FC2ブログ

Latest Entries

クジラの人魚姫 7-8 by.黒い枕


彼の下半身の末端が、魚の尾ひれになるのに、そう時間は掛からなかった。
熱中症のように息を切らし、ぐったりと横たえていながらじっとしては居られずに――それを動かす。
『ぴちぴち』と尾ひれが跳ねた。
精神的なフラストレーションが一気に膨らんで、彼は甲高い悲鳴を上げてしまう。

「あひぃ、ぃ! んあっ、せ、セシリウスぅうう!」
「あっー、ちょっと進行が早いわね。ん……どうしようか?」
「お、おれに聞く――はっん! あんんっ、ひゃううう!」

肉体の変貌は止まらない。
彼が悩ましく身悶えるたびに変化は進んでいく。 
下半身の同化現象は加速し、もはや足と呼べるものではなくなった。
ほぼ完璧に魚の尾ひれと化していた。
そして、そこには一つ問題が”残されている”。 ――文字通りに。

「せ、セシリウス……んあっ、あんっ! 下着……まだ残って……あんっ…・・・」
「これは脱がしようがないし……困ったわね……んー」

最後の最後で置き去りにされた可愛らしいピンクの下着が、変化を妨げていた。
融合という名の変身が途中で切られ、中途半端な、と言うか、不気味な肉穴を作り出していたのだ。
その周辺の肉がぴくっぴくっ――と蠢いている。

「ひ、ひぃいい!」

ちょっとグロテスクな蠢きに、錯乱したクジラは泣き叫ぶ。

「ん~~仕方ないか……勿体無いけど……」
「ふぇ? ひゃああああ!? ――おまっ、ちょっ、お前! な、何を!?」

どういう訳かセシリウスは涙ぐんでいるクジラの片手を、その醜い肉の空洞に宛がった。

「ちょっ! せ、せせ、セシリウスぅぅうう!」

ぶにょぶにょする感触が指先を襲う。
クジラは大粒の涙をこぼし、甘えるような瞳で彼女に噛み付いた――が。

「情けない声ださない! 泣かない! しっかりしてよ! 今、はさみ持ってくるから……いいから押さえる! 男の子でしょ?」
「う、うううっ。……あうぅっ……わ、わかっ、……た」

本当は泣きたいが『男の子』を持ち出されては、クジラも勇気を振り絞らずにはいられない。
歯を食い縛り、片手から両手で股座のやや下を押さえた。
ぶに、ぶに、ぶにょりっ。
まるでゼリー状の油の塊に手を突っ込んだような感覚が脳裏に押し寄せる。 しかも、当り前かもしれないが、かなり生暖かい。 むしろ、熱いぐらいだった。

(ひぃ、ひいい!せ、セシリウス早く!早くしてくれぇ!)

幸い、避難した先が良かった。
時間らしい時間も浪費せず、セシリウスが包帯用のはさみを掲げて、カーテンから飛び出してくる。

「せ、セシリウスぅ! はやくしてくれぇええっ!」
「分かったから、動かない。そう……いい子ね……後はあたしに任せなさいっ」

じょき、じょぎ、じょ……キンっ!
セシリウスが掲げるはさみが、ショーツを切り裂く。

「よし……取り出せる!」
「んあっ、はあああっ! んふっ、あんっ……んんっ!」

音を――粘着質すぎる摩擦音――を立てながら下着が抜き取られた。 
ハラハラと切なげな表情で息継ぎするクジラと、そんな彼の股座に顔を突っ込んで熱烈な眼差しを向けるセシリウス。
傍から見たら破廉恥極まりない、冗談のような光景だが、生憎と二人は真剣そのものだった。

「これで大丈夫だと思うけど、体の熱はどう? 他に変化や異常は?」
「んっ……んん、よく分かん、ない、け……ど。 大丈夫……みたいだ……ほてり……し、身体の熱もだ、大分引いてき、た……気が、するっ……」

ぶすぶすっ、と音を立てて肉の空洞が埋まっていく。

(はぁぁ、んぁあっ……良かった――でも、人魚の体って、どうなっているんだろう?)

