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初恋、濃厚みるく味   by.うずら 

「初恋、濃厚みるく味」

挿絵:桐山マチ

 昼休み。窓際の席で外を見ながらパックのジュースを飲む彼女。なんでもないことなのに、その姿がなぜか忘れられなくて、気がつけば目で追いかけてしまっていた。
 すらっとした美人だから。陽光で輝いて見えたから。それとも、パッケージが印刷されていない不思議なパックだから。色々考えられることはあるけど、けっきょくどうしてかなんてわからない。
 わかっている。いつまで経っても男らしくならない俺となんて、釣り合うわけがない。背も低いし、顔もガキみたいだし、声変わりもしたのかしてないのかわからないし。
 ただ、そう、叶わなくたっていい。これはきっと俺にとっての初恋だから。

 ―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

 チャイムが鳴った。次が体育ということで、みんな昼休みから着替えに行ってしまっている。残っているのは体調不良という彼女と、それを知ってさぼった俺のふたりきり。保健のレポートを書かないといけないけど、それよりもいっしょに居られることがうれしかった。

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 ちぅとストローに吸いつく音。さやさやと風が吹きこむ。横目で様子をうかがうと、ふいに目があってしまった。
 彼女がこっちを見ている。このままでいるのも、目をそらすのも変な気がして、俺も彼女の方を向く。いつも追いかけているだけの視線が交わって、ひどく気恥ずかしい。
「あの」「ねぇ、いつも私を見てるよね」
 気づかれていた。嫌な汗が出て、顔が熱くなる。変に思われていたら、どうしよう。嫌われたりしていたら――。
「どうして?」
「どう、って、あ、俺は」
 喉が張り付いてどうしようもない。掠れた声で、それでもちゃんと応えたいのに、まともな言葉にならない。なんとか落ちつかないと、と唾を飲み込む。だが、その音がやけに大きく聞こえた気がして、余計に冷静さが失われていく。
「喉、かわいてるの?」
 差し出されるパック。少し太めのストローは刺さったままで、それは、つまり、先ほどまで彼女が飲んでいた、そのままで。
 汗ばんだ手で受け取る。これに彼女の唇がついていて、間接的にだとしても、それを味わえるなんて。
「も、らいます」
「あ、私のつばついちゃってるから、汚いかな」
 あまりにストローを見つめすぎていただろうか。そんなことを言われてしまう。情けないが、そんなことないと否定する単語すら出てこない。だから、代わりに行動で示すことにした。
 しかし、くわえた瞬間に異臭を感じて、勝手に口が離れる。なんだ、これ。中身がどう考えても普通の飲み物じゃない。ジュースや牛乳といった、ありふれたものではありえないにおい。あまりのことに、彼女との関節キスの感動すら消え去ってしまう。
「どうかした? あ、ちょっと固いから飲むのは大変かも」
「これ」
 言葉に詰まる。当たり前のように飲んでいる相手に、なにか変なものが入っているのかとか、腐っているのかとか訊けるわけがない。それ以前に、このにおいってまるで――。
「うん?」
 首をかしげて微笑みを浮かべる彼女。せっかく、話をする機会なんだ。唯一の共通点が出来るチャンスかもしれないんだ。それを逃していいのか。それは、いやだ。
 意を決して、再びストローをくわえる。悪臭に耐えながら、力をこめて吸い上げる。どろりとした粘着質の、少し塩気と苦みのある液体が流れ込んできた。ねばついて、なかなか喉を通らない。初恋の味はほろ苦いとかいうこともあるけど、絶対こういう意味じゃない。
「おいしい?」
「そ、そう、だね」
 もらったものを、それも憧れの相手が俺を気遣って渡してくれたものを、否定できるわけがない。たぶんひきつっているだろうけど、笑みを浮かべて彼女に応える。
「よかった。それじゃあ、全部飲んでいいよ」
「え、そんな」
「いいから。ね?」
 遠慮だと思ったのか、差し出したパックを押し返される。指が柔らかい。両手で包み込まれて、胸元まで押し戻されては何も言えない。だけど、これを飲む、のか。
 彼女は先ほどより喜びの色を強くして、こちらを見ている。自分のお気に入りを他人がおいしいと言ったことがうれしいのか、それとも別になにかあるのだろうか。
