな……。だってやっと見つけた職なのに……、クビ?……」
「あー落ち着いて! 大丈夫だから。ちゃんと養ってあげるから。子供だって生まれるんだもん。大丈夫。家計のほうはなんとかなるから大丈夫!!」
「大丈夫って、それじゃ俺は…………」
体を入れ替えられたことへの驚きと戸惑い、妊娠に続く出産への不安、失職と言う男の人生にとって最大級かつ、本当ならばあり得ない不幸に、俺は打ちのめされ声もでなくなった。
ぎゅっとシーツを掴んだ俺の手が、震え始めたのを見て心配した妻が、なだめる様に、ゆっくりと背中をさすった。
「心配しないで、ね? 大丈夫だから」
「……ぐすっ、……だって、……うわーん!」
けれど、それがかえって呼び水になってしまったのか、おれは自分の姿をした妻に取りすがって大声で泣き始めてしまった。
一度声を出して泣いてしまうと、もう自分でも感情を制御することが出来ず、後から思い出しても恥ずかしいぐらいに、わんわん泣いてしまった。
*---*---*---*---*---*---*---*---*---*---*
「どう? 落ち着いた?」
「……」
俺は大声で泣き続けてしまった恥ずかしさもあって、不貞腐れたまま下を向いていた。
ずっと黙ったままでいると、妻もどうして良いのか分からなかったらしく、ばつが悪そうに 困惑した笑みを浮かべたまま、何も言わなかった。
沈黙を破るように、院内放送で看護婦を呼ぶ放送が流れたのを、きっかけにするかのように立ち上がって言った。
「そろそろ帰らなきゃ」
「ちょっと待て! 元に戻してくれよ。このままだなんて俺は」
「それは無理。このプログラム、予約ですごく埋まっていて、申し込んでも直ぐにはやってもらえないのよ」
「じゃ、どのくらい待てばいいんだ?」
「そうねぇ、半年ぐらいかしら。今回もそれぐらい待たされたわ」
「半年……ってことは」
確か今は妊娠6ヶ月だった筈。後半年といったら、産み月はもう過ぎている。
……待てよ? 今回も半年待ちだった……、ってことは!
「お前、『今回も半年待ち』って、あの時、子供作ることに賛成したとき……、最初っから入れ替わるつもりでいたんだな!」
「あ……」
一瞬妻はしまったというように口を押さえたが、直ぐに真剣な顔つきになって、俺の両肩に手を添えていった。
「騙したようになってしまったのは、謝るわ。ごめんなさい。でもこうするのが一番良いと思ったの。わたしのその体、安全に元気な赤ちゃんを産むには、年齢的にそろそろ厳しいわ。でも、子供が生まれるなら、正直今の二人の収入ではちょっと苦しい。将来のために貯金もしなきゃならないし。でも半年前、わたしは重要な開発プログラムのチームリーダーにならないかって打診されたの。昇進と昇給、開発が成功すれば、ボーナスも約束された。だから、あなたに代わりに赤ちゃんを産んでもらって、私が仕事をすれば、収入の問題は解決する。そう踏んだのよ。だってその……、あなたの給料は……」
そこまで言って顔を伏せる妻に、俺は何も言い返せなかった。
俺の給料がかなり安いのは事実だった。派遣の仕事といっても、週に3、4日もあればいいほうで、はっきり言って妻の半分ほどしか稼げていなかった。
理詰めで説得されては、何も言い返せない。
「ちょっと……、いえ、かなり不安かもしれないけれど、大丈夫。二人でがんばって、元気な赤ちゃんを産みましょう」
妻は俺の肩をがしっと掴んだ。
「いや、あの……」
「2、3日、ここに入院して、検診を受けたり、妊娠中と出産に当たっての必要なことを学んで、それから退院できるわ。週明けには家に帰れるから」
「そんな…….、置いていくのか? おれを……、このまま?」
たぶん、相当に悲しそうな顔をしていたんではないかと思う。
この時のおれは、不安で押しつぶされそうなほどになっていたから。
妻はそんなおれをぎゅっと抱きしめた後、キスをしてから言った。
「明日も必ず来るから。愛しているよ、ダーリン」
予想だにしなかった妻の行動に、しばらく呆然としてしまっていた。
気がついたときには、病室に一人残されていた。
「な……、あ、あいつ! キ、キスなんかしていきやがって!」
そう怒鳴って、枕を入口のドアに向かって叩きつけた。
カーっと頭に血が上って衝動的にそんなことをしてしまったが、ぜえぜえと肩で息を切らしてしばらくすると、少しだけ落ち着いてきた。
どうもこの体では、感情のコントロールがうまくいかないらしい。未だに心臓のドキドキが収まらない。
キ、キスなんかしやがって、キスなんかしやがって、キスなんかしやがって……。
本当に怒るべきはそこではない事に気がついたのは、次の日の朝目覚めてからだった。
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あ~、設定消化だけで話がぜんぜん進んでいないわ……┐('~`;)┌
明日早いので、もう寝ますm(_ _)m 続きは、また来週に。
やっぱり、妊娠中のキャッキャウフフとか、他の妊夫さんとのおトボケ奇行とかが読みたいよね?