身体の変調が落ち着いてきたためだろうか、クジラはそんな風なことを考えて、下半身の変化を観察していた。
醜かった不完全だった魚の部分。
それが三分も立たないうちに、美しい光沢を放つ鱗に覆われる。
流石は魔法と言うべきか。
今では宝石を散りばめられたドレスのような気品と流麗さを備えていた。
ある主の完璧な美貌に、その魚の下半身に神々しい光沢まで感じてしまう。

「はああっ……やっぱり、慣れねぇよ……この感覚は……」

人間でも、はたまた魚でもない、けれども現実として存在している神秘の生命体。 
ぴちぴちっ、と本当に久しぶりの人外の感覚に、クジラは困惑を隠せない。

「……んっ! 本当に俺の動きに合わせて、動いているんだ……」
(あっ、胸が縮んでる……これだけはラッキーかも……)

下半身の変化に夢中で気付かなかったが、乳房のサイズが小さくなっていた。 
平均的にはまだ大きいが、それでもFカップぐらいには、その生意気な体積を減らしていたのだった。声に出さないものの控え目な胸元の揺らめきに、反射的に喜んだ。

「うーん? その調子だと本当に大丈夫そうなのかな? ――でも本当の本当に大丈夫?」
「ひぁ――っ? あ、……あっうん……大丈夫ですぅ」

先ほどよりは身を引いているが、未だに距離が近いセシリウス。
改めて人魚の感覚に戸惑えば、今度は近すぎる彼女の存在感にドキっ、と心臓が反応した。

「身体の熱もだいぶさ、下がったし……心臓もっ、苦しくない、です」
「そっか。それじゃあもう少し休んでようか……」
「――っ!は、はいっ」

そう言いながら、今度は別種の高揚感を脳は感じ取っていた。
とくん、とくん、と甘美な昂ぶりが柔肌を熱っぽい赤みに染めて行くのを彼は認められない。
否――けして、”認めないようにした”。

(やっ! 違う、ぞ! こ、これはこ、恋心とか、興奮とかじゃなくてダナ……まだ体調がおかしいだけであって!!)

まだ火照りが残留しているのだと、気の迷いだと己に言い聞かせた。
これ以上、セシリウスを意識しないように体ごと顔を背けた。
しかし、その一方で――。

「あ、あの、その……っ」

本当に心配してくれている。
その顔、その態度にクジラは申し訳ない気持ちで一杯だった。
高鳴る心臓のせいか。
久しぶりの人魚の身体だからなのか。
白方クジラはちょっぴりだけ、素直になることを自分に許した。 彼の表情が自然とはにかむ。

「あ、ありがとう……セシリウス」

【完成】白方玖史羅(挿絵08)
挿絵:倉塚りこ

ぴちぴち、ぴちっ―― 。
顔を合わせずとも尾ひれと耳ひれを無意識に使用し、クジラは感謝の気持ちを示すのだった。 


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://okashi.blog6.fc2.com/tb.php/12658-5c170c70

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

DMMさんの宣伝

 

初めての人はこちら

ts_novel.jpg

 

性の揺らぎに関する作品でお勧めのもの

ts_syouhin_20090318225626.jpg

 

性の揺らぎに関する作品(一般)

ts_syouhinもと

 

ブログ内検索

 

最近のコメント

プロフィール

あむぁい

  • Author:あむぁい
  • 男の子が女の子に変身してひどい目にあっちゃうような小説を作ってます。イラストはパートナーの巴ちゃん画のオレの変身前後の姿。リンクフリーです。本ブログに掲載されている文章・画像のうち著作物であるものに関しては、無断転載禁止です。わたし自身が著作者または著作権者である部分については、4000文字あたり10000円で掲載を許可しますが、著作者表記などはきちんと行ってください。もちろん、法的に正しい引用や私的複製に関しては無許可かつ無料でOKです。適当におだてれば無料掲載も可能です。
    二次著作は禁止しません。改変やアレンジ、パロディもご自由に。連絡欲しいですし、投稿希望ですけど。

 

全記事表示リンク

ブロとも申請フォーム

月別アーカイブ

 

最近の記事

 

ブロとも一覧


■ ブログ名:M物語(TSF小説)

 

カテゴリー

新メールフォーム

イラスト企画ご案内

20080810semini.jpg

 

リンク

RSSフィード

2020-08