 色々と気にはなるけど、このまま飲むしかない。半ば吐きそうになりながら、時間をかけて、それでもなんとか飲み干した。その間中、彼女はレポートも書かずに、こちらをずっと見つめていた。
「くは……ごちそう、さま」
「あは、全部飲んだの? ねぇ、どうだった?」
 嬉しそうというか、興奮しているというか。荒い息遣いまで聞こえてきそうな不自然さを感じる。惚れた弱みというか、それでも本当のことは言えなくて、おいしかったよと答えるのが精いっぱいだった。
「ふぅん、そうなんだ。男のくせに精液飲んで、おいしいんだ」
 せい、えき。やっぱりという思いと、なんでそんなものをという疑問が交差する。
「変態?」
 他人の精液を好きな人の前で飲んだ変態、と言われたらそれまでだ。でも、なんだってそんなものを勧めてきたんだ。
 それに、すでに半分ぐらいはなくなっていた、と思う。ということは、彼女もずっと飲んでいたとうことだ。もし、もしも彼女に俺のも飲んでもらえたら……そんなことを想像して、異常な状況にもかかわらず下半身が反応してしまう。
「あれ、ねえ、もしかして」
 ふいに立ち上がった彼女が手を伸ばしてくる。呆気にとられていると、むぎゅりと股間を掴まれた。少し痛みを覚えるぐらいの力で、揉みほぐされる。
「あはは、やっぱり変態ね。精液を飲んで、おいしいって言って、こんなに大きくしてるなんて。けっこうかわいい顔立ちだしさ、背も低いし、そーいうの、もともと好きだったりするの?」
 いくらなんでもおかしい。こんな人だとは思わなかったし、知っていたらそもそも好きにだってならなかったのに。百年の恋も冷める、というのはこういうことだろうか。
「な、やめろ! 意味分かんないんだよ!?」
 立って距離を取ろうとした。腕をあげて突き飛ばそうとした。だが、そのどちらも現実になることはなかった。うそみたいな話だが、まったく身体が動かない。自由になるのは首から上だけだ。
「あれ、抵抗するんだ。できないよね。できないでしょ? あは、怖い? それとももっとなぶってほしい? あははっ」
 普段は優等生としての物静かな印象しかない。それなのに、まるで狂ったように嗤っている。楽しくて、嬉しくてしかたがない。そういう風情だ。だが、なんだ、この豹変ぶりは。
「こんなことして、何がしたいんだよ!?」
「なに、何って決まってるじゃない。あなたのペニスが欲しいだけよ」
「ふ、ふざけるな!」
「ばかね。あなたの意思なんて、関係ないに決まってるでしょう」
 ズボンが下ろされ、反り返ったものが飛び出てくる。もしかして、本当に飲んでくれるのか。明らかにおかしいのに、それでも男の性というのは一度興奮してしまうとなかなかおさまるものではない。
 整った顔が近づいていく。そのまま何の躊躇もなく口にふくまれた。ねっとりと熱く、舌がうごめく。なんだ、なんだこれ。
「あ、ぁあっ、これ、すご、あぁあっ」
 だが、その感触を楽しめたのはせいぜい数秒だろうか。ただ舌先で入口をつつかれただけで、自分の意思とは関係なしに射精が始まった。奥からどんどん出て行ってしまう。
「んぁあっ、はぁ、はぁ……そん、な、なんで……」
 ぺろりと唇についた白濁液をなめる彼女は、妖艶で、見とれてしまうほど美しい。
 呆けていると、アゴを掴まれた。そのまま抵抗もできないまま、上を向かされる。もう片方の手で鼻をつままれ、彼女が覆いかぶさってきた。
 どうしようもできなくて、少しでも息をするために口を開く。そこに、自分の精液が流し込まれた。さっきのと同じ匂い、同じ味。べっとりと喉に張り付き、息がつらい。どうしても、飲まざるを得ない。
「んくん……えほっ、けほっ」
「あはは、自分の飲んじゃった。でもほら、出したばっかりなのに、さっきより元気になってるじゃない。やっぱりこういうの、好きなんでしょ」
「あぐぅっ」

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 ごりんと音がしそうな力で、玉ごと握りしめられた。あまりの痛みに肺の空気が一気に出て行ってしまう。
 だが、痛みはそれだけではなかった。さらにそのままの状態で引っ張られる。身体もいっしょに動けばいいのだろうが、それができない。まるで椅子にくっついたように、びくともしない。結果として、今まで味わったことがない強烈な痛みに襲われた。
「ぃ、ぐっ、あがっ!?」
「あは、はははっ、ほらー、このままだと取れちゃうよー、いいのかな、なにもしないで」
「やめ、て、あ、ぎぃっ」
「やっぱり泣き顔もかわいい。でもなにもしないみたいだし、このままいっちゃうね? えい」
 ブチン――