読みたいよね?
おお、流石はありす!
ありがと~。
ありがと~。
え~っw ?!
-------------------------------------------------------
「ねぇ、あなた。このプログラム参加してみない?」
妊娠中の妻が持ってきたパンフレットには、こんなことが書いてあった。
『愛する妻の出産の苦しみをわかちあって、夫婦の絆を深めてみませんか?』
「これに、俺が?」
「そう」
少し膨らんだお腹を撫でながら、妻がニッコリと笑みを浮かべて、そう誘った。
子供を産むのを嫌がっていた妻だったが、長い結婚交渉の末にめでたく懐妊。
今は妊娠6ヶ月。安定期に入っており、短縮勤務だが職場復帰して働いてもいる。
そんな妻の大変さも理解していた俺は快く応じたのだったが、これが安易な決断だったことを後になって知ることになった。パンフレットには他にも細々と書いてあったのだが、そんなことに注意を払うほど、俺は細かい男ではなかったのだ。
20組ほどの夫婦だったろうか。都市部にある大きな大学病院で、妻組の検診と並行する形で、我々夫組も身体検査を受けた。
検査後の個別面談で、医者と思しき白衣をきた男が何やら難しい話と、細々とした注意事項のようなことを説明していたが、はしゃぐように熱心に聞いている妻をよそに、俺はそれを上の空で聞き流していた。しっかりものの妻に任せておけば安心などと、タカをくくっていたのだ。やがて生まれて来るであろう赤ん坊への期待に目を輝かせているのだろう、などと勝手な考えを持っていた俺は、肝心な事を聞き逃していたようだった。
手術室のように複雑な機械がいっぱい並んだ部屋の真ん中に並べられた、二つのベッドに妻と横になり、体にたくさんのセンサのようなものや機械を取り付けられた。
よく説明を聴いていなかった俺は慌てたが、「これは出産さんの痛みを経験するための装置よ、そう説明したでしょ?」と妻に諭されるように言われては、そういえばそうだったと納得し、おとなしくされるがままに任せるしかなかった。
やがて装置が作動したのか、次第に眠くなり、そして……。
目が覚めた時、俺は驚愕の事実を押し付けられるハメになっていたのだった。
-------------------------------------------------------
風邪ひいてるので、残りは週末に書きます(~_~ ;)ゲホゲホ
……書ければ、書ける時、書けるかな……w
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「ねぇ、あなた。このプログラム参加してみない?」
妊娠中の妻が持ってきたパンフレットには、こんなことが書いてあった。
『愛する妻の出産の苦しみをわかちあって、夫婦の絆を深めてみませんか?』
「これに、俺が?」
「そう」
少し膨らんだお腹を撫でながら、妻がニッコリと笑みを浮かべて、そう誘った。
子供を産むのを嫌がっていた妻だったが、長い結婚交渉の末にめでたく懐妊。
今は妊娠6ヶ月。安定期に入っており、短縮勤務だが職場復帰して働いてもいる。
そんな妻の大変さも理解していた俺は快く応じたのだったが、これが安易な決断だったことを後になって知ることになった。パンフレットには他にも細々と書いてあったのだが、そんなことに注意を払うほど、俺は細かい男ではなかったのだ。
20組ほどの夫婦だったろうか。都市部にある大きな大学病院で、妻組の検診と並行する形で、我々夫組も身体検査を受けた。
検査後の個別面談で、医者と思しき白衣をきた男が何やら難しい話と、細々とした注意事項のようなことを説明していたが、はしゃぐように熱心に聞いている妻をよそに、俺はそれを上の空で聞き流していた。しっかりものの妻に任せておけば安心などと、タカをくくっていたのだ。やがて生まれて来るであろう赤ん坊への期待に目を輝かせているのだろう、などと勝手な考えを持っていた俺は、肝心な事を聞き逃していたようだった。
手術室のように複雑な機械がいっぱい並んだ部屋の真ん中に並べられた、二つのベッドに妻と横になり、体にたくさんのセンサのようなものや機械を取り付けられた。
よく説明を聴いていなかった俺は慌てたが、「これは出産さんの痛みを経験するための装置よ、そう説明したでしょ?」と妻に諭されるように言われては、そういえばそうだったと納得し、おとなしくされるがままに任せるしかなかった。
やがて装置が作動したのか、次第に眠くなり、そして……。
目が覚めた時、俺は驚愕の事実を押し付けられるハメになっていたのだった。
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風邪ひいてるので、残りは週末に書きます(~_~ ;)ゲホゲホ
……書ければ、書ける時、書けるかな……w
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翌日、おれは眠い目をこすりながら、「"妊夫"の心得」なる講習を受けていた。
おれ以外にも、10人ばかりの同じ境遇の人がいたが、不安そうな顏をしているのはあまりおらず、むしろ期待に目を輝かせて笑顔で聞いている者までいる。