 ―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

「おーい、起きてよ。いつまでも寝てたら帰れないじゃない」
「え、あれ、わたしいつ寝たんだっけ」
 見回すとすでに夕暮れで、少しだけ暗くなってきていた。教室にはわたしたち以外だれもいない。いつもなら、なんだかんだで人が残っているものなのに。
「もう、ほんとに私がいないとダメなんだから」
 脚が少し寒い。短いスカートに違和感。あ、昨日やり方を教えてもらって短くしたんだっけ。なんだか違うような気もするけど、明日からはなにかで対策をしないとだめかもしれない。
「ほら、いくよ。今日は私の家にくるんでしょ」
「う、うん、ごめんね」
 ノートや教科書を鞄につめる。体操服も忘れずに持って帰らないと。あ、れ。今日の体育って何をやったっけ。あれ?
「もー、まだ寝ぼけてるの?」
 そんなことはないはず。もうすっかりいつもどおり。たぶん。
 荷物を持って立ち上がる。なんだろう。やっぱりいつもと違う。並んで立つと、頭一個分、ううん、もっと差がある。わたしの方が小さかったけど、こんなに違ったかな。
「ほーら、置いてくよー」
「あ、待ってよ!」
 気がつくとすでに彼女は教室から出かけていた。考えていたら置いて行かれちゃう。それが怖くて、慌ててその後に続いた。
 追いつくために、がんばって脚を動かす。長さのせいか、それでも追いつけなくて、離れて行って、いつの間にか見失ってしまった。不安で仕方がなくて、少し涙が出てきてしまう。
「あはは、やっと来た、って、きゃっ」
 下駄箱で待っていてくれたのがうれしくて、走る勢いのままとびつく。大きな胸。ああ、いいにおい。だいすき。

 ―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

「さっきは急に抱きついてくるから、びっくりしたじゃない」
「だ、だって、いきなりいなくなるから不安で」
 今思うとかなり恥ずかしい。いくら小柄で貧相な体型だとはいえ、急にとびつかれた女の子が立っていられるはずもない。
 ひっくり返っても離さず、子供のように縋りついていた。それも、帰りがけのクラスメイトに声を掛けられて我に返るまで。見られたことを思い出すだけで顔が熱くなる。
 でも、いつものこと、という反応がすごく気になった。あわあわしていると小動物みたいでかわいいよねって。わたし、いつもあんなに子どもっぽいんだっけ。
「ちょっと、ちょっと、どこまで行くの」
「え、あ、ここだっけ」
「もう何回も来てるのに。今日はなんか変ね」
 そう、いつも遊びに来ている家、のはず。豪邸なんかではなく、普通の、ありふれた一軒家。強いて言うなら、三階建てってことだけど、最近はそう珍しいわけでもない。
 そうだ。三階が彼女の部屋と物置になっていて、家族が来ないから自由にって――。あれ、なんで知っているんだろう。って、いつも来ているんだからそんなの当たり前だよね。

「それじゃ着替えちゃうね」
 わたしの至福の時間。一枚一枚脱いでいく様子をじっくり見ていられる。きれいな肌。うらやましいメリハリのある体つき。今日は黒の大人っぽい下着。それが全部わたしだけのもの。
 カットソーに軽やかなワンピース。悩むそぶりを見せて、カーディガンも羽織る。たしかに少し肌寒い感じはあるかもしれない。
「ごめんね、私だけ」
「ううん、大丈夫」
「そう、じゃあ、あなたにはこれね」
 するりと首に手を回される。かちゃりと小さく金の音がして、首が軽く圧迫された。え、なにこれ?
「いつもよりがんばってたしね、それに思ってた以上にかわいくなってくれたから。今まではもらったらそのままだったけど、たまにはペットにしてもいいかなぁなんて思っちゃったの」
「ぺ、っと……あ、あああ!?」
「あれ、思い出したんだ。へぇ……普通なら勝手になじんじゃうのに」
 たしか、股間を掴まれて、それで――。なんで、なんで? たしかに男だったのに、男だったはずなのに。

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 見上げるほどの身長差、襟元の大きなリボン、だぼついて指まで隠れそうなジャケット、裾からわずかに覗くスカートに、細く白い頼りない脚。こんなの、俺じゃない。俺なわけがない。
「ねぇ、どう? 小さな女の子にされて、下着が見えそうな短いスカート履かされて、おまけに首輪までつけられる気分って? ねぇ、どうなの?」
「あ、あああ……」
「もう……それじゃわかんない、でしょ!」
「あぐっ」
 リードを引かれて床に倒される。四つん這いで見上げる彼女がすごく大きくみえて、自分の小ささとかひ弱さとか、そういったものを実感してしまう。
「そうね、もっと気分を味わえるように、コレつけちゃおうか」
「い、嫌だ、俺はそんなの」
「そんなに嫌なの?」
 犬の耳を模したカチューシャを手に、彼女がしゃがみ込んでくる。必死に首を縦に振る。ただでさえわけのわからない状況なのに、これ以上そんな辱めをうけるなんて、耐えられない。
「そっかぁ、じゃあ、仕方ない」
「ゆ、ゆるしてくれるの、か?」
「あはっ、嫌がる顔がすごいそそるから、つけてあげる。外したらどうなるか、わかるよね?」
「ひ、ぁ」
 にたぁと悪意のこもった笑顔をつきつけられる。何をされるかなんてわからないけど、今以上に酷い目にあわされることは確実だった。か細い悲鳴が口からもれる。
「ほら、こっち」
 リードで身体の向きを変えさせられる。大きな姿見に、今にも泣きだしそうな弱々しい少女が映っている。これが、今の俺……。
 せめて見ないようにしようとするが、きつく紐を引かれた。目を閉じるなと、反らすなということか。逆らうに逆らえず、この状況を直視するしかなかった。
「いい子ね。それじゃ、ちゃんと見るのよ」
 返事はしない。向こうも求めていないのだろう。焦らすかのようにゆっくりと降りてくる。カチューシャの先端が頭皮をやわらかくこすり、同時に心が抉られる気がした。
「はい、できた。ほんとに犬みたいね。あは、不安そうな目をしちゃって、かわいいんだから」
「うる、さい。こんなことして、ただで済むと」
「思ってるよ。だってあなたは私のペットだもの。でも、ほんと不思議。今までの子だったら、もいじゃったら男のときの意識なんてなくなっちゃってたのに。飲んじゃったからかな」
 今まで、ということは何人もこんな風になっているということか。でも、誰が。失踪したとか、転校したとか、そんな話は聞いたことがない。
「だって、元から女の子だったことになってるもの。本人も家族も、世界中のみんなが男だったことを忘れるの。そういう風に私がしてあげてるから」
 クラスでも、学校でも女子の比率が多い、けど、もしかして、それも全部――。
「そう。男なんて精液だけ作れれば、あとはいらないしね。今も隣の部屋でペニスだけが働き続けてるの。いつものパックも、そのおかげ。ふふふ、おいしかったんでしょ?」
 唇を舐める様は普段の振る舞いとはまるで違う。そのギャップのせいだろうか、背中が震えるほど美しく感じる。こういうのを傾国というのだろうか。
「ねえ、おもしろいって思わない? ずらっと並んだペニスが、たまに思い出したように射精するの。あ、そうそう、心配しないでね。あなたのもちゃんと仲間にしてあげるから」
「なんで、なんでこんなこと」
「なんでできるのかって聞いてるの? それとも、なんでこんなことをするのかってこと?」
「どっちもだ、この変態」
「男なのに精液すすっておいしいって人に言われたくないけど。私が淫魔で、精液がエネルギーになるからって言えば、分かりやすいかな」
 ふざけるな、なにが淫魔だ。なにがエネルギーだ。馬鹿にしているのか。
 さっきまでは無性に恐怖心が強かったけど、怒りの方が上回ったのか、冷静になってきた。よく考えたらただの女じゃないか。体格は違うかもしれないけど、だからってそこまでの力の差はないはずだ。本気で暴れる人間を、ひとりで止められるわけがない。
 こうなったら噛みついてでも、何をしてでも逃げて――あ、れ、動かない。身体が、ぴくりともしない。
「だめね。今ある現実がちゃんと受け止められないなんて」
「――――――」
 声すらでない。息ができない。これも全部、彼女がやっているのか。苦しい、いやだ、死にたくない、死にたくない。助けてくれるように、必死に願う。
「ぁ、かはっ、はぁ、はぁ」
 それが伝わったのかどうかは分からないけど、急に身体の拘束が解かれた。手足の力が抜けて、床にくずれる。時間にすればものの一分にも満たなかっただろう。それでも吸うことはおろか、吐くことすらできないのが、こんなにつらいだなんて思ってもみなかった。
「ねぇ、わかった? あなたぐらい、どうにでもできるの。ほら、答えは?」
「あ、わか、った」
「わかりました、でしょ?」
「わ、かりました」
 逆らえない。指一本も動かさずに、簡単に殺される。こんなのむちゃくちゃだ。覗きこまれて、余計に身体が強張る。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。上下関係をはっきりさせたかっただけだから。あなたが私のかわいい子犬で居る限りは、変なことはしないしね」
「ほ、ほんとに?」
「うん、けど、裏切ったりしたら、ね?」
 ぞくりと背中が冷える。本気の目だ。さっきまでの、悪意がこもっていてもにこやかだった表情とは違う。本気で、殺すと言っている。