おれみたいに騙されてこの場にいる奴なんかいないと思うと、疎外感を感じていた。
「……以上、皆さんが特に注意しなければならないことです。では、慣れない体で大変でしょうが、がんばって元気な赤ちゃんを産んでください」
注意事項のほとんどを聞き逃していたが、自分の置かれた状況を思うと、不安ばかりが先立って頭になんて入りようがなかった。
「大丈夫ですか? 顔色があまりよくないようですが」
隣に座っていた妊夫が声をかけてきた。
長いストレートの黒髪を、腰に届くほどまでに伸ばした、繊細そうな美人だった。
「ええ、まぁ……」
おれがあいまいな返事を返すと、心配そうに気を使ってくれた。
「つわりが酷いのなら、診てもらうといいですよ。私たちには専門のお医者さんが付いてくれて、24時間体制でフォローしてくれますから」
「いや、つわりと言うわけではないのですが……」
「"妊夫"になられたことがご不安ですか? 最初は皆さんそうみたいですね」
「と言う事は、あなたは初めてじゃないんですか?」
「ええ、2回目、というか。この子で二人目ですね」
「え、その……なんていうか」
「”なんて物好きな”、そうおっしゃりたいのでしょう?」
「あ、いえ、そんな……」
「いいんですよ。半分ぐらいは、自分の希望でもありますから」
見た目によく似合う澄んだ声で、愛おしそうに自分のお腹をさすりながら言った。
「オレは嫌々だけどな」
後から頭越しに声をかけられた。
振り向くと、腰に手を当てて仁王立ちになった妊夫が、おれを見下ろしていた。
青い瞳に金髪ツインテール、童顔の美少女風の人物だった。
「あ、オレは”神代 高明(かみしろ たかあき)”ってんだ。ヨロシクな」
「申し送れました。私は"一条 剛毅(いちじょう ごうき)”です。"一条 瞳(ひとみ)”と名乗ったほうがよかったかしら?」
「あ、おれは”小鳥遊 弘明(たかなし ひろあき)”です」
3人は改まったように、それぞれ自己紹介した。
「神代……さんも、二度目なんですか?」
「ああ、酷ェと思わねぇか? "ソフィア”……あ、この体押し付けた妻の事なんだが、見てのとおり外国人でよ。フェミニストだかなんだかしらねぇが、一人目の時に『原因を作ったのはアンタだから結果は責任取れ』とか言いくるめられて、代わってやったのよ。そんで授乳期の間までって事で、しばらくこの体でいたんだが、その間にオレの事孕ませやがってよ。この有様だぜ。まったく!」
「す、すごい奥さんですね……」
「せっかく他のママさん連中と仲良しになったと思ったら、妊夫組に逆戻りだぜ」
リボンやフリルで着飾った、少しお腹の大きい金髪少女の、外観に似合わない乱暴な口調で話すかわいらしい声に、おれはちょっとめまいがした。 いろいろな意味で、ちぐはぐ過ぎる。
「一条さんは、どういうご事情で?」
おれがそう尋ねると、こちらはにっこりと笑いながら言った。
「瞳……妻は、大変な小心者で。出産が怖いとかで仕方なく」
「じゃ、やっぱり嫌々?」
「いえ、二人目を欲しがったのは、私の方でして。まぁ、一度産んだら二度目も大して変わらないかなと……」
「はぁ……」
照れ隠しなのか、ちょっと顔を赤らめて笑う和装の彼女(?)に、おれは魅了されそうになったが、この人も本当は男性なんだろうと思うと、複雑な思いがした。
「あら、皆さん。お知り合い同士なんですか?」
少し癖のある茶髪の女性が話しかけてきた。いや、この人も妊夫?
「私は、"市橋 絵美子”と申します。皆さんとは違って元からの女性です。でも皆さんと同じで、今は妊娠しています。元男性ばかりでは、判らないことや、悩み事があるだろうと、病院の方から言われて、お仲間にさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」
そういって頭を下げる彼女に、おれたちはもう一度簡単に自己紹介をした。
「それじゃ皆さん、お知りあいになったばかりなんですか?」
「ああ、オレたちも今、ダチになったばかりだ」
「この方があまりに不安そうだったので、話しかけてみたんですわ」
絵美子さんの質問に、神代氏と一条さんがオレの方に手を向けながら言った。
「それじゃ、わたしと小鳥遊さんが初産なんですね。女性としては私が先輩ですが、妊婦さんとしては、神代さんと一条さんが先輩ですね」
「オレは自分が”女”だとは思っていないぜ」
神代氏が腕を組み、ちょっとむくれて言う。ちぐはぐな外見と仕草だが、ポーズはなぜか様になっている。
一条さんは苦笑気味に笑っている。
つい数十分前までは、不安とやり場のない怒りに気が滅入っていたが、彼女たち(?)と知り合えた事で、少しだけ気分が晴れてきた。
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タイトルも決まり、メイン4人が登場して、今回はここまで。
松園さんの素敵なイラストも出来たしで、話が進んで行きます。
あらすじも決めないまま、書きながら投稿して行くのは、すごく久しぶりなんで、話がどう落ち着くのか見当も付きませんw。ではまた来週。