「で、あなたかわいいから、これもつけちゃおうか」
「ひっ、それ、や、嫌だ、待って、それは」
 どこから取り出したのか犬の尻尾が握られていた。根本は先の細くなった円錐に近い円柱。どこに差し込むものかは、一目でわかってしまった。
「ほら、ちゃんと四つん這いになって」
「う、ぁ、はい」
 命令には従わないと、何をされるか分からない。言われた通りにすると、パンツがずり下ろされた。鏡にはローションを先端に塗りつける彼女の姿。
 裂けたらかわいそうだしね、と俺のお尻にも同じようにねばねばする液体がたらされた。押し当てられ、ぐりぐりと動かされることで、恐怖がどんどん増してくる。
「な、なんでもするから、それは、怖いから」
「なんでも、ねぇ。それじゃあ、わんこらしく、鳴いてみて」
「……わん」
「あはっ、かわいい! ねぇ、もっと、もっとやって」
「わん、っ、わん」
 つらくて恥ずかしくて、顔が熱い。それでも、彼女の要求に逆らうことはできない。少しでもご機嫌を取ろうと、縋るように、甘えるように鳴くしかなかった。
「目が潤んじゃって、ほんと子犬みたい。あぁ、もう、かわいい……だから」
「ゆるして、くれるのか?」
「ううん、もっとちゃんと、犬みたいにしてあげるね」
「え、ひぐぅぅっ」
 油断していたせいか、一気に奥まで押し込まれてしまった。さっきとは違う意味で、一瞬息が止まる。
「ほら、鏡見てよ。お尻だけ高く上げて、ほんとにわんこになっちゃったね。あははっ」
「あ、ぐ、鳴いたら、ゆるしてくれるって……」
「私は鳴いて、って言っただけよ。誤解するのはあなたの勝手だけど、ね」
「ひぁあ!?」
 彼女が言葉を切った途端、お尻の尻尾が揺れ出した。まるで喜んでいるように、左にぱたん、右にぱたん。一回動くごとに、まるで射精しているかのような快感に襲われてしまう。
「あっ、ひっ、んぁっ、あぁっ」
「嫌がる割にうれしそうじゃない。あ、もともと自分でしてたとか。それとも誰かに開発されちゃってた?」
「ちが、ん、そ、な、ふぁあっ」
 刺激の嵐に今にも腰が抜けそうになる。いつまで経っても打ち寄せる快楽の波は止まらない。自然となにかを求める様になってしまう。
「そういうけど、腰、動いちゃってるよ。ほら、欲しいものがあるんじゃないの?」
 言ってしまいたいわたしと、言いたくない俺が拮抗する。今でも十分すごいのに、もしかしたらこれ以上気持ちよくなれるのかもしれない。けど、それを受け入れてしまったら、もう本当に戻れないんじゃないだろうか。
「もう、見た目と違って強情ね。素直になっちゃえばいいのに」
 うぃん、うぃんとモーターの音が強くなり、尻尾が激しく動き出す。さっきのでもおかしくなりそうなのに、今は断続的に意識が飛びそうになる。こんなの、こんなのむり……。完全にイきそうになったところで、不意に刺激がなくなってしまう。
「え、ぁ、なん、で」
「良い子にしか、エサ、あげたくないなぁ」
 自分の口でちゃんとねだれと言っている。でも、俺は、男なのに、そんなの。
「男? どこが? 鏡見てみなさいよ。どこに男がいるの?」
 鏡。よだれを垂らして、顔を真っ赤にして、目を潤ませて、耳と尻尾をつけて、発情しきった少女しかいない。
 男なんて、いない。だから、わたしは――。
「くだ、ください、ご主人さまぁ」
「よしよし、良い子ね。で、なにが欲しいの?」
「う、ぁ、おちんちん、おちんちんがほしいです!」
「どこに?」
 じゅくりと液が溢れる。すっかり充血し、ゆるくなった股間。ここに――。
「おまんこ、わたしのおまんこにください!」
「よくできました。それじゃあ、せっかくだし、あなたからもらったのでやっちゃおうか」
「はい、はい! ください、『俺』ので、わたしをおかしくしてください!」
 もういちどそれじゃあと呟いて、わたしを服従のポーズにさせる。あおむけになるとしっぽが奥の方をごりごりとこすって、よけいに切なくなる。
 おおいかぶさってきたご主人さまについている、見なれたもの。そり返ったそれが、いっきにわたしの中に入りこんできた。
「んぁああ!」
「あ、は、これ、思った以上に……」
「うごいて、ごしゅじんさまぁ、うごいてぇ」
「もう、我がままなペットね。でも、そのぐらいの方がかわいい、かな」
 ぐちゅり、ぐちゅりと出入りする。かきまわされる。おしつけられる。だんだん速くなって、いっしょに息もあらくなって。
「く、ぁ、すごいにゅるにゅるしてる、あなたのナカ。何回かやったことあるけど、こんなにすごいの、はじめて、んんっ、うそっ、こんなに吸いつくなんてっ」
「あっ、ごしゅじんさまぁ、ぁあっ」
「だめ、我慢できない!」
「きてくださ、いっ、もっと、おくで、おくでぇっ!」
 大きくふくらんで、いちばんおくにどくんどくんとなにかが入ってくる。はなれようとしたご主人さまの首に手を回してだきつく。ぜんぜん力は入らないけど、ぜったいはなさない。
「はぁ、ふぅ……もう、ほんとわがままな子ね」
 そう言いながらも抱っこするように座らせてくれる。もちろん、おちんちんは入ったまま。ご主人さまのぬくもりを全身でかんじる。だいすきなひと、いとしいひと。こいびと、おもちゃ、ぺっと、なんでもいい。ご主人さまから、ぜったい、ぜったいはなれない。
「ぜったい……むにゅ……」
「あは、なに笑ったまま寝ちゃってるのかな、この子は」

 ―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

「だ、だから、こんな恰好で授業を受けられるわけないだろ!?」
 耳に尻尾、最後に首輪。朝、迎えに行くなり三点セットが装着させられた。首輪をつけられるまで、主導権が『わたし』にあったから、文句を言うことすらできなかった。
「えー、周りは私がなんとかするから大丈夫よ。そ、れ、に、昨日はあんなにうれしそうだったじゃない」
「あ、あれは俺じゃない! きっと二重人格みたいなアレで!」
「ふぅん、それじゃあ、尻尾動かしてあげよっか。そしたら、また女の子になるから大丈夫ってことよね」
「ぇっ、ま、まって」

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 にやぁとうれしそうに笑うご主人さま。ぶーんと低いモーター音がして、ぱたぱたと尻尾がゆれる。スカートがめくれて、お尻が空気にさらされる。
「んぁっ、ごしゅ、ごしゅじんさまぁ」
「あはっ、かぁいい。ほら、遅刻しちゃうから、行くよ」
「やぁ、まって、まってくださいぃ。そんなにヒモ、んぁ、ひっぱらないでぇっ」
「だめ。あなたは私のペットなんだから、ちゃんと言うこと聞きなさい」
「そ、そんなぁ、ひぅうんっ」
「がんばったら後で好きなだけミルク飲ませてあげるから、ほら、はやく!」
 たのしそうにリードを引いてくれるご主人さま。カバンから取り出したパックのミルクをふりふりする。今日からはご主人さまの分と、わたしの分。
 だいじなだいじなわたしのご主人さま。ねぇ、そんなひとといっしょになれて、しあわせだよね? わたしのなかのあなた?

<FIN>

コメント

お読みいただき、ありがとうございます。

>とくめいさん
大丈夫(?)、そのうち、自ら女の子になりたがるようになるのです。

>ありすさん
ええ、もう、あまあまでらぶらぶな生活が待っていますよ、きっと。

ペット……いい響きですねぇ。
タイトル通りの、甘い関係がこれからもつづくのかしらね。

完全な女の子にはならないの?

尻尾を動かされた時だけ、一時的に女の子になるのですか?

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  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
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